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「これは…どう…何が…」

 パトリスには自分に何が起きたのか、どうなっているのか全く分からなかった。

 赤毛赤眼の少年、アルドリッジの様子を見に洗面所に向かい、ドアノブを掴んだ瞬間に強い目眩に襲われ気がつくと何も見えない完全な闇の中に居る。

 勿論すぐに状況を把握するため動こうとしたが、自分が動いているのかどうかも分からない。

 アルドリッジが逃亡するために幻術を使い自分の視力と感覚を麻痺させたとも考えられたが、1年掛けて調べた中に少年が魔法を使えるといった情報は一切無かった。

 パトリスの想像では、今自分自身は洗面所前の廊下で倒れ、視界を奪われ藻掻いている。

『聞こえる?お姉さん。…パトリスだよね?名前』

 突然聞こえて来た声にパトリスはビクリと反応する。驚きはしたもののすぐにアルドリッジの声だと分かった。しかし名前を呼ばれたことを不審に思えない程度にはまだ取り乱している。

「アレクシス!?何をした?すぐにこの魔法を…」

『悪いけど、そっちの声は聞こえないんだよ。今どうなってるか分かる?たぶん想像してることとは全然違うよ』

 こちらからの声は聞こえないという意味が分からず、口を開こうとした瞬間、パトリスは目を見開いた。

「はっ!?…はぁっ!!??」

 パトリスは自分が感じた感覚が信じられなかった。しかし信じられないと考えている間にもその感覚は続いている。

『想像するの難しいと思うけど、今お姉さんは箱の中に閉じ込められてるんだよ。ここだけ出して』

 少年の言うここが指らしきものでさすられ続けている。

 パトリスは信じがたく、そこからの感覚を無視しようと努める。何しろ自分でも数えるほど、他人からとなると一度も触れられたことがない場所からの刺激を感じている。

『クリトリス触られてるの分かるでしょ?どう伝えればいいか…とにかく箱からお姉さんのクリトリスだけ出てるんだよ。

 かなり綺麗で驚いたけどね。俺が知ってる他のクリトリスはもっと大きくて真っ赤だから』

『ちょっと!』

 アルドリッジの背後から女の声が聞こえたが、パトリスはその点には驚きもしなかった。未だに弄られ続けている桃色の芽、クリトリスからの感覚が気になりすぎる。

 アルドリッジの言うことが真実なら自分は幻術を掛けられているのではなく、箱とやらに封印されているせいで視界も身体の感覚も無いことになる。

 人に触れられたことのないクリトリスの感覚は治まらない。

「ア、アレクシス!き、君だろう?その…触っているのは!!すぐに止めるんだ」

 自分の声は聞こえていないと言われても外からの声がはっきりと聞こえているため俄には信じがたい。

「と、とりあえず手をはな…せ。それから…ここから出すんだ!」

『一応状況を説明しておくと、あの後上手く店から出て、今はもうビラティにはいないよ。お姉さんの仲間、ええと…ギャエルも上手く巻けたし。探してるとは思うけど』

 ギャエルの名を出されてパトリスは漸く自分の名も先ほど呼ばれていたことに気づいた。

「いったいどういう…うっ…と、とにかくまず指を…」

『とにかくパトリス、俺ちょっと怒ってるからしばらくこの可愛いクリトリスいじめると思うよ。聞きたいことも色々あるけど後でね』

「なにをっっぎゃっっっ!!」

 突然クリトリスをつねり挙げられ、パトリスは聖女騎士に相応しくない悲鳴を上げる。

 しかしそれだけでは終わらず、クリトリスはつねられたまま引っ張り上げられる。

「ひっぎゃっっ…いっ、痛たたたたぁぁぁぁっ!!!」

 中のパトリスは引っ張られる方向に付いていこうとするが、身体が動いている感覚は無く、痛みはどんどん強くなる。

「いっいぃぃぃぃぃっ!や、やめろぉ!放っしなさいぃぃぃっ!!」

 クリトリス自体の痛みと、そこが引き延ばされることに因って痛みとはまた違う、背筋に冷たいものが走るような感覚が根元に生じ、肛門がギュッと締まる。

「いぃぃ、イ、痛いからっ!もうやめ・・・・・んぎっっ!?」

 一瞬クリトリスから爪が離れ、終わったかと思った直後、何かで弾かれるような強い衝撃を感じた。

「ひぎゃっ!いっ!いぎっ!んいっ!!」

 それが何度も続く内にパトリスはクリトリスが指で弾かれているのだと分かった。

 20数年保護されてきたか弱いクリトリスを何の抵抗も出来ずに虐げられ、パトリスは痛みとは別に自分でも気づかないうちに涙を流していた。

「いぃぃぃ痛いっ!!もっ!もうやめてぇぇぇっ!!」

 聖女騎士という立場を忘れ惨めに懇願しても、クリトリスを打つ指は止まらず、箱に入れられたパトリスは何をされてもどうすることも出来ず、ただ与えられる刺激を受け取るしかないということを教え続ける。

 パダデシからビラティへ向かう道中、アルドリッジはリンジーに歩調を合わせながらただ漫然と歩を進めていたわけではなかった。

 休息を取る度に封印法の利便性を改善すべく頭を悩ませていた。

 リンジーの助言によりミルドレッドの封印を考え無しに解くことが出来なくなったため、偶然にも存在を知った封印術そのものがマジャリに対して武器になるのではと考えた。

 アルドリッジはパダデシの宿に泊まっている時点で盗族の根城で見つけた肩掛け鞄の中から、ヘザーとミルドレッドの箱以外に2冊のノートを見つけていた。

 ある程度保存状態の良かった鞄そのものと違いかなり劣化が進んでいたが、辛うじて読むことが出来、そこに封印術の方法や、ヘザーやミルドレッドのクリトリスを覆っているものの作り方、更にはリンジーに使われていた絶頂阻害術に付いてなどが書かれていた。

 尤も読めたところで魔法が使えないアルドリッジにはあまり意味が無く、あくまで元々の”封印術”でなく、術が施された物質から得た情報を元に行う”封印法”を改善するしかなかった。

 そして改善すべきは1点、既に術に因って封印されている人物しか再び封印する事が出来ないという点だった。

 リンジーがそうであるように、ミルドレッドやヘザーの封印を解いてもう一度封印する事は出来るが、全く別の誰かを封印する事は出来ず、それを改善しない限り武器にはなり得ない。

「う~ん・・・」

 昼間は2人で歩き、休息することにすると気軽に封じられるリンジーを使い何か方法はないかと考える。

 ノートのおかげで抽出した変異情報の内どの部分が封印に関係し、どの部分で絶頂を阻害しているといった事は分かるようになったため、リンジーは封印された状態でもイかせてもらえるようになった。

 アルドリッジは思案中常にリンジーのクリトリスを捏ねながら時折ビクンと跳ねる感覚を楽しむ。

「あ、アル君、イケないよりはいいけど、ずっとイかされるのも辛いのよぉ」

 封印を解かれたリンジーの感想に因ってアルドリッジはヘザーの解呪も見合わせることにした。

 ミルドレッドのクリトリスを覆っているものはノートを読むまでもなく、解析で正体を理解していた。

 琥珀色の物質は薬品が硬化したもので、内側に極小さい結晶が集まり、それがクリトリス表面の神経を刺激する事で強烈な痒みを与え続けている。

 ヘザーのクリトリスに覆い被さっているものは生物なのでアルドリッジの力では解析できないが、ノートにその作成方法が、ありがたいことに現代語で書かれていたため容易に理解することが出来た。

 ビラチーナと名付けられていたその生物は、クリトリスの感度を高める体液を定期的に分泌しながら、縦横無尽に動く大小の触手と本体そのもので常にクリトリスをイかせ続けている。

 思案中、数時間イかされ続けただけでヘロヘロになっているリンジーを見るに付け、20数年封じられたままどうすることも出来ずひたすらイかされ続けているヘザーの封印を解くのが恐ろしくなり、アルドリッジは多少可哀想に思いながらももうしばらくイキ続けて貰う事にした。

 両者の解呪は見合わせたものの、何かいい知恵が得られればとミルドレッドの硬化掻痒薬はクリトリスから取り外してやった。

「ふぎぎぎぎっ、ふっ、ふぎゅっ、んぎっひ、ふぎっ、ふぎっひ」

『・・・える?…聞こえる?ミルドレッドさん?今からこの痒いの取ってあげるからね』

「ひふっ、んっ、ふひっ?…うひゅっ、くひゅっ、んひっんんっ??…ひょっ!?

 …んひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~っ!!!!!!」

 奇妙な呼吸しか出来なくなっていたミルドレッドは、突然上下に移動する未知の刺激に襲われ、正真正銘奇声を発した。その前に掛けられた言葉など耳に入っていない。

『取れたよ。これ、なんて言うんだろ?とにかくこのぷるぷるした痒みの元。すっきりした?』

「ふ、ふひっ?ふっ、ふっ、ふひゅっ…?」

 何かが聞こえている気もするが、意味は理解出来ていない。それよりずいぶん前から股間に存在する、強烈な痒みを催し自分を苦しめ続けるだけの突起がすーすーと寒さを感じている。

『また痒かったりするのかな?真っ赤だし。ちょっと搔いてあげる』

「ふ?・・・ひっ!?んひひひひいぃっっっ!!!ひゅぃぃぃぃぃぃ~~~~っ!!!」

 ミルドレッドの膣と肛門が自分の意志とは関係なく激しく収縮する。すぐに失禁も始まり、循環する。

「あひゃっ!いっ!んふぅっ、ひっ!あにゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 自身の痒み発生器官が痒み以外の何かを感じ始め、中のミルドレッドは尿と膣液、更には腸液もドプドプと垂れ流しながら狂喜乱舞する。何故身体がそんな反応を示すかも分からず、とにかくもっと、もっとという単語だけが頭の中を回り始める。

「ひぎゃっ、んっ、んひっ、んっんっ、んん~~~~~~~~っっっ♫」

 アルドリッジはクリトリスを搔いてやりながら、そのあまりの跳ね回り方に気持ちがいいのか辛いのか判別できずにいた。

 中の様子は分からないが、クリトリスだけで言えば同じ期間封印されていたリンジーはもっと落ち着いていた。

『み、見てよこれ。どう思う?やめてあげた方がいいかな?』

 後ろから食い入るようにアルドリッジの手元を覗き込んでいるリンジーに尋ねる。自分のクリトリスは散々責められて来たが、人のクリトリスが責められている所は初めて目にし、自然とスカートの中に手を突っ込んでしまっている。

『ど、どうなのかな?分からないけどもうちょっと搔いてあげてたら?私と同じくらいだから、20年ずっと痒いままだったんでしょ?たぶん喜んでるよ』

 アルドリッジは女同士の勘を信じ、そのまま真っ赤に晴れ上がり、火傷しそうなほど熱を帯びているクリトリスを掻き続けてやる。

「いひぃっ!いっいっ、いぃぃぃぃ~~~っ!!もっとおぉぉぉぉぉ~~~っっっ♫♫♫」

 ミルドレッドは長年歯を食い縛り続けてきた口を開き、涎を垂れ流しながら嬌声を上げ続ける。

 股間の痒み発生器が実は痒み以外も発生させられることを少しずつ思い出して行く。

「イやぁぁぁ~っ、もっと、もっとぉぉぉぉ~~~っ!」

 アルドリッジが疲れて指を休める度に中のミルドレッドはかつての面影が全く無い甘ったるい声で続きを懇願する。

 指を離す度によりいっそうクリトリスが跳ね回るため、アルドリッジも流石に嫌がっているのではなくもっと搔いてと催促しているのだと理解出来た。

 解呪はしないものの、ミルドレッドからは何らかの知恵が得られればいいと考えているので、要望通り搔き続けてやる。

「はひゃっ♫んん~っ、んふぅぅぅ~♫はぁぁぁぁ~~~~っ♫」

 ミルドレッドは硬化掻痒薬を外され搔いて貰い始めてから何度となく絶頂に達しているのだが、そのことに気づいてすらいない。

 20年以上強烈な痒みを与えられてきたクリトリスに取っては、絶頂の快感よりも搔いてもらえること自体の快感の方が遙かに大きかった。

『・・・ふぅ、ミルドレッドさん、疲れたから今日はここまでね。また明日搔いてあげる。

 それから、クリトリス熱々になってるから、蓋開けたまま夜風に当てて置いてあげるね」

「いやぁぁぁんっ、もっと搔いてぇぇぇぇ~~~~っ」

 封印の効果により壊れることのない脳が少しずつ言葉を取り戻し始め、外から聞こえる声も理解出来るようになってきた。その結果3歳ほどしかリンジーと年の変わらないミルドレッドは少女のような猫なで声で愛撫を懇願する。

 かつて争っていたヘザーがすぐ近くにおり、今のミルドレッドの様子を見ることが出来たならどんな言葉でなじるか想像に難いが、そのヘザーはミルドレッドよりも更に酷い苦しみを味わい続けており、現在の所有者アルドリッジによってまだしばらくその状態が続くことが決まってしまっていた。

 日中、歩いている時もアルドリッジはミルドレッドを搔いてやる。

 リンジーは解放後約半日で落ち着きを取り戻したが、ミルドレッドのクリトリスはまだ真っ赤に熱を帯び、指を求めて動き続けている。

 リンジーの様に外に出してやったり占いで自分の意志を伝えたり出来ないため、クリトリスの様子から判断するしかない。

 ミルドレッドはまだまだ搔いて貰いたがっているが、クリトリスは中の性器や肛門の周辺のようにトロトロになることがないので、アルドリッジは傷つかないようにある時点から口に咥え、舌と歯で痒みを治めてやる。

『はぁっ!?んあっ♫んひぃぃぃ、それいぃ~~~っ♫』

「あ…」

 リンジーはその様子を見て指をくわえる。アルドリッジにも前所有者にも指や刷毛、筆でなら散々弄ばれたが、口に含まれたことはなく、物欲しそうに見つめる。

「・・・ほぇ、ひへほひぃほ?」

「えっ?そ、そういうわけじゃ…」

「あおぇいえあえう」

 リンジーは頬を赤らめ期待する。ミルドレッドのクリトリスは口の中でも喜んで跳ね回っている。

 アルドリッジの封印法の最大の欠点が新しい相手を封印出来ないという点なら、最大の利点は封印が完了した後でも好きなように器の形状を変えられる点だった。

 ミルドレッドのようにまだ一度も解呪していなくとも、変異要素はそのままに基本構造だけを操作すれば形を変えることが出来る。

 アルドリッジは邪魔な蓋を取り除き、咥え続けやすいように土台部分も小さく作り替えた。


withTongue01

 唇でクリトリスを吸いながら舌で舐め、歯で甘噛みをしながら表面を搔いてやる。

『はぁぁぁっ!いっ、いっ、いぃぃぃっ!!これぇぇぇぇ♫あはぁぁぁっっっ♫」

 つい一日前まで苦痛でのたうち回っていたミルドレッドは、同じような動きながら一転して快感でのたうち回っている。

 膣も肛門も喜びで蕩け、だらしなく体液を垂れ流している。

 更にもう一昼夜舐めたり歯でカリカリと搔いてやっていると、漸くミルドレッドのクリトリスは落ち着きを取り戻してきた。

 痒いところを搔いてもらえる気持ちよさでひっきりなしに暴れ回っていたクリトリスがしおらしくなり、時折ぴくんぴくんとイっているらしき反応を舌と唇で感じる。

 20年以上放置、或いは痒みで責められていた脳が半日から2日程度で正常さを戻せるのは封印術の効果ではなく封印空間に因る副次的な効果なので、リンジーの箱を解析しているアルドリッジも封印されている肉体が常に正常さを保とうとすることは知らない。20年封印されていたリンジーが若いままなので、単に中では年を取らないのだろう程度に考えている。

「それじゃミルドレッド、かなり落ち着いて来たみたいだから少し教えて欲しいことがあるんだけど」

 確かにミルドレッドは落ち着き、思考も戻って来てはいたが、外がどういう状況なのかは分かっていなかった。

 しかし声質からして若い男が自分の箱を見つけ、硬化掻痒薬を外し気が済むまで指や口で搔いてくれたことは分かっているため、珍しく素直に感謝していた。

 リンジーによればかつてのミルドレッドは残忍で気性が荒かったらしく、怒り出されても困るのでアルドリッジは何年経過したか具体的には伝えずにおく。

 アルドリッジは要点を伝える。

 得たい情報自体は単純で、一言で言い表せる。

 魔法を使わずに魔法を使う方法。

 アルドリッジに必要なのは、魔法使いとしては最下級だったミルドレッド達の前所有者でさえ苦も無く使えた対象識別術と同じ効果を、魔法を使わずに得る方法だった。

『???』

 かなり正常な思考を取り戻しつつあるミルドレッドでもすぐには理解出来ない質問だった。アルドリッジ自身が自分の能力を理解出来ていないため、何故そんな回りくどい手法を取る必要があるのか正確に説明できない。

「ミルドレッドは凄い魔法使いだったって聞いてるから、なんとかならない?…無理なら用がないからまたあの痒いの被せてほっといちゃうけど」

『ぴっ!ピクゥ!ピクうっ!』

 ミルドレッドは必死にクリトリスを動かし、考えてみると伝える。漸く解放され、長期間痒みを味わわされ続けた後に搔いてもらえる快感を知ってしまった以上、2度と元に戻されたくなかった。

 考える時間が必要だと思い、アルドリッジはミルドレッドの封印器を元の箱状に戻してポケットにしまい、時折蓋を開いて進捗情報を尋ねる。

 博識なミルドレッドも説明されたアルドリッジの能力に心当たりはなく、特殊な錬金術師のようなものだと思うことにした。

 その偽錬金術師自身は魔法が使えないが、魔法に寄って防熱や防雷の効果を与えられた鎧の複製を作り出す力は持っており、複製した鎧の防熱効果を回復効果に置き換えたいと言っているのだと、理解出来る例に変換して考える。

 ビラティに到着する2日前にミルドレッドは解答を出した。

 直接文字盤を使っての意思疎通が出来ないため、1度リンジーの占いを介してミルドレッドの答えを聞く。

 ミルドレッドが導き出した改善法は極単純なもので、確かに魔法を使う必要ない。

 しかしミルドレッドに取って魔法の実験なら実際に試すまでもなく頭で考えて十中八九結果を的中させることが出来るが、アルドリッジがどういう力を使っているのかを理解しきれないまま出した改善法なので、実際に試してみるまで成功するかどうか分からなかった。

「なるほどぉ、それがうまくいくならかなり使える武器になるけど…関係ない人で無闇に試せないしなぁ…

 とりあえず準備はしておくからその部分を教えてよ、リンジー」

 アルドリッジはノートを読んだことによりリンジーの箱から得た特性の内、封印術、対象識別術、絶頂阻害術、封印器の形状を首飾りから箱形に変える術、その逆の術、身につけたものを外せなくする術を個別に認識し、不要な要素を除外したり、逆に加えたりすることは出来るようになっている。

 しかし識別術に因って魔法言語に変換され、封印術に組み込まれてしまった対象、リンジーを認識しているのがどの部分なのかは見つけ出すことが出来ない。

 ミルドレッドが考えた改善法を試すには先に今前現在アルドリッジが使用できる”リンジー専用封印法”からリンジーを識別している部分の情報を抜き取る必要がある。

 ただし魔法言語に変換された情報を特定してもアルドリッジにはどうすることも出来ないため、アルドリッジが解析した情報の中から見つけ出して貰う。

 ここからはミルドレッドではなくリンジーの占いを頼る。

 パダデシで同行すると言いだした時には多少煩わしく感じたアルドリッジだったが、今となってはいてくれた事に感謝するほかない。

 リンジーはかつて魔法言語を全く理解しないまま封印術の解呪法を見つけたのと同じ要領で、アルドリッジが文字に書き起こした抽出封印術の中から自分自身を示している部分を探していく。

「・・・アル君、別に読めなくても占えるからいいんだけど、これどこの文字?」

 アルドリッジが自身のノートに書き出した文字は現代語でも古代後でも、魔法言語でもなかった。

「それもわかんない。力を使うとこの文字が浮かんでくるから使ってるだけ」

 アルドリッジは子供の頃から力を使う度に頭に浮かんでくる文字群を自然に受け入れていたが、改めて紙に書き起こしたのは今回が初めてで、それらの文字の読み方すら知らなかった。

 アルドリッジは自らが使っている力を一切論理的には説明できず、全て感覚だけで行っている。

 リンジーは今回もそれほど時間を掛けずにアルドリッジが求める箇所を見つけ出した。

 これで準備は整っているはずだが、リンジーはあくまで占い師、ミルドレッドは専門外なので新しい封印法が本当に機能するか否かは実際に試してみるまで分からない。

 この時のアルドリッジはまさか翌日、試す間もなく新法を使わざるを得ない事態に落ちるとは考えてもいなかった。

 洗面所に入ったアルドリッジは本当に顔を洗って怒りを静めた。銀髪の女の言いぐさは、父の死を蔑ろにしているどころか、気にすら留めていなかった。

 知りたい情報を得るための使える手札程度にしか考えていないことが言葉の節々から伝わり、アルドリッジは改善された、はずの新封印法を銀髪の女で試してみることにした。どの道不穏な空気が漂い始めたため、逃げ出すには使わざるを得ない。

 アルドリッジは金属製のドアノブにリンジーの情報を抜き取った空白の封印法を組み込む。

 そしてその空白部分に、既に識別済みのリンジーを封印するには不要として除外されていた、抽出済みの対象識別術を組み込む。

 ミルドレッドによればそうすることにより、何者かが触れた瞬間に対象識別術が相手に当たったのと同じ状態になり、且つ直接封印術に組み込まれているため触れた相手をそのまま封印するはずだという。

 上手くいれば接触式、或いは罠式と呼べる封印法が完成する。

 欠点は今のアルドリッジのようにドアノブに封印罠を仕掛けると、狙った相手以外が扉を開けようとした場合でも問答無用で封印してしまう。

 アルドリッジは席に戻らず洗面所に留まれば、逃げたのではと考えた女が必ず様子を見に来るはずだと確信していた。その間に無関係の誰かがやってこないこと祈りながら待つ。

 やがて扉が叩かれ、自分の名を呼ぶ声で女がやってきたことが分かった。

 既にドアノブに封印法を施しているためアルドリッジが触れている必要は無い。封印すべき対象が指定されていないため術は発動できずにいる。

 もう一度ドアが叩かれ、次いでドアノブがガチャリとひねられる。一瞬の静寂の後、ドアの向こうでコンと何かが落ちる音が聞こえた。

「うぅ、大変だったんだねぇ…」

 アルドリッジはリンジーと合流し、狩猟小屋で一息つきながら新しいクリトリスを入手するに至った経緯を説明した。

 かなりかいつまんで話したが、母が心労に因って無くなった辺りから人のいいリンジーは目を潤ませ始めた。

「…ということだから、俺はすぐにシャンニへは向かえないから、ここで本当に分かれた方がいいよ」

「…そぉ?…でもぉ」

 アルドリッジはリンジーにクリトリスの持ち主とその仲間の名前だけ占って貰い、一晩小屋で休んだ後リンジーとは分かれることにした。

「ホントに1人で大丈夫?」

「大丈夫だよ、元々1人で旅してたし。リンジーこそもし誰かに俺のこと聞かれてもバカ正直に答えちゃダメだよ。マジャリの人間なんて信用出来ないんだから。

 一緒にいるところを見られてる相手はここに居るから心配は無いと思うけど」

 アルドリッジはポケットを叩きながら言う。

 リンジーは年の離れたアルドリッジを置いて故郷へ向かう事に子犬を捨てるような罪悪感を感じていたが、アルドリッジに尻を叩かれて狩猟小屋を追い出される。

 しばらくはアルドリッジも見送っていたが、いつまで経っても振り返るので先に中に戻ってしまった。

「・・・さてと、こっちはどうしようかな」

 アルドリッジはポケットからパトリスのクリトリスを取り出し、蓋を開ける。

 改めて見るとリンジーやミルドレッドと比べてその小ささに違和感すら感じる。

 大きく育ったクリトリスなら丈夫そうなので遠慮無く刷毛を当て続けたり出来たが、一晩経って怒りが治まるとパトリスの可憐なクリトリスは壊れてしまいそうで無茶をするのが躊躇われる。

 アルドリッジは指でつついてパトリスの様子をうかがう。封印中は全く眠くならないが、眠ろうと思えば眠れなくもないということを教わっている。ただし時間の経過が一切分からないため、寝たつもりの時間が半日なのか、1ヶ月なのか、一秒なのかは定かでは無いらしい。

 指先に微かにクリトリスの反応が伝わる。

「パトリス、クリトリスどんな感じ?これはこれで可愛いとは思うけど、別に可愛がりたいわけじゃないからもうちょっと大きくなるように色々試させて貰うね、しばらく」

『…キュッ』

 指の下でクリトリスが一瞬硬直した。

 アルドリッジはパトリスのクリトリスを撫でながら、パラパラとノートをめくる。

 ノートにはアルドリッジが求めている陰核肥大薬の作成法も書かれていた。魔法は関係ないためアルドリッジにも作れなくはないが、素材も設備もない。

 硬化掻痒薬は既に解析して自由に扱えるようになっている為、改善法を聞き終わったミルドレッドのクリトリスに戻していた。薬品としては作り出せないが、硬化して形状が固定されたものなら作り直すことが出来るため、元々クリトリスを覆っていたものを新品に作り直し被せている。

 アルドリッジは錬金術師が術の過程で行うような力を使ってはいるが錬金術師ではないため、鉄を金に変えたり、布を木材に変えたりすることは出来ない。パトリスのクリトリスに痒みを与えようと思ったらミルドレッドに使用している掻痒薬から少量を拝借する必要がある。

 アルドリッジは鞄の中からヘザーの箱を取りだした。

 蓋を開けると休むことなくヘザーをイかせ続けているビラチーナが姿を現す。ノートを読んだ限りでは定期的に動力源として魔力を与える必要があるらしいが、20年を経て未だに動き続けている理由はアルドリッジにはわからない。

 パトリスのクリトリスを育てるためにアルドリッジが使えそうなものはビラチーナが分泌する鋭敏液だけなので、それを少し貸して貰う事にする。

「いふっ…んぎゅっ、んやっんっっや、ひぃぃぃ~っ!くはぁぁぁっっ!!」

 ヘザーはイク度に腰を跳ね上げる。

 ひらっきぱなしの毛穴から汗が止めどなく流れ出し全身をテラテラと光らせている。

 膣が収縮する度に中に溜まった白く粘性の強い分泌液が溢れ、肛門の上を通過し尾てい骨まで伝っていく。それらは気化することも下に落ちることもなく次にイク時のエネルギーとして循環している。

「ひいっ、ンひっ、はっはっはっ、んんん~~~っくひぃぃっ!!」

 ヘザーは疲れ果てていた。中ではエネルギーが霧散しないため身体は常に封印時の状態に保たれるが、イっても疲れないわけではなく、疲れては回復し、疲れては回復しを繰り返している。

 封印され、クリトリスにビラチーナを被せられてから20数年の間に何百万回と強制的にイかされ続け、身体は問題無くともその記憶によってイキ疲れしていた。

 何度イかされてもクリトリスは慣れてくれず、未だに表面全体を這い回る無数の繊毛によって与えられるくすぐったさや、根元をこそぎながら揉みしだかれる快感、振動する本体に因ってひねられながら引き延ばされる肛門がきゅっと締まるような感覚にひぃひぃと悶え、綺麗な顔が涙や鼻水、汗や涎でぐしゃぐしゃになっても拭うことも出来ずイキ続けていた。

「ういっ、んふっ、んいっ、ういぃぃっ!?…んひっ、ふひっ」

 分泌液での鋭敏化作用が限界に達して以降はほぼ一定の間隔でイかされてきたヘザーはビラチーナの奇妙な動きで数年ぶりに予期せぬ拍子の絶頂を与えられた。しかしすぐに元の間隔でイキ始める。

 ―くぢゅっ、ぐっっ…ぢぎゅっ。

「あは、んぉ、んはっ!?ほっ!?…んひっ!?」

 数百万回イかされる間に何度か、何らかの理由でビラチーナが不規則な動きをすることがあったが、今回の様に続くことはなかった。

『強っ・・・まさか表面にくっついちゃってないよね?』

「はひゃっ!?はっ?…こっ、あぉっ…あっ…」

 聞こえた声に反応し、助けを求めるが言葉にならない。イかされ続けながらも何度となく誰かに見つけて貰い無限絶頂から助け出される事を想像していたが、20数年間喘ぎ声しか発していなかったためとっさに正常な言葉が出てこない。

「あっ、あひっ、たったすっ…たっ…すひぃぃぃいぃぃぃっっっ!!??」

 常時与えられている吸引や伸縮とも違う先端方向への強い力を感じ肛門が締まった直後、クリトリスに何も感じなくなった。

「はやぁぁぁぁっっ!?」

 ヘザーはクリトリスがちぎられたのだと思った。

 絶頂は止めて貰いたいがその方法としてクリトリスを取られてしまうとは想像もしていなかったヘザーは絶頂が止まったことにも気づかずパニックに陥る。

『ヘザー?中に居るのヘザーでいいんだよね?聞こえる?』

「はぇっっ!?」

 無くなったと思ったクリトリスに感覚を覚える。

 アルドリッジはビラチーナを外した後のヘザーのクリトリスの様子に驚いていた。ビクビクと小刻みに震えてはいるがミルドレッドの様に暴れ回ることもなく、首をかしげるようにくたりと一方に傾いている。

 つまんでみると硬さもなく、ある意味触り心地がいい。

 力強く箱の表面に吸い付いていたビラチーナは糸を引いてクリトリスから離れ、クリトリスの表面はヌルヌルと滑る。

『これだろうなぁ、鋭敏液って』

 アルドリッジは外したビラチーナをそのままパトリスに被せようかとも考えたが、口径が明らかに違う上、入手した時点で既に限界まで育っていた3人分のクリトリスとは別に、自分で育ててみたくなった為体液だけを使うことにした。

 パトリスの箱を掴み、そこから生えているクリトリスを直接ヘザーのクリトリスに擦り合わせ、表面にたっぷりと残っている掻痒薬を分けて貰う。

『ぴくっ!?ピクピクッ??』

『ぴっ!?ピクくくくっ?』

 どちらのクリトリスも自身が感じている感触がまさか他人のクリトリスによるものだとは思わない。

 ヘザーは20数年ぶりに休むことが出来ると安堵しかけているところへの刺激に怯え、パトリスはヌルヌルとした得体の知れない物を塗られ怯える。

『な、なんだ?何を…』

 アルドリッジはノートの走り書きで敏感薬に陰核の肥大効果があることを知ったが、ビラチーナの鋭敏液にその効果は無い。二冊のノートは全てヘザー達の前所有者によって書かれたと思っており、鋭敏薬とビラチーナでは考案者が違う事を知らない。そもそもビラチーナは十分に育ったクリトリスに被せるために作られたので、肥大効果を組み込む必要が無かった。

『う…止め…そこを、さわ…るなぁっ』

 こすりつけられた柔らかくヌルヌルしたものの正体は分からなかったが、触れているものが指に変わるとすぐに気づいた。

 何かを塗られたことによって滑りが良くなり、指は小さなクリトリスを押しつぶすようにくちゅくちゅと前後に擦る。昨夜与えられた痛みとは全く違う刺激をクリトリスに与えられ、パトリスは腰をくねらせ始める。

『くっ…やめっ…んっ…くふっ…やめ、な…いかっ…』

 アルドリッジはクリトリスが目の前で大きくなっていくことを期待し、滑りが悪くなるとまだたっぷりと残っているヘザーのクリトリスから、スプーンのようにパトリスのクリトリス使い鋭敏液をすくい取る。

 そしてまたクリトリスを擦り始める。

『はっ…ンあっ…えっ!?…えっ、えぇっ!?…んっ、なっ、何だぁぁぁっ!?』

 怒りや屈辱を差し引いて快感を覚え始めていたクリトリスが、むず痒さを感じ始めるとそこから急にまるで生まれて初めて触れられたかのようなくすぐったさに苛まれ始めた。

『なんっ!?んっ、ひっ、くっっ…ちょっ、やめ、やめろぉぉぉっ!!』

 1度くすぐったさを感じるとそれは慣れるどころか更に強くなり、中のパトリスは腰を激しく左右に振って指から逃れようとする。

 その振動が微かにアルドリッジの指にも伝わり、薬が効き始めたことを知らせる。

 パトリスはクリトリスに塗られたものが鋭敏薬であることを知らず、鋭敏薬も鋭敏液も同じものだと思っているアルドリッジは、鋭敏液で十分開発されたヘザーのクリトリスを更に敏感にして悶えさせる為に改良されたのがビラチーナの鋭敏液であることを知らない。

 自分によっても他人によっても殆ど開発されていないパトリスのクリトリスは、鋭敏薬の3倍の効力がある鋭敏液を塗り込まれ、快感よりも耐えがたいくすぐったさを感じるようになった。

『ひひっ、いっ、やっ、ゆびっ、とっ…めろぉぉぉぉっっっ!!!』

 指の下で小さいながらも暴れ出したクリトリスの反応を快感によるものだと勘違いしているが、今のアルドリッジはパトリスをイかせたいわけでも悶えさせたいわけでもなく、遠慮することなく扱うために大きくしたいだけだった。

「あ…あ、あ、あ、まずい」

 しばらくパトリスのクリトリスを擦り続けていたアルドリッジは、ふと外したまま放置していたビラチーナに目をやる。

 外した直後はクリトリスに被さっている時のままの動きを続けていたビラチーナがぐったりとしている。

 触手や繊毛が微かに動くだけで、胴体の空間もペチャリと潰れてしまっている。

 凝縮魔力の持ち合わせなどあるはずもないアルドリッジは、慌ててビラチーナを元のクリトリスに被せた。

『あぁぁぁっ!?まっ、まってぇぇぇ~~~~っ!!!』

 馴染み深すぎる感触を先端に感じた瞬間ヘザーは力の限り腰を引いたが、箱の外には何の変化もなく、20数年ぶりに絶頂から解放され待ち望んだ休息を取っていたクリトリスはあっけなく再びビラチーナに包まれた。

 ヘザーからの魔力供給を絶たれ死にかけていたビラチーナは喜々として戻って来た肉の芽に抱きつき、締め上げる。

 繊毛と触手で抱いた相手を撫でながら、体液の準備が整うと分泌する。ヘザーのクリトリスの感度はとうの昔に限界まで高まっているため、分泌液は潤滑剤の役目しか果たしていない。

『はぁぁぁっっ!!ンひっ、んっんっ…いぃぃイクぅぅぅっいやだぁぁぁぁっ!!!』

 リンジーはすぐに腰を波打たせ始める。下手に休息を取らされてしまったため頭も身体も回復し、また一から新鮮な状態で無限絶頂を味わうことになる。

『いっイクぅっ!!やだぁぁぁイクイクイクぅぅぅっ!!!』

 アルドリッジは自身がパトリスのクリトリスを撫でている短い間にヘザーが希望と絶望を味わっていることになど気づいてもいない。

「う~ん、変わってないなぁ…硬くはなってるけど」

「う~ん、変わってないなぁ…イってる感じはするけど」

 ビラティに戻るわけにはいかず、本当にアンダに向かっても何の意味も無いため、アルドリッジは狩猟小屋から南西に進み、ひとまずアニチャヤを目指してみることにした。


『はっ…う、ンひっ…まっまたっ…』

 中でパトリスがどれほどくすぐったさに身を捩っていても指はお構いなしに撫で続け、無理矢理慣らされたパトリスは鋭敏液で感度を上げられてしまっていることもあり、アルドリッジの単調な指の動きだけで何度もイかされるようになっていた。

 携帯食料を補給できないままビラティから逃げざるを得なかったアルドリッジは早々に狩猟小屋を後にし、既に2日経っている。

 ポケットにしまったクリトリスを撫でていても一向に指に成長の気配は感じられず、時折出して目で確認しても大きさは変わらない。しかし桃色だったクリトリスは摩擦と充血で赤く染まっている。

「…しかたない、別の方法にするか」

 アルドリッジ木陰に腰を下ろし、鞄の中から何かをくるんだ布を取り出した。

 1人旅中、食料と交換するのに使う装飾品類はゴミ置き場の鉄くずや道で拾った石などを元にその場で作っていたが、リンジーを拾い更にミルドレッドやヘザーを手に入れてからは、いつ力を使う必要に迫られるか分からないため、道中見つけためぼしい素材を物々交換用とは別に確保していた。

 アルドリッジはパトリスの土台を拡げ、内側の空間に駆動機構を組み込んでいく。クリトリスの根元から下は穴のように見えて穴ではないため、土台の内側は自由に使うことが出来る。

 更に蓋を分厚いガラスに変え、その頭頂に開けた穴と土台から生やした伸縮する柱とをイラストマ筒で繋ぐ。

 魔法や生物は扱えなくとも、無機物だけで事足りる制作ならアルドリッジには造作もなく、素材が揃ってさえいれば頭で思い描けるものなら作り出すことが出来る。

 分厚いガラスの蓋の内側には数日の努力の甲斐なく全く育っていないクリトリスが不安げに納まっている。透明なので中は見えるが蓋は閉まっているので外の音は聞こえない。

 アルドリッジはパトリスに何の説明もなく仕込んだ駆動系を作動させる。

 プシュッ、という空気音と共に本体後部から生えている柱が伸縮を始める。柱はイラストマ筒でガラス蓋の上部と繋がっているため、中のパトリスにも不安をかき立てる音が聞こえている。

『!?…こ、今度は何だ…?』

 柱は一定間隔で伸縮を繰り返し、縮む度にガラス蓋の中の空気を抜いていく。

『…なんだ?…何か…』

 パトリスは少しずつクリトリスに加わっていく力を感じはするが、指でも何らかの器具でもなく、何が違和感を与えているのか分からない。実際は加わっているのではなく大気圧が減っているのだが、まさかクリトリスの周囲の空気が抜かれているなどとは想像だにできない。

『なにをっ…してっ…うんっ?…なっ、ちょっ、いっ、痛いっ!何だっ!?』

 空気が抜かれるごとにパトリスのクリトリスは少しずつ膨張していった。開始からしばらくは違和感程度にしか感じなかったが、ある時点から膨張率がクリトリスの表面の収縮率を超え、急に痛みを感じ始めた。

 その辺りからパトリスもクリトリスが何かで吸われているのだと気づき始めた。

 気づいたところでどうにもならず、柱の収縮に合わせて更にクリトリスは膨らまされていく。


cp01

『いっ、痛いっ!!…どうやって…くぅぅっ、止めろぉっ!!』

 アルドリッジは初回に限り、どのくらい空気を抜けばいいのかが分からなかったため柱が往復する数を数えていた。

 目の前で漸く望んだとおりパトリスのクリトリスが肥大していき、満足できる大きさになると一旦駆動を止める。

 人体の構造の事は詳しく知らなくてもそのままにしておくのは良くないと感じ、しばらくするとガラスの中に空気が戻り、また一から吸引を繰り返すよう構造を手直しする。

『ほ・・・・・・はっ!?ま、またっ!?』

 痛みが消え安堵しかかったが、すぐにまたクリトリスが膨らんでいく間隔に襲われる。

『なっ、なんなんだこれぇぇっ!!痛いぃぃっやめろぉぉぉっ!!・・・はっ、破裂するぅぅぅっ!!』

 パトリスはクリトリスに何をされているか以前に何のためにこんな事をされているのか分からなかった。赤毛の少年がマジャリに対する怒りを自分にぶつけているのだとしても、純粋な痛みだけなら単純に爪でつねられた時の方が辛く、クリトリスを膨らまされている理由が分からない。

 屈辱感で言えば今回の方が遙かに大きい。

「最初からこうすれば良かったかな」

 アルドリッジはしばらく膨張と収縮を繰り返すクリトリスを眺め、出来に満足する。最大の状態では20年イかされ続けたヘザーのクリトリスに匹敵する大きさになるよう吸引の回数を調整している。 

 魔法薬のように即効性はないが、しばらく続けていれば望む大きさになるだろうと、アルドリッジはパトリスをポケット仕舞いアニチャヤに向けて歩き始めた。

 更に数日費やし、アルドリッジはアニチャヤに到着した。

 バーマに入ってから訪れた町の中では最も規模が大きく、だからこそアルドリッジにとっては特に用のある場所ではなが、アンダよりは国境に近い。

 アルドリッジはビラティで使うことがなかった宿賃をここで使い、1日だけ部屋を借りた。

 パトリスのクリトリスを取り出す。

 箱を真空式に変更してからアニチャヤまでおよそ6日、その間一度も休みを与えられず吸引を繰り返されたパトリスのクリトリスは十分に肥大し、ガラスの中に空気を戻しても殆ど縮まなくなっていた。

 アルドリッジはガラスの蓋を取り外す。やはりクリトリスは縮まない。

 しかし摘んでみると柔らかく、他のクリトリス達のように内側に芯を感じない。

「パトリス、流石に何日も続いたら見えなくても自分のクリトリスがどうなってるか分かる?」

『・・・このっ…なんて事を…してくれた』

 パトリスもまさかとは思っていたが、摘まれた瞬間に自分のクリトリスが大きくなってしまっていることを確信した。

「小さすぎて…他のと比べればだけど、とにかく小さいと壊れそうだったから大きくしてあげたよ。これで漸く色々聞きたいことが聞ける」

『・・・他?』

「ハイかイイエで答えられるように質問するから、ハイなら1回、イイエなら2回ピクピクって動かして、ここを」

『うっ!』

 アルドリッジは摘んだ指に少し力を入れる。

『こ、答えるわけがないだろう、そんな…』

 少年が尋問をしようとしていることが分かり、何を聞きたがっているのかも概ね察しが付いた。何を聞かれても答える気は無いが、それ以上にクリトリスを動かして返答をするなどと言う屈辱的な行為を聖女騎士がするわけにはいかない。

「父さんの墓の場所とかも聞きたいけど、二択じゃ答えられないしね。

 じゃあまず最初に、ビラティにいたもう1人、ギャエル以外に俺を探してる仲間はいる?」

 クリトリスは何の反応も示さない。正確には摘んだ時からぷるぷると震えてはいるが、解答とは見なさない。

「…たぶん答えないだろうなぁとは思ってたけどホントに答えないんだ。じゃあ答えなかったらどうするかやってみせるね」

 アルドリッジはパトリスのクリトリスに爪を立てつねりあげる。以前はクリトリス全体をつねる形になっていたが、今や表面の一部だけに爪を食い込ませ捻り上げられるほどに育っている。

『いぎぎぎぎぎっ!!はなっ、放せっっっ』

 しばらくつねった後指を放すと、その部分だけが細い三日月に挟まれるような形で内出血を起こしていた。薬でなく真空で膨らまされたパトリスのクリトリスは桃色のまま成長しており、痛々しい充血が目立つ。

『小さいクリトリスじゃ手加減無しでこんな事出来ないもんね、千切れそうで。…じゃあもう一回聞くよ?仲間は?』

 パトリスのクリトリスはさっきにもまして震えているが、やはり返答とは思えない。

「嘘でしょ?痛くなかった?じゃあもう一回つねるね」

『・・・うぐっ、いぎぃぃぃぃぃぃっ!!!ぐぅぅぅぅぅ~~~~~っっっ!!』

 パトリスは歯を食い縛ってクリトリスからの痛みに耐える。聖女騎士であるパトリスに取って仲間を売ることはそのまま聖女を裏切ることに繋がる。

 鋭敏液の効果はとっくに切れているとは言え、手加減なく最も敏感な女の芽をつねり上げられる痛みに耐えるには相当量の精神力を要する。

『いぐぐぐぐ・・・!?…くぅぅぅぅぅぅっ!!!』

 先ほどの時間を越えても指を放してもらえず、パトリスの眉間の皺が深くなる。

「…答える気になったかな?もし次も答えなかったら・・・今度はここをつねるよ?」

 アルドリッジは爪を食い込ませていた中央右辺りから、クリトリスの先端に指を移動させ、そこをとんとんと叩く。

『そっ、そこ…は…』

 痛みからは解放されたもののパトリスの背中に冷たいものが流れる。

「パトリス、仲間は?」

『くっ…』

 パトリスは葛藤した。先ほどまでのような力でクリトリスの先端をつねられるのは恐ろしいが、やはりどうしても聖女を裏切れない。

『・・・!?っっっいぎゃあぁぁぁぁぁ~~~~~っっっ!!!』

 声を掛けられることなく、返答を聞くために先端に置かれていた指でそのままつねり上げられる。

 先端の極狭い部分に食い込んだ爪でそのままクリトリスを引き上げる。

『いんぎぃぃぃぃっっ!!いっいぃぃだいぃぃぃぃぃ~~っ!!!止めてぇぇぇぇっ!!!』

 アルドリッジは更に力を込めて捻り上げ、とうとう大きめの土台が僅かに机から浮いた。

『きぃぃぃぃっ~~~っっ!!』

 整った顔がくしゃくしゃになるほど眉間に皺を寄せ口を左右に拡げながら歯を食い縛る。皺の一部と化したパトリスの目の端からぽろりと涙が零れ、真っ赤に染まった頬の上を流れていく。

『!?』

 パトリスはクリトリスの激痛に耐えながらも自分が涙を流していることに気づいた。

 マジャリの騎士の中では最高位とも言える聖女騎士の称号を授与された自分が、かなり年下の少年に無様にクリトリスを差し出し、苦痛により泣かされている。

 それに気づいた瞬間にパトリスの心はポキリと折れてしまった。

『もっ、もうやめでぇぇぇぇ~~~っ!!!いっ!いうからぁぁぁぁ~~~~~っ!!!』

 アルドリッジは先端に食い込んでいる爪に苦痛によるものとは違う蠢きを感じ、漸く指を放してやる。

「もしかして言う気になった?」

『ぴっ!ピクピクピクッ!』

「ハイは1回、イイエは2回」

 アルドリッジはきゅっとクリトリスと摘む。痛みは与えない。

『ピクッ!』

「そう、よかった。やっと素直に答えてくれる気になったんだね。じゃあさっきの質問の答えは?」

『ピクッ』

「うんうん、やっぱりいるよね。何人?人数分ピクピクさせて」

『…ピク』

「ん?分かったって事?それとも1人?」

『…ピクピク?』

 アルドリッジはリンジーがいればと思いながらも根気強く質問を続ける。

「じゃあもう1人がシャンニで待ち構えてるって事でいい?たぶんギャエルももう合流してるんだろうけど」

『ピク』

「やっかいだなぁ…ギャエルはもう俺の顔知ってるし…」

 アルドリッジは素直になったクリトリスをさすりながら思案する。必ずしもマジャリに入国するのにシャンニを通過する必要は無いが、これ以上の遠回りや山越えは避けたい。

 いい案が浮かばず、アルドリッジは爪を立てず指の腹でパトリスのクリトリスをきゅっと摘む。

『びくっ!?』

「全く、君たちが余計なことをしなけりゃとっくにマジャリに入ってたのに」

 アルドリッジは腹いせにあまり力を込めずにキュキュッとクリトリスの至る所をつねっていく。

 アルドリッジの労力に対するパトリスの苦痛には大きな差があり、気まぐれに指を弾いただけで無抵抗なクリトリスはギュッと縮まるような痛みを感じてしまう。

『んっ…こっ、んぃっ!こいつを…ぐっ…シャ…ンニにぃっ!つ…れて、んひっ!い…ければ…』

 痛みに怯えて正直に答えてしまったことを後悔しながら、パトリスは何とか赤毛の少年アレクシスをシャンニに誘導し、そこにいるはずのキトリーとギャエルに助け出して貰おうと考え始めた。

「で?…シャンタルを診せる為にアタシを呼んだんじゃないんだろ?」

 イングリッドは振り返り、ヴィレメインの目を覗き込む。

 振り返ったイングリッドの背後には裸のシャンタルがベッドに横たわっている。

「分かるか?」

「バカか、こっちは最初から分かった上で来てやってるんだ。最近のマジャリ王室は面白いからな」

 ヴィレメインの後ろにはサビーナとメイド長が控えており、国王、王子に次ぐ権力者ヴィレメインに対するイングリッドの物言いにハラハラしている。会うのは今回が初めてではないが、毎回尻の割れ目を伝うほど背中に冷や汗を搔く。

 実際ヴィレメインもイングリッドには腹を立てているが、数年前からのマジャリ王室にとって頼れるのはイングリッドしかおらず、怒りを表に出さないように努める。

「…もう一つ頼みたいことがある」

 ヴィレメインはイングリッドと目を合わせないようにしながら話す。

「ほ~ぅ、厚かましいな。聖女の面倒を見させている上に、更に頼み事か?」

 元宰相ヨドークスが殺され、彼が保管していたと思われる聖女の欠片が持ち去られて以降、シャンタルの苦しみ様は急激に酷くなった。

 目に見えて分かるのは腹の膨らみのみだが、中に何かを注入されている期間が数日に延び、一旦元に戻ってもまたすぐに何かで腸を満たされる。

 外からは分からないが他の場所にも何らかの苦痛を与えられているらしく、ベッドに縛っておく程度では済まなくなった。

 サビーナやメイド長は勿論、典医やヴィレメインにも手の出しようが無く、可憐で意志の強い女性に成長したシャンタルが見る影もなく脂汗を垂らしながらベッドでのたうち回る様は見るに忍びなく、肉体的にも精神的にも手をこまねいている時間が無いのは明白だった。

 ヴィレメインは聖女に関連する全てを取り仕切る大家令としても神聖力のみを信奉するマジャリの官吏としても全てのしがらみを一旦忘れ、マジャリとその周辺4カ国を含むベシーナ地方の全魔法従事者の頂点に立つ大魔法士、イングリッドに助けを求めた。

 イングリッドの術麻酔によって眠らされたシャンタルは何とか落ち着いたが、当然意識はなく、その状態でも腹は大きく膨れ続けているため締め付けるような服は着させられず、裸のまま王宮地下に急造された専用部屋に安置されている。

「早く言いなよ。聞くだけは聞いてやる」

「・・・半月ほど前のことだが…」

 ヴィレメインは先日ムラドハナに戻って来たギャエルからの報告をそのままイングリッドに伝える。

 

 ☆の月△日、バーマ王国の小都市ビラティにて同行騎士パトリスが捜索中の少年アレクシス・アルドリッジを発見。

 パトリスは少年から話を聞くべく手頃な飲食店に入店。その直前私ギャエルと合流し、私も同店入り口付近の席で離れて監視を始める。

 パトリスは40分ほど少年と言葉を交わすと、私に馬車を用意するよう合図する。会話中に少年をマジャリに連行する必要があると判断するに至ったと推測される。

 厩舎への往復、手続き合わせて30分ほど。御者に馬車を引かせて私は単身で店に戻る。

 席に2人の姿はなく、私は店の外を探すが周辺にはおらず、再び店内へ。2人が座っていた席に近づくと注文した2人分の飲み物がまだ残っていたため、店員に確認。

 まだ料金が支払われていなかったため店内を捜索する。2階席を見渡した後洗面所へ向かうと、その廊下にパトリスが身につけていた衣服が落ちているのを発見。

 そこで漸く重大な事態が起きたことに気づき、再度詳しく店員に女と少年の二人連れについて尋ねる。

 女は知らないが少年の方は店を出たと知らされ、町の中の捜索を開始する。

 キトリーを少年が向かうと予測される国境の都市シャンニに先行させていたため人手が足りず、急遽冒険者を2人雇い、北と東の門を見晴らせる。

 私は最も可能性が高いと思われる南門からシャンニ方向を捜索するが・・・。

「…未だに少年もパトリスも見つかっていない。頼みたいのはこのことだ」

「2人を探して欲しいって?お前達最近捜し物ばかりだな。シャンタルの欠片と子供と部下か」

「…引き受けてもらえるか?」

「どうかなぁ?シャンタルの面倒を見るより面白そうじゃないな。うろうろするのは面倒だし」

 イングリッドは王宮に常駐している訳ではなく、麻酔術の効果が切れる頃を見計らって再度かけ直しにやって来る。

 今回まだその時期ではないにも関われたのに呼び出されたため、他の問題が起こったことは容易に想像できた。

 神聖力を信奉し魔法を忌むマジャリ王室の中でも、神聖力の現身たる聖女に関わる一切を統括するヴィレメインが魔法使いの頂点であるイングリッドに協力を求めるどころか王宮内に招くこと自体が異例中の異例で、それだけシャンタルの苦しみようが目に余ったとも言える。

 欠片がまだヨドークスの手にある時点で助けを求めていればイングリッドは苦も無く見つけ出すことが出来たが、マジェリ王族、官吏共にそれを不手際だと責めるものはおらず、現時点でもイングリッドの助力を得ていることを知る者は直接シャンタルの世話をしている数名しかいない。

「今回の事が起きるまではその少年はただの小さな手がかりの1つでしかなかった。しかしどうやったのかは分からないが聖女騎士1人を消して逃亡したとなると、シャンタル様の欠片を持っている物と繋がっているとも考えられる。

 …だから探すのはその少年だけでいい。頼まれてくれるか?」

「ふぅん、そんな子供がシャンタルドロボーに関係あるとは思えないけど。

 ・・・まぁ、報酬次第?」

「いくら必要だ?」

 既にシャンタルに術を施して貰うために莫大な額をヴィレメインはイングリッドに支払っている。

 イングリッドは一切金などに困ってはいないが、イングリッドに限らず魔法使いを嫌っているマジャリを魔法使い達も総じて嫌っており、マジャリ国庫に負担を掛ける嫌がらせのために大金を要求してた。

「もぅお金はいらないなぁ・・・あんた達お金よりいいものを独り占めしてるし、それを分けて貰おうかな?」

「・・・!?」

 さすがのヴィレメインも背中に冷たいものが走る。

「…それは、無理だ」

「あら、察しがいいわねぇ。別にアタシも半分くれって言うつもりはないのよ。強欲じゃないんだから。そうねぇ…このくらいでいいわ」

 イングリッドは手の平を上に向け、わしわしと指を動かす。

 小さなイングリッドの手とは言え、一握り分のマクルラード鉱石はヴィレメインであっても自由に出来る量ではない。

 盗難が発覚して以降元々厳重だった抵抗石の管理は更に厳しくなったが、その犯人が宰相だと分かると王族ですら国王の許可無く保管庫に立ち入ることさえ出来なくなった。

 持ち出すためには大家令といえど国王にその理由を説明し、許可を得る必要がある。シャンタルのためでも国王が魔法使いに国石を譲る許可を出すとは思えない。

「・・・すぐには答えられない。しかし用意できれば手を貸してくれるわけだな?」

「そぉねぇ、抵抗石を分けてもらえるなら探してあげましょうか、その坊やを」

「いやさぁ、別に出してあげたくないわけじゃないんだよ?結構凄い戦士だったらしいし…出したら俺に手を貸してくれる?」

『ピクッ!』

「ほんと?それは嬉しいんだけど、ミルドレッドにも手伝って欲しいんだよ。向こうは向こうで凄い魔法使いみたいだし。…ミルドレッドも封印されてるのは知ってるんでしょ?」

『…ピク』

「でも2人、仲悪いんでしょ?同時に出したら絶対俺のことなんかほっといてケンカするよね?だから封印を解いてあげるならどっちか1人だなぁって」

『ピクッ!ピクピクピクッ!』

「う~ん、魔法使いの方が色々便利だと思うんだよなぁ」

 ヘザーは自分の方がミルドレッドより強く、かつてはその腕を切り落としたこともあると伝えたかったが、クリトリスの動きだけでは不可能だった。

 既にビラチーナを外して貰い数日が経過しており、完全に思考も正常に戻っている。

 封印されてから20数年が経過していることを告げられた際は頭に血が上ったが、かつて身の周りの世話をさせていた男がずいぶん前に死んでいることを教えられると、多少怒りも治まった。

 新たに自分を所有している少年に何とか封印を解いて貰おうと、ヘザーは必死にクリトリスを動かして訴える。

「それにしても…20年イかされ続けてた割には元気だなぁ、ここ」

 アルドリッジは指を乗せていたクリトリスをキュッキュと摘む。

「リンジーも年取って無かったし、何かあるんだろうなぁただ封印されるだけじゃなくて、年取らなかったりあの生き物が死なずに動き続けられる原因が」

『ぴ?ピク?』

 ビラチーナを被せられている時は強制無限絶頂の苦痛のせいで考えもしなかったが、微かに聞き覚えのあるリンジーという女が封印から解放された際に年を取っていなかったという話は、俄にヘザーに希望を沸かせた。

 20年苦しみしか感じ無い状態でしっかり20歳年を取っていたのでは絶望しかないが、年を取っていないなら感情面はともかく少なくとも肉体的には何ら被害を受けていないことになる。

 それを確かめる為にもなんとしても外に出して貰いたいヘザーは必死にクリトリスで媚びを売る。

『ぴくぅ~、ぴくぴくぅ~』

「そう焦らないでよ。…それよりちょっと前まで毎日何回もイかされてた訳でしょ?急にクリトリスの周りに何も無くなって寂しくない?」

『ぴっ!?ピクピクピクッ!』

 ヘザーはクリトリスを横に振っているつもりだが、自分の意志では前後にしか動かせない。毎日何回どころか何百回もイかされており、漸く休息を得られ心から安らいでいる。寂しさなど感じているはずもない。

 しかしアルドリッジは指を動かし、くにゅくにゅとクリトリスをこね始める。

『ぴっ、ぴくぅぅ、ぴぃぃ…』

 ビラチーナを被せられている時でさえ封印空間の効果で疲弊と回復を繰り返していたクリトリスは既に完全に回復しており、緩い刺激を与えられると全く痛むことなく快感を覚えてしまう。

「20年続けられたら敏感になったまま戻らなくなったりしてるのかな?このくらいでも気持ちいい?」

『ぴ、ピクゥ…』

 当分、場合によっては死ぬまで2度とイかなくてもいいとさえ思っていたヘザーだったが、ビラチーナによって与えられるクリトリスを限界まで責め抜く激しい刺激とは真逆の、ゆるゆるとした優しい刺激を与えられると、穏やかな絶頂も久しぶりに味わいたくなって仕舞う。

『ピクゥ…ピクッ、ピクッ…』

 久しぶり、ずいぶんと久しぶりにクリトリスへの刺激を純粋に気持ちいいと感じ、こわばり続けていた中のヘザーの身体から力が抜ける。

 膣や肛門も緩み、少年がしたいなら1度くらいはイかせられてもいいかと身を委ねる。

「あっ…んん~、ン~~っ…」

 クリトリスで3本の指を感じる。2度と元に戻らない大きく育ったクリトリスを反り返らせ、弱い部分を摩って貰う。

「ん~~~っ、は、はぁはぁはぁ、あっ、あはっ、い、いくぅぅぅ~~~♫」

 アルドリッジの指がぴくんと跳ねられる。その直後からクリトリスがビクビクと震え出す。

「ふぅぅぅ~~~っ、んふぅ~~~~~っ♫」

 何百万回とイかせられ続けながら1度たりとも余韻を味わうことのなかったヘザーは絶頂後に余韻があることすら忘れており、絶頂そのものより20年ぶりに味わうその感覚を楽しんでいた。

「・・・だから…りあえず…しててよ。そのうち出してあげるから」

「…?」

 放心していたヘザーは少年の言葉を聞き逃した。すぐには出してもらえそうにないが、少なくとも苦痛からは解放されたので、少年の機嫌を損ねないためにしつこく抗議はしないことにする。

「じゃ、次はミルドレッドと話すから、しばらくこれ被っててね」

「…!?」

 被ると言う言葉と続いて感じたクリトリスを包まれる感覚にヘザーは一気に余韻から冷める。

 またビラチーナを被されるのではと叫ぼうとしたが、すくにそれが20年不本意ながら自身のクリトリスと連れ添った物ではないことに気づいた。

「な、なんだこれは…?」

 ビラチーナのようにしっかりと根元までを覆っているが、温かくも柔らかくもない、締め付けだけで言えばビラチーナよりも強い。

「気持ちいいのはもう飽き飽きしてるだろうから、しばらくはそれで楽しんでて」

「???…ちょっと待って…これは、何?」

 外からの音が途絶え、ヘザーは蓋を閉められた事を知る。

 クリトリスを動かしてみても正体は見極められないが、少なくともビラチーナの様な生物でないことだけは分かる。

「・・・・?」

 被せられたもの自体に何の動きも感じないが、しばらくするとムズリ、という感覚がクリトリスの何処かから沸き上がってきた。

「?…ん?」

 それが少しずつ表面に広がっていき、ビラチーナの繊毛をヘザーに思い起こさせる。

「はっ!?…いや、そんな…」

 正体は分からないが、クリトリスをくすぐるための何かだと考えたヘザーは青ざめる。

「い、いやだっ…それは・・・・・んあっ?」

 くすぐったさだと感じたものが変化していく。頭の中でふと“痒い”と感じた瞬間、それは一気にクリトリス全体に広がっていった。

「は、はぁっ!?かっ、痒っ!…痒ぅぅぅぅっ!?」

 1度痒みを認識すると、くすぐったいと感じていたものが全て痒みに変わった。

 被せられたものが触れている、クリトリスの表面全てから強烈な痒みが沸き上がり、緩んでいた膣や肛門が一気に締まり、身体も強ばる。

「な、なんだぁぁぁ~~~っ!なんでぇぇ~~~~っ!!」

 アルドリッジはミルドレッドと話すために外した硬化掻痒薬の置き場としてヘザーのクリトリスを利用した。2人のクリトリスはほぼ同じ大きさだったためわざわざ作り直す事はせず、単にそのまま被せ変えた。

 前所有者が掻痒薬を作り出した時には既にヘザーはビラチーナを被せられており、痒みで弄ばれた経験は無い。

「かっ、痒ぃぃぃぃぃ~~っ!!とってぇぇぇ~~~っ!!」

 ヘザーは腰を振りながら手を股間に向かわせるが、それはどこにも触れることはない。

 久しぶりに穏やかな快感を得ていたクリトリスは一転し耐えがたい痒みを与えられ急激に真っ赤に染まっていく。

「ひぃっ、ひいっ、ひっ!?・・・・・くおぉぉぉぉぉ~~~っっっ!!」

 最初の波がヘザーを遅う。掻痒薬の支配下にある限りクリトリスは何度となくこの痒みの波に襲われ、悶えさせられる事になる。

「くひぃぃぃぃ~~~っ!!とってとってとってぇぇぇ~~~っっ!!!

 かひぃぃぃっ!!!かっ、搔いてぇぇぇ~~~っ!!!」

 箱の中でヘザーが求める刺激はアルドリッジによって既にミルドレッドに与えられていた。

 痒みで跳ね回るヘザーのすぐ近くで、ミルドレットのクリトリスはこりこりと爪で搔いてもらえる快感で跳ね回っていた。

 ミルドレッドの掻痒薬はヘザーへ、ヘザーのビラチーナはパトリスに渡っていた。

「おあっ、んっ、んぐっ、ひっひっ、くあぁぁぁぁっっっ!!」

 パトリスの腰が跳ね上がり、絶頂に達する。真空式封印箱で育てられたクリトリスは隙間無くビラチーナの中に収まり、吸い上げられ、捻り引き延ばされながら触手達に責められ続ける。

 クリトリスの持ち主の性的経験値を考慮することなく、ビラチーナは被せられた相手に最大限の刺激を与え続ける。

 パトリスは一時的に塗られたことのある鋭敏液で常時感度を高められ、殆ど未開発だったクリトリスを休むことなくイかされ続けている。

「ひぃっ!ひぃっ!とめっ、とめてっっっ!!あぁぁぁぁっやすませてくれぇぇぇぇっっっ!!!」

 アルドリッジはアニチャヤを経つ前に魔法店で凝縮魔力の結晶を購入していた。

 魔力についてもビラチーナについても詳しくないので、寂しい懐から捻出した分でどれだけ保つのかアルドリッジには分からず、道中でビラチーナがまた弱ってきたらヘザーのクリトリスに戻すしかない。

「ひぃぃぃっもっ、もうイキたくないぃぃぃっっっ!!!」

 パトリスは自力ではどうすることも出来ず無慈悲にイかされ続けているが、アルドリッジはその様子を見てもいなかった。


cInb01

 アルドリッジはパトリスの封印器を極普通の箱に作り直し、鞄の中に仕舞っていた。

 滞在費もないためアニチャヤを早々に経ち、結局シャンニへ向かっていた。

 パトリスが言うように元々待ち構えている仲間が1人だったとしても、異変を知るギャエルが合流すれば自分を捕まえるために増援を呼んでいるかも知れない。

 アルドリッジにとって救いなのはマジャリと周辺4カ国は敵対こそしていないものの決して仲が良くはなく、あくまでバーマの都市であるシャンニで大規模な捜索は出来ないはずと言う点だった。

 ビラチーナで無限絶頂を味わわされているパトリスは自身の策略でアルドリッジをシャンニへ向かわせることなど出来なくなったが、何もされなくとも他に行くべき所のないアルドリッジはシャンニへ向かうしかなかった。

 携帯食の補給のために立ち寄った村で運良く一泊させてもらえることになったアルドリッジは与えられた部屋でパトリスの箱を取り出す。

 宿屋と違い声は筒抜けなので、可能な限り潜めて喋りかける。

「パトリス、もう1000回くらいイった?ちょっと休ませてあげる。」

 アルドリッジはビラチーナの能力を過小評価しており、日に10から20回程度だと思っている。実際はビラチーナが1日にクリトリスに与える絶頂の回数は500回を下回ることはなく、パトリスは1000回どころか既に3万回はイかされていた。

『ひぃっ、ひぃぃっ、んん~っん~っ!!はあぁぁぁっっっ!!!』

 腰をくねらせ、白い膣液をべっとりと膣口の周りに纏わせながらイキ続けていたパトリスは、数日ぶりにビラチーナから解放された。

『は、はぁはぁはぁ…んくっ、ふぅぅぅぅ・・・』

 パトリスは肩を振るわせながら息を整える。それほど時間を掛けることなく落ち着きを取り戻せるのはパトリスの精神力の賜ではなく、封印空間の効果によるもの。

「気持ち良かった?元の持ち主みたいに20年とかだと辛いだろうけど、何日かなら嬉しかったんじゃない?」

『ぐ…この・・・』

 人の気も知らないでと思いながらも、今のパトリスには怒りをぶつける手段がない。

「流石に赤くななっちゃったね。最初は奇麗なピンクだったのに」

『ぐぐぐ・・・んひゃっ!?』

 クリトリスを摘まれ、恐怖で反射的に聖女騎士にあるまじき声を上げてしまう。

 既に落ち着きを取り戻しているクリトリスの背を指で支えられ、もう一方の指でさらけ出されている腹を撫でられるとどう足掻いても快感を覚えてしまい、パトリスは開発されてしまった屈辱感に震える。

「最後に1回イかせてあげようか?」

『・・・ピク』

 ハイ以外の返事をしても痛み与えられるだけで、最後にという言葉に強制絶頂期間が終わるのではという希望を感じ、パトリスはクリトリスを1回動かした。

 アルドリッジはそのままやや指に力を込めただけで、丁寧にクリトリスの裏側を撫でていく。

『ふっ…んっ…ンふっ…』

 まだ十分に鋭敏液の効果が残っているパトリスのクリトリスは緩やかな指の動きでも十分に快楽を感じる。むしろ敏感になっているクリトリスにはこの程度の刺激がちょうどいい。

『ン~っ、あっ…んん~っ、んっんっ・・・んっ?』

 一定間隔で根元と先端の間を往復していた指が戻ってこず、パトリスのクリトリスは無意識にぷるぷると動いて気持ち良くしてくれる人肌の棒を探す。

 一瞬送れて自分の陰核の恥知らずな振る舞いに気づいたパトリスは頬を真っ赤に染める。

『…はっ、あっ・・・ンはぁぁぁっ・・・』

 指は何度か同じ事を繰り返し始める。しばらくクリトリスを撫で、震えが小刻みになってくると何処かへ離れ、また戻ってくる。

『あぁぁっ、んっ、んんっ・・・く、くぉぉぉ…』

 何度目かで自分が焦らされていることに気づき、いいように弄ばれている屈辱と絶頂を求めてしまっている羞恥とでパトリスはまた泣き始めた。

『はぁっ、はぁっ、はぁっ、も、もうイかせてくれぇぇぇっ・・・』

 アルドリッジの指に力が込められ強く擦られた瞬間、パトリスは絶頂に達した。

『んひっ!くはぁぁぁ~~~~~~~んっっっ!!!』

 同じ絶頂には違いないはずなのに、ビラチーナによって淡々と与え続けられるモノとは全く違う絶頂を味わわされ、パトリスは放心する。

 アルドリッジはくたりと緩んだクリトリスに指を沿え続け、ふるふる震える感触を楽しむ。

「・・・じゃあパトリス、そろそろビラチーナを戻すよ?」

『ピクッ!?ピクピクピクーーーっ!!!』

「はははっ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。…大丈夫、今度はさっきまでみたいにむちゃくちゃにイかされ続けたりしないから」

『・・・ぴ、ピク?』

「説明が難しいけど、今パトリスを封印してる…術?技?と同じように、他にも何個か違う効果の術を手に入れてるんだけど、その中にイクのを封印する術があるから、それを箱に施してからビラチーナを被せてあげる」

『・・・ピク?…ピクピクピクッ!?』

「イキ続けるのはきついでしょ?今度はどんなに刺激されてもイケなくなるから安心して。

 どうなるか分からないけど、魔力が残ってる間はそのままにしておくからちょっと体験してみてよ」

『ぴぴくぅぅぅーーーーーーーーっ!!!』

 クリトリスの必死の抗議もむなしく、アルドリッジは喋りながら既に絶頂阻害術をパトリスの箱に組み込んでおり、躊躇うことなく止めて貰おうと反り返っているクリトリスにビラチーナを被せる。

―ぐちゅり。

『なんでぇぇぇ~~~~っ!!!もう止めてぇぇぇ~~~~っっっ!!!』

 ビラチーナがぎゅっとクリトリスを抱きしめ、イかないクリトリスを全力でイかせ始めた。

「バカ正直に国境の町を通ってマジャリに戻ろうとするかねぇ?」

「…分かりませんが、赤毛の少年なので目立つとは思います」

「・・・あの、イングリッド…様。パトリスのことなんですが」

「誰?」

「・・・仲間です、私たちの。その、パトリスはどうなったんでしょう?服だけ見つかるというのは…」

 ヴィレメインはイングリッドに少年の捕獲は依頼したが、パトリスに関しては何も手を打たなかった。失態と言えば失態なので元々数を減らされつつあった聖女騎士隊においては切り捨てられてもしかたない部分もあるが、仲間達はそう簡単に見捨てることは出来なかった。

「ああ、最初に坊やを見つけた騎士ね。さぁ?封印でもされたんじゃない?」

「ふ、封印?」

「あんた達が崇め奉ってるシャンタルだって似たような状態じゃないのさ」

 イングリッドはシャンタルの状態が封印術と同じ系に属することは既に分かっていたが、キトリーとギャエルには何のことか分からない。2人が分からなくともイングリッドには説明する気も無い。ただしヴィレメインが王に嘘の申告をし首を掛けて入手した抵抗石を貰った手前、手伝いだけはしてやるつもりでシャンニまで赴いていた。

 既に野良猫や野良犬、鳥や浮浪者に至るまで、使い魔として利用できる操作術を掛けて回っており、何百という目が赤毛赤眼の少年を探している。

 アルドリッジの期待通りマジャリの人間はシャンニで大規模な捜査網を敷くことは出来なかったが、イングリッドが1人いるだけで事足りてしまう。

 イングリッドは袖の中に手を入れ、中の物を確かめる。

 イングリッドは抵抗石を受け取って以来、本当に全ての魔力を打ち消すことが出来るのか確かめる為常に持ち歩き魔力を送り続けていた。

 300年の間には何度か極小さな欠片を手にする機会があり、若気の至りで全力を与え消滅させてしまったこともある。

 自然界で発見される抵抗石にはどうしても少なからず不純物が混ざっており、魔法を使えない人間でもそれを頼りに時間を掛けて融点まで温度を上げることが出来る。

 イングリッドに取っては抵抗石といえど小さな欠片を消して仕舞うのは造作もなく、今回手に入れた大きな塊で長年気になっていた完全な対魔法効力を持つと予想されている純抵抗石が精製出来うるのか試そうと考えていた。

 シャンニはバーマのみならずその周辺のマジャリの都市と比べても規模が大きい。

 マジャリにも首都近辺などの大都市には国是の影響を受けない大店の魔法店が存在するが、中央から外れた場所で店を開こうとする魔法従事者は国境さえ越えれば何のしがらみもなく商売が出来るため、シャンニのみならずマジャリ外の国境都市は魔法関連の商店が多く軒を並べている。そしてそれらの店に訪れるのもマジャリからの人々の方が多い。

 その他マジャリ、バーマ、ニチェの国境地帯に古くから住む少数部族が各国を回り行商をしたり、国境を行き来しながら追っ手を躱している盗族団から仕入れた商品を捌く盗品商があったりと、シャンニは乱雑に賑わっていた。

「おや?本当に現れたかな?」

 信号を受け取ったイングリッドはその野良猫の目を通して赤毛の少年を確認する。

「!?ほ、本当ですか!?どこです」

 キトリーとギャエルは同時に椅子を鳴らしながら立ち上がった。イングリッドの操作術のおかげで町を見渡せる場所や門周辺で見張りをする必要が無く、2人は酒場でイングリッドに付き合わされていた。飲んでいるのは1人のみだが。

「まぁ待ちなよ。まだ門の辺りでうろうろしてる」

「い、いや、すぐに…」

「まてっつってんだろ、バカ共。アタシは別に構わないよ?すぐに捕まえても。でもあんた達が仲間も助けたいなら様子を見た方がいいんじゃないかい?」

「・・・あ」

 2人は尻を椅子に下ろした。

「どうせ1度見つけたら逃げられないんだから。おぃ、にいちゃん、グラスが空だぞ」

 イングリッドは大きなジョッキをカウンターの向こうにいる店員に突き出しながらおかわりを要求する。店員はそこに並々と発泡黄金酒を注いでいく。

「お嬢ちゃん、別に店としてはうるさいことを言う気は無いけど、そんなに飲んで死んじまわないかい?」

 それほど酒度が強くないとはいえ、数時間前から10代前半の女の子ががばがばと大量の酒を胃に流し込んでいる様は、酔っ払いや酒豪に慣れた店員でも心配になってくる。

「んぐんぐんぐ、いいのよぉ、こんなの酒の内に入らないわ、げふぅ♫」

 子供扱いされてもイングリッドは腹を立てることはなく、むしろ機嫌を良くする。そもそも若く見られ続けるために代謝を止めており、長寿なのはその副産物に過ぎない。

「あの…少年は1人ですか?パトリスは…?」

「1人だねぇ。…とはいえそのパトリス?もまだ無事かも知れないよ。のこのこシャンニまで来た割りにはまだ門の外でうろうろしてるから、あんた達がここに居るかもしれないことをパトリスから聞いてるのかもね」

 2人は顔を見合わす。

「では何処かに監禁されているかも…?」

「だからたぶん封印でもされてるんじゃないかって言ってるだろぉ。お前等のお仲間は子供に力尽くで監禁されるほど弱いのか?」

「・・・封印というと…あの、魔王とかに使う?」

「・・・」

 イングリッドはため息をつく。2人に細かい説明をしない理由は別に見下しているからではなく、マジャリの、特に王族王室に近い人間であればあるほど魔法の知識に疎いので、単に長く喋る事になるのが煩わしい。

「まぁそんなもんだよ。封印されてるなら持ち歩くことも出来るからその方が手っ取り早い。捕まえた後に居場所を吐かせる手間がいらないからね」

 キトリーとギャエルは捜索中に少年が魔法を使えるという情報を得ることが無かったにも関わらず、イングリッドの言うとおりであって欲しいと考え始めた。

 イングリッドは2人とは違い、パトリスが予想通り封印されていたとしても、少年が魔法使いであるとは思っていなかった。

 少なくとも300年間様々な魔法使いを見て来たため、今や見るだけで魔力の有無が分かる。

 服だけが残されていたという事から恐らく封印されたのだろうと考えていたが、他にも虫などに変えられて服が落ちていた周辺で踏みつぶされている可能性もあった。

 イングリッドは始めて少年の姿を見たが、そこまでするほど邪悪な相貌をしていなかったため、封印説に確信を強める。

 魔法使いでなくとも封印術が込められた札や咒器を使えば一般人でも出来なくはない。

「それで…いつ捕まえれば?」

「・・・ん~」

 術で操っている無数の生き物に指示をしておけば異変があった時のみ信号を送らせることが出来るが、それで夜中に起こされてもたまらない。

「・・・ま、日が暮れて人通りが少なくなったら捕まえていいんじゃない?お前達もここじゃ騒ぎは起こせないだろ?あんた達が絶対に逃がさないって言う自信があるなら坊やが外にいる今のうちに行ってもいいけど」

 少年が町に入り、閉門時間を過ぎれば万が一最初の接触で逃げられたとしても配置している無数の目で追うことも道を塞がせることも出来る。

 2人はもうしばらく大人しくイングリッドに付き合うことにした。

 門の外からいくら中を伺ったところでパトリスの仲間が待ち構えてるかどうかなど分かるはずもないと諦めたアルドリッジは、意を決してシャンニの西門をくぐった。

 上手くマジャリに入国できてもそれは同時に魔法関連の道具を購入するのが難しくなる事を意味するため、パトリスに使用する凝縮魔力などをここで手に入れておく必要があった。

 アルドリッジは宿に泊まったりも食事も湯を浴びることもせず、商店が閉まり始めるギリギリまで門の外で待ち、必要な物だけ揃えそのまま東門から町を出るつもりだった。

 閉門時間が迫ると街道方面は人通りが少なくなっていくが、中心部には酒場や色屋など遅くまで開いている店があるため賑わい続けている。

 アルドリッジは適当な魔法店に飛び込み、路銀の残りを気にすることなく買えるだけ凝縮魔力を購入する。

 運悪く用意していた物を渡すだけでなく、その場で必要量を込めて貰う販売形式の店だった為、アルドリッジはいらいらしながら終わるのを待つ。

 きょろきょろと店内を見回していると、店の飼い猫と目が合った。

 必要な物を買いそろえると、そのまま早足で東門へ向かう。喧噪が遠ざかり、再び人がまばらになっていく。

―ジャリッ。

 小走りをする自分が出している砂利を蹴る音とは違う足音が近くで聞こえ、アルドリッジは振り向いた。

 その瞬間、反対方向から首に腕を回され、一瞬にして息が出来なくなる。

 ギャエルがアルドリッジを押さえている間に素早くキトリーが肩から鞄をもぎ取り、そのまま腹を殴る。

「う…うぐぐぐ…ぐる…」

 アルドリッジはすぐに事態が飲み込めてはいたが、苦しさと痛みで打開策を考える余裕がない。

 町に入ってから今までまだ30分ほどしか経っていないが、見事に心配していたとおりの事態に陥ってしまった。

「中を見てみなよ。それっぽい物があるんじゃないかい?」

 声に従い、キトリーは奪った鞄の中を調べる。それらしき物はすぐに見つかった。

「あ、ありました…これでは?」

 キトリーはアルドリッジから離れ、イングリッドに鞄から取りだした物を見せる。

「…3つ?おかしな坊やだ…どれかが…」

 イングリッドは試しに1つの箱をキトリーから受け取り、蓋を開けてみる。

「・・・・・・クッ、キャハハハハハハッ」

 さすがのイングリッドも理解するまでに一瞬の時間を要したが、箱の表面から生えている物の正体に気づくと、肩を揺らして笑い始めた。

「な、何ですか?」

 キトリーとギャエルはイングリッドの反応に戸惑う。

「くふふふふっ・・・あーばかばかしい。いいからさっさと行くよ。後で教えてやる。折角坊やが自分からこっちまで来てくれたんだから」

 イングリッドの存在も張られている監視網も知らないアルドリッジにとっては無理もないが、閉門時間直前まで待ち、用だけ済ませてすぐに東門から抜けるという考えは全て裏目に出ていた。

 イングリッドは少年が町に入り、魔法店などで買い物を済ませそのまま東門へ向かおうとしていることを確認すると、2人に指示しすぐに後を追わせた。

 人気が無く、よりマジャリに近い門に向かってくれたため、確保出来ればそのまま町から連れ出しマジャリに向かう事が出来る。

 シャンニは国境の町ではあるが検問所は兼ねておらず、シャンニから東へ馬車で1日ほど進むと本当の国境と検問所がある。

 キトリーはアルドリッジの手を後ろ手に縛り、更に腰と首にも縄を掛けギャエルから引き取る。ギャエルは既に門に向かって歩き出しているイングリッドを走って追い越し、厩舎に馬車を引き取りに行った。

「おい、あの中にパトリスがいるのか?」

「げほ…げほげほ…」

 縛られてしまったが呼吸は戻り、アルドリッジは現状について考える余地を取り戻した。

 見覚えのあるパトリスの仲間のギャエルともう1人の女騎士、その2人と自分より若そうな女の子の取り合わせの理由は分からないが、3人だけなら観念せざるを得ないほど絶望的な状況とは言えない。

「おい、聞いてるのか?」

 後ろから頭を小突かれる。

「…いるよ。元気なままでね」

「封印とかいう魔法を使ったんだな?出せるんだろうな?」

 アルドリッジはマジャリの騎士が既に仲間が封印されているかも知れない可能性に気づいていたことに驚く。手がかりと言えば洗面所の前に残して来た服ぐらいしかなかったはず。

「出せるよ、縛られたままじゃ無理だけど」

 背中から鼻を鳴らす小さな音が聞こえた。

「あの中のどれかにいるのならお前の力は必要ない。交渉の材料になると思ったか?」

 キトリーの言うとおり封印を解く解かないを交渉に使えるかもと考えたが、予想と違う反応が返ってきた。パトリスが封印によって拉致された事を予想していただけでなく、それを解ける魔法使いまで既に確保していると言うことだろうか。

 3人はイングリッドを先頭に東門から出る。

 既に門を閉める準備をし始めていた衛兵は一行に不審そうな目を向けるが、関わろうとはしない。国同士の関係がそれほど良好でないからこそ事前の手続きが重要で、逃走中の手配班を捕らえた場合マジャリまで護送する旨を兵営に伝え、既に許可を得ていた。

 門を出てもしばらく歩き続ける。

「坊や、1つはパトリスだろ?他の2つは誰を閉じ込めてるんだい?」

 イングリッドが足を止め振り返る。イングリッドが持っている箱の中にパトリスがいると思っているキトリーは興味深げにアルドリッジの後ろからその手元を覗く。魔法の知識が乏しい為小さな箱にパトリスが封印されていると聞き、パトリスがそのまま小さくなって閉じ込められていると想像していたが、箱の表面には琥珀色の物体が乗っているだけだった。

「・・・」

 アルドリッジは少女に坊や呼ばわりされていることにも、その少女が一番偉そうに振る舞っていることにも不審を抱く。考えてはいるが、自分を捕まえるための追っ手の中に女の子が混ざっている理由が分からない。更に蓋の中を見てどういう状態で封印されているか理解しているはずなのに、動じる様子もない。

「・・・ま、出してみれば分かるか」

「・・・・・え?」

 一瞬イングリッドの手の中にある箱が光ったのをキトリーは見た。琥珀色の物体の下から何かが細長く伸びてきたと思うと、瞬きした次の瞬間にはイングリッドの足下に裸の女が跪いていた。

「え?・・・え?え?」

「あ!?…この子が魔法使いなのか…」

「はっ!?…はあぁぁぁぁぁっっっ!?」

その場にいる4人の内3人がそれぞれに驚く。最も驚いているのは突然現れた女だった。

「で、出られた?でれたぁぁぁっ!?」

「・・・これがパトリス…じゃなそうだな。おい、次の箱」

 イングリッドは呆然と裸の女を見つめているキトリーに命じる。

 キトリーは驚いたまま鞄の中からもう一つの箱を取りだし、イングリッドに渡す。

 裸の女は一瞬喜ぶそぶりを見せたが、すぐに膝立ちで股間に両手をやり、なにやらまさぐっている。

 イングリッドは二つ目の箱の封印も解呪する。

 人目をはばからず股間をいじくる一人目の女に目を奪われていたキトリーは、箱から長い黒髪の女が現れる瞬間を見逃した。

「はっ!?・・・あ?…え?…うぅっ・・・う゛っ!」

 黒髪の女は一瞬2本の両足で地面に立ったが、すぐにバランスを崩し裸の尻で地面に尻餅をついた。

「・・・そ・・・外!?」

 その声に反応した一人目の女は股間を弄ったまま振り向く。

「・・・ミ…ミルドレッド?」

 黒髪の女も声の主の方を振り向く。

「・・・へ、ヘザー!?」

 2人は20数年ぶりに裸で対峙した。両者とも年を取っていないので見ればすぐにお互いを認識できる。

 対峙しはしたものの、2人ともそれどころではなかった。当時のわだかまりが解消されたわけではないが、突然解放された驚きと喜びの方が遙かに、遙かに大きい。

 しかしお互いと、見知らぬ数人の目があるため感情を表に出して喜ぶことが出来ない。ヘザーに関しては更に先ほどまで被せられていた掻痒薬のせいでクリトリスを好きなだけ掻きむしりたいが、それも我慢しなければならなくなった。

「ここは…?」

 ヘザーは辺りを見回す、すぐ近くに3人が立っている。その中に1人縛られた少年がいることに気づいた。道の向こうから馬車もやって来ている。

「誰が…」

 ミルドレッドも辺りを見回した。周りに3人の内の誰かが出してくれたに違い無いが、特にその中の赤毛の少年に目を留める。

「お前っ!!??」

 ヘザーとミルドレッドは同時に叫んだ。

 3人の内唯一の男で、何度か交わした会話で新しく自分達を所有したのが少年だと分かっていた2人は、自分達のクリトリスを好き勝手に弄んでいたのがその少年に違いないと判断し、身構えた。

「・・・はいはい、騒ぐつもりならこうね」

 イングリッドは両手に魔力を集め、ヘザーとミルドレッドに向けて放った。

「はっ!?」

 またも同時に2人は声の方を振り向こうとした、が、叶わない。

 背後から命中した魔力はイングリッドの両手に繋がったまま縄状に変化し、2人の身体を縛り上げていく。

 縛り上げられてしまうとイングリッドの魔法縄は振り向く程度の動作さえ2人に許さない。

「魔法縄?こんなもので・・・」

「魔法?それなら・・・」

 瞬間的に縛られた2人だが、それが魔法による物だと分かると、慌てることなく解こうとする。

 しかし天才魔法士のミルドレッドも、対魔法遺伝子を持つヘザーもイングリッドの魔法縄を解くことは出来なかった。

「そんな…」

「…誰だお前!?」

 2人の注意は赤毛の少年から縄を通じて魔力を放ち続けている少女に向かう。

「せっかく出してあげたのに勝手なことしちゃ駄目よぉ?お嬢ちゃん達。大人しくなるまで縛られてなさい」

「はうぅっ!?」

「んひっっ!?」

 イングリッドが手元の魔法縄を操作すると、ヘザーとミルドレッドの股間の割れ目に食い込んでいた縄が更にぎゅっと食い込む。

 箱からは解放されたものの、2人はすぐに縄で自由を奪われてしまった。

 漸く馬車と共にギャエルが追いついた。

 借り物の馬車ではなく一行がマジャリから乗ってきた物なので御者はおらず、ギャエル自身が手綱を取る。

 遠くから見ていると3人しかいないはずの場所に5人の人影が見えたため慌てて馬車内に保管しておいた剣を帯刀したが、いざ合流してみると特に揉め事は起こっておらず、裸の女が2人増えている理由は分からないものの、ギャエルは安堵する。

「あの・・・イングリッド様?これは…」

「遅かったわねぇ、アタシをあんまり歩かせないでよね。話は道中相棒から聞きなさい」

 イングリッドはヘザーとミルドレッドの縄を操り、馬車の後部へ誘導する。


 アルドリッジの目の前で縄を食い込ませた2人分の大きな尻がくねりながら馬車の中に消えていく。

「ちょっと、2人増えて狭くなったんだからあんたは相棒の横に座りなさい。坊やとお嬢ちゃん達はアタシが見ててあげるから」

 イングリッドはキトリーからアルドリッジの鞄と、縛っている縄の端を受け取り馬車に乗り込む。

 キトリーは言われたとおりギャエルの隣の御者台に腰を下ろす。

 コンコンと中から合図が聞こえ、ギャエルは馬を走らせ馬車を進ませる。

「・・・なあ、あの2人は、誰?」

「・・・さあ」

「・・・そうか」

「・・・」

「・・・なあ、パトリスは?」

「・・・さぁ」

 客車は2列の椅子が向かい合って設置されていた。

 一方はイングリッドが1人で占領し、他の3人はその向かいに座らされた。

 中央のアルドリッジはヘザーとミルドレッドに両側を挟まれる形になってしまった。

 2人は腰を下ろすことに因ってより割れ目に食い込んでしまった縄を気にしながらも、何とか外せないかと試行錯誤していた。ヘザーは先天的な対魔力を持ってはいるがそれを頼りに縄を解こうにも最終的には結局筋肉を使うことになり、目の前に座って自分を縛り続けている少女の目を盗むのに苦労している。

 ミルドレッドはヘザーの様に目で見て分かるような動きをする必要は無かったが、魔法縄の魔法言語を読み解き解呪しようにも、言語が常に流動していて追うことすらままならなかった。

「こらこら、おいたはダメよ?」

「…んぎゃっ!?」

「いぎっ!?」

 2人が同時に身悶えし、アルドリッジはぎゅっと押しつぶされる。

 イングリッドは縄を通して2人の女性器に電撃を流した。

「いっとくけど別にあんた達に用はないのよ。この坊やと揉められると面倒だから縛ったけど。そのうち解放してあげるからいい子にしてなさい」

 ヘザーもミルドレッドも抵抗を諦め、言われたとおり大人しくすることにした。しかしミルドレッドにはどうしても気になることがあった。

「あの、あなたは…イングリッドと呼ばれてましたよね?・・・まさかとは思うんですが…」

 魔法使いであるミルドレッドは自分を容易く押さえ込む魔力を持ち、イングリッドと呼ばれた少女に大いに心当たりがあった。

「あら、分かる?たぶんあなたが考えてるイングリッドは私の事よ」

 ミルドレッドは目を見開く。ヘザーもアルドリッジも横目でその様子を見ているが、何をそんなに驚いているのか分からない。

「し、信じられません、まさかお目にかかれるとは…しかも、助けてまで頂いて」

 目の前にいるのが大魔法使いイングリッドであると確信した瞬間、ミルドレッドの中から完全に抵抗の意志が消えた。抵抗しようものならかつての自分がそうしていたように、あっさりと殺される。裸で縛り上げられていても何も気にならない。

『アイツ…何をあんなに…がらにもなく・・・イングリッド…イングリッド?』

 十分にその強さを知っているヘザーは急に目の前の少女に対しかしこまりだしたミルドレッドを不審に思う。

 冒険者の中でも主に賞金稼として生計を立てていたヘザーや同業者の間には、高額賞金に目がくらんでも決して手を出してはならない人物達の名簿があった。

 その上位にいる魔法使いの名が確かイングリッドだったことを、ヘザーは思い出した。

「イングリッドって、あの魔法使いの?こいっ…この子が?」

 とうとうヘザーは当然の様にミルドレッドに喋りかけた。ミルドレッドも腕を切り落とされた怒りなど忘れてしまい、ヘザーの目を見て頷く。

 間のアルドリッジだけが話について行けていない。

「2人とも良く知ってたわねぇ。ここ何十年かは大人しくしてたのに」

 ミルドレッドと違いヘザーはまだ半信半疑だった。何しろ大魔法使いイングリッドは300年前の分裂戦争の時点で既にその戦争に関わる主要な人物の1人として歴史に登場していた。しかし目の前にいるのはただの少女でしかない。

 ミルドレッドはヘザーと違い、イングリッドならその魔法力で老化を止めることなど容易いと分かっており、その容姿が自分より若いことに疑問は抱かなかった。

「ま、アタシのことも、お嬢ちゃん達の事も今はいいのよ。ね、坊や?」

 ヘザーとミルドレッドははっとしてアルドリッジの方に向き直り、睨み付ける。

「・・・あの、お姉さん達、言っておくけど2人を封印したのは俺じゃないからね?」

 アルドリッジは裸の女2人の間で縮こまりながら声を発する。アルドリッジの言い分は間違ってはおらず、実際2人が大いに苦しんだのはアルドリッジに寄るここ最近の悪戯よりも20年以上続いた絶頂と痒みに因る責めだが、その張本人である前所有者が目の前にもこの世にもいないため、アルドリッジが怒りを向けられてもしかたなかった。

「すぐに封印を解けば良かっただろう?」

「そうだ。お前が封印を解けるのは知ってるぞ?あの何とかって女は出してやっただろ?」

「1人は助けておいて私たちの…あれは散々弄んでくれたな?」

「どれだけ辛いか分からないのか?あれを…あんなふうにされて」

 ヘザーとミルドレッドは共通の敵を前に団結しアルドリッジを責める。イングリッドは止めることなく、むしろ楽しげにその様子を眺め始めた。

「イングリッド様の用事が終わったら次は私たちの番だからな?」

「封印したのがお前じゃなくてもただで済むと思うなよ?」

「・・・ふ~ん、お嬢ちゃん達を封印したのは坊やじゃないんだ。じゃあこれは…」

 向かいの席の少女が喋り始めると2人はピタリと口を閉じる。イングリッドは鞄の中から最後の箱を取り出した。

「これはどう考えても坊やの仕業だろ?どうやったんだい?」

 いいながらイングリッドは蓋を開ける。そして数十年ぶりに少しだけ驚く。

「・・・あの、それも俺じゃないからね?作ったの」

 アルドリッジは予め断っておく。

 ヘザーは箱の表面を見て一気に青ざめ、震えだした。長い間自分のクリトリスに覆い被さり、どれほど懇願し悶えても決して止めることなく絶頂を与え続けた生き物がそこにあった。

「う、うぐ…」

 思わず口元を押さえようにも縛られていて叶わない。込み上げてきたものを何とか押し戻す。

「それは確か…」

 かつてヘザーを苦しめるために制作に知恵を貸したが、ミルドレッド自身には一度も使われることはなく、その名前は忘れてしまっていた。

「面白いものを作ったもんだねぇ。でも確かに坊やには無理そうだ。あんたかい?お嬢ちゃん」

 ミルドレッドは素直に頷いてしまう。

「ふむふむ…サンクラマーナとクラカニ蜂…スクイーダの組織にブラーサもか、中々よく出来てるじゃないか」

 ミルドレッドは観察するだけでかつて自分が前所有者に指示した素材を言い当てていくイングリッドが本物のイングリッドであると完全に確信する。そしてそのイングリッドに誉められ喜びすら感じて仕舞う。

「でも惜しいな、こうすればもっと良くなる」

 イングリッドはパトリスのクリトリスを覆っている生物、ビラチーナに指で触れ、魔力を送り込む。

「それとこれも有った方がいいな」

 一つ目の施術では特に変化のなかったビラチーナの足が箱の表面から離れ、バタバタと暴れ出す。

 3人は何をしたのかと食い入るようにそれを見つめる。アルドリッジよりもミルドレッドの方が身を乗り出し、頂点に立つ魔法使いの技を目に焼き付けようとする。

 やがて8本の触手の内7本は元通り表面に張り付いた。そして残る1本の触手の先端が膨らんでいく。

 膨らんだ先端が小さな球状になり、ぷつりと切り離された。球体を落とした触手は他の7本同様、役目を果たすために表面に吸い付く。

 イングリッドはビラチーナに乗せていた指を玉に打つし、そこにも魔力を送る。

 すると玉は少し膨らみ、ぷちゅりと小さな音と僅かな粘液と共に弾けた。

 弾けた玉の中には、小さなビラチーナが蠢いていた。

「・・・これは…どういう?」

 尋ねたのもミルドレッドだった。純粋に魔法使いとしての興味が抑えきれない。

「こいつを少し賢くしてやったのさ」

 イングリッドは一度目の接触で、ビラチーナに使用されている複数の生物の各機能に追加の指令を加え、更に生殖、補給、思考の能力も与えた。

 そして二度目の接触で初回に限りそれらを機能されるための魔力を送った。

 天才の指示によって作られはしたが、実際に作業したのがただの素人だったため、まだまだ改善の余地があり、イングリッドは一瞬でそれを見抜いた。

『はっ、ンぐぅ、ひっ、ひっ・・・ひっ!?…なっ?んなぁぁっっ!?・・・なにぃぃぃぃっ!!??』

 ビラチーナが触手の先端から卵を分裂させた以外見た物変化はなかったため客車内の誰も気づいていなかったが、中のパトリスだけはその突然の変化に因って与えられ続けていた苦悩を次の段階に引き上げられていた。

 イングリッドもビラチーナに気を取られ箱に絶頂阻害法が施されていることにまだ気づいていない。

『あひぃぃぃっっ!!んひっ!んひっ!くっ・・・っかぁぁぁ~~~っ!!ひぃぃぃぃ~~~っ!!!』

 クリトリスの表面を這っていた無数の繊毛の一部がその極細い先端で届く範囲をつんつんとつつき始めた。

 また別の一部は同じく先端を用い、小さな円を描くように表面をなで始める。

 極細い先端で突かれても痛みは感じず、むず痒さだけが募る。またこれまで蛇が地を這うようにクリトリスに刺激を送っていた繊毛が先端だけを使うことにより、いっそうくすぐったさが増し、そわぞわと鳥肌を立たせ続ける。

 本来なら繊細すぎて感じ取れないような刺激も、鋭敏液によって感覚を最大限高められているパトリスのクリトリスは全て認識できてしまう。

「ふひゅ、ふひゅ、んひっ、いぃぃぃぃっ、はあぁぁぁぁぁ~~~っ!!!」

 その分泌腺は更に弛緩液を分泌し始めた。

 薬が効き始めると快感を与えられ続け、にもかかわらずイクことを許されず、何とか絶頂を得ようとギュッと硬く締まっていたクリトリスからだらりと力が抜ける。

 中のパトリスがどれほど全身を力ませて苦しみを緩和させようとしてもクリトリスは緩んだままとなった。

 腰に力を入れてクリトリスを締まらせることで常に与えられ続ける無数の刺激を極々僅かに逃がしていた、極々僅かな抵抗も奪われ、パトリスのクリトリスは与えられる全ての刺激を完全に無抵抗な状態で受け取り続けるしかなくなった。

『いぎぃぃぃぃ~~~っ!!ひっひっひっ、ひゅぃぃぃ~~~くひぃぃぃぃ~~~っ!!!』

 イングリッドの改善前から既に見る影もなくなっていた聖女騎士は奪われたクリトリスの権利を取り戻そうと暴れ回り、時に石のように全身に力を込め、また暴れる。しかしクリトリスはビラチーナに身を委ねたまま苦悩を生み出すのみで、膣と肛門が激しく収縮するのみだった。

 2つの穴からぶびゅぶびゅと音を立てながら白と黄の体液を垂れ流し、グチャグチャの顔で白目を剥いて悶え狂う様に聖女騎士の威厳は最早無く、絶頂を阻まれているパトリスはイくことを望むだけの生き物となった。

「それからこれ、魔力を動力にしてただろ?使い勝手がいいからそれは別にいいけど、自分でその魔力を補給できる様にしなきゃダメよ、お嬢ちゃん」

 イングリッドもミルドレッドも、量に差はあれ魔力は自分自身の身体で生み出される。それらは身体の他の機能と同様に日々の食事によって補給される。そのため魔法使いは一般人よりも食事の量が多い。

 ビラチーナもその身体を構成している細胞は元々稀少魔法生物のものなので、食事によって魔力を補給する能力は持っていた。

 イングリッドによって新たな命令を与えられたクリトリスの根元裏側部分、触手が窪みに快感を与え続けている辺りの繊毛十数本が、皮膚の表面にぴったりと張り付きながら封印の境界を越え、今まさに尿道口へ向けて進んでいた。

 極細すぎるためゆっくりとしか進めないが、数時間後に尿道に達するとそこから流れ出た尿を自身のエネルギー源として利用し魔力を補給し始める。

 魔力を与え続けてくれるヘザーのクリトリスに被せられたため偶然20年以上生き続けることが出来たビラチーナだったが、この改良に因って魔力を持たないパトリスのような相手のクリトリスに被せられても自分自身でエネルギーを補給し、無限にイかせ続けられる様になった。

 イングリッドはもっと簡単に繊毛を吸血生物の口のように変え、直接クリトリスから血液を吸いエネルギー源とする事も出来たが、陰核を悶えさせるためだけに作られた生き物を面白いと思い、余計な刺激を加えないことにした。

 また膣液の方がより効率的に体液をエネルギーに変換できるが、元々あるビラチーナの細胞を流用するため、よりクリトリスからの距離が近い尿道を使うことにした。

 アルドリッジが持ち金をはたいて購入した凝縮魔力はイングリッドによる数秒の改造で無用の長物となった。

―くちくちくち・・・ボシュッ。

 イングリッドは大きなビラチーナの横で蠢いていた小さなビラチーナを消し去った。

「・・・あ」

「今は要らないでしょ?生殖できるようにしたからこれからは余ったエネルギーを使って時々子供を産むわよ。要らなかったら捨てちゃえばいいし」

 イングリッドは箱を仕舞おうとして思いとどまる。

「…って違うじゃない。面白いもの見せられたから気を取られちゃった。これがパトリスなのよね?」

 アルドリッジは頷く。

「・・・狭いから出すのはよしましょうか。せっかく改造したばかりだし、もうちょっと気持ち良くさせて起きましょう。

 で、魔法使いじゃない君はどうやってこの子を封印したのかしら?」

 まだ箱に入ってはいるものの、仲間も見つけて欲しいというキトリーとギャエルの望みは達成され、イングリッドは少年がシャンタルの欠片に繋がる情報を持っているか確かめ始めた。尋問までは頼まれていないが、純粋に興味を引かれた。

 アルドリッジは答えに窮する。リンジーを解放したことを知られていなければただ拾っただけどごまかすことも出来たが、少なくともミルドレッドはリンジーの封印が解かれしばらくアルドリッジと行動を共にしていたことを知っている。何よりミルドレッドは、

「…そういえばお前、私に妙なことを考えさせたな?・・・魔力を使わずに封印する相手を認識させる方法だったか…」

 アルドリッジは罠式封印法を作る為にミルドレッドの協力を仰いでしまっており、言い逃れることは不可能だった。

「恐らく何処かで封印術用の咒器を手に入れたんだろう?」

 思いもよらず、言い逃れの道を塞いだ本人が助け船を出してくれた。

 回復術を施した杖や火炎術を施した剣、雷撃を弾く術を施した盾やもっと一般的には施錠術を施した札など、魔法を使えない者でも魔法の恩恵を受けることが出来る咒器は数多く存在する。

 封印術を施した何らかの道具をアルドリッジが持っているなら魔法使いでなくとも人を封印する事が出来る。むしろ一般人が魔法を使うにはその方法しかないため、イングリッドも異論を挟まない。ミルドレッドは封印されアルドリッジに協力させられている時から封印術器の存在を疑っていた。

「・・・え~と」

「鞄の中にはないわねぇ、何処かに隠したの?」

 イングリッドはアルドリッジの鞄の中を漁る。ノート数冊と購入したばかりの凝縮魔力、残り少ない携帯食料と必要最低限の着替え、布に包まれたがらくたなどアルドリッジの鞄には旅の邪魔にならない程度の僅かな荷物しか入っておらず、咒器らしきものは見当たらなかった。

「白状するけど、それだよ」

 アルドリッジは視線でパトリスの箱を示す。

「・・・これか?」

「そうそれ。その箱、元々別の女の人が封印されてたんだよ」

 アルドリッジはミルドレッドが勘違いして出してくれた助け船を元に、作り話を始めた。

 旅の途中で占い師リンジーが封じ込められた箱を見つけたアルドリッジは、中のリンジーが占いで導き出した解呪法を使ってその封印を解いてやった。

 更にリンジーの記憶を頼りにヘザーとミルドレッドの箱を見つける。

 リンジーは他の2人と違い前所有者が作った封印咒器に封印されており、解呪法が分かってからは自由に出し入れする事が出来た。

 しかしその咒器はリンジー用に作られていたため、魔法を使えないアルドリッジは対象を変更しリンジー以外の人間を封印する事が出来ない。

 旅をしているアルドリッジは危険な目に遭うことが時々あるが、これまでは何の対抗手段も持たず逃げるしかなかった。

 危害を加えようとする相手を封印出来れば自分を守ることが出来ると考え、ミルドレッドに改善法を尋ねる。

 その後リンジーとは別れ1人で旅をしていたが、自分を追ってきたというパトリスが父と聖女に関連し何を思ったかマジャリに無理矢理連れて行こうとしたため、やむなく咒器に封印し、今に至る。

 8割方でたらめで、でたらめの部分が真実に言い得ていた部分もあるが、少なくとも筋は通っていた。

 ミルドレッドは概ね納得出来たが、その無能ぶりを知っている前所有者が自分の助け無しに封印術を施した咒器を作れるかという点に疑問は残った。

「ふーん、これが咒器ねぇ」

 イングリッドは漸くビラチーナでなく箱そのものを観察し始める。封印術は特に封印に使用する器を制限せず、鉄でも木でも、その気になれば紙にでも封印出来、形状も箱形でも壺型でも問題無い。そのため気に留めることもなく、現にヘザーとミルドレッドを封印していた箱はシャンニからしばらく進んだ道の何処かに放置されたままになっている。

「・・・確かに妙な感じで術が施されてるわねぇ・・・あら?これは・・・ぷっ、くくくっ」

 漸く箱に絶頂を阻害する魔法が施されてることに気づいたイングリッドは、中のパトリスの辛さを想像して思わず吹き出した。知らぬ事とはいえ絶頂出来ないクリトリスには酷な改造をしてしまった。

「ま、いいわ。そうゆうことならもう興味ない。後は外の2人が調べるでしょ。アタシは寝る。

 あなた達、もし揉めてアタシの眠りの邪魔をしたら痛い目に遭わせるからね?」

 イングリッドは1人で占拠している長椅子に横になり眠り始めた。漁られた荷物は仕舞ってもらえず床に落とされる。

 イングリッドが眠ってしまっても魔法縄は緩まず、騒ぐなと釘を刺されたヘザーとミルドレッドは一瞬顔を見合わせ、大人しく20数年ぶりに正式に眠ることにした。

 アルドリッジだけが眠ることなく、裸の大柄な女2人の体温を左右に感じながら頭を働かせていた。

 馬車は国境検問所に到着した。

 国境は広いがバーマとマジャリ間の検問所はここ1カ所しか置かれておらず、壁や監視所が置かれていることもないので、2国間の移動では必ずしも検問所を通過する必要はない。ただし通行手形を持たないまま通過先の国で揉め事を起こしたり巻き込まれたりした場合、母国に連絡を取って貰えずそのまま裁かれ、場合によっては家族に知らせることも出来ないまま投獄までされてしまうことがあるため、慎重な人々は遠回りになっても必ず検問所を通過し、身元を保証する手形を発行して貰っている。

「ご苦労様です!!」

 検問所には両国の兵士が詰めており、キトリーとギャエルはマジャリの兵士に敬礼される。

「また少し部屋貸して貰える?」

「はっ!!どうぞお使いください!!」

 キトリーとギャエルは兵士の詰め所で預けていた聖女騎士の白い鎧に着替える。剣は念のため馬車に積んで置いたが、聖女騎士の鎧は剣よりも遙かに貴重で高価なので、マジャリ側の兵士に預けて置いた。

 詰めている兵士達が毎夜交替でその鎧に残った匂いを使って自慰を行っていたことなど2人は想像だにしない。

 手形の発行を待っている数組の行商や旅人の横を悠々とすり抜け、一行はマジャリに戻って来た。

―ぐぅぅぅぅぅっ。

「あの、お腹減ったんだけど」

 アルドリッジの腹が音を立てた。

「それにトイレにも行きたいんだけど」

 小用はともかく、口には出さないが空腹にはヘザーもミルドレッドも同意していた。封印中は空腹を感じないが、ひとたび外に出て仕舞えば身体の代謝は元に戻っており、シャンニから検問所までほぼ丸一日何も口にしていなければ空腹も覚える。何より喉の方が乾いていた。

 イングリッドはその点に関しては無頓着だった。老化を止めて以来食事もしたければするが、必要ないと言えばない。排泄もしたければするが、したくなければしなくても済む。

 イングリッドは客車の小窓を開け、外の2人に中から声を掛ける。

「坊やとお嬢ちゃん達がお腹すいたって言ってるんだけど、どうする?ほっとく?」

 2人は小声で相談する。

 最短距離で街道をマジャリ方面に向かえば次の町までまた一日以上掛かる。

 口には出さないが、訳の分からない女2人をまた封印しておいてくれれば少年1人分なら自分達の携帯食料を分け得れば済むのにと考える。

「はぁ・・・南に農村があっただろ?あそこによるか?」

「・・・そうね、ムラドハナまでまだまだ掛かるし、もしかしたらそこまであの2人を連れて行く気かも知れないから、今のうちに多めに食料を補給しておこう」

 ギャエルは街道を南にはずれ、近くにあるはずの小さな農村に立ち寄ることにした。

「じゃあイングリッド様、一旦この先の村によって食料を分けて貰います」

「イングリッドちゃん、はい」

 外の2人との会話を終え、小窓を閉めて振り向いた瞬間にイングリッドはアルドリッジから何かを手渡された。

「ん?」

 あまりに当然の様に渡されたため、イングリッドは無意識にそれを受け取った。

「あ」

 それが小さな箱だと気づいた瞬間、否、気付きながらイングリッドはそこに吸い込まれていった。

 最後にイングリッドが見たものは、客車にただ1人いるアルドリッジの姿だった。

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