<憑依>あの子の背後に憑いている③~対~ (Pixiv Fanbox)
Content
幼馴染の由香里が、
謎の黒い人影に乗っ取られていたー
そのことを知った和樹は、
自宅で頭を悩ませていたー。
由香里は彼女ではない。
和樹と特別親しかったわけでもない。
それでもー
和樹にとっては、大事な幼馴染だったー
大人しい性格の和樹に唯一普通に接してくれる女子、
それが由香里だった。
たとえ、”幼馴染として”という感情だけだったとしても、
それだけでもー
和樹からしてみれば、十分”助けたい”と思える動機となった。
けれどー
”「---俺の邪魔をしたら、
裸になって、外を大声で笑いながら走ってやるぞ?
そしたら、どうなるか、わかるよなぁ?」”
乗っ取られた由香里の言葉を思い出すー。
そんなことされたらー
「--桜井さんを…助けなくちゃ…」
和樹は、そう呟きながら、頭を悩ませるー
どうするー?
正直、和樹には友達があまりいない。
クラスで話せるような男子は一応いるが、
”桜井さんが乗っ取られた”なんて言っても
信じてもらえるほどの間柄ではないし、
そんなことをしたら、由香里に憑依している
黒い人影が逆上する可能性もあるー
先生に相談するー?
でも…。
和樹は、由香里が会っていた”ゴスロリの女”を思い出すー。
彼女にも、黒い人影のようなものが出現していたー
「--桜井さん以外にも、乗っ取られている人がいる…?」
和樹は、そう思って、
ネットでいろいろと調べてみるー
”乗っ取り”
”憑依”
”操られた”
色々な単語を手当たり次第調べていくー
「違うよ!」
和樹は思わず声をあげたー
乗っ取りと検索すると、乗っ取られたアニメキャラの
エピソードが出て来るー
憑依と検索すると、
憑依モノの小説や、エクソシスト系の映画の情報が出て来るー
操られた、も同じような感じだー。
「--だめだ…」
和樹はスマホをその場に置くー。
当たり前だー
現実で人が乗っ取られるなんて
聞いたことがないー
和樹は深呼吸すると、もう一度スマホに手をかけた。
そして、検索を根強く続けるー。
「---!」
和樹は、手を止めた。
とあるツイッターのアカウントのツイートを見るー
”友達が急におかしくなって…
別人のようになってしまったんです…
昨日も誰もいない部屋で口を大きく開けたまま
一人でぶつぶつとー”
和樹は、そのツイートを見て思い出す。
由香里の口から、ランプの慰霊のように
不気味な黒い人影が飛び出してきていた場面をー
「--どうして、お前にそれが見えたのか…」
和樹は、由香里の言葉を思い出す。
由香里に憑依している”何か”の口ぶりから
普通の人間には黒い影は見えないらしいー
”大口を開けたまま一人でぶつぶつと”という
ツイートは
和樹とは違って”黒い人影が見えない”人間が、
乗っ取られた人間からランプの精霊のように
黒い人影が飛び出している場面を見たのではないかー
そう思うと、和樹は、
そのツイッターアカウント”♡れい♡”にDMを
送信してみたー
可愛らしい女子大生に見えるー
和樹のことなんて相手にしてくれるとは思えないー
けれども、♡れい♡に連絡するしか、
今の和樹には方法はなかったー。
”♡れい♡”から返事が来るのを待つ和樹ー
もちろん、イタズラかもしれないー
でも、由香里の口から黒い人影が
ランプの精霊のように飛び出てきていた場面と、
このアカウントが書いている”豹変した友達”の様子が
よく似ていたー
可能性はあるー
「--それにしても…」
和樹は、呟くー
「どうして、僕には”黒いのが”見えるんだろうー」
由香里に憑依している黒い人影が、どうして和樹には
見えるのだろうー。
和樹は、そのことも”不安”に感じていたー
・・・・・・・・・・・・・
「----は~~~~~」
由香里が、髪をいじりながら、
うっとりとした表情を浮かべるー
髪いじりに飽きると、
今度は、ミニスカートからはみ出た自分の
太ももをうっとりとした表情で
触り始めるー
「---せっかく、女子高生ライフを送ろうと思ったのに…
面倒くせぇガキだな」
由香里が低い声で呟くー。
由香里を乗っ取っている”何か”は、
由香里として”表向き普通の女子高生”としての
生活がしたかっただけだー
だが、和樹のようなやつにちょろちょろされると
目障りだし、邪魔になるかもしれないー
「----」
由香里が口から黒い煙のようなものを吐き出すと、
それが耳の奥底に、チューブのようになって入っていくー
「あひっ♡」
由香里が白目を剥いてピクピクするー
左耳には、チューブ状になった黒い煙が見えるー
「--あ、、っ あっ♡ あっ♡ ひぃ♡」
由香里がびくんびくん震えながら、
白目のまま笑みを浮かべて、よだれを垂らしているー
由香里を乗っ取った何かが、
由香里の記憶の奥底まで探っているー
和樹に対する印象をー
探っているのだー。
由香里を乗っ取った時に、
基本的な記憶は全て奪うことができたが、
細かい部分までは、こうして、
脳に直接”アクセス”することで
探り出す必要があったー
だらしない格好で、綺麗な太ももを
晒しながら、白目のまま、あひあひ声を出している
由香里ー。
やがてー
由香里から黒いチューブのようなものが取れて、
そのまま口の中に戻っていくー
「ふふふふ」
由香里は口元の涎を拭きとると笑みを浮かべたー
「なぁ~んだ、陰キャラの根暗男子じゃん」
由香里が笑うー
「--だったら、”潰す”のも、簡単ねー…
くくくくくく」
悪い表情を浮かべた由香里は、
一人、邪悪な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・
翌朝ー
和樹は、ツイッターにDMが届いているのに気づいた。
”♡れい♡”からの返事だったー
♡れい♡というアカウントが
”友達の豹変”についてツイートしていたのは、
1年前のことー
既に問題は解決しているかもしれないー。
和樹は、学校に向かう時間まで、
♡れい♡とやり取りをしたー。
♡れい♡が言うには、
その友達は、豹変したまま、今は音信不通に
なってしまっているのだという。
和樹は、黒い人影のことを話さずに
♡れい♡に、由香里のことを伝えるー
”実は僕の幼馴染も同じような状態なんです”
とー。
♡れい♡は、戸惑いながらも、
知る限りのことを教えてくれたー。
そしてー
”良かったら直接お会いできませんか?”と
返事が来たー
「え…」
和樹は戸惑う。
ネット上で知り合った相手といきなり会うなんて、とー。
和樹は、そう思って
♡れい♡に、素直に
”いきなり会うなんて、大丈夫ですか?”と伝えるー
その上で、
和樹も警戒していることも伝えたー
すると、♡れい♡は、すぐに返事を送ってきたー
”…あなたが、幼馴染の子のことを心配しているように
わたしも親友のことを心配しているんです。
それが理由じゃ、ダメですか?”
とー。
和樹は、由香里のことを考えるー
確かに、気持ちはわかる。
和樹だって、由香里のことが心配だー。
この”♡れい♡”という子だって、
その親友のことが心配なのだろうー
誰にも相手にされていないそのツイートに
初めて反応したのが和樹なのだと言う。
”少しでも可能性があるのなら、わたしは会います
たとえ、そがイタズラであったとしても”
ーそう、♡れい♡は言ってきた。
幸い、住んでいる場所はそこそこ近いらしいー
”土曜日、お時間があれば、
わたしが、カズさんの地域まで行きます”
そう、♡れい♡は送ってきた。
”カズ”とは、和樹のツイッターアカウントの名前だ。
リアルの友達はいないが、ツイッターのフォロワーは
まあまあいる。
…と言っても、深い関係の相手はいないが。
”わかりました”
和樹はそう返事を送ると
「そろそろ学校行かなくちゃ」と
そのまま学校へと向かったー
学校に向かって歩きながら、和樹は思う。
”どうして、僕にだけ黒い人影が見えるのかー”
由香里とゴスロリの女は、互いに相手のことを
分かっていたみたいだから、見えているのだろうけれどー
”♡れい♡”の人には、黒い人影は見えていないみたいだしー。
「---」
そんな風に思いながら登校した和樹ー
「----!」
和樹は、机の中に入れておいた教科書が
ビリビリに破られていることに気づくー
「これは…」
和樹が周囲を見渡す。
先に登校していた由香里が、笑みを浮かべたー
「---!!!」
和樹は、もう一つ、机の中に入っていた
メモ書きのようなものを見つける。
そこにはー
”チクったら、お前の大事な桜井さんが、悪者になるよ♡”と
由香里の筆跡で書かれていたー
筆跡まで真似できる…
乗っ取られた由香里が、全てを奪われていることを
改めて理解して、和樹は震えたー。
「---」
由香里は、友達といつものように談笑しながらも、
笑みを浮かべたー
”お前が、悪いんだー”
とー。
”俺はただ、この由香里という女子高生になって
普通に過ごしたかっただけだー
でも、お前が”オーラ”を見つけることができるからー
だからー
お前がいけないんだー”
由香里は少しだけ鼻で笑うー
「--邪魔者は、消す」
”黒い人影”が見える和樹は、邪魔者だー。
由香里が乗っ取られている!なんて騒がれたら、困るー
騒いでも、信じる奴はいないだろうが、
万が一ということもあるー
せっかく乗っ取った身体でJKライフを
送ろうとしていたんだー。
”邪魔”しないでもらおうかー。
由香里は、そう思いながら
和樹の方を今一度睨むー
”根暗野郎を不登校に追い込むことなんて
簡単なことだぜー”
それからー
由香里の嫌がらせが始まったー
和樹は、必死に耐えたー。
”桜井さんにいじめられている”などと言えば、
由香里が悪者になってしまうー
由香里は悪者ではない。
ただ、”何か”に乗っ取られているだけだー
だからー
由香里を悪者にするわけにはいかないー
由香里の”いじめ”に耐える和樹ー
「---桜井さん…」
放課後ー
図書室に呼び出された和樹は、
由香里の方を見る。
由香里は、足を組んで、
図書室のカウンターに座っていたー
「--辛いか?チクるか?
でも、悪者になるのは、この女だぜ」
由香里が笑うー
背後には黒い人影がうごめいているー
「----どうして」
由香里が呟く。
「どうして、お前には”見える”んだろうな?」
由香里がうすら笑みを浮かべながら首をかしげるー
”見えない”はずなのにー
”オーラ”が見えるのはーーー
「---」
由香里が和樹の方をじーっと見つめるー
「----桜井さんを返して…
お願いだから…」
和樹は、泣きそうになりながら呟く。
「嫌だね。桜井由香里は俺のものだ」
そう呟くと、由香里は、
図書室の椅子を掴んだー
「なにを…!?」
和樹が戸惑っていると、
由香里は、椅子を窓ガラスの方に向かって
乱暴に放り投げたー
音を立てて割れる硝子ー
「--あっはははははは♡
わたし、悪い女になっちゃった!」
由香里が、和樹の方に近づいてくる
「でもねー
わたしを守る方法、ひとつだけあるよ?」
由香里が笑うー
”わたしの代わりに、罪を被るの”
クスッと耳打ちすると、由香里は
「ま、わたしがやったって言ってもいいけどねぇ~」と
言いながらそのまま立ち去っていくー
和樹は震えたー
先生が駆けつけて来るー
「なんだこれは!?」
割れた窓ガラスを見て、戸惑う先生ー
和樹は、いろいろな思いを全て飲み込んで
静かにつぶやいたー
「僕が…、、僕がやりました」
とー。
全てはー
桜井さんを助けるためにー
④へ続く
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コメント
FANBOXの小説は、長編と週1回モノを除いて
なるべく月を跨がないように(見れなくなってしまう人がいるので…)
しています~!
あの子の背後に~、も、6月中に完結させられるように
頑張りますので、ぜひお楽しみくださいネ~!
今日もありがとうございました!!