<憑依>きみと過ごした日々⑳~真相~ (Pixiv Fanbox)
Content
ようやくたどり着いたー
”黒幕”にー。
黒幕にたどり着いたときに
抱いた感情は、”怒り”ではなかった。
もちろん、”怒り”もある。
けれど、それ以上にー
”どうして?”という感情の方が
遥かに強かった。
なぜ、どうしてー。
それを確かめなくてはならない。
彼女の口から、
どのような真実が語られるのか。
そして、明美を救い出すことは
できるのだろうか。
全ての決着がつく時が、
いよいよやってきた。
俺は負けない。
明美のためにも、
妹の夏帆のためにも、
これまで俺を支えてくれた、みんなのためにもー。
・・・・・・・・・・・・
倉本 康成
2年B組生徒。彼女が憑依されてしまう。
藤森 明美
2年B組生徒。お茶目な性格。憑依されてしまい…?
柳沢 零次
2年B組生徒。康成の親友。
篠塚 沙耶香
2年C組生徒。生徒会長。同じ中学の出身。
哀川 裕子
2年B組生徒。陰険なお嬢様
間宮 結乃
2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。大人しい性格。
国松 千穂
2年B組生徒。明美と親しかった生徒の一人。スポーツ大好き。
倉本 夏帆
康成の妹。中学生。
☆登場人物詳細は↓でどうぞ☆
(いつも書いている注意ですが、
¥300と出ていても、このお話を読めている人は
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fanbox post: creator/29593080/post/891606
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生徒会室ー
呼び出された生徒会長の沙耶香は、
相手が来るのを待っていた。
「---!」
生徒会室の扉が開くー
「話って?」
沙耶香はほほ笑み振り返るー。
朝早くに呼び出された沙耶香は、
戸惑いながらも、生徒会室にやってきていたー
「----…篠塚さん」
生徒会室に入ってきたのは、康成の親友・零次。
「---ずっとずっと、どうしようか考えてたんだけどさ…
やっぱさ…この際言っちまおうかと思って」
零次が言う。
「--え?」
沙耶香が首を傾げると、
零次は、緊張した様子で沙耶香を見る。
沙耶香は、康成のことが好きなのは分かっているー
ずっと、ずっと、高校に入ってから沙耶香の視線は
康成に向けられていたー
中学卒業後、高校に入学してからイメージチェンジをしたのも、
康成に振り向いてもらいたいからだろうー。
でも、それでもー。
この前、康成に振られて、泣いている沙耶香を見た時に
零次は決心したー。
”篠塚さんのことを支えていきたい”とー。
康成の代わりでも、なんでもいい。
2番手でもいいー
それでも、いいから…と…。
康成と明美が大変なこんな時だけれどー。
零次は、康成たちのために一緒に頑張ってきた
今だからこそ、思いを伝えたかった。
しかし、零次はー
「--俺さ…その、、なんていうか…??
…あ、、え~っと……康成が心配だなぁ~って」
沙耶香に想いを伝えることができず、誤魔化したー。
「---ふふ、そうね…
…って、そんな話のために、朝早く!?」
沙耶香が苦笑いしながら言うー。
「あ、、いや、、その、、す、、好き… 好き…」
「え???」
戸惑う沙耶香。
「しゅき…」
いつもお調子者な零次が、聞き取れないぐらい
変な声で、そう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
零次が、沙耶香に必死に告白しようとしているその時ー
康成は、”黒幕”のいる部屋に足を踏み入れたー
高藤に憑依薬を渡しー
明美への憑依を指示しー、
高藤を始末しー、
裕子に罪を擦り付けて全てを終わらせようとしたー
全ての”黒幕”
部屋に入ると、
その部屋にいた女子が笑みを浮かべるー
康成は、その笑みを見て、確信するー
”黒幕”で間違いないーと。
「---どうして…
どうしてなんだーーー」
康成が悲痛な声を上げるー。
女子生徒が康成の方を見るー
「--なんで…こんなこと……
---間宮さん」
康成が悲しそうな視線を向けたその先にはー
憑依される前の明美の友人のひとりー
吹奏楽部の間宮 結乃の姿があったー
クラシック音楽の演奏をしながらー
結乃はにっこりとほほ笑むー。
「----…どうして?」
音楽室ー。
ピアノの前に座っていた結乃が、演奏を終えるー
ツインテールが特徴的な、
大人しい性格の結乃がー、
悪魔のように、ほほ笑むー
ピアノの上には、結乃がいつも使っている
ハートの形をしたメモ帳が置かれているー
「--」
康成はそれを見て、ふと思うー
”零次ーー
お前は……
必死に、俺に伝えようとしてくれてたんだなー…”
余計なことをすれば、妹に憑依するー
結乃からそう脅されていた零次ー。
”常に零次の行動を監視している”と結乃に脅されていた零次は、
妹の深雪を守るため、康成や明美にー、
黒幕=結乃を伝えることができなかったー
でも、それでもー零次は必死に伝えようとしたー
康成に、ハートの形をしたチョコを渡したりー
ハートのチョコの話をしつこくしたりー、
クラシック音楽の話を康成に何度もしたり…
結乃は、ハートが好きだー
夏祭りの時には、ハートの浴衣を着ていたし、
ハート型のメモ帳をいつも使っているー
文化祭の時、吹奏楽部部長の小野坂に対して残した
メモ書きにも♡が書かれていたー。
そしてークラシック音楽を、結乃はよく演奏しているー
零次は、なんとかして、結乃を連想させようとしたー。
妹に危険が及ばない範囲内で、
零次は、精一杯、康成に結乃のことを伝えようとしていたー
「---気づけなくて、ごめんな」
康成は、零次のことを思い浮かべながら、静かにそう呟いたー
「----あ~あ…」
結乃がうんざりした様子で立ち上がるー
「なんでだよ…間宮さん…」
康成が結乃の方を見つめるー。
「--なんで?明美が、わたしの邪魔ばっかりするから…
明美のせいで、わたしが、どれだけ苦しんだか…
倉本くんには分からないよね?」
結乃はそう言いながら、康成の方を見つめるー。
「な、、何を言ってるんだ…」
康成は戸惑う。
結乃と明美は仲良しだったはずー
結乃が、明美を恨む理由はー…?
「--わたし、両親が厳しいって話、
前にしたよね?」
結乃が言う。
「---あぁ」
康成は頷く。
合唱コンクールの直前に、そんな話を聞いた気がする。
「--…わたしのお父さんとお母さんは、
わたしが1番にならないと、怒るの。
だから、わたしは、一生懸命がんばってきた。
成績も、ピアノも、全部全部1位になれるように」
結乃は、音楽室を歩き回りながら言うー。
「-中学の時もそう。
生徒会長もやったし、成績もトップを取った。
そうしないと、怒られるから」
「--!」
康成は、表情を歪めるー
テストを返却するとき、
社会科の先生が、いつも黒板に上位3名の名前を
書いていたことを思い出すー
結乃は、いつもーー
”2番”だったー。
”1番”は、いつも明美だったー。
「---そんな…そんなことで…!」
康成が悲しそうに言う。
結乃は「そんなこと?」と低い声で呟く。
「--わたしがどれだけ努力してきたかわかる?
それを、明美が邪魔したの。
テストもそう。成績もそう。
ピアノもそう。何もかも!
明美が、わたしの邪魔をする…!どこまでも!」
普段、絶対に声を荒げない結乃が
少し感情的になって言う。
「---ピアノ…」
結乃は、中学時代のピアノコンテストで”2位”
だったと聞いているー
中学時代は、結乃のことを知らなかったが
あの時、優勝したのも明美だったー。
「努力しても、努力しても、努力しても
わたしは明美には勝てない」
結乃がギリギリと歯を食いしばるー。
「--そのせいで!わたしは親から
いつもいつもいつも、”頑張りが足りない”って言われて、
怠け者扱いされて!!!
頑張りが足りない???
わたしだって、努力してるのに!」
結乃がピアノを叩くー。
「--…間宮さん」
康成は悲しそうに呟くー
明美が憑依されたあとー
この前の社会科のテストでは
”1位 間宮 結乃”と書かれていたー
合唱コンクールでも、明美を差し置いて
結乃がピアノの担当になっていたー
結乃は、明美を蹴落としてー
孤立した明美を見て、優越感に浸っていたのだろうか。
「--わたしの狙いは、明美だけ。
倉本くんも、柳沢君も、別に巻き込む気はなかったの。
明美が落ちぶれてくれれば、それでいい。
だからー
学年でも一番の問題児だった長谷部くんと
付き合わせたりー
明美と一番イメージのかけ離れた哀川さんと
親しくさせたりしたの」
結乃が笑うー。
ガムをいつも噛んでた不良生徒・長谷部のことを
”好き”だと明美に刻み込んだのはー
明美をとことん堕とすため。
学年一の不良と付き合わせて、明美のイメージを
最悪なものにするためー。
「---あ~、心配しないでね?」
結乃が思い出したかのように言う。
「倉本くんの妹の夏帆ちゃんー
それに、柳沢くんの妹の深雪ちゃんー
”憑依する”って脅したけど、
そんなことするつもりはなかったからー。
明美以外の人を巻き込んだりする気はないの。
だから、倉本くん…
このことは忘れて、今まで通りふつう~に…」
「ーーー巻き込んでるじゃないか」
康成が怒りで拳を震わしながら呟くー
「--え?」
結乃が表情を歪めるー。
「…あ、うんうん、倉本くんからすれば
彼女を奪われちゃったんだもんね…
でもでも、倉本君に危害を加えたりはしないしー
妹の夏帆ちゃんに憑依するって脅したのも
嘘だから!わたし、そんなことしなーーー
「---巻き込んでるだろ!!!」
康成が声を荒げた。
「高藤は死んだし、哀川さんは
人殺しの罪を着せられて警察に捕まった…
なにが巻き込んでないだ!!
大勢の人を巻き込んでるじゃないか!」
康成の言葉に
結乃は驚いた表情を浮かべたあとに
笑い出したー
「ふふふ、ふふ…ふふふふふ、
あはははははははは~!!」
ツインテールを震わせながら笑う結乃ー。
「--ま、、間宮さん…」
康成は、結乃の狂気的な笑みを見て不安を感じるー
「---ねぇ、冗談はやめてよ、倉本くん!
大勢の人?
高藤とか、哀川さんが人??
あはっ…はははははは!
…クズは、人じゃないでしょ?」
結乃が真顔で言うー
「--…!」
康成は表情を歪めるー
いつも大人しい雰囲気の結乃が
ここまで歪んでいるとは思わなかったーー
「あいつ…高藤はね、中学の時、
生徒会室で、お金が盗まれる事件があったんだけど、
その時の犯人があいつなの。
わたしはたまたまその現場を見ちゃって…
黙っててあげる代わりに、高藤をずーっとずっと
こき使ってきたの。ふふ…
お金盗むやつなんて、クズでしょ?」
結乃がにこにこしながら言うー
「哀川さんは、1年生の時、クラスの子を
いじめで退学に追い込んでるー。
そんな犯罪者みたいな女、
利用したって何も問題ないじゃない」
結乃の言葉に、康成は震えるー
こんなにーー
こんなに、結乃の心がーー
歪んでしまっていたなんてー
ずっと、ずっと、気づかなかったー
高藤が結乃に従ってたのは、
今、結乃が言ってた”中学時代のお金を盗んだ件”で
そのことをネタに脅されていたのだろうー。
もちろん、高藤自身もリア充を嫌っていたから、
最初から乗り気だったのかもしれないー。
「ーー…”次”が最後の1個ー」
結乃が自分の鞄から、”憑依薬”の入った容器を取り出すー
禍々しい色の薬ー。
”最後の1個ー”
数に限りがあるから、ここぞというときにしか
憑依してこなかったのかー
それともー
「--それが…憑依薬…」
康成が呟くと、結乃が少しだけ笑う。
「研究者の祖父が、少し前に死んだの。
その祖父の家を整理してるときに見つけたのが
この”憑依薬”ー
どんな風に作られたのか…
どんな目的なのか、何も分からないけど、
わたしにはそれで充分ー。
これを見つけたとき、わたしはひらめいたの。
明美を滅茶苦茶にしてやろうって。
でもね、こんな怪しい薬、自分では使いたくなかったから
高藤に頼んで、明美に憑依してもらったの。
まぁ…結局、高藤が調子に乗りすぎたせいで、
わたしがアイツに憑依することになっちゃったけど…」
結乃の言葉に、
康成は悲しそうに結乃を見つめるー。
音楽室の窓の外を見つめる康成ー
雪が、静かに、落ち続けているー。
「--…」
結乃の言葉を聞き終えた康成は
悔しそうな表情を浮かべるー
明美や千穂と一緒にいた結乃は
とても楽しそうだった…
あれは、全部”演技”だったのかー。
憑依された明美にビンタされて
泣いていたのはー
”演技”だったのかー?
「---…明美にビンタされたの、
いい演技だったでしょ?」
結乃が康成の心を見透かしたかのようにして言うー。
「クラスのみんなに”明美はひどい”って思わせるための
わたしの名演技…ふふふふふふ」
「---間宮さん…」
康成は、かける言葉も見つからず、
ただ、悔しそうに、結乃の名前を呟くーーー
「--ばっかじゃないの」
ー!?
康成が、音楽室の入り口の方を見ると、
そこには明美がいたー
「--明美!」
康成が叫ぶー
「明美にも…本当のことを知ってほしいんだ…
もう、戻れとか、そういうことは言わない…
でも…明美に知ってほしいんだ…
誰が明美をこんな目に遭わせて、
その子が、何を想っているのかー」
昨日、明美に電話でそう伝えた時、
明美には断られたー
けれど、やっぱり明美は来てくれたー。
「勘違いしないで。あんたのためじゃないー
わたしが、知りたいから来たの」
明美が愛想なく、康成に向かって言う。
「--あぁ、それでいいよ」
康成が優しく笑うー。
明美は結乃の方を睨むー
「全部聞いてたけど…
…ふん…くだらない…
ただの嫉妬じゃない」
明美が失笑しながら言うー。
”憑依される前の明美”ならー
なんて言っただろうか。
結乃の言葉を聞いて、
結乃に対して「ごめんね…」とー
言葉をかけたかもしれないー
でも、今の明美は違うー
「--嫉妬?」
結乃がクスリと笑うー。
「---…明美には分からないよね?
わたしがどれだけ辛い思いをしたか!
いつもいつも”上から下を見てる”
明美には分からないよね!?!?
わたしの気持ちが!」
結乃が声を荒げるー
「--上から下を…?」
明美が鼻で結乃の言葉を笑うー
「--あんたが、勝手にそう思って
勝手にわたしを恨んだだけでしょ?
わたしは、あんたのこと下に見たことなんてない」
明美が言う。
「--…」
結乃が悔しそうに歯ぎしりをするー
しかしー
すぐに結乃は笑うと、
「…ふふ…成績も落ちて、態度も悪くなってー…
倉本くんとも別れてー…
明美にはもう何も残ってないー」と明美を挑発するー
「--……」
明美は、康成の方を見ると、
舌打ちしてから、結乃の方を見た。
「--わたしの記憶とか、思考とか
色々いじったのよね?
…元通りにする方法は?」
明美が言う。
「--え」
康成が少しだけ驚くー
明美に、以前言われたー
「あんたが見てるのは、
あんたの言う”仲良しだったころの明美”だけ!
今のわたしのことなんて
何も考えてない!
わたしが、あんたの言う通りの振る舞いをすれば満足?
あんたをうざいって気持ちを我慢して、
あんたの理想の明美を演じれば満足!?」
とー。
だからー
その明美の口から”元に戻りたい”と言う言葉が
出るのは意外だったー。
「---アンタの思い通りになるとは限らないから」
明美が康成の方を睨むー。
「え…」
康成が明美の方を見返すー
「でも…”今のわたし”も、
”憑依される前のわたし”も、
わたしはわたし…。
だから、憑依される前のわたしの記憶とか思考も
ちゃんと取り戻して、
それから、わたしが決める。
あんたとどうするかをー。」
明美は、康成の方を睨みながらそう言い終えると、
少しだけ笑うー。
「--元の記憶とか、考えを取り戻せばー
もしかしたら、あんたのこと
好きになるかもしれないし…
ウザイままかもしれないー。
でも…それでいいでしょ?」
明美の言葉に
康成は少し考えたあとに頷いたー
”今の明美だって、明美であることには変わりないー”
だったら、後は明美の判断に任せるしかないー。
「-ーどんな結果になってもー
それが、明美の望みなら、受け入れるよ」
康成の言葉に、明美は「ふん…」と言いながらー
けれども、少しだけ優しく微笑んで、頷いたー。
康成と明美が結乃の方を見るー
「元に戻す方法…?
だったら、教えてあげる」
結乃はそう言うと、
憑依薬の入った容器を、床に置いて、
康成の方に転がしたー
「-!?」
康成が表情を歪めるー
ピアノをトントンと叩きながら結乃が笑うー。
「戻す方法なんて…ない」
結乃がニヤリと笑うー
「え…」
「は!?」
康成と明美が驚くー。
「---…憑依薬で憑依した相手の
記憶を塗りつぶしたり、都合の良いものに改変したり
思考を変えたりー…
それを”元に戻す方法”なんてないの。
洗脳とか、そういうものとは違うー。
憑依して、明美にしたのはー
”塗りつぶしー”」
結乃の言葉に、康成は、
瞳を震わせながら
高藤が言ってたことを思い出すー
「--絵具で塗りつぶされた白い画用紙は
もう、元には戻らないー
絵具で塗りつぶした画用紙を
もう一度真っ白にできるのか?
できねぇだろ???あ????
それと同じだよー。
俺に塗りつぶされた明美ちゃんの脳も、
もう、元には戻らないー
ぎゃははははははは!」
「--明美が…元に…戻らない…」
康成は、動揺するー
「でも!」
結乃が、手をポンと叩いてほほ笑む。
「--ひとつだけ、方法があるの」
結乃は、床に転がした憑依薬を指さす。
「--倉本くん!
倉本くんが、明美に憑依して、
明美の記憶と思考を”元々の明美みたいに”すれば、
明美を元に戻すことができるよ!
ふふふ…
”倉本くんのことが好き”って刻んでー
”まじめな心”を刻んでー
そうすれば、明美は元通り!
でしょ?」
結乃の言葉に、
康成は、明美の方をチラリと見るー
「---……そ、、、それは…」
康成が憑依薬の容器を拾うー
結乃が凶悪な笑みを浮かべるー
”そうー、
明美を戻すためには、
倉本くんが、明美に憑依して
明美の思考と記憶を、さらに上から
塗りつぶさないといけないー
そして、それこそが、地獄ー”
「---白い画用紙はーー
黒く塗りつぶされたー。
でも、その上から、もう一度白く塗ればー
白になるー」
結乃は、笑いながら呟くー。
「---明美…」
康成は憑依薬を握りしめるー
”自分の都合の良いように、明美を変えるー”
確かに、一見元に戻ったように見えるだろうし、
元通りの明美を取り戻すことはできるだろうー
だがー。
それは、本当に明美なのかー?
今、明美が抱いている気持ちはどうなるー?
思考を黒く塗りつぶされてー
その上からさらに白く塗りつぶすー
何度も何度も思考や記憶をいじられた明美はーー
本物と言えるのだろうかー。
「ーーーそっかそっか」
明美が不貞腐れたように笑いながら言う。
「やっぱあんたも、この女と同じー!」
明美が結乃を指さしながら言う。
「”自分に都合のいい明美”が好きなんでしょ?
前みたいに、あんたのこと好きなわたしが、いいんでしょ!」
明美の言葉に、康成は戸惑うー
”元に戻す”には、これしかないー
康成が明美に一度憑依して、
明美の記憶と思考を、元の状態と同じような状態に戻すー
「----」
結乃が笑みを浮かべながら康成の方を見つめるー
”大好きな彼氏に憑依されてーーー
また、塗りつぶされてーー
たとえ、明美が元の状態と”同じような”
状態になったとしてもー
明美の心には、消えることのない傷が残るー
倉本くんと、明美の絆には永遠にー
亀裂が残るー”
陰険な裕子を囮にして、康成がそれで解決だと
思い込んでくれたならそれでよしー。
もし、裕子が囮だと気づいて、黒幕=結乃に気づいたらー
それは、それでー。
「--ほら…倉本くん…明美に憑依しなさいよ?
それしか、明美を元に戻す方法は、な・い・の♡」
結乃が無邪気に笑うー。
「---……明美」
康成は明美の方を見つめるー
あの笑顔をもう一度、取り戻したいー
優しくてー明るくてー
いつも、笑っていてー
時々、人を驚かせるお茶目な明美ー
また、あの時の明美に会いたいー
「---ふん。いいわよ。わたしに憑依すれば?」
明美が言う。
「--今のわたしは、どうせ、変えられちゃった
おかしな明美ですよーだ!
いいじゃん!
元通りにするんでしょ?
それであんたの気が済むなら、
あんたに都合のいい明美になってやるよ!」
明美が乱暴な口調で叫ぶー。
茶髪に染まった髪ー
短くなったスカート
派手になったメイクー
こんなの、明美じゃないー
最初はそう思ってたー
けれどー
「---…」
康成は手を震わせるー
憑依される前の明美の笑顔を思い出すー
憑依されたあとの明美の悪魔のような笑みを思い出すー
「--倉本くん。
これで、ぜーんぶ解決。
黒く塗りつぶされた明美を、もう一度
白く塗りつぶしちゃお!
それで、ぜーんぶ、元通り!」
結乃は歪んだ笑みを浮かべているー
”わたしは、明美が地獄に落ちれば
なんだって、構わないー”
「---間宮さん!
本当に、俺が憑依して、
思考と記憶を塗りつぶせば、
明美は元に戻るのか!?」
康成がつらそうな表情で結乃を見る。
この憑依薬が”最後の1個”
もしもー
明美がこれで元に戻らなければー
「ノーコメント」
結乃はにっこり微笑む。
「--……こんなこと、俺にさせて何が楽しいんだ!」
康成が、怒りの形相で結乃を見つめるー
「ノーコメント~」
結乃が馬鹿にしたようにして笑うー
結乃は、何も答えるつもりがないー
「--」
康成は明美の方を見るー
「ほら!早く憑依すればいいじゃん!
あんたのこと、もう一度好きになればいいんでしょ?
結局あんたも、今のわたしの気持ちなんて
な~んにも考えてない!
もういいよ!
好きにしなよ!わたしなんてどうせ、あんたたちの
おもちゃなのよ!」
明美は泣き叫ぶようにして言うー
「---明美…」
康成は、明美の手が震えているのに気づくー
強がっていても、
”憑依される”ことに明美は怯えているー
康成はーー
”洗脳”のように、
黒幕である結乃ならばー
明美を”元通り”に戻せると思っていたー
洗脳した人間の洗脳を解除して
はい、元通り、みたいなイメージだ。
だが、それはできなかったー。
明美を”元通りもどき”にすることしかできないー
康成が憑依して、明美の思考と記憶を
”元通り風”にすることしかできないー
それはー
たとえ、前の明美と同じふるまいであってもー
「----ごめん…明美」
康成はそう呟くと、憑依薬の容器を自分の顔の近くに
持っていくー
「---ふふふふふ…くくくくくく」
結乃がピアノの近くで、笑みを浮かべながら
笑い声を漏らしているー
”明美ー
わたしの邪魔をした、罰ー”
「---俺は、明美にーーー」
康成が叫ぶー。
康成が、取った行動ーーー
結乃と明美は、目を見開いたーーーー
㉑へ続く
・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ついに黒幕が判明しましたー!
黒幕は、憑依される前の明美の友人・間宮 結乃さんでした☆
隠されていたヒントは、いくつかありますー
まずは、零次くんの行動…
第1話から零次が度々「♡のチョコ」を渡したり、
「クラシック音楽」の話題をやたらと出したりー
これは、結乃に脅されながらも、なんとか結乃を康成に連想させようと
零次なりに、妹に危険が及ばない範囲内でとった行動でした。
結乃は、第4話でハート形のメモ用紙を使っていたり
番外編で♡の浴衣を着ていたり、♡が好きな描写が何度かチラホラと…。
次に”嫉妬”
テストの件は、第1話で、明美に負けている描写、
番外編でも明美に負けている描写を入れていたりしています
少し前には、明美がいなくなって1位になった結乃の
場面もありましたネ~
”会長”は、
”もうその呼び方はやめなさい”のようなことを
高藤に言っています
これは”今は会長ではない”という意味デス~
また、登場人物紹介の
結乃の背景は、結乃のいびつな心を現しています☆
他にもいくつかのヒントを潜ませてありました~!
今日もお読み下さりありがとうございました!!