巨幼女05「開放」 (Pixiv Fanbox)
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――【チャクラ】を完全開放した一件から、数日後。
「ねぇ、パパー。お腹、空いたぁ」
「・・・え、また?」
小夜子は小学校から帰宅後、間食がてらにガッツリと一食分を平らげ。
夕方、家族三人揃って普通に夕食を採った。
今は、夕食を終えてから、まだ一時間程度しか経っていない。
「食べ過ぎなのでは・・・いや、何でもない」
剛一郎は、小夜子のお腹を見るが、特に食べ過ぎで膨らんだ様子はない。
「あなた、良いじゃないですか。食べ盛りなんですし」
「うーん、まあ。そう、だな・・・」
ここの所、小夜子の食は増えているものの。お腹を壊す事も無く。
毎日、健康そのもので。体調を崩すような素振りは全くなかった。
「まあ、杞憂・・・か」
お腹を壊したら報告するのだよ、と妻と娘の二人に忠告するに留めた。
――そして、暫く経った頃。
「ねぇ、パパ。何か、身体が痛い」
「痛いって、どの辺り?」
小夜子は肩や腕、背中や脚を指差した。
「どのぐらい、痛いんだい?」
「うーん。ちょっと、“ピキッ”ってなる感じ」
成長痛、だろうか。念の為、剛一郎は医者に診せるも。
「体重も増えてるようですし・・・成長痛、ですね」
「は、はぁ・・・」
小児科の医者は、素人と同じ診断結果を下した。
「成長痛じゃないですかね」
「成長痛だと思います」
整形外科や接骨院に掛かるも、診断結果は同じ。
食事をキチンと採って下さい、が唯一の注意事項だった。
「うぅむ・・・」
“あれから”未だに、小夜子に大きな変化は無い。
少しでも何かあれば直ぐに報告しなさい、と言い付けているものの。
食が太くなった事と、今回の成長痛を訴えた事。
この二つ以外は、至って健康。内科に掛かるような疾患は皆無。
「今は、痛みはどうだい?」
「何ともないよ。それより、お腹が空いたかも・・・」
ケロッとしている小夜子を見て、剛一郎はふと我に返る。
余り心配し過ぎるのも良くないな、と独り言ちた。
――更に、半年ほどが経過し・・・。
「すぅ、すぅ・・・」
ベッドで、小夜子が可愛らしい寝息を立てている。
ミリ、ミリ・・・
「う、うぅ・・・ん」
寝苦しいのか、小夜子は寝返りを打つ。
バサァッ。
その際、掛け布団をベッド下に落としてしまう。
長袖長ズボンの、熊さん柄の可愛らしい寝間着が露わになる。
グ、グググ・・・
「すぅ、すぅ・・・」
買い替えて貰ったばかりの、“セミシングル”サイズのベッド。
そのベッドの上に載っているのは、敷布団と枕と小夜子だけ。
ミチ、ミチチッ・・・
「う、ん・・・ぅん」
やはり寝苦しいのか、『くの字』に曲げていた脚を真っ直ぐ伸ばし直す。
ググッ、グモモッ・・・ガシッ。
「んぅ・・・?」
ベッドと平行に伸ばした足が、木製の『足板(フットボード)』に引っ掛かる。
『セミシングルサイズ』なので縦は180cmもあり、かなり大きい。
女性であれば、大人でも余裕を持って寝られる程のサイズ。
「う、ぅ・・・ん? うぅ、ぬぬ・・・」
足の裏が足板にペタッと張り付き、抵抗を返す。
すると、それを受けて小夜子の身体は、頭方向に押し上がる。
ゴン。
「うぅ?」
今度は、頭を『頭板(ヘッドボード)』に打ち付けた。
ミシ、ミシ・・・
「ぅあ、・・・れ?」
流石に眠りが浅くなったのか、薄っすらと意識が覚醒を始める。
「う、うぅ~~・・・」
しかし未だ夢うつつ状態で、小夜子は“伸び”をする。
ミシ、ミシシッ。
転落防止を目的とした頑丈な足板から、木材の軋む音が聞こえる。
「・・・っん!」
小夜子の全身が縦に伸び切った、と思われる瞬間。
バキィッ!
という音と共に、足板が砕けてしまう。
「・・・ん、んぅ?」
小夜子は朧気ながらも、ようやく目を覚ます。
「まだ、暗い・・・」
窓から覗く空は、まだ薄暗かった。かなりの、早朝。
小夜子は子供ということを差し引いても、ロングスリーパーで。
普段は、絶対に起きないような時間帯。
「何で、目が覚め・・・あれ?」
足が何故か、“チクチク”する。
「・・・え」
仰向けに寝た体勢のまま、横着をして足元を伺おうと視線を下げると。
「何、これ・・・」
熊さんがプリントされた寝間着の“山”が、視界を遮っていた。
「これ、“おムネ”?」
母親の妙子がデザートで出してくれる、グレープフルーツ。
その果実を思わせる大きさの乳房が、胸元を押し上げている。
「やっぱり、おっぱいだ」
両手で揉むと、指が沈み込むような弾力。
「・・・て。あれれ?」
胸を揉む両手に、何か違和感がある。
「袖、何か縮んでる・・・」
手首まで覆っていた筈の長袖は、いつの間にか“七分袖”になっていて。
肘の直ぐ先に袖口が後退して、前腕の大半が露わになっていた。
「腕が・・・腫れてる?」
手首から伸びる前腕は筋張って膨らみ、広がるように急激に太くなり。
その先の二の腕は太いどころか、ボボンッと大きく“腫れて”いる。
「虫に刺された、のかなぁ。ドッジボールみたい」
たまに、昼休みに女子グループで遊ぶ、ドッジボール。
ドッジボールは、低学年用ですらハンドボールとほぼ同じ大きさがある。
上背のある小夜子であっても、大きさ的には片手で収まり切らない。
「あれ、おっかしぃな・・・」
虫刺されの“腫れ”なのに腕の曲げると、グモモッと膨らむ。
その度に、寝間着の袖はミチミチッ、と悲鳴を上げた。
「あ、でも・・・」
手をグー、パーと開いて閉じて。
パーで力を抜いて、グーで拳を握り込む。
ミキミキッ。
「何か、面白いかも」
拳を握った時にグッと力を籠めると、前腕に血管が浮き上がるのだ。
「ぐー、ぱー。グー・・・」
拳を握る行為は、手首が内側に傾く。
繰り返す内に、徐々に力が強まり・・・。
「パーッ。グーッ・・・」
手首が『くの字』に傾くのに連動して、前腕も『くの字』に曲げ始め・・・。
「パッ。グゥーッ・・・んっ!」
前腕と二の腕が丁度、『45度』の角度になった辺りで。
モリモリモリッ!
ミチ、ミチミチッ。
ビリッ・・・ビリリィッ!
「・・・あ」
“腫れ”だと思っていた上腕が、二回りは大きく膨らみ。
袖の生地の大半を集中させた状態で、その生地を引き裂いてしまった。
「これ・・・“ちからこぶ”?」
袖の生地を引き裂いて出て来たのは、ドッジボールと同じ大きさの力瘤だった。
「硬い・・・」
二の腕に載るボールのような上腕二頭筋は、血管が浮き上がり。
力を籠めた状態だと、指で叩く度にゴツゴツッと乾いた音がした。
「ぁ・・・ふぁ」
力んだせいか、身体がそれに反応するように欠伸を引き起こす。
「ふぁ、あぁ・・・」
小夜子は身体の求めに応じ、上体を起こし。
ミチ、ミチミチッ。ミチチ・・・ビリッ。
「あぁ~あ・・・ん?」
両腕を『くの字』に曲げたまま、上半身全体に力を籠めてしまう。
ブボンッ! ピンッ、ピンピンッ!
「・・・あ」
胸元を圧し上げていた膨らみが、ボタンごと寝間着の生地を弾き飛ばした。
たゆん、たゆんっ。
「ボタンが・・・おムネが、出ちゃった」
寝た状態でさえ足元を見えなくする程の、双丘を形成する美巨乳。
「・・・あーっ!」
飛んだボタンを拾おうと上体を起こしたことで、ようやく“チクチク”の正体が判明。
小夜子の足は『足板』を踏み抜き、バキバキに折っていて。
逆皮(ささくれ)立った木の破片が、幾つも足裏に当たっていたのだ。
「太腿も、何これぇ」
ズボンの中に長瓜を詰め込んだかのように、太腿は膨らんでいて。
生地越しでも筋肉の瘤がハッキリと、血管がクッキリと浮き上がっている。
袖と同じようにズボンも、“七分丈”程にまで縮んでいた。
「ベッド、何か小っちゃくなっちゃった・・・?」
ただ、寝ていただけなのに。
足は『足板』を踏み抜き、頭は『頭板』にぶつかり。
横幅も、両脚の太腿で殆どのスペースが埋まってしまっている。
「不良品だ、ってパパに報告しなきゃ」
剛一郎からは、『何かあれば直ぐに報告しなさい』と厳しく言い付けられている。
小夜子にとって、寝間着が破けた事よりも。
ベッドが壊れた事の方が、一大事だった。
「パパ、もう起きてるかなぁ」
小夜子は、『何かあったらパパに報告』の言い付けを守るべく。
ベッドから降りようと、右脚を動かす。
ビリリィッ、バリバリッ!
「あ・・・」
脚を曲げた事で、太腿の筋肉(大腿四頭筋)がボンッと肥大化。
七分丈に縮んでいたズボンを、観音開きで引き裂いてしまった。
「・・・ま、いっか」
胸元のボタンは弾け飛び、袖はボロボロ。ズボンは、ズタズタ。
パパに買って貰った、お気に入りの寝間着ではあるものの。
もう着られないのは確実なので、“壊れた玩具”と同じカテゴリ入り。
「あれ? ドアが・・・」
部屋から出るべく、ドアの前まで移動。
「取っ手も何か、低い・・・」
部屋のドアノブは、今までなら胸元の鳩尾辺りの高さにあった。
それが何故か、“股より低い”位置にある。
「ん、っしょ」
部屋のドアは内開きなので、ドアノブを掴み手前に引く。
バキャッ!!
「あれ?」
ドアが、“取れた”。
開いたのではなく、ドア板そのものがドア枠から外れてしまい。
鉄製の蝶番がグニャリと曲がり、ネジ類は全て弾き飛んでいた。
「取っ手も・・・」
鉄製のドアノブに“手形”が付いていて、これまたグニャリと拉げていた。
「まあ、“これ”も持ってけばいっか」
外れたドアを、小夜子はそのまま片手で持ち上げる。
ドア“板”とはいえ、幅70cm×高さ180cm×厚さ2cmもあり。
頑丈な材質の木材なので、重さは30kgほどもある。
大きさと比重から、片手で持ち上げるのは大人でも簡単な作業ではない。
しかし、小夜子は“違う部分”で引っ掛かってしまう。
ガンッ!
「あ、痛った」
部屋から出ようとして、額をぶつけてしまったのだ。
「何でぇ? ドア無いのに・・・」
部屋と廊下を遮るドアは今、手に持っている。
遮るモノは何も無い筈なのだが・・・。
ゴンッ。
「痛い・・・あ」
小夜子は二回目にして、ようやく自分を邪魔する存在に気付く。
部屋そのものが、外に出るのを拒んで・・・という程、大袈裟な話ではなく。
普通に立って歩くだけで、小夜子の額がドア枠に当たってしまうのだ。
「何で、だろ・・・」
流石に幾ら小学生といえど、部屋が小さくなったりしない事はわかる。
「そういや、パパもたまにぶつけてたっけ」
剛一郎は上背がある為、小夜子の部屋に入る際はいつも屈んでいた。
「パパに聞けばいっか♪」
30kgのドア板を右腕で小脇に抱えながら、頭を屈めて部屋を出る。
「えーっと、パパの部屋はぁ・・・」
剛一郎の寝室は、小夜子の寝室から出て左方向。
自室から“身体だけが出た”状態で、左へ方向転換。
ガガッ・・・
「・・・ん?」
寝かせて持っていたドア板は、横幅が180cmになっていて。
人間一人分の長物が、そんなに直ぐに部屋から出る訳もなく。
「あれ?」
右脇に長物を持った状態で左に向けば、どうなるかは自明の理。
ドア板の後ろ半分が、部屋のドア枠に引っ掛かり・・・
・・・バギャッ!!
「・・・あ、折れちゃった」
右腕の上腕二頭筋と広背筋が支点となり、ドア板が真っ二つ。
むしろ、驚くべきは“今の小夜子”自身、だろうか。
2cmもの分厚い木板を、体幹の強さだけでブチ折ってしまったのだ。
「小夜子。こんな朝早くから一体どうし・・・」
普段、誰も起きていない時間帯なのに、激しい物音が数度。
また、泥棒が入ったのかと気になり、剛一郎が起きて来た。
「・・・っ!? “お前”は、一体・・・?」
剛一郎は“半裸の女”を見て、そう呟く。
「あ、パパ」
「パパ・・・?」
自分を『パパ』と呼ぶ声は、普段から聞き慣れたモノ。
「いや、まさか。でも・・・」
それは間違えようもない、愛娘の声。
「お前、小夜子・・・なのか?」
剛一郎の目の前に居るのは、自身と同じぐらいの“大柄な女”。
「え、そうだよ」
何言ってるの、と小夜子は訝しむ。
「・・・・・」
まだ眠っていて、夢でも見ているのか、と。
剛一郎は生まれて初めて、自分の頬を抓(つね)ったのだった。