【導入】日本の未来のためにセックス!?マナと六花のドキドキ性指導体験!【全体公開】 (Pixiv Fanbox)
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『頭が痛い』とは、まさに今の状況なのだろう。
大貝第一中学校生徒会書記、『菱川六花』は気が重くて仕方がなかった。
まだまだ未熟な小娘という自覚はもちろんあるが、それでもやはり自身は『苦労人』という気質なのだという自己分析も出来てしまうほどである。
それでもまさか、自分がこのような『実験的措置』の対象者となるとは夢にも思っていなかったと言わざるを得ない。
「えー、それでは……文部科学省より来ました『乙姫存愛(ツバキ・アリチカ)』と言います。再来年度に導入を予定している新制度、『正しい性教育を指導する指導員との実技指導』についての試験的導入を、今回、大貝第一中学校の生徒会のお二人にお願いしたくてやってきました。
導入試験に協力してくれる『相田マナ』さんと『菱川六花』さんで間違いないかな?」
「はいっ、相田マナです! よろしくお願いします!」
「……菱川六花です。よろしく、お願いします」
自身の横で好奇心を隠そうともせず呑気にニコニコとしている愛すべき幼馴染──『相田マナ』と、こんなふざけた施策で訪れた非常識極まりないはずなのに思わず心の壁を開いてしまいそうなほどに人好きのする笑みを浮かべた中年を睨みつけるように厳しい目を向けてしまっても許されるだろう。
何故ならば、どれだけ睨みつけてどれだけ不満を露わにして見せても、結局のところやるべきことになんの変更も起こらないのだから。
『正しい性教育を指導する指導員との実技指導』────それは指導員と名乗る乙姫存愛と名乗ったおじさんが口にした通り、すでに導入が決定されている政府肝入りの新制度である。
今までの保健体育の授業で行われる性教育は座学のみの、それもいわゆる『性行為』の気配をどこか隠そうとした通り一遍の浅はかなものだということは、この現代日本で義務教育を終えたものならば理解できるだろう。
だが、昨今の若者の性の乱れは甚だ遺憾であると言わざるを得ないほどに乱れきっている。
あまりにもハードルが低いために行われる『援助交際』や『パパ活』の横行、『神待ち女子』などという浅薄で危険な行為、さらにはこの21世紀の世の中で梅毒が蔓延──性の乱れとされるものは、数えれば切りがないものだ。
そこに加えて行き過ぎた表現規制などによって『ポルノ』と呼ばれるものが抑制されてしまい、逆にポルノ自体が『アンダーグラウンドなモノ』とラベリングされてしまうことで若者たちの興味を引いたのである。
その影響もあってか、元々表立っては出てこないニッチなものである『レイプ物』や『ハードSM物』、それも命に関わるような『過激ポルノ』が流行化してしまったのだ。
それが槍玉に挙げられてソフトなプレイを描写していたポルノも含め、ポルノ全体へと強い規制を行われてしまい、さらにアンダーグラウンドでは過激ポルノが流行するという悪循環まで起こってしまうほどである。
そんな性的な行為を禁忌とする『ケガレ思想』を主流としながらも、性的な行為に無知なまま軽々しく行えてしまう現状は、性的な行為に興味がある若者たちがどんどんと無茶な行動に走らせてしまう原因となってしまった。
そのために、社会を変えてしまう決定的な出来事が起こってしまったのである。
十数人の未成年たちによって引き起こされた、SM乱交プレイだ。
首絞めプレイや腹パンレイプ、さらにはスカトロなどといった悍ましい行為が平然と行われ──死者が二人も出てしまったのである。
死者ではなくとも直接的な暴力によって片目が失明してしまった者や、また、『スカトロポルノ』に影響を受けて糞便を口にした人間には障がいが残ってしまった者も居るほどだ。
麻薬などによってハイになってしまったわけでもなければ、暴力を背景とした一方的な脅迫などでパーティーに無理やり参加させられたわけでもない。
彼らは歪んだ性に興味を持ってしまい、それを溢れ出る好奇心と行動力によって実行に移してしまっただけなのだ。
ただそれだけなのだが────ただそれだけで、このようなことが起きてしまったのである。
これはあまりにもセンセーショナルな事件であった。
この日本において、性的な行為は『穢れ』として表立って口に出すべきことではないとされているが、さすがに命まで喪ってしまうような行動へと軽はずみに取ってしまう若年層と、そんな好奇心に満ちた無知な若年層を食い物とする悪人たちの『ポルノ経済活動』が生み出してしまった痛ましくも悍ましいこの事件は、時の政府を動かすこととなったのである。
「よし、対象の生徒で間違いないみたいですね。それでは話が行っている通り、セックスに対する偏見を取り除くために私たちのような性行為に秀でた、国家に認められた『指導員』が君たち中学生へと性指導を行わせてもらいます」
このような事件の再発を防ぐためにも、子どもたちへと『正しい性行為』を教えなければいけない。
それも言葉や本でだけではない────実践を伴って、だ。
そんなことを現役の内閣総理大臣が高らかに宣言したのである。
これには『非難轟々』という言葉がよく似合う、炎上なんて言葉が生ぬるいほどにマスコミやネットで罵詈雑言の嵐が発生した。
だが、首相の放った言葉が全てを押し通したのである。
『人が死んでいるのです!』
『我々は性行為を穢れとしすぎた!
妊娠と出産が母体に大きな負担をかけるのは紛れもない事実であるために子どもたちが軽々に行うべきではないことは当然のこと!
それがいつの間にか、性行為自体が【いけないこと】であるかのように扱ってしまっていた!
子供を育む素晴らしい行為を、ですよ!
性行為とは素晴らしい行為ですが、しかし、特別なことではないということを教えなければいけないのです!』
マスコミやネットでは軽んじられているが、一国のトップにまで上り詰めた政治家が見せる『力』とは凄まじいものだ。
権力という意味ではない。
スピーチ力や演技力、あるいは、伝達力──様々な言葉で表現できるが、秀でた政治家が本気になって演説を打てば、どれだけ摩訶不思議な言葉でも思わず納得してしまうような、そんな力があるのだ。
そういう意味では、現総理は間違いなく歴史に名を残してしまうほどの『力』を持った政治家なのだろう。
未だに批難の声が湧き上がりながらも、こうして『指導員による性教育』は新たなる教育制度として行われてしまうことがほぼ確定化してしまったのだから。
「それで大貝第一中学校がそのモデルケースに選ばれたってことですよね!」
「先生方はもちろんだけど、生徒会長である相田マナさんの呼びかけも大きかったと聞きました。協力、ありがとう」
「気にしないでください、国民として当然のことですから!」
「マナぁ……!」
そして、良いことか悪いことか────六花の愛すべき幼馴染で、大貝第一中学校生徒会会長でもある相田マナの夢は『総理大臣になること』であるために、現総理に強い尊敬の念を抱いていた。
そこにあんな演説を打たれたことで、マナはその『性指導法案』を全面的に受け入れる推進派の一人となってしまったのである。
さらには、現総理に負けないぐらいのバイタリティと生徒たちからの信頼を持っている、将来有望な若者であるマナが先生方や市の職員相手にも率先して呼びかけていき、その甲斐が『実ってしまい』、光栄にも大貝第一中学校はその新たな教育制度の『モデルケース』へと選ばれたのだった。
これには、『相田マナ』と『菱川六花』という、世界を救った伝説の戦士である『プリキュア』が通う学校であったことの影響も少なくはないだろうが────『プリキュア』としての活躍における悲喜交交を語ろうと思えばとても長くなる上に本筋から逸れてしまうため、ここでは割愛させてもらおう。
「それにしても……先生は体がおっきいですね。こんな大きい人、初めて見たかも」
「そうだね、体ばっかりが大きくなっちゃって」
「プロレスラーみたいですね、そういうお仕事してたんですか?」
マナはそんなことを言いながら性教育の指導員である乙姫存愛の太い腕をペタペタと触っていく。
ニコニコとした人当たりのいい美少女であるマナの過剰とも言えるボディータッチと親しげな口ぶりによって、乙姫存愛もまたニコニコとした余裕のある態度で応えていくのだ。
これほど愛らしい少女に親しく話しかけられれば中年男性として気を良くするのは当然と言えるだろうが、それでも指導員である乙姫存愛に浮ついた様子を見せない辺りは誠実な大人の男性という姿そのものである。
「僕の仕事は指導員として来たことから分かる通り、性交に関することで生活してたんだ。
身長とかは生まれつきの資質だけど、体重に関しては体力勝負だから鍛えた結果かな。
どちらかというと持久力が必要な方だし、この脂肪の下にはしっかりと筋肉はつけてるよ。この重めの体も自重トレーニングにも使えるんだよ」
「なるほど!」
「…………」
また、マナの言う通り、乙姫存愛はプロレスラーと見紛うような見事な体躯をしていた。
身長は187センチで体重は119キロ、48歳という年齢を感じさせる大きなお腹の肥満体は鈍重さを連想させるが、しかし、存愛に言わせればそれは問題ない。
セックスに必要な筋力と体力はしっかりとつけているし、そもそも必要とするのは早く動くことでも重いものを持ち上げることでも長い距離を走ることでもないのだ。
存愛の絶大な自信に満ちた姿にマナはこれがプロフェッショナルなのかと感心した目を向け、六花はその『プロフェッショナル』という言葉がセックスの巧みさにそのまま繋がっていることを理解しているためか、少々気恥ずかしそうな目をしながら存愛から視線を逸していく。
「それで……さっきから気になっていたんだけど──」
存愛はそこで言葉を区切ると、ベッドが用意された空き教室の窓から廊下を眺める。
マナや六花のプライバシーを保護するために厳重な人払いがされているため誰も居ないはずの空間だ。
そう、誰も居ないはずの空間だというのに────。
「あの子は君たちの知り合い、かな? 性教育の予定にはいないはずだけど……?」
「シャ、シャル!? バレちゃったシャル!?」
───廊下側の窓から、一人の幼い少女が部屋の中を覗き込んでいたのである。
「「シャルルっ!?!」」
「ああ、やっぱり知り合いなんだね。マナちゃんの妹さん……とか。お姉さんが心配になったのかな」
その少女は、マナも六花もよく知っている人物だった。
突然の乱入者の存在にのんびりとした反応を示す存愛であったが、その知り合いであるはずのマナと六花の動揺は凄まじいものである。
ただ知人がひっそりと訪れたことに驚いているというだけではない、大きな動揺だった。
(どうやって入ってきたの!? 誰も入れないはずなのに!)
(多分、妖精の状態で小さくなって、教室に近づいてから人間の姿になったんだと思う……!)
(まずいよね……だ、だって、さすがにシャルルにはちょっと性教育はまだ早くないかな?)
(それにこれって国の取り組みだし、トランプ王国と日本の関係にも影響出たりするかも……とか?)
そう、先述の『プリキュア』の話に繋がることだが、こっそりと外から中を伺っていた少女の名は『シャルル』────この世界とは異なる世界に存在する『トランプ王国』より訪れた人ならざる存在だ。
しかもシャルルは正確に言えば人間ではなく、プリキュアの仲間として活躍した『妖精』なのである。
手のひらに乗ってしまうほどの小さな体つきこそがシャルルの本当の姿であるために、その小柄な体を活かしてひと目をかいくぐってここまで訪れたのだろう。
ひとえに、パートナーであるマナを心配しての行動である。
「マナが心配でついてきちゃったシャル……ごめんなさい……」
「えーっと……ごめんね、シャルル。さすがに今回は、その……」
「そうね、シャルル。大人しく待っていてくれる?」
マナや六花からすればシャルルは大切な仲間ではあるが、立場として他国の住民であるためになにか問題が起こった場合には国交問題にもなるかもしれないという不安も生まれてしまう。
なにせ、異世界のトランプ王国との交易はまだまだ始まったばかりだ。
プリキュアであるマナや六花、その他の仲間たちの国籍が日本であるということと、そのプリキュアのうちの一人が四葉財閥の御令嬢ということもあって日本がその交易に大きなアドバンテージを受けている。
だが、今回のことで『日本人により、大事な国民が傷つけられた』とトランプ王国と問題が生じれば、他にも異世界だからこその資源を所有しているトランプ王国と深いつながりを望む他国に付け入られる隙になってしまうだろう。
何よりも、シャルルはマナたちに比べてまだ幼いために実技を伴う性教育の場に居るのは相応しくないようにも思える。
シャルルをやんわりと宥めようとするマナと六花で、シャルル自身も肩を落として気を落ち込ませながらも、それ以上はわがままを言って困らせることはなく、とぼとぼとした足取りで立ち去ろうとしていくのだった。
「ここまで来ちゃったんなら、見学でもするかい? このまま帰しても、他の人に怒られるだけだろうしね」
「シャル!?」
「えぇ!?」
「乙姫さん、何言っているんですか!?」
だが、まだ幼さが残る上に部外者でもあるシャルルを引き止めたのは他ならぬ存愛であった。
なんでもないような顔でなんでもないように口にする存愛に、それぞれが反応してしまう。
「シャルルちゃんが男の子だったら僕の担当じゃないから勝手には決めれないんだけど……女の子だしね。見学レベルなら、現場の判断で許される範囲だと思うよ。ああ、もちろんシャルルちゃんの意思次第だけど……」
「やりたいシャル! わたしもマナと一緒に居たいシャル!」
「じゃあ、そういうことで行こうか」
「良かったね、シャルル!」
そういうことになった。
マナ、シャルル、存愛の盛り上がっている三人に置いてけぼりをくらってしまった六花には、そうとしか言えない状況になってしまったのである。
(続)