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雪村朱里は、あれから、落ち込みがちになった。


「……大丈夫だよ、きっと疲れてたんだよ」

彼氏の瀬田川 亮が、塞ぎこんでしまった朱里を

必死に励まそうと言葉を掛けるー。


しかし、それでも、

朱里は落ち込んだまま。


彼女がコンビニで復讐を目論む男に憑依され、

コンビニで散々暴れて、警察沙汰にもなり、

それから2週間が経過した。


だが、彼女の心の傷はいえなかった。


居心地のよかったコンビニバイトはクビになり、

大学でも変な噂が流れるようになったー

コンビニの店長の”穏便に済ませたい”という意向から、

朱里は逮捕にまでは至っていなかったが

未だに警察からの取り調べも受けているー。


「………わたし…どうしちゃったんだろう……」

朱里は落ち込んだ様子で呟く。


彼氏の男は、朱里が憑依されたことは黙っていた。

誰が憑依したのかもわからない。

必要以上に朱里を怖がらせないためだ。


「わたし…何であんなことしちゃったのかな…

 こわいよ…」


亮に泣きつく朱里。

亮は戸惑っていた。


どうすれば朱里の傷をいやしてあげられるのだろうか。


憑依されてー

好き勝手に体を使われた朱里の心の傷は

計り知れない。


あの時ー

朱里は明らかに”何か”に乗っ取られていたー

そんなことはフィクションだけの世界だと思っていたー


だが、現実に朱里は”乗っ取られて”いたー

あんな演技、できるはずがないー


二重人格という可能性もあるが、

あれは”外部から何かに乗っ取られた”

そんな、状況に思えた。


”俺が朱里を支えないと…”

亮はそう思いながら、とにかく朱里を元気に

させてあげようと、

朱里の方を見て、


「俺は、何があっても朱里を嫌いにならないから。

 な…元気出せよ」


と、優しく声を掛けたー。


そんな、亮の優しさに、

朱里も涙を拭いて答えた


「うん…ありがとう


 ……ひっ!?」


突然 朱里がビクンと震えて悲鳴をあげたー


「どうした!朱里!」


朱里が、うつろな目になって、

そのまま意識を失ってしまうー


亮が気を失った朱里を抱きかかえる。


すると突然、朱里が笑みを浮かべて起き上がった


「久しぶり~♪

 元気してた?」


今まで泣いていたとは思えない様子で笑う朱里。


「…え」

あまりの豹変ぶりに亮はうろたえた


しかし、すぐに理解した。


「お前!まさかあの時の!」


亮が指摘すると

朱里がいやらしく笑ったー


目に涙を浮かべたままー

朱里は悪魔のような笑みを同時に浮かべているー


「ぴんぽーん!

 

 いやぁあの時さ、

 この娘が絶対しないようなあんなこと、

 俺がさせてるって思ったらさ、

 スゲー興奮したんだよね!」


朱里が汚い言葉を口にするー

朱里の可愛い声なのにー

喋っているのは、朱里じゃないー


「見ろよ!こんなかわいい子がコンビニで

 一人暴れたり、暴言吐いたり、たばこ吸ったり、

 たまんねぇよな」


朱里がケラケラと笑う


「おい、お前!早く朱里から出て行けよ!」

亮が朱里に掴みかかった


「殴れば?

 俺は痛くねーけど」


朱里がバカにしたように笑う。

挑発的な目線を向ける朱里ー


朱里にこんな表情をさせるなんてー


亮は、拳を握りしめたが

それ以上は何もできなかったー

今、朱里を殴って、ダメージを受けるのは誰かー。


他ならぬ、朱里自身だー。


「くっ・・・」

亮は悔しそうな顔を浮かべて手を放した


「さーて!

 朱里の大暴れショー 第2回 はじめまーす♪」


朱里は前と同じように可愛らしく言うと、

亮の家のモノを次々となげたり蹴ったりしはじめた


「おい!何をする!」

朱里が振り向いて笑う


「あはは!これだよコレ!

 見てよ!

 

 わたし、本当はこんなことしたくないのに!

 こんな可愛いわたしが、こんな乱暴でとんでもないことしてる!


 興奮しない?」


朱里が顔を赤くしながら言う。

完全に意識を乗っ取られている


「ーーーわたしは興奮する!

 めっちゃくちゃ興奮する!

 ほら、顔が赤くなってきてるでしょ???

 ゾクゾクゾクゾク止まらない!

 あははははっ♡」


朱里がガラスを割った。


「いたっ!」

朱里の手から血が出る。


それでもなお、朱里は笑っている


「自分が怪我したのに笑ってる。

 うふふふふふ…たまらなーい!」


朱里が自分のスカートで乱暴に手をふくと、

そのまま再び家で暴れはじめた。


血がついたスカートがふわふわと舞う。


「あはははは!あはは、あははは!

 最高~~~!!

 朱里、興奮する~~~~♡」


朱里のマネをしながら大笑いしている。


ついに、亮の怒りは頂点に達した。


「テメェ!」

亮は目の前の朱里をつかみ、殴りつけたー


彼女を殴るなんてー

そんな風に思いながらも、

”そうすることでしか止められないー”


悔しさ、怒り、恐怖ー

色々な感情があふれ出して、

亮は朱里を殴りつけたー


そのまま床に倒れる朱里。


「いったー…

 あはは、わたしを殴るなんて!最低!」


朱里は狂ったように笑っている。

手からは血が流れ、

タイツにもガラス片が刺さっている。


亮に殴られた際に、唇を切ってしまい、

唇からも血が離れているー


「あ~~~鬱陶しい!」

朱里がタイツを自らびりびりに破いて

足に刺さったガラス片を乱暴に引き抜いた。


朱里の綺麗な足に血が流れる


「チッ…」

朱里が舌うちをして、自分の手についた血をなめた


「ま、朱里がどうなっても、困らないし!」

そう言うと、亮の方に突然朱里が歩みより、亮を殴りつけた。


「がっ!」

亮は倒れた。


朱里が玄関から自分のブーツを持ってくると、

亮の顔面を踏みつけた


「わたしを殴ったよね?

 謝りなさい」


朱里が言う。

その声には怒気がこもっていた


「、、、ふ、、ふざけるな」

亮が懸命に声を出すと、

朱里が亮を睨みつけた


「このまま、お前に乱暴されたって、外に助けを

 求めてもいいんだぜ?」


朱里が男言葉で言う


その言葉に、亮は”絶望”の表情を浮かべるー

朱里は、完全に乗っ取られてしまっているー

心も、身体もー


「ほら、早く謝りなさいよ」

朱里の血が亮の顔に垂れてくる。


亮がハッとして、朱里の顔を見るー

心なしか朱里の顔色が悪い気がする


「もう…やめろ」


「なら、わたしの靴をお舐め」

朱里が女王様口調で言った。


……亮は朱里の顔を見た。

意地悪そうに笑っている。


「ーーーくっそおおおおおおおお!」

亮は叫ぶー


全ては、朱里を助けるためー

恥も、プライドも全て捨てて。


「あははははは!ばっかじゃねぇの!

 楽しいモノを見せてもらったよ…

 マジ傑作だわ!」


朱里はそう言うと、乱暴にブーツを投げ捨てて亮の方を向いた


「返してやるよ、この体… じゃあな」

最後にいやらしく笑うと朱里は気を失った。


亮はすかさず立ち上がった。

ボロボロになった室内。

怪我をして血を流している朱里


「うっ・・・」

朱里が意識を取り戻した。


…一体、、、この状況、どう説明すれば…

”絶望”


亮の頭の中には、その二文字しかなかったー。


おわり


・・・・・・・・・・・・・


コメント


コンビニバイトの悲劇の最終回でした~!

原作では④の部分は後日談として別に書いた作品でしたが

リメイク版ではまとめました!!

ここまでお読み下さり、ありがとうございましたー!!


※コンビニバイトの悲劇リメイク版は原作の1話1話が短いため

 いつもより1話あたりが短いデス。

 そのため、100円プランでも読めるようにしてあります!

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