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「---俺は、お前たちを応援するぜ」


和哉が、亜優美と付き合い始めたことを、

幼馴染でもあり、腐れ縁の神埼省吾に伝えた時、

省吾が、最初に言った言葉は、それだったー。


「--はは、ありがとな」

和哉が照れ臭そうに言うー。

省吾は「あ~あ、亜優美ちゃんは和哉を選んだか~」と

冗談交じりに笑うー


和哉と亜優美、省吾は3人とも小さいころからの

知り合いで、幼馴染の間柄だー。

省吾は今でも、和哉・亜優美、どちらとも親しいー。


「--なんだよ?嫉妬してるのか?」

和哉が苦笑いしながら言うと、

省吾は「いや」と、笑ったー


「次は”結婚”だな!」

省吾の言葉に、

和哉は「いや、気が早すぎだろ!」と突っ込むー


省吾は、星空を見つめると、

真剣な表情で和哉の方を見たー


「和哉ーー

 どんな時でもーー

 亜優美ちゃんが困っていたらー

 ちゃんと、助けてやれよ?」


省吾が”俺との約束だ”と、少しだけ笑いながら言うー


「--はは、言われなくても、そうするさ。


 でもー

 約束するー

 亜優美が困っていたらー

 俺は、どこでも駆けつけるー」


和哉のその言葉に、省吾は安心した様子で頷き、

ニヤッと笑って冗談を口にしたー


「--約束破ったら、俺が亜優美ちゃんを貰うからな~?」

とー。 


・・・・・・・・・・・・・・・・


★主要登場人物★


藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫

異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。


高梨 亜優美(たかなし あゆみ)

和哉の恋人。自ら命を絶とうとしていたところを、和哉が救い…?


神埼 省吾(かんざき しょうご)

和哉・亜優美の共通の友人。事故直前、亜優美と会話していた。


ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア

突如として現れて、女体化した和哉を魔物から救った王宮騎士団長たち。


ルベール

アリシア姫の世話係。


ラナ

アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。


エックス

自らを死神と語る謎の生命体


※登場人物詳細

(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に

 プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、

 お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)

※ネタバレは基本ナシですが、これから出る主要人物も少し載ってますので注意デス!

fanbox post: creator/29593080/post/1260447

・・・・・・・・・・・・・・


「はぁ…はぁ…動きにくいな…この身体ー」

息切れしながら、和哉は森の中を進んでいたー


この世界に飛ばされてきた和哉が、

最初に気づいた場所は、この先だったー。


「和哉ーー

 どんな時でもーー

 亜優美ちゃんが困っていたらー

 ちゃんと、助けてやれよ?」


親友・省吾との約束を思い出すー


「ーーー遠く離れていても、この星空の向こうには、

 みんながいるー」


木々の隙間から見える星空を見つめながら和哉は、思うー。


亜優美ーー

今、行くからー。


早いところ、この世界から、元の世界に戻ってー

亜優美の力になりたいー


「ーーおいおい、どこに行くつもりだ?」

”死神”ことエックスが、小さな体を浮遊させながら

和哉の横に現れたー


「俺の勝手だろ。元の世界に戻る」

和哉が言うー


「どうやって戻るのか、分かりもしないのに、か?」

エックスがからかうようにして言うー


「うるさい!戻るったら戻るんだ!

 俺は…俺は、こんなところで油を売ってる場合じゃないんだよ」

和哉がそう叫ぶとー


”ガサッ”と

近くの木々が動いたー


「---あらら」

エックスが冷やかすようにして呟くと、そのまま姿を消すー


そしてー

代わりに”招かざる客”が、

近くの木々から姿を現したー


ゴツイ風貌の男たちー

見るからに”悪党”であると、和哉は察知するー


「ほぉ、こいつは、最高のごちそうじゃねぇか」

男たちのリーダーらしき人物は笑ったー


「---だ、、だ、、誰だ!」

和哉が可愛い声で叫ぶと、

男は名乗ったー


「盗賊頭・ドラス…

 イヤでも俺様の名を、忘れられなくしてやるぜ」

盗賊頭・ドラスは、そう言い放つと、

和哉に襲い掛かったー


「-ーーくっ!寄るな!」

和哉は、盗賊のひとりを蹴り飛ばし、

もう一人をグーで殴りつけるー


”盗賊”---

和哉の日常に”盗賊”など、縁は無かったー


当たり前だー

普通に暮らしていれば、今の世の中、

盗賊と遭遇することなど、ほとんどないー


だが、この世界は”異世界”

盗賊も当たり前のように存在するー


「--ひひひひひっ!女のくせに、やるじゃねぇか!」

盗賊頭・ドラスが笑うー。


「離せ!離せよ!」

和哉はドラスの手を振りほどこうとするー


しかしー


「--!!」

和哉が表情を歪めたー


「へへへ、俺様に力で敵うわけねぇだろ?」


”くそっ!…力が…”

和哉はー

”女体化”しているー。

だからー力が思うように出せないー


男であった和哉と、

今のアリシア姫そっくりの和哉ではー


決定的に”筋力”が違うー


「くそっ!!おい!!や、、やめろ!」

和哉が可愛い声で叫ぶー


盗賊たちが、和哉を押さえつけて、

盗賊頭のドラスが和哉の顎を掴むー


「綺麗な顔して…ずいぶん気が強いなぁ…?へへへ」

盗賊頭・ドラスは”気の強い女は、好きだぜ”と笑うと、

和哉にキスをしたー


「--や、、やめっ…」

和哉は悲鳴を上げるー


こんな小汚い男にー

キスをされるなんてー

女体化しているとは言え、自分は男なのにーー


”気持ち悪い”


生理的な嫌悪感が激しく膨らむー。


「---へへへへ…いいモノ持ってんじゃねぇかぁ~」

盗賊頭・ドラスが胸を触りながら、ゲラゲラ笑うー


和哉は、思わず甘い声を出してしまうー


「いや、、やめろ…やめてくれぇぇぇ…」

和哉が半分喘ぎながら叫ぶー。


ドラスは、部下の盗賊たちに、”好き放題していいぜ”と呟くと、

近くの木に寄りかかって、

和哉の持っていた鞄を探り出すー。


「--なんだこれは?」

スマホを手にして首をかしげるドラスー


和哉が”元の世界”から持ち込んだ鞄ー。

この世界に転生したときに、共に鞄もこの世界に

転生してしまったー


「---こいつ、訳分かんねぇものばかりもってやがる。

 金になりそうだぜ」


笑いながら、ドラスはそう呟くとー


「---!!!!!!!!!!!」

和哉は表情を歪めたー


盗賊頭・ドラスがーー

”亜優美からもらった大事な腕時計”を鞄から取り出したーー


「なんだぁ?これは?」


ドラスは、和哉の方を見るー

和哉の表情を見て”大事なモノ”だと判断したドラスは、

腕時計を土の上に放り投げたー


和哉はーーー

悟ったーー

”こいつは、亜優美からもらった腕時計を踏みつぶすつもりだー”


とー


「--やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

大声で叫ぶ和哉ー


ニヤリと笑みを浮かべて、土の上に放り投げた腕時計を

踏みつぶそうとするドラスー


その時ー


ゴオオオオオオオオオオオオオオ…


ー突然、突風が吹き荒れたー


「--なんだ?!」

ドラスが周囲を見渡すー


風が、刃となって、盗賊たちに襲い掛かるー


「ぐおおおおおおおあっぁぁ!?!?」

盗賊たちが風に切り裂かれて苦しそうに、倒れていくー


盗賊頭・ドラスもその身を引き裂かれー

表情を歪めながら叫んだー


「誰だ!」

とー。


森の闇の中から出てきたのはー

姫の世話役・ルベールだったー


「じ、じいさん!?」

腕時計を拾いながら、

和哉が思わず叫ぶー


「やれやれ…

 老いぼれを戦わせるとはーー

 困ったものですな」


そう呟きながら、ルベールは優しく笑みを浮かべたー


騎士団長・ユーリスが、フロル村救出に出撃している以上ー

和哉の事情を知る人間は、ルベールとラナのみー。

だからールベールが助けに来るしかなかったー。


和哉から視線を逸らすと、

ルベールはキッと、目つきを鋭くして、盗賊頭・ドラスを見つめたー


「--ー姫様に乱暴を働くとはー

 その罪、死を持って償っていただきますぞ…」

ルベールは、そう言うと、”風”を操りながら、

盗賊頭・ドラスを睨んだー


「ひ、、姫様…!?まさか、そいつは、アリシア姫…?」

盗賊頭・ドラスが少しだけ戸惑うー。


「風…」

和哉はルベールの方を見るー


王宮でルベールが言っていたことを思い出すー


”「お恥ずかしながら、”風”を使った攻撃を少々ー。

 ですが、私ももう歳ですし、披露することはないでしょうな。」”


「---じいさん」

”俺のために”身を挺して助けに来てくれたのかー。


そんな風に思いながら、和哉は「じいさん!無理すんな!」と叫ぶー。


「ーーー約束したはずですぞ?

 あなた様の命も、願いも、全力でお守りするとー」


ルベールはそう言うと、ドラスの方を見たー


「は、、はは……おもしれぇ」

ドラスは”思った以上の獲物”に笑みを浮かべー

持っていた斧のようなものをルベールに向けたー


そこからはーー

和哉にとって”夢”のように思える光景だったー


盗賊頭ドラスが、ルベールに向かって突進して斧を振るうー


だがー

ルベールの身体から、暴風が吹き荒れてー

斧はルベールには命中せず、

ドラスは自分が飛ばされないように、腕で風を防ぐー


ルベールは、その隙を逃さずにー

呪文のようなものを唱えるとー

風で作られた刃のようなものを大量にドラスの左右から放つー


ドラスは飛び跳ねてそれを回避し、ルベールと距離を取るー。


「お前たち!」と叫ぶとー

盗賊たちが、ルベールとーー

和哉の方に向かうー


和哉が「ひっ!?」と逃げ腰になるー


しかし、ルベールが再度呪文を唱えると、

再び暴風が発生しー

盗賊たちを一掃したーー


「貴様ぁ!!!!!!」

態勢を崩していたドラスが怒りの形相で、

隠し持っていた小刀を持ち、ルベールに突進するー


がー

ルベールは、さらに風を発生させて

ドラスのバランスを崩しー

追撃の”風の刃”を飛ばすと、ドラスの身体をズタズタに引き裂いたー


「---す、、すげぇ…」

和哉にとって、あっという間の出来事ー


と、言う他なかったー。


膝をついて戦闘不能になるドラスー

ルベールが、盗賊のひとりが持っていた剣をドラスに向けるー


「ーーーひっ、お助けを…」

ドラスが悲鳴を上げるー。


「---己の罪を、地獄で償いなされ」

ルベールが容赦なく、ドラスを斬り捨てようとしたー


しかしー


「---ま、、待ってくれ!」

和哉が叫ぶー


「---?」

ルベールが和哉の方を見るー


「そ、、その人は、もう…もう降参してるんだし…

 い、、命までは…!」


和哉はそう叫んだー


”人が死ぬ”

そんなところは、見たことがないー。


だから、耐えられなかったー


「---ど、どういうことですかな?」

ルベールが”理解不能”と言わんばかりに首をかしげるー


「--そ、その人は、もう降参してる…

 だから、、命までは取らなくてもいいと思うんだ…!」

和哉は動揺しながらそう言うと、

ルベールは

「やらなきゃ、やられるのですぞ?」と、戸惑いながら言うー


「---違う!」

和哉は叫んだー


ドラスの方を見て、和哉は、少しだけ戸惑いながらも、

ルベールに向かって叫ぶー


「憎しみ合って、命を奪い合うー

 そんなんじゃ、いつまで経っても争いは終わらないんだ…!」


和哉は首を振るー


憎しみは、何も生まないー


歴史が、そう証明しているー

憎しみ合い、戦争が起きー

終わりなき戦いが始まるー


この世界もー

このままじゃ、いつまでも、争いが終わらないー


人が人を殺しー

憎しみが生まれー

また、人が人を殺すー


負の連鎖が起きるー


だからー


「---そんなに怖がって震えているのにー

 命を奪うなんて…

 間違ってる」


和哉が、可愛らしい声でそう呟くー


盗賊頭・ドラスが「あんた…」と震えながら

和哉の方を見るー


「------」

ルベールは、和哉の方をじっと見つめたあとに呟くー


「-甘いですな」

とー。


「----」

和哉が表情を暗くするー


だが、ルベールは少しだけ笑ったー


「甘いー

 でもーー

 何の迷いもなく、そんな風に言えるーー


 きっと、あなた様の世界はーー

 素晴らしい世界なのでしょうな」


ルベールはそう言うと、剣を下したー


「---姫様への恩を、忘れるでないぞ」

ドラスに向かって、そう告げるー


「--は、、はい……すみませんでした」

ドラスは慌てて森の奥に消えていくー


それを見届けると、ルベールは和哉の方を見た


「---……どうして、こんな危険な真似を…?」

ルベールの言葉に、和哉は「ごめん…」と頭を下げるー


「--俺……亜優美が心配で…

 早く、元の世界に戻りたくて…」

和哉が、少しだけ涙ぐんで言うー


女体化したからだろうかーー

目から涙が溢れて来るー


「--いきなり知らない世界に飛ばされて

 いきなり姫様の姿になってーー…

 本当に、不安だったことでしょうな…」

ルベールが、和哉の頭を優しく撫でるー。


和哉は「---俺、、怖いんだ…」と、

いきなり異世界に飛ばされた不安や、

亜優美の安否の不安、

女体化した不安…

全ての想いを口にしたー


「---」

ルベールは黙って、和哉の不安な思いを聞き、

それを、受け止めてくれたー


その上で、ルベールは、配慮が足りなかったことを、謝罪したー。


”別の世界から、飛ばされてきた人間”を見るのも

”女体化した人間”を見るのも

初めてで、こちらとしても戸惑っているのだ、とー。


そして、ルベールは付け加えた。


「ですが、我々が、あなた様に姫様の代わりを…と

 お願いしているのは、あなた様のためでもあるのですぞ…」

ルベールは言うー


この世界で”姫”の姿になっているー

と、いうことは”危険”なのだとー。


姫を狙う人間はたくさんいるー

皇帝ゼロ率いる「闇の帝国」はもちろん、

さっきのような盗賊もいれば、王国内にも宰相ローディスや騎士団長のジークなど

不穏な動きをするものがいるー


王宮から離れれば、

たくさんのならず者に狙われることになり、

あっという間に和哉は殺されてしまうー、と。


とは言え、王宮内で”姫の姿をした別人です”なんて言えば、

宰相ローディスや、ジークが何をするか分からないし、

騎士団長のミリアやフェルナンデスの動きも、分からないー


和哉の安全のことも考えた上で、一番、”安全”なのは

”和哉がアリシア姫の代わりとして振舞う”

ことなのだと、ルベールは説明した。


「--あなた様が、姫様の代わりとして振舞ってくだされば

 王宮の兵士たちは、全力であなた様を守ります。

 もちろん、私とユーリス殿も、近くであなたを守り、

 協力することができるー」


ルベールの言葉に、和哉は戸惑う


「ひ、、姫って…そんなに命を狙われたりするものなのか!?」

とー。


「--…”姫”という立場はー

 愛される存在であり、憎まれる存在であるー…


 残念ながら、それが真実なのです」


ルベールはそう言うと、

「命を狙われる、などと言えば、あなた様が不安を感じるだろうから、

 と、ユーリス殿から口留めされてたのですが…

 逆に、不安にさせてしまったようですな…


 少なくとも、私とユーリス殿は、あなたのことをちゃんと

 考えておりますー。」


「---じいさん」

和哉は戸惑うー


確かに”この姿”で、そこら中を歩くのはー

和哉のいた世界で言えば、大物政治家が身辺警護もなしに

その辺をほっつき歩いたりするようなことなのかもしれないー。


ルベールが「王宮に…戻ってくれますかな?」と呟くー


和哉は、少しだけ考えた後に、静かに頷いたー


・・・・・・・・


森を歩きながら、ルベールは言う。


「和哉殿の世界は、どのような世界なのでしょうな?」

とー。


和哉は、”俺の住んでいた国では、命の奪い合いなんてなくて、

大体は、平和に暮らしている”と、呟いたー。


そして、和哉は、ハッとして、鞄からスマホを取り出したー


立ち止るルベール。

スマホに保存されている”写真”をルベールに見せるー


彼女の亜優美や、親友の省吾もそこには移っているー


遊園地ー

映画館ー

街並みの景色ー

誕生日パーティ


色々な写真を、和哉はルベールに見せたー


「----」

ルベールは驚きながらも、ほほ笑んだー


「--争いのない世界…

 いつか、私もそんな世界に行ってみたいものですな」

ルベールの言葉に、和哉は

「じいさんが、俺の世界に来たら、俺がじいさんを案内するよ」

と、呟くー


”ま、俺の世界にくる方法があればだけど”と、付け加えて笑う和哉ー


ルベールは「楽しみにしてますぞ」と言うと、

真剣な表情に戻り、語り出す。


「あなた様が元の世界に戻る方法ー

 そして、この世界に飛ばされてきた原因ー

 いろいろと調べていたのですが、

 どうやら、”何らかの呪術”が関係しているようですなー。


 ”エナジー”で、そういう術を使う者がいた、と

 古文書に記されておりましたー」


エナジーとは、この世界のエネルギーの源。

王宮の照明などの電力にもなっているほか、

ルベールが使ったような魔法の源にもなっているー


「---毎晩、書庫に行っていたのって…」

和哉が言うと、ルベールは「あなた様が元の世界に戻る方法を

調べておりました」と笑ったー


「--じいさん…」

和哉は立ち止ると、頭を下げたー


「口うるさいじいさんとか言って、ごめんー」

とー。


ルベールがほほ笑んで、口を開こうとしたその時だったー


「---!」

ルベールがとっさに、和哉を手で押し飛ばすー


「-!?」

和哉が慌ててルベールの方を見ると、

弓矢が飛んで来ていたー


「--はははははははは!クソどもがぁ!」

崖の上からー

盗賊頭のドラスと、その部下たちが

弓を放っているー


ルベールが呪文を唱えて、風のバリアのようなものを張るー


迎撃しようとするルベールー。


だが、”エナジーが不足したのか”

それとも”盗賊の人数が先ほどよりも多く、形勢不利”と

判断したのか、ルベールは、迎撃をやめて、

「--逃げますぞ!」と叫んだー


ルベールは”戦えない和哉を無傷で守り、この人数を相手に

することはできない”と判断したのだったー


大量の矢の雨の中、ルベールが、和哉をかばうようにして、

共に走るー


「はははははははは!!!!はははははは!」

盗賊頭のドラスは追ってはこなかったー


森の中を駆け巡りー


ようやく安全な場所にたどり着いたところでーー


ルベールが膝をついたー


「--…はぁ…はぁ…じいさん…さすがに走り疲れ…」

和哉はそこまで呟いて表情を歪めたー


ルベールから、血が垂れ流れているー


「--え…?ちょ…?お、、おい!」

和哉が駆け寄るー


「……老いとは怖いものですな」

そう呟くルベールの背中からは、血が流れているー


盗賊たちが放った弓矢から、和哉を守るため、

ルベールは盾になりながら走っていたのだったー


「----お、、おい!?じいさん!?」


土の上に、仰向けになったルベールが呟くー


「--もう、王宮はすぐ側です…

 早く、行きなされ…」

荒い息をしながら、そう言うルベールに、


「そ、、そんなこと…

 ま、、待ってろ!今、王宮に助けを呼びに行くからー」


和哉が走って行こうとすると、

ルベールが和哉を呼び止めたー


「---和哉殿の…その気持ちだけで、十分ですー

 もう、私は助かりません」


”助からない”

和哉の目から見ても、それは明らかだったー。


「--で、、でも…どうして…どうして俺なんかのために」

和哉が悲しそうに言うと、

ルベールは呟いたー


「あなた様の命も、願いも、全力でお守りするとー

 約束しましたからな…」


とー。


弱っていくルベール。

その姿が、”小さいころ死んだ祖父”と重なるー


「ま、、待ってくれよ!

 約束、守れてねぇよ!!

 俺の願いは、元の世界に戻ることだから…

 まだ、、まだ守れてねぇよ!」


和哉が悲しそうに叫ぶと、

ルベールは、悲しそうに、苦しみながらほほ笑んだー


「俺のせいで…俺のせいで、、こんな…!」

和哉が涙を流しながら言うー


和哉が”盗賊頭・ドラスの命を助けたりしたから”--


「--じいさんが正しかったよ…

 俺が甘かった…

 ごめん…本当に…本当にごめん…」


和哉が謝罪を繰り返すと、

ルベールは和哉の方を見たー


「---確かに、あなたは甘いー

 でも……あなた様は、そのままで、いいのです…


 その優しさを忘れては…なりませんぞ…


 それにー

 きっと、本物の姫様も、同じことを言ったでしょうな…


 まるで、姫様に言われているような気がしてー

 だから…あの盗賊を見逃したのです」


ルベールが静かに呟くー


「じいさん…」

和哉が悲しそうに呟くー


「--どうか…王国を…どうか……姫様の代わりを…」

ルベールが苦しみながらも、

王国の未来を案じ、和哉に願いの言葉を口にするー


弱っていくルベールを見つめながら和哉は思うー


”もう、あの時のように後悔はしたくないからー”


「--おじいちゃんなんて、嫌いだ!

 約束したのに…!約束したのに!!」


「ーーーごめんな…和哉」


「--うそつきは泥棒のはじまりっておじいちゃん言ってたもん!

 ドロボウ!!!」


子供の頃ー

”約束を守れず”死にゆく祖父に、

酷い言葉を浴びせてしまったー


あの時の祖父の顔は、今でも忘れられないー


とても、悲しそうな顔ー


「ーやっぱり、じいさんは苦手だな」

和哉は小声でそう呟くー


でもー

今度はーーー

後悔しないようにー


旅立つ大切な人をー

少しでも安心させてあげられるように


「---じいさん、分かったよ」

和哉は、ルベールの手を握るー


「--姫様の代わり、やる。やるよ。

 代わりをやりながら、俺は元の世界に戻る方法を探すー


 ついでに、王国のことも、俺にできることなら

 力になるからー


 だからーー」


和哉は、力強く、そして優しくー

ルベールに伝えるー


「だから、安心してー」


和哉の言葉に、

弱り切っていたルベールは、安心した様子でほほ笑んだー


「---よろしく、お頼みします…」

ルベールは、それだけ言うと、

安らかな表情を浮かべて、

そのまま、眠りについたー


穏やかな死に顔を浮かべているルベールを見て、

和哉は、目に涙を浮かべたー


この世界の人間は”人の死”に慣れているのかもしれないー


でも、自分は違うー


和哉は、動かなくなったルベールに手を合わせると、

「--ーーありがとう」と、静かに呟いて、

その場を後にしたー


”じいさんー

 約束は、守るからー

 どこかで見守っていてくれよ…”


新たな、決意を胸にー

和哉は立ち上がるー


「---!」

木々が揺れるー


「---ルベール殿…!」

ルベールが放った伝令からの知らせを受け、

駆けつけた騎士団長・ユーリスが、

ルベールの遺体を見て驚くー


「--じいさん…いや、ルベールさんは…」

和哉は、駆けつけたユーリスに、

起きた出来事を隠さず、全て語ったー。


⑥へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


異世界に飛ばされて

女体化してしまった和哉は、

異世界の姫の影武者を引き受ける決意をしました~!


本番(?)スタートの⑥もお楽しみに~!

(Fanbox)


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