Home Artists Posts Import Register

Content

放課後の屋上ー


”これから、クライマックスが始まるー。”


不良生徒のリーダー格・龍一郎と、

穂乃香を洗脳したロン毛の不良・達平が

屋上に駆け付けた文哉を見て、馬鹿にしたように笑みを浮かべるー


”クライマックスは盛大にー

そして、感動的にー”


「穂乃香…もう、やめてくれ」

文哉が悲しそうに言うー


眼鏡が割れた状態で、不良三人組の”裏切り者”卓は、震えているー


卓に暴行を加えていた穂乃香が文哉の方を見て、ほほ笑むー


「--友達を裏切るなんて、最低でしょ?

 だから、お仕置きしてたの」


全く、悪びれる様子もなくー。


”さぁ、物語に幕を引きなさいー”


「ーーー」

ロン毛の達平が、口元を三日月に歪めたー。


「--ーーー」

文哉が、龍一郎と達平の方に近づいていくー


「穂乃香を、元に戻せ」

文哉が言うー


”これで、元に戻してくれれば、それでいい”


もちろん、そんな可能性は、ほぼ0だということは分かっているー


龍一郎と達平が

「はい、そうですか、すみませんでした」などと

言うはずがないー。


「---お前の彼女、すっかり悪い女になっちまったなぁ…???」

龍一郎が笑うー


「--あの女は、今じゃ、俺たちの完全なパシリだー」

もはや、龍一郎に”隠す気”もなかったー


「ーーふざけるな…穂乃香の洗脳を解け」

文哉が龍一郎を睨み返すー


「---うるせぇなぁ…

 ”人を洗脳しちゃいけない”なんて、法律はあるか?

 校則はあるのか???」


龍一郎はそう言うと、ロン毛の達平に合図をするー


「おい!穂乃香!その裏切り者をぶっ殺せ!」

達平が言うー


「---え…こ、、ころ…?」

洗脳されている穂乃香が一瞬戸惑うー


だがー

すぐに「う、、うん、わかったー」と頷くと、

穂乃香は眼鏡が割れた卓の方に襲い掛かるー


卓を思いっきり蹴り飛ばす穂乃香ー


「--ひっ、、、や、やめてくれ! 

 お、、お前は、あいつらに洗脳されてるんだぞ!」

卓が叫ぶー


「洗脳?」

穂乃香が立ち止るー


「…どいつもこいつも洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳…!

 わたしは正気だって言ってるだろ!!!!!」


穂乃香が口調を荒げて、怒鳴り声を出したー


「--くくっ!いいぞ!やれ!ぶち殺せ!」

達平が叫ぶー


「---お、、おい!穂乃香!やめろ!」

文哉が穂乃香を止めに入ろうとするー


しかしー


「--お~っと!」

龍一郎が、文哉の肩を掴み、文哉の顔面を殴りつけたー


「--じっくり見ようや。

 お前の彼女が、目の前で”人殺し”をするざまをよー」

龍一郎が笑うー


「---ふ、、ふざけ…

 お、、おい!穂乃香!やめろ!!やめろってば!」

文哉が叫ぶー


しかし、穂乃香は卓を何度も何度もビンタすると

やがて、その綺麗な手で卓の首を絞め始めたー


「----あ…あぁ…」

卓が苦しそうにしているー


「---許さない…

 裏切り者は、、許さない…くく、、ひひひひひ」

穂乃香が目を血走らせながら不気味に笑うー


「--やめろおおおおおおおお!」

文哉の怒りが爆発したー

龍一郎を蹴り飛ばし、龍一郎が倒れた隙をついて、

穂乃香の方に向かって走るー


「--穂乃香…!許してくれ!」

文哉は、穂乃香にタックルして、卓を助け出すー


突き飛ばされた穂乃香が「邪魔しないで!!!」と

髪を振り乱しながら叫ぶー


「---…穂乃香!頼む!やめるんだ!!!

 自分が、、自分が何をしようとしてるか、分かってるのか!」

文哉が叫ぶと、

穂乃香は、口を半開きにしたまま、「え…???」と首をかしげるー


洗脳されている穂乃香は、思考が上手くまとまらないー


「--なにって…裏切り者をやっつけようとしてるだけよ」

穂乃香はにっこりとほほ笑んだー。


「----…」

それを見ていたロン毛の達平が笑みを浮かべるー


そしてー

”悪魔の言葉”を囁いたー


「殺せー」

とー


「--!」

横にいた龍一郎が、達平の方を見るー


「--彼氏を、殺せー」

達平が叫ぶー


穂乃香がビクンと震えるー


「---!」

文哉が、穂乃香の方を見るー


「まさかーー!」

”やばい”、そう思った時には、もう手遅れだったー


穂乃香が、文哉を押し倒して、

仰向けになった文哉に馬乗りになるー


「文哉ぁ…わたし、文哉のことが大好きなの…

 くふふふ…♡

 殺しちゃいたいぐらいに…えへへへ」


穂乃香が、綺麗な手で文哉の首を絞め始めるー


「へへへへっ!彼女に殺されちまえ!」

達平が笑うー。


「--く、、、穂乃香…目を覚ましてくれ…穂乃香!」

文哉が必死に穂乃香に呼びかけるー


「--ふふふ…♡ ひひひひひひ…♡ ふみやぁ…♡」

穂乃香はうっとりとした表情のままー


完全に正気を失っているー


「---穂乃香ーー」

文哉は苦しそうにしながら、

「俺も、他のみんなも、先生たちも、家族も…

 みんなみんな穂乃香のこと心配してるー」

と、穂乃香の目を覚まさせようと語り掛ける。


文哉もー

穂乃香の親友の演劇部部長の順子もー

体育教師の穂塚先生とはじめとする先生たちもー

みんな、穂乃香の異変を気にしているー


「----無駄だ」

龍一郎が笑うー


今更、何を言っても無駄ー。

穂乃香は、完全に支配下にあるー。


「---おい!穂乃香!最後の遺言、聞いてやれよ!」

ロン毛の達平が叫ぶー


穂乃香は、彼氏の首を絞めている

その綺麗な手に力を込めながら笑うー


「文哉ぁ…♡なにか、言い残すこと、ある???」

とー


クスクスと笑いながらー

人殺しをする、という自覚のないまま、

穂乃香は、嬉しそうにほほ笑んでいるー


「---」

文哉は、頭をフル回転させてー

”最後の一言”になってしまうかもしれない言葉を絞り出したー


穂乃香の心に届けー


とー。


穂乃香をまっすぐ見つめてー

文哉は少しだけ笑ったー


「--俺はいつまでも、穂乃香のこと、大好きだー」


とー。


「----!」

穂乃香の手から少しだけ力が抜けるー


”わずかな変化”


でもー

その変化を、文哉は見逃さなかったーー


「穂乃香!」

文哉は穂乃香の一瞬の隙をついて、

穂乃香の腕を、自分の首から引きはがすー


唖然とした様子の穂乃香がよろよろと、文哉から少し離れるー


「はぁ…はぁ…はぁ…」

”危うく死ぬところだったー”

文哉はそう思いながら、龍一郎と達平を見つめるー


「--ケッ!”洗脳”も不完全ってか?」

達平が不愉快そうに言うー


龍一郎が「まぁ、慌てんじゃねぇよ。

”洗脳”なんて、周囲に言ったって

どうせ誰にも信じちゃもらえねぇさ」と、笑みを浮かべるー。


「---…はは…それはどうかな?」

文哉が笑うー。


文哉はちゃんと”対策”をしてきていたー

龍一郎たちが説得に応じるはずなど、ないー


「----!!!」

文哉がポケットから取り出したものを見て

龍一郎と達平は表情を歪めたー


”ボイスレコーダー”


文哉がそれを再生するとー

屋上に来てからの会話が全部、保存されていたー


「--これなら、信じるやつも、いるだろうさ」

文哉が言うー

龍一郎や達平が”洗脳”と口にしている場面も

録音されているー


「---もう諦めろ。穂乃香を元に戻せ…!」

文哉が、ボイスレコーダーを手にしたまま言い放つー。


「--く、、、くっ…」

龍一郎が、顔を赤くして震えているー


形成は、逆転したー


”穂乃香を洗脳して弄んでいたー”

なんて、周囲に知れ渡ったらー

龍一郎たちは、終わりだー


「---…」

割れた眼鏡を持ちながら、不良のひとり・卓が

龍一郎たちの方を見つめるー


”お前たちは、やりすぎたんだ”と、思いながらー。


「----くくく、ははははははははは!」

ロン毛の達平が笑いだしたー。


「-!?」

文哉が表情を歪めるー


「穂乃香!今から校内に戻って

 廊下で服を脱ぎ捨てて、みんなの前で

 公開オナニーをしてやるんだ!


 めっちゃくちゃに、狂っちまいそうなほど、

 みんなの前でエッチするんだ!」


達平が叫ぶー


穂乃香は「うん!」とほほ笑んで、屋上から

立ち去ろうとするー


まだ、穂乃香は洗脳されたままー


「--ほ、穂乃香!?」

文哉が穂乃香を追いかけようとするー


「はははっ!、このままだと、

 お前の彼女、学校内で服を脱ぎ捨てて

 エッチを始めちゃうぜぇぇ???


 超変態の痴女になるんだ!!

 穂乃香の人生、終わっちゃうなぁああああ????」


達平が狂った表情で笑うー


「貴様!!!」

文哉が怒りの形相で叫ぶー


穂乃香が、

屋上から校舎への扉を開こうとしているー


「--彼女を助けたいなら、

 そのボイスレコーダーを、こっちに渡してもらおうか!」

達平が叫ぶー


「くっ…!」

文哉が拳を震わせるー


穂乃香を追いかけて、止めるー?

いや、洗脳されている以上、

止めても止めても、穂乃香は服を脱ごうとするだろうー

止めきれないー


止めるためにはー


文哉が、ボイスレコーダーを放り投げようとしたその時だったー


「--うっ!」

屋上から校舎への扉を開けた穂乃香がうめき声をあげたー


「--!」

文哉と達平、龍一郎が、穂乃香の方を見るー


するとー

穂乃香が、ぐったりと気絶していたー


穂乃香のお腹に拳を叩きつけて

気絶させた人物は、穂乃香を屋上の脇に

座らせると、龍一郎や達平を見つめたー


「穂塚先生!」

「穂塚!」

文哉や龍一郎が叫ぶー


体育教師の穂塚先生だったー


穂乃香の異変を察知しー

様子を探っていた穂塚先生は、

秘かに、文哉の後をつけてきていたのだったー


「話は聞いた!お前ら、真面目な女子を洗脳して

 好き放題していたようだな!!!」

穂塚先生の言葉に、

龍一郎が狼狽えているー

ロン毛の達平は歯ぎしりをしているー


そしてーー


「----殺せ!」

達平が叫んだー


「--あ?」

龍一郎が龍一郎が表情を歪めるー


「正義の生徒会副会長ヤローも、うっせぇ穂塚も、

 裏切り者の卓も、全員ぶっ殺せ!」

達平が叫ぶー


”殺す”しかないー

だが、殺せば罪になるー


だから”自分の手”ではなくー


「---!!!」

ロン毛の達平は、リーダー格の龍一郎を”洗脳”したー


「---うおおおおおおおおおおおおお!」

洗脳されて、殺人マシンと化した龍一郎が襲い掛かって来るー


だがー

穂塚先生は、龍一郎の攻撃をかわすと、

龍一郎の腹部に拳を叩きつけて、

龍一郎も気絶させたー


「----二人は、もう大丈夫だ」

穂塚先生が言うー


「ーー穂乃香」

文哉が気絶している穂乃香を見つめるー


喫煙させられてー

不良とつるまされてー

周囲に悪態をつかされてー


洗脳で利用され続けた穂乃香ー


「---……ありがとうございます」

穂塚先生に頭を下げる文哉。


「気づくのが遅くて、すまんな」

穂塚先生がそう言うと、

文哉と穂塚先生は、達平を見つめたー


「--ひっ!?」

達平が震えるー


もうーー

”終わりだ”


追い詰められた達平が

「た…たすけ…て」

と、弱弱しく叫ぶー


穂塚先生と文哉が怒りの形相で達平に近づいていくー


「--た、、たすけ…ひぃいいいいいいいい!!!」

達平はそう叫ぶと、屋上の端に向かって走り出したー


そしてー


「おい!!!!」

穂塚先生が叫んだ時にはーー

達平は既に屋上から身を放り出していたー


・・・・・・・・・・・・・・・・


1週間後ー


「本当に、ごめんね…」

穂乃香が申し訳なさそうに言うー


「いいさ。穂乃香がこうして元に戻ってくれただけで

 俺は満足だから」


今日から穂乃香は普通に学校に復帰しているー

追い詰められて飛び降り自殺をした達平ー

そのおかげだろうか。

穂乃香の洗脳も、不良のリーダー格・龍一郎の洗脳も

すっかり解けていたー


龍一郎は自首退学、

眼鏡の卓も、罪の意識からか、自ら退学を申し出たー。


「---そういえばさ、穂乃香」

文哉が言う。


「え?」

穂乃香が立ち止るー


「--屋上で俺が言ったこと…覚えてる?」

文哉が恥ずかしそうに言うー


「--俺はいつまでも、穂乃香のこと、大好きだー」


と、洗脳されている穂乃香に対して文哉は言ったー

今になって、それが恥ずかしくなってきたのだー


「う~ん…洗脳されてた間のことは、あんまり…

 最初は覚えてる部分もあるけど、

 なんか最後の方はホントに夢を見てるような

 ふわふわした状態だったから…」


穂乃香の言葉に、

文哉は「そっか」と、安心するー


「--ねぇねぇ、何言ったの?」

穂乃香が笑いながら、文哉に尋ねるー


「え???あ、いや、それは秘密!教えない!」

文哉がそう言いながら再び歩き出すとー

「あ、ねぇ!教えてよ~!」と、穂乃香が文哉を

追いかけながらほほ笑んだー



文哉はーーー

”ひとつだけ”

少し気になっていたー


屋上での展開が、

”妙にご都合主義”だったからだー

まるで、文哉自身が漫画の主人公になったかのようにー


穂乃香に首を絞められたとき、

ギリギリのところで、穂乃香に言葉が伝わったりー


穂塚先生がギリギリで駆けつけてきてくれたりー


それにー

ロン毛の達平ー


”洗脳”できるならー

文哉自身や穂塚先生を洗脳することもできたはずー


なのにー

何故、それをしなかったー?


「-----」


だがー

そういうことも、あるのかもしれないー

達平も、追い詰められてそこまで頭が回らなかったのかもしれないー


とにかく今はーー

取り戻したこの幸せをー

大事にしたいー


文哉は穂乃香の手を握ると、

優しく微笑んだー


取り戻したこのかけがえのない宝をー

いつまでも、守っていきたいー



めでたしー


めでたしーーーー


パチ パチ パチ パチー


ひとり、拍手をするー


わたしはー

もう、”舞台の上”だけで演劇をするのは、飽きたのー


部員たちのために、脚本を考えて、

舞台の上で演じるー


それは、素晴らしいことー


でもねー

”舞台”から解き放たれて

”現実”を演劇の場としたらー?


そこには

もっともっと美しくて

リアリティのある物語が生まれるー


”洗脳”があればーー

それが、できるー


”リアル演劇”が、できるー


不良の達平に洗脳の力を渡してー

達平・龍一郎・卓を”少しだけ洗脳”


達平に穂乃香を洗脳させてー

そしてー

穂塚先生を”軽く洗脳”してー

穂乃香や文哉をサポートさせるー


屋上で、

”ご都合主義”に話が進んだのはー

”ハッピーエンド”にするためー


最初から、こうなるって決まってたのー


”わたしが、描いたストーリーの通りに進む”

って、決まってたのー


だってこれは、”演劇”なのだからー。


最後に、達平が「たすけて…」と言っていたのはー

わたしが”自殺しなさい”と指示したからー


”追い詰められて自殺したー”のではなく

”わたしが洗脳して自殺させたー”


退学した龍一郎と卓にも、じきに消えてもらうー


”終わった劇の役者は、もう、いらないー”


「----」

演劇部部長・順子がクスリと笑うー


穂乃香は、”元に戻ったんじゃない”--

わたしが”元通り風”に洗脳しているだけーー


「--次はーーーーー」


「--ヤンデレ彼女に刺される彼氏ー、かな?」

順子は”次の演劇”を頭の中に描いてー

不気味な笑みを浮かべたー



おわり


・・・・・・・・・・・・


コメント


お前の彼女は俺たちのパシリだ、の完結編でした~!!

このあとも、恐ろしいことになりそうですネ~!


MC(洗脳)モノで5話まで書いたのは

私の中では珍しい経験なので、

貴重な経験になりました!


ありがとうございましたー!

Files

Comments

No comments found for this post.