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女子高生の金崎 智美(かなざき さとみ)は、

いつでも前向きな、明るい性格の少女だったー。

表裏が無く、誰にでも優しく接することから、友達も多い。

授業や学校行事にも、ポジティブに体当たりしていく感じで

先生からの信頼も厚いー

ちょっとぐらい嫌なコトがあっても、次の日には

もうそのことは水に流して、昨日は昨日、今日は今日、と

考えるようなタイプだー。


そんな、智美のクラスには

”真逆”とも言える男子生徒がいたー。


彼の名は、船本 勇夫(ふなもと いさお)。

名前は勇ましい感じだが、超がつくほどネガティブな男子で、

すぐに何でも後ろ向きに考えてしまうー

”自分はダメなやつだ”と思い込んでおり、

負のオーラもすごいー。

幸い”あまりのネガティブさ”に、誰も寄り付かないからか

いじめは受けていたなかったが、

友達は少なく、授業や学校行事もネガティブに考えてしまうことから

先生たちの悩みの種にもなっている存在だったー


ポジティブな智美と

ネガティブな勇夫ー。


そんな二人は、文化祭実行委員会として活動していたー


智美は、”高校生活でたった3回しかない文化祭を

最高の思い出にしたい!”というポジティブな気持ちから

文化祭実行委員に立候補していたがー


勇夫は”誰もやる人がいなくて、くじ引きでー”

文化祭実行委員になっていたー。

この高校の文化祭実行委員は仕事や打ち合わせが多く、

当日も、文化祭を十分に楽しむ余裕がなくなってしまうことから

”人気がない”-

可愛くて明るく優しい智美が立候補したのだとしても

「智美と一緒に文化祭実行委員として働ける」-「文化祭実行委員の大変さ」という

計算をしてしまうと、0になってしまうため、

男子は誰も立候補しなかったのだー


「----う~ん…重たいね~…」

智美がとほほ、という感じで、

文化祭の看板を移動させていたー。


智美が持っている側の反対を持っているのは勇夫ー。


「う…うん」

勇夫は決して力持ちではない。


二人はいったん、階段を下りる前に看板を置いて休憩したー。


「--ふ~…船本くんは、文化祭の時、

 どこか行きたい場所ってあるの~?」

智美が、一息つきながら言うー


智美は、誰にでも話しかけるタイプで、

誰にでも優しいー

当然、”歩くネガティブオーラ”などと言われてしまっている

勇夫にも、普通に話しかける。


「--え、、あ、、うん…

 僕が行くと、迷惑かけちゃうから」

勇夫が呟くー


勇夫は、自分が、文化祭の他のクラスの出し物を訪れることで

”迷惑をかけてしまう”などと考えていてー

去年の文化祭の時も、ひっそり一人で教室で待機したり

うろうろしたりしていたー


「--迷惑?何言ってるの~?」

智美が笑うー


「--誰も迷惑だなんて思わないよ!

 船本くんだって、気になるものとかはあるんでしょ?」

智美が言うと、

「うん…まぁ…」と、勇夫は目を逸らしたー


女子にも慣れていないし、

”金崎さんみたいにポジティブにはなれないよ”と

内心で呟くー


「---も~~~

 どうしてそんなに後ろ向きになれるの~?」

呆れた様子で呟く智美ー。


「---じゃあさ、わたしが一緒に回ってあげるから、

 それなら、大丈夫でしょ?」

智美が笑うー。


智美は、誰にでも優しいー。

別に、勇夫に色目を使っているつもりもないし、

勇夫のことが異性として好き、というわけでもないー


ただー、

文化祭実行委員同士、自由になる時間帯は似ているし、

なんとなく”気になるところはあるのに、行くことができない”

勇夫のことを可哀そうだと感じたー。

憐みではなく、純粋に、それなら一緒に回ってあげれば

大丈夫じゃないかな?と、智美はそう考えたー


「ええええええええええ…!?!?」

勇夫が戸惑うー。


「い、、いいよ、、ぼ、、僕となんか回ったら

 迷惑になっちゃうし」

勇夫が慌てて智美の申し出を”拒否”するー


一緒に行動なんかしたら、智美の迷惑になってしまうー、と。


「--大丈夫。迷惑じゃないから!気にしないで」

智美が笑うー。


実行委員の仕事で、どうせ他の友達とはタイミングも合わないし、と

付け加えたー。


「---罰ゲーム??」

勇夫がボソッと呟くー


「---え?」

智美は何を言っているのか理解できずに

首をかしげるー


「--ぼ、僕と文化祭回るなんて…

 な、、何かの罰ゲームだよね?」

勇夫が目を逸らしながら言うー


「--ふぇ!?」

智美は思わず表情を歪めたー


勇夫はー

”智美が、誰かとの遊びか何かに負けて

 罰ゲームとして勇夫と文化祭を回りなさい!

 と、言われているのだ”と、考えていたー。


そうでなければ、こんな僕と一緒に

文化祭を回ろう!なんて言い出すのは

あり得ないー、と。


「--ちょ!?さすがにマイナス思考すぎでしょ!?」

智美が困り果てながら言うー。


「別に無理にとは言わないけど、

 わたしは本当に迷惑じゃないし、

 誰かに言われて罰ゲーム、とかじゃないし、

 ただ、船本くんだって、行きたい場所は

 あるみたいだから、それなら一緒に…

 って、思っただけだよ?」


智美の言葉に

勇夫は「--きっと僕と一緒に回ったら後悔しちゃうよ」と

うつむきながら言うー。


「金崎さん、いつも行事で一生懸命思い出を作ろうとしてるし、

 その思い出を僕が、、汚しちゃうよ」

勇夫は、そう呟くと、さらにー


「僕、金崎さんみたいに可愛くもないし、

 カッコよくもないし…」

見た目に対するコンプレックスまで口にし始めたー


あまりにネガティブすぎる勇夫に、

智美はため息をつくと、

「---…も~…そんなことないのにぃ~」と

少しだけさみしそうに呟いたー。


何が、勇夫をここまでネガティブにしてしまったのだろうかー。


そんな風に思いながら、

智美は話を切り替える。


勇夫には勇夫の考えがあるー

あまり嫌がっていることを強要するのは、良くないー


「---じゃ、そろそろ、運ぼっか」

智美が、立ち上がると、勇夫も頷いたー


”どうして、こんなに色々なことをネガティブに

 考えられるんだろう…”

智美は不思議に思うー


同時に、勇夫も

”金崎さんみたく前向きに考えるのなんて無理だよ…”

と、お互い、そんな風なことを思いながら

文化祭の看板を二人で慎重に運ぶー


階段の中間ぐらいに差し掛かったあたりでーー


「---あっ!」

勇夫が、バランスを崩したー


「えっ!?!?」


バランスを崩した勇夫に引っ張られる形でー

智美もバランスを崩してしまいー

そのまま二人は、重たい看板と共に、

階段の下のほうまで、転落してしまうのだったー…


・・・・・・・・・・・・


「-----!!!」

勇夫が目を覚ますー


見覚えのある天井ー。


(保健室…)

勇夫はそう思ったー

よく貧血を起こす勇夫は、何度かこの保健室で

お世話になったことがあるー。


「--いたたたた…」

打撲だろうか、腕と足が痛いし、

やたらと足のあたりがスースーとするー。


首のあたりに何かが当たるしー


「---えっ!?」

勇夫は、自分がスカートを履いていることに気づくー


「えっ!?!?!?」

勇夫が慌てて、視線をずらすと、

そこにはー膨らんだ胸があったー


「--!?!?!?!?!?」

女性慣れしていない勇夫は、その胸の膨らみを

見ただけで、顔を真っ赤にしてしまうー


”いったい、これは…!?”


「---あ、金崎さん、目が覚めたのね」


「-----」

勇夫は、返事をしなかったー。


保健室の先生が嫌いなわけではない。

保健室の先生に反抗的な態度をとっているわけではない。


でも、返事をしなかったー


何故なら、保健室の先生は、

”金崎さん”

つまり、金崎 智美を呼んでいるからだー。


だから、返事をしないのは当然だったー


「-かーなーざーきさん!」

保健室の先生が勇夫の顔を覗き込んで、名前を呼ぶー


「--え?」

勇夫は戸惑う。


「--あ、、あの…」

勇夫は、ここで初めて自分の声が”女”になっていることに気づいたー


「--!?」

さっきも、声は出したが、意識を取り戻したばかりで

あまり気にしていなかったー


がー、

確かに今、自分の口から、女の子のー

それも”金崎さん”の声が出た気がするー


「だいじょうぶ?」

保健室の先生が”様子がおかしい”と言わんばかりに

心配そうに勇夫の方に見るー


「--あ、、あの、、先生…僕…」

やっぱりー

自分の口から、女の子の声がー

いや、金崎さんの声がー


そんな風に思っているとーー


「--えええええええええええ!?!?」

と、仕切りの隣から、声が聞こえたー


男子の声ー

いや、男子の声、、というよりかは、

勇夫が”よく知る”声だったー。


隣から聞こえてきたのはー

紛れもないー”自分の声”


「----えっ!?うそっ!?」

”自分”が、勇夫のいるベットの方に駆け寄ってきたー


「---え…!?」

勇夫が驚くー


目の前にも、”勇夫”がいるー


いやー

目の前に”自分”がいる、ということはーー


勇夫は”恐るべき現状”を理解したー


髪が長くー

胸があってーー

女の子の声が出るー。

保健室の先生が、自分のことを”金崎さん”と呼んだー


そして、目の前には”僕”がいるー


勇夫は、状況を、理解したー


「僕たち…いれかわ… むぐぅ!?!?」


”僕たち、入れ替わってる!?”と

入れ替わり定番のセリフを叫ぼうとしたがー

勇夫の姿をした智美に口をふさがれてしまうー


「むぐぐぐぐぐぐぐ!」

苦しそうにもがくのはーー

智美ーーの姿をした勇夫ー


そう、二人は階段から転落したときに

入れ替わってしまったのだー


「え!?え!?」

保健室の先生から見れば、

勇夫が、智美の口をふさいだように見えるー


中身が入れ替わっているなんて、分かるはずもないー


「---ちょ、、!!!むぐぐぐ」

智美(中身・勇夫)が、もがくー


勇夫(中身・智美)が、笑いながら、

「え~、えーっと、き、急に元気が出てきちゃったんでー…

 こ、このまま失礼しまーす!」

と、智美(勇夫)を引きずるようにして、

そのまま慌てて保健室から立ち去っていくー。


「---な、、なぁにあれ?」


勇夫は普段、大人しい生徒だったはずー

それが急にあんなに明るくなってー


保健室の先生は戸惑うことしかできなかったー


・・・・・・・・・・・・・・・・・


あまり人が使わない空き教室に連れてこられた

智美の姿をした勇夫ー


「ちょ、、ちょ…!?こ、、これ、、どういうこと…」

智美(勇夫)が、いつもとはまるで別人のような

オドオドした表情を浮かべながら言うー


「わ、、わたしが聞きたいけど…

 でも、まぁ…わたしたち、入れ替わっちゃったみたいだね!」

勇夫(智美)が、いつもじゃあり得ないような

笑みを浮かべて、そう呟くー


「--ご、、ご、、ごめんなさい…!

 金崎さんの身体、、す、、すぐに返すから…ごめんなさいごめんなさい」

智美になった勇夫がネガティブオーラ全開で謝り出すー


「え、、な、なんで謝るの~?

 入れ替わっちゃったの、別に船本くんのせいじゃないでしょ?」

勇夫(智美)が、ハキハキとした口調でしゃべる。


「で、、でもぉ~…なんか悪いよ~」

智美(勇夫)がいつもと真逆のモジモジした雰囲気でしゃべるー。


勇夫になった智美は、

保健室の先生の前で”入れ替わり”とか言うと、頭おかしくなったと

思われるからここに連れ出した、と説明したー


そしてー


「---でもさ、いいチャンスだと思わない?」

勇夫(智美)が笑うー


「え???」

智美(勇夫)がオドオドしながら言うー


「僕、金崎さんみたいに可愛くもないし、

 カッコよくもないし…」


階段から転落する前に言っていた言葉を

勇夫(智美)が口にしたー


そしてー


「-ほら、わたしの身体になったからー

 ネガティブ卒業のチャンスだよ!」


と、勇夫(智美)は嬉しそうにほほ笑んだー


「--どうして、そんなに前向きに考えられるのさ…」

智美(勇夫)は、しょんぼりした様子で、

小さくそう呟いたー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


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ネガティブ男子とポジティブ女子の入れ替わり…!

果たして、どうなってしまうのでしょうか~?

続きはまた後日デス!





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