露出快速 始発駅から乗り換えまで (Pixiv Fanbox)
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露出快速
1 始発駅
「やっぱこの時間でも、始発駅ならすいてるもんだなあ」
珍しく人気の少ない朝の車両、俺はドスドスとデカイ足音を鳴らし乗り込んだ。
椅子に座れるのはありがたい。ここから先、終点での乗り換えまで付き合わなければならないのだ。俺は休みをもらってはいるが、日付は立派な平日だ。今はいいが、途中確実にラッシュに巻き込まれるだろう。
「俺の体も、これならジャマにゃあならんだろ」
俺は短く刈り上げた坊主頭をペチンと叩いた。
満員電車に揉まれる度、人よりデカイ俺の体はどうしたって邪魔になる。分厚い胸板、いかり肩、すこーしばかし出た硬い腹。ぶつからんようにと気を使うのは、性格柄疲れちまう。
『カタブツ角田』とは、よく言ったものだ。決して真面目な学生時代を過ごしていなかった俺に対する、いやみたっぷりのあだ名だ。
「よっと」
ぼすんと、俺はまだ人の熱のない椅子に腰掛けた。
徹夜明けでぼんやりしている頭だが、むず痒い感覚は鋭く俺の脳に届いた。スラックスに擦れて、ケツがムズムズする。落ち着かない。しかし本当に落ち着かないのは俺ではない。それよりも、俺のムスコだ。
「う…けっこ…チクチクしやがんだな…」
普段より大きくずれた肉棒が、右へ左へ、窮屈なスラックスの中で暴れている。
「やっぱり…、勝手にでも持ってくるんだったかぁ」
電車に乗って帰るだけだ。しかしそれでも、パンツなしってのはこうも落ち着かないものなのか。ローションでダメにしてしまったパンツの代わりに、アイツの家から一枚拝借しておくべきだった。
擦れた感触が思いの外甘く、ついつい昨夜を思いだす。
頭は妙な感覚だった。浴びるほど飲んだ酒のせいだろうか。つい昨日のことが夢のようで、しかし妙に脳はくっきりとしている。そう、ちょうど、体の感覚だけはしっかりと思い出せるくらいだ。
とろりと、口の端から涎が垂れそうになった。先端から根元まで、萎えて収まった俺のムスコがヒクついた。
あれ程に骨の髄まで肉欲に染まりきったのは、本当に久しぶりだった。
今年の新人にスケベそうな顔した奴がいる。同期との飲み会でそんな事を言いはしたが、まさかあそこまでとは思わなかった。
休暇前の酒の席、まさかいきなり「知り合いにかなりイケる女がいるんスけど、課長、これから三人でどうでスか」と、そう来るとは思わなかった。若いくせに、いや若いからだろうか、いい知り合いがいるもんだ。
「へへ…、俺もまだまだいけるもんだ」
楽しい一夜だった。
柔らかい肉に思い切り突っ込んで、かき回して、空気の音が弾けるほどに腰を打ち付けた。おうおうと年甲斐もなく喘ぎまくった。会社も立場もしがらみも忘れ、ただの種馬になる快感。雄になりきる悦びを、爪先の震えにまで響かせた。
商売女とはまた違う。義務ではなく、楽しむための豪快なセックス。交尾だった。
「うっ、うぉっと…まずいまずい…」
窮屈だ。亀頭の擦れがそう叫んだ。
俺は股間をむんずと掴むと、せめて目立たぬ位置にと直した。自慢のイチモツが、パンパンの腿以上にクッキリと形を作っている。エラの位置も、尿道の通りも、陰でくっきり写っている。
「さすがにこんなじゃ、訴えられちまう」
俺は口の中だけで小さく笑った。出発までまだ時間がある。しかし少ないとはいえ、この車両の人の目も増えつつあるのだ。
「んぉッ…」
突然、体に密着したスラックスが震えた。
何事かと考え、すぐに思い当たる。小刻みでブルブルとしたこれは、携帯のバイブの振動だ。右のポケットに無理やりしまったそれが、俺の体ごと震えていた。
じわりと、我慢汁が染みになる。
「な、んだってんだ、この時間に」
携帯の小窓に書かれた名前は、まだ見慣れていない名だった。
『角田課長、一晩お疲れ様っした。楽しかったっす!』
砕けすぎた文体のメールに、いささかの脱力を覚える。昨日のあいつ、荒井だ。
「五月蝿いほうじゃねえが…、しかしもう少し固い文字が打てないもんか……、あ…」
呆れて体の力が抜ける。しかし次の瞬間には、それは一箇所に集まった。
このメール、写真付きだ。
汗が流れる。記憶が走る。そうだ、たしか酔って浮かれて、カメラの前で俺は…。
『随分楽しそうでしたね。角田課長のデカマラとぶっとい下半身、すげえ迫力でした。ずっぽんずっぽん出たり入ったりで、これぞ男って感じで!』
下へのスクロールに合わせ、俺の顔が表れた。肌色、肌色、また肌色。そう、上から下まで真っ裸だ。
肉棒を天井へといきり立たせ、汁を滴らせ、股に突っ込みながら豪快に笑う。そんなとんでもない姿で俺が写っていた。
「だ、だはは…ぁ、酔ってたからなぁ」
多少は恥ずかしく、俺は赤くなって一晩分の無精髭を掻いた。
忘れていた。昨日の晩、乗せられてあんな写真を撮られていた事を。学生の時分、ハメ撮りだなんだとカメラ片手にヤっていた事を。
長い間、そんなプレイからは離れていた。しかし性格、性癖自体は変わっていなかったのだろう。地位や、責任が積もり、いつしか奥底へと欲望を押さえつけていただけだったのだ。それが、この写真からは見て取れた。
旨い酒を口に、褒め言葉を耳に、扇情的な肌色を目に、そうして出来上がった蕩けた脳にはシャッターの音が心地よく響いたのだ。
電子のシャッター音。
思い出した途端、まだ頭のどこかでそれが聞こえた。
カシャリ。カシャリ。
音に合わせるように、すぼめた口から声が出る。腰が前へと動いていく。俺も気持ちいいぜぇ。たまらんッ。どうだあ、でけえだろぉ。
勝手に海綿体が大きくなっていく。過去の快感に体が熱くなる。確かに特別気持ちよかったが、果たしてここまで興奮が尾を引くものだろうか。おかしい。しかし、気分がいい。どうしようもないくらいに。
写真の俺の体は、若い時とはさすがに違っていた。筋肉の上に脂肪が増えた。がっちりというよりはずっしりとした、重そうな体格だ。同窓会で腹をつつかれた事を思い出す。女受けは良くはない。しかしだからこそ、写真の裸は作り物のAVというより、流出、盗撮、そんな単語が似合う。そんな独特ないやらしさが出ていた。
「お、ま…、また来たのか…よ……」
また一通、添付ファイルが乗っている。
まるで急かされるように、俺は指を動かした。画面が変わる。
『すげえ格好良かったですよ、ノリノリでイカツイオヤジッて感じで!やっぱ年季っスかねー。チンポの汁はすげえ臭ぇし、大量でベトベトだし!腕もさすがガチガチなだけに、めちゃくちゃ豪快に動きまくってて、すんげえ大迫力っでした!』
「お、おい、…嘘だろ…、俺…こんなことまで……!」
先程よりも、さらにろくでもない、どうしようもなくいやらしい写真が目の前に広がった。
股をがりっと開き、ぶっとい脚が菱形になっている。ギンギンに自己主張するイチモツと、歯を見せ笑う口の涎が、カメラのフラッシュでギラギラと光っていた。
そして何よりいやらしいのは、俺のムスコが、俺のごっつい指マンコに出入りしているという事だ。握り締めた手は、ブレにブレている。どれだけの勢いでシゴき、センズリを楽しんでいたかが、夢中になっていたかが、静止した一枚の写真からもよおく分かった。分かってしまった。
「ばっかやろう…」
口をついて出た言葉は、小さなものだった。呟き同然の声は、こんな馬鹿な写真を残していた後輩に、そして自分に向けた言葉だった。
こんなもの、誰かに見られでもしたら、どうするんだ。こっ恥ずかしい。恥も恥、大恥、赤っ恥だ。
その筈だ。
いい年をした親父が、こんな格好を若造の前で…。そう考えるとますます胸に込み上げる。股間と体が熱く蒸れた。
「……お…も、もうこんな時間…か」
駆け込みむように人が増える。気が付いた俺は、慌てて股間をカバンで覆った。ぐりと、柔らかく、そして硬い感触に呻く。
違う。きっとこれは、あれだ。あの姉ちゃんが可愛かったからだ。だからきっと、こんなに興奮して。いまも俺はチンポを電車の中で…。
アナウンスの音が響く。もうじき出発だ。
電車の揺れが心地よく、俺の股間はますますどろどろに溶けて我慢汁を垂らしていた。
終電まで、この電車にコイツと付き合わねばならない。
2 乗り換え
何駅か過ぎ去ると、人の量は俺が想像していた通りの多さになった。座っていてさえ息苦しいこの状況になって、何も通勤ラッシュ時に帰らんでもいいことに思い当たる。どうしてか、考えもしなかった。やはり寝ぼけていたのだろう。
しかし、今日の俺が休みでよかった。どうにもおかしい。寝ぼけているにしてもおかしすぎる。脳の奥底で渦がぐるぐると逆巻いているようだ。
何よりも、コレだ。
(俺のチンポ…勃起が収まりゃしねえ)
俺のナニはいつまでたってもガチガチのままだった。いい加減隣の奴も妙に思うんじゃないか。バレるんじゃないか。そんな状況なのに、収まらない。
血が股間に集まって、頭がうまく働かない。あれだけ昨日出したはずなのに、だ。
そうだ、一発抜こう。抜いちまおう。
そうすれば、万事解決するんだ。俺はカバンとスーツの隙間に手を突っ込んだ。硬い触りごたえが股間いっぱいに広がっている。俺の自慢のデカマラは、今やすっかりきかん坊になっている。まるで十代の頃に戻ったみたいだ。
コイツを思いっきりシゴきあげて、すっきりすればいい。何十分も形を最大にしているココは、こうして触るだけで気持ちがいい。ハァと、切ない息が太い首から漏れる。パンツなしってのも、悪くないかもしれねえ。
いや、違う。今弄ってどうする。どこか、次の駅の便所にでも入ってからだ。そうだ、もうすぐ次の駅だ。あとほんの一分待てばいいだけなんだ。
「ハァ……ハ…ッ…」
しかしその一分も待たずに、俺は股間をぐりぐりといじり続けていた。感覚がますます赤黒く熱していく、ぞくぞくと背筋の振動が大きくなる。
横に座るサラリーマンがチラリとこちらを伺った時、アナウンスが駅の到着を告げた。助かった。俺は勇んで、しかしカバンで股間を隠したままに立ち上がった。
「う、おっ………」
上向きに納めたチンポが、歩く度ゆさゆさと左右に首を振る。硬いカバンがぐりと裏筋を撫でる。腰だけが揺れちまいそうに気持ちいい。
俺はそんな不恰好な姿のまま、腰を引きつつ扉へ向かう。こんなガタイした親父が、随分と間抜けな格好だ。しかししょうがない。しょうがないんだ。
「う、と、とぉ……」
人の波を掻き分ける。普段ならば筋肉にモノを言わせてズンズンと進むだけだ。そんな姿と打って変わって、今の俺は歩くことすらままならない。体が他人とぶつかるだけで、下半身はあらぬところへ暴れてしまいそうだ。
『ドアが閉まります、駆け込み乗車は…』
「あ、お…おい、ク…そ……」
そんな風にもたついている間に、無情にも扉は閉まっていった。
俺は呆然と立ち尽くした。椅子には勿論戻れない。
無様に勃起したデカチンを抱えて、俺は人の海の中へ投げ出されてしまったのだ。
(は、はやく次、次の駅…。…も、もう、どうにかなっちまいそうだ…)
溺れているみてえだ。吐く息が熱い。脂汗が小便を我慢しているみたいに垂れている。分厚い胸板にシャツが張り付き、ますます俺の体が助平になっていく。そんな錯覚にくらくらする。
わけがわからないくらいに興奮していた。男も女も、大量に集まってるこんな場所で。俺はチンポからねとねとの汁を垂らしているのだ。
突然、ブレーキの音が耳に響いた。ぐらりと、景色が歪む感覚。足が浮く。体が傾く。
どんと、けつまずいた俺は、目の前のサラリーマンにぶつかった。
ぐり。
「ひっ…」
「………?…う、うわ…」
一拍置いて、ぶつかったサラリーマンが引きつった声を出した。『ナニ』が太腿に当たったのか、理解したのだろう。
男は蔑むような目で俺に向き、そしてすぐに目を背けた。
そりゃそうだろう。俺が逆の立場でも同じ事をする。図体のでかい強面の親父が、チンポ勃起させてぶつかってきたのだ。関わり合いになりたくないだろう。
しかしどうした。
俺は男にチンポぶつけて、恥までかいたんだ。充分に萎えきってもいいはずだろう。しかしそんな間抜けな現状を認識すればする程、俺のチンポはいやらしい汁をとろとろと垂らしているのだ。
もう服の擦れだけで、どうしようもないくらいに切ない。
触りてえ。
こんな中途半端じゃない。剥き出しにして、思いっきりだ。この垂れまくってる先走りを、でっかいカサにたっぷりまぶして、輪っかを作った指に、出して入れて、出して入れるんだ。首を上に反って、あーあー獣か牛かってような鈍い声で喘ぐんだ。
駄目だ。妄想だけで我慢なんてできねえ。腰が動いちまう。ああ、動いてる。
もし見つかっちまったら、どうなるんだ。
変態呼ばわりじゃねえか。変質者扱いされちまう。
どんどん体が熱くなる。
どうした。どうしちまったんだ、俺は。性欲が強い自覚はあったが、今までこんな変態みたいなことなんてなかった。なかった、筈だ。
「う…おっほぉ…!」
声が出た。俺は急いで、デカイ手でこれまたデカイ口を塞いだ。突然だった。唐突に、俺の股間に新しい快感が込みあげた。
服の感覚とは違う。柔らかくて、熱い感覚だった。神経をそこに集中させていく。鋭くなる感覚が、すぐに答えを教えた。
肉だ。これは、分厚い、肉の感触だ。
(て、掌…、じゃねえか…!)
誰かの手に俺の勃起チンポが当たっていた。俺の額に汗が光る。
まずい。
まずい、これは一発でバレちまう。
ああ、でも気持ちいい。手、手の感覚!こんな場所で、立ったままガチガチのチンポ触られてる! この硬さは間違いなく野郎の手だ、でも、でもそんなことどうでもよくなるくらいに気持ちがいい。
ガタン。ガタン。電車は大量の人間を揺らしながら走っている。頭ひとつは高い自分のガタイが、今だけは恨めしい。
「ふ、ふへ…」
息が溢れるように、低い喘ぎが出た。握りしめられた。信じられないが、男の手は明らかに俺のチンポを包み、そして握っていた。
後ろのOLが怪訝な目で俺を見ている。ふ、ふざけんな、これは…俺のせいじゃねえ。ああ、でも眉尻が下がっちまう。瞼が重い。
「う…ぉぉ…」
違う。握ってるなんてもんじゃない。こいつ、ゆっくり上下に動き出してやがる。竿が上へ下へ、血管に沿って扱かれている。
痴漢。
馬鹿馬鹿しいが、そうとしか考えられない。この目の前のスーツの野郎。この俺相手に女にするような痴漢行為をしてやがるんだ。何喰わねえ顔で。
こんな事、普段の俺ならば、即座に怒鳴って手首をひねり上げるところだろう。
「ふゥッー……、フゥ……んっ…」
しかし今、俺がしている事といえば、鼻の穴を膨らませて腰を動かす事くらいだ。ああ、まずい。声、声も出そうだ。それもとびきり力の抜けた声が。
全身がガチガチで、それも股間は特にギンギンだったのに、声だけが弱く抜けている。
右も左も、前も後ろも人だらけ。仕事前の真面目な空気の中で、俺だけが、この俺だけがこんなに気持ちのいい思いをしている。
ああ、熱い。燃えるみたいだ。やめろ。と、小声で一言ドスを効かせた声でも出せば終わりそうなのに。それができない。
(は…そ、それ…!)
動きが変わった。男は指先でカリカリ掻くように竿をいじってきた。小動物が木を擦るように、小さく素早くカリカリカリと。
痒みと一緒に、掻き立てられるように雄汁が込み上げる。ぬるぬるだ。俺のチンポはもう、先っぽから根元までぐちょぐちょになっている。
プシュウと抜けた音が聞こえた。扉が開いていた。いつの間にか、駅についたのだ。
そうだ、降りなければ。そうは思うが、しかし足が動かない。違う、動いてはいるが、カクカク腰を震わすばかりで進まないのだ。ああ、気持ちいい。
「おっさん、変態だな」
ついに耳元で声がした。同時に、じっとり温かい手が俺の尻を掴んでいた。
「な、…に言ってやが……」
口調だけは格好つけるが、俺の声はしゃがれて出た。今まで一度だってこんな経験はない。こんな厳しい顔した俺に、真っ向きって変態だななんて言う奴いなかった。
変態だって? この俺がか。ふざけんな。お前のほうがよっぽどド変態じゃねえか。レスラーばりと言ったらさすがに誇張かもしれんが、俺の体はバリバリの雄の体だ。そんなもの…、こ、こんなところで触って、弄って…、ああ、この変態が…。
駄目だ。ナニが起きているのか、状況を理解するよりまず、脳ミソがこの快感に絡め取られちまう。思考力が、みんなチンポに吸い取られていく。
どこかでシャッターの音が聞こえる気がした。
あの時みたいに、俺は今、人の目の前でチンポをいきり立たせている。しかし、今度はあの時とは違う。不本意だ。
「すげぇイカシてるよ、あんたみたいなゴッツイ親父がこんなとこで…」
こんなところで。その言葉に体が熱くなりやがる。ピクピクと、褒められて得意になったムスコが跳ねる。
「デッケエチンポだなあ、窮屈そうだぜ」
おう、そうだろう。変なスイッチが入ったみたいに、俺の腰が手に向かっていく。
昨日もそうだ。俺はどんどん気分が良くなって、なんでもかんでも言うなりになっちまう。乗せられていると内心分かっていながら、体の芯が操られるように動いちまう。
「しっかしこんなにもっこりさせて、よっぽどチンポ自慢なのか、それとも見せたがりなんだか…」
「ばっ…!」
馬鹿にしやがって。
湧き上がった怒りは、次の瞬間には脂汗に変わってしまった。
「お、おい、ふざけ、そ、そこは…」
小さな音だろう。しかし俺の汗はドッと吹き出した。
俺の股間のジッパーが、ジィと音立て全開に開けられたのだ。
「あ…!…ぐ!…クソォ…」
勃起しきった自慢のデカチンが、動きあぐねるように社会の窓に擦れやがる。満員電車の濡れた空気が轟々となだれ込み、もっさり生えた陰毛が揺れる。
「……はぁ…っぁぁ…!」
抵抗にもならない抵抗は、ただ俺の肉汁を滴らせただけに終わった。
丸出しの亀頭はスラックスをくぐり、ビンと雄の濃い臭いを放って飛び出した。
「想像以上だ…! デッカイし…ガッチガチだなあおっさん」
男はいつの間にか俺に向かっていた。前の男、後ろの男、前後から挟まれ、熱い息が前から後ろ俺の首にかかる。
ガタンガタンと揺られながら、俺はスーツからビンビンのチンポをぶらぶらと揺らしている。人の群れに向かって。
小さな風が俺の肉棒の横っ面を舐める。手が近づいてきている。
ぞくぞくとした期待に胸が熱くなった。
「はぁ…はぁっぁぁ…」
俺の全身を歓喜の快感が締め上げた。扱きまくりたい。その願いが、想像以上のもので叶えられた。
他人の手が、男の手が俺のチンポを扱いている。自由にならないもどかしさが、却って俺の肉棒から汁を絞る。男に扱かれる。殆ど初めての感覚。女の手より分厚いくせに、雄のツボを的確に刺激してくる。
まるで心を読んだみたいに、俺がやりたかったことをしてきやがる。ベトベトの先走りを手首のスナップを効かせてよぉく捏ね上げ、ぐっちゅぐちゅと汁がヌメる。鉄が熱くなって溶けるみたいに、俺のチンポから溶けた肉汁が溢れ出る。
腰が回る。頭が回る。そんな気持ちよさだ。
「やめ…、ひゃ……めやが…れ…ぇ」
抵抗の声は、もうまるきり小さい。俺のデカイガタイは、股間に突っ込まれた手に面白いように操られている。これほどに誰かの思うがままになるなんて、この俺が。
「スッゲ…渋い声してんなぁ」
褒め言葉が却って屈辱だ。こんな…、ここは電車の中だってのに。俺のほうが体を作っているっていうのに。
「言ってみろよ、今、どんな格好してるんだ、ん?」
ゾッと、全身の毛が逆立った。聞くな、無視しろ。頭の中で作った声は、肉棒から来る雄汁に飲み込まれて消えた。
「お…、俺は……ッ」
俺の中には、もう一人の自分ができる。第三者のような意識を作り、上から見下ろすように俺を観察する。俺がどんな状況で、どうやってチンポを勃起させて、どんな風に感じているのか。
詳細に。
俺は満員電車で男に痴漢されながら、鼻の穴膨らませて、チンポ勃起させて、ジッパー全部降ろして、デッカイ筋肉の力も入れられねえで、腰回しながら、そんな自分を想像してドスケベな汁作りまくってます。
「うっぉお…れは…」
もしこの場でそんな事を暴露したら。終わっちまう。俺の、俺の人生が…。
もしここで、昨日の夜のように豪快に腰を振りだしたら、どうなるだろうか。
そんなありえない妄想までして、俺の頭がさらに興奮を煽ってくる。
心臓が徐々に高鳴っていく。爆発しそうだ。
「あ…やば……や…ばい…」
三白眼が俺を見ている。生意気そうな顔だ。丁度、あの後輩と同じ年代。しかしあいつが隠している野性味を隠すことなく目付きに出している。
喰うもの喰われるもの。常に食らいついていた俺が、俺の肉が齧られている。肉棒が蕩けながら、こいつらの胃袋に流れていく。
電車が揺れる。体が弾む。快感の波が大きくなる。
人の波に打ち当たられて、このまま俺は…。
ああ、出る。出ちまう。弄られて、人前で、男に弄られてるのに。
「ふッ……はぁッ…!はッ……!」
グイと見開いた目に、電車内がぐるぐると回って見える。
もう少し。もう少しだ。骨盤が熱い。精液がぐるんぐるんと、俺の重てぇ下半身で暴れてやがる。
限界の寸前が見える。あと少し、もうちょっと触られれば、俺は。
しかし俺の心音と反比例して、電車の速度は大きく速度を落とした。窓の風景がゆっくり流れていく。
落胆の暇さえ与えず、灰色のホームが写り込んだ。
波が動いた。駅についた。よりにもよって乗り換えのある駅だ。人が一気に入れ替わる。
その動きに押され、俺の前の男が離れた。あと少しだったってのに。そんな無念を感じる暇は殆どなかった。
前を握っていた男が消えたのだ。当然、俺の肉棒はぶるんと、ガチガチに勃起したまま外に飛び出した。
「あが…!」
風が強い。開いた扉から体が動いて俺に当たる。改めて俺は、手前の異常すぎる格好を自覚した。
「まず…!!」
一瞬だけ。しかしその一瞬で、おれの鈴口からはどろりと白いザーメンがこぼれた。射精ではない。寸止めを、誤って一歩先に行ってしまった感覚。腰からくるとろとろした快感が、ガンガンに俺の頭で響いてきやがる。
「く…おぉお……」
すんでのところでおれは精液臭のするチンポをしまい込む。そしてカバンで前を蓋して、バネに押し出されるように電車を飛び出した。もう一秒だっていてられなかった。
誰かが見たかもしれない。俺が満員電車で勃起チンポからイカくせぇオス汁垂らしたところを。
急いで駆けていった俺の背中を、蔑んだ眼が見ていたかもしれない。あの目も、アイツの目も。男も、女も。
見ていたかもしれない。
どすんどすんと駆けていく俺の足は、便所へ一直線に向かっていた。
しかし運の悪いことに、個室は全て埋まっていた。
仕方がねえ、待とう。
とは、微塵にも考えられなかった。俺の脳はとっくに限界だった。
俺は三つ並んだ小便器へと向かい、脚を大きく開いた。
ジッパーを下ろす。勃起したチンポが勢いよく飛び出した。そして、
「ふが…あぁぁ…!!」
掻き上げた。擦り上げた。いじくり回した。シュッシュと音を立てながら、勃起しきった肉棒を擦り上げる。
ああ、これだ、これこれ! 止まらねえ! 最高だ…!
後ろをコツコツと歩く音が聞こえる。
誰かが俺の後ろにまで来て、そして遠ざかった。
そうだろう。俺はいつの間にか腰まで落としていた。便器の前でチンポを触っている。普通なら小便と誤魔化すこともできたが、俺の格好はどう見ても…。どうみても、完全にセンズリをこくオヤジの姿だ。
「はぁぁぁ! …おっ! おぉっ!」
分かっているのにやめられない。声すら止められない。
むしろ快感のために、自ずから腹に力を入れて唸っていた。
イク。おお。今度こそ、本気でぶっぱなせる…!ああ、個室の中の奴が出てきた、俺の方をチラ見して……! そうだ、だったらせめて個室で隠れ…、あぁあぁァァア駄目だ…イクゥッ!
「おっおぅ! おぉォッ…ゥゥウウウッ!」
ビュルウゥと、とんでもない勢いで精液が尿道から飛び出した。
何度も何度も、小便の代わりに白い便所に白いザーメンをぶち当たった。
臭ぇ。なんて、臭ぇんだ。
放心状態のまま俺は、耳に、脳に、深く深くに濃い雄臭さを吸い込んでいった。
汚い便所の中、俺は爽やかな風が体内を通り抜けるような、そんな心地よさを感じていた。
つづく