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「わ~~!やっぱり最高~!」

海辺で、夏空を見つめる女子大生の恵美(めぐみ)。


「----」

そんな様子をちょっと不安そうに見つめている

恵美の友人・綾音(あやね)-。


「--ふふふ~いい場所でしょ~?」

今回の”旅行”を企画した女子大生・薫(かおる)が、

笑いながら言う。


大学生活最後の夏休みを利用して

仲良し三人組の薫・恵美・綾音の3人は

海辺の宿泊施設を予約して

旅行に来ていたのだったー。


海で遊ぶのを終えて、

宿泊施設のほうに向かう3人。


電柱に

”探しています”と書かれた貼り紙を見つめる綾音ー


”藤本 弥津子(ふじもと やつこ)”

可愛らしい三つ編みの女子高生だー。


「---」

2週間ほど前に”行方不明”になったのだと、紙には

書かれているー。


「綾音~~!!どうしたの~?」

恵美と薫が、立ち止まっていた綾音を呼ぶ。


「あ…うん!今行く!」

綾音は、そう言いながら慌てて二人のほうに向かって

走り始めたー


・・・・・・・・・・・・・・


「---それにしても~」


夜ー

近くの小さな旅館の部屋で、

恵美が笑う。


「--こんないい場所、よく予約できたよね~!」

恵美の言葉に、

大人しい雰囲気の綾音が不安そうに呟く。


「でもさ…ここって…」

綾音が不安そうな表情をしているのはー

”ある都市伝説”のせいだー。


「あはは!綾音ったら、そんなこと気にしてるの~?」

恵美が笑う。


「”身体を求めて徘徊する幽霊”が夜に

 なると海辺に現れる…なんて、

 迷信に決まってるでしょ~!

 ねぇ、薫!」


元気な恵美が笑いながら言う。


「ふふ、そうね~」

薫が笑う。


「その都市伝説のおかげで、

 この旅館、廃業寸前らしくて…

 お客さんもあんまり来ないみたいだから、

 安いし、予約も取れるしで

 いいことだらけ!」

薫がにこにこしながら言うー。


「おまけに、1週間も宿泊できるなんて!

 お得だよね!」

恵美も笑う。


海に近くー

景色も良くー

設備も良いこの小さな旅館に

利用客がほとんどいないのは

”身体を求めて徘徊する女幽霊”の

噂があるからなのだー。


実際に、この旅館に宿泊してから、

”人が変わってしまった”利用客も

いるとかで、”幽霊に憑りつかれた”なんて

噂まで出ているー。


この地域で失踪した人間もいるしー、

この地域で変死体も発見されているー


そんな物騒な噂の数々から、

この砂浜と周辺の宿泊施設は

大打撃を受けていた。

観光客が、激減したのだー。


「ふ~~~!いいじゃない

 静かなプライベートビーチって感じで」

恵美が、旅館のベランダから、

海を見つめるー。


夜の海は静まりかえっていて、

波の音だけが聞こえるー。


「う…うん…」

都市伝説に怯えている綾音は、

落ち着かない様子で夜の海の方を見つめるー


「あー、わたし、温泉入ってくるね~!」

旅行の企画者の薫が、部屋の中から

ベランダにいるふたりに声をかける。


「あ、うん~!いってらっしゃい~!」

恵美が部屋の中の薫に向かって手を振るー。


何も起きなければー

女3人の楽しい旅行ーーー


そうー

”何も”起きなければー


・・・・・・・・・・・・・・


薫が帰ってこない。


「--あれぇ?薫遅くない?」

恵美が笑いながら言う。


「そ…そういえば…」

綾音が時計を見つめるー


薫が旅館内の温泉に向かってから

既に1時間以上が経過している。


「---もしかして~」

恵美が笑う。


「”身体を求めて徘徊する幽霊”に

 身体奪われちゃったとか~?」

恵美が笑う。


「--え…!?え…ええ…!?」

恵美の言葉に、綾音はぶるぶる震えながら

恵美の方を見る。


「な~んて、冗談よ冗談!

 薫、元々お風呂長いって言ってたし~

 旅館の中ふらふらしてるのかもしれないし~」

恵美の気楽な発言にも

綾音は笑み一つ浮かべない。


本気で心配している様子だ。


「わかったわかった~!

 一緒に探しにいこ!」

恵美の言葉に、綾音は不安そうにうなずいたー。


夜の旅館ー

小さいものの、ある程度の広さはある。


だがー

都市伝説や、不審な事件のせいで、

ほとんど、この旅館には宿泊客がいないー。


「---どうかされましたか?」

旅館の女将、純恋(すみれ)が、恵美と綾音に気づいて、

笑みを浮かべる。


「--あ、友達がなかなかお風呂から出てこないので~」

恵美が笑いながら言うと、

純恋が「そうですか。何かありましたらいつでも

お声掛けくださいね」とにっこりしながら立ち去って行くー


「--ここの女将さんって、すっごく綺麗で若いよね~!」

恵美が笑う。


「女将さんって言うと、

 もうちょっと年取ってるイメージあったけど~」

恵美の言葉に、

綾音は「聞こえるよ~」と苦笑いしながら言う。


雑談しながらお風呂の方に向かうふたり。


だがーー

お風呂に薫の姿はなかった。


「--あ、あれぇ~?

  入れ違いかな~」

恵美が笑う。


「--ね、、ねぇ…本当に大丈夫かな…?」

綾音は不安そうだ。


「幽霊なんているわけないでしょ~!

 だいじょうぶだいじょうぶ!」

恵美はそう言うと

”あ、スマホ部屋におきっぱだ~!”と笑いながら

「薫、部屋に戻ってるかもだから、わたし、見てくる~!

 ここで待っててね!」と

綾音を置いて一人、部屋の方に戻って行ってしまうー


「あ…待って!」

綾音は、不安になりながら恵美を呼び止めようとしたが

恵美は、もう、階段を駆け上がって

3階にある自分たちの部屋に向かって行ってしまった。


「も~…」

一人取り残されて不安な綾音は、

ロビーの自動販売機でジュースを買って、

それを口に運びながら、落ち着こうとする。


「--落ち着かないなぁ~」

綾音がため息をつく。


この旅館は素敵だし、

海も綺麗だ。


だが、

”幽霊の噂”がどうにも落ち着かないー


「---?」

ふと、綾音が、ロビーから、旅館の入り口の方を見るー


旅館の外はすぐ海辺で、

旅館から出ればすぐ海を楽しめる最高の立地ー。


「--なんか、光ってる?」

扉越しに、不自然な光を見つける綾音。


「なんだろう…?」

恐る恐る扉の方に向かって行きーー

扉のガラスになっている部分から、

外を見る。


そこにはーー

”二人の人影”が見えたー


夜の海辺に立つ二人の女ー

暗くて、誰なのかは見えないー


一人が、花火のようなものを手に持っているー


それが、光を放っていたようだー。


「---え…?」

綾音は信じられないものを見たー。


2つの人影のうちのひとつが、

”ぱっくりと割れたー”

ように見えたー。


真ん中でふたつに割れてー

中から、黒い謎のシルエットが出てくるー


「え……」

綾音は、恐怖で目を離せなくなる。


2つの人影のうちのひとつが、

割れて、その中から、黒いモクモクとしたシルエットが

出てきたのだー


「--え…うそ…」

目をこする綾音。


もう一つの人影が慌てて走り出すー。


”逃げている”ように見えるー。


だがー

モクモクとしたシルエットが、

その人影に追いつくと、

逃げていた人影のほうが”ぱっくりと割れるー”


そして、しばらくすると

まるで、モクモクが、逃げていた人影を

”着た”かのように、またもとの人影に戻って、

旅館の方に向かって歩いてくるー


「ひっ!?!??」

綾音は思わず、入り口から離れるー


今のはー?


”ふたりの女性の人影”


”花火を持っていた女性のほうが、割れて”


”中からモクモクのシルエットが出てきたー”


”そのモクモクが、もう一人の女性を追いかけて”


”追いつかれた女性がパックリと割れて、モクモクが

 まるで、着ぐるみを着るかのようにその女性に

 入っていきー、モクモクは消えて、追いつかれた

 その女性が元のシルエットに戻りー

 今、旅館のほうに歩いてきているー”


綾音は、今、自分が見た光景が信じられず、

ロビー奥のラウンジで震えていたー。


遠目でー

しかも、暗くてシルエットしか見えなかったから

見間違えかもしれないー


けどー

綾音が見た光景はーーー

”何かが、一人の女性から飛び出して

 その何かが、もう一人の女性の中に入った”

ようにしか見えなかったー


そして”何かに入られた女性が、旅館に向かってきているー”


ガチャ…


旅館の入り口が開いたー


「---!」

綾音は旅館に入ってきた女を見て驚くー


旅館に入ってきたのは、薫ー。


一緒に旅行に来ていた友達のひとりで、

お風呂に行ったきり行方不明になっていた薫ー。


「--ふ~~~~!」

薫が伸びをすると、変な笑みを浮かべた。


「あたらしい身体、げっと♡」

そう呟くと、薫はゆらりと階段を上がっていくー


「----!」

綾音は薫に見つからないように、

ぶるぶるぶるぶると震えていたー


「え…」

綾音の見た光景ーーー

薫が”何か”に乗っ取られたー


「う、、、うそ…!」

綾音は慌てて走り出すー


ロビーから飛び出して、

すぐ外の砂浜にーーー


海辺にはーーー

”もう一人”女の人影があった。


それを、確かめるためにー


綾音が海辺にたどり着くとー

そこにはーー


「ひいいいいいいいっ!?!??」

綾音は思わずしりもちをついてしまうー。


まるでー

”着ぐるみ”のような生地の

”ビリビリに破かれた何か”が、

砂浜に転がっていたー


人間には見えないー

着ぐるみだろうか。


しかしー

確実に、最初は”ふたり”いたー。

薫に”移った何か”は、最初、この女から飛び出したー


確かにさっき、人影を見た時は

人間のように動いていたー


なのに、これはー


”皮”のような生地になった女が横たわっているー


しかもー


「--!」

綾音は気づくー


この人ーーー


夕方ー

旅館に戻る途中に見た貼り紙ー


”探しています”と書かれていた

女子高生・藤本 弥津子の顔ーーー


「ひっ…!?!?!?」

綾音は怖くなって走り出すー


どういうことー?

消息不明になってた女子高生の藤本 弥津子と

薫が夜の海辺にいたー?


藤本弥津子の身体から、”何か”が飛び出して

身体が皮のようになってー

それで、藤本 弥津子の中にいた”何か”が

薫を乗っ取ったー???


「---」

綾音はふと、思い出すー


「あ…恵美!」


恵美は、薫を探して先に部屋に戻っていたー

”何かに乗っ取られた薫”も部屋に向かっていたー


「恵美が危ない!」

綾音は慌てて3階に駆け上がるー


そしてーーー


「恵美!」

部屋に真っ青な顔で飛び込むと、

そこではーー

恵美と薫がトランプで遊んでいたー


「あら!おかえりなさい!」

薫が笑う。


「--あ~!綾音~!

 やっぱ、薫、ちょうどお風呂あがったところだったみたい!

 部屋に戻ってきてたよ~!」


笑う恵美。


ちがうー


綾音は思ったー

薫は、”何か”にーーー


「--か、、薫ちゃん…あの…」

綾音はさっき見たことを口にしようとする。


しかしー

「どうしたの?ふふふ」

薫は不敵な笑みを浮かべるー。


「--…」

薫に言うのはまずいー

なんとか、恵美だけにさっきのことを伝えないとー


綾音はそう思いながら

口を閉ざしたー


「---それにしてもーー

 いいなぁ~…”その身体”」


薫が、恵美の方をみながら小声でつぶやいた。


「え?」

小声で聞き取れなかった恵美が聞き返す。


「なんでもな~い!」

薫はそう言いながらも、恵美のことを

意味深な目で見つめ続けたー



②へ続く


・・・・・・・・・・・・・


コメント


5月最初のお話は「皮」デス~!

不気味な旅館…

ゾクゾクドキドキなお話を

ぜひお楽しみくださいネ~☆!


続きは月曜日ごろを予定しています~!

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