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綾音は震えていたー


さっきの光景ー

薫が、もう一人の女から出てきた謎の影に、

まるで”着られた”かのように見えた

不気味な光景ー


「--どうしたの?」

薫がクスリと笑う。


「ど、、どうも、、しないよ…だいじょうぶ」

綾音は無理して笑みを浮かべる。


「も~!綾音ってば、都市伝説みたいな話を

 信じすぎ~!

 幽霊なんているわけないでしょ~!」

恵美が綾音をポンポンと叩きながら言う。


「--ふふふ…」

薫がニヤニヤと笑みを浮かべるー


”いつもの薫とは違うー”

綾音はなんとなくそう思ったー。


しかし、薫がおかしな行動を取るわけでもなく、

そのまま時間は過ぎていきー

仲良し3人組の旅行の初日は終わった。


「ねぇ、綾音、ほんとに大丈夫?

 なんだかずっと顔色悪いケド…?」

恵美の言葉に、綾音は「う、、うん…」とだけ答える。


とにかく、”恵美にだけ”なんとか

伝えなくてはいけないー。


綾音はそう思いながらも、薫が一緒にいる以上、

自分が見たものについて、伝えることができないまま

布団の中に入ったー


・・・・・・・


深夜ー


薫は、真っ暗な部屋で立っていたー


「--んふふ…♡」

自分の胸を触る薫。


「--…いい身体…」

薫がニヤァ…と笑みを浮かべるー

穏やかなお姉さん気質の薫が絶対に

浮かべないような、悪い笑みー。


「----はぁ…♡ はぁ…♡」

薫が、ズボンを脱ぎ捨てると、

露わになった太ももをニヤニヤしながら触るー。


「はぁぁぁ…♡♡♡」

なぞるようにして、味わうようにしてー

ズボンを脱ぎ捨ててパンツ姿の薫が

クスクスと低い声で笑うー


「……でも、”この女”よりーーー」

薫が飢えた表情で、寝ている恵美の方を見るー


「いいなぁ…」

薫が涎をじゅるりと垂らすー。


「--------」

ぶるぶるぶるぶるぶる…


綾音は”起きていた”

寝たふりをして、薫の様子を密かに

確かめていたー


震えが止まらないー

夜中に胸を触ったり、ズボンを脱いで

太ももを触ってるなんて、普通じゃないー


薫は、そんなことするコじゃないー。


「---…」

綾音はがくがくと震えるー

布団にもぐりながらわずかな

隙間から薫の方を見るー


”この女って…なに?”

綾音は震えるー


見た目は薫なのに、

薫じゃないー?

自分のことを他人のように言うなんて…


「----ふひっ」

笑みを浮かべた薫の頭がパックリと割れるー


中からーーーー

黒い人影のようなものが出てくるー


「ふひひひ…ひひひひひ…

 おぉぉぉぉ…ついつい感情が高ぶりすぎたかぁ~」

薫と、黒い影が同じ言葉を発するー


真っ二つに頭の部分が割れた薫が、

再びー

まるで、服を着るかのように、と🄱閉じていくー。


そして、薫に戻ったー


綾音は、そんな恐ろしい光景を見て

ショックで気を失ってしまったー。


悲鳴を上げる前に気を失ったのは

幸いだったかもしれないー


・・・・・・・・・・・・


翌朝


「おはよ~!」

恵美が笑いながら綾音を起こす。


「--お、、おはよ…」

綾音は冷や汗をかいていた。


「--あ…あれ」

綾音が部屋を見渡す。

薫の姿はない。


「--薫は?」

綾音が言うと、

恵美は「あ~、薫は、なんか散歩してくるって言って

さっき部屋から出て行ったよ~!」

笑う恵美。


「--め、、恵美…あ、、あのね」

綾音が慌てて言うー


昨日の夜ー

薫の様子がおかしかった。


しかもー

薫の頭がぱっくりと割れて

中から何かが出てきたようにも見えた。

あれは、夢だったのだろうか。


それともー。


でも、いずれにしても

ホテルの外の浜辺で

”何か”が薫に入っていくのは間違いなく見た。


早く、恵美にそれを伝えないとー


綾音は、必死に昨日の出来事を伝えたー。


すると、恵美は大笑いしたー


「--も~~~!なによそれ~!

 薫、さっきも普通だったよ~~!!


 も~~おっかしいなぁ~」


恵美はゲラゲラと面白そうに笑っているー


「---ち、違うよ!作り話じゃないし

 見間違えじゃないんだってば!」

綾音が必死に叫ぶ。


「--も~わかったわかった~!

 薫の中に誰かいるのかもね~!

 あはは!」


恵美は真面目に受け取っていない。

元からこういう性格だから、

分かってもらうのは、さらに難しいー


ガチャー


「-!」

綾音がビクッとして振り返る。


薫が部屋に戻ってきたー。

今日も落ち着いた服装の薫。


「あら、綾音おはよ~!」

ほんわかとした雰囲気で笑う。


確かに、おかしなところはないように見えるー


でもー


「--あ、ねぇねぇ薫ってば聞いてよ~!」

恵美が、綾音に言われたことをー

言ってしまったー


「え!ちょっと!恵美!」

綾音が慌てて止めようとするー


しかし、恵美は全部伝えてしまった。


”綾音が昨晩、見た”という話をー


「--そんなことあるあけないじゃない~!」

薫がニコニコしながら言う。


「安心して~!わたしはわたしよ!」

薫はそう言うと、綾音の方を見て

にっこりとほほ笑んだ。


「ほら~!心配性な綾音~!」

恵美も笑っているー


違うー

絶対ー

絶対何かあったのにー


”♪~~”

朝食を知らせるアナウンスー。

朝食は1階の食堂で提供されるー。


「あ、朝ごはんできたって~!

 どんなご飯かな~!」

恵美が嬉しそうに部屋から出ていく。


「---」

綾音もそのあとについていく。


「---おい」


「--!!」

綾音が立ち止る。


部屋の中にいた薫から

呼び止められたのだ。


「-----見たんだ?」

薫が睨むようにして言う。


「--ひ…っ…」

綾音はぶるぶると震えながら

薫の方を見るー


「--ふ~ん…

 そっか~…

 じゃあ仕方ないね」

薫はそう言うと、

自分の頬をべたべた触りながら笑った。


「この女は、”皮”になったの…

 くひひひ…

 元々は女子高生の弥津子って子に

 憑依してたんだけど”飽きた”から

 ”乗り換え”ちゃった!

 くへへへへへ…」


薫が笑いながら指をペロリと舐める。


「お友達、いい身体だねぇ~」

薫がクスクスと笑うー


「--……か、、、か、、薫…じゃないの…?」

綾音が震えながら言う。


「--薫~?

 ふふん。身体は薫だよ~~!!

 ひひひひひひ」


薫はそう言うと、

綾音の背後の壁をドンと叩いて、

その綺麗な顔で綾音を睨んだー。


「--俺はさぁ、

 小さいころから、ひっでぇ顔でさ、

 顔でいじめを受けたんだ。

 わかるか?


 だから、かわいいやつとか、

 かっこいいやつを見るとむかつくんだ。


 そんな奴らをまるで服のように皮にして

 着てやってー

 その人生と姿を奪う。


 ゾクゾクすんだろぉ?」


薫が、穏やかな声色で、乱暴な言葉を吐く。


「か、、薫…目を覚まして…!」

綾音が泣きそうになりながら言う。


だがー

薫は笑う。


「無駄だ。この女は全部俺のものだ」

薫はそう言うと、

「でもー」と呟いた。


「すぐに返してやるよ。

 お前の友達の恵美ちゃん…だったっけ?

 あいつの方が俺好みだからなぁ…


 ひひひ…ひひひひひひひひひひ!」


薫が下品な笑いを浮かべながら

そのまま立ち去って行くー。


綾音はしばらく震えが止まらなかったー


食堂に向かうと、

恵美が、何やら、旅館の外の方を見つめていたー。


「どうしたの~?」

薫がニコニコしながら言うと、

恵美が「なんかあったみたい」と呟く。


浜辺に人が集まっているー


旅館の浜辺にはーー

行方不明になっていた女子高生の弥津子がー

まるで”脱ぎ捨てられた着ぐるみ”のような状態となって、

倒れていたー


完全に、死んでいるように…

いいや、人間ですらない状態になってしまっている。


旅館の女将・純恋が、

倒れている弥津子の姿を見つめているー。


「警察に通報して」

スタッフに指示をすると、スタッフが頭を下げた。


「あ、、あの…何かあったんですか?」

恵美が尋ねると、

女将・純恋が変死体が見つかったことを告げたー


「----き、、、昨日…その子から

 出てきた黒い人影が薫の中に入って行ったんだよ…!」


綾音がすかさず言う。

恵美に信じてもらうチャンス、

そう思いながら。


しかしー

恵美は笑うだけだった。


「あははは!たまたまでしょ。

 この子は可哀そうだけど、

 行方不明になってたってことは

 事件か事故か、自殺か…

 どれかだよね」


恵美はそこまで言うと、

「オバケなんていないからだいじょーぶ!」と

可愛らしく腕を振ったー。


・・・・・・・・・・・・・・


2日目も、海で遊ぶ三人ー

しかし、綾音は気が気ではなかった。


「ちょっと一旦旅館に戻ってるね」


そう告げると、綾音は旅館に戻り、

スマホをいじり始めたー


”身体を求めて徘徊する女幽霊”の噂ー。


薫を皮にして乗っ取った”黒い影”が、

その女幽霊なのではないかー、と

綾音は考えていたー


そしてーーー

その幽霊の正体を突き止めることができればー


ただーーー


「--俺はさぁ、

 小さいころから、ひっでぇ顔でさ、

 顔でいじめを受けたんだ。

 わかるか?


 だから、かわいいやつとか、

 かっこいいやつを見るとむかつくんだ。


 そんな奴らをまるで服のように皮にして

 着てやってー

 その人生と姿を奪う。


 ゾクゾクすんだろぉ?」


薫はそう言っていたー

薫を皮にした謎の黒い影は

”男ー?”


都市伝説になっているのは

”身体を求めて徘徊する女幽霊”だー。


綾音は不安そうに過去の事件の記事を調べ続けるー。


確かにー

昨晩、花火を持った女の中にいた、あの黒い人影が

薫を皮にして、薫の中に入ったー


女の人ばかりを乗っ取っているのかもしれないー

行方不明の女子高生・弥津子も、あの黒い人影に

皮にされて着こまれていたに違いないー


”身体を求める女幽霊”とは、

そういうことかもしれないー

乗っ取られた女の人が、次の女の人の身体を奪うー。


だからー

”身体を求める女幽霊”という都市伝説が

出来たのだとー。


「----!!」

綾音は表情を歪めたー


3年前の事件ー

ひとりの男子大学生が”自殺”したという事件の記事ー。


遺書には

”次はイケメンか、かわいい子に生まれたい”と

書かれていたのだと、その事件の記事に書かれているー


「この人だ…」

綾音は思うー

この人の亡霊が、薫を乗っ取っているー


だったら、早く説得してー

どうにかしないとー。


”石峯 陣伍(いしみね じんご)”

3年前に自殺した大学生ー。


綾音は決意する。

恵美は、信じてくれそうにないから、

恵美が何かをされる前に、

薫を乗っ取った陣伍を説得するのが早いだろうー、と。


”生前は花火が好きで、

 花火職人の父の影響を受けて、

 花火職人になりたいと夢を語っていたというー”


ニュース記事にはそう書かれていたー


「---」

昨夜、薫を乗っ取る前に、乗っ取られた弥津子が

花火を持っていたことを思い出すー


やっぱり、薫を乗っ取ったのは、この人だーーー!


とー


やがて、日が暮れ始めて

恵美と薫が戻ってくるー


綾音は、薫を呼び出すと、

薫は、「いいわよ」と笑みを浮かべたー


旅館のラウンジにやってきた綾音と薫。


恵美は”え~?二人で内緒話~?”などと

不貞腐れていたが、なんとか落ち着かせたー。


「---お願いします。薫を返してください」

綾音が震えながら言う。


「--……」

薫は足を組みながら、見下すように綾音の方を見ているー

いつもの薫とは別人のような雰囲気ー


「--石嶺 陣伍さん」

綾音が、イチかバチかでその名を口にするー


3年前に自殺した大学生の石嶺が

薫を皮にして乗っ取ったのではないかとー。


そう思いながらー


「---…ふふふ…

 よくわかったな」

薫がうすら笑みを浮かべながら、旅館の自販機で買った

煙草を取り出してそれを吸い始めるー。


薫は煙草を吸わないー

そんな薫の煙草を吸う姿は、不気味に妖艶だったー。


「---か、、薫を…!薫を返してください!」

綾音が言うと、

薫はほほ笑んだ。


「-ーーーくくく、この女は、俺が皮にしてやった時点で、

 橋口 薫 としての人生を終えたんだよ。」


ニヤニヤしながら言う薫。


「--今のこの女はもう、石嶺 薫だ。 ぐへへへへへ」

薫を乗っ取った男が、自分の苗字を薫に無理やり

くっつけて、そう宣言したー


”返す気がない”


薫を乗っ取った石嶺の言葉にー

綾音は、そう感じて、絶望するのだったー。



③へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


まだまだ恐ろしい展開が待ってますよ~☆

続きは、また週末ぐらいに~☆!

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