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「穂乃香…」

文哉は絶望の表情を浮かべていたー


龍一郎たちに、穂乃香は洗脳されているー


このままでは、穂乃香はどんどん変わって行ってしまいー

身も心も、アイツらのパシリになってしまうー


「----急に朝早く呼び出して、

 いきなり洗脳とか、あり得ないでしょ!?!?

 いくら文哉だからって、わたし、怒るよ!?」


穂乃香の怒りの形相を思い出すー


穂乃香は完全に洗脳の術中にあるー。


教室に戻った文哉はー

朝の学活が始まる前にー

B組の教室を訪れたー


穂乃香が龍一郎ら不良とゲラゲラ笑いながら

楽しそうに話しているー


もはやー

龍一郎ら3人に、完全に洗脳されて、

穂乃香は3人に溶け込んでしまっているー


早くー

早く、助けなくてはー


「--…今日の放課後ー」

文哉がB組の教室に入り、龍一郎らに向かって

歩いていきながら言うー。


「今日の放課後、話がある」

文哉が怒りの形相で言うー。


「--文哉?どうしたの?怖い顔して?」

龍一郎と喋っていた穂乃香が笑うー


「--へへ、穂乃香の言う通りだぜ?

 どうしたんだよ、怖い顔して」

龍一郎が笑みを浮かべるとー

文哉は動じることなく、龍一郎を睨みつけるー


「ーお前らが穂乃香を洗脳してることは分かってるー

 そのことについて、話がある」

文哉の言葉に、穂乃香が「え?ちょっと、文哉、

まだ洗脳とか言ってんの?」と表情を歪めるー


「---穂乃香を元に戻せ」

文哉の言葉に、ロン毛の達平が笑うー


「---はははは、洗脳~?なんのことかなぁ~?」

とぼける達平ー


拳を握りしめる文哉ー

今にも爆発してしまいそうなほどの怒りー


「--いい加減にして!」

穂乃香が叫んだー


「穂乃香、俺を信じてくれ!

 これは穂乃香のためなんだ」

文哉がそれだけ言うと、再び龍一郎の方に視線を向けるー


龍一郎は笑ったー


「--いいだろう。放課後、じっくり話を聞いてやろうじゃねぇか

 いいよな?達平」

リーダー格の龍一郎が言うと

”洗脳”使いのロン毛の不良・達平は頷いたー。

眼鏡をかけた卓は気まずそうにしているー


「---穂乃香は、絶対にお前たちの好きにはさせない」

文哉はそれだけ言うと、B組の教室から

外に出て、自分の教室へと戻って行ったー


自分の教室に戻ると、

B組の教室に遊びに行っていた穂乃香も戻ってきたー


そしてー


パチン!!!


穂乃香が、文哉の頬を思いっきりビンタしたー


「---っ…穂乃香…?」

文哉が戸惑うー


「--最低。何が洗脳よ!わたしを馬鹿にしてるの?」

穂乃香が怒りの形相で叫ぶー


「--ち、、違う…!違うんだ穂乃香!

 さっきも言ったけど、穂乃香はあいつらにーー」


「--洗脳なんか、されてない!!!」

穂乃香が目に涙を浮かべながら叫ぶー


「--どうして??どうしてそんなこと言うの???

 彼女の言うこと、信じられないの????

 急に洗脳されてるとか言われて…

 酷いよ…」

穂乃香がその場で悲しそうに泣き出してしまうー


「--ほ、、穂乃香」

文哉は周囲のクラスメイトたちを見つめるー


非常に立場の悪い状況ー


達平たちが”あえて、文哉に対する好意”を

そのままにしているのはー

”こういうこと”にするためー。


穂乃香に対し、”彼氏は敵だ”などと洗脳すれば

仲を引き裂くことは簡単だー。


だが、それではつまらないー

他の部分だけを洗脳していきー

こうして”心から”愛情を引き裂いていくー


C組の教室の外から、

そのやり取りを見つめていた龍一郎と達平は笑ったー


「----ー」

だがー

不良三人組のひとり・卓は笑っていなかったー


彼は”洗脳”という行為自体に引け目を感じていたー

ここ数日で、穂乃香は、まるで別人のように変わってしまった。

その力に、恐怖を感じているのだー。


「---おい」

龍一郎が、卓の方を見る。


「な、なんだよ?」

卓が、ビクッとしながら返事をする。


「--あいつに”洗脳”のこと教えたの、テメェだろ?」

龍一郎が、卓を睨むー


「---!」

卓が表情を歪めるー


そうー

文哉に”彼女は洗脳されている”と告げたのは卓だー。


「---放課後。楽しみだな」

龍一郎は脅すようにそう言うと、

達平もニヤニヤしながら卓を見つめたー


卓は、足がすくんでその場から動くこともできなくなってしまったー


・・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


「---何があったの?」

穂乃香の親友で演劇部の部長である順子が、

朝の”ビンタ騒動”のことを聞いてきたー


”洗脳”のことを言うべきかどうかー

文哉は悩んでいたー


だがー

言わないほうがいいー

洗脳なんてことが広まれば、穂乃香が余計に傷つくだけだー。


「----……」

順子は、文哉の方を見つめると、

”言えない事情がある”と悟るー。


「--わかった…でも…

 これだけは忘れないで」

順子が言う。


「--わたしは、穂乃香と、加賀山くんのことを

 応援してる。

 何が起こってるか知らないけど、負けないで」


順子の言葉に、

文哉は「ありがとう」と、力強く答えたー


穂乃香は、周囲に対して高飛車な態度を取り始めているー

これも”洗脳”の影響だー


さっきも鞄の中に煙草を忍ばせているのを確認したー

常習的に、穂乃香は喫煙しているー。

早くー

早く、止めないとー。


そうこうしているうちに、5時間目が終わりー

6時間目が終わるー。


”放課後”がやってきたー


龍一郎・達平・卓の三人を屋上に呼び出してあるー

恐らく、穂乃香も一緒に来るだろうー


卓は、文哉に対して”洗脳”のことを教えてくれた人物だが

卓には、良心が残っていた可能性もあるがー

結局は、龍一郎・達平と同類に過ぎないし、

裏切る可能性もあるー


文哉はため息をついて、屋上に向かおうとするー


「--おい、加賀山」

廊下を歩いていると、

体育教師の穂塚に呼び止められたー


いつもジャージ姿の、熱血体育教師だ。


「---え、あ、はい…」

戸惑いながら文哉が振り返ると、穂塚が口を開いたー


「ーーお前の彼女の尾崎…」

穂塚先生が近づいてくるー


”尾崎”とは、穂乃香のことだー。


「--…」

嫌な予感を覚えながら、文哉は穂塚先生の方を見るー


穂塚先生は校則違反に人一倍厳しいー


「--最近、コソコソ隠れて、煙草吸ってないか?」

穂塚先生が言うー。


「--!」

文哉がドキッとしてしまうー


穂乃香の喫煙のことは隠しているー

穂乃香が本当に自分の意思で喫煙しているのであれば、

龍一郎ら不良にしたのと同じように

先生に報告するー

生徒会副会長として、正義感溢れる文哉は

例え相手が彼女であっても、そうするだろうー


だが、今の穂乃香が喫煙しているのは

”自分の意思”ではないー。


「-----俺の目をごまかそうたってそうはいかない」

穂塚先生が言うー


「--尾崎、最近空き教室とか、トイレで

 隠れて煙草吸ってるだろ?

 B組の柄の悪いやつらとつるんでるみたいだしな」

穂塚先生の言葉に、

文哉は”返事”を慎重に考えるー


ここで、”返事”を間違えば

最悪、穂乃香は停学処分になる可能性すらあるー。


穂塚先生が、なぜ穂乃香ではなく文哉に

聞いてくるのかは知らないが、

とにかく、直接穂乃香に質問されるのもまずいー。

今の”洗脳”された穂乃香は、先生に対しても

反抗的な態度を取る可能性は十分に考えられるからだ。


とにかく、穂塚先生を止めないといけないー。


「---あ、、あの…」

文哉が口を開くー


「--ほ、、穂乃香はそんなことしません」

文哉が断言するようにして言う。


「-ほぅ?」

穂塚先生が文哉の方を見つめる。


「--絶対にーー」

文哉は、強いまなざしで穂塚先生を見つめたー


穂塚先生に小細工は無用ー

強い意志で、勝負するー


文哉はそう考えたのだったー


「----彼女を、庇うのか?」

穂塚先生が言うー


「いえ、事実です」

文哉が、即答するー


「---お前が停学になるかもしれないぞ?」

穂塚先生が”脅し”をかけるー

”彼女を庇うなら停学になるのはお前だぞ”とー。


「---俺も、穂乃香も、停学にはなりません」

文哉はそう言い放つと

「失礼します」と頭を下げたー


屋上で話をつけるー


穂乃香を洗脳から救い出しー

龍一郎たちに真実を話させるー


そうすれば、いいだけの話だー。


「----」

立ち去っていく文哉の方を見つめて、穂塚先生は舌打ちをしたー


・・・・・・・・・・・・


屋上ーーー


「--ーー裏切り者に地獄を見せてやれ」

ロン毛の達平が穂乃香を”洗脳”していたー


「うん」

穂乃香がうなずくー


龍一郎が笑いながら、その様子を見ているー


「--ま、、待ってくれ」

眼鏡をかけた卓が悲鳴を上げているー


「---…裏切り者はゆるさない」

洗脳された穂乃香が近づいてくるー


「--ひ…お、、俺は…!

 お、、尾崎さん!い、、いいのかよ!?

 お前、洗脳されてるんだぞ!?」

卓が叫ぶー


卓は”洗脳のことを文哉に伝えた裏切り者”として

粛清されようとしていたー


「---どいつもこいつも…」

穂乃香が歯ぎしりしながら呟くー


「わたしは洗脳なんかされてない!」

穂乃香がグーで卓を殴りつけたー


「おっほ!!真面目な優等生の暴力だ!」

達平が笑いながら叫ぶー

あの穂乃香を洗脳でここまで変えてやったー

躊躇なく、人に暴力を振るう穂乃香を見て

達平は興奮していたー


「--や、、やめてくれ!やめてくれ!」

逃げまどう卓を穂乃香は追い回して

壁に押し付けたー


「--謝りなよ」

穂乃香が表情を歪めて言うー


「--だ、、だれに!?」

卓がおびえながら叫ぶー


「-龍一郎と達平に謝りなさい」

穂乃香が冷たい口調で言うー


完全に洗脳されている穂乃香は、

龍一郎と達平の代わりに、卓に”お仕置き”をしているー


「---だ、、だから…お前は洗脳されてるんだよ…!

 目を覚ませよ!」

卓が叫ぶー


「--されてねぇよ!!!!!!!!」

穂乃香がぶち切れた口調で叫んだー


「--ひっ!?!?」

卓が尻餅をついてしまうー


穂乃香が卓を掴んで屋上の中央の方に押し飛ばすー


卓の眼鏡が吹き飛ぶー


「--裏切り者!」

「--裏切り者!」

龍一郎と達平が、手を叩きながらコールをしているー


「おじけづきやがって!

 洗脳のこと、あの正義の副会長野郎に伝えたんだろ?」

龍一郎が言うと、

卓は「だ、、、だって…こ、、これ、やべぇって!」と叫ぶー


洗脳された穂乃香の方を指さすー


「こ、、これ、、やりすぎだろ!?!?

 おかしいと思わねぇのか!」

卓が叫ぶー


「--…っ」

ロン毛の達平が不愉快そうに、舌打ちするー


「--おい、穂乃香!こいつ、ボコボコにしてやれ」

達平が言うと、穂乃香は「うん!」とほほ笑むー


穂乃香は停学になるだろうー


だがー

それも、また、面白いー


正義の副会長がどうするか、楽しみだー


「--や、、やめ…」

悲鳴を上げる卓ー


穂乃香は容赦なく卓の顔面を蹴り飛ばしたー


スカートがふわっと舞うー。


倒れた卓の上に乗ってー

卓を何度も何度もビンタするー


「--裏切り者は、許さない」

穂乃香が鋭い目つきで卓を睨むー


龍一郎と達平が”自分の手を汚すことなく”

裏切り者の卓を傷めつけるー


「--た、、助けて…」

卓が悲鳴を上げるー


穂乃香が、もう一度、卓をビンタしようとしたその時だったー


「やめろ!!!!!!!!!」

穂塚先生との会話を終えてー

屋上にやってきた文哉が叫んだー


「お~~~!正義の生徒会副会長さんのお出ましか」

龍一郎が笑うー


「---」

ロン毛の達平がニヤリと笑みを浮かべるー


「---あ、文哉!」

穂乃香がほほ笑むー。


「---穂乃香…もう、、もうやめてくれ」

文哉はそれだけ言うと、

穂乃香から視線を逸らして、龍一郎と達平を睨んだー


「--穂乃香を、元に戻してもらうー」


決意の眼差しで二人を見つめる文哉ー

文哉も”無策”でここに来たわけではないー

”勝算”があって、ここにいるー。


”フィナーレ”の幕が上がろうとしていたー


⑤へ続く


・・・・・・・・・・・・・・・


コメント


次回が最終回デス~!

果たして、登場人物たちの運命は…?


ぜひお楽しみくださいネ~





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