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幼馴染の由香里が、

謎の黒い人影に乗っ取られていたー


そのことを知った和樹は、

自宅で頭を悩ませていたー。


由香里は彼女ではない。

和樹と特別親しかったわけでもない。


それでもー

和樹にとっては、大事な幼馴染だったー


大人しい性格の和樹に唯一普通に接してくれる女子、

それが由香里だった。


たとえ、”幼馴染として”という感情だけだったとしても、

それだけでもー

和樹からしてみれば、十分”助けたい”と思える動機となった。


けれどー


”「---俺の邪魔をしたら、

 裸になって、外を大声で笑いながら走ってやるぞ?


 そしたら、どうなるか、わかるよなぁ?」”


乗っ取られた由香里の言葉を思い出すー。


そんなことされたらー


「--桜井さんを…助けなくちゃ…」

和樹は、そう呟きながら、頭を悩ませるー


どうするー?

正直、和樹には友達があまりいない。

クラスで話せるような男子は一応いるが、

”桜井さんが乗っ取られた”なんて言っても

信じてもらえるほどの間柄ではないし、

そんなことをしたら、由香里に憑依している

黒い人影が逆上する可能性もあるー


先生に相談するー?

でも…。


和樹は、由香里が会っていた”ゴスロリの女”を思い出すー。

彼女にも、黒い人影のようなものが出現していたー


「--桜井さん以外にも、乗っ取られている人がいる…?」

和樹は、そう思って、

ネットでいろいろと調べてみるー


”乗っ取り”

”憑依”

”操られた”


色々な単語を手当たり次第調べていくー


「違うよ!」

和樹は思わず声をあげたー

乗っ取りと検索すると、乗っ取られたアニメキャラの

エピソードが出て来るー


憑依と検索すると、

憑依モノの小説や、エクソシスト系の映画の情報が出て来るー


操られた、も同じような感じだー。


「--だめだ…」

和樹はスマホをその場に置くー。


当たり前だー

現実で人が乗っ取られるなんて

聞いたことがないー


和樹は深呼吸すると、もう一度スマホに手をかけた。


そして、検索を根強く続けるー。


「---!」

和樹は、手を止めた。


とあるツイッターのアカウントのツイートを見るー


”友達が急におかしくなって…

 別人のようになってしまったんです…

 昨日も誰もいない部屋で口を大きく開けたまま

 一人でぶつぶつとー”


和樹は、そのツイートを見て思い出す。


由香里の口から、ランプの慰霊のように

不気味な黒い人影が飛び出してきていた場面をー


「--どうして、お前にそれが見えたのか…」


和樹は、由香里の言葉を思い出す。


由香里に憑依している”何か”の口ぶりから

普通の人間には黒い影は見えないらしいー


”大口を開けたまま一人でぶつぶつと”という

ツイートは

和樹とは違って”黒い人影が見えない”人間が、

乗っ取られた人間からランプの精霊のように

黒い人影が飛び出している場面を見たのではないかー


そう思うと、和樹は、

そのツイッターアカウント”♡れい♡”にDMを

送信してみたー


可愛らしい女子大生に見えるー

和樹のことなんて相手にしてくれるとは思えないー


けれども、♡れい♡に連絡するしか、

今の和樹には方法はなかったー。


”♡れい♡”から返事が来るのを待つ和樹ー


もちろん、イタズラかもしれないー


でも、由香里の口から黒い人影が

ランプの精霊のように飛び出てきていた場面と、

このアカウントが書いている”豹変した友達”の様子が

よく似ていたー


可能性はあるー


「--それにしても…」

和樹は、呟くー


「どうして、僕には”黒いのが”見えるんだろうー」


由香里に憑依している黒い人影が、どうして和樹には

見えるのだろうー。


和樹は、そのことも”不安”に感じていたー


・・・・・・・・・・・・・


「----は~~~~~」

由香里が、髪をいじりながら、

うっとりとした表情を浮かべるー


髪いじりに飽きると、

今度は、ミニスカートからはみ出た自分の

太ももをうっとりとした表情で

触り始めるー


「---せっかく、女子高生ライフを送ろうと思ったのに…

 面倒くせぇガキだな」

由香里が低い声で呟くー。


由香里を乗っ取っている”何か”は、

由香里として”表向き普通の女子高生”としての

生活がしたかっただけだー


だが、和樹のようなやつにちょろちょろされると

目障りだし、邪魔になるかもしれないー


「----」

由香里が口から黒い煙のようなものを吐き出すと、

それが耳の奥底に、チューブのようになって入っていくー


「あひっ♡」

由香里が白目を剥いてピクピクするー


左耳には、チューブ状になった黒い煙が見えるー


「--あ、、っ あっ♡ あっ♡ ひぃ♡」

由香里がびくんびくん震えながら、

白目のまま笑みを浮かべて、よだれを垂らしているー


由香里を乗っ取った何かが、

由香里の記憶の奥底まで探っているー


和樹に対する印象をー

探っているのだー。


由香里を乗っ取った時に、

基本的な記憶は全て奪うことができたが、

細かい部分までは、こうして、

脳に直接”アクセス”することで

探り出す必要があったー


だらしない格好で、綺麗な太ももを

晒しながら、白目のまま、あひあひ声を出している

由香里ー。


やがてー

由香里から黒いチューブのようなものが取れて、

そのまま口の中に戻っていくー


「ふふふふ」

由香里は口元の涎を拭きとると笑みを浮かべたー


「なぁ~んだ、陰キャラの根暗男子じゃん」

由香里が笑うー


「--だったら、”潰す”のも、簡単ねー…

 くくくくくく」


悪い表情を浮かべた由香里は、

一人、邪悪な笑みを浮かべたー


・・・・・・・・・・・・


翌朝ー


和樹は、ツイッターにDMが届いているのに気づいた。


”♡れい♡”からの返事だったー


♡れい♡というアカウントが

”友達の豹変”についてツイートしていたのは、

1年前のことー

既に問題は解決しているかもしれないー。


和樹は、学校に向かう時間まで、

♡れい♡とやり取りをしたー。


♡れい♡が言うには、

その友達は、豹変したまま、今は音信不通に

なってしまっているのだという。


和樹は、黒い人影のことを話さずに

♡れい♡に、由香里のことを伝えるー


”実は僕の幼馴染も同じような状態なんです”


とー。


♡れい♡は、戸惑いながらも、

知る限りのことを教えてくれたー。


そしてー

”良かったら直接お会いできませんか?”と

返事が来たー


「え…」

和樹は戸惑う。


ネット上で知り合った相手といきなり会うなんて、とー。


和樹は、そう思って

♡れい♡に、素直に

”いきなり会うなんて、大丈夫ですか?”と伝えるー


その上で、

和樹も警戒していることも伝えたー


すると、♡れい♡は、すぐに返事を送ってきたー


”…あなたが、幼馴染の子のことを心配しているように

 わたしも親友のことを心配しているんです。


 それが理由じゃ、ダメですか?”


とー。


和樹は、由香里のことを考えるー


確かに、気持ちはわかる。

和樹だって、由香里のことが心配だー。


この”♡れい♡”という子だって、

その親友のことが心配なのだろうー


誰にも相手にされていないそのツイートに

初めて反応したのが和樹なのだと言う。


”少しでも可能性があるのなら、わたしは会います

 たとえ、そがイタズラであったとしても”


ーそう、♡れい♡は言ってきた。


幸い、住んでいる場所はそこそこ近いらしいー


”土曜日、お時間があれば、

 わたしが、カズさんの地域まで行きます”


そう、♡れい♡は送ってきた。


”カズ”とは、和樹のツイッターアカウントの名前だ。

リアルの友達はいないが、ツイッターのフォロワーは

まあまあいる。

…と言っても、深い関係の相手はいないが。


”わかりました”

和樹はそう返事を送ると

「そろそろ学校行かなくちゃ」と

そのまま学校へと向かったー


学校に向かって歩きながら、和樹は思う。


”どうして、僕にだけ黒い人影が見えるのかー”


由香里とゴスロリの女は、互いに相手のことを

分かっていたみたいだから、見えているのだろうけれどー


”♡れい♡”の人には、黒い人影は見えていないみたいだしー。


「---」

そんな風に思いながら登校した和樹ー


「----!」

和樹は、机の中に入れておいた教科書が

ビリビリに破られていることに気づくー


「これは…」

和樹が周囲を見渡す。

先に登校していた由香里が、笑みを浮かべたー


「---!!!」

和樹は、もう一つ、机の中に入っていた

メモ書きのようなものを見つける。


そこにはー

”チクったら、お前の大事な桜井さんが、悪者になるよ♡”と

由香里の筆跡で書かれていたー


筆跡まで真似できる…

乗っ取られた由香里が、全てを奪われていることを

改めて理解して、和樹は震えたー。


「---」

由香里は、友達といつものように談笑しながらも、

笑みを浮かべたー


”お前が、悪いんだー”

とー。


”俺はただ、この由香里という女子高生になって

 普通に過ごしたかっただけだー

 でも、お前が”オーラ”を見つけることができるからー

 だからー

 お前がいけないんだー”


由香里は少しだけ鼻で笑うー


「--邪魔者は、消す」


”黒い人影”が見える和樹は、邪魔者だー。

由香里が乗っ取られている!なんて騒がれたら、困るー

騒いでも、信じる奴はいないだろうが、

万が一ということもあるー


せっかく乗っ取った身体でJKライフを

送ろうとしていたんだー。


”邪魔”しないでもらおうかー。


由香里は、そう思いながら

和樹の方を今一度睨むー


”根暗野郎を不登校に追い込むことなんて

 簡単なことだぜー”


それからー

由香里の嫌がらせが始まったー


和樹は、必死に耐えたー。

”桜井さんにいじめられている”などと言えば、

由香里が悪者になってしまうー


由香里は悪者ではない。

ただ、”何か”に乗っ取られているだけだー


だからー

由香里を悪者にするわけにはいかないー


由香里の”いじめ”に耐える和樹ー


「---桜井さん…」


放課後ー

図書室に呼び出された和樹は、

由香里の方を見る。


由香里は、足を組んで、

図書室のカウンターに座っていたー


「--辛いか?チクるか?

 でも、悪者になるのは、この女だぜ」

由香里が笑うー


背後には黒い人影がうごめいているー


「----どうして」

由香里が呟く。


「どうして、お前には”見える”んだろうな?」

由香里がうすら笑みを浮かべながら首をかしげるー


”見えない”はずなのにー


”オーラ”が見えるのはーーー


「---」

由香里が和樹の方をじーっと見つめるー


「----桜井さんを返して…

 お願いだから…」

和樹は、泣きそうになりながら呟く。


「嫌だね。桜井由香里は俺のものだ」


そう呟くと、由香里は、

図書室の椅子を掴んだー


「なにを…!?」

和樹が戸惑っていると、

由香里は、椅子を窓ガラスの方に向かって

乱暴に放り投げたー


音を立てて割れる硝子ー


「--あっはははははは♡

 わたし、悪い女になっちゃった!」

由香里が、和樹の方に近づいてくる


「でもねー

 わたしを守る方法、ひとつだけあるよ?」

由香里が笑うー


”わたしの代わりに、罪を被るの”


クスッと耳打ちすると、由香里は

「ま、わたしがやったって言ってもいいけどねぇ~」と

言いながらそのまま立ち去っていくー


和樹は震えたー


先生が駆けつけて来るー


「なんだこれは!?」

割れた窓ガラスを見て、戸惑う先生ー


和樹は、いろいろな思いを全て飲み込んで

静かにつぶやいたー


「僕が…、、僕がやりました」


とー。


全てはー

桜井さんを助けるためにー


④へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


FANBOXの小説は、長編と週1回モノを除いて

なるべく月を跨がないように(見れなくなってしまう人がいるので…)

しています~!


あの子の背後に~、も、6月中に完結させられるように

頑張りますので、ぜひお楽しみくださいネ~!


今日もありがとうございました!!



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