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女性たちの戦い 31th day 女子トイレのなくなったこの国で、女性たちの野外排泄が厳禁となってから一ヶ月が過ぎた。 ごくわずかに残った女子トイレにも並ぶ人はもはや無く、若年女性の誰一人として排泄が叶わない地獄の沙汰。 もはや列に並ぶことさえできなくなった女性たちは、ただ自宅で無為に時を過ごすしかできなかった。 どう少なく見積もっても11日、多ければ20日程度とということもあるほど長期間排尿を禁じられているのだ。常識的にはあり得ないほど膨れ上がった膀胱は、妊娠後期のお腹のふくらみを遥か凌駕していた。 あまりの重さに立ち上がることさえ困難なほどのそれを抱えて、日常生活などまともに送れるはずもなく。 家族や学校の同級生、あるいは職場の同僚が余暇を見繕って自宅を訪問。動けなくなった彼女たちを介護するのが一つのスタンダードとなっていた。 しかしそれは、女性たちにとって救いたるものではなかった。 食事と水分を与え、本人ができない家事などを代わりに手伝ってあげる。それ自体はとても有難いものであるのは間違いない。 だがそれにより、女性たちの苦痛は長く引き伸ばされてもいるのだ。 膀胱内はとうの昔に満杯。なまじ食事を与えられているゆえに活動を止めることのない臓器たちは、今もなお新鮮な尿を腎臓で作り出してしまう。 だがその送り先はもう満水状態。必然的に逆流したそれは、想像を絶する途轍もない激痛を彼女たちに与えていたのだ。 それは「痛みの王」と呼ばれる結石ですらも遠く及ばない、むしろその結石が痛みをもたらす元凶の、その数十倍にも及ぶ尿量が生み出す激痛。 内臓を内側から圧迫されるというその痛みは、到底部外者には想像もできないものであり それだけの痛みを与えられ続ける女性たちは、次第に一つの考えに至るようになっていった。 「…………ぉ……ねが……おねが……します……」 「……して……こ……して……はやグ……ころぢで……」 だがそれでも、むやみに人を殺す決断などできるはずはない。 国も、国民も、今は女性たちを苦しみのただ中に追いやっていても、それはただ迫りくる滅びへの対処を他に知らないというだけに過ぎない。 他に女性たちを助けつつ消滅をも回避する手段があるならそうしているし、今もそれを模索してはいるのだ。 ただそれが、実を結んでいないだけで。 ともかくなまじ男たちが女性たちを助けようとしてしまっているがゆえに、女性たちはなおも苦痛から逃れることができずにいた。 尿道プラグ設置から20日。死すら求めるほどの激烈な尿意との戦いは続く。 女性たちの戦い 40th day 女性たちに尿道プラグの挿入が義務付けられてから一ヶ月の節目にして、特区の消滅から20日が過ぎた日。 この日、国会前には多くの男性たちが看板を手にひしめいていた。 それは自分の娘や妻が苦しみの中にいるのを見かね、その解放を願ったためのもの。 若年女性のほとんど全てが行動不能となったことによる経済の停滞、および出産適齢期にある女性がこうなることによる少子化の爆発的な促進。 それがもたらすであろう、近い未来の確実な破滅。それは対象外であるはずの男性たちにさえも絶望を植え付けていて。 それに対する効果的な対策を打ち立てられていない政府への不満、そして愛する身内を苦しみから解放することを求めるデモクラシー。 それは一つのキャッチフレーズと共に、全国的に波及していくことになる。 【女性たちに小便の自由を!】 女性たちの戦い 60th day 特区の消滅から、女性たちから排泄に関する一切の自由が消えてから40日が経った。 この日、高校生の娘を持つ一人の男性が、あるものを作り上げた。 女性たちの尿道に挿入されているプラグ。これはマイクロチップを搭載し、特定の電波をそれに浴びせることでプラグの傘を伸縮する機能を操作するアプリをアンロック、あとはそのアプリで傘を閉じればプラグを引き抜くことができるようになるという構造である。 すなわち「してもいいところにいる」証明である電波を浴びせることで、プラグを操作するスマホアプリの使用が解禁される。プラグの操作そのものはスマホが担っているのだ。 ならもし、スマホアプリの側をハックして「すでにその電波を浴びている」と勘違いさせることができたのなら? ITエンジニアとして勤め、かつ年頃の娘を持つ父親たちはその点に着目。政府が開発した尿道プラグ用スマホアプリにアクセスし、その情報を改竄するクラッキングアプリを作るべく、十日ほど前から行動を起こしていたのだ。 国策であるゆえ堅牢なアプリのファイアウォール。外部からの接続を拒むよう作られているそれを突破するべく全国のITお父さんがネット回線越しに団結。 10日の間全力を注ぎ続け、とうとうそれを一人のエンジニアが作り上げたのだ。 しかしそれは当然ながら試作品。それがきちんと動くかどうかは未知数であり、下手をすれば失敗の可能性もある。 半端に情報を書き換えようとした結果クラッシュし、二度とプラグが抜けなくなってしまう可能性だってある。 「ぁ゛…………か…………ぁ…………」 だが、それでも。 青ざめた顔の、ひんやりとしてさえいる娘の額を撫でながら、父親は拳を握りしめる。 子ども部屋に入ってすぐ目に飛び込んでくる、血管浮き立つ巨大で歪な球体。 そのあるじである娘自身よりも大きくなったそれは、最早娘の方が付属品と言ってもいいくらいの存在感でそこに在った。 どれくらいの間、その中身を出していないのだろうか。特区が消滅してから?否、彼女が最後に済ませたのは特区が消滅するよりも前だ。 まだ特区があった頃、できてからそんなに時を空ける前に行って、それからは自分よりもっと危ない人たちの為に譲っていたのだから。 最低でも40日以上。多ければ50日近くもの間排泄していないそれは、それなりの広さがある子ども部屋の4分の1ほどを埋めるほどにまで肥大していた。 そんなものを抱える娘の有様の、なんとひどいことだろうか。 痛みにのたうつことも、呻くこともできず 自分の身体より大きな膀胱に張り付けられ、一日中その顔を涙で濡らすだけ。 その涙ですら、恐らく泣こうとして出しているのではない。彼女自身の意思によるものではなく、過剰な痛みによる生体の反射なのだろう。 彼女自身の意思は、とっくに閉ざされている。あまりに長く続いた苦しみが、とうとう痛みに嘆くことすら奪ったのだ。 そんな娘を、この苦痛から解き放つことができるのなら。その可能性だけでもあるのなら。 失敗するかもしれないという不安はある。だがそれでも、可能性があるのなら。 意を決して、父親は自分の開発したクラッキングアプリを走らせた。 娘のプラグを管理するアプリのロックが外れ、傘の伸縮を司る機能が解放される。 震える手で、父親はその機能を動かした。 っっっぽんッッッ!!!! その瞬間、小気味よい音と共にプラグが娘の尿道から飛び抜け 間髪入れず、怒涛の如き勢いが解き放たれた。 長く長く、一ヶ月半もの間溜め込まれ続けた少女の排泄物が、小便が、今。 じゅどッッッッッッじゅしゅううううぅううううううううううううぅうううううううっっっっっっ!!!!!!!!じゅばばばばばばっっっっっしゅううううううううううううぅうぅうううーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!!! 娘の身体が、浮いた。比喩やものの喩えではなく、本当に人の身体が一瞬ふわりと浮き上がった。 大きなお腹に張り付くように、寝転ぶこともできずそこに佇み続けていた娘の身体。その排泄孔から、床に向かって一直線に延びる爆発的な尿線。 それはまるでロケットが空を飛ぶ如く、地面を叩いた反動でその身を浮き上がらせたのだ。 耳をつんざくほどの音を伴い放たれる、水道管を破裂させてもこうはならないと断言できるほど壮絶な勢いのオシッコ。 人ひとりを跳ねあがらせるほどのそれは、瞬く間に部屋中をアンモニアの匂いで満たしていった。 秒間100~200mlは出していてもおかしくないほどの勢いだが、まだなおもお腹は萎むことなく存在を主張し続けており、彼女の苦痛がどれほどのものだったかを物語る。 そしてそれだけの放尿を一ヶ月半ぶりに放つことができた娘はと言うと…… 排泄が叶ったその瞬間。やっと出すことのできた解放感が押し寄せた、その刹那。 疲れ切った身体はその感覚を処理することができず、一瞬で脳がブラックアウトしていた。 それはさながら、巨大な電圧に耐えかねたヒューズが飛んでしまうかのように。 あまりに大きな快感を、脳が処理できなかったのだ。娘はただただ、最高に気持ちのいい瞬間を失神しながら迎え…… その代わりに肉体が、絶え間のない絶頂に跳ね回り続けていた。 何度も何度も、裸の下半身を振り回し、背中をのけ反らせて。オシッコの快感を全身で余すところなく感じ続けて。 部屋中をオシッコまみれにしながら、娘はずっとその至福を味わう。 一時間以上もかけて部屋の中どころか廊下まで浸すまで、娘はその巨大な膀胱からオシッコを出し続けるのだった。 女性たちの戦い 65th day それから、その父親が作ったアプリの試作品をもとに改良を重ね、とうとうエンジニア連合はクラッキングアプリの完成版を世に出すことができた。 政府に決して気取られないよう慎重に、各所へ根回しをし 今あるアプリのデータを変えられてしまわないよう、決して迂闊な情報公開はすることなく 慎重に慎重に積み重ねて、今やっと準備が整ったのだ。 政府にとっても手が出しにくい海外サーバのアップローダーを利用し、騒ぎが大きくなりやすいSNSは使わずに水面下で公開されたそのクラッキングアプリ。 それは大々的な告知をしていないにも関わらず、わずか数分で数万ダウンロードがされるほどの大反響となった。 各地で轟く、爆発的な放水音。少女たちの解放の水音。 そんな気持ちの良すぎる解放は当然、嫌でも人目についてしまうもので…… その翌日、恐るべき事態を引き起こしてしまうことになる。 女性たちの戦い last day アプリが世に出た、その翌日。 点々とではあるものの、全国各地で起こった盛大な「水害」の報せ。それは当然ながら今までそれを知ることのなかった人たちの目や耳にも届くことになり ネットやテレビのニュース、またSNSでアプリの存在は爆発的に知れ渡る運びとなった。 もはやこうなっては政府の対応も間に合わず、たった3~4時間でアプリは数百万ダウンロードを達成。国内にいる10代~30代女性の人口とほぼ同数に行き渡る運びとなった。 そしてここから、末期的な事態へと向かっていくことになる。 かねてより巻き起こっていた女性たちに排泄の自由を求めるデモ。それはこのアプリによって、真の完成を見たのだ。 声を上げるデモの男性たちに紛れて、とても巨大なお腹を抱えた車いすの女性が何人もその列の中にいる。それはその男性たちの家族であり、彼らが救いたかった女性たち。 国会前に集まった声なき女性たちは、男性の介助を受け……これまで言うことのできなかったありったけの想いをぶつけようとしていた。 膨らみ切った膀胱に押しつぶされて、無機質なプラグに押し込められて、法律という縛りに戒められて、ずっとずっと言うことのできなかった切なる願い。 おしっこがしたい。その切なる願いを、叶えられなかった願いを、今ぶつけようとしていた。 国会の周りをぐるりと取り囲んで、照準をしっかと定めて、今。 ずぽんっっっっ!!!! 青空の下、数十ものプラグが宙を舞い、盛大な一斉砲火が放たれる。 ブッッッッッシュウウウウウウウウウウウウゥゥウオオオオオオオオォオオオオオオッッッッッ!!!!!!!バシュウウウウシュシュシュシイイイィイイイイイイイィイイイッッッッッ!!!!!!!!!! じゅばばばばばばばっっっしゅしゅしゅしゅしいいいいいいいいううううううううううううっっっ!!!!!!!びっっっっしゅういいいいいぃいいいいいいいいいいいーーーーーーーーっっっっ!!!!!! バッッッシュウウウウウウウウウゥウゥウウウウウウウウウウーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!! 高く高く舞い上がる、女性たちの一斉放尿。それは10数メートルは離れた議事堂の二階部分までをも直撃するほどだった。 空高くこだまする、数十の女性が奏でる盛大な放水音。それは何よりも何よりも雄弁に、女性たちのこれまで言えなかった想いを代弁して突きつけたことだろう。 これまで抑圧され続けてきた想いを、女性たちは政府へとぶつけ…… そしてデモから離れた町でもまた同様に、盛大な水柱が上がる。 なんとか家から出た女性たちも、当然ながらその尿意を受け止める場所は無く…… 街中でその超絶な尿意を解放していたのだ。 街中で交錯する、ビル4階にまでも届く大きな大きな放物線。 幾本も幾十本も舞い上がるそれは、町中を女性たちのオシッコで満たしていった。 もはや中も外もない。女子も男子もない。この国すべてが、女性たちのトイレと化していた。 国中のどこもかしこもで行われる、女性たちの一ヶ月半耐え忍んだ爆裂オシッコの雨あられ。 それはクラッキングアプリの開発と合わせて、国民すべての価値観をも大きく塗り替える出来事となった。 それから数時間後、女性たちが溜まりに溜まったオシッコをすべて出し切り、安らかな眠りに落ちた頃。 音もなく、忽然と、極東の海に大きな穴が出現した。 海の青よりなおも碧く、深い青を湛える大穴。 それはかつて、東の島国と呼ばれた国があった地点と同一だった。 穴が「出現した」のか、それとも元々あったなにかが「消えて穴になった」のか。 その真実は、誰にもわからない。

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