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(こ、ここは……? 私はいったい……)


 肌にヌルヌルと触れる何かの感触で、男は意識を取り戻した。

 男の名前は、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。リ・エスティーゼ王国の第一王子である。金色の髪を短く刈り上げ、顎髭を生やした精悍な顔立ちの彼は、現在暗闇の中、ほぼ裸の状態に剥かれてその逞しい身体を横たえている。

 バルブロは、靄のかかったような頭をどうにか働かせ、今の状況に陥った原因を思い起こそうとした。瞬間、胃から吐瀉物がこみ上げそうになり、バルブロはそれを必死で堪えた。


(……あ、あの女が私を……)


 混乱した頭の中を、意識を失う前の記憶が次々と嵐のように飛び交う。その全てを思い出すと、バルブロの顔色は一瞬にして蒼白になった。


 王命に従い、向かった村での突然のモンスターとの邂逅。異様なまでのゴブリンの軍勢に為す術なく敗走した先で出会った、これまでに見たことのないほどの絶世の美女。ルプスレギナ・ベータと名乗ったその赤髪の彼女に、殴打されては回復魔法をかけられ、死ぬことすら許されない地獄の苦痛を与え続けられた永劫とも言える時間──。

 バルブロは頭を抱えて叫び声を上げたくなったが、その願いは叶わなかった。力を込めても、指の一本も動かないのだ。おそらく拘束の魔法が施されているのだろう。この状況は最悪としか言えない。だが、それでも彼にとっては幸いなことに思えた。死んでさえいなければ挽回の余地は十分にある。まずは何よりも情報収集だ。そう考えた矢先、口元だけが動くことに気付いた。


「お、おぉい! 誰か居ないかっ?! 私は、リ・エスティーゼ王国第一王子、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフだ! 何者か知らんが、私にこんなことをしてタダで済むと思っているのか!」


 長い口上を述べた彼は、瞬時に部屋の異様さに身を凍らせた。この部屋はかなり狭い。彼の発した声はすぐさま反響し、余韻となって消えていった。

 明かりもない。それに天井や壁、床に至るまで、どこもかしこも粘液状のものが張り付いているような奇妙な空気が漂っている。加えてひどく息苦しい。一番気にかかるのは、鼻につく甘ったるい匂いだ。王子である彼も夜伽の際に使用したことのある香か媚薬か、もしくは魅了の魔法による何かかもしれない。脳髄が痺れるような、それでいて身体の奥底から熱くなるような劣情が沸き上がってくる。


(な、なんなんだ、これは……。頭がボーッとして、体が熱くなって……)


 体中の穴という穴がムズムズしてくるような感覚に、彼は慌てて身を捩りそうになったが、どうにもならない。そうこうしているうちにも、彼の肉体を、液体に濡れた人の肌のようなものが撫で回している。蛇だろうか。普通の蛇程度であれば、バルブロが命を奪われることもないだろうが、拘束魔法も使用するとなればかなり厄介な相手である。魔法を使用する蛇──、ナーガであれば、彼には太刀打ちする術がない。バルブロは王族の中では剣の才に恵まれている方ではあるが、あくまでも王族の中だけでの話だ。肉体的な強さでいえば、彼の妹であるラナーの忠実なる犬──、クライムにすら劣ってしまうレベルなのだ。


 彼は恐怖に震えながらも必死に思考を回転させていた。その時、辺りがぼんやりと明るくなった。永続光の魔法が使用されたのだろう。微かに灯ったその希望の光にホッとしたのも束の間、バルブロは目を剥いて野太い悲鳴を上げた。


「ヒッ、ヒイイィィィィ!!!」


 彼の大きくなった眼に映ったのは、四方八方を埋め尽くす、ピンク色の臓物に似た触手の群れだった。天井が、壁が、床が、血に濡れたように真っ赤に染まっている。大量の人間のはらわたのようなそれらの見た目の衝撃に、バルブロはこれまで胃に止めていた内容物を撒き散らした。


「ぐぶぅえぇ!!!」


 ビチャビチャと吐き出されたそれは、彼に纏わりつく肉壁に飛び散ると甘い香りを放ちながら、ゆっくりと辺りを汚していく。


「ぐぅっ! だ、誰かいないのかっ?! 助けてくれッ!! 誰でもいいっ! 望むものがあればなんでも与える! だからっ……!!」


 語尾は情けなく裏返り、王国の一王子としての威厳など微塵も感じられない哀れな姿だったが、そんなことを気にするような余裕は今のバルブロにはない。ただひたすらに懇願を繰り返した。

 そんな彼の言葉に応えるように、テラテラと濡れそぼった肉の壁が蠢いて、笑い声を上げるようにぐちゃぐちゃと音を立てる。そしてその度に肉壁に覆われた室内に、うっとりとするような匂いがますます充満していく。バルブロは涙目になりながらも、どうにかして逃れようと身じろぎしようとするが、その怪しい香りは彼の鼻腔を通り抜け、脳を蕩けさせてしまう。


「う、うぁあ……♥」


 抵抗しようとすればするほど、彼の身体は快楽を求めようとするかのようにビクリビクリと痙攣し、力が入らなくなる。まるで甘やかな毒のように全身に広がる淫靡な感覚に、彼は為す術もなく翻弄されるしかなかった。頭の中はもはや肉欲に支配され、目の前の不気味な触手に自身が犯される光景を想像し始めている。全身の神経はその触手の感触を感じ取ろうと敏感に反応し、バルブロは声にならない喘ぎを上げてしまう。


 やがて、その動きは明確な意思を持って、バルブロの身体へと絡みついてきた。


「あっ、ああぁ、やめろぉ……! お願ぃいいっ、お願いだッ! 助けてっ!! 父上ぇ……、なぜ、私をこんな場所に……。どうして、私がこんな目に……」


 幼子のように汗と涙で顔を濡らし、父の姿を求め泣きじゃくるバルブロの股間は、叫び声とは裏腹に痛いほどに勃起している。すでに、その肉体は快楽を求めるだけの卑しい獣のそれでしかなくなっていた。

 彼の全身を触手が弄ぶ。ツンと立った乳首に吸い付き、腋の下を汗を舐めるように這いずり回り、鍛えられた太腿を締め付けるようにして擦り上げる。バルブロの性器は今にもはち切れんばかりに膨張し、王族の遺伝子をはらんだ二つの玉は中身を吐き出そうと激しく脈動している。


「おほっ♥ おお゛ぉ゛っ♥♥」


 触手のひとつが彼の硬く窄まったアナルを優しく撫でた。その瞬間、バルブロの表情が歓喜に染まる。排泄にしか使わないはずの器官で、快感を得られることを彼の肉体が初めて知ったのだ。そのまま肛門からゆっくりと侵入した触手の先端からは、魅了効果のある粘性の液体が流れ出し、腸内を満たしていく。バルブロはだらしない笑みを浮かべながら、舌を突き出して喘いだ。


「おっほぉ゛……♥ 私の尻の穴が魔物にぃ……。き、気持ち良い……もっと、もっとくれぇえ……♥」


 もはや王子としての面影はなく、完全に発情しきった顔つきになっている。この部屋に充満する魅了の魔法の効果もあるだろうが、バルブロの精神は完全に、醜悪な触手の手管に屈服していた。


 そんなバルブロの願いを聞き届けたのか、彼の腸を擦り上げる触手が、前立腺と精嚢を刺激するようにゴリゴリと圧し潰す。さらに数本の触手が伸び、そのうちのひとつが彼の口の中に入り込んだ。喉の奥まで突かれ、嘔吐きそうになるが、バルブロは嬉々としてそれを迎え入れる。触手の先から分泌された液体を喉を鳴らして飲み干すと、途端に全身に甘い痺れが広がり、全身の感度が数十倍にも跳ね上がってしまう。


「んぶぅう ♥ んぼぉ ♥ んごぼっ ♥ ふぶぅぅぅぅ ♥ 」


 触手によって口を塞がれているため、くぐもった声しか出せないバルブロは、それでもなお必死に快楽を求めた。

 とうとう限界を迎えた彼の性器からは、ドプリドプリと粘り気の多い白濁液が漏れ出した。触手たちは、ようやく溢れ出した雄の濃厚な体液を、もっと出せと言わんばかりに、さらに激しい攻めを加え始める。そして触手は大きな口を開くと、バルブロの硬く反り返った肉棒を一気にジュブジュブと咥え込んだ。未知の刺激にバルブロは目を見開いて叫んでしまう。


「んおお゛ぉ゛ぉっ、私のチンポがぁ♥♥ やめてくれええぇっ♥♥♥」


 しかしそんな言葉も虚しく、バルブロの身体は大きく仰け反った。


「ンホォオオ゛オ゛オッ ♥♥♥」


 触手の内側の無数の襞が、カリ首と裏筋を刺激すると、バルブロは一際大きな嬌声を上げて、再び大量の精をビュウビュウと触手の内へと吐き出した。



 それからというもの、バルブロはずっと快楽漬けの日々を送っていた。


「あへっ♥ あ゛っ♥ イグッ♥♥ イ゛ッグゥウウッ♥♥♥」


 もう何度射精したかわからないほどに絶頂を迎えているというのに、触手は未だ動きを止める気配を見せない。むしろ、ますます激しさを増しているような気さえする。

 バルブロの身体には無数の肉腫が張り付いており、その一つ一つが絶えず流動しながら、絶え間なく快感を与え続けている。肉壁から滲み出る粘液には栄養もたっぷりと含まれているため、彼が飢えに苦しむことはない。

 それ以外にも、肉体を向上させる魔法も施されているため、彼の身体はここに来る前よりも遙かに健康的になっていた。その結果、彼は精巣の中で大量の子種を産み出しては、触手の中に放ち続けている。


 バルブロがカルネ村で消息を絶ってから数日。行方不明となった彼は、すでに王国内部では非公式ではあるが、亡くなったものと見做されてしまっていた。これからも彼──、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフが発見されることは、決してないだろう。

 なぜなら彼の今いる場所は、アインズ・ウール・ゴウン魔導王が統治する、ナザリック地下大墳墓の奥底なのだから。

 バルブロは、命果てるまで触手に肉体を犯され続け、快楽に溺れ続けることになる。この世界の人間には、未来永劫到達できない墓の奥底で──。


(了)



以下、文字無し・足装備無しの差分イラストです





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今までとは違うスタイルで、素晴らしいです!