Home Artists Posts Import Register

Content

これが、あなたのエンディングー。

これが、明美のエンディングー。


終わりにしましょうー。


もう、十分でしょう?

もう、満足したでしょう?


あとはー

倉本くんの手で、明美を染め上げれば終わりー。


倉本君色の明美にー。


それで、全部元通りー。


でもね…

明美の心の傷は、きっと永遠に消えないー


信じた彼氏に、憑依されて、

自分の都合の良いように変えられたという事実は、

永遠に、明美の心に残り続けるー。


”元の明美風”に戻ったとしても、

明美はいずれ、苦しむことになるー

壊れることになる。


明美が壊れればー

わたしは、それでいい。

それが、どんな形でも。

明美が邪魔なのだからー。


倉本くんー。

一度黒く塗りつぶされた画用紙は 

上から白く塗ることはできても、

”最初の白”には、

もう、戻らないー


でも、それしか方法はないの。


さぁ、倉本くんの手で

幕を引くのー


わたしが、エンディングへの道しるべを

奏でてあげるからー。


・・・・・・・・・・・・


倉本 康成

2年B組生徒。彼女が憑依されてしまう。


藤森 明美

2年B組生徒。お茶目な性格。憑依されてしまい…?


柳沢 零次

2年B組生徒。康成の親友。


篠塚 沙耶香

2年C組生徒。生徒会長。同じ中学の出身。


哀川 裕子

2年B組生徒。陰険なお嬢様


間宮 結乃

2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。大人しい性格。


国松 千穂

2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。スポーツ大好き。


倉本 夏帆

康成の妹。中学生。


☆登場人物詳細は↓でどうぞ☆

(いつも書いている注意ですが、

 ¥300と出ていても、このお話を読めている人は

 既にプランご加入頂いている皆様なので、別途料金がかかったりはしません!)

fanbox post: creator/29593080/post/891606

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


空から、雪が落ちるー。

見慣れた校舎の風景はー

雪景色へと変わっていくー。


まだ、多くの生徒が登校していない朝の時間帯。


音楽室では、

康成が”黒幕”間宮 結乃と対峙していたー。


「---明美を元に戻す方法は、それしかないの。

 倉本くんが、明美に憑依して、

 明美の思考と記憶を、元の明美と同じような感じに

 塗りつぶすのー」


結乃の言葉に、

康成は、結乃から渡された憑依薬を手にしながら

明美を見つめたー


明美は、悪態をつきながらも、

手をぶるぶると震わせていたー


”怖がっているー”

自分が、憑依されて、

”また”変えられてしまうことをー

今の明美は怖がっているー


確かに、結乃の言う通り、明美に憑依して、

明美の記憶や、思考を、

元の明美と同じような状態に塗りつぶせばー

”元の明美のような”明美に戻るかもしれないー


けど、それはー

結乃の言う”黒く塗りつぶされた画用紙”を

上から白い絵の具で塗りつぶしただけー


最初の白ではない。


つまりー

”元の明美であって、明美ではない”


「--明美…ごめん」

康成はそう呟く。


明美は舌打ちしながら目を瞑るー。

自分は康成に憑依されて、

”康成が好きだったころの自分”に戻るー


でもー

そしたら、今の自分の気持ちはー?


明美はそう思いながら

唇をかみしめるー。


「---俺は、明美にーーー」

康成は、叫ぶー


結乃が勝ち誇った表情で笑っているー


しかしー


「--!?!?」

「--え?」

結乃と明美が驚くー


康成は、結乃から受け取った憑依薬の入った容器を

音楽室の床に投げつけてー

それを足で踏みつぶしたー


音を立てて割れる容器ー


「---俺は、、明美に憑依なんて、できない!」

康成が叫ぶー。


「--あんた…」

明美が康成の方を険しい表情で見つめるー


「……え……は???い、、意味わかんないんだけど?」

結乃の表情から笑みが消えるー。


「--明美を元に戻すにはーー

 わたしの言う通りにーー」


「---明美は明美だ」

康成は呟くー


「今の明美も、憑依される前の明美も、

 明美は明美なんだ!


 明美に憑依して、自分の都合のいいように

 変えるなんてことしたら…

 間宮さんや高藤と同じじゃないか…


 俺には…そんなこと…できない」


康成の言葉に、

結乃は失笑したー。


「ふ~ん………」


結乃は不愉快そうだー。


別にこのままでもいい。

明美が落ちぶれたのは事実だ。

康成に憑依されていじられたー、という事実で

明美に精神攻撃を仕掛けて明美を完全に壊そうとしていたが、

別に今のままでもいい。


明美はもう、元には戻らないー


「----消えて」

結乃が呟くー。


「もう、倉本くんたちに話すことはない」


その言葉に、明美は

「---ふん」

と、呟いて音楽室の外に出ていくー


「-----」

康成も、複雑そうな表情を浮かべながら、

明美の後を追おうとするー。


これ以上ーー

結乃と話していても

解決策は見出せそうにない。


結乃は、ピアノの椅子に座ると、

笑みを浮かべるー


「--間宮さん」

康成は、音楽室の出口の前で立ち止まると、

振り返って結乃の方を見た。


「--なに…?文句あるの?

 ……倉本くんには、わたしが

 どれだけ苦しんだか、分からないでしょ」


結乃が不愉快そうに呟くー


「…分からないよ…間宮さんの家庭環境も…

 明美への思いもー

 こんなことをしようと思った気持ちもー


 …でも、間宮さんが、そんなに苦しんでたなんて

 知らなかった…

 ……本当に、ごめん」


康成が悲しそうに謝罪の言葉を口にするー


”明美に対する異様なまでの嫉妬”


早く気づいてあげられていればー

もしかしたら、こんなことにはならなかったのかもしれないー


「---お人よし…」

結乃が少し悲しそうに呟くー。


「-----…でも俺は…」

康成が口を開くー


窓の外の雪景色を見つめながら

康成は色々な感情が混ざったまま、

吐き捨てるように呟くー


「間宮さんを…絶対に許さない」

康成が結乃の方をまっすぐ見つめるー。


「--明美を傷つけてー…

 俺を、零次を、、

 高藤も、哀川さんも…

 いろんな人を巻き込んだ間宮さんを…

 俺は許さない…」


康成の言葉に、結乃は少しだけ笑うー。


「--お好きにどうぞ…

 憑依は、犯罪じゃないから、

 どうすることもできないでしょ?ふふ」

結乃は、康成の方を見ずに、そう呟いた。


康成は、音楽室から立ち去ろうと、

結乃に背を向ける。


そしてー呟く。


「--許せないけど…

 それ以上に……

 ……悲しい…」


結乃のことも、仲間として信じていたのにー

それなのにー


「----」

結乃は答えない。


康成は、そのまま音楽室から立ち去ったー。



「-----」

結乃は、音楽室の入り口の方を見つめるー


「-----…綺麗ごとばっかり」

そう呟くとー

結乃は鞄から

”本当に最後の憑依薬”を取り出してー

不気味な笑みを浮かべたー


康成に”最後の憑依薬”と言って渡したのは、

”嘘”-

本当に最後の憑依薬は、今、結乃の手にあるものだー。


結乃は、呟くー


”明美を、、本当の意味で、壊しちゃおうかな…”


とー。


・・・・・・・・・・・・・・・・


「-----」

康成は音楽室の外に出て、

廊下を歩き始めるー


「---ねぇ」

明美が、廊下で待ち構えていたー。


「---…明美…ごめん…」

康成は頭を下げるー。


明美を元通りにすることができないことー

明美が怖がっていることに直前まで気づけなかったことー


そして、何よりもー

一瞬”迷った”ことー。

結乃に言われた通りー

明美に憑依して、明美を”元の明美風”に戻そうと

一瞬、誘惑に負けそうになったことー


康成は、一瞬でも迷ったことに、

悔しさー

申し訳ないという気持ちー


色々な感情を抱いていたー。


「--……わたしを元に戻すチャンスを

 自分から捨てるなんて」

明美が愛想なく呟く。


「--…憑依して、思考と記憶をいじれば

 確かに、明美はまた俺のこと好きになって

 くれるかもしれないー」

康成が悲しそうに言う。


「-----」

明美は康成の方を睨むようにして見ているー


「でも…


 自分の都合のいいように、

 明美を変えるなんて…

 俺にはできない」


康成が首を振りながら言うと、

明美は、「ーーー馬鹿ね」とだけ呟いたー


窓の外の雪を見つめるふたりー。


「-----…放課後、時間ある?」

明美が呟いた。


「え?あ、あるけど…?」

康成が答えると、明美が康成の方を見つめるー。


「--教えて…

 わたしと、あんたのこと…」


「え…?」

康成が首を傾げると、

明美は続けたー。


「--憑依されて消された記憶は

 もう戻ってこないんでしょ?


 だったら…教えて。

 あんたとわたしの思い出を…」


明美の言葉に、康成は少しだけ笑う。


「--わかった…

 いくらでも、教えるよ。」


康成の返事を聞いて、わずかにほほ笑む明美ー。


「……ーーーじゃあ、放課後にー」

明美はそれだけ言うと、足早に立ち去って行くー。


「---」

康成は、明美の後ろ姿を見ながら悲しそうな

表情を浮かべるー


もうーー

明美と前のような関係に戻ることはできないのかもしれないー


以前の明美を取り戻すことはできないのかもしれないー。


そう思ったらー

急に、悲しみがあふれ出しそうになったー…。


窓の外の雪を見つめる康成ー。


明美と共に歩む未来はーー

もう、ないのだろうかー。


明美と過ごした日々は、

夢のように、”思い出の世界だけの存在”に

なってしまうのだろうかー。


・・・・・・・・・・・・・・・


昼休みー


康成は生徒会室に

沙耶香、零次、千穂を呼び出したー。


「---結乃は…?」

千穂が不安そうに言うー。


「----」

康成は表情を曇らせるー。


明美・千穂・結乃の3人で

いつも行動していることが多かったー。


もしもー

千穂が結乃の企てた”憑依”に

全く無関係なら、千穂は大きなショックを受けるだろうー。


「----それは」

康成が重々しく口を開く。


「---ねぇ、なんで、結乃を呼んでないの?

 ”犯人”わかったんでしょ?」


千穂らを、”犯人が分かった”と呼び出した康成ー


千穂は、結乃の姿がないことに

違和感を感じて、動揺していたー。


「---高藤に憑依薬を渡したのはー」

康成は悲しそうに、その名前を口にするー


「--間宮さんだった」


「----」

零次が悲しそうに目を逸らすー。


零次は、”高藤に結乃が憑依薬を渡している場面”を

目撃していたから、既に知っている-


「--え…?は??いや、意味わかんないんだけど」

千穂が動揺しながら康成の方に近づいていくー


「--そういう嘘、よくないんじゃない?

 ね、倉本くん。

 あたし、結乃とずっと一緒にいたけど、

 結乃、そんなことする子じゃないよ?」


千穂の表情には焦りや悲しみ、

色々なものが入り乱されているー


生徒会長の沙耶香は、驚きながらも

悲しそうに、それを受け入れるー

”間宮さんが、黒幕だったなんてー”とー。


「--ーーー嘘じゃないんだ…」

康成が悲しそうに呟く。


「は!?!?え???待ってよ??へ??

 なんで結乃が???

 は?嘘はやめようよ!ねぇ、ちょっと!!」

康成の腕を掴んで千穂が、泣きそうになりながら言う。


「---……嘘じゃない」

零次が千穂の肩を掴む。


「--俺も見た…嘘じゃないんだ…」

零次が悲しそうに言うと、

千穂は「うそ…うそ…!」と言いながら

激しく動揺して、泣き出してしまうー。


「---…国松さん」

沙耶香が心配そうに、千穂のことをなだめるー。


「----…悪かった」

零次が康成に頭を下げるー


”知っていたのに、妹を守るために

 伝えることができなかったーー”


「--俺が零次の立場ならー

 俺もそうしたかもしれない…

 気にするなよ」

康成は少しだけ笑いながらそう言うと、

零次は「本当にすまねぇ」と呟くー。


康成が、結乃のことを説明するー。


結乃は憑依薬を使い果たしたー。

それに、零次の妹の深雪や

康成の妹の夏帆に憑依するつもりは

元々ないようだったー。


康成から、その話を聞いた零次は

安堵の表情を浮かべるー


結乃の話が本当とは限らないが、

深雪が狙われる理由は、

もう、ないだろうー。


「---でもよ、康成…

 藤森さんは…」

零次が心配そうに言うと、

康成は、悲しそうな表情で零次を見たー


「ーー俺、一瞬だけ、迷ったんだ…

 間宮さんの言う通り、

 明美に憑依して、明美を

 元通りに戻そうって…

 一瞬、思っちゃったんだー」


康成は悔しそうに呟くー


「でも…そんなことしたら、

 高藤や間宮さんと同じだ…

 今の明美だって、必死に色々考えてるのにー

 俺は、そんな明美に憑依して

 明美を自分の都合のいいように変えようとした…」


「---康成…」

零次は、悲しそうな康成を見つめながら呟くー


「ーーーお前は悪くねぇよ。

 俺がお前の立場なら、俺も同じことを考えたと思うし、

 それにーーー…

 一瞬、憑依しようとしたのだとしても、

 お前はしなかったんだ。


 だから、高藤や間宮さんとは全然違うだろ。な?」


零次の言葉に、康成は頷くと、

「俺は…無力だな…」と悲しそうに呟いたー


結局ー


明美を助けることもー

元通りにすることもできずー

間宮さんの闇を晴らすこともー

何もできなかったー。


「------……」

生徒会室の窓の外を見つめる康成ー


雪は、寂しそうに振り続けているー。


まるで、今の康成の

悲しい気持ちを表すかのようにー。


・・・・・・・・・・・・・・


放課後ー


”黒幕”が分かって暗い雰囲気の康成たちー。


クラスメイトたちは、いつも通りだー。

明美に絡んでた行事好きの男子・久保は、冬休みに

やりたいことを話しながらウキウキしているし、

オカルト好きの萌愛は、一人何か変な本を読んで

ニヤニヤしているー。


いつも通りの日常ー


”黒幕”ー

結乃も、何食わぬ顔で、教室から立ち去って行くー


「----」

千穂は、そんな結乃の後を追うー。

結乃と明美の親友である千穂は、

誰よりも、黒幕=結乃を知ってショックを受けていたー


「俺も…そろそろ行くか」

康成が呟くー

屋上で明美と話す約束をしているー


明美に、全てを語るー。

自分と明美の思い出をー


その上で明美がどんな判断をしてくれるのかは

分からない。


けれどー…

それでもー

逃げるわけにはいかないー


康成たちが教室から出ていくのを悲しそうに見つめる零次。


そして、零次もまた、”待ち合わせ”の場所に向かうー。


朝ー

零次は、生徒会長の沙耶香に告白したー


「あ、、いや、、その、、す、、好き… 好き…」


「え???」


「しゅき…」


沙耶香は、驚きながらも

時計を見つめてほほ笑んだー。


「---返事は、放課後でいいかな?」

とー。


零次は、”答え”を聞くために

生徒会室へと向かうのだったー。


・・・・・・・・・


雪が降り止んで夕日が差し込む屋上ー


「----」

先に来ていた明美が振り返るー。

康成は、「お待たせ」と優しく呟くと、

明美に対して話し始めたー


自分と、明美の思い出をー


どの記憶が消されているのかー

どんな風に書き換えられたのかー

どんな風に思考を塗りつぶされたのかー

それは、分からないー


だからこそー

康成は丁寧に思い出を話すー

とても楽しそうにー

懐かしそうにー

けれどもー悲しそうに


思い出を話す康成を

明美は、何も言わず、黙って、

真剣に聞いていたー


屋上の椅子に隣同士で座りながらー

康成が思い出を話し続けるー


・・・・・・・・・・・・・


「----」

音楽室ー。


結乃は、ピアノの練習を続けていたー。

放課後の時間も使って

ピアノの発表会のための練習を続ける結乃ー。


そこにーー

テニスラケットを背負った

千穂がやってきた。


「結乃!」

千穂が怒りの形相で、音楽室の扉を開ける。


「--千穂」

結乃がいつものようににっこりとほほ笑むー。


「…なんで…!どうして!!!」

千穂が悲しそうに言う。


結乃はピアノの演奏をやめて、千穂の方を見るー。


「----聞いたの?」

結乃が静かに呟くー。


「ーーなんでそんなに冷静なのよ!」

千穂が声を荒げる。


「どうして???

 あたしたち、友達だったでしょ!?!?

 明美に…なんで、あんなひどいことするの!?!?」


千穂の目には涙が浮かんでいるー


信じていた結乃に裏切られた悲しみー

怒りー

色々な感情が混ざり合っているー。


「---…最初にひどいことしたのは明美…

 テストでも、ピアノでも、なんでも…

 わたしの邪魔をするから!」

結乃がピアノを叩くー。


「--明美なんて、滅茶苦茶に壊れちゃえばいいの」

結乃はそう呟くと、笑みを浮かべるー


パチン!


「---!」

千穂が、結乃をビンタしたー


結乃が驚いた表情を浮かべているー


「--信じてたのに!!

 友達だと思ってたのにーーー!!!


 バカ!!!!!!」


「---……」

結乃が、悔しそうな表情で千穂を見つめるー


「--…なんで…こんなの…辛すぎるよ…」

結乃にビンタして千穂が、その場に泣き崩れるー


千穂と結乃は、親友の間柄で、

明美も含めてとても仲良しだったー


その親友に裏切られた千穂はーー

他の誰よりも、結乃が”黒幕”であったことに

心を痛めていたー


「----……」

結乃は、立ち上がると、

そのまま音楽室の外に向かって行くー


「--千穂はいいよね…

 なーんにも考えてないから」

結乃が、音楽室の出口付近で、立ち止まって言う。


「--はぁ!?!?あたしが単細胞って言いたいの!?」

千穂は泣きながら叫ぶ。


「---そんなこと言ってないよ」

振り返った結乃は、とても悲しそうな表情だったー。


「-……千穂みたく…なんでも前向きに考えられたら

 良かったのにな…」


結乃はそう呟くと、「戸締りしておいて」と

ピアノの上に置いてある音楽室の鍵を

指さして、そのまま立ち去ってしまうー。


ツインテールを揺らしながら

立ち去って行く結乃を見つめて、

千穂は、呟くー


「---結乃…あたしが止めるから…」


親友として、してあげられることはー

それしかないー。

千穂はそう思いながら、

音楽室の鍵を握りしめたー。


「---って!

 戸締り押し付けるな!!」

千穂は一人、結乃が立ち去った方向を見ながら叫んだ。


・・・・・・・・・・・・・


「ーーー…」

生徒会室。


沙耶香と零次が話している。


「篠塚さんが、康成のこと好きなのは

 分かってる…


 だから、2番でもいい…

 篠塚さんと一緒に…その、なんて言っていいか

 わからないけど、とにかく、好きなんだ」


零次が顔を真っ赤にしながら言うと、

沙耶香は優しく微笑む。


「ありがとうー」


その言葉に、零次は希望を抱くー


しかしー


「----でも…

 ”今”は、まだだめー。」


沙耶香が零次の方を見る。


「ーーーえ…あ、、そ、そっか、

 そうだよな。

 康成と藤森さんが大変な時期に…」


零次が言うと、

沙耶香は首を振った。


「違うの…。

 ーーーでも、だめ…。」


「--え…」

零次が悲しそうな表情を浮かべると

沙耶香は少しだけほほ笑んだ。


「--”1番”がいいな…」

沙耶香はそれだけ言うと、生徒会室から立ち去ったー


零次はその後ろ姿を見送るー


「---……やっぱ、、そうだよな」

”1番”

それはー康成のことだろう。


零次は残念そうに、窓の外を見つめたー


また、雪が降ってきたー。


・・・・・・・・・・・・・・


「----こんな、感じかな」

康成が、静かに言うー。


屋上ー


再び降り出した雪を見つめながら

康成は話を終えたー。


明美との思い出の話を全て語り終えたー。


”元に戻ることはできない”


だからこそ、明美は、

”正しい出来事”を聞きたかった。


自分が康成とどんな思い出を作ってきたのかー。


もちろん、大半の記憶はある。

自分がどう生きてきたのかは分かっているー


けれど、明美に憑依した高藤は、

明美の”康成に対する好意”に関する記憶や思考を

滅茶苦茶にしたー。


だから、康成が今、話してくれた思い出のことはー

ほとんど覚えていないか、

”偽の記憶”に変えられていたー。


「---…前も言ったけど」

明美が口を開くー


「--わたしには、あんたとのイヤな思い出の記憶しかない。

 たぶん、憑依されたときに勝手に作られた偽物の記憶」


明美の言葉に、康成は悲しそうに耳を傾けるー。


「--……でも……そんなに楽しいことがたくさんあったなんて」

明美が屋上のベンチから立ち上がると

空を見つめながら呟くー


「--憑依される前のわたし…

 幸せだったんだろうなぁ…」


悲しそうな声ー


「明美…」

康成は、そんな明美の後ろ姿を悲しそうに見つめるー。


全部、伝えたー。

あとは、明美がどう判断するかー。


「--……あんたのこと、信じる

 今の話…全部、ちゃんと、忘れないように覚えとく」


明美はそう言うと、康成の方を見たー。


「---…そっか…。信じてくれて、ありがとう」

康成もベンチから立ち上がるー


明美からしてみればー

”記憶にないこと”を

”実際はこうだったんだ”と言われて戸惑っているだろうー。

もし康成が、明美の立場なら、やっぱり戸惑ってしまう。


でも、明美は信じてくれたー。


「----そんな風にーー」

明美が、康成がベンチに置いていた

誕生日プレゼントのオルゴールを指さすー


憑依される前の明美が、祖父に頼んで

作ってもらった

明美と康成のジオラマ付きのオルゴール。


楽しそうにしている二人が、そこにはいるー


「-…そんな風に……また、、なれるかな…」

明美が悲しそうに言うー。


「---…」

雪が降る中、康成は明美の方を見つめながら呟く。


「--俺は、今でも明美が好きだからー」

康成が言うと、

明美は康成の方を涙目で見ながら呟いたー


「----ごめん」


「え…」

康成が少しだけ戸惑う。


「----ごめん…やっぱり、

 あんたのこと、、、うざいって気持ちが消えないの」

明美が首を振るー


「---わたしは…もう……

 あんたの好きだった明美には戻れない……


 だから、、、もう…

 お別れ…」


明美の目から涙が零れ落ちたー。


「---あんたのこと…好きになることは…

 もう…絶対にないから」


歯を食いしばるようにして、

明美がそう言うと、

康成は「…そっか」と、とても悲しそうに呟くー。


「---…そっか…大丈夫…

 今までありがとう…」


康成は泣き出したい気持ちになりながら

それをこらえるー


憑依なんか、されなければーー

明美とこれからも一緒に過ごせたのにー


でもーーー

今までのことを全部話して、信じてもらえたその上で

明美がそう決断したなら、もうーーー


「---これからは…クラスメイトとして…

 よろしくな…」

康成が無理にほほ笑むと、

明美は「うん…」と、だけ呟くと、そのまま

屋上から立ち去ってしまったー。


雪は降り続けるー


屋上に一人取り残された康成はーー

一人、その場で涙を流したー



㉒へ続く


・・・・・・・・・・・・・・


コメント


黒幕も判明して、

ラストスパートに突入デス~

(まだもう少しありますケド…)


最後まで、

それぞれの人物の結末を

ぜひお楽しみくださいネ!


・天童 麗(去年の生徒会長)について その②

高藤くんの言った”会長”が

高藤くんの”中学時代の会長”=結乃であることは

最初から決まっていました。

最初は現生徒会長の沙耶香を疑って⇒実は…

という展開ですネ~!


ただ、物語を書いていくうちに

主人公たちは”2年生”なら、去年の生徒会長を疑わずに

いきなり、中学時代の方に向いちゃうのはおかしいかも…?

と、いうことで、天童麗さんが登場することになったのでした!


また、麗が登場する時点で、

”黒幕候補の女子”がだいぶ減りつつあったこともあって、

(麗が黒幕だと思った人は少ないとは思いますが)

カモフラージュの役割もありました~☆!











 


 




 

 





(Fanbox)


Files

Comments

No comments found for this post.