Home Artists Posts Import Register

Content

昔からー

昔から、”余計なこと”に首を突っ込むことが多かったー


「--ったく、あんまり無茶はするなよ」

親友の神埼 省吾が苦笑いしながら言うー


高校時代ー

まだ、亜優美と付き合い始める前ー


和哉は、いじめを受けていた後輩を助けるために、

不良生徒たちに立ち向かったー。

がー、殴られて怪我をしたのだった。


”同じ委員会活動をしている”

それだけの接点だったのだが、

それでも、和哉は、その後輩を助けようとしたー。


”困っている人を見ると放っておけない”

和哉は、そんな性格の持ち主だったー


「ーー…悩んでそうだったからさ…何とかしてあげられないかな…ってさ」

和哉が殴られた頬を抑えながら呟くー


「--はぁ、お前ってやつは」

省吾が首を振るー


「大丈夫!?」

亜優美も保健室に駆け付けて来るー。


和哉が苦笑いしながら「大丈夫大丈夫」、と亜優美の方を見る。


亜優美は心配そうに

「-人助けもいいけど、自分のこともちゃんと考えなくちゃだめだよ」

と、呟くー


和哉は「心配かけてごめんな」と、亜優美の方を見つめるー


「-----ーー」

そんな二人の様子を見つめながら、省吾は、和哉の肩を

叩くと、静かに呟いたー


「ーー人助けもいいけどさ、

 それが、”災い”にならないようにな…?」

省吾はそれだけ言うと、和哉に向けて笑みを浮かべたー


「--”親友”の俺からの”忠告”だー。

 亜優美ちゃんを悲しませるようなことは、するなよ!な?」


省吾の言葉に、和哉は頷いた。


「あぁ。分かってるさ」


とー


”ーーーーーー亜優美ちゃんを悲しませるなよー

 亜優美ちゃんは”お前”しか見てないんだからー”


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)

和哉の恋人。自ら命を絶とうとしていたところを、和哉が救い…?


神埼 省吾(かんざき しょうご)

和哉・亜優美の共通の友人。事故直前、亜優美と会話していた。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

王宮騎士団長。それぞれが、それぞれの騎士団を率いている。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

自らを死神と語る謎の生命体


皇帝ゼロ

闇の帝国の皇帝


グール伯爵

皇帝ゼロの腹心。闇の帝国の事実上の指揮者。回りくどい表現を好む。


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


「---あ~~も~~!いい加減、一人で着替えられるようにしてよ!」

侍女のラナが、不機嫌そうに文句を口にしているー


「そ、そんなこと言ったって…

 俺、男だったし…女性の服なんて着たことないし…

 そんなにすぐには…」


和哉が苦笑いしながら言うー

和哉は、この異世界に来た直後に”女体化”し、

この世界の姫・アリシア姫そっくりの姿になってしまったー


「ーーー口ごたえしーなーいーの!」

ラナが頬を膨らませながら言うー


「--だ、、大体、キミだって、こんな豪華なドレス

 スムーズに着れるのか?」

和哉が身なりを整えながら言うと、

ラナは顔を赤くしながら「わたしは侍女だからいいの!ほら!早く準備して!」

と、早口になって、立ち去って行ってしまったー


「ははは…」

笑う和哉ー


今日はー

”王宮会議”


王宮騎士団長4人や、宰相のローディスら、アクア王国の重鎮が

出席する会議に”アリシア姫”として出席するー


「---はは、似合ってるぜ」

急に声がしたー


和哉が驚いて横を見ると、

宙に浮く小さな生命体・エックスの姿があったー


「---死ぬはずだった俺を、この世界に転生させてくれた…って

 言ったよな?」

和哉が、神出鬼没なエックスに対して聞くと、

「まぁ…そんなようなもんだ」と曖昧な返事が返ってきたー


「ーーーあのさ…」

和哉が少し苦笑いしながら言うー


綺麗な髪を触りながら、

「どうして~~~、俺をわざわざ女にしたのかなぁ~?」と、

和哉が問い詰めるような口調で聞くー


「---さぁなぁ、残念だが、女にしたのは、俺じゃないぜ」

エックスが躱すような返答をするー


「はぁ…?じゃあ、なんで俺は女にー?

 しかも、ただ女になるだけじゃなくて、

 なんでこの世界の姫そっくりに…?」

和哉が当然の疑問を口にしているー


本物のアリシア姫はどこかー

和哉は何故女体化したのかー

何故、女体化したあとの姿が姫そっくりなのかー


「----そいつは…俺にもわからねぇな…

 だが…」

エックスは”ある仮説”を頭の中に浮かべるー


「---時間よ」

ラナが戻ってきて、”王宮会議”に向かうように促すー


「え?あ、、あぁ、今行く」

和哉は、”自分の口から女の声が出るのは慣れないなぁ”と

思いながら、振り返ると、既にエックスはいなかったー


”なんなんだよ…あいつは”


そう思いながら、動きにくい格好で

”姫って大変だな”と思いながら、和哉は、”王宮会議”が

行われる部屋へと向かったー



「------」

和哉が立ち去った部屋に、エックスが再び姿を現すー


そして、呟いたー


「---”希望”になれるか、否かーー

 まだ”見極め”が必要だなー…」


ーーと。


・・・・・・・・・・・・・・・


会議が行われる場にたどり着いた和哉は、

ぎこちない歩き方で、アリシア姫が座る席へと向かうー。


「--ご公務復帰、おめでとうございますー姫様」

宰相のローディスが頭を下げるー


宰相ローディスと言葉を交わすのはこれが初めてだー。


騎士団長・ユーリスによれば、

宰相ローディスは”反姫派”の中心的人物だと言う。


「--ありがとう。わたしはもう大丈夫です」

アリシア姫としての振る舞いは、ラナやユーリスから聞いたー


上手く出来ているか分からないが、やるしかない。


「--ーーー」

ローディスが笑みを浮かべるー。


”魔術師”と表現するにふさわしい雰囲気の男ー。

一見穏やかそうに見えるが、目つきは、鋭いー。


”油断ならない人物”

和哉が抱いた印象は、それだったー。


ユーリス、ジーク、フェルナンデス、ミリアら騎士団長ー

宰相のローディス、

王国の大臣たち数名、各部隊の長などが着席するー。


「--まずは先日のフロル村襲撃の件からー」

騎士団長のユーリスが説明し始めるー。


和哉が逃亡する直前、

ユーリスとフェルナンデスの二人は、

闇の帝国軍に襲撃された、”フロル村”の救出に

向かっていたー


その、経過をユーリスが報告しているー


「---」

和哉は、報告を続けるユーリスの姿を見ながらー

自分を助けに来てくれて死んだ、ルベールの姿を思い出すー。


事情を知るユーリスが出撃中だったため、

ルベールが命を懸けて、盗賊に襲われた和哉を

助けに来てくれたのだー


”じいさん…”

和哉は、ルベールのことを思い出しながら、

ユーリスの報告に耳を傾けるー


「--闇の帝国軍の新たな戦力として、

 ヒルダと名乗る女剣士、そして、漆黒の鎧を身に纏った

 騎士が確認できた。

 両名とも、俺とフェルナンデスによる奇襲作戦の際に

 撤退、フロル村の奪還には成功した」


「--漆黒の鎧を身に纏った騎士とは?」

神経質そうな騎士団長・ジークが尋ねるー。


ジークの問いには、薔薇を手にしたフェルナンデスが答えるー。


「---初めて見たやつだが、幹部クラスで間違いない。

 この私の、”ローズ”を以てしても、互角にやり合うのが

 やっとだったからな」

フェルナンデスが答えると、

ユーリスが続けたー


「女の方も初めて遭遇したが、なかなかの手練れだー

 自分でヒルダと名乗っていたー。」


和哉はー

王国の会議の独特の緊張感の中ー


”あ…”と表情を歪めるー


”やべっ”

和哉は、とんでもないことに気付いたー。


”ノーブラ”

下着をつけてなかったー。

侍女のラナと言い合いをしているうちに、

下着を身につけるのを忘れてしまったのだー


”くそっ…!ブラをつけるって癖がなくて

 つい忘れちまう”


”なんで女の身体に…”

そんな風に毒づきながらも、

”このドレスなら胸元は見えないし…大丈夫か…”と

必死に平常心を保とうとするー


会議での各種の報告が続くー


女性騎士団長のミリアが、調査の結果を報告しているー


「闇の帝国軍の捕虜となった我が騎士団の

 兵士たちが、近日中に、レイン村で処刑されるという

 情報が手に入ったー」

男顔負けの凛々しさを持つミリアが、淡々と報告を行うー。


”レイン村”とは、

南方の海岸沿いに存在する村で、半年ほど前に、帝国軍に占拠されて

しまい、現在は、帝国に支配されている村だと、ユーリスが小声で

和哉に説明したー。


「捨て置け。兵士の替えなど、いくらでも効く」

神経質そうな騎士団長・ジークが言う。


「ーーーお前には聞いていない」

女性騎士団長・ミリアがそう言うと、

「姫様」と、和哉の方を見たー


「--!」

下着をつけてないことを気にしていた和哉が

とっさに「え!?」と間抜けな声を出してしまうー


その反応を見たユーリスが、

ミリアの発言を復習するかのように繰り返し、

「-姫は、どう思われますか?」と、確認を促したー。


”え…ど、、どうすりゃいいんだよ?”

和哉は、ユーリスの方を見つめるー


ユーリスは頷くー

”決定は任せる”という意味だろうかー。


「--捕虜を処刑する情報をわざわざ流す、ということは

 おそらくは罠だろうな」

貴族っぽい風貌のフェルナンデスが言うー。


その言葉に、ジークが口を開く。

「--貴公の言う通りだ。帝国は罠を仕掛けているであろう。

 下級兵士などにいちいち構っている暇はー」


「-ーー救出の準備を」


---!?

ジークが和哉の方を見るー


フェルナンデスや、宰相のローディスも少し驚いた様子だー。


「--捕虜を、助け出しましょう」

アリシア姫の口調を真似ながら、和哉が言うー


”困っている人がいれば、助ける”


その想いはー

異世界でも、変わらないー


「---ーー…はははっ」

ジークが笑う。


「---たかが兵士のために、我々が危険を冒す?

 ご冗談を」


ジークが、和哉の方を見るー


だが、和哉はひるまなかったー

極度の緊張の中ー

ジークを見つめるー


「兵士も、わたしたちも、同じ命です」


とー

強い決意を持って、口にするー。


ユーリスもミリアも、フェルナンデスも、他の会議出席者たちも

アリシア姫の姿をした和哉を見つめるー。


ジークが表情を歪めるー

そして、薄ら笑みを浮かべながら呟いたー


「--失礼ながら、そのような甘いやり方では

 王国を背負うことなどできませぬぞ?」


とー。


「--控えろジーク。無礼だぞ」

ユーリスが、とっさに口を挟むー。


「--いや」

宰相のローディスがさらに口を挟むー


「ジークの言うことにも一理あるー

 姫様、どうか、冷静にご判断下さい。

 たかが兵士の命ー。

 大局を見誤ってはーー」


「--救出の準備を」

和哉は、腹を立てながらそう言い返したー


”兵士だから”

”自分たちが偉いから”


その考えが、どうしても和哉には

許せなかったー


同じ、命ー


和哉の世界の考えとー

この世界の考えは違うー


そうは理解しながらも、

和哉は、”捕虜の救出”を訴えたー


「--ーーー」

ジークと宰相のローディスが、明らかに不満そうな顔をしているー。


”反姫派”

ユーリスから、聞いていた通りー

この二人は、厄介な存在なのかもしれないー


「--ところで姫様。

 顔が少し赤いようですが、調子でも悪いのですかな?」

ジークが言うー


”え”

和哉は戸惑うー


顔が赤いー

さっき、下着の付け忘れに気付いたせいだー。


「---姫様は、体調を回復されたばかり。

 まだ本調子ではないのだ」

ユーリスが助け舟を出すー。


だが、ジークは続けるー。


「--ーー先日まで行方不明になっていた間ー

 どこで、何をしていたのですかな?」

とー。


「---え」

和哉は戸惑うー


”本物のアリシア姫”は、

和哉がこの世界に来る前に”行方不明”になったのだと

ユーリスから聞いているー


どうして行方不明になったのかなど、聞いていないし、

ユーリスも知らない様子だったー


「--姫様はー」

ユーリスが再び代わりに答えようとするー


しかしー


「貴公には聞いていない!」

ジークが声を荒げたー


「-!」

ユーリスが反論しようとするのを制して、

ジークは「私は姫様に聞いているのだー」と、

和哉の方を見つめたー


「------」

和哉は背筋が凍る思いをしながらー

なんとか”無難な答え”を、探すー

頭をフル回転させながらー


「---良いではないか」

薔薇を手にした騎士団長・フェルナンデスが呟くー


「姫様は病み上がりでお疲れだー。

 こうして、美しい姫様が、無事に戻られたー。

 それだけで良いではないか。ジーク殿」


フェルナンデスの言葉に、ジークが表情を歪めるー


「同感だな。我々は、姫様を信じて、お守りするのみ」

女性騎士団長のミリアもフェルナンデスに賛同するー。


「---チッ」

ジークが舌打ちして、着席するー。


他の騎士団長たちに諭される形で、

ジークはそれ以上追求はしてこなかったー。


その後も、会議は続きー

ようやく、会議が終了したー。


「---ごめん…」

会議終了後、和哉は口を開いたー


「---…何がだ?」

ユーリスが不思議そうに言う。


「---捕虜の救出なんて…

 でもさ…俺の世界では…

 命って…すごい大事なモノでさー…

 だから…


 だから、ついジークの言葉に感情的になっちゃってさ…

 こんなんじゃ…姫の影武者、失格だよな…」


和哉が申し訳なさそうに言うと、

ユーリスは少しだけ笑ったー


「--アリシアみたいだったよ」

とー。


「え?」

和哉が驚くー


「--アリシアも、きっと、お前と同じことを言ったー。」

ユーリスが笑うー


その言葉にー

少しだけ嬉しそうに笑うー


「そっかー」

とー。


”アリシア姫”がどんな姫だったのかは分からないー

でも、捕まった兵士を見捨てることをせずー

助けに向かうー。

そんな、心優しい姫だったのだろう、と和哉は

頭の中で考えたー


そして、口を開くー


「---俺も、一緒に行けるか?」

とー。


”剣”なら使えるー

”エナジー”とやらは、使えないが、剣ならー


ユーリスは、ため息をついた。


「……そんなとこまで、アリシアと同じ反応だなんて、な」


ユーリスは言う。

”アリシア姫も、戦場に立たれていたー”と。


兵士たちを鼓舞するためー

そして、仲間たちが戦っているのに、自分だけ安全な場所に

いることなどできない、と言うアリシア姫の強い意志でー


”勇敢な姫なんだな”

和哉はそう思いながら「あ…でも、、俺は足手まといにしかならないか」と

自虐的に呟くー


そんな和哉に、ユーリスは真剣な表情で、

けれども、優しく呟いたー


「我ら王宮騎士団の役割は、

 姫様をお守りすること-

 お前のことも、全力で、守るさ。」


・・・・・・・・・・・・・


捕虜救出作戦当日まで、

和哉は、ユーリスから剣を教わったー

元々高校時代、剣道をやっていた和哉-

ユーリスもその腕前には感心していたー


そしてー

救出作戦の当日ー


レイン村ー。


アリシア姫の姿をした和哉は、

姫の戦闘用の服装で、その場所に立っていたー。

姫が使っていたという剣も携えているー。


”なんだか…戦う姫様って感じだな…”

自分の姿にドキドキしていると、

隣にいたミリアが、「どうかされましたか?」と和哉に声を掛けるー


「あ、いや、いえ…なんでもありません」

和哉はそう呟くと、

深呼吸して、レイン村の先の方を見つめるー。


「---捕虜が処刑されるという情報があったのは、この先か?」

神経質そうな騎士団長・ジークが呟く。


近くにいた隠密部隊長・カイルが、「はっ」と返事をするー。

いかにも”忍”という感じの人物だー。


「---」

ジークが周囲を見渡す。

ユーリスも同様に周囲を見渡す。


”捕虜”の姿は見当たらないー


それほど広い村ではないー。

ユーリスとジークが警戒しながら探索を続けるー。


ミリアと、フェルナンデスが和哉ー…

アリシア姫を守るようにして、周囲を警戒しているー


「---…」

和哉が心配そうにしていると

貴族風のフェルナンデスが、笑みを浮かべながら近づいてくるー


「このフェルナンデスがいる限りー

 姫様には、

 指一本触らせません。


 ご安心をー」


ナルシストオーラ全開のフェルナンデスの言葉に、

和哉は「は…はぁ…ありがとう」と、ほほ笑むー。


フェルナンデスは”中立”だと、ユーリスから聞いたー

実力は確かだが、うぬぼれる一面がある点、

平常時の仕事に若干難があり、民を見下す傾向にある、とも聞いているー。


「---!」

調査を続けていたユーリスたちが表情を歪めるー


「これは…」

ジークも神経質そうな顔を一層歪めるー


村の中央部にー

”捕虜”が串刺しにされた状態で発見されたー


「---…!」

和哉は、あまりにも無残な残骸を見て、吐き気を催すー。


「---姫様、こちらへ」

ユーリスが、和哉を気遣い、”無残な遺体”を見せないようにするー。


「---捕虜は既に処刑されたあとか…」

女性騎士団長・ミリアがそう呟くとーー

突然、鋭い目つきで、”何か”に気付き、

他の騎士団長たちに合図を送ったー


「--いる」

とー。


「--!」

ユーリス、ジーク、フェルナンデス、ミリアの4人が

警戒態勢に入るー


周囲に骸骨兵士や、ゴブリンのような魔物ー

スライムのような魔物が集まって来るー


「---愚かな…」

魔物たちの背後から”漆黒の鎧”を身に纏った騎士がやってくるー


「くそっ!罠か」

フェルナンデスが呟くー


ジークや宰相ローディスが指摘した通り-

”捕虜の処刑”は、王宮騎士団を誘いだす罠だったー。


”--罠なら、それを打ち破ればいい”

ユーリスが呟くと、ジークは不快そうな表情を浮かべながらも

他の騎士団長たちは頷いたー。


「---ふふふふふふ…ザンネンだったわね」

漆黒の騎士の背後から、もう一人、色っぽい雰囲気の女がやって来るー


「----!」

和哉はその女を見て表情を歪めたー


「---捕虜は、わたしが一人一人、み~んな、

 この手で殺しちゃった… ふふっ♡」

女が、挑発的な笑みを浮かべながら笑うー


「--み~んな、命乞いしてた。

 家族にまた会いたいって…

 死にたくないって…!


 ふふふふ…笑っちゃうー」


女が、狂気的な笑みを浮かべるー


騎士団長たちが、怒りの形相で、女を見つめるー


ユーリスが、和哉に耳打ちをするー


”あの二人は、先日、フロル村救出の際に

 初めて遭遇した帝国軍の幹部クラスだ”

とー。


”漆黒の鎧の騎士の方は、名前は分からないが、

実力だけは確かだー。”


ユーリスはそう説明すると

少しだけ表情を歪めたー


”もう一人の女はーーー”

ユーリスが戸惑いながら、和哉に説明しようとするー


「これが、亜優美ー…

 俺の大切な人」

先日ー

和哉と共に城下町を見回っていた際、

和哉が”スマホ”で見せてくれた写真ー

和哉が”大切な人”として、紹介してくれたー

”あゆみ”という女ー


ユーリスは、その”あゆみ”のことを思い出しながら

不安げに、和哉に伝えるー


「もう一人の女は、ヒルダとか名乗っている

 残虐なーー」


ーーヒルダじゃないー


和哉は、手を震わせていたー


そして、和哉は、「落ち着け!」と静止しようとする

ユーリスを無視して、前に出たー


「---亜優美!!!!」

和哉が叫ぶと、”亜優美そっくりの女”ヒルダは、

和哉の方を見つめたー


「---あゆみ???」

帝国軍の女・ヒルダが笑みを浮かべるー。


「--あらあら…お姫様じゃない…

 こんなところに出て来るなんて…

 とんだ間抜けね」

ヒルダは、アリシア姫の姿をした和哉を見て、

笑みを浮かべるー


”あれは…あれは、亜優美だ…”

和哉は思うー

”ヒルダ”と名乗っている理由は分からないー

服装も違うー


だが、あの顔はーー

あの声はー

間違いなくーーー


”俺が姫の姿だからわからないのかー?”


そう思いながらー

和哉は”なんとか亜優美と1対1になれれば…”と

考えるー


「--全員殺しなさい!」

ヒルダが叫ぶと、

魔物たちが一斉に向かってくるー


星が輝く空の下でー

王宮騎士団と魔物たちが激闘を繰り広げるー


「薔薇よー我に力をー」

”薔薇の貴公子”フェルナンデスが、

薔薇を持ちながらそう呟くと、

花吹雪のようなものが、周囲を舞い始めたー


「--魔物ども!姫様には指一本触れさせん」

女性騎士団長のミリアは

”氷の女王”の異名を持つー

剣と氷が、魔物たちを引き裂いていくー


「---くくくく…俺に挑むかー」

”深淵の毒蜘蛛”の異名を持つ騎士団長・ジークは

剣で、近づいてきた魔物を引き裂くー

魔物の数が増えて来ると、ジークは、何かを唱えてー

紫色の霧のようなものを放ちだしたー


この世界のエネルギー”エナジー”を使った戦いを

繰り広げる騎士団長たちー


「はぁっ!」

騎士団長・ユーリスは、炎を纏った剣で

漆黒の鎧を身に纏う騎士と対決しているー


そんな中ー

和哉は迷わず走り出したー

ヒルダの方に向かってー


「--姫!」

ユーリスが叫ぶー


だがー

和哉にその言葉は届かなかったー


亜優美ー!


大事な人を前にー

和哉の頭は、亜優美に対する想いでいっぱいになっていたー


ヒルダが、自分に向かってくる和哉を見て、笑みを浮かべるー


村の奥の方に去っていくヒルダー

それを追う和哉ー


やがてー

村の奥で、”ヒルダ”に追いつくと、

和哉は叫んだー


「亜優美!!!!」

とー。


立ち止って、振り返ったヒルダは

静かに笑みを浮かべたー


異世界の星空の下でー

和哉は、大切な人と、再会を果たしたー


空に、流れ星が流れるー。


そしてー

ヒルダが静かに口を開いたー



⑧へ続く


・・・・・・・・・・


コメント


今月最初の女体化X異世界長編でした~!

今月も先月と同じペース(週1~2回程度)で書いていきますので

お楽しみに~!


今日もありがとうございました!!


(Fanbox)


Files

Comments

No comments found for this post.