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「--はぁ~」

和哉がため息をつくー。


彼女の亜優美は、心配そうにそんな和哉を見つめたー。


「どうしたの~?悩み事?」

亜優美が言うと、

和哉は「いや、そこまでじゃないんだけどさ」と、苦笑いしながら答えるー。


「---会社の部長がさ~

 部下に何でも押し付けるイヤなタイプでさ…

 たま~に、こうしてため息が出るっていうか…」

和哉が言うと、

亜優美は「そっか。色々大変なんだね」

と、ほほ笑んだー。


自分の悩みなんて、亜優美の悩みに比べたら、些細なものだったのかも

しれないー

まさか、この数か月後に、亜優美が車の前に自ら飛び出してー

それを助けようとした自分は、異世界の姫をすることになるなんて、

当時は、全く思わなかったー


「-------いつも、ごめんな」


部長は、元気だろうか。


この世界にやってくる2週間前、

部長は、珍しく、そんな言葉を口にしたー。


「ーーーいつも、嫌な部長で、ごめんな」

とー。


”その言葉”は

何を意味していたのだろうかー。


いやー

考えても仕方がない。


異世界に飛ばされてしまった今ー、

もう、その答えを知ることは、できないのだからー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)/ヒルダ

和哉の恋人。異世界ではヒルダと名乗り、敵対している。


神埼 省吾(かんざき しょうご)

和哉・亜優美の共通の友人。事故直前、亜優美と会話していた。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

自らを死神と語る謎の生命体


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。ミリアの実の父。


ダーク将軍

闇の帝国側に所属している「漆黒の鎧を身に纏う」騎士


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


「--あとは全て、片付けておきたまえ」

騎士団長の一人・フェルナンデスが、薔薇を手にしながら、

兵士たちにそう告げるー


いかにも貴族らしい雰囲気を漂わせるフェルナンデスは、

自分より立場が下のものに対し、高圧的で、

一部兵士や民からの評判も、決して良いモノではない。


兵士たちに仕事を押し付けると、足早に立ち去っていくフェルナンデスー。


そのまま、フェルナンデスは、街へと向かうー。


”フェルナンデス様はまた、夜遊びか”

”俺たちは苦労してるのに”

”この前も朝帰りしたって噂だぜ”


兵士たちが不満を口にしているー。


「-----」

執務を終えて、アリシアの姫の部屋に戻る最中の

和哉は、偶然その光景を目にしていたー。


異世界の姫として、

アリシア姫の影武者として振舞い始めてから

既に半月以上が経過したー。


和哉は、アリシア姫としての執務も、ユーリスから

教わりながら、なんとか、日々を過ごしていたー


「は~~~~…疲れたぁ~」

和哉は、離宮の自分の部屋に戻ると、

だらしない格好で、豪華なソファーに座ったー


「---こらっ!」

侍女のラナがすかさず声を上げる。


「---わっ!?な、なんだよ急に!?」

疲れ果てた様子の和哉が言うと、

ラナは、叱るお母さんのような仕草をしながら

「--姫様の姿で、そんなだらしない格好は許さないから!」と、

和哉に向かって言い放つー


「--はいはい~!女らしくすればいいんでしょ~」

和哉が不貞腐れた様子で、そう呟くと、

足を閉じて、女らしさを意識しながら、ソファーでぐったりしたー


「--姫様は、どんなに疲れててもそんな姿見せなかった!」

ラナの言葉に、

和哉は「だ~か~ら~!俺は女になったばかりで、姫の仕事にも

振る舞いにも慣れてないから、2倍疲れるんだって!」と、

ラナの方を向きながら言うー


ラナはそんな和哉を見つめ返して、言い放つー


「なら、2倍頑張るの!」

とー。


和哉は苦笑いしながら、

「あ、そういえば、騎士団長のフェルナンデスなんだけど…」と、

真剣な表情でラナに尋ねるー


「フェルナンデス様がどうかしたの?」

不思議そうにしているラナー


「あ、いや…

 なんだかさ、いつも兵士たちに仕事押し付けて行っちゃうし、

 なんていうか…下のものに厳しいなぁ…って。」

和哉は、長い髪を掻きむしりながら言うー。


「-いつも、あんな感じなのか?」

とー。


フェルナンデスを見ていると、不思議と”上司”を思い出す。

フェルナンデスの方が断然若いし、容姿も全く別人だがー

”どこの世界”でも”パワハラ上司はいるんだな”と、

和哉やフェルナンデスに対し、良いイメージを持っていなかったー


「う~ん…前からあんな感じ」

ラナは、昔を思い出しながら言う。

10年前から、姫の側にいたラナは、

騎士団長たちのこともよく知っているー。


ラナが王宮に来た当初は、まだフェルナンデスは騎士団長ではなかったー


そして、フェルナンデスは”どこの家の出”か、ハッキリしていないの

だと、ラナは説明するー


通常、騎士団長たちは、

代々王宮に仕える家の出か、名家の出など、

”エリート”揃いだー。

その例に漏れず、

ユーリス、ジーク、ミリアの三人は、そうなのだと言う。

だが、フェルナンデスだけは、そういう情報が不明瞭で、

どこの家の出かは、わからないー


確か、アリシア姫の父親である、前国王が、推薦する形で、

騎士団長になったのだと、そう和哉に付け加えて説明したー


「そっか。ありがとう」

和哉はそう言うと、部屋の天井を見つめたー


・・・・・・・・・・・・・


翌日ー


執務室で、アリシア姫としての執務をこなすー

様々な報告に目を通したり、

様々な意見書や、苦情、相談などを受け付けたりと、

あらゆる仕事をこなすー


「またか…」

和哉は呟くー


騎士団長・フェルナンデスに対する兵士からの苦情ー。


フェルナンデスの評判は悪いー

典型的なパワハラ上司と言ってもいい。


仕事を兵士に押し付けることへの不満の声やー

王宮に出入りする商人からの不満の声などがー

他の騎士団長と比べると、圧倒的に多いー。


その時、部屋がノックされたー


「どうぞ」

と、和哉が言うと、部屋に、騎士団長のユーリスが入ってきたー


「だいぶアリシアっぽくなってきたじゃないか」

ユーリスが笑いながら言うー。

ユーリスは騎士団長としての激務をこなしながら、

アリシア姫の代わりをしている和哉を常に気にかけてくれているー


「はは…毎日ドキドキだけど」

和哉が言うと、ユーリスは「お前はよくやってるよ」と呟いたー。


ユーリスとアリシア姫は”幼馴染”なのだと言うー

それ故に、ユーリスは、誰よりも本物のアリシア姫の行方を

案じているー。


ユーリスが、王宮での出来事や、闇の帝国軍の動向を伝えるー

和哉はその報告をしっかり聞きながら

分からない場所は質問しつつ、話を進めるー。


ふと、ユーリスが口を開いた。


「それにしても…

 あのヒルダという女がお前の恋人だったなんてな…」

ユーリスの言葉に、

和哉は表情を曇らせるー


亜優美が、どうしてこの世界にー?

しかも、ヒルダなどと名乗って、全く別人のようになっていたー


でもー

和哉には分かる。

あれは、間違いなく亜優美だ、とー。


「ーーーなんかごめん」

和哉は”自分の恋人”が王国の敵であるという現状に

申し訳なさを感じて謝ると、ユーリスは首を振った。


「お前は何も悪くないさー」

と、ほほ笑みながらー。


・・・・・・・・・・・・・


執務室から出ると、フェルナンデスが、

兵士に対して高圧的な態度を取っていたー

薔薇を手にし、あくびをしながら、不真面目そうな雰囲気だー。


流石に、目に余るー


そう思った和哉は、アリシア姫として

フェルナンデスに声を掛けるー


”パワハラ”

和哉は、元の世界でも、それを嫌と言うほど見てきたー


どうすることもできなかったー


だが、この世界では違うー

今、自分は”姫”なのだからー


「フェルナンデス」

和哉が声を掛けると、

姫の姿をした和哉に、フェルナンデスが気付き、

「おぉ、これは姫様。今日もお美しいー」と

頭を下げたー。


「ーーー何か、御用ですかな?」

フェルナンデスの言葉に、和哉は、少しだけ考えてから口を開くー。


「兵士たちへの振る舞いー…

 少し、目に余るものがありますー。


 兵士たちも人間…

 少し、彼らのことも、考えてあげて下さい」


和哉は、ユーリスから教わった姫の話し方を真似ながら、

フェルナンデスを諭したー


フェルナンデスは、薔薇を持ったまま、

和哉の方を見るー


”薔薇なんか持ってかっこつけやがって”

和哉はそんな風に思いながら”嫌味”を付け加えたー


「---恵まれた立場のあなたには分からないと思いますが、

 民や兵士…下の立場の人間のことも、少しは分かってあげて下さい」


とー。


その言葉を聞いた

フェルナンデスが表情を歪めるー。


「--私は騎士団長です。

 兵が、私に従うのは、当然と思いますが?」


反抗的な態度ー。

”反姫派”の騎士団長・ジークほどではないが、

フェルナンデスも、鼻につく態度が多いー


常に高圧的ー

”自分は偉いんだ”という態度が滲み出ていて、

他者を見下しているー


いかにも、権力を持った人間の悪い例だし、

貴族出身で、苦労せず育っているー

そんな、印象だー。


和哉がフェルナンデスを睨むようにしていると、

フェルナンデスは口を開いたー。


「----私は所用がありますので、これで失礼します」

そう告げると、露骨に不機嫌になって

そのまま足早に立ち去ってしまうー。


少し離れた場所にいた

兵士たちが”また、夜遊びだよ”と、噂しているー


「----」

和哉は、立ち去っていくフェルナンデスの後ろ姿を見つめながらー

”もう一言、言ってやろう”と思いながらー

フェルナンデスの後をつけていくー。


フェルナンデスは、何やら袋に入ったものを持ち出すと、

そのまま、人目を避けるようにして、王宮を出たー。


王宮を出て、城下町へー

そして、城下町を出て、外にー


「おいおい…」

フェルナンデスを尾行していた和哉は

”どこに行くつもりだよ”と、毒づくー


魔物が出て来るかもしれないし、引き返そうかー…

と一瞬思ったもののー

”いや、パワハラ上司は許すまじ”と、和哉は、

姫の格好のまま、フェルナンデスを尾行したー


星空が、綺麗に輝くー。


フェルナンデスは、しばらく歩くとー

ある場所へと入って行ったー


「---ここは?」

和哉が首を傾げながら見つめたその先はー

”寂れた集落”だったー


”こんなところに、何の用なんだ?”

和哉は、不思議そうに思うー。


それぞれの騎士団長の予定や、見回り・訪問などの

スケジュールは全て目を通しているが

フェルナンデスは今、和哉の世界風に言うなら

”勤務時間外”だー。

こんな、寂れた集落に来て、夜遊びでもするつもりだろうかー。


だがーーー

集落を覗いた和哉の目に飛び込んできたのはー


「---!!」


「--あ、お兄ちゃん!」

「騎士のお兄ちゃん!」

「お兄ちゃんが来た~!」

集落のボロボロな子供たちが、フェルナンデスの元に駆け寄るー


「ははは、遅くなってすまないな

 いい子にしてたか?」

フェルナンデスが子供たちを撫でるー


そして、王宮から持ち出した袋を取り出すと、

そこから出てきたのはー

”食料”だったー


「---わ~!おいしそう!」

「いつもありがとう!」

子供たちだけではなく、集落の老人や大人も出てきて

フェルナンデスに頭を下げるー


「---このぐらいしかできることが出来なくて、

 申し訳ない」

フェルナンデスはそう言うと、

王宮にいる時とはまるで違う態度で、

子供たちや、集落の老人たちと、楽しそうに話しー

そして、積極的に集落の住人たちのことを

手伝っているー


「----」

和哉は、その光景を見つめながらー

”フェルナンデスが夜になると王宮の外に行くのはー

 夜遊びではなく、こういうことをするため?”と、

心の中で考えたー。


貧しい村の民を、支援しているー

それがフェルナンデスの”裏の顔”


「--!」

村の中にいたフェルナンデスと、和哉の目が合ってしまったー


「あ」

和哉がしまった!という表情を浮かべているとー

フェルナンデスも驚いた表情を浮かべつつー

少しだけ笑みを浮かべたー


「これはこれは姫様ーーー

 お恥ずかしいところを」

薔薇を手にしたままのフェルナンデスが、

気まずそうに笑いながら言うー


そしてー

少し考えたあとに

「----見られてしまったのなら…仕方ありませんな」

と、和哉に対して「どうぞこちらへ」と、呟いたー


フェルナンデスに案内されて、和哉は集落のボロ家に入るー


家に入ると、フェルナンデスは椅子に座りー

和哉にも椅子に座るように促したー


「-------先ほどは、失礼いたしました」

フェルナンデスが頭を下げる。


兵士たちへの態度を指摘された際に、

フェルナンデスが悪態をついたことを詫びるー。


「--いえ、、、構いません。

 それより、ここで何を?」

和哉が言うと、フェルナンデスは答えたー


「---姫様にはお話してませんでしたが…

 私は、名門の出でも、両家の出でもありません。


 私は、貧しい村の出身ですー」


フェルナンデスは、薔薇を机の上に置くと、

そう呟いたー


「え…」

和哉は戸惑う。

てっきりフェルナンデスは、幼いころから貴族育ちで

貧しい人間のことなど、何も理解していないー、と

そう思っていたからだー。


「---アクア王国は、確かに繁栄しています。

 ですが、その裏で、この集落のような

 ”日の当たらない貧しい村”もたくさんあります。


 王宮の城下町や、主要の街・村は確かに

 栄えています。

 ですが、その裏で、王宮から満足な支援も得られず

 毎日食べるものに苦しんでいる村もあるー。」


それらを、フェルナンデスは、定期的に、支援して回っているのだと言う。


フェルナンデスの言葉に、

和哉は集落の風景を思い出すー


子供はガリガリにやせていてー

いかにも”貧困”という感じだったー


アクア王国は、こういう村を放置しているというのかー、と

和哉は少し悲しそうな目をする。


それに気づいたフェルナンデスが付け加えるー


「別に姫様を責めているわけではありません。

 姫様は、立派な姫君です。

 美しいだけではないー

 

 ただ…どうしても、闇の帝国軍との戦いや、

 国力の限界から、主要な村・街以外には

 王宮の目も行き渡らず、結果、こうした

 貧困に苦しむ村や集落が出来上がってしまうー。

 それも、また事実です。


 どうにかしようとしている者もいます。

 ユーリス殿やミリア殿も、気には掛けているー

 だが、手が回らないー。

 ジーク殿や宰相ローディス殿のように、

 ”辺境の村になどかまっていられるか”と言う者も

 王宮には多くー

 表立って支援することはできないのです」


フェルナンデスはそこまで言うと、

立ち上がったー


「--私の生まれた村も、そうでした」


その言葉に、和哉は、複雑そうな表情を浮かべる。


「----私の生まれた村は、王宮の支援など一切得られずー

 土地にも恵まれず、村人たちは全員、その日食べるものにも

 苦しみ、餓死するものまでいましたー」

フェルナンデスが悲しそうに呟くー。


「そしてーーー

 そんな中、疫病が流行ったー

 村の人間の半分ほどが、何もできないまま死にー

 残された半分は、飢えによって、次々と死んでいったー。


 村長は、王宮に助けを求めたー


 だがー

 王宮は何もしてくれなかったー


 別にー

 王宮を恨んではいないー

 ただーー、

 ただ、それでもーー

 何か、少しだけでも、してほしかったー」


フェルナンデスはそこまで呟くと、

”私には、妹がいましてね”と、机に置いた薔薇を手にしたー。


小さいころから、大の仲良しだった妹ー

そんな妹に、兄であるフェルナンデスは、

よく”俺は将来、立派な騎士になるぜ”なんて言っていたー

”こんな村の出”じゃ、騎士になるなんて、夢のまた夢だと

理解しながらもー。


「これはー

 妹の”最後の誕生日プレゼント”」


悲しそうな目ー

”最後”

ということは、フェルナンデスの妹は、既に死んでいることを意味するー。


”お兄ちゃん、お花!”

フェルナンデスの妹はー

餓死したー。

食べるものも、得られずー。


極限の貧困生活の中で、

妹が、兄であるフェルナンデスに持ってきてくれた

最後の誕生日プレゼントがー

この薔薇だったー。


これをくれた1週間後ー

妹は、死んだー。

ガリガリにやせ細ってー。


”お兄ちゃんー…

 立派な騎士様に…なってね”


それが、妹・リアナの最後の言葉ー。


フェルナンデスは、その薔薇に”自らのエナジー”を

定期的に注ぎ込むことで、腐らせないようにしつつ、

それを常に手放さずに持っていたー


「----フェルナンデス」

和哉は、誤解していたー


”夜遊び”などしていなかったー

フェルナンデスが夜、王宮から出ていくのは

こういう貧困の村を支援するためー


”かっこつけている”わけではなくー

薔薇は妹の形見ー


普段眠そうにしていたりしているのはー

こうして、夜遅くまで、村を回っているためー


「----私は、あなたを誤解していましたー」

和哉は、アリシア姫の口調で、そう言いながら

「----ごめんなさい」と、頭を下げたー


フェルナンデスは少しだけ笑いながらー

「--いえ イヤな奴に思われるのは慣れておりますので」と、

呟いたー


貧困で生まれ故郷を失ったフェルナンデスは、自分のような

人間を二度と生み出したくない、という思いから、

必死に一人、修行を続け、自給自足の生活で、

地獄のような日々を送りー

アクア王国の騎士団に接触し、その剣技で、見習いから騎士、

騎士団副官から騎士団長、と、のし上がったのだと言うー。


”王宮を変えたいー”

貧困に苦しみ、死んでしまうような民を一人でも減らしたいー

その、想いからー。


しかしー

”現実は甘くはなかった”とも、フェルナンデスは語ったー


王宮では、自分の行動は、絶対に”言えない”のだと言うー。

貴族出身ではない自分が、身分を明かすこともできないー。


王宮騎士団長の身分にある自分が、こんなことをしていると

知れたら、”うるさいやつら”もいる、と。

貴族の世界は想像以上に面倒で、大問題になり、

騎士団長を解任される恐れすらあるのだとー。

だから、兵士たちにも”夜遊び”程度に思わせておくしかないし、

自分はどう思われても構わない、とフェルナンデスは付け加えた。


「---でも、王宮でのふるまいはー」

和哉が言うー


そういう想いがあるにしても、

王宮でのフェルナンデスは、常に高圧的だー。


「---……”所詮は、平民の出だ”」

フェルナンデスが呟くー


「そう、言われるのです」

悲しそうなフェルナンデスー


フェルナンデスの出自を知る、一部貴族や、

大臣らが、何かにつけて、そう言うのだと言うー。


そう言われないためにも、

王宮では、高圧的に振舞わざるを得ない、と、フェルナンデスは語ったー。


「----」

和哉は暗い表情を浮かべる-


「--いつもイヤな騎士団長で、すまないー」

フェルナンデスは呟いたー


「---と、いつも心の中では、思っているのですが」

苦笑いするフェルナンデスー


「-!」

和哉は、元の世界の自分の会社の上司である部長を思い出したー


「ーーーいつも、嫌な部長で、ごめんな」


部長は、そう言っていたー


部長も、このフェルナンデスと同じようにー

もしかしたらー

会社の上層部から、いろいろ言われたりしてー

”きつく当たらざるを得なかった”のかもしれないー


部長にも、部長なりの想いや守りたいものがあったのかもしれないー


「---どうか、されましたか?」

フェルナンデスが不思議そうに和哉の顔を見つめるー。


「あ、いえ、同じようなことを言ってた人がいたなぁ…って」

和哉がとっさに誤魔化すと、

フェルナンデスは「それはそれは」と、それ以上は


”フェルナンデスとしては兵士も大切にしたいー

 だが、王宮の複雑な権力構造で、それが出来ないー”


色々なモノの”板挟み”

そんな、状態だったー。


「--もう、夜も遅いー。

 王宮まで、お送りしましょう」

フェルナンデスは頭を下げながら

和哉に向かって、そう告げたー


村の人間に、挨拶をすると、

フェルナンデスは、和哉と共に、王宮へと戻ったー


王宮に戻ったふたりー


「-ーそれでは姫様、おやすみなさいませ」

頭を下げるフェルナンデスー


「--今日は、ありがとう」

フェルナンデスに向かって、和哉が頭を下げ返して

立ち去ろうとすると、フェルナンデスは口を開いたー


「----姫様。」


立ち止る和哉ー


「------」

フェルナンデスは、和哉の顔をじっと見つめると、

何かを言いたそうにしたが、首を振り、

そのまま少しだけ笑ったー


「---ーーいえ、私はいつでも、あなたの味方ですー。

 何かあれば、いつでもーー

 私をお頼り下さい」


それだけ言うと、フェルナンデスは頭を下げたー


アリシア姫は”希望”-

民のことまで、しっかりと考えているアリシア姫に

フェルナンデスは心酔していたー。

この姫様なら、自分のような貧しい子供をー

この世界を、良い方向に変えることができる、

とー。


「---ありがとう」

和哉はそう呟くと、離宮の方に向かって行ったー


それを見届けると、薔薇を手にしたまま

フェルナンデスは王宮の外に出て、

星空を見つめたー


「---リアナー。」

妹の名を呟くフェルナンデスー


”お兄ちゃんー…

 立派な騎士様に…なってね”


妹・リアナの最後の言葉ー


それを思い出しながら

「--私は、立派な騎士になれているだろうかー」

と、静かにそう呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・


星空に浮かびながら王宮を見つめている

死神・エックスー。


「-----ゼロ」


和哉を”この世界に転生させた”と豪語する謎の生命体・エックスは、

闇の帝国軍の本拠地がある方向を見つめながら

静かにその名を呟いたー


闇の帝国の皇帝・ゼロの名をー


⑪へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


⑩に到達!

早いものですネ~!


今日もありがとうございました!!


(Fanbox)


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