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最後に頼れるやはりこの肉体だ。 剣を振るうのも、素早く駆けるのも、豪奢なマジックアイテムを使うのも、最終的にはこの二の腕や大腿筋である。 早朝の素振りを終えた戦士は、改めて己の屈強な肉体を見下ろした。頭の中の認識は、紛れもない事実なのだと感じられた。 「ふゥーー、まあ、こんなところか」 汗でじっとりと濡れた筋肉は朝の日差しを浴びて力強く脈動していた。これならば今日も十全な働きができるだろう。 戦士は自分の肌を拭うと満足気に剣を収めた。 本来ならばこの後は爽やかにひとっ風呂……といきたいところだったが、この宿には柔らかいベッドや快適な広部屋や簡易な入浴施設といったものはすべて存在しないようだ。格安の宿を選んだのは戦士自身だ。こればかりはしょうがない。 ならばどこかで水浴びを、というわけにもいかない。今日は大事な先客がある。 「まあ仕方がない、そのぶんコイツには役立ってもらうとしよう」 軽装に身を包み剣を腰に収めた戦士は、最後に角刈り頭の側面をガシガシと掻き上げた。そうして別れた頭髪に、戦士はガッチリと豪華なサークレットを嵌め込んだ。 無骨で細目の髭面中年戦士にはなんとも似つかわしくない、金色と派手な宝玉が組み合わさった装備だ。駆け出しの若い冒険者や、法衣を身に着けた魔道士ならまだしも、大男が身につけるとは作成者も想定していなかったような姿である。 「うーむ」 このマジックアイテムの購入のため、路銀の大半を費やした戦士は……しかし随分と満足気に笑った。 「よし、額の中心――しっかり言われたとおりの位置だな。なるほど、世界に充満する魔力が心なし強く感じられるぞ、これなら今日の依頼も問題ナシッ! だな!」 戦士は薄汚れた鏡を一瞥し、正常に装備できていることだけで満足して快活な足取りで部屋を出た。 向かうは依頼主の元、このサークレットと剣の腕を活躍させる戦いの場である。 「うむうむ、この家だな」 安宿から出た戦士はその足でまっすぐ町外れの古い民家に訪れた。 依頼の内容は簡単だ。部屋の掃除で掘り出された家具に、どうやら悪魔が封じられている……というものだ。戦士が無骨な手でドアをノックすると、家の中から先日街中で依頼してきた少年が現れた。 「一日ばかり待たせてしまったな、さあもう大丈夫だ、あとはわしに任せておけ!!」 戦士はずんずんと家に入るなり、すぐに力こぶを作って己の逞しさ、頼もしさを見せつけてやった。悪魔との同居ですっかり怯えていた子供たちの顔に僅かな光が戻るのがわかった。 「ほ……本当に大丈夫……? で、ですか?」 「ああ、男に二言はない! 退治してやるといったら、必ず退治してやるぞ!」 本来ならば悪魔退治は戦士の専門ではない。むしろその真逆である。剣の腕は百戦錬磨といっても、それは物理が有効な相手に限られる。悪魔や死霊の類など、明確な弱点そのものであった。これまでは。 しかし今、戦士にはこのサークレットである。魔力の流れを可視化し、有効打を与えられるようになる装備。実のところ、彼らの依頼料では到底賄えない高額装備であるのだが、しかし……今の彼らの笑顔も合わされば、まあ大雑把に見積もってトントンといったところだ。 「さ、魔物退治は危ないからな、部屋にはわし一人にしてもらおうか」 戦士はそんなことをおくびにもださない顔で笑うと、彼らを敢えて遠ざけた。悪魔退治を戦士に頼むなど、本来ならば無知もいいところだ。だが、それだけ頼もしく見えたのだろう。そして切迫していたのだろう。 その願いに報いられず、いったいなんのための旅であろうか。なんのための鍛錬、剣、筋肉、いやさ人生だろうか。 戦士は覚悟を新たに、子供たちの指さした家具へと歩いていった。 朝の光りに輝くそれは、古びた姿見だった。 成程、鏡に魔力が宿るという話は、耳がタコができるほど聞いたものだ。 戦士は剣を抜いて、油断なく鏡に近づいた。重心を落とし、いつでも斬り結べる体勢をとる。全身に力がみなぎると、狭くない室内に雄の気配が充満した その瞬間だった。 鏡が妖しく輝いた。 「ぬンっ!」 瞬間、戦士は鏡から飛び出した紫色の手を断ち切った。手応えのはない。しかし確かに視界に紫色の光が千切れるのが見えた。 なるほど、魔を切るというのはこういうことか。 感覚は違うが、そう難しいことではない。戦士は再び襲いかかってきた魔の手を、今度は突き刺していなした。このまま一歩、また一歩と鏡に向かっていく。 そうして姿見の目の前まで近づいたところで、戦士は改めて鏡の真の異常性に気がついた。 戦士は太い眉を大いにしかめ、顔を苦く歪めざるをえなかった。 確かに、鏡のように 鏡とは自分をそのまま写し返す、その為の道具だ。たしかにそこに戦士はいた。男臭い無精髭、短い角刈り、たくましい二の腕、額のサークレットまで同じだ。だが、そこにいた戦士は、とても正視に耐えうる姿をしていなかった。 鏡の戦士はガニ股になり、腰に手を当て、品のない顔で笑っていた。下半身だけを露出して、陰毛がみっしりと生えた肉棒をさらけ出している。匂い立つような包茎を、敢えて強調するように腰を必死に突き出していた。 筋肉を晒すことや、性に奔放なことは男としてそうはずべきことではない。 だが、こんな情けない格好は御免だ。包茎を見せつけるなど断じて雄のすることではない。 ――見たくない姿だ。 瞬時にそう思った。 鏡の悪魔の常套手段、見たくない姿を鏡に投影することで、敵の攻撃の手を緩めようということだろう。 「ふん、そ、そんな手にはのらんぞ、叩き割ってくれる!!」 戦士は強がって剣を構えた。 力強く叫んでみせたが、しかしその対象はヘラヘラと笑う自分の顔である。 笑顔。 しかしそれは笑顔は笑顔でも、戦士が普段浮かべている余裕綽々といった微笑みでも、豪快な笑いでもない。 涎をだらだらと口から垂らし、目元をニタニタと歪め、真っ赤な舌を右へ左へと振り子にして、眉毛をヒクヒク八の字に上げ下げしている、スケベ親父の間抜けな笑顔だった。 『はぁ……はぁ……あぁぁ~……も、もうだめだああ……、気持ちよすぎるぅぅぅ』 そんな言葉がが聞こえてきそうだ。そんなように口が動いている。 なんてガニ股だ。その開きっぷりは男らしさをとうにぶち抜き、下品で淫乱な大開脚だ。前立腺をケツ圧でぐりぐり潰し、チンポの勃起亀頭をパンツに擦るセンズリポーズにしか見えない。 『あぁぁ、も、もっとしてくれぇ~もっと触ってくれぇ~』 よく見れば全身を紫色の手が四方八方から弄っている。包茎をクチュクチュと扱きながら、背後から全身を撫で回され、ケツをほじくられているようだ。 「クソ、な、なんて不埒な悪魔だ! 許しておけんぞ!!」 戦士はこめかみに血管を浮かべて吠えた。 目を覆いたくなる。顔が赤くなる。男してこれほど無様な姿はない。 こんな姿、他の者に見られるわけにはいかない。なんとしてもこの場で破壊しなくては。 「――どうしたの、おじさん」 しかし背後から聞こえた声が、戦士の運命を変えた。 「!?」 普段であれば、しないであろう失態だった。 頼もしい姿を見せたいという願望。 恥ずかしい姿に対する羞恥。 若者を守らねばならないという使命感。 その全てが混じり合って、戦士に判断を誤らせた。 「な、なんでもないぞっ――!」 戦士は巨体を使い、背中で鏡を隠してしまった。 無理もない。子供に見せるにはあまりにひどすぎる姿だ。だが、服越しに感じた鏡の冷たさは、戦士に判断ミスを自覚させるに十分なものだった。 「しま――っ!」 だが、全ては遅かった。 鏡は再び妖しく光り、大量に出現した手が戦士の脇腹を、胸板を、太腿を、首筋を、包み込むように絡め取った。 次に目を覚ました戦士が見たのは、己の後ろ姿だった。手が届きそうで届かない距離に、鍛え上げた男の背中がある。 なにがおきた、おい、大丈夫か。 戦士は口を動かし、叫んだ。 だが声は届かなかった。 手を動かそうとした。 だが、まるで自由にはならなかった。 ちょうど小さな箱に詰められたようだ。 その体を、背後から雁字搦めにされているようだ。 戦士は気がついた。己が鏡の中に閉じ込められているのだと。先まで見ていた鏡の向こうの自分と、全く同じポーズをしている。 (わ、わしがあんな、情けない格好を――!!) 己のおかれた立場に戦士は歯ぎしりをした。とてつもない恥辱だ。だが、それ以上の問題があることに気がついた。 外だ。 鏡の外、さきまで戦士が経っていた場所にいる、あの男の存在だ。 「はぁはぁ♪ ………へへへ、えへ、えへ、あへっ♪」 すぐ目の前の背中は笑っていた。聞き慣れた自分の声だった。しかし聞いたこともないような奇妙な笑い声だった。 「おじさん、大丈夫?」 「げへぇ?」 違う、それはわしではない。 戦士は叫んだ。だが、鏡の中に声は消えた。 代わりとばかりに、『戦士』が叫ぶ。 「そんなことよりぃ、わしの筋肉さわってみろぉぉお♪」 そう言うと戦士は、下半身の装備をなんのためらいもなく脱ぎ捨てた。腰をぐいと落として、鏡で見たままポーズを自ら望んで少年へと見せつけた。 「おっぉおおっ、筋肉ぅうう、筋肉みろぉおっ、筋肉最高ッ!!!」 腰が揺れると、それに合わせて音がなった。バチン、バチンと……卑猥な音が聞こえてくる。背後しか見えないが、それは間違いなく、戦士の勃起した魔羅が腹筋にぶちあたっている音だった。 体を乗っ取られた。 或いは、体と魂ごと入れ替わられた。 外にいるのは、戦士の姿をした変態の悪魔だった。 「筋肉こそぉお最強ぅううっ! わしの筋肉最強すぎて、気持ちいぃぃいい❤」 戦士は『戦士』に対して、あらん限りの声で叫んだ。やめろ、やめろ、やめろ。 だが、声は消えてしまう。部屋に届くのは、鏡の外にいる戦士の卑猥で意味不明なドスケベな言葉だけだ。 わしは今日、頼もしい大人の姿を見せるためにここに来たんだ。そのために装備も用意し、朝から鍛錬をこなし、万全の態勢でここまできたのだ。 しかし全ては台無しだ。 「おいおい少年、そんな貧弱な体では、恥ずかしいぞぉ、そうだ、わしが剣の稽古をつけてやろう!」 『戦士』はそう言って、股間の方に手を持っていった。自慢の武器を放り投げ、自慢の一物をグイと『鞘』から抜きだした。 「おほッ、ビンカンすぎて……ちょ、ちょっと触るだけで……気持ちぃぃ❤」 『戦士』の表情は見えない。だが、間違いなく興奮した変質者の顔であろうことはわかった。それを見る少年の顔が、『戦士』の表情を写す鏡のような役割をしていた。 「さあ稽古開始だぁ、わしの筋肉は最強だからなあッ! 多少ハンデをくれてやってもいいぞお、これに負けたらキミはわしの弟子になるんだあ、そうして毎日わしの筋肉を褒め称え――」 だが、そのセリフは言い終わる前に止まった。 「ヌッひぃぃいぃぃンンンッ❤」 代わりに響いたのは、男の間抜けなよがり声だった。空っぽの脳みそを打楽器にしたような、スケベな大きな低い声だった。 「ち、ちんぽ、ちんぽ、ちんぽちんぽ、オチンポさわ、さわさわやめぇええッ❤」 果たして、少年は何を思ったのか『戦士』の股間を触っていた。 気持ちいい、と言っていたから触ってやったのか。 ビンカンすぎるとのたまっていたから、攻撃してやったのか。 少年の心はわからない。ただ確かなのは、『戦士』は容赦ない股間への刺激に無様に仰け反っていたことだ。 「あひっ❤ あひっ❤ いかんんっ、しょ、しょこいじっぢゃりゃめりゃぁぁああ❤」 さっきまで最強、筋肉とうるさかった男が、チンポ一つで大悶絶をしていた。男の情けなさを詰め込んだような、あまりにあっけない敗北だった。 「ぉぉぉ、チンポたまらんんんっっ、も、もう、もうだめだあぁぁ、もう戦えんンンンンッ、こ、降参ッ、降参、だぁああ、負けええ、負け負け負けえぇっ、まいったぁああン❤」 戦士はガニマタのまま腰を振って、両手を万歳するように高く上げた。降参、の表明だ。 「負けましたぁあ❤ ワシの負けですぅぅう❤ 筋肉よりもチンポコが強ぃいい❤ チンポコ最強! チンポコ最強ぅぅうう!!!」 そして変態『戦士』はあっさりと主義を変えると、両手を角刈り頭の上に乗せた。完全無防備の体勢だ。犬の降参のように完全降伏姿勢だ。 「し、師匠ッ!」 そして『戦士』は叫んだ。 「ワシは師匠についていきます! 一生ついていきますぅうう❤ どうかオチンポコ剣術をわしに伝授してくださいましぇええ❤」 あっけにとられる子供にチンポをにぎらせ、『戦士』は勝手に彼を師事しだした。 どくんどくんと脈打つチンポが、射精も知らないかもしれない子供の手で跳ね、雄汁を垂らした。 「えへ❤ チンポコサイキョうぅぅぅう❤」 陰毛からはみ出たチンポをぶりんぶりんと振りながら、変態戦士は両腕で筋肉を強調させた。 「どんなに体を鍛えてもぉ、どんなに剣がすごくってもぉお、チンポコ様には勝てないんだァ❤ 男のチンポは最強だァ、へへへ、師匠のチンポコすりすりきもぢぃいい❤」 今までの人生で培った全てを否定しながら、変態戦士は子供の体にチンポを擦りつけていた。 「ああぁぁ、師匠、師匠のシコシコでもう、もうイッてしまいます! わしもうイッてしまいますゥゥ❤」」 やめてくれ、もう沢山だ。自分自身の変態姿を見たくない。 鏡の中から戦士は必死に叫んだ。 悪魔の支配に絡め取られながら、戦士は頭をぶんぶんと振り、首を伸ばし、なんとか現実に喰らいついた。 その時だった。 懸命な努力と偶然が重なり、戦士の額がなにかに強くぶつかるのを感じた。 サークレットの宝玉が、鏡面とぶつかりあっていた。 ピシリ。 景色にヒビが入るのが、見えた。 「―――!?!?! ヌ、あぁあああッッッ!!!」 次の瞬間、気がつけば、戦士は射精していた。 突然、雄としての最高の快感の中に叩き込まれた。竿が気持ちいい。下半身がビクビクと震えている。ヨダレが口から垂れている。頭がくらくらするほどの絶頂だ。 何が起きた。何が起きている。わしはどうなっている。すべての理解が追いつくより先に、ただ肉棒からくる絶対的な気持ちよさに脳が支配されていた。 「はぁぁ……はあぁあ……あっっぁ出る、と、止まらん、止まらん、ああぁあ、イク、イクゥ、いくぅう!!」 声が出ている。 そうだ、ここは鏡の外だ。 ついさっきまで見ていた、あの光景。背中だけ見ていた自分の体に、再び戻ったのだとわかった。 「ォォオ………オ! オォオッ!! オオ!! ッッ!!」 それは感じたことのない快感体験だった。 一秒の快楽も味わうことなく、いきなり射精という絶頂だけが肉体にやってきたのだ。なんの準備もないままに射精の気持ちよさだけ与えられるのが、これだけ異常なこととは思わなかった。 とても耐えられない気持ちよさだ。声が抑えられない。もはや恥も外聞もない、男の本能のまま戦士は喘ぎ、出し、そして膝から崩れ落ちた。 「…………。あぁぁ……」 雄汁を全身に浴びたまま、戦士は下半身丸出しで仰向けになっていた。 射精の余韻が頭と体に絡みついて離れない。声が上手く出ない。しかしそれでも、なんとか弁明しなくてはと戦士は口を動かした。 「あ――こ、これは、ち、違うんだァァ……。わ、わしはさっきまで、さっきまでのわしは……別人で、ああ……」 しかしこの姿は、射精直後に急に冷静になった男が言い訳をするようなものだ。 だが事実なのだ。あれは別人だった。鏡の悪魔の仕業だった。 「なんのはなし?」 しかし少年には通じなかった。いや、それどころではなかった。 「――ンヒィ!?」 戦士は仰向けになったまま、橋になるように仰け反った。見れば剥き出しのままの毛むくじゃらの股間を、少年が足で踏みつけていた。 「さっき聞いたよ、僕の弟子になるって。うん、そう言ったよね」 見上げた彼の顔は、笑っていた。 今朝見た子供らしい笑顔ではない。口を歪め、眉をひそめ、愉悦を感じた顔で笑っていた。そう、ちょうど悪魔のような顔で。 「…………」 まさか。 鏡の悪魔。 いや、鏡に本当に悪魔はいたのか。本当に。 「ま、待ってくれぇ、さっきのは」 「でも言ったよね、男に二言はない、って」 「―――」 元来腕っぷしで生きてきた戦士にとって、反論の言葉などすぐに思いつかなかった。 「ほらほら、弱いちんちん鍛えてほしいんでしょ」 「あ、あっ、あぁっ、ま、待ってくれえ! お、おぉぉ!」 気持ちいい。 敗北した肉棒を弄られるのは、屈辱であり背徳的であり、だからこそ気持ちが良かった。この手付きがたまらない。感じたことのない気持ちよさだ。 見下されている。支配されている。恥ずかしい場所をすべて弄られている。股が開いてしまう。尻の穴まで晒すようにガニ股になってしまう。顔が歪み、下品な笑顔が顔に張り付いてくる。 駄目だ、ああ、あの、あの姿に、あの顔に、なってしまう。 あの姿勢が気持ちいいと知ってしまったばかりに、あんな変態姿を覚えてしまったばっかりに、なってしまう、あんな情けない姿に。 気持ちよくなると、あの格好になってしまうぅうぅぅ。 頭の中で警鐘が鳴る。だが、そう意識すればするほど、あの姿へと変わってしまう。 「ン、んんンンッ、んんひぃぃ……❤」 ついに耐えていた口までも屈し、戦士は無様な笑顔を顔に浮かべてしまった。ちょうど、鏡の中でしていた姿をしていた。床に倒れながら。 「どういうきもち? いま?」 「あぁぁ、き、きもちいぃ……です」 『師匠』の言葉に偽りは返せなかった。 戦士はよろよろとなんとか立ち上がると、自分よりはるか弱いであろう師匠に対し、降伏するように腰を突き出した。 両手を頭の上に起き、腹を見せ、ガニ股になり、肉棒をバチンバチンと腹筋にぶつけて鳴らした。 その姿は、鏡から見たあの変態と同じだった。 悪魔だ。 悪魔がいる。 鏡の悪魔だ。 自分の中にいる欲望という悪魔を、飼いならされてしまった。 「あぁぁぁあ、ま、またイキそうです、し、師匠ゥ………❤」 「だめだよ、ほらもっとガマンして、ガマンして」 「あぁぁ無理、そうだぁああ、気持ちよすぎてぇぇええチンポ負けしてすぐイッちまうぅうう❤❤」 鏡からは抜け出せた。だが、この家からは果たして抜け出せるのだろうか。 戦士は肉棒から二発目の精液を吐き出しながら、快感と敗北を両方味わい細い目をさらに細めるばかりだった。

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