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検死官・ジョー。

彼は、裏社会を含む、様々な遺体を確認し、

その死因から、あらゆることを分析する

”裏の仕事”を含む、検死を請け負う人物だったー。

とある行政関係機関の雇われて、今日も数々の遺体を

調べ、そして、あらゆる情報を分析している。


彼の本名は、分からない。

ほとんどの人物が”ジョー”と呼んでいるが、

それはおそらく仮名だ。

機密性の高い特殊な業務に従事していることから、

彼の個人情報は、あまり明らかにはなっていないー


そして、彼ー

検死官ジョーは、ある能力を持っている。

それは、死んだ人間から”悪の魂”を取り出すことのできる能力だ。


死んだ人間の中には”残留思念”とも言うべきものが

しばらくの間残っているー

その中でも、誰もが少なからず抱えている”悪の部分”

それを、検死官ジョーは取り出すことができるのだ。


”人間の悪い部分”のみを遺体から取り出すことのできるこの能力。


最初は「意味のない能力だな」と、

そんな風に彼自身も思っていた。

能力に気づいてからは、

特に意味もなく、検死のついでに悪の魂を取り出し、

自宅でそれを飾るという、悪趣味な楽しみ方をしていた。


それだけなら、良かったのかもしれないー

だが、検死官ジョーは、ある時、気づいてしまったのだ。


”取り出す”こともできれば”入れる”こともできるのだとー。


それ以降、彼には、密かな楽しみができたー


表沙汰にすらできないような遺体の数々を確認し、

気が狂ってしまいそうなほどの毎日を送るジョーの

密かな”癒し


真面目な人間に、悪の魂を入れ込んだらどうなるのか?


検死官ジョーは、

今までに100人近くの人間に死んだ人間から取り出した

悪の魂をねじ込んできた。


人の悪い心の部分だけを、他の人間に憑依させるのだ。

もちろん、死人の魂だから、そこに意思はない。

ただ、思念として残った”悪意”が入れられた人間を

蝕んでいくのだ。


反応は様々だった


控えめだった性格がねじ曲がり、暴力的になった女。

清楚なアイドルから体を売るアイドルに変貌した女。

優しい夫からDV夫に変化した男。

良い子で評判だった子に入れた時は突然ヤンキーになったりもした。


その反応を見ているうちに、

検死官ジョーは、”愉悦”を感じたー


他人の遺体から取り出された

悪意=悪の魂が同化し、悪の魂に憑依された人間が、変わっていくサマが…。


人間とはこんなにも愚かなのだと。


今まで、検死官ジョーが悪の魂をねじ込んだ人間は

誰一人として自分を保てなかった。


全員が、悪の道へと堕ちた。


検死官ジョーはこの世の地獄を数多く見てきた。

その結果、たどり着いた境地ー、とも言うべき異常な能力、

それが”悪の魂を取り出し、他人に憑依させる能力”


既に、”人間”という生き物に絶望していた検死官ジョーは、

悪の魂によって、悪の道に堕ちていく人々を見て、

さらにその感情を強めた。

”人間は愚かだ”とー。


「さてさて、今回はどうかなーー?」

検死官ジョーは”98人目の獲物”を既に定めていた。


今回のターゲットはジョーの近所の高校に通う子。


西原 愛華(にしはら あいか)。


彼女は、学年一の優等生で、

小さいころに父を亡くしているから、苦労したらしい。

それゆえ、真面目で、優しい性格に育ったのだとか。


そんな子に”悪の魂”をいれたら、どうなるんだろうな?


ジョーはほほ笑むー


これほど優しく、真面目な子であれば

”悪の魂”を憑依させても、”悪堕ち”せずに済むかもしれないー。


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「……またいじめられたの?」

愛華は、いじめられっ子の黒滝 康介(くろたき こうすけ)に

話しかけるー。


「うん…

 栗本さんたちが…」


”栗本 智乃恵(くりもと ちのえ)”

この高校の陰険な女子グループのトップに立つ子で

かなり陰険な性格をしている。


「…大丈夫?」


康介と愛華は小学生時代からの幼馴染。

康介は、元々気弱な子だったものの、

最近は智乃恵らのターゲットにされて、

さらに元気をなくしてしまっている。


「…わたしも出来る限り力になるから…

 がんばろ?」


愛華がほほ笑むと、康介も少しだけ笑みを浮かべるー。


人の笑顔を見ると、何となく心が安らぐ。


愛華は、そんな風に思えるタイプの女子高生だったー。

他人の喜びを、心から自分の喜びに変えることができるー。

そこに打算があったり、見返りを求めているわけではない。


よく、”お人よし”と友人たちから言われるー。

だが、それでも、愛華は、本当に嬉しいのだ。

他の人が喜んでいるのを見ることがー。


放課後ー

愛華は友人の紗枝(さえ)と一緒に帰る約束をしていたー。


部活で少し遅れると言っていた紗枝を空き教室で待つ愛華ー。


その時だった。

突然、窓の方から人の気配がした。


「--!?」

愛華が窓をほうを見つめるー


だが、そこに何もいないー


「----?」

愛華は少しだけ首をかしげると、

再び窓から視線を逸らすー。


その時だったー


”ドン”


愛華は、身体に何かがぶつかったような”違和感”を

覚えてーー


「えーーーー?」


慌てて振り返るー。

しかしー

そこにはやはり、誰もいなかった。


「いまのはーーー?

 …気のせいかな。」


”何か衝撃を感じた”

それは間違いない。

でも、誰もいないし、何も異変はないー


深呼吸して、愛華は再び気を取り直すと、

友人の紗枝がほどなくしてやってきた。


「あ、ごめんごめん 愛華」

「あ、紗枝ちゃん」


紗枝は、愛華と同じく、大人しめのタイプの女子生徒ー。

けれども、しっかりモノで、愛華にとっては、一緒に居て安心できる存在だった。


「じゃ、行こう」

教室から紗枝が先に出て行こうとする。


その時だった、

紗枝のカバンから財布が零れ落ちた


紗枝は、そのことに気づいていない


愛華は、その財布を見つめながら、

いつものように

”教えてあげなくちゃーー”

と、考えながら手を伸ばして財布を拾う。


目の前にいる友人が財布をカバンから落としたー。


だから、拾ってあげて、

それを渡してあげるー。

当たり前のことだー。


しかし…


財布を見ていた愛華に、ある考えが浮かんできた


”1枚ぐらいお札を抜いても、ばれないかな…”


!???!?


「えーーー」

愛華はとっさに、自分の頭の中に浮かんだ考えに驚き、

声をあげてしまった


「--どうしたの?」

紗枝が不審げに振り向く。


そして、愛華の手にある自分の財布を見つめると、

紗枝は嬉しそうに微笑む。


「あ、私の財布、拾ってくれたんだー!

 ありがと愛華!」


笑顔で財布を愛華から受け取る紗枝。


「----…うん、良かった」


愛華は、少し表情を曇らせながら笑みを浮かべるー


そしてー

心の中で戸惑うー。


”今のはーーーー

私 今 一瞬、変な事を…?”


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その様子を検死官ジョーは遠くから眺めていた。


「いまのところ…変化なし…か。」

”悪の魂”は徐々に入れられた人間の精神と同化していく。


ジョーは、その人間の精神力が強ければ、悪の魂に呑まれることなく、

”自分”を保ったままでいられると思っている。


だが、今のところ、ジョーが実験した全員が悪の道へ進んでしまった。


「彼女は、どうなんだろうな…」

そう呟くと、ジョーは意味深な笑みを浮かべた。



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


ずいぶん昔に書いた「悪の魂」というお話のリメイク版デス!

今、読んでみると描写も設定も、今の私の考えとだいぶ違うので、

かなり描写を修正してみました!


新しく、読みやすく(たぶん…)なった、悪の魂を

ぜひお楽しみくださいネ~!


※原作が、私の初期のころの作品で、文字数が今よりも少ないので

 リメイク後もいつもより短めになっています。

 そのため、こちらは100円プランでも読めるようにしてあります!

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