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Skebの依頼で書かせてもらいました。

『自分を抱くに相応しい男は自分を倒した男のみだ』という蛮族ロマンチストなスカサハは結局自分を倒せる男と巡り会えなかったため、いかにもケルト女なくせに処女の設定です。

よろしくお願いします。


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 太陽が登りだしたとしても空が突然明るくなるわけではないように、影の国の女王――『スカサハ』が意識を取り戻した際にも、その感覚を取り戻すにも順序というものが存在した。

 スカサハが最初に取り戻した感覚は、『触覚』である。

 不快感を煽るヌルヌルとした粘液が体中にべっとりと纏わりついており、さらにその上から太くて長い柔らかな肉がスカサハの美しい媚体を撫で回すように蠢いていることに気づく。

 その全てが不快な感触に意識が刺激されていくことで、触覚に続いて取り戻した感覚もある。

 それが『聴覚』と『嗅覚』の二つだった。

 鼻をつくような醜悪な匂い、例えるならば羊の乳を腐敗させたかのような、スカサハほどの強烈な自我を持つ人間でなければ思わず嘔吐をしてしまいそうになる、人間の生理的嫌悪感を刺激してくる耐え難い悪臭である。

 一方で、取り戻した聴覚は常に『ズルズル』という何かが這い回っている音と『ドクドク』という何かが収縮している音を一定期間を置いて響いてくるのだ。

 そして、最後に取り戻したものは『視覚』である。

 光の少ない薄暗い空間で、赤黒い肉壁が周囲に広がっていることを視認することが出来たのだ。


「ここは……」


 パサパサと乾いた口内の筋肉を動かして、思わずその言葉を漏らしてしまう。

 今、スカサハは『触手』によって拘束されていた。

 手足の先を包む肉の感触が不快でたまらないし、その包み込むような感触とはまた異なるズルズルと触手が這う感覚も耐え難い気色の悪さを与えてくる。

 取り戻した視覚によって、細部は把握できないものの自分が複数の触手によって『肉の檻』のようなものに囚われていることがわかってしまう。

 体を張っている細長い触手が体にまとわりつきつつ、その細長い触手を何本も束ねたような太い触手によって手と脚を強く締め付けられて、吊るされるように拘束されてしまっているのだ。

 スカサハは動かせる範囲で体を動かしてみるものの、その触手はしなやかな筋肉の動きとともに捕縛対象の体を痛いほどに締め付けて拘束し続けてきて、脱出は不可能であると言外に伝えてくるのである。


「ちっ、情けない。このような無様を晒すとは……!」


 その悪臭と感触の不快さ、そして、この異常な状況を資格情報で把握することによって、意識を失う前の出来事を思い出した。

 英雄豪傑たちの師匠でもある影の国の女王スカサハにとって、それは羞恥に値する敗北である。


 スカサハはカルデアのマスターとともに特異点に訪れ、聖杯をリソースにして顕現した『異界ダンジョン』とでも呼ぶべき空間を攻略しようとして挑み、そして、マスターを守ろうとした不覚を取ったのであった。

 神魔を殺し、人獣を穿ち、そのどちらでもない不可思議なものまで滅し続けてしまったことで、スカサハはついにこの世界に居られなくなって、世界の裏側に流れ着いてしまった。

 影の国というもの自体がこの世のものではなくなり、民草も臣下も居ない虚構の城の中で孤独な女王として君臨したスカサハには、『仲間』という概念が非常に希薄になってしまっていたのである。

 側にいるものを守ろうとする動きを最後に行ったのは、もはや記憶も薄くなるほどに遠い昔のことだ。

 単騎駆としては無双の槍兵まで磨かれたスカサハだが、その代償として集団戦の技量を当然として貶してしまっていたのである。

 そのブランクによって、かつて弟子と配下の兵を率いて戦っていた頃とは異なってスムーズなものにならなかったため、その僅かな隙をつかれて意識を奪われてしまい、このような虜囚の辱めを受けることとなったという次第なのだ。


『ようやくお目覚めかな、ランサーのサーヴァント』

「ッ!」


 スカサハが現状の把握をちょうど終えた瞬間を見計らったように、くぐもった声が響き渡る。

 耳の奥に粘っこい体液を流し込まれているような、聞くだけで不快さを煽るような、耐え難いほどにねっとりとした低い声だった。

 例えるならば、顔立ちの整った美男子が放つような爽やかな美声とは程遠い、女ならば誰もが嫌悪してしまう小汚い中年男性が放つような濁りに濁った汚い声である。


 周囲を素早く見渡すと、肉壁の中の一角に分厚いたらこ唇で黄色く汚れた歯が『生えている』ことが薄暗闇の中でも視認することが出来た。

 その口の生えた肉壁がズズズッと音を立てながら盛り上がっていき、新たな触手としてスカサハの眼前まで伸びてきたのである。

 その口だけが生えた赤黒い触手は、醜い口の上に、と言っても少々左に寄れた場所に鼻を生やし、次にその鼻の上、これもやはり高さのズレた位置に厚ぼったいまぶたと細い眼球もまた生やしていった。それも二つではなく、三つもだ。

 こうして、まるで、成功はしていないものの失敗とも言えない状態の『福笑い』のような、なんとも醜悪さに満ちた、『異形』の顔立ちがその触手に創られたのである。

 これがこの触手生物の、ひとまずの『顔』なのだろう。

 まるでナメクジのようにドロドロとした粘液にまみれている、手で触れればぬチャリとした感触とともに自然と指が滑ってしまいそうな気味の悪さを携えたその触手は、その分厚い唇をぐちゃりと歪ませて言葉を発していくのだった。


『ぐ、ぐふふっ……凄まじい霊基だ。聖杯を取り込んだワシでも焼き払われてしまいそうな、まさしく存在としての格が違う、選ばれた者だけが持てる力だ。ワシの体内に取り込めたのは僥倖というほかないなぁ……くははっ』

「臭い息を吹きかけるな、不快でたまらん」


 『はぁぁ』と、濁った色が見えそうなほどの悪臭に満ちた息がスカサハの高い鼻梁へと届いてくる。

 傲慢とさえ言えるほどの高いプライドとそれに見合った実力を持つスカサハは、上位者として当たり前のようにその悪臭に眉をしかめつつも、毅然とした言葉で応えた。

 本音を言ってしまえば、ぬめりを帯びたこの触手に体中を余すことなく這い回られている不快感は吐き気さえ催すほどである。

 それが気持ち悪いだけならばまだしも、このヌメヌメとした触手が放つ体液は鼻が曲がりそうになるほどの悪臭を放っているために、それこそ気の弱い人間ならば視覚的な気持ち悪さと触覚的な不快感と合わせて気を失ってしまっているだろう。

 そんな風に生理的な嫌悪感を刺激してくる上に、特異点を消滅させるために訪れたカルデアの一員であるスカサハへと強い敵意を抱いているであろうこの触手生物の体内に四肢を拘束されて取り込まれてしまった。

 そんな絶体絶命のピンチだというのに、少なくとも表面上のスカサハは生来の気の強さを隠そうともしない、なんとも堂々とした態度を取っているのである。


「で、どうするつもりだ? 私をなぶり楽しむのか? 低級な魔に相応しい短絡的で享楽的な行動だ。敵が儂とマスターだけだと決めつけている、己に都合のいい物語しか想像できない獣の限界を感じさせる行動と言えるな」


 スカサハは死を恐れない。

 このような雑魚が殺せるわけがないと諦めている。

 こんな屈辱的な状況に陥って、自分の望む蕩けるように甘美な敗北とは程遠いものでもあっても、スカサハは自身が『勝ててしまう』という諦観にも似た自信を持っているのだ。

 いくら特異点を生み出すほどの魔力を誇る聖杯というリソースを得ていようとも、この程度の下級な触手生物相手に敗北を味わわされるのならば、スカサハの過ごしてきた千年を優に超える絶望の日々はとうの昔に終わっていたはずなのである。

 しかし、スカサハ知らない。



 ――――当たり前の日々が終わる時とは、得てして許し難いほどにあっさりと幕を引くということを。



『妬ましいなぁ、恨めしいなぁ。

 貴様のような美しく強き者は、ワシのような浅ましくも哀れな、ぐひっ、雑魚のことなど欠片も意識の内に入れない。

 嫉ましいなぁ、怨めしいなぁ。

 だからこそ、ワシは貴様のようなものが、ぐふ、ぐふふふっ! ワシという穢らわしく小さきもので、汚して貶したくなるのだ!』

「なっ!?」


 びりびりびりぃいぃっ!


 戦士に相応しい簡素な暗色で統一されながらも、肩当てや頭飾りなどから女王の威厳を示すケルト戦士の装束が容易く破られていく。

 この戦闘装束は相応の神秘と実力を持たなければ傷ひとつつけることさえ出来ないものなのだが、触手が放つ粘液は衣服だけを溶かす神秘を所持していることと、聖杯を体内に取り込んでいることが合わさって、本来ならば低級な魔性に過ぎないこの触手生物であってもスカサハの戦闘装束をビリビリと破り捨てることが出来るのである。

 戦闘装束を触手に出来た口の分厚い唇で挟み込み、そこから思い切り触手が動くことで『乳房』と『股間』の部分破れていき、スカサハの艷やかで張りのある真っ白な肌が露出されていった。


「くっ……なんという屈辱……!」


 その行為が何を意味しているのか、スカサハだって分からないわけではない。

 『戦士』としてではなく『女』として屈辱を与えられようとしているのだ。

 肉の触手によって拘束されてしまい、女の証といえる乳房と秘処が晒されているのだからわからないわけがない。

 どんな聖剣や魔槍、天弓に戦杖を喉に突きつけられても怯えを見せることもなく、むしろ不敵な笑みを浮かべながら危機を跳ね除けてきた女傑、スカサハの顔が歪む。


『クハ、クハハ……! 怯えておるのぉ、嫌っておるのぉ。貴様ほどの女傑が、ワシのような小物に良いようにされて悔しいのだろう。それに、くは、っはは……なによりも……れろれろぉ、とな♪』

「ぅ……!」


 その表情の歪みを見た触手生物は嬉しそうに唇を歪めつつ、その分厚い唇を粘着質な体液でてらてらと照らしながら、その下から長過ぎる太い舌を『れろぉぉり』と不快感を煽るほどに気味の悪い動きで飛び出させたのだ。

 それを見て、スカサハの表情があからさまなほどに曇る。

 その表情の変化は反射的な行動だった。

 これがただの醜男が相手ならば、スカサハは冷徹な仮面を貼り付けたままでいられただろうが、この触手生物はとにかく人として生理的嫌悪感を刺激してくる。

 そのため、いくらスカサハであっても冷静でいるために無表情を維持するという、戦士として当然持ち合わせている『不利な状況でも無表情を保つ技術』を維持することが出来ないのだ。


『ぐはは……かわいいものよな、英霊よっ! 貴様……まさか、唇すら清らかな生娘だとはなぁ』

「黙れっ!」


 自身が性的な経験に未熟な乙女だと見抜かれた羞恥で、スカサハは先程まで維持していた『冷徹な女王』としての表情が崩れ去ってしまう。

 貞操観念において奔放なケルトの戦士たちの中にあって、影の国の女王であるスカサハは非常に貞淑な女であった――――というわけではない。

 ひとえに、スカサハは『ロマンチスト』であったのだ。

 夢見がちな乙女が白馬に乗った王子様が絢爛豪華なお城へと導いてくれると無双するように、浪漫を求める戦士のスカサハは、優れた武勇と秀でた叡智と高潔なる矜持を持って自身をねじ伏せる強靭な戦士に己の全てを奪われるという、戦士ならば誰もが夢見る『清々しい敗北』を夢に見て――――ついには、影の国の女王であるスカサハを超える戦士は現れなかった。

 あるいは、光の御子と謳われたケルトの大英雄――『クー・フーリン』ならばと夢想した時期もあったが、かの戦士がどれだけ疾走しても、スカサハに甘美な敗北を与えることは出来なかったのである。


「ちっ、下衆めっ……! 甚振ることに楽しみ覚えるなど、戦士の風上にも置けんぞ!」

『その手の矜持だとか気高さだとか、戦士ではないワシには縁遠いものでなぁ』


 そうだ。

 そんなスカサハにとって理想の戦士の対極にあるような存在が、この触手生物である。

 人質を取ることも情けなく背中を晒して逃げることも、口八丁で煙に巻こうとすることも、そして、戦士でないものを利用することもなんの躊躇いも覚えない卑劣漢、それがスカサハの記憶の中にあるこの特異点の中心となった悍ましい怪物の姿だ。

 ただ醜悪だからとか、悍ましいかからだとか、そんな理由で嫌悪をしているのではない。

 見た目はもちろん、この触手生物は魂まで根こそぎ醜いからこそ、スカサハという気高き戦士は相容れれることが出来ないと感じているのだ。


『魔槍を操る美しき戦士は、唇まで艶々と、赤々と美しいのぉ。ぐひ、こ、これがワシのぬるりとした粘液で汚れれば、さて、どうなるか……』

「ぅっぅっっ!!」


 そんな触手生物は、その不細工な唇を三日月に歪ませ、不自然な形で並んだ三つの目を不快感を与える形で細めていく。

 その際に、唇から伸ばした舌を蠢かせて、スカサハの美しい唇に触れない程度の距離で何度も蠢かせていくことで、スカサハの不快感と恐怖感を煽っていくのだ。


「や、やめろっ……!」


 その気味の悪さに、ついにスカサハの弱気の虫が泣き出してしまう。

 スカサハは強い。

 どんな敵をもその御業と魔槍で穿ち、どんな英雄をもその智慧と経験で打ちのめして屈服させてきたほどである。

 だからこそ、スカサハの胸のうちにある理想はどんどんと高くなっていってしまった。

 女としてのスカサハには、このような人ですらない気持ち悪い触手生物に、その『初めての唇』を姥れることが耐えられないのである。


「やめろ、その唇を下げろっ! やめ、やめ、やめてくれ――――んぐぅうぅっ!?」

『じゅるるっ! じゅる、れろぉぉ、ちゅぅぅっっ! ちゅぱっ、むちゅぅぅっ♪』


 『やめろ』という『拒絶』が、『やめてくれ』という『懇願』に変わったまさにその瞬間だった。

 この仮面が本格的に崩れた際を見計らって、この身も心も醜い触手生物はスカサハの唇を奪ったのである。

 しかも、触手生物は人ではない。

 その口に見えるものも、舌に見えるものも、唾液に見えるものも、その全てがスカサハの知る人間的な器官とは異なる法則を持って動いているのだ。


(なんだ、これはっ!? し、舌がっ、舌がザラザラとしたブラシで撫でられている!? 舌だけじゃない、喉を無理やり液体が通り、私の体の中から耐え難い悪臭が放ってきているではないか! く、唇も、わずかに振動しつづけていて、か、下腹部が熱くぅぅっぅ!?)


 触手の口内から伸びた舌のような物体は、表面が無数のブラシとなっており、スカサハの赤い舌を何度も何度も激しく擦っていく。

 秘処や乳首ほど印象深くはないだろうが、舌もまた一つの性感帯である。

 キスも未経験なスカサハがその舌を性的に開発され、その快感に慣れるような脳をしていない以上、送り込まれる未知の快感はスカサハの理性を蕩けさせていく。

 さらに、触手から送り込まれる粘度たっぷりの体液もまた女の心を殺す毒なのである。

 強引に喉を通って胃へと落ちていった唾液は女の全身へと巡り、その体の性感を異常なほどに上昇させる媚薬になるのだ。

 言うなれば、『媚毒』とでも言うべきか。

 分厚い唇自身もまた微かではあるが振動しており相手の唇へと快感を与えていくため、スカサハは最悪と表現してもいいファーストキスを味わいつつも、その肉体は強い性的な快感を覚えるという屈辱的な状況に陥っていたのである。


『ぷはっ……くくく、純血の乙女の唇は、売女とは比べ物にならん初々しい酸味があるものよなぁ♪』

「くぅ、ぅぅぅっ……殺す、殺してやるぞ……!」

『おぉ、怖い怖い。しかし、殺してやるとは呑気なものだ。貴様ほどの強者を、このワシが五体満足で返すと思っておるとはな。まさか、唇を奪ったからハイ終わりと開放するとでも思っているのか? その唇を犯したように、貴様を取り込むついでに、たっぷりとその尊厳を犯し抜いてやろう♪』

「ぅっ……!」


 長いキスが終わり、相変わらず出来の悪い福笑いさながらにパーツの配置がおかしい触手の顔を睨みつけていく。

 もちろん、触手生物が言ったようにそれはキスが終わっただけだ。

 しかも、スカサハを取り込む『前に』ではなく、スカサハを取り込む『ついでに』と触手生物は口に舌ではないか。

 この不快という言葉さえ生ぬるいキスであっても、スカサハの体と心と魂に害を成す『侵略行為』であったというわけだ。


『これがわかるか? これは、ワシの睾丸……いや、剥き出しの精巣だ。これを、貴様に注ぎ込む』

「なっ、こ、こんなものが……!?」


 肉壁から果実さながらに生えた大きな二つの球体が、スカサハの眼前でぶらんぶらんと揺れていく。

 これは触手生物の精巣である。

 大きい、片方の睾丸だけでバスケットボール大はある。

 スカサハの小さな美人顔よりも遥かに大きいほどの巨大さだった。

 赤黒い球体は中身がずっしりと溜まっていることがひと目でわかるように、たぷたぷと重々しい動きをしているではないか。

 それは性機能の増強さを嫌でもスカサハに感じ取らせ、そして、性機能の強さはすなわち性欲の強さにも等しい。

 そして、この触手生物の美的感覚はスカサハの美貌を事あるごとに褒め称えていたことからもわかるように、人間に良く似通っている。

 スカサハにとっての地獄が、始まろうとしていた。


『一気に行くぞ、その気丈さがいつまで持つか……ぐひ、ぐひひっ! 楽しみだのぉ!』

「むぐぅぅっっ!? んぐぅっぅぅ、おぉっ!? ふぎいぃぃっ!?」

『ぐふふっ! 女王様――いや、お姫様の唇をまだまだ味わわせてもらおうか♪』


 まず、犯されたものは唇だ。

 触手である以上はその口内どころか喉や胃まで犯すことが出来るというのに、口内の奥まで入り込まずに不細工な唇で激しくキスを行うことで、スカサハの精神をどんどんと追い込んでいくのである。


「くそっ、くそぉぉ――――ぉぉっっっぉお!?」


 スカサハの目から、ついに涙が溢れていく。

 その人生の中で、心惹かれた勇士は存在した。

 例えばクー・フーリンであったり、カルデアのマスターであったり、どれも成長すれば素晴らしい戦士となるだろうと楽しみになるような爽快な男たちである。

 いずれ自分を打ち倒すことでスカサハを戦利品のように娶っていき、己の『初めて』を奪ってくれることもあるかもしれないと、物騒でありながらも思わず赤面してしまうような恥ずかしい妄想をしてしまったことも一度や二度ではない。

 そんな乙女としての部分を蹂躙される屈辱に、衝撃に、スカサハの心の柔らかい部分が悲鳴をあげてしまったのだ。

 もちろん、この性格の悪い触手生物がそんなスカサハを顧みるわけもない。

 むしろ、より強烈な責めを開始していくのだった。


『くは、くはは! ほぅれ、まだまだ終わらんぞぉ!』


 一つ一つを見せつけるように順番に犯していくことも、相手によっては効果的な責めになるだろう。

 だが、ファーストキスが屈辱的な喪失をして強いショックを受けていると言えども、スカサハは人類史に名を残すほどの英雄である。

 間髪をいれずに責め立てることこそが重要であろうと、品性下劣な小物であるものの抜け目ない悪辣な生き物でもある触手生物は見抜いたのだ。


 そうして、肉壁の中から無数の触手が生えてくる。

 一本、二本、三本……片手の数を超える触手の群れだった。

 その中には目の前でスカサハを言葉でいたぶり、スカサハが密かに思い描いていた物騒ではあるが浪漫に満ちたファーストキスの夢を、最悪の形で汚した顔つき触手のように唇がついた触手が何本も存在しているではないか。

 そんな触手の群れがスカサハの体を侵さんとばかりに襲いかかっていくのだ。


「ぉおぉ、ぉぉっ! む、胸が破裂、破裂する!? こ、これは、ぼ、母乳、なぜ、ふぎぃぃっぃぃ!?!?」


 二本の太い触手が、蕾が花咲くように先端が開いていき、ディープキスで送り込まれた媚毒によってビンビンに勃起していた乳首も含めて乳房を包み込んだのである。

 スカサハの豊満な胸をすっぽりと覆い隠すほどに開いた触手の中は、見るだけで恐怖を誘うような無数の小さな触手がブラシのように並んでいるではないか。

 想像の通り、その触手が乳首も乳輪も、鍛えられた肉体の中で数少ない柔らかな胸の媚肉をものすごい速度で振動して刺激をしていくのだ。

 そこからさらに触手ブラシとは異なる、細く長い、針のような触手が乳首へと体液、毒にも等しい媚薬である『媚毒』を体内へと注射の容量で注入していったのである。

 その内容は純粋な肉体の場合は身体機能を改造し、霊体の場合は霊基を魔術的に改竄することで、『母乳体質』へと変貌させる恐るべき昨日を持っているのだ。


『なんとも魅惑的な髪だ。甘露、甘露、くくくっ!』


 責めは唇と乳房だけでは終わらない。

 スカサハの最大の特徴と言っても過言ではない、その長く伸びた髪にも五本ほどの触手が伸びていき、そのシルクさながらの心地よい手触りをした美髪である。

 星と月の光だけが照らす夜の空を連想させる暗い赤紫の色をした髪だ。

 お尻を越えて太腿にも軽々と届くほどの長い髪だ。

 長ければ長いほどに手入れも大変となり、その乱れというものが目立つようになってしまうものだが、スカサハの髪には一つの枝毛もなければ、その一本一本が意思を持っているかのようにまっすぐに伸びている。

 見た目だけの美しさではない。

 さらさらと指を通せばそれだけで背筋にゾクゾクとした快感が走るような、もはや魔性と呼ぶに相応しい髪は、多くの髪結いの職人が『一度でいいからその髪に櫛を通させてくれ』と懇願してしまうほどの魅力を携えていた。

 どんなシルクよりも艷やかで滑らかで、人の心を掴んで離さない美髪

 女王であるスカサハよりその髪に触れることを許可されるだけでも、普通の男ならば強烈な快楽を覚えて永遠の誉れにしていたであろう、それ自体が一つの宝と呼べるほどである。


「むぎゅぅ、ふぎゅぅぅぅっ……んじゅる、んぅぅぅ~~!」


 だが、そんな髪も唇を貪られ乳房を母乳体質に改造されながら乱雑に犯されていってしまう。

 ヌルヌルとした体液を纏っている触手が何度も這うことで、粘液が髪に移ってしまうことで痛みこそしないものの髪と髪が結びついてしまい、流れるような長い黒髪が乱されるのだ。

 中には、今ディープキスをしている触手のように口の付いた触手によって口に含まれてしまっている髪もあったほどである。

 触手を男根に見立てて髪に擦りつけていく髪コキと、まるでその髪を食うことで亜さを捨てて美しくなろうとしているかのような髪食みという二つの行動で、スカサハの美しさの象徴であった長い髪が同時に穢されていってしまう。

 その髪を穢していく凌辱は、ある意味で戦闘装束をビリビリと破られ、清純な唇を汚されてしまう以上に、『スカサハ』という個人の『敗北』を連想させる行為と言えただろう。


『むっ、このマンコの防御は……! ちっ、なんとつまらぬことを。女王様はよほどの締まり屋のようだな』

「ふぅぅぅっっ……! うぎゅぅぅっぅ、おぉぉ、ふぎゅぅぅっぅっ……!」

『魔術で概念的に貞操を守っておるのか。ピンチを察して敗北の瞬間に急遽行ったというよりも、普段から貞操帯代わりにしていると言ったところかの。全く、自身の貞操を高く見積もりすぎた、高慢な女らしい処置だなぁ……!』


 唇、胸、髪に合わせて、極めつけと言わんばかりに女性器を犯そうとした触手は不可思議な力で奥まで阻まれることに気づいた。

 これは臍の下、下腹部に『原初のルーン』として高度な言語魔術を刻まれているためであり、その影響でルーン魔術を解析して解除するか、あるいはスカサハに認められてそのルーン魔術を解除するかなどの方法を取らなければ膣内へと男性器を挿入することが出来ないのである。

 今まで機嫌よく、弾んだ声でスカサハを甚振っていた肉触手の声が曇ってしまう。


『まあ、良い。所詮は時間の問題だ♪』


 だが、それも問題はないと言わんばかりに、スカサハへの凌辱を続けていくのだった。

 そもそも肉触手としての体力や精力というものが人間とは異なる。



 そんな無尽蔵とも言える体力と魔力と精力を活かして、その触手生物がスカサハを犯しだして、数時間も経とうとしていた。



「はぅぅ……あぁぁ……ふぅぅぅ~~……くぅぅっ! な、なんだ、これはぁ……!」

『ほうほう、中々時間がかかったようだのぉ。さすがは英雄と呼ばれるほどの女だ』


 そして、ついにスカサハの体に本格的な異常が襲いかかってきたのである。

 触手によって何度も犯され、母乳体質にさえ改竄されたスカサハはその触手の体液を何度となく取り込み、何度となく注入されてきた。 

 その成果が現れたのである。

 一言で言うならば、とにかく肌の感覚が鋭敏になっているのだ。

 ヌルヌルとした粘液を纏った触手が体を這い回っていることに強い嫌悪感を覚えていたというのに、その嫌悪感と同時にゾクゾクと背筋を震わすほどの強烈な快感を覚えてしまっているではないか。


(快感が、強くなっているっ……! これは恐らく媚毒の効果だろう。だが、それよりも、なんだこれは……悪臭が消えて……むしろ、芳しい匂いが漂っている? この触手が戦略を変えたのか? 虐げた後は甘やかすというお決まりのパターンで責めてきていると見るべきか……)

『匂いなど何も変わっておらんぞ~♪』


 触手生物はスカサハの思考を呼んだように、体液と同じぐらいヌチャリとした不快な声を放つ。

 言葉通り、この体液は何も変わっていない。

 変わったものはスカサハの、『嗅覚』と『味覚』である。


『貴様はワシの体に適合しているのだよ。性的な感度が向上したというのも間違ってはいないが、正確に言えば、それ以上にワシの肉触手のヌメヌメとした感触に快感を覚える性癖に肉体が改造されているのだ。そして、嗅覚はワシの匂いこそを魅力的なものと感じるようになり、味覚はワシの体液を求めることに甘美な快感を覚えることでワシを受け入れるように変わってしまったのだ』

「なっ!? き、貴様、どれだけ私を辱めれば気が済むのだ!」

『おぉ、怖い怖い。だが、それだけ叫ぶ余裕があるのかな? 貴様、体の変貌に気づいても、もっと致命的な変化には気づいていないようだのぉ』


 ゾクリ、と。

 快感でも嫌悪でもない、恐怖の感覚がスカサハの全身へと襲いかかる。

 もはや引き戻せない、いや、すでに喪われているものに、スカサハはやっと予感を覚えたのだ。

 それを見抜いた触手生物は、あの気味の悪い目を更に細めて、スカサハを絶望の淵へと貶める言葉を口にしていく。


『ワシの体液の原動力は何だと思う? ク、クハハ、貴様の魔力そのものよ! 貴様の魔力を吸い取り動力として、貴様の体を書き換えていく! ワシを殺すと言ったのぉ。無理な話よ、今の貴様は肉体も魔力も平凡な女そのもの! ククク、気づいてもおらんようだなぁ……口内から入ったワシの体液、乳首から注入されるワシの体液、髪に刷り込まれたワシの体液! その全てが貴様の脳にも影響を及ぼし、貴様が持つ戦うための叡智さえ奪っているということに!』

「き、貴様あぁぁぁ!!!」

『くは、ぐひ、ぐひひいぃぃ! ふははははっ! 遅い遅い、怒りが遅すぎる! もう貴様は……終わったのだよ!』


 全てを、今まで生きてきた積み上げてきた、スカサハという存在そのものとも言える戦うための全てを奪われてしまった。

 スカサハの怒号が鳴り響く中で、その怒りの声こそが何よりもの快感だと言わんばかりにくぐもった醜い笑い声を楽しそうに上げていくのである。

 そして、そのままスカサハを弄ぶように触手生物としか経験がない初々しい唇をディープキスをねっとりと行っていきながら、それでいて髪に纏わりついていた触手たちは激しく脈動していく。

 射精が近づいているのだ。


『出すぞぉ~、出してやるぞぉ~。すっかりヌルヌルに汚れた、それでもなお美しきこの髪をワシが吐精して徹底的に穢してやろう。喉も同様だ。貴様の吐息がワシの匂いと同じになるほどに、どんな男が貴様に発情しても本能的にワシのものだと判断して諦めるような、そんな風に変えてやろう!』

「殺すっ! 貴様は絶対に殺してやる! 私の全てを奪い去ったというが、この殺意だけは奪い取れていないようだな! この影の国の女王スカサハを愚弄した罪は、この世のどんな罪よりも重いということを知るが良いっ!」

『むほほほっ、この情けない怒りこそがワシの何よりの快感よ。聖杯さえなければ、ワシのような下級の魔など槍の一振りで滅せられる女が、何も出来ずに言葉で悪態をつくしか出来んなど……本当に、貴様はワシの欲望を煽るのが上手いのぉ!

 ほぉ~れ、射精すぞぉ。射精すぞぉ~♪』

「くぅぅ、ぅぅぅ、ぅぅぅ~~~!」


 スカサハを言葉でなぶりながら、それでいて唇へのディープキスを続けていく。

 射精予告を行うことで、スカサハの目から涙が溢れた。

 自身には何もすることは出来ないとはっきりと分かってしまったのである。

 『まな板の上の鯉』という言葉があるが、まさしくその言葉通りの状況だった。

 自分が唯一自由となる言葉で抗おうとも、スカサハの美しい声さえも触手生物は快感に変えて恍惚としたように目を細めるだけでなんの抵抗にもなっていない。

 そうして、無数の触手が同時に大きく脈動していったのだ。


『よぉし、受け取れ――スカサハっ!』


 どびゅるるるっ! びゅるるるっ! どぶびゅる! ぶびゅぴゅっ! どぶぶぶっ! びゅぴゅるるるぅっ!


「んぐぉぉっぉっっぉぉぉぉっ!!?」


 無数の触手から大量の精液が吐き出されていく。

 そう、精液だ。

 今までのものが強い粘質を持っているとは言え、唾液や汗を連想とさせる体液だったのだが、その触手の先端の割れ目から出たものは間違いなく精液なのである。

 スカサハの眼前に連れ下がっていた、片方だけでもバスケットボールよりも大きな睾丸もまた激しく痙攣をしていることから、その吐き出されている精液が体にかかる感触だけでなく視覚でもはっきりとわかってしまうほどだ。

 シャワーのように精液がスカサハの体へと襲いかかっていくことで、冷徹なる女王の証であった髪飾りも、豪傑たる戦士の証であった肩当ても、全てが吐精されたことで穢されていく。

 もちろん、汚されるのはその装束だけではない。

 戦士の証である多くの敵と貫き穿ってきたそのしなやかな肉体も、女王の証である多くの男の羨望を集めてきたくせ毛一つない艷やかな美髪も、黄ばんだ白濁色の精液に穢されたのだ。


「くぅ……はぁぁ、ふぅぅ……ぅぅっ……!」

『くはは。もちろん、ここでは終わらんぞぉ』


 『その人間の色に染められる』という表現があるが、文字通りスカサハは触手生物の色の薄汚い色に染められてしまう。

 だが、スカサハは怒りと羞恥、哀しみで相混ぜになった感情を処理する間もなく、触手生物は新たな侵食を進めていくのだった。


『それ、口の中に入ったものを嚥下せよ。ゴクリと喉を鳴らし、髪についたものも拭ってやるから、ワシの精液をその胃へと流し込むのだ。もちろん、味をしっかりと楽しんでからな♪』

「なにをして……んぐぅ!? ご、ごくっ! ごくごくっ! ぐちゅ、ぐちゅぐちゅぅっ! んぐぅぅ~~……ごくりっ!?」


 触手生物は汚く粘ついた精液を飲むように促すものの、スカサハは当然拒絶をする。

 嫌悪する、いや、怨嗟する相手の触手生物の精液を口にするなど出来るわけがないのだから。

 口内射精を行って思わず胃に流れてしまったものがあるのだが、少なくとも自分の意志で呑み込むなど言語道断だ。

 だというのに、スカサハの意思に反して口と喉が動いてしまう。

 味覚と嗅覚を改造されてしまっているために悪臭や苦い味などは全く感じないことだけが幸いだが、そんなことでスカサハの中にある戸惑いと怒りが消えるわけではない。


『ワシの体液には摂取させた相手の肉体を変貌させる力があるが、この大きな睾丸に詰まった精液はその体液の数百倍の効果を発揮するのだ。その精液を流し込まれ、肌に刷り込まれた貴様の体はもはやワシのおもちゃよ。ワシにとって都合のいい、ワシを楽しませるためだけのお人形さんというわけじゃ♪』

「あっ、あぁぁっ……」


 スカサハに襲いかかったものは絶望だった。

 口にしたくもない精液をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み干してしまい、さらにはその胃に落ちた精液を今まで口にしたどんな食べ物よりも美味に感じてしまっているのだから。

 しかも、味として美味に感じただけでなく、思わず腰が自然とぶるぶると震えてしまうほどの快感まで精飲で覚えてしまったのだ。


『もういい加減諦めよ、貴様の体はもはや貴様のものではないんだぞ。

 ワシの命令に従って貴様がどんなに嫌がることもなんの躊躇いもなく成し遂げてしまうのだよ。

 それこそ、貴様がワシの罠にかかる原因となった、あの赤髪の女子を騙し討ちさせて殺させることだって出来るというわけだ』


 自身の感覚の変化と、自由にならない肉体を突きつけられて、もはや自らの意志で戦うことも出来ない、操り人形に落ちてしまったのだと、スカサハは痛感したのである。

 どれだけ強烈な絶望がスカサハに襲いかかっているのか、それを知るのはスカサハだけだろうが――絶望は、まだまだ始まったばかりなのだ。


『……さあ、こちらの門も開けたようだのぉ♪』

「ひぃっ……!?」


 触手生物は一本の触手を操って、粘ついた体液を擦り付けるようにスカサハの引き締まった下腹部を撫でていく。

 先程も言った通り、肉体と脳を完全に支配した触手生物はスカサハが施したセーフティ、『貞操帯代わりのルーン魔術』を解析して、スカサハの脳を通すことでスカサハ自身にその魔術を解除させたのだ。


「やって、みろっ……!」

『むぅ?』


 思わず悲鳴が漏れたスカサハを見て、触手生物はにんまりとした薄汚い笑みを作った、まさにその瞬間のことである。

 スカサハは先程までの絶望を潜ませて、あの気高い女王であり高潔な戦士としての顔を見せたのだ。

 キリッとした美しい目で触手生物を睨みつけ、ギリリと歯を食いしばりながら、触手生物へと抵抗の言葉を口にしていく。


「どれだけ貴様が私を辱めようと、最後に勝つのはこの私だっ……! 貴様のようなケダモノに踏みにじられるほど、私の勝利に塗れた人生は甘くはないぞっ! どれだけ取り戻しの効かない体に変えようとも、最後には私の魔槍が貴様を穿つ! それまで、たっぷりとその触手で私の体を穿つが良い……!」

『ほっ、ほほほっ! むほほほほっ!』


 スカサハの強烈な精神に、触手生物は歓喜で震えた。

 自分のような弱者では絶対に持つことが出来ない、高潔な不屈の魂である。

 所詮、根っこは弱者である触手生物ならばここまで取り返しの付かない凌辱にあえば絶望に沈むはずなのに、この女王は決して諦めずに勝とうとしているのだ。

 これこそが、触手生物が妬ましく思う強者のあり方である。


『では……たっぷりと楽しませてもらおう。ほれ、にっこりと愛らしく笑いながらワシの唇を貪りながら、初めてのセックスを味わうと良い♪』

「くっ、死んでしまえ……! ぅ、うぅぅ~~!」


 凛々しい顔つきで憎々しげに触手生物を睨みつけていたスカサハは、触手生物の命令にしたがってニッコリと見るものを魅了する愛らしい笑顔を浮かべながら、その赤い唇をわずかに突き出す『キス待ち顔』を創り上げたのだ。

 男ならばそのキス待ち顔だけで、童貞男子ならば思わず射精をしてしまいそうになるほどの愛らしさと淫靡さを兼ね備えているスカサハの美しさを、触手生物は貪っていく。


『では……犯してやるぞ、スカサハ!』


 ずぶ、ずぶずぶっ! ぶちっ、ずるぅぅ、ぶちぶちぃぃぃぃ~~!


「んじゅるるっ、ちゅぅ,ちゅぅぅぅ~~。んぐぅぅ、ちゅぅぅ、ちゅぅぅっ~~!」


 スカサハほどの絶世の美女が魅力的な笑みを浮かべながらディープキスを行い、その処女を男へと捧げていく。

 その相手はどれほどの美男子、あるいは、どれほどの豪傑なのだろうかと思うだろうが、実際の相手はそんな美しさや強さとは程遠い、醜く卑劣な触手生物である。


『おぉぉ~~、たまらんっ! たまらんぞ、スカサハ! 鍛えられたこの処女マンコは、ワシが犯してきたどんな娘でも比べることさえ出来ない名器じゃっ! くはは、その豊満な胸も、艷やかな髪も、ワシが同時に愛してやろう! 貴様もその愛に応えて、熱烈なキスを続けるのじゃ!』

「くっ、んじゅるうぅぅ! れろれろ、れろぉぉぉ~~! ちゅっ、ちゅっ、むちゅぅぅうぅ~~!」


 目の端から涙を流しながら、それでいて幸せそうな笑みを強引に浮かべさせられた、体も心も穢されていく苦しみを味わいつつ、それでいて決してその魂は屈しない。

 出来ることならばこのような高潔な強者でありたいと、触手生物が願っていたほどの強さをスカサハは持っているのだ。

 その理想の強さを持つ女を自分が汚していく悦びに震えながら、触手生物はスカサハを犯していくのだった。

 どれだけ口で抗おうとも、結果は決まっている。

 いつか、スカサハは触手生物の前に屈してしまうだろう。

 それは、スカサハが求めていたはずの敗北と同じものだというのに、決して幸せな結末には続かない、屈辱的な敗北である。


「ちゅぅっぅ、ちゅっ! れろろぉぉぉ、じゅるるうぅっ!」


 スカサハはまるで恋人と情交を交わしているかのように、肉触手を受け入れながら醜く歪んだ顔がつけられた触手と熱烈なキスを交わしていた。

 口と秘処の二つで繋がっているスカサハの体は快感に溺れていく。

 どれだけ意思が嫌悪感を覚えようとしても、媚毒と化した精液を摂取してしまったスカサハの体は触手生物の触手をこれ以上ないほどの快感を覚えるように書き換えられてしまっているのだ。


『ぐほほ……! 鍛え抜かれた体とも違う、戦うことに特化したからこその強烈な締め付け! そこに男を知らぬ乙女特有の狭さが相まって……くくく、確かにワシの触手も千切れてしまうかもしれんなぁ♪』


 にこやかな顔を強制されたまま涙を流しているスカサハの屈辱と羞恥に塗れた内心を想像しながら、触手生物はスカサハの誰も踏み入れたことのない蜜壺へと挿入した触手を激しく前後に動かしていく。

 どんな猛将でも手に入れることが出来なかった戦士女王の秘処は、狭すぎるほどに狭い。

 その狭い肉壺を包んでいる鍛えられた内筋がぎゅうぎゅうと締め付けることで、それこそ触手生物の言葉通り肉触手を引きちぎらんばかりに『硬い膣道』になっているのだ。


『しかし、相手が悪かったなぁ。ワシの体液と細かいイボ触手によって、このマンコもワシの触手を柔らかく包み込むオナホに書き換えてやるわ♪』

「んじゅうぅ、くぅぅ、ぅぅぅ~~!」


 だが、蜜壺へと挿入された触手は、この触手生物が持つ無数の触手の中でも一等に優れた『女殺しのイボイボ触手』である。

 そのイボから生成されるヌルヌルの体液は精液にこそ劣るものの、普通の体液や口のある触手が生み出す唾液もどきとは比べ物にならないほどの媚薬効果を生み出すのだ。

 そのイボも表面上には目に見えないほどに小さな針のようなものが生えており、そこから膣襞をひっかくことで、誰にも刺激されたことのなかった元・処女穴がどんどんと解されていってしまう。

 スカサハもまた、触手の動きがスムーズになっていくことで自身の肉穴が触手専用のモノに変わってしまうことを感じ取ってしまい、悔しくて悔しくて、憤怒と殺意をどんどんと強めていくのだった。


『ほれっ! 射精すぞ、スカサハ! 受け取るが良い、貴様の子宮で我が子種を受け止めるのだ!』

「んぐぅぅ!? ぐ、ぐぐぐっ……! ぷはっ! や、やめろっ! 膣内に、膣内には出すなぁ!」

『ほっ!? これは驚いた、気持ち良すぎて意識が離れたとは言え、ワシのキス命令に抗ったか! サーヴァントとは普通の人間とは別格の存在なのだとわかっていたがここまでとはっ……ぐふふ、勉強になったのぉ』


 そんな触手生物が射精を行うと口にすると、スカサハの体に自由が戻る。

 うっとりとした笑顔を瞬時に憤怒へと歪めていき、唇を触手から放つと膣内射精を拒絶する言葉をはっきりと口にしていく。

 それが触手生物があえて自由を取り戻させたことで辱めている可能性もあるが、もはやそんなことは関係ない。

 先程までは魅力的な微笑みを浮かべながら情熱的なディープキスを行っていたことなど関係ないと言わんばかりに、この触手生物にはっきりとした拒絶を示すのである。

 もちろん、そんな拒絶だってなんの意味もない。

 少し驚いたように目を丸めた後に、にやぁぁぁっと気味の悪い形に目を細めた触手生物はその抽挿をさらに激しくしていき、ついにはスカサハの蜜壺に射精をしたのだ。


『くぉっ! 射精る! 射精るぞぉ! このまま、ワシのものにしてやるからなぁ! くぅ、ぅぅっ!』

「やめろ、やめ、やめてくれ……! やめてぇぇぇ!」


 どびゅるるるぅっ! びゅるるっ! びゅる! どぴゅびゅうぅ! どぶびゅるるるるぅぅっ!


「おごぉぉぉ、ふぎぃぃ! んぐぅ、ぉぉ、おっっぉぉぉぉ!!?」


 戦士として、女王として、絶対に口にしないはずの『哀れな女』としての声を放ってもなお、触手生物が止まることはなく、触手生物は蜜壺の奥の子宮へとむけて射精をしていく。

 射精されていく精液は、やはりドロドロとした液体というよりも固体と言ったほうがしっくりと来るほどの粘質を持ったものだった。

 ほぐれた肉襞の一つ一つに精液がこびりつくのではないかと思うほどのもので、そんなドロドロの精液を押し込むように射精したばかりの肉触手もぐっぐっと子宮に先端を押し込んでくるではないか。


「ぉお……ぉぉ……あっ……あぁぁ……」


 自身の体のことなのだから、スカサハは嫌というほどにその変調を感じ取ってしまう。

 妊娠した。

 あらゆる前提を無視して、この触手生物はスカサハに『妊娠』という概念を植え付けたのである。

 それは聖杯の力か、それとも触手生物自身が最初から持ち得ていた特殊な能力だからこそかはわからない。

 だが、卑劣で醜い触手生物にスカサハは自身がロマンチックに夢見ていたファーストキスもロストヴァージンも奪われたばかりか、望まない妊娠まで与えられてしまったのだ。

 普通の女ならば絶望してしまい、発狂するかのごとく理性を喪った物言わぬ人形になってしまったであろう。

 だが、スカサハは決して普通の女ではない。


「殺す……なにをしても、殺してやるぅ……」

『ぶふぅっ! 本当に面白い女だ! ここまで快感と衝撃を与えてやったとしても、まだワシへの殺意が消えんとはな!』


 これほどの意識を失いかねない激しい凌辱と、救いのない未来を感じ取らせてしまってもなお、触手生物への殺意というものを喪っていなかった。

 朦朧とした意識の中でも、それでもなお触手生物に敵意の焔を燃やし続けたのである。

 絶対に屈しないという、ケルト神話に名を残す影の国の女王に相応しい意思を示してみせたのだ。

 だが、そんな言葉にも意思にも、なんの意味も価値もない。


『ぐふふ……たっぷりと可愛がってやろうかのぉ♪』



 ――――そうだ、わかりきった結末を語る必要はない。



 影の国の女王スカサハは、『触手生物に敗れる』という結末が運命づけられてしまっている。

 そこには、自身よりも強い戦士との決闘の末に破れるという、スカサハが待ち望んだ幸福な敗北とは程遠いもの。

 影の国の女王などという輝かしい肩書が信じられないほどに穢され、スカサハはただの一人の女として、ただの淫らな体つきと美しい見目をした肉人形として、凌辱の果てに斃れるだけなのだ―――――。


(終)



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