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高校2年の、谷村 義彦(たにむら よしひこ)は、

充実した高校生活を送っていたー。


”リア充”

そう、表現するのがふさわしいだろうか。


友達も多く、家族との仲も良好で、彼女もいるー。

勉強にプライベートに、何もかもが充実していた。


そんな彼の趣味は”スポーツ全般”と”アウトドア”

とにかく、身体を動かすことが大好きなタイプの男子だったー。


一方で彼女の山瀬 円香(やませ まどか)は、

大人しいタイプの少女。

恥ずかしがり屋な性格だが、優しく、穏やかであるため、

同性の友達は比較的多いー。


読書好きな他、

山や川などの自然、それと、生き物が大好きだー。


性格は違えど、二人は、とても仲良く、

楽しい高校生活を送っていたー。


だがーーー

そんな、リア充とも呼ぶべき高校生活を送っていた

義彦のクラスに”2つの異変”が起きていたー


ひとつはー

クラスのオタク男子・野上 健介(のがみ けんすけ)が

2週間前に、自殺したことー。


もうひとつはー

彼女の円香がーー

突然”豹変”したことー


・・・・・・・・・・・・・・・


「---はぁ~~…ふふふふふ…ふふふふふふふ」


昼休みー

円香が笑みを浮かべながら

可愛らしい色のスマホを見つめているー


「--みさきちゃん…ふふふふふ♡」

すっかり興奮した様子の円香ー。


「---円香」

義彦が、彼女の円香に声を掛けるー


だが、彼氏に声を掛けられても、円香は

喜ぶような様子を見せないー


「---なに」

円香は、つまらなそうな表情で反応するー


最近の円香はいつもこうだー。


”オタク趣味”を邪魔すると、

とても不機嫌になる。


「---いや…なんかニヤニヤしてたから

 どうしたのかなって」

義彦が言うと、

円香は嬉しそうな笑みを浮かべて、

「明日はみさきちゃんのフィギュアの発売日なんだ!」と

スマホの画面を見せるー


”みさきちゃん”というのが何なのか、

義彦にはよくわからないー。


だが、画面を見る限り、

アニメキャラクターか何かに見える。


「あ~~~みさきたんがわたしの家に来るの…

 うふふふふふ…興奮せずにはいられないでしょ!」

円香が途端に口数が多くなって、

”みさきちゃん”の魅力をペラペラと喋り始める。


「--そこで、みさきちゃんの登場ってわけ!

 このシーンのどこがいいかって言うとね、

 みさきちゃんは本来、別の選択をすることだって

 できたのに、それをせずに駆けつけたってところがね…

 もう、、、きゅんときちゃうっていうか…」


円香がずーっと、みさきちゃんとやらの魅力を

興奮した様子で語っているー


円香はーーー

元々こんな子じゃなかったー

義彦は、別にオタクに偏見は持っていないー

自分はゲームやアニメに詳しくはないが、

ゲームやアニメが好きな友達もいるし、

義彦の考えは”他人に迷惑を掛けなければどんな趣味でもいい”という

考えだ。


だから、たとえ、1年中オタク趣味に時間を費やしていても、

美少女フィギュアを部屋中に並べていても、

義彦は、それに偏見を持ったりは、しない。


でもーーー

円香は違うー


ここ最近”急に”おかしくなったのだー

読書好きなで、

山や川などの自然、それと、生き物が大好きな子だったー

ゲームやアニメとは縁がないタイプの子ー。

美少女アニメとか、そういうものはむしろ苦手な感じの子だったー


それがー

今やアニメやゲーム、さらにはコスプレにまで手を出し、

自宅では、アニメキャラのようなコスプレをしているー


さらにはー

声の出し方も変わった気がするー

どことなく、意識して、アニメキャラっぽい声を

出しているような、そんな違和感を強く感じるー


バイトもやめて、アニメショップで働こうとしてる、と

先日言っていたー


円香の

別に、円香がオタク趣味と呼ばれるようなものに

興味を抱くのは構わないー


だがーー

”何か”がおかしいー


とにかくー

”極端”に変化したのだー。

その様子はまさに”豹変”と呼ぶに、ふさわしいー。


「ねぇ、聞いてる!?」

円香が声を荒げるー


「あ、ごめん…俺は…円香の方が可愛いと思うな」

義彦が、円香の機嫌を直そうと、ちょっと恥ずかしそうにそう呟くー


しかしー


「は?”こんな女”なんかより、みさきちゃんの方が100倍可愛いけど!?」

円香は、怒りの形相で叫んだー


「--こんな女?」

義彦は”不審”に思うー


クラスメイトたちは、最近の円香の豹変についてー

こう噂している。


まるでーー

”死んだ野上になったみたいだ”


とー。


「--みさきちゃんに謝りなさい」

円香が怒りの形相で言う。


「--え」

義彦が戸惑う。


「--いいから、謝るの!」

円香が机を叩いたー


「--ご、、ごめん」

義彦が謝ると、

円香は「二度とみさきちゃんを馬鹿にするなよ!」と

乱暴な口調で呟いたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


野上 健介ー


彼は”人に迷惑をかけるタイプ”のオタクだったー。


オタクだから悪い、というわけではない。

何事にも”常識的なタイプ”と

”人に迷惑をかけるタイプ”がいるー


野上健介は、後者の方だ。


学校でも、授業中にエロ漫画を読んだり、

授業中にゲームをやったりして、

先生から注意を受けたり、

漫画を取り上げられた際には、

顔を真っ赤にして、先生から、漫画を無理やり

奪い返そうともしていたー

アニメイベントでも、声優に対して

”しおんちゃんは、お前の声なんかじゃない”と

イベントにやってきていた声優に罵声を浴びせ、

出入り禁止になったという伝説も持っているー


とにかく、”周囲に迷惑をかけたエピソード”が

満載の男子高校生だった。


義弘の友人のひとりで、アニメやゲームが大好きな重三郎(しげざぶろう)も、

”アイツはオタクの面汚しだぜ”と、呆れていた。


そんな、野上健介が、2週間前、突然、自殺したのだ。


自宅での自殺だったー。


謎の魔法陣のようなものを、床にスプレー缶で描き、

その中心で、どこから手に入れたのか分からない

剣のようなもので、まさに”切腹”するかのような

状態で、自殺していたのだと言うー


両親が、健介を見つけ、病院に搬送されたが、

既に手遅れで、野上健介は、助からなかったー。


彼の残された記録からー

ツイッターを使って、気に入らない声優や

気に入らないアニメに、猛烈な誹謗中傷をしていたことなども

明らかになり、

クラスメイトたちは、彼の死に驚くと同時に、

呆れ果てていたー。


中には”迷惑なやつが死んでくれてよかったぜ”

などと言うものも、いたー。


そしてー

その翌日頃からー

義彦の彼女・円香に異変が起きたー。


突然、デートをドタキャンしてきたのだー


”体調不良”と、説明していた円香。


”それなら仕方ない”と、

義彦が、近くのスポーツ用品店でも見に行くか、と

街を歩いていたところー

近隣のアニメショップに入っていく円香を見かけたー。


戸惑いながらも、アニメショップの中に行き、

円香に話しかけた義彦はー

「デートより、こっちの方が大事だもん!」と

円香に断言されたー


その日からだー

異変が始まったのはー


円香は、みるみるオタク趣味に染まっていき、

”迷惑をかけるタイプ”のオタクになってしまったー


授業中には、萌え声のようなものが聞こえるゲームを

やり始めたり、

限定商品の新発売に徹夜で並んで、学校に遅刻したりー

”円香とは思えない行動”が増えたのだー


さらにーーー

ツイッターのアカウントに異変が起きた。


円香は”まどまど”というアカウントを持っていて、

義彦とも繋がっているのだが、

そのアカウントの話題が、急にアニメばかりになった。


そしてー

声優の公式ツイッターに

”あんたの声は、ゆっかの声には似合わない!降りろ!”などと

訳の分からないリプを送り始めたりー

挙句の果てに、嫌いなアニメの公式ツイッターに

誹謗中傷を送り始めたりする始末だったー


異変は、すぐにクラスメイトたちの間にも広がったー


まるで、野上ー。

クラスメイトたちは、そう噂したー


友人の重三郎は、冗談で

「まるで野上 円香になっちゃったみたいだよな!」

などと、口にしたー。


重三郎は、冗談のつもりだった。

だが、その重三郎の言葉が、

義彦の中に、ここ数日、ずっと響き続けていたー


まるでー

死んだ野上が、円香になったー


そんな風に思えてしまうぐらいに、

円香の様子が、変わってしまったのだからー


・・・・・・・・・・・・・・・・


帰宅した円香は、ほほ笑むー


「ふふふふ…わたしは、オタクだもん!」

円香が、美少女キャラが描かれた抱き枕に抱き着くー。


「わたしなんかより、みんなカワイイ~~」

抱き枕やフィギュアを見つめて、

円香が顔を赤くするー。


部屋の隅には、円香が好きだった本がごみ袋のような

ものに入れられて、

今では部屋中、美少女キャラのポスターや、

グッズで埋められていたー


”貯金”も使い果たしたー


「なんのために貯金してたんだっけね~~??

 ま、どうでもいっか~!」

円香はそう呟きながら笑うー


そう、貯金なんて、どうでもいいー

好きなキャラに囲まれて生きることが、何よりの幸せー。


円香は、ロリ系な服に着替えると、

嬉しそうにほほ笑むー


最近、プライベートでは、ロリっぽい服装か、

アニメキャラ風の服、コスプレ衣装などを

身に着けているー


自分自身が、アニメキャラになったかのような

快感を味わうことができるからだー。


円香は、鏡を見て呟くー


「----くくくくくくーーー

 僕が、山瀬 円香だー」

円香は低い声で笑うー。


円香はーー

野上健介に憑依されていたー


「ーーー僕は、自殺したんじゃない」


野上健介は、”自殺”したわけではなかったー


彼の大好きなラノベの一つに出て来るー

”憑依術”を現実で試したのだ。


作中に出て来る通りの魔法陣をスプレー缶で描き、

作中に出て来る剣を模したものを用意したー。

殺傷能力のあるものだー。


そしてー

彼は、ラノベの通りにーー

自らに剣を突き立てたー


ふつうであれば、

それで終わりーだ。

自殺になって、終わるー。


だが、彼のー

野上健介の常軌を逸した”執念”が

通常ではあり得ない現象を引き起こしたー


ラノベと同じように、野上健介は、憑依することに成功したー


健介は、円香に憑依したー


別に、女になりたかったー…

というわけでもないー


何故なら、健介は”2次元”にしか興味がないからだ。

”3次元”の女は、徹底的に見下しているー


だから、

大好きなキャラの「みさとちゃん」よりカワイイ、と言われた時も激怒したー


こんな女が、みさとちゃんよりカワイイなど、あり得ないのだー


「---大好きな彼女がー

 オタクになっちゃったら…どうするのかなぁ…??」

円香は表情を歪めて

鏡の前で笑い出すー。


「ふっふふふふふ…ひひひひひひひひ…

 ふひひひひひひひひひひっ♡♡」


不気味な円香の笑い声が、部屋に響き渡ったー


彼の目的はーー


”復讐”


彼を侮辱したー

義彦へのーーー


”復讐”

だー。


②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


乗っ取られてしまった彼女…!

彼氏との関係はどうなっていくのでしょうか~?


続きはまた近日中に!


今日もありがとうございました!!




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