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 五月中旬。今年は例年よりもはるかに早く梅雨に入り、今日も今日とて雨は降っていないものの、べったりとした雲が空を覆っている。そんな曇天の下、桜井奏斗(さくらいかなと)は足に鉛がついているかのように重い体を引きずって、学校へと向かっていた。

 昨日は風邪を引いて学校を休んだのだが、体が重く感じるのはそのせいだけではない。


 暗澹たる思いで、どうにかこうにか教室の前に着いたのは、ちょうど予鈴が鳴り響いたときだった。扉を開けると、当然のことながらクラスメイトたちは席に座っている。

 だが、彼はその光景に何か違和感を覚えた。普段であれば、多少なりとも騒がしいはずの教室内が、妙に静まり返っていたのだ。まるで、誰もいないような錯覚にさえ陥ってしまいそうだ。扉を開いた奏斗のほうを見る生徒も一人もおらず、誰もが黒板を見つめていた。


(……みんな、どうしたんだ?)


 釣られて黒板を目にした奏斗の目に映ったのは、【強制肉体交換席替え】と真っ白なチョークでデカデカと書かれた文字と、赤いチョークでそれぞれの席に割り振られた数字だった。一から三十一までの数字。ふと思いついたのは、それが出席番号なのではないかということだ。ただし、このクラスの人数は三十人なので、数字が一つ多いことになってしまうが。


「えーっと……」


 戸惑いながらも自分の数字を探すと、なんと奏斗の出席番号である九番は、教壇の上に書き込まれていた。すぐさま赤で書かれた数字が出席番号ではないと結論付けると、彼は今まで使っていた席に目をやった。

 昨日まで自分が座っていた席。しかしそこには、別の生徒がどっかりと腕を組んで、腰を掛けている。奏斗の気を重くしていた原因の人物が。


「よぉ」


 横柄な態度をとる男子生徒、飛鷹颯太(ひだかそうた)が、ニヤついた笑みを浮かべている。短ランボンタン姿で不良っぽくはあるが、クラスの中心的存在であり、スポーツ万能で、見た目に反して成績優秀。柔道部であるその体つきは、高校生とは思えないほどに鍛え上げられていて、顔の彫りも深く、男らしい大人びた風貌をしている。


「……僕の席だよ、そこ」


「お前の席じゃねぇよ、今日からはオレの席だ」


 颯太の言葉を聞き、奏斗はうんざりとしてしまった。またそうやって、自分をからかっているのか? 人目のない場所でならまだしも、ここは教室の中だぞ? しかし目の前にいる人物は、ふざけている様子など微塵もないようで、それが当たり前のことだという風にも感じられた。


「……どういうこと?」


「だからぁ、ここはもうオレの席なんだって。お前、昨日休んでたんだろ? オレも、昨日は学校サボっちまってな。で、今朝教室に来たら、昨日席替えがあったとかで、ここがオレの席になったんだと。黒板に出席番号が書いてあるだろ?」


「え?」


 やはり、あの赤い数字は出席番号だったのか。ということは、奏斗の席は教壇ということになってしまう。

 いったい何の冗談なのか。まさかクラスメイト全員で、自分に嫌がらせでもしているんじゃ……。


 そこまで考えて、奏斗はあることに気付いた。颯太がここにいるということは、彼の席はどうなっているのだろうか。振り向いて、彼がこないだまで座っていた席を見た奏斗は、目を疑った。そこには担任教師の鈴原巧(すずはらたくみ)が腰を下ろし、頬杖をついてつまらなさそうな表情を浮かべているではないか。


「ちょ、ちょっと先生! なんで先生が飛鷹君の席に座ってるんですか?!」


 思わず声を上げてしまった奏斗に対し、鈴原は不機嫌さを隠そうともせずに言い放った。


「なんでって言われてもなぁ……。昨日の席替えで、俺の席はここになっちまったんだよ。そんでもってお前の席は今日からあそこだ、【鈴原先生】。チャイムはもう鳴ったんだから、早くホームルーム始めてくれませんかね?」


 そう言ってあくびをすると、彼は机に突っ伏して寝入ってしまった。

 担任教師のあまりの変わりように、奏斗は何も言えず立ち尽くすしかなかった。彼ら以外の生徒たちは、まるで意思のない人形のように黙りこくって無反応だ。仕方なく、奏斗は教壇へと立つことにした。


 緊張した面持ちで全体を見渡したところで、彼は教室内に入ったときに感じた、違和感の正体に気が付いた。颯太と鈴原を除いたクラスメイト全員の顔と体が、恐ろしいまでにアンバランスだったのだ。

 頬のこけた顔に、でっぷりとした体。ぽっちゃりとした顔に、痩せた体。それだけならまだ良い。なかには、顔は男なのに女子の制服を着た者や、その逆の者までいる。何もかもを反転させたかのようなクラスメイトたちの姿に、奏斗は目眩を覚えずにはいられない。だが、驚くべきはそれだけではなかった。教壇に立った途端、彼自身も教師らしく振舞うようになっていたのだ。


「よーし、それじゃあ出席取るぞ~」


 慣れ親しんだはずの自分の声が、全く知らない他人のもののように聞こえる。まるで自分が自分ではないような感覚に、奏斗は吐き気をもよおした。しかし、その口は勝手に動き、スラスラと生徒たちの名前を読み上げていく。


 結局、【桜井奏斗】の名を呼ぶと颯太が、【飛鷹颯太】の名を呼ぶと鈴原が、当たり前のように返事を返してきた。




 ホームルームを終えて、奏斗は颯太と鈴原を廊下に呼び出した。正直に言って、まったくもってこの異様な状況の正体が分からない。たった一日学校を休んだだけで、どうしてこんなことになってしまったのか。彼は頭を抱えながらも、二人の【生徒】に訊ねた。


「鈴原先生、こうなった原因、何か心当たりはないんですか?」


「だから、席替えのせいだって言っただろ? ていうか先生、オレはもう鈴原じゃなくて【飛鷹】だから。間違えないでくれよな」


 かったるそうにそう告げる、昨日まで高校教師だった男。いつの間にか彼は、ポロシャツ姿から短ランボンタン姿へと着替えている。そんな彼を前に、奏斗は愕然としながらも颯太のほうに目をやった。やはり颯太の衣装もまた変わっており、彼は改造されていない、普通の学生服に身を包んでいた。


「先生、僕もう席に戻ってもいいですか?」


「う……、ああ……」


 これ以上、二人に何を聞いても自分の知りたい情報は得られないだろう。そう判断した奏斗は、言い知れぬ不安に駆られながらも、【鈴原巧】として職員室へと向かった。


「先生! 大変です!!」


 奏斗は勢いよく職員室の扉を開けるなり、大声で叫んだ。その言葉を聞いた他の教員たちは、驚いた様子で彼に視線を集めた。


「どうしました? 鈴原先生、そんなに大きな声を出して」


「えっ?! いえ、あの……」


 奏斗の顔を心配そうに見つめたあと、互いの顔を見合わせる教員たち。彼らは皆一様に、奏斗のことを生徒である【桜井奏斗】としてではなく、体育教師の【鈴原巧】として認識している──。

 そう思い知らされた瞬間、奏斗の全身に異常なまでの多幸感が襲いかかった。脳が蕩けるような、甘やかな痺れ。視界が歪み、足元がおぼつかなくなり、立っていることすらままならないほどに、幸福な気持ちが彼の肉体を駆け巡っていく。まるで射精する瞬間のような快感が延々と続くなか、奏斗は必死になって自我を保った。

 やがてその昂りが治まると、彼はゆっくりと呼吸を整えた。


「す、すみません……、なんでもありません。ちょっと寝不足で、寝惚けていたみたいです。ハハハ……」


 最近、働きすぎなんじゃないですか? と笑いながら、気遣ってくれる教員たちの声を聞き流しながら、奏斗は【鈴原巧】の席に腰を下ろした。初めて座る椅子だというのに、長年使い込んだかのように体に馴染む。ふぅっと息を吐き出して、机の上に突っ伏すと、彼はそのまま眠りに落ちてしまった。




「鈴原先生、起きてください! 授業、始まりますよ!」


 誰かに体を揺り動かされて、鈴原は意識を取り戻した。慌てて顔を上げると、隣の席の教員が心配そうに彼のことを見つめている。


「あ、あぁ……。ありがとうございます」


 礼を言いつつ立ち上がると、彼は自分の頬をピシャリと叩いた。幸い今日の一時限目は、受け持ちの授業がなかったので助かった。少しの間だが眠ったおかげで、抱いていた不安感も消え、頭の中がすっきりした感じがする。何を不安に思っていたのかは、よく思い出せないが……。


 その後はいつも通り、そつなく授業をこなし、帰りのホームルームの時間になった。教室の扉を開け、教壇に立って口を開こうとしたそのときだった。


「あっ……!」


 彼は思い出した。自分がこのクラスの生徒、【桜井奏斗】であったことを。職員室で目が覚めたときから、なぜか彼は、自分のことを【鈴原巧】だと思い込んでしまっていたのだ。いや、思い込んでいたというような、生易しいものではない。

 鈴原は、教壇から教室全体を見回した。違和感のあった生徒たちの姿が、すべて正常に戻っている。顔と体があべこべだったはずの、彼ら彼女らの姿は、名前と一致した正しいものになっていた。そしてそれは、彼ら三人も同様だった。本物の鈴原は【飛鷹颯太】に。颯太は【桜井奏斗】に。そして彼自身もまた【鈴原巧】に、顔だけでなく肉体すべてが変わっていたのだ──。




 生徒たちと別れたあと、仕事を手早く終わらせた鈴原は、人がめったに来ない階の職員用トイレに駆け込むと、壁に掛かった大きな鏡に自分の全身を映した。そこには、サンダル履きでポロシャツとジャージのズボンに身を包んだ【鈴原巧】が映っている。恐る恐るといった様子でポロシャツを脱ぐと、分厚い筋肉に覆われた上半身が露わになった。元ラガーマンらしい大きな身体。腕は丸太のように太く、胸板は分厚く盛り上がっていてムッチリとしている。腹筋は見事に割れており、その硬さを確かめるように撫でてみると、ゴツゴツとした感触が伝わってきた。


「これが……、僕……?」


 彼の口から漏れ出した野太い声が、じめっとしたトイレ内で小さく反響する。

 いかにも体育教師らしい、たくましい体つき。バレンタインデーには女子生徒から大量のチョコを貰うほど男前の顔は、目鼻立ちがハッキリとしていて、男らしさの中に色気すら感じる。どちらかと言えば、かっこいいというよりも、雄臭いという言葉が相応しいだろう。


「本当に……、これが【俺】の身体なのか?」


 そう呟いた彼は、思わず股間に手を伸ばした。そこにあるのは、紛れもない男性のシンボル。しかしその感触は、普段触り慣れた自分のモノとは比べ物にならないほどの、巨大さを感じさせた。むんずと握れば、ずっしりとボリューム感のある玉袋の重みを感じる。軽く揉んだだけでムクムクと大きくなっていくイチモツは、下着とズボンを押し上げるとその中から顔を出し、あっという間に臍を超えるほどの巨根へと変貌を遂げてしまった。


 初めて目にした雄々しい男根に、鈴原はゴクリと生唾を飲み込んだ。その大きさたるや、まさにデカマラと呼ぶにふさわしい。これまでに女性とのセックスを数え切れないほど行ってきたであろうそのペニスは、黒々と淫水焼けし、グロテスクなまでに立派な大人の形をしている。緩やかなカーブを描いた極太の竿には、血管が無数に浮かび上がり、ピクピクと脈打っていた。その先端の亀頭はパンパンに膨れ上がり、テカテカと光っていて、まるで熟れた果実のような卑猥さだ。


「すごいな……!」


 鈴原は堪らず、その巨大な肉棒を右手で握り締め、動かし始めた。そして左手では、睾丸を転がすようにして弄ぶ。多忙な教師生活に追われ、セックスどころかオナニーも碌にしていないのだろう。たっぷりと子種を溜め込んでいるそこからは、刺激を受けるたびに精子がせり上がってくるような感覚を覚える。やがて、尿道口からは先走り汁が溢れ出し、彼の指を濡らし始めた。


「んッ……♥」


 彼は目を閉じて、快感に身を委ねた。脳裏に浮かぶのは、自分のモノではない記憶。【鈴原巧】の人生が、走馬灯のように脳内を駆け巡る。学生時代にラグビーで活躍していた頃のこと、大学を出て体育教師になってからのこと、そして結婚して妻ができたときの喜びと幸せの記憶──。

 それらが次々とフラッシュバックするなか、鈴原はひときわ強い射精感を覚えた。


「ぬおお゙おぉぉっ!! イ゛クゥ~~~ッ♥♥♥♥♥」


──ドピュドピュッ!! どぷどぷどぷぅっ! ビュルルルルルルーーーー!!!


 大鏡に映った【鈴原巧】の全身像に、ゼリーのように濃厚なザーメンが大量にぶちまけられる。真っ白な滝のように連なる精液の塊が、鏡面の半分ほどを覆い尽くしていく。あまりの量の多さに、床にまで垂れ落ち、ドロリと溜まった精液の海からは、むせ返るような男の匂いが立ち昇ってきた。

 射精をした影響からか、肉体が一気に馴染んでしまったような気がした。先ほどまで感じていた違和感など、もう微塵も残っていない。


 筋肉の詰まった腕を、天井から降り注ぐ蛍光灯の明かりに掲げて、じっくりと見てみた。それは間違いなく、己の肉体の一部としか感じられない。左手の薬指で光る指輪が、その事実を強く後押ししてくる。自分は今、自身の意思でこの身体を動かしている。紛れもなく、自分は【鈴原巧】なのだ。


 その太い両腕で、自分自身の肉体を強く抱き締めると、鈴原は目を瞑ったまま熱い吐息を漏らした。




「由紀、ちょっといいか?」


 俺はどうしても我慢していることができず、妻である由紀に声を掛けた。彼女は鏡の前で化粧水を顔に塗っていたところだったが、俺の声を聞くなり、すぐにそばにやってきてくれた。


「どうしたの、あなた?」


 優しい声色で尋ねてくる彼女に、俺は真実を告げた。


「実はな、俺は……、【鈴原巧】じゃないんだ! 今の俺は、お前の夫なんかじゃなくて、俺が受け持っているクラスの生徒の【桜井奏斗】なんだ!!」


「えっ、なあに? 突然どうしたの?」


 由紀は不思議そうな顔をすると、首を傾げた。


「すまん……。いきなり、こんなこと言われても困るよな……」


「うん……。だってどこからどう見ても、あなたはあなたじゃない。ほら、ここの筋肉とか今でもすごく立派だし、男らしくって素敵だわ。フフ……私、あなたの筋肉に一目惚れしちゃったのよね……」


 そう言って、由紀は微笑みながら俺の二の腕を撫でてきた。違う、そうじゃない! 俺はお前の夫じゃないし、そもそも今はそんなことを言っている場合じゃあないんだよ……!


「そうじゃなくって……、俺は……」


「じゃあ、私たちが初めて行ったデートの場所、どこか分かる?」


「地元の海辺の水族館……」


「それじゃあ、あなたがプロポーズしてくれた場所は?」


「……俺たちの行きつけの焼き鳥屋だけど……」


「ほらぁ、やっぱりあなたは私の愛してる【鈴原巧】よ。顔も体も変わってないし、私との思い出もちゃんと覚えてる。何も心配することなんてないの!」


「いや、だから……!」


「……あなたが昔のこと思い出させるから、濡れてきちゃった。ねぇ、今夜は久しぶりに……。いいでしょ? ヒマリももうぐっすり眠っちゃったし、そろそろ二人目を作ってもいい頃だと思うの。ね、お願い……!」


 由紀は甘えるように言うと、俺の首に手を回してきた。


「お、おい! 待ってくれ……!」


 彼女の唇が迫ってきて、俺の唇に重なる。柔らかな舌先が絡みついてきた瞬間、ゾクッとした快感に襲われて、俺は抵抗する力を失ってしまった。そのままベッドへと押し倒されると、下着を脱がされ、チンポを口に含まれてしまう。生温かい口内の感触に、不覚にもギンギンに勃起してしまったそれの上に由紀は跨ると、ゆっくりと腰を落としていった。


「んふぅ……♥」


 ズブブッ……と淫猥な音を立て、俺の股間でそそり立った巨大な肉棒が、妻の濡れたアソコの中に飲み込まれていく。二人が重なった場所からは大量の愛液が滴り落ち、シーツに大きな染みを作っていった。


「んんッ……♥ すごぉいっ♥ あなたの、奥まで届いてるぅ♥♥♥ おチンチンもっ、んっ……間違いなくっ、あなたのモノだわ! だって、私の子宮が覚えてるもの♥ 」


 根元まで挿入された俺の肉棒を、彼女は上下に腰を動かして、下の口で嚥下し続ける。そのたびに膣壁にチンポが強く擦れて、俺は途方もない快感に襲われてしまう。


「あああっ♥♥♥」


 【桜井奏斗】にとっては、初めての女性との性行為。だが、【鈴原巧】にとっては、最愛の妻との久方ぶりのセックス。愛する妻の膣に包まれた【鈴原巧】のペニスが、悦びに打ち震えている。

 さらには童貞だった自分が、今日会ったばかりの女性──、しかも担任教師の妻とセックスをしているという背徳的な状況が、追い打ちをかけるように興奮を加速させる。


 肉体的には夫婦で間違いないのに、他人の妻を寝取っているという、普通では起きうることのないこのシチュエーションに、今朝までは俺のモノではなかった脳味噌が、沸騰するほどに熱くなっていく。筋肉隆々の肉体は、吹き出た汗で湿り気を帯び、玉のような雫を作ってシーツを濡らしながら、ベッドをギシギシと軋ませている。そして精悍な体育教師である俺の顔は、背徳感と心地好さの渦に飲み込まれ、快楽に蕩けきってしまっていた。


「はぁっ……、はぁっ……! 気持ち良いよ、由紀ぃ……! 俺、もう出そうだ……♥♥」


「いいわよっ、出してぇ! 私もイクからっ! 一緒にイキましょっ!! ああんっ! 好き、大好き! 愛してるわ、あなたぁ~♥♥♥」


「俺もだ! 俺も由紀のこと愛してるぞっ! 俺との子供、孕んでくれぇっ!!!」


──ドピュッドピュー! ドクン!! ビュルルルーー!! ビュー! ビュー!!


 会って間もない、最愛の妻の膣内の最奥まで貫いた瞬間、ガチガチに硬くなった俺の肉棒から、濃厚な子種汁が大量に飛び出した。愛する妻を妊娠させようと、膨れ上がった睾丸は収縮を繰り返し、まるでポンプのように新鮮な精子を尿道に送り込んでくる。熱を持ったそれは、瞬く間に由紀の中を満たしていき、二人の隙間から溢れ出し続けた。




「よーし、それじゃあ出席取るぞ~」


 教師生活二日目にして、もはや当然のことのようになってしまった、教壇に立っての朝のホームルーム。鈴原はクラス名簿を持ち、生徒たちの名前を読み上げていく。


「次は~……桜井、桜井奏斗!」


「はい」


 昨日までの自分。どこか懐かしさのような感情も覚えるが、今となっては他人としか思えない。そんな彼からは、もう【飛鷹颯太】であった頃の片鱗は窺えない。【飛鷹颯太】としての記憶は消え、ほかの生徒たちと同様に、彼は完全に【桜井奏斗】になってしまったのだろうか? だが、もしそうなら、こうして二人分の記憶が自分に残っているのはなぜなのか?


 そんなことを考えながら、鈴原は【飛鷹颯太】の名前を読み上げた。


「次、飛鷹颯太~」


「……は、はい」


 出席簿に目を落としていた鈴原は、返ってきた颯太の返事に違和感を覚えた。彼のほうを見やると、その顔はどこか元気がないようでありながら、鈴原のことを熱っぽい眼差しで見つめてきているような気がした。


「ん、どうしたんだ、飛鷹?……顔色が悪いみたいだが?」


 体調でも崩しているのかと思い、心配になって声を掛けてみたが、彼は慌てて首を横に振った。


「な、なんでもないっす! 大丈夫ですから!」


 不審には思ったものの、それ以上追及するわけにもいかず、鈴原は出席確認を続けると、いつも通りホームルームを終えた。




 職員室に颯太──、かつての【鈴原巧】が訪ねてきたのは、放課後のことだった。彼は人気のない場所で、二人きりで話があると言ってきた。鈴原はそんな彼を、ラグビー部の部室へと連れて行き、扉の鍵を閉めた。今は中間テスト前で部活動は休止中なので、部室には誰も来ることはないだろう。


「それで、話っていうのは何だ?」


「先生……。あの、オレ……」


 何かを言いかけたところで、颯太は言葉を詰まらせ、俯いて黙り込んだ。その様子は明らかにおかしかったが、鈴原は彼の言葉を待つことにした。

 汗臭い高校生ラガーマンたちの備品がそこここに置いてあるせいで、室内はムワリとした若い雄の匂いが充満しており、鈴原は少し息苦しさを感じた。おまけに窓を閉めているため蒸し蒸しと暑く、全身からは汗が噴き出し始めた。我慢できずに、彼が口を開こうとしたとき、颯太が意を決したように勢いよく頭を上げた。


「先生! 先生は【桜井奏斗】っすよね?!」


 唐突に放たれた質問に、鈴原は一瞬戸惑ったが、すぐに冷静に答えた。


「ああ、そうだ。それを覚えてるっていうことは、お前は自分が【鈴原巧】だったってことも覚えてるんだな?」


「はい……。でも、昨日の夜までは、なんでかそのこと忘れてて……。そんで寝る前に……その、オナニーしてるときに、鈴原先生のことがいきなり頭に思い浮かんで……。そのまま、先生をおかずにぶっ放したんですけど、そしたら急に全部思い出して……」


「お、おう、そうか……。それは何と言ったらいいか、反応に困るな……。でもまあ、元の自分の身体に興奮してのオナニーだから、つまりはお前はナルシストだったってことか?」


「違うんすっ! 【俺】の身体を他人が使ってるっていうのが、めちゃくちゃアガるんすよ!! オレ、今までナルシストでもなかったし、男にも興味なんてなかったのに、なんか目覚めちまったっつーか、先生を見てると変な気分になるんですよ! なんて言うか、ムラムラするっていうか……!」


 顔を真っ赤にして捲し立てる颯太の話によると、どうやら彼は、かつての自分の肉体を他人が使用しているという事象に対して、性的な欲望を抱いてしまうということらしい。そして鈴原もまた、気付かないようにしていたのだが、颯太に対して言い知れぬ性的魅力を感じてしまっていた。颯太の場合と違い、目の前にいる男の肉体は、鈴原にとってのかつての自身のモノではない。

 ということは、元の自分の肉体に他人の魂が入っていることに興奮するのではなく、この集団入れ替わりの事象に至る以前の記憶を保ったままの人間に対して、劣情を抱いてしまうのではないか──。


 そんなことをボンヤリと考えていると、唇に何かが触れた。


「んむっ?!」


「先生、オレ、もう我慢できないっす……。先生のこと考えれば考えるほど、チンポが勃って勃って治まらないんすよ……!」


「ちょ、ちょっと待て! 俺は、そういうつもりでここに呼んだんじゃないぞ?!」


「じゃあ、どういうつもりだったんすか?」


 鈴原の返答に、颯太はニヤリと口元を歪ませた。彼の視線は鈴原の股間に注がれている。そこには、すでにギンギンになったペニスがズボンを押し上げてテントを張っていた。身体の疼きが治まらない。自分は、教え子に欲情しているのだ。そう思うと、ますます下半身が熱を帯びてくる。


「うぐぅ……。それは……」


「先生も、オレと同じ気持ちなんじゃないんすか? だって、ほら……、こんなにおっ勃ててますもんね。それに先生、昨日は由紀に──、【俺】の嫁にそのデカマラぶち込んだんっすよね?」




 颯太の言葉に、俺の心臓がドキリと高鳴った。新しく俺の妻となった由紀。そんな彼女に誘われ、俺は昨晩、結局愛してしまった彼女の中に三発も中出ししてしまったのだ。そしてその女性は、昨日までは目の前にいる男の妻だった。普通なら恨み節を口にされるどころか、刃傷沙汰になってもおかしくない状況である。だが、彼の反応は意外なものだった。


「寝たんすね、由紀と……。デヘヘッ、嬉しいっす、先生! 【俺】の身体で、先生があいつを抱いたって考えるだけで、イキそうなくらい興奮しちゃうっす!!」


 嬉々とした颯太の、弾んだような声。俺は自分が犯した罪について糾弾されると思っていたので、予想外の展開に動揺を隠せなかった。すると、彼は俺に近付き、ズボンの下で膨らんだ股間を押し付けてきた。硬く猛った若い男の肉棒が、同じように硬くなった自分の股間に擦り付けられる感触は、筆舌にし難い快感を俺に与えてくれる。


「先生、いいんです。もっと、もっとあいつとヤッてください! 【俺】の身体で! 先生とあいつがヤッてるとこ想像すればするほど、興奮してオレの新しいチンポがビンビンになっちまうんすよぉ!」


 俺が担任教師の妻を寝取ったことに興奮したように、かつての【鈴原巧】も自分の妻が寝取られたことに、異常なまでの性的興奮を覚えている。その事実に安心感を覚えたのと同時に、俺は彼のことが急激に愛おしくなった。自身の肉体を奪われ、妻や子供、そして人生すら奪われたというのに、それでもなお彼は俺に幸福感を与えてくれる。そう思うと体が勝手に動き、気付いたときには目の前にいる彼のことを抱きすくめていた。俺のチンポもまた彼同様硬く勃起し、先が濡れて下着に染みを作っているのを感じる。


「せ、先生……?」


「ごめんな、飛鷹。本当はお前に責められるべきなのに……。でも、お前があまりにも健気に俺を想ってくれてるから、つい……」


「いいんすよ、先生! オレ、今めちゃくちゃ幸せっす!」


 颯太は俺を強く抱き締め返し、首筋に顔を埋めた。柔道部の【飛鷹颯太】の身体は、【鈴原巧】の肉体になった俺よりも少し小さいが、どっしりとしていて抱き心地が良い。彼の荒々しい吐息が耳にかかり、俺は背筋がゾクゾクするのを感じた。

 肉体が別人のモノへと変わってしまった者同士にしかわからない、奇妙な感覚が全身を駆け巡る。ある種の連帯感のような感情が生まれ、それがさらなる快楽を呼び起こす。俺たちは互いに強く求め合い始め、濃厚なキスを交わした。


「ふぁ……、せんせいぃ……、好きっす、大好きっす……!」


「ああ、俺もだ、飛鷹……! 俺もお前のことが好きでたまらんっ!!」


 荒く息を吐き、唇を貪り合いながら、俺たちは服を脱ぎ捨てていく。学生の頃からラガーマンとして鍛え上げてきた俺の──、【鈴原巧】の肉体。分厚い筋肉の上に薄く贅肉を纏った弾力のある肌は、汗でびっしょりと濡れていて、シャツを脱いだ瞬間、むわっと雄の匂いが立ち上った。俺自身も、その匂いには脳をガツンとやられたような衝撃を受けてしまうのだ。かつての【鈴原巧】である颯太にとっては、俺以上に強烈な性欲を刺激される香りだろう。それを証明するように、彼はトロンとした表情を浮かべて、鼻をクンカクンカと鳴らし始めた。


「はあっ、すげえ、先生の匂い……♥ 【俺】ってこんなエロい体臭、プンプン放ってたのかよ……。おまけにそのガタイ。ガチムチなうえに、チンポもでかいし黒ずんでて、すっげーカッコいいっす……!」


 颯太は、【鈴原巧】の肉体に見惚れているようだ。股間でいきり立った竿を、同じように反り返った俺のチンポに擦り付けて、その先端からトロトロと我慢汁を垂れ流している。だが、興奮しているのは彼だけではなかった。俺もまた、目の前の教え子の肉体に、異常なまでに欲情してしまっていた。


 真面目一徹といった感じの【鈴原巧】とは違った系統の、不良っぽさを感じさせる【飛鷹颯太】の顔つき。彫りが深く、鷲鼻で、高校生にしては大人びた雰囲気を纏った男らしい顔。柔道で日々汗を流している体は、胸板が筋肉で厚く盛り上がり、腕だけでなく脚もうんと太い。身長も180センチ近くあるのではないだろうか。


 そして、そんな巨漢の身体の中心で猛々しくそそり立つペニスもまた、体格に見合った立派なものだ。今の俺と同じくらいの太さと長さがあるだろう。ただし、ズル剥けの俺のチンポとは違っていて、仮性包茎の彼のモノは、勃起していてもカリ首までを皮にすっぽりと覆われていた。その色は綺麗なピンク色で、まだ使い込まれていない初々しさを醸し出している。幼い子供チンポから、大人のズル剥けチンポになってしまったときの俺の興奮の度合いも相当なものだった。ならば、大きさは変わらないものの、使い込まれた淫水焼けチンポから新品同様のピンクチンポになった彼の心境はいかばかりだろうか?


「先生、そのデカマラで──、昨日までの【俺】のチンポで、オレのケツ穴を犯してください!!」


 ギシギシと音を立てながら机の上に仰向けになり、両腕で太腿をがっちりとホールドして大きく足を開いた颯太。おそらく昨晩、かつての自分の肉体に欲情したあと、このときのことを考えて一人でアナルオナニーに耽ったのだろう。彼の尻の穴は、ヒクヒクと収縮を繰り返し、真っ赤に充血した粘膜を覗かせている。俺は颯太に覆い被さると、腰の位置を合わせて、彼の入り口にチンポの先端を押し当てた。すでに俺のチンポは、先走りで亀頭全体がヌルヌルになっている。それを潤滑油にするように、俺はゆっくりと体重をかけていった。


「んあ゛ぁ……、入ってくるぅ゛……! 先生のデカマラッ……! 【俺】のチンポが……、熱いぃぃっ♥♥♥」


 瞳にハートマークを浮かべた颯太が、歓喜の声を上げる。同時に肛門がギュッと締まり、俺の剛直を強く締め付けてきた。その感触に思わず射精してしまいそうになったが、歯を食いしばって耐えた。そうして俺は、彼の大きな身体を抱き締め、ゆっくりとピストンを開始した。女性のマンコとは違う、腸壁の凹凸が生み出す強烈な刺激。【鈴原巧】がこれまで行ってきたセックスのどの記憶よりも強い快感に、俺は夢中になって腰を打ち付けた。

 そのたびに、颯太もまた俺の体を離さないように抱き寄せ、足を絡めてくる。指で行うアナルオナニーとは違い、腸内の隙間を硬い肉の棒で隙間なく埋め尽くされ、襞を擦られながらえぐられる感触に、颯太は悶えるように喘ぎ声を上げ続けた。


「すげぇっ! すげえよっ! これが、男のっ、【俺】のチンポかよぉっ! 熱くて、太くて、気持ち良すぎて……、クセになるっ! 癖になっちまうよぉ、頭っ、オレの、あたまんなか、ヘンになっちまうぅ!! 先生っ! 桜井ぃ!! オレ! 俺っ!! おれのちんぽぉぉぉ♥♥♥」


 気が狂ったように叫び続ける颯太の最奥に、俺は勢いよく【鈴原巧】の、これまでの人生で一番硬く猛り狂ったペニスを突き立てた。その瞬間、颯太は大きく目を見開き、俺の背中を血が滲み出るほどに搔きむしると、舌を突き出しながら絶頂を迎えた。

 同時に俺のチンポは血の気が引くほどの力で強く締め付けられ、堪らずに彼の腹の中に精液を解き放った。どくんどくんと脈打つチンポに合わせて、大量のザーメンが彼の体内へと注ぎ込まれる。二人の睾丸は空っぽになるまで収縮と弛緩を繰り返し、煮詰められたかのように凝縮された精液が尿道を駆け抜け続け、床一面に大きな溜まりを作っていった。




「由紀、こっちは俺が担任するクラスの生徒の、飛鷹颯太だ。ワルに見えるが根は良いやつだから、仲良くしてやってくれ。良いやつだからって、俺に内緒でイチャイチャしないでくれよな?」


 鈴原がふざけた口調でそう言うと、颯太は顔を真っ赤にして俯き、由紀がふくれっ面になって文句を言う。傍目から見れば、教師の家に教え子が遊びに来ているような微笑ましい光景だが、そうではない。そしてそれを知ってるのは、由紀以外の二人だけだ。

 彼ら三人は、仲良く鍋を囲んで、夕食を取った。話は弾み、鈴原は由紀のお気に入りのワインを開けて、彼女のグラスに注いでやる。グラスが空くたびに、何度も、何度も……。やがて彼女は、テーブルに突っ伏して可愛い寝息をたて始めた。


「奥さん、眠っちゃいましたね……。先生、ベッドに連れて行ってあげてください」


「ああ、そうだな……」


 鈴原は、軽々と彼女をお姫様抱っこすると、寝室へと向かい、ベッドの上に優しく横たえた。


「……先生、奥さんのこと好きですか? 大切にしてくれますか? ……オレと奥さん、先生はどっちが好きですか?」


 リビングに戻ってきた鈴原に、立て続けに質問してくる颯太。彼は不安そうな表情で、鈴原のことをじっと見つめている。


「なあ飛鷹、そんなこと聞いてどうするんだ? お前は、俺の生徒なんだぞ? それに、俺にはこうして愛する妻も子供もできちまったんだ。お前は俺に、なんて応えてほしいんだ?」


 厳しく、そして非難するように鈴原は告げた。彼は颯太を睨みつけると、綺麗に片付けられたテーブルの上に颯太を押し倒し、その唇を奪った。


「んんっ?! んちゅっ……、先生っ……、んふぅ……♥ じゅるっ……、んんんっ……♥♥♥」


 鼻息荒く、貪るように颯太の口内を犯していく鈴原。シャツの中に収まった颯太の乳首をコリコリと指先で弄びながら、もう片方の手で彼のズボンと下着をずり下ろしていく。颯太のペニスがぶるりと震えながら外気に晒されると、鈴原はそれを手で掴んで上下に扱き始めた。

 すでに颯太のそこは勃起しており、先走り汁が溢れている。鈴原もまた自分のズボンとパンツを脱ぎ捨てると、颯太の唇から自分の唇を遠ざけた。二人の間を繋いでいた唾液の糸が、ぷつりと切れる。


「お前と由紀、どっちが好きかって? 決まってるだろ……。俺は、妻の由紀よりも、娘のヒマリよりも、お前が好きだ。お前のことが一番好きに決まってるだろぉっ!」


 精悍な顔をくしゃりと歪め、瞳を潤ませた鈴原は、再び颯太の口を塞いだ。最愛の妻子のいる我が家へと、以前の【鈴原巧】を連れて来ると、何かが変わるかと期待した。このまま自分は、家族を愛する夫──【鈴原巧】として、平穏に暮らしていけるのではないかと。

 だが、それは間違いだった。むしろ、自分が心底愛しているのは妻と娘ではなく、この男なのだと鈴原は改めて自覚させられてしまった。


 もう、どうしようもない。どうしようもできない。このまま、生涯体育教師である【鈴原巧】として教鞭を執りながら、教え子に劣情を抱いたまま生きていくしかないのだ。


「オレも、オレも先生のことが大好きっす! だから、先生! オレのケツ穴にチンポ入れて、先生のザーメンでオレの腹の中、満たしてください!! 由紀と、ヒマリのいるこの家で!」


 颯太の大きな掌が、鈴原の硬くなった竿を掴み、自らのアナルに押し当てて、その奥へと誘っていく。ゆっくりと、ゆっくりと肉襞を掻き分けて【鈴原巧】の肉棒が、【飛鷹颯太】の中へと埋まっていく。


 このあべこべになってしまった世界で、かつての記憶を残した二人。彼らは恍惚とした表情を浮かべると、これからの未来を考えることも放棄して、肉欲に溺れ続けるのだった。


(了)



以下、差分イラストです







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Comments

くろねこ@9605

柔道部の生徒と立場交換してしまって、やる気なさそうな態度になった鈴原先生の姿にまず興奮しました。「席替え」がキーワードになることで、必ずしも一対一対応の入れ替わりでない点が面白いですね。 立場交換からの入れ替わり、さらに入れ替わり同士での欲情と、色んな要素てんこ盛りのパフェみたいに豪華な話で、すっごく面白かったです! 鈴原先生の妻を寝取って興奮する主人公も、妻を寝取られて興奮する鈴原先生も、大変エロかったです……!

黒竜Leo

最初は立場交換だと思いますが、その後体も調整られて立場と同じになった入れ替わり、とても面白かったです! 顔だけ入れ替わった不調和な部分も楽しそうで、先生と主人公が体験できなくてちょっと残念ですな。

ムチユキ

ありがとうございます! ゲイ小説に男女のセックスシーン入れるのってどうなの? って思う人もいるかと思いますが、個人的には肉体交換後のセックスは男女問わず興奮しちゃうので書いてみました。 喜んでもらえて嬉しいです!

ムチユキ

僕も、身体の一部が少しずつ変わっていく話は好きなんですよね。機会があったら、また書いてみたいです! いつも、ありがとうございます!