<女体化>異世界の星空⑤~約束~ (Pixiv Fanbox)
Content
「---俺は、お前たちを応援するぜ」
和哉が、亜優美と付き合い始めたことを、
幼馴染でもあり、腐れ縁の神埼省吾に伝えた時、
省吾が、最初に言った言葉は、それだったー。
「--はは、ありがとな」
和哉が照れ臭そうに言うー。
省吾は「あ~あ、亜優美ちゃんは和哉を選んだか~」と
冗談交じりに笑うー
和哉と亜優美、省吾は3人とも小さいころからの
知り合いで、幼馴染の間柄だー。
省吾は今でも、和哉・亜優美、どちらとも親しいー。
「--なんだよ?嫉妬してるのか?」
和哉が苦笑いしながら言うと、
省吾は「いや」と、笑ったー
「次は”結婚”だな!」
省吾の言葉に、
和哉は「いや、気が早すぎだろ!」と突っ込むー
省吾は、星空を見つめると、
真剣な表情で和哉の方を見たー
「和哉ーー
どんな時でもーー
亜優美ちゃんが困っていたらー
ちゃんと、助けてやれよ?」
省吾が”俺との約束だ”と、少しだけ笑いながら言うー
「--はは、言われなくても、そうするさ。
でもー
約束するー
亜優美が困っていたらー
俺は、どこでも駆けつけるー」
和哉のその言葉に、省吾は安心した様子で頷き、
ニヤッと笑って冗談を口にしたー
「--約束破ったら、俺が亜優美ちゃんを貰うからな~?」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
★主要登場人物★
藤枝 和哉(ふじえだ かずや)/アリシア姫
異世界に転生後、女体化。行方不明のアリシア姫と間違えられてしまうことに…。
高梨 亜優美(たかなし あゆみ)
和哉の恋人。自ら命を絶とうとしていたところを、和哉が救い…?
神埼 省吾(かんざき しょうご)
和哉・亜優美の共通の友人。事故直前、亜優美と会話していた。
ユーリス/ジーク/フェルナンデス/ミリア
突如として現れて、女体化した和哉を魔物から救った王宮騎士団長たち。
ルベール
アリシア姫の世話係。
ラナ
アリシア姫の侍女。和哉に対しては辛辣な接し方をする。
エックス
自らを死神と語る謎の生命体
※登場人物詳細
(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に
プランご加入(ありがとうございます★☆!)済みですので、
お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)
※ネタバレは基本ナシですが、これから出る主要人物も少し載ってますので注意デス!
fanbox post: creator/29593080/post/1260447
・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ…はぁ…動きにくいな…この身体ー」
息切れしながら、和哉は森の中を進んでいたー
この世界に飛ばされてきた和哉が、
最初に気づいた場所は、この先だったー。
「和哉ーー
どんな時でもーー
亜優美ちゃんが困っていたらー
ちゃんと、助けてやれよ?」
親友・省吾との約束を思い出すー
「ーーー遠く離れていても、この星空の向こうには、
みんながいるー」
木々の隙間から見える星空を見つめながら和哉は、思うー。
亜優美ーー
今、行くからー。
早いところ、この世界から、元の世界に戻ってー
亜優美の力になりたいー
「ーーおいおい、どこに行くつもりだ?」
”死神”ことエックスが、小さな体を浮遊させながら
和哉の横に現れたー
「俺の勝手だろ。元の世界に戻る」
和哉が言うー
「どうやって戻るのか、分かりもしないのに、か?」
エックスがからかうようにして言うー
「うるさい!戻るったら戻るんだ!
俺は…俺は、こんなところで油を売ってる場合じゃないんだよ」
和哉がそう叫ぶとー
”ガサッ”と
近くの木々が動いたー
「---あらら」
エックスが冷やかすようにして呟くと、そのまま姿を消すー
そしてー
代わりに”招かざる客”が、
近くの木々から姿を現したー
ゴツイ風貌の男たちー
見るからに”悪党”であると、和哉は察知するー
「ほぉ、こいつは、最高のごちそうじゃねぇか」
男たちのリーダーらしき人物は笑ったー
「---だ、、だ、、誰だ!」
和哉が可愛い声で叫ぶと、
男は名乗ったー
「盗賊頭・ドラス…
イヤでも俺様の名を、忘れられなくしてやるぜ」
盗賊頭・ドラスは、そう言い放つと、
和哉に襲い掛かったー
「-ーーくっ!寄るな!」
和哉は、盗賊のひとりを蹴り飛ばし、
もう一人をグーで殴りつけるー
”盗賊”---
和哉の日常に”盗賊”など、縁は無かったー
当たり前だー
普通に暮らしていれば、今の世の中、
盗賊と遭遇することなど、ほとんどないー
だが、この世界は”異世界”
盗賊も当たり前のように存在するー
「--ひひひひひっ!女のくせに、やるじゃねぇか!」
盗賊頭・ドラスが笑うー。
「離せ!離せよ!」
和哉はドラスの手を振りほどこうとするー
しかしー
「--!!」
和哉が表情を歪めたー
「へへへ、俺様に力で敵うわけねぇだろ?」
”くそっ!…力が…”
和哉はー
”女体化”しているー。
だからー力が思うように出せないー
男であった和哉と、
今のアリシア姫そっくりの和哉ではー
決定的に”筋力”が違うー
「くそっ!!おい!!や、、やめろ!」
和哉が可愛い声で叫ぶー
盗賊たちが、和哉を押さえつけて、
盗賊頭のドラスが和哉の顎を掴むー
「綺麗な顔して…ずいぶん気が強いなぁ…?へへへ」
盗賊頭・ドラスは”気の強い女は、好きだぜ”と笑うと、
和哉にキスをしたー
「--や、、やめっ…」
和哉は悲鳴を上げるー
こんな小汚い男にー
キスをされるなんてー
女体化しているとは言え、自分は男なのにーー
”気持ち悪い”
生理的な嫌悪感が激しく膨らむー。
「---へへへへ…いいモノ持ってんじゃねぇかぁ~」
盗賊頭・ドラスが胸を触りながら、ゲラゲラ笑うー
和哉は、思わず甘い声を出してしまうー
「いや、、やめろ…やめてくれぇぇぇ…」
和哉が半分喘ぎながら叫ぶー。
ドラスは、部下の盗賊たちに、”好き放題していいぜ”と呟くと、
近くの木に寄りかかって、
和哉の持っていた鞄を探り出すー。
「--なんだこれは?」
スマホを手にして首をかしげるドラスー
和哉が”元の世界”から持ち込んだ鞄ー。
この世界に転生したときに、共に鞄もこの世界に
転生してしまったー
「---こいつ、訳分かんねぇものばかりもってやがる。
金になりそうだぜ」
笑いながら、ドラスはそう呟くとー
「---!!!!!!!!!!!」
和哉は表情を歪めたー
盗賊頭・ドラスがーー
”亜優美からもらった大事な腕時計”を鞄から取り出したーー
「なんだぁ?これは?」
ドラスは、和哉の方を見るー
和哉の表情を見て”大事なモノ”だと判断したドラスは、
腕時計を土の上に放り投げたー
和哉はーーー
悟ったーー
”こいつは、亜優美からもらった腕時計を踏みつぶすつもりだー”
とー
「--やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
大声で叫ぶ和哉ー
ニヤリと笑みを浮かべて、土の上に放り投げた腕時計を
踏みつぶそうとするドラスー
その時ー
ゴオオオオオオオオオオオオオオ…
ー突然、突風が吹き荒れたー
「--なんだ?!」
ドラスが周囲を見渡すー
風が、刃となって、盗賊たちに襲い掛かるー
「ぐおおおおおおおあっぁぁ!?!?」
盗賊たちが風に切り裂かれて苦しそうに、倒れていくー
盗賊頭・ドラスもその身を引き裂かれー
表情を歪めながら叫んだー
「誰だ!」
とー。
森の闇の中から出てきたのはー
姫の世話役・ルベールだったー
「じ、じいさん!?」
腕時計を拾いながら、
和哉が思わず叫ぶー
「やれやれ…
老いぼれを戦わせるとはーー
困ったものですな」
そう呟きながら、ルベールは優しく笑みを浮かべたー
騎士団長・ユーリスが、フロル村救出に出撃している以上ー
和哉の事情を知る人間は、ルベールとラナのみー。
だからールベールが助けに来るしかなかったー。
和哉から視線を逸らすと、
ルベールはキッと、目つきを鋭くして、盗賊頭・ドラスを見つめたー
「--ー姫様に乱暴を働くとはー
その罪、死を持って償っていただきますぞ…」
ルベールは、そう言うと、”風”を操りながら、
盗賊頭・ドラスを睨んだー
「ひ、、姫様…!?まさか、そいつは、アリシア姫…?」
盗賊頭・ドラスが少しだけ戸惑うー。
「風…」
和哉はルベールの方を見るー
王宮でルベールが言っていたことを思い出すー
”「お恥ずかしながら、”風”を使った攻撃を少々ー。
ですが、私ももう歳ですし、披露することはないでしょうな。」”
「---じいさん」
”俺のために”身を挺して助けに来てくれたのかー。
そんな風に思いながら、和哉は「じいさん!無理すんな!」と叫ぶー。
「ーーー約束したはずですぞ?
あなた様の命も、願いも、全力でお守りするとー」
ルベールはそう言うと、ドラスの方を見たー
「は、、はは……おもしれぇ」
ドラスは”思った以上の獲物”に笑みを浮かべー
持っていた斧のようなものをルベールに向けたー
そこからはーー
和哉にとって”夢”のように思える光景だったー
盗賊頭ドラスが、ルベールに向かって突進して斧を振るうー
だがー
ルベールの身体から、暴風が吹き荒れてー
斧はルベールには命中せず、
ドラスは自分が飛ばされないように、腕で風を防ぐー
ルベールは、その隙を逃さずにー
呪文のようなものを唱えるとー
風で作られた刃のようなものを大量にドラスの左右から放つー
ドラスは飛び跳ねてそれを回避し、ルベールと距離を取るー。
「お前たち!」と叫ぶとー
盗賊たちが、ルベールとーー
和哉の方に向かうー
和哉が「ひっ!?」と逃げ腰になるー
しかし、ルベールが再度呪文を唱えると、
再び暴風が発生しー
盗賊たちを一掃したーー
「貴様ぁ!!!!!!」
態勢を崩していたドラスが怒りの形相で、
隠し持っていた小刀を持ち、ルベールに突進するー
がー
ルベールは、さらに風を発生させて
ドラスのバランスを崩しー
追撃の”風の刃”を飛ばすと、ドラスの身体をズタズタに引き裂いたー
「---す、、すげぇ…」
和哉にとって、あっという間の出来事ー
と、言う他なかったー。
膝をついて戦闘不能になるドラスー
ルベールが、盗賊のひとりが持っていた剣をドラスに向けるー
「ーーーひっ、お助けを…」
ドラスが悲鳴を上げるー。
「---己の罪を、地獄で償いなされ」
ルベールが容赦なく、ドラスを斬り捨てようとしたー
しかしー
「---ま、、待ってくれ!」
和哉が叫ぶー
「---?」
ルベールが和哉の方を見るー
「そ、、その人は、もう…もう降参してるんだし…
い、、命までは…!」
和哉はそう叫んだー
”人が死ぬ”
そんなところは、見たことがないー。
だから、耐えられなかったー
「---ど、どういうことですかな?」
ルベールが”理解不能”と言わんばかりに首をかしげるー
「--そ、その人は、もう降参してる…
だから、、命までは取らなくてもいいと思うんだ…!」
和哉は動揺しながらそう言うと、
ルベールは
「やらなきゃ、やられるのですぞ?」と、戸惑いながら言うー
「---違う!」
和哉は叫んだー
ドラスの方を見て、和哉は、少しだけ戸惑いながらも、
ルベールに向かって叫ぶー
「憎しみ合って、命を奪い合うー
そんなんじゃ、いつまで経っても争いは終わらないんだ…!」
和哉は首を振るー
憎しみは、何も生まないー
歴史が、そう証明しているー
憎しみ合い、戦争が起きー
終わりなき戦いが始まるー
この世界もー
このままじゃ、いつまでも、争いが終わらないー
人が人を殺しー
憎しみが生まれー
また、人が人を殺すー
負の連鎖が起きるー
だからー
「---そんなに怖がって震えているのにー
命を奪うなんて…
間違ってる」
和哉が、可愛らしい声でそう呟くー
盗賊頭・ドラスが「あんた…」と震えながら
和哉の方を見るー
「------」
ルベールは、和哉の方をじっと見つめたあとに呟くー
「-甘いですな」
とー。
「----」
和哉が表情を暗くするー
だが、ルベールは少しだけ笑ったー
「甘いー
でもーー
何の迷いもなく、そんな風に言えるーー
きっと、あなた様の世界はーー
素晴らしい世界なのでしょうな」
ルベールはそう言うと、剣を下したー
「---姫様への恩を、忘れるでないぞ」
ドラスに向かって、そう告げるー
「--は、、はい……すみませんでした」
ドラスは慌てて森の奥に消えていくー
それを見届けると、ルベールは和哉の方を見た
「---……どうして、こんな危険な真似を…?」
ルベールの言葉に、和哉は「ごめん…」と頭を下げるー
「--俺……亜優美が心配で…
早く、元の世界に戻りたくて…」
和哉が、少しだけ涙ぐんで言うー
女体化したからだろうかーー
目から涙が溢れて来るー
「--いきなり知らない世界に飛ばされて
いきなり姫様の姿になってーー…
本当に、不安だったことでしょうな…」
ルベールが、和哉の頭を優しく撫でるー。
和哉は「---俺、、怖いんだ…」と、
いきなり異世界に飛ばされた不安や、
亜優美の安否の不安、
女体化した不安…
全ての想いを口にしたー
「---」
ルベールは黙って、和哉の不安な思いを聞き、
それを、受け止めてくれたー
その上で、ルベールは、配慮が足りなかったことを、謝罪したー。
”別の世界から、飛ばされてきた人間”を見るのも
”女体化した人間”を見るのも
初めてで、こちらとしても戸惑っているのだ、とー。
そして、ルベールは付け加えた。
「ですが、我々が、あなた様に姫様の代わりを…と
お願いしているのは、あなた様のためでもあるのですぞ…」
ルベールは言うー
この世界で”姫”の姿になっているー
と、いうことは”危険”なのだとー。
姫を狙う人間はたくさんいるー
皇帝ゼロ率いる「闇の帝国」はもちろん、
さっきのような盗賊もいれば、王国内にも宰相ローディスや騎士団長のジークなど
不穏な動きをするものがいるー
王宮から離れれば、
たくさんのならず者に狙われることになり、
あっという間に和哉は殺されてしまうー、と。
とは言え、王宮内で”姫の姿をした別人です”なんて言えば、
宰相ローディスや、ジークが何をするか分からないし、
騎士団長のミリアやフェルナンデスの動きも、分からないー
和哉の安全のことも考えた上で、一番、”安全”なのは
”和哉がアリシア姫の代わりとして振舞う”
ことなのだと、ルベールは説明した。
「--あなた様が、姫様の代わりとして振舞ってくだされば
王宮の兵士たちは、全力であなた様を守ります。
もちろん、私とユーリス殿も、近くであなたを守り、
協力することができるー」
ルベールの言葉に、和哉は戸惑う
「ひ、、姫って…そんなに命を狙われたりするものなのか!?」
とー。
「--…”姫”という立場はー
愛される存在であり、憎まれる存在であるー…
残念ながら、それが真実なのです」
ルベールはそう言うと、
「命を狙われる、などと言えば、あなた様が不安を感じるだろうから、
と、ユーリス殿から口留めされてたのですが…
逆に、不安にさせてしまったようですな…
少なくとも、私とユーリス殿は、あなたのことをちゃんと
考えておりますー。」
「---じいさん」
和哉は戸惑うー
確かに”この姿”で、そこら中を歩くのはー
和哉のいた世界で言えば、大物政治家が身辺警護もなしに
その辺をほっつき歩いたりするようなことなのかもしれないー。
ルベールが「王宮に…戻ってくれますかな?」と呟くー
和哉は、少しだけ考えた後に、静かに頷いたー
・・・・・・・・
森を歩きながら、ルベールは言う。
「和哉殿の世界は、どのような世界なのでしょうな?」
とー。
和哉は、”俺の住んでいた国では、命の奪い合いなんてなくて、
大体は、平和に暮らしている”と、呟いたー。
そして、和哉は、ハッとして、鞄からスマホを取り出したー
立ち止るルベール。
スマホに保存されている”写真”をルベールに見せるー
彼女の亜優美や、親友の省吾もそこには移っているー
遊園地ー
映画館ー
街並みの景色ー
誕生日パーティ
色々な写真を、和哉はルベールに見せたー
「----」
ルベールは驚きながらも、ほほ笑んだー
「--争いのない世界…
いつか、私もそんな世界に行ってみたいものですな」
ルベールの言葉に、和哉は
「じいさんが、俺の世界に来たら、俺がじいさんを案内するよ」
と、呟くー
”ま、俺の世界にくる方法があればだけど”と、付け加えて笑う和哉ー
ルベールは「楽しみにしてますぞ」と言うと、
真剣な表情に戻り、語り出す。
「あなた様が元の世界に戻る方法ー
そして、この世界に飛ばされてきた原因ー
いろいろと調べていたのですが、
どうやら、”何らかの呪術”が関係しているようですなー。
”エナジー”で、そういう術を使う者がいた、と
古文書に記されておりましたー」
エナジーとは、この世界のエネルギーの源。
王宮の照明などの電力にもなっているほか、
ルベールが使ったような魔法の源にもなっているー
「---毎晩、書庫に行っていたのって…」
和哉が言うと、ルベールは「あなた様が元の世界に戻る方法を
調べておりました」と笑ったー
「--じいさん…」
和哉は立ち止ると、頭を下げたー
「口うるさいじいさんとか言って、ごめんー」
とー。
ルベールがほほ笑んで、口を開こうとしたその時だったー
「---!」
ルベールがとっさに、和哉を手で押し飛ばすー
「-!?」
和哉が慌ててルベールの方を見ると、
弓矢が飛んで来ていたー
「--はははははははは!クソどもがぁ!」
崖の上からー
盗賊頭のドラスと、その部下たちが
弓を放っているー
ルベールが呪文を唱えて、風のバリアのようなものを張るー
迎撃しようとするルベールー。
だが、”エナジーが不足したのか”
それとも”盗賊の人数が先ほどよりも多く、形勢不利”と
判断したのか、ルベールは、迎撃をやめて、
「--逃げますぞ!」と叫んだー
ルベールは”戦えない和哉を無傷で守り、この人数を相手に
することはできない”と判断したのだったー
大量の矢の雨の中、ルベールが、和哉をかばうようにして、
共に走るー
「はははははははは!!!!はははははは!」
盗賊頭のドラスは追ってはこなかったー
森の中を駆け巡りー
ようやく安全な場所にたどり着いたところでーー
ルベールが膝をついたー
「--…はぁ…はぁ…じいさん…さすがに走り疲れ…」
和哉はそこまで呟いて表情を歪めたー
ルベールから、血が垂れ流れているー
「--え…?ちょ…?お、、おい!」
和哉が駆け寄るー
「……老いとは怖いものですな」
そう呟くルベールの背中からは、血が流れているー
盗賊たちが放った弓矢から、和哉を守るため、
ルベールは盾になりながら走っていたのだったー
「----お、、おい!?じいさん!?」
土の上に、仰向けになったルベールが呟くー
「--もう、王宮はすぐ側です…
早く、行きなされ…」
荒い息をしながら、そう言うルベールに、
「そ、、そんなこと…
ま、、待ってろ!今、王宮に助けを呼びに行くからー」
和哉が走って行こうとすると、
ルベールが和哉を呼び止めたー
「---和哉殿の…その気持ちだけで、十分ですー
もう、私は助かりません」
”助からない”
和哉の目から見ても、それは明らかだったー。
「--で、、でも…どうして…どうして俺なんかのために」
和哉が悲しそうに言うと、
ルベールは呟いたー
「あなた様の命も、願いも、全力でお守りするとー
約束しましたからな…」
とー。
弱っていくルベール。
その姿が、”小さいころ死んだ祖父”と重なるー
「ま、、待ってくれよ!
約束、守れてねぇよ!!
俺の願いは、元の世界に戻ることだから…
まだ、、まだ守れてねぇよ!」
和哉が悲しそうに叫ぶと、
ルベールは、悲しそうに、苦しみながらほほ笑んだー
「俺のせいで…俺のせいで、、こんな…!」
和哉が涙を流しながら言うー
和哉が”盗賊頭・ドラスの命を助けたりしたから”--
「--じいさんが正しかったよ…
俺が甘かった…
ごめん…本当に…本当にごめん…」
和哉が謝罪を繰り返すと、
ルベールは和哉の方を見たー
「---確かに、あなたは甘いー
でも……あなた様は、そのままで、いいのです…
その優しさを忘れては…なりませんぞ…
それにー
きっと、本物の姫様も、同じことを言ったでしょうな…
まるで、姫様に言われているような気がしてー
だから…あの盗賊を見逃したのです」
ルベールが静かに呟くー
「じいさん…」
和哉が悲しそうに呟くー
「--どうか…王国を…どうか……姫様の代わりを…」
ルベールが苦しみながらも、
王国の未来を案じ、和哉に願いの言葉を口にするー
弱っていくルベールを見つめながら和哉は思うー
”もう、あの時のように後悔はしたくないからー”
「--おじいちゃんなんて、嫌いだ!
約束したのに…!約束したのに!!」
「ーーーごめんな…和哉」
「--うそつきは泥棒のはじまりっておじいちゃん言ってたもん!
ドロボウ!!!」
子供の頃ー
”約束を守れず”死にゆく祖父に、
酷い言葉を浴びせてしまったー
あの時の祖父の顔は、今でも忘れられないー
とても、悲しそうな顔ー
「ーやっぱり、じいさんは苦手だな」
和哉は小声でそう呟くー
でもー
今度はーーー
後悔しないようにー
旅立つ大切な人をー
少しでも安心させてあげられるように
「---じいさん、分かったよ」
和哉は、ルベールの手を握るー
「--姫様の代わり、やる。やるよ。
代わりをやりながら、俺は元の世界に戻る方法を探すー
ついでに、王国のことも、俺にできることなら
力になるからー
だからーー」
和哉は、力強く、そして優しくー
ルベールに伝えるー
「だから、安心してー」
和哉の言葉に、
弱り切っていたルベールは、安心した様子でほほ笑んだー
「---よろしく、お頼みします…」
ルベールは、それだけ言うと、
安らかな表情を浮かべて、
そのまま、眠りについたー
穏やかな死に顔を浮かべているルベールを見て、
和哉は、目に涙を浮かべたー
この世界の人間は”人の死”に慣れているのかもしれないー
でも、自分は違うー
和哉は、動かなくなったルベールに手を合わせると、
「--ーーありがとう」と、静かに呟いて、
その場を後にしたー
”じいさんー
約束は、守るからー
どこかで見守っていてくれよ…”
新たな、決意を胸にー
和哉は立ち上がるー
「---!」
木々が揺れるー
「---ルベール殿…!」
ルベールが放った伝令からの知らせを受け、
駆けつけた騎士団長・ユーリスが、
ルベールの遺体を見て驚くー
「--じいさん…いや、ルベールさんは…」
和哉は、駆けつけたユーリスに、
起きた出来事を隠さず、全て語ったー。
⑥へ続く
・・・・・・・・・・・・・
コメント
異世界に飛ばされて
女体化してしまった和哉は、
異世界の姫の影武者を引き受ける決意をしました~!
本番(?)スタートの⑥もお楽しみに~!