性杯戦争~ランサー陣営『マスター:ベルファスト&ライダー:アルトリア・ペンドラゴン[ランサー]』~導入 (Pixiv Fanbox)
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性杯戦争とは
性杯戦争とは
性杯戦争シリーズのさすらいのヒモ、オリジナル設定です。聖杯と名付けられているが、聖杯ではないものが様々な世界へアクセスして美少女・美女を強制召喚し、さらにその美少女や美女と相性の良いサーヴァントをパートナーとして聖杯戦争を行う────はずでしたが、バグが発生してエラーが起こり、聖杯が性杯となったとい...
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ここは現実ではない。
天の川銀河太陽系惑星地球、その星に住まう知的生命体である人類の歴史でいうところの二十一世紀初頭の日本国首都東京を模して形作られた箱庭空間。
ここは、そういう特殊な空間なのだ。
ただ、その空間の中心には『聖杯』と称せられる万能の願望器が存在している。
時間も次元も、常識も法則も異なる世界から、『聖杯』に選ばれた『マスター』が強制的に呼び出され、そのマスターたちは自分たちの『力』である『サーヴァント』を召喚する。
7人のマスターと、7騎のサーヴァント。
彼女たちをPC(プレイヤーキャラクター)とし、聖杯をGM(ゲームマスター)とするならば、この東京の街に溢れかえっているそれ以外の、まるで生きている命のように見える存在は、実際は命を持たずにそれぞれの世界に実在した人物たちの行動パターンをインプットされただけのNPC(ノンプレイヤーキャラクター)だ。
聖杯という名のGMは、この世界で唯一の命であるマスターに戦えと命じた。
勝ち抜いた一人に奇跡を与えると、勝手に呼び出しておいて、勝手に決めてしまった。
通常の聖杯戦争と異なり、脱落なんて許さないと。
残酷に、冷酷に。
戦え、戦え、と。
聖杯は、戦いを命じたのだ。
■
聖杯によって作られた箱庭都市の中にある高級住宅街、その通りに建てられた豪奢な屋敷の、丁寧に整えられた中庭の中で、一人の女性が『お茶』を楽しんでいた。
「素晴らしい。茶会に類するものは私の時代にはなかったものですが……なるほど、心が満たされる空間と一時、まさしく『文化』と言える完成度ですね。感嘆せざるを得ません」
紺色の軍服をきっちりと着込みつつもスリットの深いミニスカートを履いたその女性は、美しかった。
その衣装は本来の彼女が纏うものではなく、『軍属メイド』とでも呼ぶべきマスターに合わせて新調した、かつてどこかの世界で召喚された際の記念装束、『英霊正装』とでも呼ぶべきものを身に纏っていたのである。
その規律が形になったような衣装に相応しい、研ぎ澄まされた刃のような鋭い美貌だ。
輝かんばかりの金髪に、どんな宝石よりも鮮やかな色を放つ碧眼。
きめ細やかな美白肌をした小さな顔には、大きな瞳と高い鼻、そしてルージュを引いたわけでもないのに真っ赤な唇が奇跡的なバランスで配置されている。
軍服に抑え込まれてもなおハッキリとわかる大きな乳房に、食事制限に基づくダイエットによる強制的な肉の除去ではなく実践的な訓練によって絞ったからこその細い腰つきに、むっちりとしつつも長く伸びる脚は、男と女、両者の理想像が形となったようであった。
それでいて、男の獣欲を萎えさせるような鋭い『威圧感』を放っている。
そう、ただ権力を掴み取っただけでは放つことの出来ない、本物の支配者のみが持つ『王気(オーラ)』が
彼女こそが、この地にて行われている『聖杯戦争』におけるサーヴァントの一騎、『槍兵(ランサー)』のクラスで召喚された英霊だ。
『アルトリア・ペンドラゴン』――――その名も高き、聖槍を携えたアーサー王である。
「目を引く茶器に、輝かんばかりの光景。それでいて、テーブルやカップにケーキスタンド、様々なもので華美さにメリハリをつけたこと。ただ、美食を楽しむだけではないものが、この『お茶』という文化なのですね。
これほどの一時を容易く創り上げてみせた見事な腕前――――流石です、『ベルファスト』」
そのアルトリアからこれ以上ない称賛を受けるメイドが居た。
『ベルファスト』――――人ならざる兵器、KAN-SENである。
暖かな色を持つ白銀の髪と、バイオレットよりも深い輝きを秘める紫の瞳。
アルトリアと並んでも見劣りをしない小さな顔に大きな瞳だが、一方で触れれば切られてしまいそうな鋭利な美貌のアルトリアとは対象的に、見ただけで心を包み込むような柔らかな美貌を持っている。
ベルファストは、大きな乳房を見せつけるように大きく開いている特殊改造されたメイド服を身に纏っているが、そんな服装をしてもなお品格を感じさせる不可思議な女だった。
ベルファストの纏う瀟洒な雰囲気が、胸の長い谷間が露出されているというのに、男たちは娼婦を見たことによる興奮ではなく、貴人を見た時に覚える興奮を抱かせてしまうだろう。
この見た目も雰囲気も言動も、従者のように見えるベルファストこそが、美しくも高貴な王気(オーラ)に満ちあふれているアルトリアのマスターだった。
本来ならば、アルトリアを騎士として従えるマスターのベルファストは、自身がメイドであるとして、また、自らが仕えている『ロイヤル』の祖の一つとも言えるブリテンの王であるアルトリアを目にした瞬間に、その膝をついて、忠誠を捧げたのである。
それは、彼女が『兵器』であり、『メイド』であるからだ。
「お褒めにいただき、光栄です」
主からの称賛には謙遜ではなく、謝意を――それがベルファストの流儀であった。
また、お茶という文化は、日本も欧米も中華からの輸入である。
その中華においても時代に応じて団茶に抹茶、煎茶と様々な形で移り変わっていったが、往々にして中華では日常に含まれているものだ。
対して、日本においての『お茶』の文化でイメージするものが、安土桃山時代の茶聖である千利休が完成させた、『侘び寂び』に代表される『不完全性の美』であることを突き詰める『特別な一時』である。
一方で、中華から16世紀から伝わったとされる欧米における『お茶』の文化は、一見では華美であるために、『侘び寂び』と対象的なものに思えるだろう。
だがしかし、ただ豪奢なだけのもので固めた茶会を『下品』とみなす価値観には、やはり日本が大事とする『不完全性の美』と似通ったものがあるだろう。
完全そのものに価値を覚えるのではなく、そこにあるものが完全に至ろうとする在り方を見出すことにこそ美しさがあるという、欧米においてはラテン語の格言として残されている、『Magna voluisse magnum.(偉大なことを欲したことこそが偉大なのだ)』の考えにも通ずる、不完全な人間だからこそ洋の東西にかかわらず共通して抱いてしまう、ロマンチシズムなのだろう。
ベルファストが己の主であるアルトリアをもてなすために拓いた茶会は、まさしくその欧米の茶における究極と呼べるものであった。
華やかな空間を演出しつつも、決してケバケバしい醜悪な美的センスを一切持たない、洗練されたひと時なのである。
「約束しましょう、ベルファスト。マスターでありながらも従者として尽くしてくれる貴方の忠義に応えるため、我が聖槍と身命を賭して聖杯を手にしましょう」
それでいて、生前の時代には存在しないその『もてなし』を受けているアルトリアが取る礼節(マナー)は、ベルファストが知るものと比べると幾つか異なる部分があるだろう。
しかし、アルトリアが放つ圧倒的な王気(オーラ)と、まるで鉄柱が体に打ち込まれているかのように微動だにしない姿勢によって、決して下品さが存在しないものだった。
アルトリア・ペンドラゴンは英霊の座から召喚されたサーヴァントである。
かつて、冬木の聖杯戦争に召喚されたセイバーのアルトリアは世界との契約で死の間際から召喚された英雄であったが、このアルトリアは別の方法で『答え』を見つけた。
カルデアに召喚された聖槍の騎士王がそうであったように、世界の美しさを知っている英雄である。
その美しさを知っているアルトリアは英霊として世界を守ろうとし、また、自身を信仰するモノたちの声に応える騎士王なのだ。
ブリテンをルーツとする『ロイヤル』のKAN-SENであるベルファストの呼び声に応えたのもまた、騎士王の気高き精神が故である。
「聖杯など私には重要ではありません、御主人様。我が願いは、貴方様が存在しているという時点ですでに叶っているのですから。
『騎士の中の騎士』であり、『王の中の王』でもあらせられるブリテンの騎士王が、卑小なメイドに過ぎない私の呼び声に応えてくださった――――恐れ多くも、これ以上の栄誉などありません」
そんな偉大なる騎士王が自身の召喚に応じたという事実に、ベルファストという『メイド』は歓喜に震えた。
KAN-SENという特殊な存在であるベルファストの魂には、『メイド』としての在り方が刻まれている。
ベルファストは自身に対して、偉大なる主に仕えるに相応しい、一部の隙もない従者であるという一種の矜持のようなものを抱いていた。
その矜持が、KAN-SENとして当たり前に求める『平和』とは別に『完全無欠の御主人様』というものを無意識下にも常に求めている。
ベルファストが人生を捧げるに値する、美しく、気高く、強く、華麗な『御主人様』だ。
他者がその内実を聞き取れば聞き取るほどに、呆れの色が籠もったため息とともに『そのような人物が実際にいるはずがない』と漏らしてしまうほどに、ベルファストが御主人様に求める理想は高い。
今この時にその理想に満たずとも、その理想の御主人様になれる素質がある者ならば、ベルファスト自身が奉仕することで、その求めてやまないる完璧な主を『育て上げよう』としている節すらあるほどだ。
だが、このアルトリア・ペンドラゴンはそんな『資質のある主』とは違う。
アルトリアこそが『すでに完成された』、『完璧な御主人様』なのだ。
ベルファストが誘導する必要も何もない、そんな不敬な真似を考える必要すらない。
騎士王は髪の毛の一本一本が、その指先の動きが、ふと漏れる吐息が、その全てが『完全』なのだ。
『ブリテンに危機が迫りしとき、騎士王は眠りから目覚める』という逸話が、単なるブリテンという国の古めかしいプロパガンダでもナショナリズムではなく、騎士王を知る者たちから自然と漏れ出していった一種の『事実』なのだということがはっきりと分かるほどの威容。
その王気(オーラ)に触れるだけで、ベルファストの心はこれ以上ないほどに昂ぶってしまう。
「どうぞ、このベルファストに貴方のお側に仕える栄光を賜りください」
ベルファストという、どうしようもないほどの『奉仕欲求』を抱えた存在がその姿だけで満たされてしまうほどの存在、それがアルトリア・ペンドラゴンなのだ。
サーヴァントと同等の戦闘力を持つKAN-SENの中でも実力者であるベルファスト。
大英雄たちの中でも最上位の存在、『トップ・サーヴァント』と呼ぶに相応しいアルトリア・ペンドラゴン。
この二人の主従は、間違いなく聖杯戦争においては『優勝候補』と呼ぶに相応しい主従であっただろう。
■
だが、ベルファストの忠義は。/だが、アルトリアの気高さは。
全て、滑稽なものへと堕ちていく。
これは、聖杯戦争などではない。
これは、性杯戦争。
薄汚れて爛れた欲望が、男にとってだけ都合の良い欲望が、世界を歪めて作り上げたモノ。
悲劇ではない。
英雄譚ではない。
喜劇ですらない。
これは、単なるポルノショー。
美しい女たちが、男たちの毒牙にかかるために集められただけの、どうしようもない醜悪なショーなのだ。
ベルファストとアルトリア・ペンドラゴンが、男の欲望によってその心すらも都合よく捻じ曲げられるまで。
あと――――。
(続)
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