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一度壊れた精神(こころ)に、

光は差し込まないー。


どんなに、もがいても、

どんなに

もう、”憑依騒動”の前に戻ることはできないー。


前に進もうー、

そう思ってもー

その都度、”あの事件”の犠牲者たちを思い出してしまうー


命を奪われた者ー

人生を壊された者ー

変えられてしまった者ー


償うことすら許されなかった”罪”を、

永遠に背負って生きていくー。


それが、大切な人たちを滅茶苦茶にしてしまったー

わたしの”罪”-


※長編憑依「きみと過ごした日々」の後日談その2デス!

 本編(全25話)+後日談(~未来に繋ぐ絆~前後編)を

 読んだ後にお読み下さい!


・・・・・・・・・・・・


倉本 康成(くらもと やすなり)

憑依事件の際に、憑依されて歪めれた彼女に立ち向かった男子。


藤森 明美(ふじもり あけみ)

憑依事件の際に憑依された少女。人格まで歪められて

しまったものの、現在は立ち直っている。


柳沢 零次(やなぎさわ れいじ)

篠塚 沙耶香(しのづか さやか)

国松 千穂(くにまつ ちほ)

康成・明美らの友人。


小野坂 亮介(おのさか りょうすけ)

吹奏楽部部長。結乃が好意を抱いていた相手。


黒崎 守(くろさき まもる)

現在の結乃の同級生。結乃のピアノに惚れ込む。


冬坂 菜々美(ふゆさか ななみ)

現在の結乃の同級生。誰にでも優しい優等生。


間宮 結乃(まみや ゆの)

憑依事件の”黒幕”。現在は北海道に移住して、新しい生活を送っている。


・・・・・・・・・・・・・・・


あの騒動から、もうすぐ1年が経過するー


間宮 結乃(まみや ゆの)-

大人しい優等生の裏に隠された”狂気”が

その事件を引き起こしたー


結乃は、友達の藤森 明美(ふじもり あけみ)に

嫉妬していたー

勉強でもー

ピアノでもー

いつもいつも、明美は自分の上にいるー。


どんなに努力しても、結乃は明美に勝つことはできなかったー。

そして、教育熱心な両親は、”おまえの努力不足”だと、

結乃を叱りつけたー

一生懸命頑張っても”1番”にならなければ、

その頑張りを一切認めてくれない。

結乃の両親は、そんな両親だったー。


そんな境遇の結乃は”自分の邪魔をする”明美に

いつしか憎悪を抱くようになった。


その結果ー、

結乃は、祖父が残していた素性不明の”憑依薬”を使い、

事件を引き起こしたのだったー。


生徒会に所属する”リア充”嫌いの生徒・高藤(たかとう)に

憑依薬を提供し、高藤を、明美に憑依させたー。


高藤に憑依されて、歪められてしまった明美は、豹変し、

悪女となり、彼氏の倉本 康成(くらもと やすなり)と別れー

不良と付き合い始め、クラスからも孤立し、

成績も何もかも失ったー


結乃の計画は順調だったー。


憑依された明美は、歪み、壊れー

そしてーーー

結乃は”一番”になったー。


成績でも、ピアノでもーーー

憎い明美を地獄に落としー、

自分の望む”頂点”を手に入れたー


けれどー

”誤算”があったー。


それが、明美の彼氏ー、倉本康成の存在ー。

康成は”お人よし”と呼ばれるほどに、

いつも一生懸命で、仲間を信じー、困難に立ち向かう、

そんな男子だったー


康成は、憑依されて豹変した明美を前に、

くじけそうになりながらも、明美と向き合いー、

憑依の実行犯である高藤にたどり着いたー。


そしてー

ついに、康成と、その仲間の絆は、

明美の心を動かしー

”憑依で歪んだはず”の、明美はーー

再び、立ち直ってしまったー。


結乃の本性も、暴かれたー


でもー

康成は、そんな結乃のことも、罵倒しなかったー


康成も、明美も、康成の仲間の零次も、沙耶香もーー

みんなーーー

優しすぎたー


失ってみて、初めて気づいた、

”身近にあった、宝物ー”


あれから1年ー

結乃は、北海道に引っ越し、

もう、康成や明美たちは、傍にはいないー。


「----」

”例の事件”の前に、

康成・明美、そして結乃の親友であった

スポーツ少女・千穂(ちほ)と一緒に取った

写真を見つめるー。


「----………」

結乃は、悲しそうに微笑むー。


「-------ーー」

でも、起きてしまった事実は変えられないー。


常に写真を飾ってあるのはー

”未練”からではないー。


”自分の罪”を忘れないためー


憑依で、

明美の人格を歪め、変えてしまったー。

共犯・高藤を口封じのために、憑依して飛び降りさせてしまったー。

陰険なクラスメイト・哀川裕子に罪を被せて、警察に逮捕させてしまったー


そんなー

自分の”悪行”を忘れないためー


どんなに楽しいことがあっても、

どんなに時が流れてもー

この写真がここにあればー


結乃は、自分の”罪”を忘れずに済むからー

永遠に”懺悔”することができるからー。


・・・・・・・・


「----わたしは、あんたを許さない」

茶髪の明美が、結乃を睨むー。


「---明美…」

結乃が悲しそうな表情で、明美を見るー


明美は変わってしまったー

高藤に憑依されて、歪められて、悪女になってしまったー。


ガムを噛みながら明美が近づいてきて、

結乃に容赦ないビンタを食らわせるー


「あはははははは!」

明美が笑うー


明美はこんな笑い方しなかったー

平気で暴力をふるうような子じゃなかったー


いつも笑顔でー

いつも優しくてー

まるで、太陽のようなー


”結乃ー”

かつての明美の姿を思い浮かべて、結乃は涙をこぼすー。


あの素敵な笑顔をー

結乃は自ら歪めてしまったー

理不尽な嫉妬と憎悪から、歪めてしまったー


「---明美…ごめん…本当に…ごめんなさい」

結乃が泣きながら言うー。


明美は笑みを浮かべたー


「ごめん???

 今のわたし、すっごくいい気分なの!

 解放された気分!

 ふふふふ…あんたのおかげ!」

明美はそう言うと、結乃を蹴り飛ばしたー。


結乃は地面に這いつくばって涙をこぼすー


明美を壊してしまったー

大切な友達を壊してしまったー


優しくてー

大切でー

大好きな友達をーーー


「--わたしがこうなったのは、あんたのせいよ」

明美が言うー


「お前のせいだー」

結乃によって命を落とした高藤が言うー


「--あんたのせい!」

結乃によって警察のお世話になった陰険女子の裕子が言うー


結乃はしゃがみこんで、耳をふさぐー


「--ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさいー」


何度何度何度

謝ったとしてもー

もう、過去は戻らないー

過ぎた時間に戻ることは…できない。


「-----…!!!!」

結乃が目を開くーーー


”夢”


またーー

あの悪夢ーーー


「----」

結乃は起き上がるー。


”北海道”にやってきて、数か月ー

こっちの高校に転入し、今は、普通の学校生活を送っているー


新しい学校生活にもだいぶ慣れて、

結乃は、前にいた学校と同じように、吹奏楽部に所属しながら

ピアノの練習を熱心に行っていたー


トレードマークでもあったツインテールの髪型をやめ、

今は髪を下ろしているー。


自分自分ー

”先に進む”という、一つのけじめをつける”何か”が欲しかったー。

そんな、うまく言葉にできない気持ちからー、

髪型を変えることで、自分の中で、何か気持ちを切り替えようとしていたー。


ため息をついた結乃は、そのまま学校に向かう準備を始めたー。


・・・・・・・・・・・


クラシック音楽を奏で終える結乃ー。


そこに、クラスメイトの黒崎 守(くろさき まもる)が

眼鏡をかけた頭の良さそうな男子で、

実際に頭も良いー。


「---いやぁ、やっぱ、間宮さんのピアノはすごいなぁ」

守が呟くー。


守は、結乃のピアノの音色を聞いて、”ファンになった”と、

何かと結乃のピアノの音を聞きに来ているー。


「----いつも、ここにばっかり来ていていいの?」


今は昼休みの時間帯ー

結乃が、連日音楽室に足を運んでいる守に対して、そう呟くと、

守は「教室はさ~、リア充が多くてさ」と、やれやれというジェスチャーを

加えながらつぶやいた。


「---俺、リア充とかあんまり好きじゃないしー

 つか、恋愛とか興味ないっていうか?まぁ、そんな感じ。


 それに俺、小さいころピアノやってたから、

 間宮さんのピアノを聞いて、すっかりファンになっちゃってさー」


守は笑いながら言ったー。


守は、悪い男子じゃない。

下心も、おそらくないー。

純粋に、ピアノが好きな人の”目”だー。

結乃にはわかるー


けれどー

どことなく、雰囲気が似ているー


”彼”にー。


結乃が、憑依で殺したー

共犯の男子生徒・高藤にー。


雰囲気だけではないー

リア充が嫌いなところもー

高藤と同じだー。


「--あ…邪魔だったかな?」

暗い表情の結乃に、守が不安そうに聞いてくるー


「あ、、ううん…大丈夫」

結乃はそう言うと、次の1曲を奏で始めたー


まるでー

高藤くんが近くにいるみたいー


と、思いながらー


いやー

いるのかもしれないー


彼の命まで奪ってしまったのだからー

彼が、わたしを許すはずなんて、ないのだからー


黒崎 守に、高藤の姿が重なって見えた気がしたー


「---」

結乃は思わず目をそらすー


”わたしの心は、壊れたままー”


あの事件の”残像”に囚われたままー。


・・・・・・・・・・・・・


昼休みの終わりが近づき、

ピアノの練習を終えて、廊下を歩いていると、

同じクラスの女子生徒・冬坂 菜々美(ふゆさか ななみ)に

声を掛けられたー


とても真面目で、やさしく、穏やかな女子だー。


「--間宮さん、いよいよ来週だね!」

菜々美が言うー。


”来週”とは、

ピアノのコンクールのことだー。


北海道で行われるコンクールに、結乃は出場する予定だー。

そして、そこには、結乃がかつて想いを寄せた

吹奏楽部の部長・小野坂亮介(おのさかりょうすけ)もやってくるー。


亮介は、あの憑依騒動の際に、

康成に容疑者のひとりとして疑われていたー。

結局、亮介は、結乃の計画とは何の関係もなく、

康成を時には激励し、そして結乃にも優しい言葉を最後までかけてくれたー。


今も、亮介はピアノの腕前を磨いていて、

音楽家である父の背中を追い、夢をかなえようとしているー。


「---頑張ってね!わたしも応援してるから!」

菜々美の言葉に、結乃は「うん。ありがとう」と、少しだけ微笑んだ。


立ち去っていく菜々美ー。


結乃は、この学校では”みんなとある程度距離を取っているー”


親しくなったらー

またーーー

”壊してしまう”かもしれないからー


”わたしの心”は、壊れているからー。


・・・・・・・・・・・・


高校側の配慮で、遅くまでピアノの練習をしていた結乃は、

暗くなった校舎を歩いていたー。

コンクールで入賞すれば、学校側としても鼻が高いー

そういうことなのだろう。


「---」

結乃の心は晴れないー


あの時から、ぽっかり穴が開いたままー。


罪を償うことも許されなかったー


”憑依”などー

現実にあると考える人間は少ないー


警察も、困り果てた様子で、

最終的に、結乃はすぐに釈放されたー

罪にも問われないままー


”償うことすらできない”罪ー。


「----」

結乃が、夜の街を歩いていると、

ふと、聞き覚えのある声が聞こえてきたー


「きゃははははははははは!

 これが本当のあたしだから!

 あははははははは!」


柄の悪い男たちと抱き合うようにして歩く女ー


「---!」

結乃は、その女を見て表情を歪めるー。


あれはーーー


クラスの冬坂 菜々美ー

学校ではとても穏やかな、優しい雰囲気の女子生徒ー


その菜々美がー

派手な格好で、柄の悪い男たちと、

こんな夜に、繁華街を歩いているー。


「--ったく、昼間とは別人みたいだなぁ~?」

男の一人が言う。


「---夜のあたしは、別人よ」

菜々美が甘い声で言うー


「---」

結乃は表情を歪めるー


”憑依”


その言葉が頭をよぎるー。


「--ーーー」

菜々美があんなことをするわけがないー

菜々美はまさか、憑依されてーーー


結乃が、あの時のことを思い出しながら、

震えているとー

もう、菜々美の姿はなかったー。

近くのカラオケ店に入ったのだろうー。


「---夜のあたしは、別人よ」


菜々美の言葉が何度も、頭に繰り返し再生されるー


憑依ー

憑依ーーー

憑依されている人が、他にもー。


帰宅した結乃は頭を抱えるー。


明美に罵倒される悪夢ー

高藤の面影を感じる黒崎 守ー

まるで憑依されているかのような、冬坂 菜々美ー


「---」

結乃は頭を抱えて涙をこぼすー。


一度壊れてしまった心はーー

そう簡単に元に戻らないー


いつまでも、

いつまでも、

あの”憑依騒動の影”が、結乃に覆いかぶさって来るー


自分は、罪を犯したー

その罪はー

一生忘れないー


一生ーーー


自分だけが、こうしてのうのうと生きているー

それを、神様は許してくれないのかもしれないー


「早く…早く、、わたしを裁いて…」

結乃は呟くー


明美の悪夢はーー

きっと、明美や裕子、高藤の怨念ー


黒崎守はーー

生まれ変わった高藤なのかもしれないー


冬坂菜々美はーー

誰かに憑依されているのかもしれないー


結乃は、何もかも悪い方向に考えてしまうー。

もう、戻れないー

元の状態にはー


♪~~~~


「--」

結乃のスマホが鳴るー。


「---」


SMS-

電話番号を知っていれば送ることのできる

ショートメッセージ。


そのメッセージを見て、

結乃は目を見開いたーーー


”憑依の犯人、間宮さんにー

 憑依のこと、いっぱいいっぱい、教えてほしいなー”


そんな、メッセージだったー


「-----!」

結乃は震えるー。


あの事件の黒幕が結乃であることを知る人間は少ないー


”ねぇ、教えて?”


”ねぇ、教えて?”


メッセージが続けて送られてくるー


”少しでも話すことがー

 償いになると思わない?”


”憑依のこと、教えて”


”ほら、教えてよ”


”悪女!”


「----」

結乃はスマホを放り投げたー


誰ー?

誰なのー?


あの事件から、およそ1年ー

今になってーなぜ?


結乃にこんなメッセージを送れるということはー

”あの事件を知る”人間ー。

つまり、康成たちの、誰かー


倉本くんー?

明美ー?


倉本くんの親友の柳沢くんー?

それとも生徒会長の篠塚さんー?


親友の千穂ー?


「----」

この中の、誰かひとりでも、そんなことをする人がいるとは思えないー


でもーーー


結乃は、そこまで考えて、「もういや!」と叫んで、

ベットに潜り込んだー。


一度犯した罪は、消えないー


罪が、永遠に、その者を苦しめるー。

そう、永遠にー。


壊れた心に光は差し込まないー


「-----」


彼女は今、奈落の底に突き落とされていたー



続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


きみと過ごした日々、の後日談でした~!


罪を犯した側の苦悩とその先、を描く内容で、

元々内容は考えてあったのですが、

本編で書くと、逆に区切りが悪くなるので、本編には入れなかった

エピソードですネ!


憑依騒動を起こした彼女の、苦悩と未来がどうなるのか、

本編を読んだことがある方は、ぜひ見届けてあげてくださいネ~


今日もありがとうございました!

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