<入れ替わり>幻想の日常⑧~亀裂~ (Pixiv Fanbox)
Content
”空回り”
二人が、もがけばもがくほどー
二人が、相手のことを想えば想うほど、
その想いは、すれ違いー、
”亀裂”を深めていくー
真司も、愛梨も相手のことを想っているのにー
それが、うまく伝わらないー
愛梨のためにー
真司のためにー
そう思っているはずなのに、
事態は、悪い方向へと向かって行く-
”入れ替わり”
漫画やアニメのように、うまくは行かないー。
現実の入れ替わりは、
冷たく、そしてー残酷だ。
・・・・・・・・・
★主な登場人物★
橋口 真司
大学生。彼女と入れ替わってしまう。
川上 愛梨
真司の彼女。真司と入れ替わってしまう。
馬淵 香澄
同級生。愛梨の幼馴染で親友。
中条 東吾
同級生。真司・愛梨の共通の友人。
天童 麗
同級生。頼りになるお姉さん風の女性。
風間 龍平
同級生。嫌味なインテリ学生で、裏で悪さをしている
※登場人物詳細
(↓に、¥300と出ていますが、このお話を読めている皆様は、既に
プランご加入(ありがとうございます!)頂いているので
お金がかかったりすることはありません!ご安心ください)
fanbox post: creator/29593080/post/1060230
・・・・・・・・・・・・
「どうして…」
真司(愛梨)は暗い表情で大学内を歩いていたー
メイドカフェのことを打ち明けた真司(愛梨)-
愛梨(真司)は怒ることなく、優しくその事実を受け入れて、
しかも、愛梨の代わりに、愛梨の身体になった真司が、
メイドカフェの店長にしっかりと話してくれると
約束してくれたー
そしてー
「大丈夫。ちゃんと退職したよ
もう、心配ないから」
と、確かに言っていたー
それなのにー
「--お前の彼女、メイドカフェで働いてるぜ?」
インテリ男子の龍平が、”愛梨がメイドカフェで働いている”と
言ってきたー。
”退職した”
そう言ってたのに、
真司は、愛梨の身体で、メイドカフェで働き続けているー。
「--どうして…」
なんで、真司はそのことを隠しているんだろうー。
真司(愛梨)は、そう考えると
胸が苦しい気持ちになった-
「--愛梨と、喧嘩?」
背後から声がしたー。
愛梨の親友・香澄が近寄って来るー。
「かす、、、じゃない、、馬淵さん」
今は真司の身体ー。
だから、香澄、ではなく馬淵さんと呼ばないと
怪しまれるー。
「--ーー愛梨なんかやめて、わたしと付き合おうよ」
香澄が、この前と同じこと口にする。
「--な、、な、、何度言われても、
お、、俺は愛梨が好きだから」
真司の身体で勝手にそう呟く愛梨ー
いやー
勝手に、ではないー
愛梨は、真司のことを信じているからー
「--ふぅん」
香澄が笑う。
「--でも、橋口くん”困る”って言ってたじゃん。
愛梨のことで、もう我慢しなくたっていいんだよ?」
香澄が笑うー。
香澄は、真司と愛梨が入れ替わっていることを知らないー
入れ替わる前から、香澄は愛梨の悪口を真司に言っていたのだろうー。
でも、真司は、そのことを教えてくれなかったー
それだけじゃない、香澄に対して「困る」と言っていたーー。
「---…」
暗い表情を浮かべる真司(愛梨)-
”好き”と思っていたのはーー
”わたしだけ”--?
そんな気持ちが、愛梨の中に浮かび上がってくるー。
真司を信じたいのにー。
それなのにー
「--何かあったの?」
香澄が心配そうに言う。
「--え…?
じ、、、実はちょっと、真…、、愛梨が、
俺に何か隠し事してるっぽくて」
真司(愛梨)はそう言ったー
”メイドカフェでまだ働いているー”
なんで、そのことを隠すのー?
「--ふぅん…」
香澄はそう言うと、立ち上がって
真司(愛梨)を見たー
「-よくわかんないけど、それなら
早めに愛梨に確認したほうがいいんじゃない?」
香澄の言葉に
真司(愛梨)は戸惑いながら言う。
「で、、でも…愛梨にも…理由があるかもしれないし」
真司(愛梨)は信じていたー
真司が”メイドカフェでまだ働いていること”を隠すということは、
何か”それなりの理由”があるはずだとー。
「--ーーねぇ」
香澄が真司(愛梨)の手を握るー
ドキッー
「--え」
真司(愛梨)が戸惑う。
香澄に手を握られたとたんー
真司の身体がドキドキしているー
”なに…これ…?”
「--愛梨、浮気してるのかもよ?」
香澄はそう言いながらほほ笑んだー。
浮気ーーー?
今の愛梨の中身は、真司だー
それはないと信じたいー
でもー
”隠してメイドカフェで働き続けている”
ということは、やはり、何かー
「--ま、いいや。
橋口くん!わたしと付き合う気になったら
いつでも言ってね!」
それだけ言うと、香澄は可愛らしくウインクして
そのまま立ち去ってしまったー。
”やっぱり、聞かなくちゃ…”
真司(愛梨)は、愛梨(真司)に
”なんでまだメイドカフェで働いているのか”を
聞くことを決意するー。
・・・・・・・・・・
お昼の時間に、
真司(愛梨)は、愛梨(真司)を呼び出したー。
「---どうした?愛梨?」
愛梨(真司)は周囲を気にしながらやってくるー。
自分の身体を愛梨と呼んでいるのを周囲に
見られたら、変な風に思われてしまうー。
そう思っているからだー。
「---ねぇ…あの…あのね」
真司(愛梨)は戸惑いながらも口を開く。
愛梨(真司)は不思議そうな顔をしているー
今日も、おしゃれな格好をしている愛梨(真司)-
最近は、おしゃれな格好をしていることも多いー
”真司…もしかして、わたしの身体を…”
愛梨はそんな風にも思ったー
メイドカフェで働き続けているのもー
最近妙におしゃれになったのもー
”身体”目当てー?
そんな風に一瞬思ってしまうー。
「どうして…メイドカフェでまだ働いてるのに、
嘘、ついたの…?」
真司(愛梨)は、言いにくそうに、そう口にしたー。
「----!?」
愛梨(真司)は表情を歪めたー。
「--風間くんから聞いたの。
メイドカフェに愛梨がいる、って。
この前、退職してくれたって言ってたよね…?
ど、どうして嘘なんてついたの…?
真司のことだから、何か事情があるとは思うんだけど…」
真司(愛梨)は不安な気持ちを吐き出したー
つい、責めるような口調になってしまうー
「--そ、それは…」
愛梨(真司)は
”くそっ!風間のやつ”と思いながらも、
目を泳がせたー
メイドカフェには、音信不通になっていた
姉の詩織がいたー。詩織のことが気になって
真司は退職できず、愛梨の身体でしばらく
メイドカフェで働き続けることにしていたー
それを、
黙っていたのは、”愛梨を不安にしないためー”
これは、”姉弟の問題”
それに、愛梨を巻き込みたくはなかったし、
愛梨を安心させてあげたかったー。
最終的に、メイドカフェはちゃんと退職する。
変なことをするつもりはないー
姉のことを説明して、愛梨を心配させるよりも、
姉のことも、メイドカフェのことも黙っていようー、と、
真司なりの、姉のことが気になる自分の目的、
そして愛梨の気持ちにも配慮した対応だったー。
しかしー
真司(愛梨)はそうは思わなかったー
「--わたしの身体で……何かしてるの?」
不安になった真司(愛梨)は口にするー
「--は??」
愛梨(真司)は思わず声を上げた。
「--な、なんでそんなこと?」
愛梨(真司)がそう言い返すと、
真司(愛梨)は、「だって、なんだか最近、真司、
わたしの身体でおしゃれしてるし、
メイドカフェで働き続けてるっていうし…
なんか…なんかおかしいよ…」
真司(愛梨)は、そう叫ぶー。
「--…お、落ち着けよ愛梨。
俺は愛梨の身体でエッチなことなんてしない。」
愛梨(真司)は言うー
姉が、父親に性的暴行を受けているのを
小さいころから見ていたー
だから、愛梨の身体でエッチなことは
絶対に、しないー
そう誓っていたー。
”真司は、なんでみんなに隠そうとするんだろう…”
愛梨は、そんな不安も抱えていたー
共通の友人・東吾以外には
頑なに入れ替わりを隠そうとする真司ー。
愛梨は、そんな真司の態度にも
不信感を抱き始めているー
「--俺のこと疑ってるのか…?」
愛梨(真司)は不快そうに呟くー
愛梨のためにこんなに頑張っているのにー
確かにメイドカフェの件は、自分の勝手な
都合だけれどー
黙っていたのは、愛梨のーーー…
「--ねぇ、元に戻るつもり、あるの?」
真司(愛梨)は、不安から叫んだ。
「--あるよ!俺だって、今すぐ元に戻りたい!」
愛梨(真司)が叫び返すー
自分の身体に戻ってー
姉さんに会いに行きたいー
居場所が分かったのにー
他人の身体だなんて…
「---いいよな、愛梨みたいに
幸せな家庭はさ」
愛梨(真司)は、姉と再会したことで
精神的に不安定になっていたー
つい、嫌味を口走ってしまうー
「--何その言い方…」
真司(愛梨)も不安から、攻撃的な言い方になってしまうー
「--俺は愛梨のために色々頑張ってるのに、
何にもしねぇで、普通に生活してる愛梨は楽でいいよな!?」
愛梨(真司)が口調を荒げて言うー
”何にもしねぇで”-
真司(愛梨)の胸に言葉が突き刺さるー
何もしてないわけじゃないー
元に戻る方法を毎日探しているしー
”楽しそう”に毎日振舞っているのはー
”他人に迷惑をかけないためー”
”どんな時でも前向きに”という
死んだ父の言葉を守るためー
真司に心配をかけないためー
「--そんな言い方しなくたっていいじゃん…!
それに、香澄から聞いたよ?
私のこと”困る”って前から言ってたって!
わたし、そんなに出来の悪い彼女かな?」
涙ぐみながら言う真司(愛梨)
「--そ、それは…
ってか、俺の姿で泣くなよ!」
愛梨(真司)が叫ぶー
「俺は、愛梨のためにーーー」
「わたしの身体で、そんな乱暴な言い方しないで!」
真司(愛梨)が涙ぐみながらそう叫ぶー
「-ーーなんだよ、まったく」
愛梨(真司)はそう呟くと、そのまま立ち去ってしまうー
「--……」
真司(愛梨)はその場で”わたしだけでも元に戻る方法、探すから!”と
叫んだー
・・・・・・・・・・・・・
夕方ーーー
大学の敷地内のベンチで、
自販機で購入したペットボトルのお茶を飲みながら
愛梨(真司)はため息をついたー
愛梨の身体で、ずっと音信不通だった姉・詩織と
再会したことー
そして、入れ替わった状態で過ごすストレスー
それらが、真司を苛立たせていたー。
愛梨も、同じなのかもしれないー
「--どうしたの?」
その言葉に、愛梨(真司)が顔を上げると、
そこには、女子生徒の天童 麗がいた。
「--あ、天童さん…」
「---橋口くんと、喧嘩でもした?」
麗はそう言うと、静かにほほ笑んだー
愛梨(真司)の隣に座る麗ー
夕日を見つめながら
愛梨(真司)は入れ替わったことを悟られない範囲内で、
真司(愛梨)と口論してしまったことを告げるー
「--なんか…わたしの想い、
うまく伝わってないのかなぁ…って」
愛梨(真司)は、愛梨のふりをしながら
麗に向かって言うー。
”最近、おしゃれをするようになったー”
それはー
愛梨の身体を遊んでいるわけじゃない。
周囲から入れ替わりを悟られず、
そのまま元に戻れるように、
今まで愛梨がしてたおしゃれを”我慢して”しているー。
最初はボーイッシュな格好で大学に来たりもしたけれど
周囲から”最近、愛梨変だよ~”と言われたため
真司は、”愛梨のために”違和感を我慢して
女の子らしい格好をするようにしたー。
”困る”
それも、誤解だー。
確かに、入れ替わる前に香澄に”困る”と言ったことはあるー
しかしそれは、
愛梨のことを言ったのではないー
「愛梨なんてやめてわたしと付き合ってよ」と言ってきた
香澄のことを言ったのだー
真司の言い方が悪かったのかもしれないー
だが、香澄は”愛梨のこと困ると言った”と解釈したのだろうー
黙っていたのはー
愛梨に余計な心配をかけさせないためー
「--わたし…ね、恋人できるの初めてだし、
とにかく大事にしてあげようって思ってるんだけど…
なんかね…うまくいかないの。
真司からも…色々疑われてるし」
愛梨(真司)が呟くー
”家族の愛情”を知らない真司は、
不器用だったー
愛梨のことが好きだし、
とっても大切にしたいけれどー
どうしても”変な方向に過保護”になったりしてしまって、
その結果、誤解を招いているー
「----…」
入れ替わりのことを周囲に広めないようにしてるのも
”元に戻った時に影響がないように”するためー。
でも、それが愛梨を不安にさせているのかもしれないー
「--…川上さんはさ…
相手に気を遣いすぎなんだよ、きっと」
麗が優しく微笑む。
「橋口くんもそうだけど、”相手のことを考えすぎて”
隠し事しちゃうから、かえって、相手を苦しめる
ことになっちゃってるんじゃないかな?
もちろん、隠し事も大事なこともあるけど…
橋口くんと川上さんの場合は、もう少し、こう…
オープンになればいいんじゃないかな?って
そう思うの。
ほら、橋口くんが色々聞いてくるのは、
川上さんのこと、気にしてる証だよ!
人間って、興味が無くなったら
相手に色々問い詰めたりしなくなるでしょ?」
麗の言葉に
愛梨(真司)は静かに頷くー
”愛梨のために”
そう思って色々隠していることが
かえって、愛梨を不安にさせているのかもしれないー
「似てるー」
麗がふと、呟く。
「え?」
愛梨(真司)が言うと
麗はほほ笑んだー
「-川上さんも、橋口君も、相手のこと
すっごく好きって気持ちが溢れ出ててー
高校時代の後輩のカップルのこと、少し思い出しちゃった」
麗が笑うー
「あの子たちもーー
お互いのこと、ホント好きそうだったなぁ」
麗が懐かしそうに言うー
その二人はー
とても、仲良しだったー。
とあるトラブルで、一度は引き裂かれたけれど
一生懸命本音をぶつけ合ってー
彼らは、無事に復縁したー
「--タイプは全然違うけど
川上さんと橋口君もきっとうまくいくよ」
麗はそう言ってほほ笑んだー
「でも、
そのためには、もうちょっと
二人ともオープンにならないとね」
麗の言葉に、
愛梨(真司)は「ありがとう」と呟いたー
そうだー
今は”入れ替わり”の緊急事態ー
だからこそ、
愛梨に本当のことを話すべきだー
おしゃれしてる理由も、
周囲に隠そうとしてる理由も、
メイドカフェを続けている理由もー
”独りよがり”ではだめだー。
たとえ、愛梨のためでも
言わなきゃ愛梨は不安になってしまうー
「ーーお礼は、ジュース1本でいいよ」
麗は自販機を指さしながら笑ったー
「--はぁ~」
愛梨(真司)は苦笑いしながらため息をつく。
「天童さんって、そういう腹黒なところがなければ
優しいんだけどなぁ~」
すぐに”見返り”を求めることから
麗は腹黒と呼ばれているー
「--わたしが優しくするのは
見返りが欲しいからだもん」
麗の言葉に、
苦笑いしながら愛梨(真司)は麗に
ジュースを1本奢ったー
愛梨(真司)が立ち去っていくー
真司(愛梨)に、ちゃんと、全てを話そうと決意してー。
「----」
麗は、愛梨(真司)に買ってもらったジュースを飲みながら
夕日の方を見つめるー
”優しすぎて、辛くなっちゃったー”
屋上ー
麗の方を見つめながら、少女が悲しそうに涙を流すー
脳裏によぎる”過去”ー。
麗は、”過去”を頭から消し去るように、
首を振ると、ジュースの缶を握りしめるー
「----」
そして、深くため息をつきながら
ジュースを飲み終えると、麗は一人、その場から立ち去ったー
⑨へ続く
・・・・・・・・・・・・・
コメント
入れ替わり長編第8話でした~!
小説とは関係ないですが
暑いので熱中症に気を付けて下さいネ~!
今日もありがとうございました!