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Skebのご依頼で書かせていただいた作品です。

『限界中年男性、エロ同人版FGOにチート転生!』、

その外伝的な作品になります。

下記の『幕間シリーズ』との繋がりがあります。




限界中年男性、女体化特異点でアストルフォをオナホ騎士に堕とす。

skebでの依頼で書かせてもらいました。pixivに投稿している『限界中年男性、エロ同人版FGOにチート転生!』の外伝的な作品になります。 『幕間:限界中年男性、姫騎士と出会う。』と同じ、原作ゲームで言うメインストーリーとは別のイベントストーリーのような作品になります。 ───────────────────────────────────────...



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【起】


 ────忘れることなんて出来ない、今でもはっきりと覚えている。


 『聖杯戦争』。

 俺がそのイカれた儀式に巻き込まれることになったそもそもの現任は、オカルト狂いの爺さんが遺した最低で最悪の『置き土産』によるものだった。

 命なんてものを軽視しているオカルティストでロマンチストなキチガイ爺は、まだ高校生だった俺へと剥き出しの地面に召喚陣が描かれた土蔵を遺産として用意していったのである。どうしようもないイカレ爺の夢物語に、俺は巻き込まれてしまったのだ。

 俺にとってはのんびりとした好々爺にしか見えなかったが、実際のところはオカルトとロマンと英雄譚に脳味噌をぐじゃぐじゃに犯されてしまっていた爺さん。あの爺は自分の死期を悟ったことで、高校生の俺が英雄たちの殺し合いに巻き込まれるなんて絵物語の準備をしていたのである。

 本来ならば今の地球にはどこにも存在しないはずの幻獣。その見事な毛皮なんて、出すとこに出せば目が飛び出るどころか心臓が止まりそうな値段がつけられるであろう遺物まで置いていった念の入れ用だ。その頃の俺に正しい知識があったのならば、然るべき場所に売り払って人生を楽に遊んで暮らせるような金を手に入れたというのが本音である。

 確かに、俺もそれがアニメやマンガなら『面白そうじゃないか』と流しただろうがこれは現実だ。そんな頭のイカれた儀式に実の孫を巻き込んでしまおうなんて、本当に気が狂った爺さんだ。


 そして、俺は爺さんの目論見通りに遺産として残された毛皮を──『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』の毛皮を触媒として、土蔵に刻まれた魔法陣を起動させてしまい、聖杯戦争なんていう血を血で洗って臓物の中から願いを掬い出すような物騒極まりない魔術儀式に巻き込まれてしまったのである。

 本当、ただの一般人に過ぎない俺なんて、それこそ召喚した一日目で死んでいてもおかしくなかった。

 そんな俺が今でも生きていられる理由なんて簡単なことで、召喚した騎士が、情けない俺を救い出してくれたのである。

 そうすることが当たり前のように、朗らかに笑って光の中に消えて、俺を現実に返してくれた。


『サーヴァント、ライダー! 助けを呼ぶ声を聞いてビュビューンと颯爽参上! さあ、聞かせて!』


 鮮やかな桃色の髪を三つ編みにまとめて。

 そこらのアイドルなんか足元にも及ばないほど整った顔立ちをして。

 三歩も進めばすぐに物を忘れてしまうような間抜けな頭脳で。

 俺の心を光で灼きつくして行った、本物の『英雄』。


 そうだ。

 俺よりも小さな背丈の癖して、俺なんかとは比べ物にならない大きな背中をしたあの騎士の姿を。

 どこかの誰かが放った低級の使い魔にさえ手も足も出ないで死にかけてた俺の前に、朗らかな笑顔で現れたあの優しく逞しい瞳を。

 あの誰よりも勇猛なる騎士を、俺は────。



『キミが、ボクのマスターだね!』



 ────地獄に落ちても忘れることなんて出来ないだろう。





 チュンチュン、と。

 爽やかに鳴いている鳥の声を聞きながら、俺は目を覚ました。


 俺は吾郎、『宇宮吾郎』だ。


 聖杯戦争なんて血なまぐさい儀式に巻き込まれたことと、爺さんが資産家だったことを除けばどこにでも居る普通の高校生だ。


「……また、あの夢かぁ」


 そんな俺は今日もあの夢を──『聖杯戦争』の夢を見ていた。

 あの聖杯戦争が終わって早数ヶ月。

 遠い日の出来事のような、あるいは、昨日のことのようにも思える不思議な感覚がある。それこそ、今も道を歩いていればその脇から魔術師が放った使い魔や、あるいはアサシンのサーヴァントが潜んでいるのではという恐怖を覚えてしまいそうなほどだ。

 だが、それは徐々にではあるが薄まってきていた。

 あの英雄が、ライダーがそんな日々から抜け出させてくれたことを噛み締めながら、俺はゆっくりと日常に戻ってきていたのだ。


「本当に、違う制服なんだよな。ブレザー全盛の今どき、詰め襟の学ランなんてさ」


 そう、戻ってきていたはずだったのに、そういう体質なのか俺はまた奇妙な事件に巻き込まれてしまっていたのだ。

 自分でも呆れてしまうほどの巻き込まれ体質、言うならば『主人公体質』か?

 響きだけならば嬉しいのだが、実際に自分の身に起こられると本当に困りものだ。


「やれやれ……いい加減にして欲しいぜ。俺は平和に暮らしたいだけなのに」


 思わず溜息をついて、そんな愚痴を呟いてしまった。

 とは言え、どんなに嘆いてみても、どうやら俺の人生は波乱万丈が約束されているのだろう。

 俺が高校受験という試練を乗り越えて入学した高校は本当ならば紺色のブレザーだと言うのに、今日は慣れない学ランを身に纏っていく。


「一人暮らしで朝食は本当に面倒だよなぁ。金だけはなんか口座にいっぱいあったから買い置きのパンとかで済ましてるけど……俺も、料理を覚えたのほうが良いのかもなぁ」


 本来ならば両親と暮らしていた俺だが、なぜだか両親は聞いた覚えもない海外出張へとすでに向かっていて、広い家に一人で暮らすことになってしまっている。

 これまではコンビニ弁当や外食などで食事を済ましているが、健康のためにも自炊をしたほうがいいかもしれないと最近は考えていた。

 ああ、そんな時間があるならば勉強をしろなんて言葉は聞きたくもない。これでも地頭は良いほうなんだ、ただ勉強が嫌いなだけ。

 しかし、俺に家事万能の恋人でも居ればこの一人暮らし生活にも華が出るんだろうけど、残念ながら彼女いない歴=年齢の哀しい非モテ男にはそんな嬉しい日常は遠い世界の事なのだ。


「行ってきまーす」


 誰の声も帰ってこないのなんてわかっているのに、習慣として俺の体に染み込んでいる言葉は虚しく響いていく。意味もなくアンニュイな気持ちだ。カツカツと地面を叩いていく俺の体は、ちょっとだけ重い。


「そして、到着と。徒歩三十秒で、知らない学校だよ。本当に」


 そう、そうなのだ。

 この学校こそ、俺がいつの間にか巻き込まれてしまっていた新たなる事件、その諸悪の根源と思われる施設なのである。築十年は経っていないのか、あるいは最近改築をしたのかわからないが、きれいすぎるほどにきれいな校舎と、校門からその校舎へと伸びる道にはそれはもう見事な桜並木が作られている。


 ギャルゲーかよ!


 俺は思わずツッコミを入れたくなるほどに、創作的な意味でのテンプレートを極めた学校へと進んでいく。

 もちろん、この学校は俺が進学した高校とは違う学校だ。

 本当の俺は自転車通学で二十分ほどの距離にある公立高校に通っていた。だが、ここは聞いたこともない校名の私立学校である。そもそも、俺の家は住宅街にあったはずで、出てすぐに学校なんて最高すぎる立地条件ではなかったのだ。


「ゴローくんおはよー!」

「センパイ、おはようございます」

「相変わらずだらしのない顔をして……もっとシャキっとせんか! せっかくの素材が台無しだぞ!」


 クラスメイト、後輩、先輩。

 そんな学校で、俺は複数人の女子生徒から親しげに声をかけられる。

 どの女の子も今すぐアイドルとしてデビューできそうなほどに顔立ちの整った美少女揃いであった。そんな美少女たちは、何故か俺にものすごく好意的に接してくる。この子たちは元いた俺の世界では見たこともないが、この謎めいた世界では俺に対してあからさまに、そう、異性としての好意を抱いた言動を行ってくるのだ。俺と彼女たちの間には、特別なイベントも発生していないのに。


 ギャルゲーというかエロゲーかよ!


 そんな風にツッコめる俺はエロゲー主人公のように鈍感ではないのである。

 全く、わけがわからない世界だ。


「やれやれだぜ」


 そんな世界にあったら、こんな言葉が口癖になってしまっても仕方ないだろう。

 そうだ、こんな言葉でも口にしなければやってられないぐらい奇天烈なことになっているのだ。

 それは俺がめちゃくちゃにモテているということもそうだが、もう一つ、何よりも信じられないことが起こっているからだ。



「ゴロー! おっはよー!」



 そう思っていた俺の耳に、甲高い声が響き渡った。

 この声の主こそが、俺の頭を現在進行系で痛めている原因のひとつなのだ。

 この、どうしようもないほどにあり得ない出来事の中でも信じたくない出来事。

 俺は観念して、その声の方向へと向き直った。


「……やれやれだぜ」

「おっはよー! 今日も気だるそうだねぇ、こんなにいい天気なのに! 幸せが逃げちゃうよ?」


 振り返ると、花が咲いたような満面の笑みを浮かべながら絶世の美少女が俺の方に向かってきていた。

 もうそれだけで恋をしてしまいそうな、俺の人生で一番の美少女が青春そのものと言ったワンシーンを繰り広げている。事実として、俺と同じ時間帯に登校をしていた何人かが頬を染めて『彼女』、いや、俺としては『彼』を見つめていた。



「そういうお前は朝っぱらから元気だな──アストルフォ」



 そう。

 その美少女は『アストルフォ』。シャルルマーニュ十二勇士の一人として名高い、本来ならば紅顔の美少年であるはずの騎士アストルフォは、『何故か』女の子に性別が変わってしまっていた。

 あの聖杯戦争の頃のように『こっちのほうが可愛くて僕に似合うから♪』などと女装をしているわけではない。アストルフォは正真正銘、男の子から女の子に変わってしまっている。俗に言う、『TS』展開というものだ。

 ピンク色のセーラー服を着ているだけならば女装かもしれないが、残念ながら今のアストルフォにはその体が女の子に変わってしまったことを何よりもアピールする『証拠』が存在しているのだ。


「……ごくっ」


 ぶるんっ♡ ぶるんっ♡ ぶるんぶるんっ♡


 アストルフォの胸が、ぶるんぶるん、と勢いよく揺れている。

 ピンクのセーラー服の胸元を大きく膨らました巨乳──いや、『爆乳』は元気過ぎるアストルフォが持つにはあまりにも凶悪過ぎた。一挙手一投足の全てがオーバーな動きをするアストルフォだから、その爆乳は暴れまわるように揺れていくのである。


「90……い、いや、100あるのか……」

「っ……うぇぇ、キモぉ……じゃ、じゃないっ! えっと、どうしたの? 気分悪かったりするの?」

「い、いや、なんでもねえよ!」


 その勢いよく揺れまくる爆乳をチラリと見てしまった俺は思わずバカなことを口走ってしまい、アストルフォの問いかけに慌ててぶっきらぼうな形で応えてしまう。

 アストルフォは俺のことを気遣ってくれたのに、これはちょっと最低だな。

 それでも、男ならわかるだろう?

 俺はアストルフォのことを男と思ってる。だから、あの爆乳に性欲を抱いてるとかじゃなくて、ただ単純に、そう、純粋な興味としてアストルフォの爆乳がどれぐらい大きいのか気になっただけなのだ。

 どんなグラビアアイドルのセーラー服コスプレよりも大きいその爆乳が90センチ程度とは思えない。1メートルの大台に迫っていてもなにもおかしくない。そんな大きさが暴れ回っているのだから、嫌でも目が向かってしまうものだ。

 別にエロい目でアストルフォを見ているわけじゃなく、そういった思考をしてしまうというだけだ。


『ふふふ♪ アストルフォの胸が気になるのかな、ゴローくん』

「うわっ、れ、レディ・アヴァロン!?」

『そうさ。みんなのかわいい妹、LAさ。今日もいい天気だねぇ』


 そんな俺の目の前に、SF映画で出てくるような立体映像さながらに一人の美少女が上半身だけが浮かび上がったバストアップの構図で現れたのである。

 彼女はレディ・アヴァロン。

 正確に言えば真名、いわゆる本名だってあるのだがサーヴァントのルールと言ってそれ以上のことは教えてくれない。妹を名乗りながらも俺にとっては妖しげなお姉さんのような、そんなどこか底知れない雰囲気を放っている謎の魔術師だ。


「こんなところで話しかけるなよ、俺が独り言で喋る危ないやつだと思われるだろ」

『そこは安心安全のLAお得意の幻術でクリアしているさ。これでも魔術師としてはトップクラスの腕前だと自負しているし、夢魔だからその手の御技は神霊にも匹敵するという自負があるよ。今のキミは周囲からは普通に登校してる冴えない男子高校生にしか見えないはずだから、安心して私と通信を繰り広げてくれたまえ』

「冴えないって、お前っ! ……はぁ、まあ良いよ」

『おやおや、元気がないねぇ』


 LAとは十日ほど前、つまりこの事件に巻き込まれてから知り合った間柄だが、常にこうやって俺のことをからかってくる。だが、非モテ男の哀しい性と言うべきか。このアストルフォに勝るとも劣らない顔立ちの整った、それこそ妖精のような神秘的な美少女にからかわれることさえ楽しくなってしまうのだった。軽いマゾに目覚めつつあるのかもしれない。


『ゴローくんはちゃんと休めてるかい? この奇妙な特異点を解決するためにはマスター経験者であるゴローくんと、サーヴァントであるアストルフォが鍵となるのだから、しっかりしてもらわないと困るんだけどね』

「わかってるって。その特異点……聖杯が関係しているんだろう? このわけわかんない、夢みたいな世界から抜け出すためにも出来ることはさせてもらうよ」

『実に頼もしい。さすがは冴えない男子高校生だというのに何故か可愛い女の子にモテモテのゴローくんらしいセリフだ』

「いや、だからいちいちイジるのやめろよ!」


 LAの笑顔を浮かべたからかいの言葉に、俺は思わず顔を真っ赤にしてしまう。

 そう、実は俺はかなりモテる。アストルフォの隣で言うことではないのだが、顔は結構整っている方だと思う。それに、聖杯戦争を経験したことで、なんというか人間的に一皮をむけたのだろう。そういうこともあって、なんだか女の子といい感じになることが多いのだ。

 この学校の制服がどこかコスプレっぽいピンクのセーラー服ということもあって、まるでギャルゲーみたいだな。


「……ニヤニヤした顔、気持ち悪いなぁ」

「なっ、そ、そんなことないぞ! 別にニヤニヤなんてしていない!」

『おやおや。アストルフォは嫉妬しているのかな?』

「ハァ!?」


 そんな状況でどうしても俺の顔はニヤついてしまい、それがよほどだらしなかったのかアストルフォらしくない冷たい言葉をかけられてしまう。そして、LAらしく全方位へのからかいを実行していくために、それはアストルフォにもまた向かうのだった。


『ハハハ、冗談さ。アストルフォは『そういう趣味』がないってことぐらいわかっているからね』

「ほんっとうに怒るよ!」

『ごめんごめん、謝るからそんなに怒らないで欲しいなぁ』


 温厚というかおおらかというか、あるいは単なるアーパーというか。何かに動じるということの少ないアストルフォには珍しく、LAへと怒りを向けていた。そんな怒りを向けられてもLAは飄々とした様子で言葉を続けていく。


『では、アストルフォ。今日も放課後は私と調査をしてもらうよ。昼間は学生として過ごして、学校が終われば『例の場所』で落ち合おうじゃないか。そして、夜になれば今夜の『見回り』の開始と行くよ。いいかな、ゴローくんにアストルフォ?』

「例の場所ってことは……! オ、オッケー! えへへ、僕、今日も頑張っちゃうよー!」


 ぶるんぶるんっ♡


 『例の場所』というLAの言葉に、先ほどまで怒りを示していたアストルフォは体を大きく動かして悦びを全開にして応える。だが、爆乳である自覚がないのだろう。その度に勢いよく胸が揺れて周囲の視線を独り占めしてしまっていた。俺は気が気でない。

 アストルフォは美少女よりも美少女らしくても、男なのだ。それも、並の男では足元にも及ばない立派な騎士様なのだ。

 それなのに、このおかしな事件のせいで爆乳美少女なんてものになってしまった。


「ちらっ……」


 アストルフォが偉大な英雄であることを知っている俺ですら、こうやって笑いながら爆乳を揺らしている姿を見ると元気っ娘爆乳美少女、しかも異能力持ちの騎士という萌え属性を搭載しまくった可愛い美少女として認識してしまいそうだ。

 いけない、いけない。

 アストルフォは男だぞ。

 日常ではちょっと鬱陶しいぐらいに元気だが、その根っこは俺の尊敬する高潔な英雄なのだ。

 そう思い直すと、当事者でもないのに余計に周囲のエロい視線が気になってしまう。

 俺を守ってくれた騎士が、まるでポルノ女優のように性的な意味でしか求められていないなんて耐えられない。俺と彼の大切な思い出まで精液で穢されているようで、不快でたまらない。

 ギロリ、と。

 俺は周囲に睨みを効かせていく。


「……ん?」

「ぐふ、ぐふふ……♪」



 ────その中で、とびっきり不快な視線を見つけてしまった。



「あいつは、確か用務員のきも、きも……えっと、キモタだっけか……とにかく、気持ち悪い用務員だよな」


 気持ちの悪い用務員だった。

 そいつのことは良く知っている。

 俺のクラスメイトの女子生徒のことなどもエロい目で見ている、典型的なセクハラ親父だ。

 多くの女の子から遠巻きにされているものの、ただ、俺はあまり関わりがないが、クラスの中心人物でありバレー部でもレギュラーとして活躍している快活なクラスメイトや、メガネをかけた大人しそうではあるが凶悪な巨乳と愛らしい顔を持った後輩の女子生徒などとはよく話をしている。

 その子たちと俺は繋がりがないが、このギャルゲーみたいな学校でもトップクラスに可愛い子たちだ。それこそ、アストルフォに比肩するような美少女は彼女たち三人ぐらいなものだろう。

 だが、俺にはわかる。

 あの男は、明らかに女の子のことをエロい目でしか見ていない。性欲でしか物事を判断できない最低の男なのだ。アストルフォのように顔がいいだけでなく、やはりアストルフォのように性格も良いのだろう。そういった下衆な男を避ける女の子が多い中で、孤立していると思ってこの男にも優しくする事が多いということだ。だから、逆にこの中年用務員があの美少女たちと親しくしているように見えているだけなのである。

 現に、今だってじめっとした目でアストルフォのことをジロジロと眺めていて、唇の端がニヤニヤとつり上がっていた。


「くそ、アストルフォのことまでセクハラ視姦しやがって……!」


 その小さな脳味噌の中でアストルフォに卑猥な行為をする妄想を繰り広げていることがひと目でわかってしまうような、同性であっても生理的な嫌悪を促すような男である。

 こんな男にはなりたくないし、恐らくなることはないだろう。

 顔も不細工だし、漂うオーラからして陰気な雰囲気をかもしだしているし、人生負け組が決定してダラダラと生きている中年男性であることが丸出しである。

 きっと、女性と付き合ったことも一度もないし、セックスだってしたことがないのだろう。

 いや、それを言ったら俺もまだ恋人が出来たことはない童貞だが、それでもまあ、その内できるだろう。仲のいい女友達だっているしな。同じ童貞でもランクというものがあって、その中でもあの用務員は最底辺であること間違いない。不細工な顔もコソコソとした動きも、それを確信させる気持ち悪さを持っているのだ。


「行こう、アストルフォ」

「っっっ!!!」


 俺がアストルフォの手を掴んでぐいと引っ張ると、あの用務員の男は目を見開いた。そして、俺のことを殺さんばかりの鋭い視線を向けてくる。

 だが、こんなクズみたいな男に睨まれた程度で怯む俺ではない。


「用務員さん、なんスか?」

「え、あ、う、い、いや……その……」

「用がないなら、あんまり話しかけないでもらえますか? 臭いんで」

「なぁっ!! ぅう、ぅぅぅぅ!」


 そんな用務員へと俺が睨み返してみせると、そいつは体を小さくしてモゴモゴと何かを呟くと、涙目になりながらくぐもった声をあげて逃げ出していった。

 なんて情けない。まあ、俺は体格も結構良いし、なんせ聖杯戦争っていう修羅場もくぐり抜けているのだから、あんな中年に喧嘩で負ける気がしない。その余裕が向こうにも伝わったのだろう。

 ざまあみろ。

 気高い騎士であるアストルフォを薄汚い目で視姦し、妄想の中とはいえ犯したであろう罰だ。

 中年から見ればガキに過ぎない高校生にビビったっていう自己嫌悪に襲われたって言えばいいんだ。


「……ねえ、ちょっと離してよ」

「えっ?」


 そんな俺に対して、アストルフォがびっくりするほどに冷たい声を投げかけてきた。

 思わず、先ほどの用務員のようにビクリと体を震わせてしまう。その隙にアストルフォは俺の手を振りほどいて、パンパンとその手をスカートで拭くように叩いていた。

 ショックだった。

 俺の手がまるで汚いものであるかのように振る舞うアストルフォを呆然と見つめていると、アストルフォは少しだけ深呼吸して──。


「ほら、皆が見てるから……さ? 変に勘違いされたら、恥ずかしいでしょ?

 それに、なんだか僕が……えっと、そうそう、本当に女の子になったみたいでさ」


 ニコリと、いつもの朗らかな笑みを向けてそう口にした。


「あ、ああ……ああっ! そうだな! ごめんごめん、なんか勘違いされてもいけないもんな」


 納得できた。

 そうだよな、今のアストルフォは不本意にも女の子の体になっているんだ。

 可愛いものが大好きなアストルフォと言えども、男としての自負も強いのかもしれない。

 そんな中で俺とそういう関係なんじゃないかと勘ぐられた時、それはアストルフォが女の子なんじゃないのかという前提があるということだ。男であるアストルフォは、それに嫌悪を覚えてもおかしくはない。


「もちろん、えっと……君のことが嫌いなんじゃないよ? ちょっとエッチなところはあるけどね」

「ぬぁっ!?」

「まあ、僕は可愛いしおっぱいも大きくなったからねぇ♪ 男の子なら我慢できなくても仕方ない。うんうん、わかってるよ♪」

「べ、べべべ、別にそんなのじゃねーし!」

「アハハハ、ごめんごめん! 変なからかい方をしちゃったね」


 そんなアストルフォが俺をLAのようにからかってくる。

 必死になって否定するものの、自分でも馬鹿みたいに顔が真っ赤になっていることがわかってしまう。なんとも説得力のない姿だろう。


「それじゃ、また夜に会おうか。僕はマーリンと一緒にこの事件について調査をしておくからさ!」

「おう、わかった! その……アストルフォ、俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれよ。

 アストルフォは、俺の大恩人だしさ」

「うん、ありがと。じゃあ、またね」


 アストルフォはそう言って、俺とは別のクラスへと向かっていった。

 ミニスカートなのに走るものだが、風に揺れて今にも中が覗けてしまいそうな状態だ。

 俺はそんなアストルフォの短すぎるミニスカートを危なかっしく見つめながら、それでもなんとか鉄壁を維持しているようで安心した。パンチラなんかして他の男にいやらしい視線を向けられたら、アストルフォの仲間である俺としては非常に不快だからな。

 もちろん、男であった時の細い足とは比べ物にならないほどにムチムチになった太ももが丸出しになっているだけで、そういうエロい目を向けられているのだが、そこはもう我慢するしかない。アストルフォ自身が男であった時からミニスカートを気に入っているのだから、ここはもうどうしようもないのだ。

 しかし、それにしても。


「本当、アストルフォの胸デカすぎるだろ……ごくっ」


 アストルフォは男だとわかっていても、あの可愛すぎる顔にエロすぎる爆乳とムチムチのお尻と太ももはあまりにも凶悪過ぎる。アストルフォと聖杯戦争を切り抜けた俺でなければエロい目で見ないなんてことは出来ないだろう。


「やれやれ、本当にアストルフォは天然だよなぁ」


 そんなエロすぎる体に無頓着なアストルフォに、俺はやはり『やれやれ』と肩をすくめることしか出来なかった。




 夜の闇が支配する街の中で、俺は懸命に前に走っていた。

 日付が変わるような深い夜の時間帯で、さらに住宅街ということもあって俺以外にそれらしい

 背後からは不気味に揺らめいている影のような、それでいて確かに質量を持った不定形の存在が迫ってきている。そいつは俺が十年は軍隊式の訓練をしても倒せない、神秘のみでしか打倒できない存在だ。今の俺は獲物でやつが狩人、スタミナを比べても俺とやつでは差が大きく、まさしく絶体絶命の危機であった。

 だが、それでいい。

 俺の役目は『囮』に過ぎないのだから。

 LAが指定したルートに沿って走っている俺は、その角を曲がっていく。当然、俺の背後に迫ってくる敵もそれを追ってくるのだが、俺はすぐにスライディングを行っていく。固いジーンズと言えどもコンクリートの上に足を滑らせればズリズリと足が痛むが、それを気にしている状況ではない。



「てぇやぁぁぁぁっ!」



 女性のような高い声が響き渡り、しかし、そんな可愛らしいものではない槍による一突きが、スライディングで身を低くしていた俺の頭上スレスレに空気を裂きながら進んでいく。

 待ち伏せをしていたアストルフォの攻撃だ。

 いや、待て!

 こ、こいつ俺のことを殺そうとしてないか!? ギリギリだったぞ!?


「ど~んなもんだい! えへへ、一撃だよ!」

「あぶねえだろ!?」


 昼に着ていたピンク色のセーラー服とは異なり、今のアストルフォは下衣をミニスカへと改造したいつもの騎士服を纏っている。セーラー服のときとは異なり、その何故かこの特異点では女性になった上にムチムチ騎士にまで変化したアストルフォの特徴的な爆乳を持つ胸元は、キュゥっと押さえつけられていた。もちろん、それでもグラビアアイドルにも負けないぐらいに胸の膨らみは強調されているのだが。

 そんなアストルフォの騎乗槍に貫かれた敵は塵のように霧散していき、アストルフォはその戦果をニコニコの笑顔で誇っている。戦闘が終わった後だとわかったからこそ、俺はアストルフォへと食ってかかった。英雄である騎士アストルフォのことを強く信頼しているのだが、それでもこの頭の中に特別な世界が築かれているアーパー騎士ならば本当に手が滑ってしまうのではという危険を、戦士ではない俺はどうしても覚えてしまうのだ。


「あ~……えっと、ごめんね?」

「ごめんじゃ済まないだろ、ごめんじゃ!」


 面倒くさそうに謝るアストルフォに、俺はその騎士とは思えない細い肩を掴んでぶんぶんと揺すっていく。これはかつての聖杯戦争でも行っていた、俺とアストルフォの間では信頼の関係を示す行為のようなものである。

 だが。


「……うぉ、すげえ揺れてる」


 ぶるんっ♡ ぶるんぶるんっ♡


 体を揺することになるのだから、抑え込まれた騎士服ではいつもほどでなくともまた爆乳が揺れてしまう。もちろん、俺はアストルフォに抱いているものは信頼と尊敬であって性欲ではないのだから、それに対して劣情を覚えることはない。

 だが、やはり雄の哀しい性。どうしても視線を向けてしまう。


「っ……ほんと、こいつ……!」

「え、な、なにか言ったか……?」

「別に、なんでもないよ。ほら、今日の分の敵を倒したからもう終わりっ! 時間も遅いし、キミも早く帰りなよ」

「お、おう……」


 ただ、その際にアストルフォがなにかを小さく言葉を漏らしたようだが、良く聞こえなかった。

 なんだかアストルフォの機嫌が悪いな。

 やっぱり、この事件があんまり解決に向かって進んでいないことに苛立ちを覚えてるのだろうか。普段のお気楽な姿からはうまく想像できないが、これで誇り高い騎士なのだ。


「でもよ、もっと周囲を探ったりできないのか? こいつら、女の子を襲うんだろ? 許せねえよ、そんなの」

「…………そうだね、許せないっていうのは同意かな。今はマーリン……じゃなくて、LAの幻術で君も女の子に誤認させてるけど、そうじゃなければ若くて可愛い子だけを襲いかかるからね。本当、女の子ばっかり狙うなんて最低のやつだよ」

「ああ、せめてこいつら敵の目的とかがわかればな……!」


 人を襲うこの謎めいた敵を、アストルフォが許すことが出来ないのは当然だろう。この『敵』は女性だけを襲いかかり、そして、その体の中に飲み込んでいくのだ。さらに厄介なことに、『敵』は警戒心が高い上に逃げ足も速いため、魔力を持たない俺が協力してアストルフォが待ち伏せをして確実に仕留める作戦をしているのである。

 一度に出る数は多くない、というよりも、一日に出る数もだいたい一体とほぼ確定している。そのため、この敵を倒してしまえば本日の危機は終了となる。その『敵を倒す』という危機に対処する仕事は終わったが、ここを探索すればまだ正体を掴めない敵のことがなにかわかるかもしれない。つまり、根本を解決するための調査だって、この事件に唯一気付いている俺たちがしなければいけない仕事なのだ。


『いやいや、これまでの活動で色々なことが分かったよ。それも、ものすごく大事なことだ』

「え?」


 そんな俺に対して、サポーターとしてここではない場所から支援をしてくれているLAが声をかけてきた。俺にとってはまだまだ謎の多い事件だと言うのに、英霊として名を残すほどの魔術師であるLAは、その優れた観察眼でなにかを見抜いたようである。


『実はね、ここはある二人の生徒の住居がとても近いんだ。藤丸立香とマシュ・キリエライトと言うんだけど、知っているかな?』

「えっと、ああ、藤丸は俺のクラスメイトだし……それに、その、ふたりともすごく可愛いから知ってるよ」

『そう。そして、二人ともゴローくんの魅力にコロっと行かない、君にとっては複雑な印象のある手強い相手だね』

「なっ!? か、からかうのはやめろよ!」

『フフフ、「俺様の魅力に跪かないなんておもしれー女……」なんて思ってたからゴローくんの記憶には強く残っていたのかな? とんだスケコマシだね』

「だからやめろって!」

「あーっ! 大声はやめなよ、深夜だから迷惑だよ!」


 相変わらず本題に移る前に二度三度とからかわなければ気が済まないようなLAの言葉に、俺は誤魔化すように大声を出してしまう。そのことに対してアストルフォがまたどこかズレたツッコミをしてくる始末だ。

 だが、そんな何でもないやり取りが心地良い。あの頃の、聖杯戦争の時と同じような気持ちになれる。なんというか、アストルフォが女の子になってしまっている異常事態でも、俺とアストルフォの間には変わらない絆みたいなものがあると安心できるのだ。


『まあ、ゴローくんをからかうのはコレぐらいにして……』

「からかいって本当に言っちゃったよ!」

『つまり、あの子達を狙ったというわけさ。今までは無作為だったけれど、日が進むごとに知性というか理性というか、つまり、そう言ったより好みをするものが、あの敵が共通して生まれつつあるというわけだ』

「あれの正体、わかってるのか!?」

『推測だけどね。アレはこの世界を作り出したモノ──君にもわかりやすく言うなら「聖杯」、それが生みだす「影」が浮かび上がったモノとでもいうべきものかな。ウロウロと動いていき、人を飲み込んで、その情報をインプットすることで、世界をより理想に近いものへと補完していく。

 つまり、この世界を作っている聖杯にとって、この箱庭はまだ未完成なんだよ。その欠陥を補うために、より多くの人間を影に取り込んでいるということさ。その時まで聖杯は眠り込んでいて、表には出てこない。出てきた時が破壊、もしくは回収のチャンスなんだけど──』

「どこに現れるかがわからない?」

『うーん……まあ、君に伝えられる範囲ではそう答えるしかないかな』

「ちゃんと説明しようとすると、魔術的にめんどくさい説明が入るってことか?」

『そう思ってくれると助かるね。ただ、藤丸立香とマシュ・キリエライトというこの物語において「モブ」とはランクが違う「主要人物」に手が伸びていることから、聖杯の完成は近いだろうね』


 マーリンは俺にもわかりやすく噛み砕いて語る。それが実際のところ、なんの説明にもなっていないことぐらいは俺にもわかった。それでも、わかったことは一つ。


「今はどうしようもないってことか?」

『まさしくその通り! と言って欲しいのかな? 実際は全然違うよ。

 何度もあの影を解析したからその目的がはっきりとわかった。

 聖杯は隠れているのではなく眠っている。

 聖杯には目的がある。

 それが見目麗しい女性と関係がある。

 これらがわかっただけでも、この物語は次章に移ったってことさ。ただ影を倒すしかなかった状態とはまるで違う。それに、これから敵は藤丸立香とマシュ・キリエライトの二人の傍に現れることがほぼ確定しているしね。彼女たちが美しいからこそ、聖杯は機械的に彼女たちを取り込もうとしていくだろう』

「……良くわからないけど、俺は何をすれば良いんだ?」

『フフフ、君の役目はものすごく簡単さ』


 白旗を揚げるようで悔しいが、それでもお手上げするしかなかった。LAにはこの事件の解決の道筋が見えているようだが、俺にはさっぱりと見えない。結局、LAに縋る他ないのだ。


『君はよく食べて、よく動いて、よく眠れば良い。君がそうするだけで、この物語は進んでいく。

 応急処置としての敵の撃退は、アストルフォとサポートの私が居れば事足りるからね』

「……それだけ?」


 少しだけ不満だ。まるで、仲間はずれにされたような気持ちになる。そんな俺の子供じみた気持ちを見抜いているLAはやはり微笑んでくる。


『強いて言うなら、彼女たちを日常的に注意してくれると良い。あまり近づきすぎずにね、聖杯のことを知っているきみが近づくと、なにか変な反応が起こるかもしれないんだから』


 その時、俺は気付いていなかった。

 LAと話し込んでいる俺の横で、アストルフォがひどく冷めた様子で虚空を眺めていたことに。




【承】


 ここ最近のことだが、俺は悪夢に襲われていた。

 それも三日に一度とかそういった頻度ではなく、正しく、眠れば必ずその悪夢を見てしまうのだ。


『あぁっ♡ んぅっ、はぁぁっ♡ おじさん、おじさぁんっ♡ 気持ちいいよぉ♡ もっと、もっと私をイジメてぇ♡』

『んちゅぅ、ちゅるぅぅ♡ れろれろぉ♡ はぁぁ……♡ おじさまの唾液、甘くてとても美味しいです……♡ もっと、私とキスしてくださいっ♡ お願いしましゅ♡』

『ぶひひっ! しょうがないなぁ♪ お、おじさんがわがままな子供の君たちをぉ、た、たっぷりと愛してあげるからねぇ♪』


 悪夢の中では、あの気持ちの悪い中年用務員が二人の美少女──藤丸立香とマシュ・キリエライトとセックスをしている夢だ。タイプは異なるもの、アストルフォという美少年を見慣れている俺でも思わず、『おっ』と視線を向けてしまうほどの美少女たちが、愛らしい顔を甘く蕩けさせてあの中年用務員に媚びるように体を寄せていくのである。

 童貞の俺では知る由もない、女の子の柔らかな体をあの気持ち悪い中年用務員は味わっていた。それも用務員が味わっている女性は、生半可な女性ではない。あのエロゲーみたいな学園の中であっても『メインキャラクター』と呼ぶに相応しい美少女コンビなのだ。

 それが夢だとわかっていても、思わず血涙を流してしまいそうなほどの悔しさを覚えてしまう。


『イクっ♡ イッちゃうっ♡ おじさんのチンポがっ♡ 私のおじさんしか知らないオマンコをいっぱいイジメてくれて、イッちゃうのっ♡ 素敵っ……♡ 大人のおじさんが私なんかを相手にしてくれてるなんて、ほ、本当に夢みたいっ♡ ぎゅってして♡ 手を、手を繋いでぇ、ぎゅぅぅってしてぇ♡』

『ちゅっ♡ れろぉ、ちゅぅぅ……ちゅぱっ♡ 本当に先輩は可愛いです……♡ こんなにかわいらしい人でも、おじさまと並ぶと劣等感を覚えちゃうみたいですね♡ そんなところも可愛いですが、いつまでも不安に思わせちゃったらいけませんよ、おじさま♡ 恋人だけがやる、指と指を絡めるお手々繋ぎで安心してあげてください♡ 私は、先輩とおじさまのサポートとして……ちゅっ♡ キス奉仕をさせてもらいますね♡』


 今日の夢の中では、藤丸立香を恋人繋ぎをしながら正常位で繋がり合い、さらにマシュ・キリエライトに横から抱きつかれながらキスをしている王様プレイだ。どんなヤリチンでも、このレベルの美少女二人とこんなラブラブ3Pを出来る人間なんて数える程度しか存在しないだろう。


『ひぅぅ……き、気持ちよかったぁ……♡ うんっ♡ とっても気持ちよかったよ、おじさん……♡ えへへ、なんだか嬉しいなぁ♡ こうやっておじさんと幸せな日々を送れるなんて♡ それでも、最近ちょっと嫌なこととかもあるんだけどね……♡』

『あぁ、あの人のことですか……おじさま、聞いていただけますか? その、ご存知の通り、先輩はとても愛らしい方ですが、どうやらストーカーに付き纏われているようでして。先輩ほどの方ですからストーカーの一人や二人が出来ることは不思議なことでもありませんが、やはり先輩本人としては非常に精神的な負担になっているようでして』

『えぇっ!? あれってマシュのストーカーでしょ!? あの、マシュの大きな胸のことを気持ち悪い目でねっとりと見てて……なんていうか、傍にいる私まで嫌な気持ちになるぐらい本当に気持ち悪いの。マシュが大変な目に遭わないかなっていつも心配してるんだ』

『いえ、あれは先輩のストーカーかと思われますが……きゃんっ♡ お、おじさま♡ いきなり私の胸を掴んでおっぱい愛撫してくださるなんて、ど、どうなさったんですか♡』

『ひゃうんっ♡ んぅ、わ、私のおっぱいも揉み揉み♡ えへへ、おじさんの大きな手で揉まれると気持ちいいなぁ……♡ って、お、おじさんが私たちのこと、守ってくれるの♡』

『ありがとうございます♡ おじさまほどの人が傍に居てくれれば、そのストーカーの方もあきらめが付くでしょう♡ おじさまにお手数をおかけするのは大変申し訳無いのですが……あんっ♡ おじさまと一緒に過ごせる時間が増えると思うと、とても嬉しいです♡』


 しかも、夢の中の美少女たちは、セックスが終わった後のピロートークとして、こんな会話までしているのだ。

 そして、恐らく、彼女たちの言っている『ストーカー』とは俺のことだろう。

 もちろん、俺はあの子たちのストーカーではないぞ。ただ、LAからの指示通りに藤丸立香とマシュ・キリエライトの二人を影から見守っているから、それを勘違いしているだけなのだ。

 それでも、悔しすぎる。

 俺はあの美少女たちにストーカーと嫌悪されているのに、見下していた中年用務員にはメロメロな様子を見せているのだ。

 夢だとわかってるのに、どうしても嫉妬をしてしまう。


「ぅぅ……くっ、うっぅぅ……! うわぁぁっ!?」


 その光景に耐えられなくなり、弾かれるように目を覚ましてしまった。

 なんとも情けない。

 寝間着の股間は大きく膨れ上がっているということさえ通り越して、じわぁっと湿り気を帯びている。他の男に美少女が抱かれている淫夢を見て、夢精をしてしまったのだ。


「な、情けなさ過ぎる……くそぉ、外では鳥がのんきに鳴いてるし、ムカつくぜ……!」


 あまりにも自分が情けなく思えてくる。チュンチュンと爽やかに鳴いている鳥の声にすら苛立ちを覚えてしまう八つ当たりしてしまうぐらいだ。

 しかし、最近の俺は変だ。

 変なんて単純な言葉じゃ説明がつかないぐらいだ。

 確かに、藤丸立香とマシュ・キリエライトという美少女を陰ながら守らんと監視を続けていることで、あの子達のことを考えることは多くなったのも事実である。繰り返しになるが、二人はあのエロゲーのような学校の中でも上位の美少女なのだから、どうしても劣情を抱えてしまうことはおかしなことではない。夢は無意識の現れであるというのだから、あの二人が登場する淫夢を見ることも、俺も思春期の少年である以上は仕方がないことだろう。


「だけど、なんであの中年キモ親父を竿役にした淫夢になるんだよ……!」


 そう、そこだけが問題だ。

 絶世の美少女が中年のキモ親父と睦み合っている。しかも、女の子たちは純愛だと言わんばかりにうっとりと恋した瞳を向けているのに、キモオヤジはネッチョリとした性欲に満ちた視線を向けているのだ。藤丸立香とマシュ・キリエライトの想いは本物の愛情だとしても、キモオヤジは彼女たちを性的な消費物としか見ていないようだった。

 あんな気持ちの悪い中年が美少女に愛を向けられているなんて、まさしく下品なポルノ作品そのものである。それでいて、俺はその光景を遠くから見ていることしか出来ない。

 あのうだつのあがらない中年用務員に俺を同一視して感情移入することなんて不可能だ。それほどに、俺はあの男に対して生理的嫌悪感を覚えてしまっている。

 しかも、それだけではない。


「くそっ、マジで最悪の寝起きだ! し、しかも、俺は……畜生っ! なんてこと考えちまうんだ!」


 俺は、その不快感に快感を覚えるようになってしまっている。

 奇妙な性癖が芽生え始めていると言っても良い。

 そう、俺はもうどんなポルノを見ても、あの中年オヤジが竿役でなければうまく興奮できなくなったのだ。それは写真でも動画でもマンガでも変わらない。

 いや、それどころか、俺は最低のことを求めようとしている。


「あ、アストルフォとあの男のセックスが見たいだなんて……狂ってるのか、俺は!?」


 あの夢の中で、俺はついにそんなことを考えてしまったのだ。

 女の子となったアストルフォが、夢の中の藤丸立香たちのように恋する乙女の熱い瞳を向けながら快感に喘ぎ続ける。そんな光景を見たいと思い、俺はその瞬間に目を覚ました。そして、それと同時にお漏らし夢精をしてしまったこともわかってしまったのである。


「あぁ、もう! 」


 俺は肩を怒らせながら、パンツを脱いで風呂場で洗っていく。

 最低最悪の朝だとしか言いようがなかった。




「最悪だ……!」


 俺が登校をすると、校門の近くでなんとも不快感を煽る光景が広がっていた。


「へぇ……そんなことがあってお仕事がクビになっちゃったんだ。おじさんも大変なんだね」

「お話を聞く限りでは、私にはおじさまがわるいと思えませんが……理不尽なものなのですね」

「ぶひひ。ま、まあ雇われてた身としては泣き寝入りするしかなくてねぇ。でも、文句を言ってもしょうがないからさ。こうやって新しい職にもありつけてるわけだし」

「大人だなぁ。私ならプンプン怒って、その人たちと喧嘩して面倒なことにしちゃってたかも」

「そういうことしてもしょうがないからね。そ、それに、そのおかげで立香ちゃんやマシュちゃんとも出会えたと思うと、あの理不尽なリストラも悪くないかなぁ。ぐひひ」

「そんな可愛いだなんて……♡ あ、ありがとうございます……♡」


 草抜きかなにかをしているのだろうか。しゃがみこんで用務員としての掃除をしているあの中年オヤジのそばに、ニコニコと愛らしい笑みを浮かべた藤丸立香とマシュ・キリエライトの姿があった。

 この学園の流行りなのか、膝上数センチに短く折ったスカートを、太ももとふくらはぎで挟むことでスカートの中身が見えないようにする形で座り込む姿は、現役男子高校生である俺が言うにはおかしい言葉だが、いかにも『女子高生』そのものである。可愛い。

 そんな理想的な女子高生の姿をした二人が、社交辞令なんかではないとひと目でわかる本物の笑顔を気持ちの悪い用務員へと向けていた。その表情に偽りは感じられず、彼女たちがあの中年用務員に好意を抱いているということは明確である。

 信じられない。

 あの淫夢の影響でそう見えるとかではなく、彼女たちのような素晴らしい美少女が何の取り柄もなさそうな中年オヤジに好意を寄せているだなんて、ありえるはずがない。

 だが、現実として目の前でその光景が広がっている。俺はその光景を信じたくないと言わんばかりに、なにかの幻なんじゃないかと、疑うような目でジィっと見つめている。そんな俺の内心など知ったことではないとばかりに、周囲からはいつものように声をかけられていく。


「ゴローくん、おはよー。今日もいい天気だねー」

「宇宮センパイ、おはようございます! 昨日、生配信してたあの放送、見ましたか?」

「相変わらずだらしのない顔をして……お、おい? どうした? な、なぜ挨拶を返さない……そ、その、怒ってしまったのか?」


 快活なクラスメイト、懐いてくる後輩、真面目だけど俺に簡単に左右される風紀委員長な先輩。

 どの娘も可愛い。

 この事件に巻き込まれる前の俺なら、どの娘と付き合えても喜びの舞をを踊っていただろう。

 だが、今はそうじゃない。


「ちっ……!」


 その誰もが、藤丸立香やマシュ・キリエライトに見劣りするのだ。

 美少女の中にもランクというものがある。

 彼女たちがアルファベット順でランク付けをした時にAランク美少女とするなら、藤丸とキリエライトはSランク、特別を意味するスペシャルのイニシャルをつけたくなるほどの別格の存在なのだ。

 それは、彼女たちの顔立ちが整っているということとはまた別のところによる魅力があるためだ。香り立つようなフェロモンというべきか。女子高生が持っているべきとは到底思えない、その側を通っただけで思わず反射的に勃起をしてしまうようなエロさを彼女たちは兼ね備えている。その魅力が彼女たちに特別性を与えているのだ。

 そう思うと、この美少女たちが纏わりついてくるように寄ってくるハーレムラブコメのような状況にも、なぜだか不満を覚えてしまう。こんなに嬉しい状況なはずなのに楽しめないなんて、それが許せない。

 そんなじっとりとした想いを抱いきながら、ジロリと睨むようにあの三人を見ている俺の背後へと、また新たな声が響いた。


「あっ! 見つけた見つけた! やっほー!」


 アストルフォの声だ。

 顔を見なくてもわかる。

 この間の抜けたような、何も考えていないとしか思えないくせに絶対にブレることのない声が俺のどんよりとした曇り空のような不快な心を晴天さながらに晴らしてくれた。


「やれやれだ……」


 俺は何を考えていたのだろうか。

 あの訳の分からない淫夢で、頭がおかしくなっているのだろう。

 俺がやるべきことはこの事件を解決することで、そのために、あの二人が危険に陥らないか見張っていることだ。どうやら現実世界でも、彼女たちは中年オヤジに好意を抱く、特殊な性癖の持ち主のようだ。そういったものを否定することは出来ないし、しちゃいけない。あの二人が一種の変態なのだと認めるほかはない。

 俺は少しだけ肩をすくめながら、アストルフォの声がした方へと振り返る。

 相変わらず爆乳を揺らしている、あまりにも自分の変貌が起こした性的な魅力に無自覚な姿に苦笑をこぼしてしまう。


「おいおい……あんまり大きな声を出すなよ、アストル────」


 そこで、俺はいつものようにアストルフォへと声をかけていく、まさにその途中だった。



「おっはよー! 今日も元気にしてた、『おじさん』っ♡」



 アストルフォは俺のことなんてまるで見えていないように通り過ぎていき、俺の背後に居たキモい中年用務員の背中に抱きついていったのだ。


「………は?」


 呆然とした声が思わず漏れてしまったが、そんな俺のことを馬鹿にできるやつなんて居ないはずだ。

 それぐらい、今の状況は異常事態なのである。


「アストルフォ、おはよう。今日も元気だね」

「おはおうございます、アストルフォさん。今日はいつもより少し早いのでは?」

「立香とマシュもおはよ~! うん、本当はもう少し眠っていたいな~って気持ちだったけど、でもでも、学校にはおじさんが待ってるもんな~って思ったら居ても立っても居られなくなってさ~♡」

「ぶひひ、て、照れるな~♪ あ、アストルフォはそんなに僕に会いたかったのぉ?」

「もちろんっ! なんでおじさんは用務員さんなの? 僕、おじさんと一緒に学校生活っていうやつ送りたかったなぁ♡」


 そんな混乱している俺のことなどまるで無視をするかのように、アストルフォは背中にのしかかるように抱きついたまま、藤丸やキリエライトと会話をして、ラブラブカップルのようにあの中年用務員といちゃついた会話を繰り広げていた。

 そんなアストルフォの信じられない姿を見てしまった俺は、考えるよりも早く、体が動いてしまった。


「ちょ、ちょっと待てよ、アストルフォ!」

「………………え、なに?」


 グイッ、と。

 アストルフォの細くて小さな肩を勢いよく掴んで、そのままこちらに振り向くように思い切り引っ張る。アストルフォは先ほどまで太陽のように素敵な笑顔を浮かべていたはずなのに、俺に向ける視線は冬の北風なんかよりもずっと冷たい、空々しいものだった。

 そのアストルフォのものとは思えない視線に気圧された俺は、気付いていなかった。


「うわ……で、出た……」

「先輩、おじさま……怖いです……」


 俺を見た藤丸は嫌悪感を丸出しにして眉をひそめて、キリエライトに至っては怯えるように藤丸や中年オヤジの体に隠れる形で身を小さくしていることにも、気づかないほどの衝撃だったのである。


「……ちぇっ。ほら、ちょっとこっち来てよ」

「え、うわぁっ!?」


 冷たい視線に戸惑っていた俺の手首を、逆にアストルフォが掴み返し、強引に体を引っ張っていく。

 その力は、俺なんかとは比べ物にならないぐらいに力強いものだった。アストルフォが人類の歴史に名を刻んでいるほどの騎士だということを、嫌でも思い出させてくれる。TS女体化して爆乳化してしまった、歩くポルノとしか表現の出来ないエロすぎる姿になっても、アストルフォの戦闘力が変わったわけではないのだ。


「あのさぁ! なんで余計なことするの!? 立香もマシュも、完全に怯えてたじゃん!」

「え、あ、ご、ごめん……?」


 見たこともない、アストルフォの怒りを向けられる。

 いや、アストルフォの怒りだけならば以前の聖杯戦争でも見たことがあった。邪悪な魔術師に明確な怒りを示すその姿は、まさしく伝説に語られる正しい騎士の姿だった。

 俺の中にある、そういった英雄に憧れる男の子の部分が擽られてしまうようなかっこよさで、今でも明確に思い出すことが出来る。

 だが、今その怒りを向けられているのは自分なのだ。背後から守られるように見ていた怒りと、今まさに自分に向けられる怒り。その違いを感じ取れないほど、俺は鈍感な人間ではない。


「はぁぁ……マーリン、じゃなくて、LA。説明してあげて」

『はいはい。それじゃ、アストルフォはよろしくね』

「了解。それじゃあね」


 しどろもどろになっている俺を見て、呆れたように溜息をついたアストルフォは説明すら耐えられなかったようだ。そして、忌々しそうに俺を睨みつけた後に背中を向けて、またどこからか覗いていたのであろうLAに俺のことを丸投げするのだ。

 LAは苦笑しながら現れ、そして、俺には聞こえない声量で、あるいは魔術を利用してアストルフォだけになにかを囁いた。


『それからアストルフォ……これで『完成』したから、うん、もう『大丈夫』だよ。今日が最後になる』

「え……ほ、本当!? やったー!」


 ぶるるんっ♡


 そのLAの言葉がよほど嬉しかったのだろう。

 アストルフォはその場で大きくジャンプをし、その爆乳を大胆に揺らしていくのである。勃起を通り越して思わず射精しそうになるほどのエロい乳揺れジャンプに俺は目を奪われてしまった。

 何を語られたのかわからないが機嫌が良くなっている、謝るなら今だろう。


「あ、アストルフォっ……」

「……えー、なに?」

「ごめんっ!」

「へ?」


 ガバリ、と。

 周囲に人が多く居るというのに、俺は外聞など気にすることなく頭を大きく下げた。

 90度にもなりそうな謝罪のお辞儀だが、実際に謝らなければいけないのだからこれぐらいは当然だ。


「アストルフォがちゃんとこの事件を解決しようとしてたのに、お、俺は……すまん! あのおっさんに嫉妬してたんだよ!」

「ちょ、ちょっとちょっと……どうしたの?」

「藤丸やキリエライトと仲良くしてるおっさんが、その羨ましくて……変な目で見てた。冷静になれなかったんだ、ごめん。でも、冷静になった。俺がやりたいことって、アストルフォみたいに誰かを助けることなんだ」


 あの聖杯戦争、何者でもないモブな俺を助けるために命をかけてくれたアストルフォ。

 それは俺だからアストルフォは助けてくれたわけじゃない。

 俺は特別なんかじゃない。

 なんでもない人を救うために命を賭けて戦えるアストルフォこそが特別なのだ。

 そんなことは、俺だってわかっている。

 だから、俺もそんな風になりたいと思った。

 特別なアストルフォのように生きたいと思った。

 それを、変な嫉妬やこの学園で何故かモテモテになったことで忘れかけていたのである。


「……へ~♪」


 そんな風に頭を下げている俺の耳に、アストルフォの弾んだ声が響いてきた。

 なんとなく、アストルフォの機嫌のいい声を向けられたことが久しぶりな気がした。


「うん、うんうん! な~んだ、君もちゃんと考えてるんじゃないか! いやいや、ちょっと誤解してたかもね! ほら、僕って英霊だから、基本的に前にサーヴァントとして召喚された時の記憶とか薄ぼんやりとしてるんだ! だから、君に関してはまっさらな記憶で接してたんだけど……ふむふむ! なんだなんだ、君も中々見どころのある男の子じゃないか!」

「そ、そう、か……?」

「そうさ! う~む、こうなるとちょっと胸が痛くなってくるなぁ……でもでも、積もり積もった不快感というのもあるし……う~ん、まあ結局決めるのは僕じゃないし、仕方ないかなぁ」

「?」

「あはは! 気にしないで! それじゃ……この事件を解決するために、僕に協力してくれるんだね?」

「もちろん! 俺が出来ることならなんでもやるさ!」

「よしよし! 大丈夫、君にしか出来ないことは絶対にあるからね! それじゃ、バ~イ! LAに色々と話を聞いておいてね!」

「あっ……」

『おやおや、ここでアストルフォの好感度がちょっと上がっちゃったね……まあ、今更ここから先のルートが変わることはないのは事実だから問題ないけどね。それでは、さて……』


 アストルフォは俺へと満面の笑みを浮かべて、あの中年用務員へと駆け出していった。

 そんな俺へと、LAは語りだしていく。


『この状況の説明、させてもらうよ』

「え、ああ、うん。い、一体どうなってるんだ?」

『ひとえに言えば護衛さ。藤丸立香とマシュ・キリエライトを守るため、その傍に居ても何の不思議もないように、アストルフォはあの三人の輪の中に飛び込んだんだよ。キミ、気付いていないのかも知れないけど、あの二人からはストーカーと思われているようだよ?』

「え?!」

『いやぁ、君がここまで警護が下手だというのは私もアストルフォも予想外だったかな。それとも、女の子に好かれるのが当たり前の世界に来てしまって、少し勘違いしてしまったのではないかい? むしろ、「俺のことに気付いてドキドキしてるんじゃないか~」なんて妄想してたりはしないかい?』

「なっ、か、からかうなよ!」


 まさかストーカーと本当に思われていたとは。

 少しショックだ。


『……別にからかいとかではないんだけどね』


 だから、やはりLAがポツリと漏らして、軽蔑する想いが含まれているその言葉も聞こえなかったのだ。俺が顔をあげると、やはり立体映像のLAはニコニコとした、どこか嘲りを含んだ笑顔を浮かべている。そのまま、その魅力的な赤い唇を動かして、言葉を続けていく。


『そして、朗報だ。恐らく、今日の夜に全てが終わる』

「え!?」

『フフフ、実に焦らされてしまったね。だが、それももう終わり。そのクライマックスとなるシーンを君も参加してもらわなければいけない。今日の放課後、南校舎の三階の空き教室に来てくれないかな?』

「もちろんだ! 俺に出来ることならなんでもやるぜ!」

『出来ることならなんでもやるというか、君程度でも出来ることがやっと生まれたというか……まあ、とにかく必ず来てくれたまえ。アストルフォは別の用事があるから、君一人でね』

「了解!」


 ぷつり、と立体映像を投射して、ここではないどこからか送られてきていたその通信が終わる。

 そう、事件もまた今日終わりを迎えるのだ。

 途中からは蚊帳の外のような気持ちだったが、しかし、大一番には呼ばれるということは、やはり俺にもなにか特別な要素があるということである。それはまるで物語の主人公になったかのようで、俺の心を高揚させてくれた。

 あの聖杯戦争が俺の人生で燦然と煌めき続けただけに、それ以降の人生が色褪せたように思えていた。あのときのような高揚がまた味わえるという気持ちを懐きながら、俺は駆け出していく。早く放課後にならないだろうか。

 そんな風に考えて、前を見る余裕もなくなっていたのが良くなかったのだろう。


「……あら?」

「うわっ! っと、っと、おっとぉ!?」


 角から現れてきた人とぶつかりそうになってしまう。

 とは言え、俺はその場で転がるようになんとか回避することに成功した。アストルフォと参加したあの聖杯戦争からこっち、逃げることと避けることは俺の特技となってしまったのである。

 いてて、と擦りむいた体を擦っていると、上から鈴の鳴るようなきれいな声が響いた。


「あらあら、大丈夫ですか?」

「ええ、その、すみません……って、うわ……!」


 その声の主は白衣を身に纏った養護教諭であり──驚くほどに色っぽい美女だった。

 顔の造形が整っているとか、体のラインが凹凸に満ちているとか、そんなレベルの話ではない。ただそこに立って、身じろぎをしているその挙動自体がどうしようもない色気を醸し出しているのだ。魔性という言葉があるが、まさしくその言葉が似合うほどの吸い込まれるような、いや、堕ちていきそうな魅力を備えた美女だった。

 こんな先生、居ただろうか。


「あら、貴方は……ふむふむ、なるほど……」

「な、なんですか……?」


 ウェーブの掛かった黒髪の曲線すら色っぽい先生は、その赤い唇に細い指先を添えながら俺を見つめてくる。その妖しい瞳に見つめられるだけで、俺は射精しそうになる。いや、比喩表現ではなく、実際にちょろりとカウパーが漏れ出してしまった。


「くすっ。花の魔術師も、独特の趣味をお持ちのようですね……」

「はい?」

「あまり、女性の胸元をジロジロと見てはいけませんよ」

「ぬぁ!?」


 その養護教諭の先生はそんな言葉を漏らして立ち去っていく。むっちりとした脚を動かすと、どうやら大きなお尻は自然と左右に揺れてしまうようで、そんな姿すらエロい。歩くだけでエロい美女に言われた『胸ばかり見るな』という事実があまりにも恥ずかしすぎて、俺は真っ赤になり──教室ではなく、トイレに向かってしまった。

 オナニーをするためである。

 朝からアストルフォの爆乳とエロすぎる先生が現れたことで、夢精をしたというのに俺はもう性欲を抑えることが出来なくなってしまったのだ。


「エ、エロすぎるっ……! アストルフォも、あの先生──そう!」


 何もかも、アストルフォとあの先生──。



「───殺生院、先生だっけか……あの先生が、悪いんだ!」 



 学校のトイレでオナニーをするという実績を解除した後、俺はコソコソと教室に戻っていった。

 恥ずかしすぎる経験に身悶えをしながら、俺は事件が解決するという放課後を待ち続けたのである。




【転】


「ここか、LAの言ってた空き教室っていうのは」


 そして、放課後。

 LAから指定された時間は、太陽が沈みだして部活動に励んていた生徒たちも帰宅を始めた頃のことだった。そんな生徒が帰宅していくような時間に、俺はコソコソと隠れるように動きながらその空き教室へと向かったのである。

 中の様子はわからない。覗き込んでみても、カーテンや暗幕を張られているわけでもないのにまるで見ることが出来ない。扉に耳を当ててみても、何の物音も聴くことが出来ない。これは、LAによる魔術で周囲からは認識することが出来ないようにしているのだろう。


「……これで決着が作ってことか。俺の予想とどう当たってるのか、楽しみだぜ」


 俺も俺なりにこの事件の背景というものを推理し、一つの答えというものを考えていた。

 魔術に対する知識などまるでない俺には事件を起こした方法などはわからないのだが、犯人の正体というものならば、この世界の歪みを思えば、怪しい人物が一人だけいたのである。

 そう、犯人は身近なところに居たのだ。


「絶対、あのキモい中年用務員が関わっているはずだ……!」


 そう、あのキモイだがキモタだかキモオだかいう、気持ち悪い用務員の存在だ。

 あんな顔も動きも気味の悪い、男の俺でさえ生理的嫌悪感を覚える相手が、藤丸立香やマシュ・キリエライトのような美少女と仲良くなり、好意を向けられているということは絶対にあり得ないことだ。

 なにか、チートじみた卑怯な手段を用いているとしか考えられない。

 その卑怯な手段というものを成り立たせているものが、聖杯なのだろう。

 あのねっとりとした色ボケ中年の視線は常に美少女や美女に向けられていたことも、あの毎夜現れる影のような敵が女性だけをターゲットとしていたことにも関係していると思われる。


 つまり、俺の立てた推理を整理しよう。

 一つ、この世界は一人の人間の欲望によって作られた異世界である。

 一つ、この世界の中心であろうこの高校には不自然なほどに美しい女子生徒や女教師が集まっている。

 一つ、その高校には女の子たちにセクハラ視線を向けるキモい中年用務員が居る。

 一つ、この世界では毎夜女の子が襲われる。

 一つ、LAが聖杯が完成されつつあると言った時から、藤丸立香とマシュ・キリエライトというこの世界でもトップランクの美少女が中年用務員と仲良くなりだした。


 このことから、あの用務員が犯人だと推理することは何もおかしくない。

 そして、俺に思いついたということはあのLAも気付かないわけがなく、そのためにアストルフォもあの中年用務員に近づいたのだろう。


「つまり、ここに呼び出してあの用務員を成敗するということなんだ……!」


 そのように確信した俺は、扉へと手をかける。


「すぅぅぅぅぅ、はぁぁぁぁ…………!」


 そして、大きく息を吸って、大きく息を吐く。

 緊張と興奮で高鳴っていた心臓の鼓動が少しだけ落ち着いたことを確認すると、俺は、ゆっくりと扉を開けた。



「あれ……あー、やっと来たんだ」



 だが、そこに居た人間はアストルフォただ一人だけだった。


「アストルフォ? あれ……アストルフォだけなのか?」


 アストルフォは空き教室のテーブルに腰掛けて、ぷらぷらとそのむっちりするようになった脚を動かしている。そのたびに短いスカートの裾がひらひらと動いて、その中にあるものが覗けそうになるものの、その奥にある下着を見ることは出来ない。

 真っ暗な影だけが見えるだけだ。


「ごくっ……」


 いや、だが、しかし。

 これは、下着が見えないのではないんじゃないか?

 黒の下着ですらないのではないか?

 ひょっとして、アストルフォは下着を履いていないんじゃないか?


「ねぇ、どうしたの?」


 机の上からピョンと飛び降りて、アストルフォはひょっこりと俺の顔を覗き込んでくる。

 か、可愛い。

 顔が良すぎる。

 以前ですら女の子と見間違うほどの美少女顔だったのに、実際に女の子になったことで体にも変化が起きたのだろうか。なんというか、肌の艶とか唇の瑞々しさが増しているように見える。


「う~ん? 本当に大丈夫? なんだか様子が変だよ?」

「はぁ……はぁ……!」


 ぶるんぶるん、と。

 アストルフォが身じろぎするたびに爆乳が動いていく。これ、間違いなくブラジャーもしてないよな。アストルフォの性格なら胸当てなんて面倒だとしなくても不思議じゃない。それにサーヴァントという人間とはまた少々異なる存在なのだから、胸が重くて疲れるとか筋が切れるとか、そういったことも考えなくて良いのかも知れない。

 つまり、今のアストルフォはノーブラノーパンの可能性があるということだ。


「風邪? 熱とか出てるのかな……?」


 アストルフォはそんなことを考えている俺のことなんてまるで気付いていない様子で、その可愛すぎる顔を心配そうに眉をひそめて、細く長い指をした手を俺の額に当ててきた。

 アストルフォの染み一つない美しい肌をしている手が、俺に触れている。

 情けないことに、俺はそれだけでもう止まれなくなってしまったのだ。



「ア、アストルフォ!」

「えっ!?」



 俺は実力差も理解せずに、そのままアストルフォの肩を掴んで思い切り地面に押し倒してしまった。

 その瞬間ですら、ぶるんぶるんと揺れる爆乳に気を取られてしまう。

 こんなの、男なら我慢できるわけがないだろう!

 アストルフォは男の子だって? こんな可愛い顔をして爆乳を揺らしてる男なんて居るわけないだろ!

 そ、それに、アストルフォだってそれをわかっているはずなのに、こんな距離が近いなんて……どう考えても誘っているとしか考えられない!

 だ、だから、これは純愛! 俺とアストルフォがやっと結ばれる、感動的な純愛セックスなんだ!


「ふぅぅ! ふぅぅ! ア、アストルフォ! アストルフォッ!」


 俺はのしかかるようにしてアストルフォの体を押さえつけることで手を空けていき、その空いた手でズボンを脱いでいく。

 だが、中々脱ぐことが出来ない。

 ジャージのようなものではなく、ベルトを使った学生ズボンであるために、性欲に支配されて焦っている俺の手が震えてしまっているため、うまく脱げないのだ。


「ぅぅ、くぅぅぅ、あっ! ぬ、脱げ────」


 そして、長々と時間をかけてやっと俺のズボンが脱げたその時のことだった。



「──おらぁっ! なにやってんだ、このクソガキぃ!」



 ドンッ、と。

 ものすごい勢いで、俺は股間を蹴り上げられてしまった。


「っぅっっっぅっっっぅ~~~~~~~!?!?!?!?!!??」


 男ならばわかってもらえるだろうが、俺は声にもならない声を上げてしまう。むき出しになっていた股間を強打され、耐え難い痛みを与えられた俺は惨めに股間を押さえながらゴロゴロと空き教室の床を転がっていった。血は、血は出ていない、はず。潰れてはいないのだろう。だが、それだけだ。激しい痛みを覚えているという事実になんの違いはない。


「っっっっっぅぅぅぅ! ゅぅぅぅっゅぅぅっっぅ!?」

「れ、レイプは許せねえよなぁ! こんな神聖な学び舎で、なんてガキだ!」

「ひょ、ひょまえ、はぁ……!」


 なんとか痛み以外にも意識を割けるようになった俺は、その下手人があの中年用務員であることに気づいた。涙目になりながら地面に転がる俺を、あのニチャニチャとした不快な笑みを浮かべているではないか。なぜ、この男がこんなところにいるのだ。

 俺が事態を把握できず、さらに強烈な痛みによって頭が混乱している横で、さらに理解不能な出来事が襲いかかってくる。



「うわぁ~ん、マスター! ぼ、ぼく、怖かったよぉ!」

「お、おお、よしよし。可哀想に……ア、アストルフォはこのガキのことをちょっと見直したばっかりだったのにねぇ」



 なんと、あのアストルフォが中年オヤジの胸元に飛び込んだのである。

 そして、グイグイとその全身を中年オヤジのブヨブヨとした締まりの無い体に押し付けていき、中年オヤジはと言えばまるで犬猫にするような仕草でアストルフォの頭を撫でていくのである。


「ふぁ……♡ 僕、マスターに頭なでられるの、好きぃ……♡ もっと撫で撫でしてぇ♡」

「ふひひ、それもいいけどぉ、こっちのほうが良くないかなぁ?」

「あっ……♡」


 キモい中年オヤジはアストルフォの手を掴むと、その汚い股間へと導いていった。信じがたいことに、用務員の作業着の中にあるくさそうな股間に手を突っ込まれたというのにアストルフォは嬉しそうに頬を染めていた。

 知らない。

 知らない。

 こんなの知らない。

 俺の知ってるアストルフォが、あんな顔をするわけがない。

 何が起こっているんだ。


「なんなんだよ、これぇ……!」

「うっせえぞ、ぶひひ! れ、レイプ魔のお前からぁ、僕がアストルフォを守ったってだけだよぉ! そんな単純なこともわからねえのか、この犯罪者が! い、いいかぁ! アストルフォはなぁ、ぼ、僕の女なんだよ! お前みたいなキモガキが手を出してんじゃないぞ!」

「マスター……♡ うん、僕はマスターの女だよ……♡」


 レイプ魔、犯罪者。

 その言葉に、俺の脳が止まってしまう。

 違う。

 そんなつもりはない。

 だって、アストルフォだって俺のことを好きなはずだ。


「ち、違う! 俺はレイプなんて……!」

「……はぁ?」


 だが、そんな俺をさらに追撃してくるのは中年オヤジではなく、見たこともないほどに表情を冷たくしたアストルフォだった。


「あのさぁ、どう考えても君は僕のことを襲おうとしたじゃない。まさか、僕が君のことを好きだと勘違いしてたの? さすがにそれは自惚れだよ、君には男の子だった僕を女の子だと思い直させるほどの魅力なんてないのにさ。こんなに素敵なマスターならともかく、君のことを男の子として好きになるなんて絶対にありえないよ」


 アストルフォの冷たい言葉だった。

 そのショッキングな言葉に、俺は、パクパクと口を開閉させることしか出来ない。

 そんな俺を見て、アストルフォは大きくため息を付いて言葉を続けていく。


「マスターだけのモノのはずの爆乳をいっつもいっつもジィっと見てきて不快な視線をついに行動に移したってことでしょ? 今の状況を見て、誰がレイプじゃないって信じるのさ。ねえ、マーリンもそう思うだろう?」

『そうだね、誰がどう見ても、ゴローくんはアストルフォを性的に犯そうとしていたとしか見れないね』


 アストルフォの冷たい言葉を引き継ぐものも居る。

 それは、他ならぬLA──マーリンと呼ばれた魔術師であった。

 それが彼女の真名であり、それをアストルフォは知っていたのだ。

 始めから、俺はこの二人とは仲間ではなかった。

 俺はこの二人に何らかの目的を持って、観察をされていたのだ。


『残念ながら、アストルフォという絶世の美少年が女の子になったことで、つまらない性欲を抱いてしまったわけだよ。君はアストルフォと自分のことを信頼があるのだから、そんな目を向けるわけがないと言っていたけれど……実際のところ、初めて会った時からずぅっとあの爆乳をいやらしい目で見ていただろう?』

「そ、そんなことは……!」


 必死に否定しようとするものの、俺に向けられるアストルフォとマーリンの冷たい目に言葉が続かない。マーリンもまたあの妖精のような神秘的な美貌をつまらないと言わんばかりに歪めて、先ほどのアストルフォのように大きな溜息をついた。


『はぁ……あるんだよ、君が気付いていないだけ。あるいは気付こうとしていないだけ。

 そこを否定されると面倒臭いんだけどなぁ……まあ、いいさ。君の救いがたい性根に相応しい、救いがたい性癖を見せてもらえばこの特異点は解決するんだからね。

 さあ、肝尾くん。それにアストルフォ。そろそろクライマックスに移ってくれたまえ』

「オッケー!」

「ふひひ、了解!」


 その言葉と同時に、アストルフォと肝尾が共同でそのズボンを降ろしていく。

 当然、そこであのキモい中年オヤジのチンポが露出された。


「へっ、あっ、な、なぁ……!?」

「ひゃうんぅっ……♡ か、かっこいいよぉ……♡」

『はぁぁ……♡ なんて、雄々しい姿なんだ……♡』


 そのチンポを見た瞬間、俺は言葉を失った。

 一方で、アストルフォとマーリンは頬を真っ赤に染めて恍惚とした視線を向けている。


「ぶひひ、どんなもんだい。お前のしょうもないチンポとは段違いだろう?」

「ぅっ……!」


 悔しいが、なんの否定も出来なかった。

 それは、あまりにも大きすぎた。

 視覚や嗅覚、触覚での情報ではなく、魂で理解できてしまった。

 雄としての格が違う。

 この男には絶対に敵わない。

 太く、長く、臭く、固い。

 ぷるぷると、足が震えてしまう。

 怯えているのだ、俺は、この男に。


『フフフ……君、気付いていないのかな? いいや、もう気付いているんだろう?

 その……小さく膨らんでしまっている股間がなによりも証明しているじゃないか♡』


 そんな俺にトドメを刺すように、ゆっくりとLAの唇が三日月に釣り上がる。

 ああ、俺はなにか邪悪な謀に巻き込まれていたのだ。

 俺は主人公なんかではなく、ただの獲物だったのだ。

 それがわかったにしても、今はあまりにも遅すぎる。

 俺は、怯えているだけじゃない。



『アストルフォが君の大嫌いな肝尾くんに好意を示していることに、君はものすごく興奮しているのさ♡』



 そうだ。

 こんな状況なのに、俺は股間が痛いほどに勃起してしまっている。

 なんで?

 俺は、なんでこんな反応をしているのだ?

 こんなこと、起こるわけないのに。


『種明かしといこうか。君がギャルゲーやエロゲーみたいだと悦に浸っていた日常の裏で……なにが起こっていたのかをね♡』


 くらり、と。

 俺の脳が揺れるのを感じた。

 そして、LAの魔術で俺はこの世界の真実を知らされたのだ。





 放課後のことなのだろう。

 夕焼けの赤い光が入ってくる用務員に用意された部屋の中で、この学校の用務員・肝尾拓郎が一人の美少女の体を貪っていた。


「ふぅぅ、つ、ついにアストルフォも爆乳になったかぁ。ぼ、僕はちっぱいも好きだけど、やっぱり遊ぶ分にはこういう爆乳もいいもんだよねぇ♪ ぶひっ。ブラダマンテやデオンも巨乳化したし、そういう風に爆乳騎士を揃えてみるのも良いと思ってたんだけど……まさか、本当にアストルフォが爆乳になるとはねぇ♪」

「うんぅ♡ こ、これ、絶対マスターの影響だよね……♡ ぼ、僕、前の特異点で爆乳になってたデオンを見て、すごく羨ましかったから♡ 僕もデオンみたいに体を変化させられるスキルみたいなのがあったらなぁとか思ってたの、マスターが見抜いてくれたんだよね♡ マスターには不思議な力があるみたいだから、僕の願望とマスターの優しさが噛み合って、霊基が変化しちゃったのかな♡

 うんっ♡ すっごく嬉しい♡ こうして、おっぱいでマスターのあっついオチンポ様を感じられるの……とっても幸せな気持ちになれるんだ♡」


 用務員として泊まり込むこともあるため、休憩室としての意味も持つその用務員室の中には布団を敷かれており、そこにはピンク色のセーラー服に身を包んだピンク色の髪をした超が幾つもつく美少女が寝そべっていた。セーラー服を着るような年齢の少女としてはあり得ない、100センチを越えた爆乳がまろび出ており、肝尾はその美少女の腹の上にまたがるようにのしかかり、その爆乳を使ってパイズリを楽しんでいた。


 その美少女の名は、アストルフォ。


 シャルルマーニュ十二勇士として伝説に記された騎士の一人であり、同時に『紅顔の美少年』として名高い英雄だ。

 そんな美少年騎士だが、とある特異点に召喚された際に女体化されてしまい、さらにそこで肝尾拓郎という人類最後のマスターに出会ってしまった。魅了チートという他者の存在そのものを冒涜する、回避不可能の『力』を持った肝尾によってアストルフォは美少女として魅了されてしまい、自身の性別を変化させるほどの強烈な体験を叩き込まれたのである。

 そうして英霊の座に刻まれたその経験は、アストルフォの性別を変化させることになったのだ。

 アストルフォは手と手を肝尾と恋人繋ぎにしたまま、それでいて脇を閉めることで爆乳の間にあるチンポを締め付けていく。肝尾は間の抜けた顔で一心不乱に腰を振っていく。ヤリチンと呼んでも何の問題もないほどの経験を積んでいるというのに、変わることなく童貞のような余裕の無さで腰を振ることが出来るのは、ある意味では一種の才能だろう。


「それにしても……ク、クソッ! クソクソッ! あ、あのガキぃっ! ぼ、ボクのこと偉そうに睨みつけて、ば、バカにしやがってぇ!」


 それでいて、嫉妬深いというか人間性の小ささは変わらないようだ。

 昼間にアストルフォの手を掴みながら肝尾を睨みつけてきた生意気な生徒、『宇宮吾郎』の姿に異常なまでの怒りを示していた。肝尾は人間性が貧しいのにプライドだけは人一倍高いという、あまりにもみっともない性質をしている。その彼のプライドをゴリゴリに刺激してきたのが、昼間の出来事なのだ。

 騎士であるアストルフォからすれば、さすがに愛おしいと魅了されている男の言葉といえども、そんな風に他者へ怒りを示しているならば宥めていくだろう。『えー? 君の怒りはわかるけれど、彼の気持ちも考えてあげなきゃ』などという言葉を出すのが、常のアストルフォのはずだ。

 しかし。


「んぅっ♡ はぁ、ふぅぅ♡ ねっ、ねっ♡ マスター、お願い♡ もっとお手々ぎゅってして♡ 『アイツ』に掴まれて汚れちゃったから、マスターのお手々で上書きして♡ アイツの気持ち悪い視線で穢された爆乳おっぱいをオチンポで上書きしてくれてるみたいに♡ べっとりした汚い脂がまだ残ってるみたいで、本当に気持ち悪いんだぁ♡ 僕の爆乳になったおっぱいを味わいながらぁ♡ 恋人みたいにぎゅぅ~~って握ってぇ♡」


 アストルフォは肝尾へとおもねるように、吾郎のことを悪し様に貶していくのだった。

 今のアストルフォは常のアストルフォとは程遠いところまで堕落していたのである。

 女の子になったという『性別』の変化だけではない。

 爆乳と呼ぶに相応しい豊満なバストへと変化した『見た目』だけではない。

 アストルフォが一番変わってしまった部分は、その『内面』なのだと嫌でもわかってしまう。


「むふぅ! こ、このおっぱい! このおっぱいは僕だけのものだぞぉ! ア、アストルフォ! もっと腕でおっぱいを押しつぶして、締付け強くしろぉ!」

「いやぁんっ♡ ぅうぅん♡ もっと、もっとおっぱいオマンコ犯してぇ♡ ひぅ♡ こ、これぇ♡ 好きぃ♡ 心臓に近い部分に、マスターの逞しいオチンポ様を擦られるとぉ♡ はわぁ♡ すごく、ドキドキする♡ マスターの力強さを、ものすごく感じることができるからぁ♡」


 さながら電柱に小便をしてマーキングを行う犬のように、肝尾はアストルフォの爆乳へと自身のチンポを擦り付けていく。実際、肝尾のチンポはその大きさに比例するように濃厚な雄の臭いを放っている。普通の女性が相手ならば、これだけで他の男を本能的に跳ね除けるマーキングとして成立するだろう。


「ひぃっぅぅ♡ んんぅ♡ こ、これすごぉい♡ おっぱいの谷間から、マスターのかっこいいオチンポ様がぁ♡ ずぶずぶっ♡ ずぶずぶって♡ 出入りしてるの、本当にすごくエッチな光景だよぉ♡ ふぅぅ♡ ぅぅっぅ♡ な、なんだか腰がムズムズしちゃう♡ お、おっぱい犯されてるだけでぇ、ぼ、僕、発情しちゃってるよぉ♡ それどころか……ひぐぅ♡ おっぱいを犯されるだけぇ、子宮と脳が勘違いして、イッちゃいそう♡ か、カウパーまみれのおっぱいが熱くなって、イッちゃうぅぅっっ♡」

「いいぞぉ、何度も何度も犯してるのに全然慣れないクソ雑魚おっぱいめぇ♪ ぶひひ、お前がエロすぎるからどんなにザーメン塗り込んでも全く効果ないんだから、この変態女騎士にも困ったもんだよぉ♪」

「あぁんっ♡ ごめんね♡ 僕が雑魚すぎるから、またおっぱいでイッちゃうの♡ 僕がエロすぎるから、どんなにマスターの所有物だって刻まれても、エロい目で見られちゃうの♡ ごめん、ごめんねぇ♡ い、いい加減、本当わかって欲しいなっ♡ 僕はマスターしか興味がないのにぃぃっ♡」


 だが、アストルフォは普通の女性ではなく、絶世の美少女である。

 アストルフォが肝尾に抱かれた回数はそれこそ一度や二度ではない。何度も何度も、彼女の体の中にも外にも大量のザーメンを塗り込むように浴びせていた。

 そんな肝尾の臭いをプンプンとしてしまいそうなほどに染み込まされているアストルフォだが、他の男たちからの欲望に満ちた視線が消え去ることはない。例え、他のオスの所有物だと本能で理解しても、このアストルフォが相手ならば万に一つの可能性にかけて勃起して、あのエロすぎる最高のメスを犯したいと思ってしまうのだ。普通の女性ならば諦められることも、アストルフォほどの可憐すぎる美貌と大玉メロンよりも大きく見える爆乳を持つ魅力的な美少女が相手ならば、もはやマーキングなどなんの意味も持たないのである。


「おぉぉっ! 射精るっ、射精るぞぉっ……! くぅ、こ、このまま射精するからな! お前のおっぱいマンコで乳内射精するからな! いっぱい締め付けろぉっ!」

「んぎゅぅぅっ♡ ふぅぅ、むにゅぅぅっ♡ むぎゅうっぅぅうっっ♡ ふふふ、い、いっぱい締め付けたよぉ♡ って、うわぁ♡ こ、これやばっ♡ マスターの腰振り、力強すぎるよぉ♡ サーヴァントの僕が一生懸命柔らかおっぱいでオチンポ様を拘束してるのに、それを振りほどいて乳内から出ちゃってくる♡ くぅ、ふぅぅぅ♡ よ、よしっ♡ ほら、ズリズリっ♡ ズリズリィィ~~♡ い~っぱい、射精してね♡ 僕の大好きな……マ・ス・ター♡」

「おぉぉっ! うぉぉ、うおっぉぉぉぉぉぉ!」


 どびゅるうぅっっ! びゅるるるっ! ずぶびゅうっぅぅぅ! どっぷっ♡ どぷどぷぅぅっ♡ ずぶびゅるるるるぅぅ!


「んひっぃぃぃぃ~~~~♡ ぎだぁっ♡ おっぱいの中にいっぱいザーメンきたぁぁっ♡ あぁ、燃える♡ 燃えちゃうよぉっ♡ 心臓がなくなっちゃうぐらいに熱くなって、ぼ、僕、死んじゃいそうだ♡ パイズリをしただけなのに、おチンポ様に殺されちゃう♡ おぉぉっ♡ おほぉぉっっ♡ あっ♡ ザーメンの臭いと熱さでイッちゃう♡ 子宮が震えて、脳が痺れて、全身でアクメをキメちゃうんだ♡ イグッ♡ イグイグっ♡ イグゥぅぅぅぅっっぅ~~~~♡♡♡♡」


 ぷしゃぁぁっ♡ ぷしゅっ♡ ぷしゃっ♡ ぷしゃぁぁぁっ♡


 肝尾がパイズリで射精を終えると、アストルフォもまた勢いよく潮を吹いて絶頂を迎えた。本物のセックスでも中々たどり着かないようなガチアクメに、ただ、恋人繋ぎをしながらパイズリをしただけで達してしまったのである。

 このアストルフォの変貌、そう、もはやどこが変わってしまったのかもわからないほどの変貌が行われたのには理由がある。

 それこそが肝尾という男が持つチート能力、『魅了チート』によってアストルフォの心は、肝尾にとって都合のいい形に無理矢理に捻じ曲げられてしまったのだ。


「ふ、ふひひ♪ 本当にアストルフォは可愛いねぇ、僕を思って女の子になったどころか、こんな風におっぱいまで爆乳になってくれるんだから♪」

「はわぁぁ……♡ マスターの大きな手で撫で撫でされるの、好きぃ……♡ えへへ、マスター♡ マスタ~♡ もっともっと、その素敵な笑顔を僕に見せてぇっ……♡」


 そのチートのうちの二つ、『ナデポ』と『ニコポ』が今アストルフォに向けられていた。

 アストルフォの桃色の美しい髪を撫でている肝尾の手、これもまたチート能力を秘めている。文字通り『撫で撫で』とすると好感を抱いて頬を『ポッ』と染めてしまうチート能力だ。人によっては頭を撫でられるという行為自体に強い不快感を覚えてもおかしくないのだが、肝尾がする場合に限り、無条件に彼に好意を、いや、恋慕の念を抱いてしまうのだ。

 また、肝尾が浮かべているこのニチャニチャとした不快な笑みもまたチート能力が発揮されている。肝尾が『ニコリ』と笑ってみせると、その笑顔がこれ以上ないほどに魅力的に思えて『ポッ』と高揚してしまうのだ。それが客観的に見て魅力的かどうかなどは問題ではない。ただ、『肝尾の笑みはこれ以上ないほどの魅力的なものである』というルールを無理矢理に押さえつけられてしまうのだ。

 そして、肝尾にはもう一つ代表的な魅了チートを持っている。

 肝尾はアストルフォの乳内に挿入していたチンポをゆっくりと引き抜いていく。


「それじゃ、いつものようにお掃除フェラをしてもらおうかなぁ」

「うんっ♡ じゃあ、失礼します……ちゅっ♡」


 常人とは比べ物にならないほどの逞しさと精力を秘めたチンポ、これこそが肝尾のチート能力の一つである『マジカルチンポ』だ。

 挿入をされれば、いや、触れてしまえば、いやいや、その目で見ただけで牝として肝尾に運命の恋にして真実の愛と見紛うほどの感情を抱いてしまう、あまりにも強力無慈悲な洗脳能力なのである。

 この『ニコポ』『ナデポ』『マジカルチンポ』の三つを幾度となく味わわされたアストルフォは、もはや原型がないほどに肝尾にのみ都合のいい牝に変貌してしまったのだった。

 弱きを助け強きを挫く、どんな苦しい時でも面白いじゃないかと笑みを携える、理想的な騎士はアストルフォの中にはもはや存在しない。

 どのような時でも肝尾が第一、それ以外の人間には興味がなし、肝尾のモノである自分を卑猥な目で見る人間など許せることが出来ない。

 そうだ。

 この特異点に現れた時点で、宇宮吾郎の知るアストルフォなどもはや存在していなかったのだ。

 それをさらに強調するように、また別の場面へと変わっていく。



 ────場面が変わっても、そこはやはり、簡易的な調理が出来るためのコンロや仮眠用の布団の揃った用務員室の中での出来事だった。



「おほぉっ♡ ほっ♡ ほぉっ♡ んひぃぃっっ♡ おほっ♡ ほぉぉ~~~っ♡ ダメだ、ダメダメぇ♡ マ、マスターには可愛い僕だけ見てほしいのに、な、なんどセックスしても可愛くない声が出ちゃうよぉ♡ マ、マスター聞かないで♡ おほっ♡ ぼ、僕の豚さんとか牛さんみたいな間抜けな声、聞かないでぇ♡ マスターに嫌われたくないんだ♡ お、お願い、マスター♡」

「ぐふ、ぐふふっ! べ、別にいいじゃないか♪ アストルフォの間抜けだけどかわいい声、僕は好きだからさぁ……もっともっと、あの可愛いアストルフォが僕にかかれば雌豚に変わるんだって教えてくれるオホ声を聞かせてよぉ!」

「んほぉぉっっぉっっっぉ♡ そ、それダメェ♡ 下からズンズンって突き出してくるその腰使い、ぼ、僕、耐えられないよぉっ♡ ライダーなのにっ♡ 騎乗スキルもA+で高いのにぃ♡ ま、マスターのことは全然乗り越せない♡ マスター凄すぎるよぉ♡」


 そんな昼間から、肝尾とアストルフォがセックスをしていた。

 布団の上で大の字になって寝そべっている肝尾の上にアストルフォが乗って腰を振る騎乗位の体位だ。アストルフォは熱い視線を肝尾へと向けており、情熱的に腰を動かしている。その腰の動きだけで童貞ならば思わず射精してしまいそうなほどのエロチックな光景だった。

 それでいて、肝尾がずんと腰を勢いよく浮かせれば、アストルフォは余裕なく喘ぎだしてしまう。あの可憐な顔と鈴のなるような声の持ち主とは思えない、家畜のような野太い声が漏れ出していく。そのギャップが、たまらなくエロい。『下品すぎて逆に抜けない』なんてことが戯言だと思えるほど、今のアストルフォは扇情さを携えているのだ。


「おっぉ……! こ、このおっぱい、本当にムラムラするなぁ! ほら、オナホ騎士のアストルフォ! 君の主が、君の今の王様がこのおっぱいを愛撫してやるからなぁ、ぐひひ!」


 肝尾は目の前でブルンブルンと揺れるおっぱいに我慢ができなくなり、そのまま爆乳おっぱいへと手を伸ばしていく。今までの貧乳で女体化をしていたアストルフォでは絶対に出来なかった、爆乳をイジメながらの騎乗位セックスだ。


「ふぎゅぅぅぅっっ♡ おっ♡ おぉぅ♡ おほぉぉ~~♡ や、やめてぇ♡ おっぱい気持ち良すぎるから♡ マスターにムギュぅぅって愛撫されると、気持ちよくなりすぎちゃうからぁ♡ あっ♡ あぁっ♡ 腰が、うまく動かないよぉ♡ オナホ騎士としての仕事が出来なくなっちゃう♡ だ、だからっ♡ おっぱい弱すぎる雑魚騎士だから♡ 手加減してぇ♡ 強すぎるマスターには絶対勝てないから、手加減してセックスしてよぉ♡」

「うるせぇ、無理ならオナホに徹しろ! 僕が勝手にチンポ気持ちよくするだけだからさ!」


 ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡


 おっぱいへの愛撫とは言ったものの、実際は握り潰すと言った方が良いような暴力的な動きだった。普通ならば、快感ではなく痛みを覚えて百年の恋も冷めかねないほどの行いである。だが、肝尾に限っては絶対にそうはならない。ナデポを引き起こす肝尾の手はもはや『マジカルハンド』と呼べるほどの常識外れのものとなっていた。その手から引き起こされるものには、無条件で好意的に捉え、さらに肉体は性的な快感と幸福感を覚えてしまう始末である。

 ただでさえ怖ろしい魅了チートはさらに進化していく。

 この世界をゲームに例えるならば、『肝尾がどんな選択肢を取っても、結果的にヒロインの好感度は急上昇する』というチートが行われているのだ。


「ほぉぉっ♡ し、子宮口に届いてるっ♡ 僕のぉ、マスターのオチンポとしかキスしたことがない子宮口がぁ♡ ぶちゅぶちゅぅぅ、って濃厚にディープキスしてるよぉ♡ オ、オチンポシコシコできて、気持ちいいかな♡ 僕のオナホマンコ♡ オナホ騎士としてのお仕事、ちゃんとできてるかな♡ ダメダメなオナホ騎士の僕のアーパーな脳みそはともかく、オマンコはお仕事できてるかな♡」

「ふひひ、中々いい具合だけど……こんなのじゃまだまだ射精なんて出来ないよぉ!」

「はぎぃぃぃっ♡ ご、ごめん♡ ごめんね、マスター♡ も、もっと、ふぅぅぅっ♡ オ、オマンコ締めるから♡ オチンポが気持ちよくなれるように、オチンポ締めてぇ、むぎゅぅぅ♡ し、子宮でもいっぱいいっぱい♡ マスターのオチンポ様とキスしまくるからね♡」


 おっぱいを握り潰される快感とオマンコを掘り返される快感に襲われているガクガクと体を痙攣させているアストルフォは、思わず救急車を呼んでしまいそうになるほどに快感に溺れて、理性というものを喪った姿をさらけ出してしまっていた。それでも、アストルフォのオマンコは蠢いていく。子宮でチンポの先端をくわえ込むと、膣襞が蠢きだして竿を熱心にマッサージをしていく。チンポから心地よい痺れが、肝尾の体へと伝わっていく。


「くふぅぅっ、ふぅぅ、うっぅっぅっ♡ ひぎゅぅ♡ おぉっっ♡ そ、そろそろぉ、だ、ダメかもぉ♡ オマンコ、マスターのオチンポに恋してるから♡ こんなに熱心に求められたら幸せすぎて、オナホとしてダメになっちゃうぅ♡ マスターよりも僕のほうが気持ちよくなっちゃう♡」

「ぐふふ、僕もチンポ気持ちよくなってるからさ、安心していいよぉ! でも、ほら! まだまだ出来るでしょう! イクのは別にいいけど、僕が射精するまでは気を失うんじゃないよぉ!」

「うん、うんっ♡ ぜ、絶対マスターを気持ちよくするから♡ 僕がマスターのこと大好きだってわかるように、マスターのことを気持ちよくしてみせるよ♡ オマンコを、オチンポに擦り付けて、ほぉおっっ♡ イ、イキそうになるけど、絶対に失神はしないからね♡」


 おっぱいへの愛撫にも慣れてきたのか、アストルフォの腰が再び淫靡に動きだした。そして、腰の動きだけではなくオマンコの動きも変わっていく。膣内が激しく脈動をしてチンポに刺激を与え続けていき、『ジュポっ♡ ジュポっ♡』という卑猥な水音が鳴り響くほどに愛液が多量に生成されていた。

 また、軽めのアクメを覚えるたびにアストルフォの体が軽く痙攣をしていく。それでも腰の動きは止まることない。それは、どれだけアストルフォが肝尾に惚れ込んでいて、気持ちよくさせたいという奉仕心を持っていることが嫌でもわかるような動きだった。


「んぎゅぅぅっ♡ あぁっ♡ も、もう、ダメかも♡ こ、ここぉ♡ 一番奥をマスターのオチンポで責められてぇ♡ ぼ、僕、もうイッちゃう♡ 一番大きいアクメがきちゃう♡ マスター、マスター♡ お願い、一緒に、一緒にイキたい♡ オナホ騎士として未熟だから、ぼ、僕もうイッちゃいそうで♡ だから、マスター、僕の腟内で、射精してぇ♡」

「いいぞぉ、アストルフォ! そのまま動き続けろ! こっちが合わせてあげるからねぇ! 君はもう隙に動いて良いよぉ!」

「やったぁ♡ あ、ありがとう、マスター♡ おぉぉっ♡ ほぉっ♡ おぉぉっ♡ イグッ♡ イグイグっ♡ チンポでオマンコを虐められてイッちゃうぅっ♡ ひぎぃ、おぎょぉ、んほぉぉぉぉぉぉっ♡」

「くぅぅっ! 射精るっ!」


 びゅるるるっ! どびゅるっ! びゅうるっ! どぶびゅううるっるうぅぅっぅっ!


「ん゛ほ゛ぉ゛っ゛ぉ゛っ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛ぉ゛っ゛っ゛ぉ゛~゛~゛~゛~゛♡ しあわせぇ♡ 膣内射精でしあわせアクメ、イッちゃうぅぅっっっぅっぅ♡♡♡♡」

「くぅっ、ふぅぅ、くおぉぉぉ……! し、搾り取られる……!」


 搾り取られるということは過剰な表現ではない。ただでさえ狭めであるアストルフォのオマンコが、アクメの衝撃でぎゅぅぅぅっと勢いよく締まりだしたのだ。それこそチンポがもぎ取られるのではと一瞬勘違いしてしまうほどの締め付けである。もちろん、マジカルチンポという最強のチートチンポを手に入れている肝尾はその締め付けで痛みを覚えるようなことはない。むしろ、多量に発生している愛液も相まって心地よさを感じているほどだ。


「ふぅ。中々だったよぉ、アストルフォ」

「おほぉ……♡ あへ、あへぇぇ……♡」


 アストルフォの膣内へと全て射精しきると、アストルフォの体を乱雑に持ち上げていく。ドサリと床に転がされたアストルフォは、それでも幸せそうなアヘ顔とオホ声を晒しながら、アクメ失神をしていた。気を失ってしまっているアストルフォを気遣うようなことなど肝尾は一切せず、その布団の上で下半身を露出したままあぐらをかいている。


「ふひぃ~、ぬるぬるでチンポ気持ち悪いな……アストルフォの髪でいいか」


 しかも、アストルフォのきれいな桃色の髪を手に取ると、その髪で愛液と精液で汚れてしまったチンポを拭い出したのだ。最低の男という言葉ですら生ぬるい行為を取っている肝尾だが、それを咎めるものは誰も居ない。


『んぅぅ、ふぅぅ♡ はぁ♡ はぁぁぁっ♡ あぁ、なんて男らしいんだ……♡ 自分のチンポでアクメ失神させた牝のことを顧みずに、んぅっ♡ そ、それどころかぁ、髪を使ってチンポをきれいにするなんて……♡ くぅぅ、か、かっこよすぎるよ、肝尾くん……♡』

「……ぶひひ」


 それは、この場には肝尾とアストルフォ以外が存在しないからという意味ではない。密かに盗み見していたマーリンが居るのだ。と言っても、途中からオナニーに夢中になって隠れきることができなくなり、肝尾に気づかれているのだが。

 そんなマーリンは肝尾の暴虐をたしなめるどころか、むしろ肝尾を増長させるように、その神秘的な美貌を真っ赤に染めて、羨ましそうにオナニーをしているのだ。今回は音声だけではなく、立体映像付きだ。あのいつも余裕ぶっている超然としたマーリンが、自分のセックスをオカズにしているというだけで気分がいい。アストルフォは肉体的な快感を強く与えてくれるが、マーリンは肝尾に優越感という精神的な快感を与えてくれるのだ。


「こほん、えっと……マ、マーリン? いる~? ちょっと聞きたいことがあるんだけど~?」

『んきゅぅぅ、ふぅぅ……えっ? あっ、えっと、な、なにかようかな、肝尾くん♡ アストルフォとの秘密の時間は終わったのかな♡』


 肝尾は立体映像のマーリンに背を向けながら呼びかけると、マーリンは慌てた様子で返答してくる。表向きと言うか、マーリンの建前ではアストルフォとのセックスの最中は通信を切っているということになっていた。もちろん、実際にはマーリンはその濃厚なセックスを見て出歯亀オナニーをしているのだが、どんどんと大胆な出歯亀を行っていくマーリンが面白すぎるので、それを肝尾が指摘することはない。

 マーリンは顔どころか全身を赤く染めたまま、いつものように余裕ぶった笑みを浮かべて肝尾の前に現れた。恐らく、その服装がどこか乱れていることに自分でも気付いていないのだろう。


「ぶひひ……いや、なんでもないよ。たださ、一応またこの『特異点』について確認しておこうかな~っと思ってさぁ」

『フフフ、そうだね。そろそろ、物語のクライマックスも近いだろうからね。改めて確認をしておくのは大事なことだよ』


 あのマーリンがこんな無様を晒しているということに肝尾は不細工な笑みを浮かべながら、改めて、『この特異点』の内容を確認していく。マーリンはそんな肝尾の笑みを魅力的に覚えてしまうのか、自然と笑みが漏れてしまう。そして、聴くだけで機嫌が良いとわかる声色でこの特異点の謎について説明をしていく。


『前回も説明した通り、ここは「宇宮吾郎」という一人の少年の欲望が創り出した世界だよ』


 そうして明かされていく、世界の真実。


『彼の心に強烈に焼き付いているアストルフォの姿と、一人の少年ならば当然抱いてもおかしくないハーレム願望。それが相まって、彼にとって心地いい世界が作られたんだ。

 その世界が本当に完成した瞬間、聖杯は顕現する。つまり、彼が望むハーレムが完成して、欲望が満たされるまで私たちは手出しが出来ないというわけさ』

「クソ、本当にムカつく話だよ……! ぼ、僕の女のアストルフォや立香ちゃんにマシュちゃんまで巻き込まれたんだからねぇ!」

『その通り……カルデアがこの特異点を観測したことで、その二人もまたこの特異点に取り込まれてしまったんだ。

 いやはや、早めに気付いてよかったよ。彼の願望を汲み取った聖杯が作り出すこの世界のルール──「美少女や美女は宇宮吾郎に無条件で好意を抱く」なんて、私の好みからは遠く離れた物語に、僕が大好きな君の物語の主要人物が奪われてしまうなんて、私としても本位ではないからね。

 ちゃんと、藤丸立香とマシュ・キリエライトの両名が彼の理不尽な魅了術に引っかからないように幻術をかけることができたからね。それでも、今の彼女たちはカルデアでの記憶を喪っているようだけど……近いうちに記憶は取り戻せるはずだよ』


 マーリンは言葉を続けていく。この世界の、物語の基本ルールを語っていくのだ。


『ただ、そこで少し問題が出来た。彼は当然、藤丸立香やマシュ・キリエライトといった美少女を自身のハーレムに組み込みたいと願う。逆説的に、あの二人を攻略できなければハーレムが完成しないと彼は認識してしまった。

 いや、それともう一つあるね。

 彼は本来ならばそのような対象でなかった人物──「アストルフォ」が、君の影響で美少女化した上に爆乳化までしてしまった「彼女」もまたハーレムに入れたいと思うようになったんだ。

 あの下衆なエロい視線を見ればわかるだろう? 彼は色々と言っているけど、結局は股間でしか物事を考えられないクズというわけさ。

 さて、困ったね。これでは君の恋人や騎士である彼女たちを、あの下衆な少年に捧げなければいけなくなった。そこで、君と私は一つの結論に至り、その準備をしているというわけだね』

「そ、それがもう準備が終わったってことだよね!? そうだよね、マーリン!」

『その通り。彼の下衆な物語は、素晴らしい君の物語の一部に取り込まれることになったんだ』

「あぁ、クソぉっ……! 今でもムカムカする! あ、あのガキぃ、僕の女たちに色目を使いやがって……! そ、それにみんなには劣るけど結構可愛い女の子にもチヤホヤされて……! マ、マーリン! そろそろ終わるんだよね! あのクソガキに────」


 怒りと愉悦が入り混じった、そんな表情を肝尾が浮かべる。

 その笑みにはあまりにも邪悪なものが満ち溢れており、人としての善性を持つものならば思わず背筋が凍りそうなほどな、そんな受け入れがたさを持った笑みだった。だが、それをマーリンは恍惚と眺める。そんな邪悪な笑みさえも、『ニコポ』という魅了チートは好意を抱かせるのである。

 そんな笑みを浮かべたまま、肝尾は大きく叫んだ。



「────寝取られマゾ性癖が植え付けれたんだよね!?」



 寝取られマゾ。

 その文面からしてあまりにも救いがたい性癖を植え付ける。

 それが、肝尾たちが見出したこの特異点を解決するための方法であった。


『ああ。毎夜毎夜、彼には君が美少女とセックスをしている淫夢を見せている。これでも本領は夢魔だからね、いくら聖杯を持っているとは言え、魔術の心得のない一般人が相手ならばこのマーリンさんは簡単にその程度の仕込みは出来るのさ。

 彼はすっかり、君と美少女のセックスでしか勃起できない変態マゾになってしまっているよ

 やれやれ、せっかくのハーレム世界だと言うのに、とんだ性癖を抱いてしまったものだね』

「ぶひ、ぶひひ! ざまあみろ! ぼ、僕の女に手を出そうとしたのが悪いんだよ!」


 二人の会話を改めて整理をしよう。

 一つ、この世界は『宇宮吾郎』の『欲望』を汲み取って『聖杯』が創り出した、宇宮吾郎にのみ都合の良い世界だ。

 一つ、この世界には美少女と美女が溢れており、その美少女たちは無条件で宇宮吾郎に好意を抱く。

 一つ、そのハーレムが完成した時、聖杯は現れる。

 一つ、宇宮吾郎のハーレムには藤丸立香、マシュ・キリエライト、アストルフォの三人が求められている。


 これが前提条件。

 肝尾拓郎の雌奴隷である三人が宇宮吾郎にメロメロにならなければこの特異点は解決できないという、肝尾にとっては耐え難いことが突きつけられたのだ。

 しかし、ここで一つの抜け道を見出した。

 この特異点で重要なのは、『宇宮吾郎の欲望が満たされる』ということである。

 つまり、『宇宮吾郎を寝取られマゾにしてしまい、肝尾が三人の美少女を抱く姿を見せつければ彼の欲望は満たされる』という、あまりにも卑怯すぎる勝利条件が創り出したのだ。

 夢魔であるマーリンにかかれば、いくら聖杯を体内に宿していて高い対魔力を宿すようになった宇宮吾郎であっても、その性癖というものを捻じ曲げることが出来る。

 今の今まで、LAと名乗って宇宮吾郎と仲間のように振る舞っていたのはそのためだったのだ。



 ────場面が切り替わる。また、あの用務員室での出来事だった。



 ただ、今度は放課後ではなさそうだ。

 外から差し込んでくる光や、外から聞こえてくる笛の音などから、授業中だと察することが出来る。


「どう、マスター♡ 僕のおっぱい、美味しいかな♡」

「ふひひ、アストルフォの爆乳うめ~♡ アストルフォに授乳手コキしてもらえるの、気持ちいいよ~♪ ぐひひ」


 むにゅむにゅぅぅっ♡ シコシコっ♡ シコシコっ♡ 


 布団の上で座り込んでいるアストルフォの膝を枕にした肝尾が、その口元に爆乳の先端を突きつけられながら、その逞しいマジカルチンポを手コキしていた。

 肝尾の言うように、授乳手コキである。

 以前のアストルフォならば絶対にできなかった、爆乳の持ち主でしか出来ない特別なプレイだ。


「ふふふ、マスターなんだか可愛い♡ 赤ちゃんになったみたいだね♡ ほらほら、シコシコ~♡ シ~コシコ♡」

「おぉう♪ くぅぅ、あ、相変わらずアストルフォは手コキが、くっ、上手いじゃないかぁ……! 爆乳になって授乳手コキまで身につけるし、本当、手コキに関してはアストルフォが一番かもしれないなぁ」

「本当っ♡ えへへ、マスターに褒められると、すごく嬉しいなぁ♡ もっともっと気持ちよくなってね♡」


 アストルフォは元が男であるために、性豪サーヴァントよりも男の快感というものに別種の理解を持ってくれている。そのため、このように手を使った奉仕が非常に上手い。

 元々、アストルフォの手コキテクニックを高く評価していた肝尾だったが、どうせなら授乳手コキのようなものも味わいたいと思っていた。そこで、アストルフォがついに爆乳化したことによってこの授乳手コキを味わうことが出来たのである。


「それじゃ、今日はあの邪悪なクソガキに本当のことを突きつける日だからねぇ。射精はせずにこのままオチンポをイライラさせたままで行こうかな♪ ぶひひ、金玉にいっぱい溜まってる精液、あのガキの前でアストルフォにたっぷりと注いであげるからね~♪」

「……う~ん」

「アストルフォ、どうしたの?」

「それなんだけどさぁ、マスター」


 それは、宇宮吾郎が真実を知る日の昼の出来事なのだろう。アストルフォも生徒としてこの学校で暮らしているはずなのに、その授業をサボって肝尾のために授乳手コキをしているのだ。誰もが目を向けるあの爆乳美少女が、肝尾のような冴えない中年オヤジにゾッコンだなんて信じられないだろうが、それが事実なのである。

しかし、アストルフォの顔は冴えない。


「彼さぁ、そこまで悪いやつじゃないんじゃないかな? いや、僕もあんまり詳しく知らないけどさ、マスターみたいに凄い人じゃない普通の男の子だから、聖杯の力に振り回されてるんじゃないの?」


 それは、朝に見かけた素直に謝罪を見せた宇宮吾郎の姿によるものだった。

 今まではいやらしい視線を向けてきて、やれやれだなんて格好をつけてるいけ好かない少年だったが、それだけが彼ではないともわかってしまったのである。元々、アストルフォは善良な騎士だ。肝尾を第一に考えるオナホ騎士になってしまっても、他者への友愛が完全に消えてしまったわけではない。


「だからさ、もっと話し合って解決する方法も────」

「…………はぁ!?」



 だが、そのオナホ騎士の主である肝尾はそうではない。



「ひぎぃぃっっぃぃっっぃっぃ♡♡♡♡♡」


 ガリィ、と。

 肝尾は口に含んでいたアストルフォのおっぱいの先端、乳首を思い切り噛んだ。

 すると、先ほどまでは嬉しそうに楽しそうに授乳手コキをしていたアストルフォの体がビィンと伸びていき、股間から愛液が溢れ出していく。乳首を噛まれる痛みさえも快感に変換され、アクメに達してしまったのだ。


「お、お前っ! 僕のオナホなのに、僕の女なのにぃ! な、なんで他の男に、こ、このバカ牝がぁ!」

「ふぎゅぅぅ、おぎょぉ、むぎょぉぉっぉ~~♡」


 ぷしゃっ、ぷしゅぅっ♡ ぷしゃぁぁっ♡


 肝尾が何度も何度も乳首を噛んでいき、アストルフォは股間から潮を吹きながらアクメを決めていく。

 肝尾の怒りは激しかった。

 自分に魅了されて夢中になっているはずの女が、他の男に慈悲を示している。

 そんなことさえも許容できないほど、彼の心は小さいのだ。

 魅了チートがなければ女性に好意を示されることが絶対にない人間、それが肝尾拓郎なのである。


「ふぅぅぅ! ぅぅぅぅ! こ、こんなオナホ騎士、ぼ、僕はいら────!」

『はいはい、ストップ。ちょっとは落ち着くんだ、肝尾くん』

「マ、マーリン……で、でもぉ!」


 オナホ騎士なんていらない。

 魅了チートで肝尾こそが生きる意味となったアストルフォ、その心を砕きかねない言葉を言い切る前に、マーリンからストップがかかる。

 肝尾は相変わらず苛立ちを隠しきれていない表情で、マーリンを見つめた。


『いいかな、アストルフォ。君の騎士としての振る舞いは確かに素晴らしいことだろうけど、それは君が甘いだけだよ。彼は確かに善良な一市民だったかもしれないけれど、今では巨大な力で手に入れた自分に都合のいい現実に悦に浸っている、下衆な男さ。君だって何度もいやらしい視線を向けられただろう? 股間にテントが張っているところさえ、何度だって見てきたはずだよ。その彼に君と肝尾くんの正しい純愛セックスを見せつけて、自分が勘違いしてた恥ずかしい男だということを突きつけて、寝取られマゾとして覚醒させるのさ。

 そうして、立香ちゃんやマシュも交えた、肝尾くんによるハーレムセックスを見せつけることで彼の恥ずかしすぎる欲望を満たしていき、聖杯を完成。晴れて特異点は解決されるんだよ』

「そ、それは……しょう、だけどぉ……♡ あひぃ……♡」


 マーリンのストップで少しは落ち着いた肝尾に乳首をコリコリと噛まれているアストルフォは、アヘ顔を浮かべたままマーリンの言葉を聞いていく。まだどこか納得しきれていないアストルフォに対して、マーリンはやれやれと、それこそ吾郎のように肩をすくめながら言葉を続けていった。


『では、こうしようじゃないか。まず、君だけが予定の場所に行く。肝尾くんは私の幻術で姿を隠しておくから、そこで君は普通に彼と接すればいいよ。君の普通は、もうすでに彼のような性欲に満ちた青少年には毒にしかならないからね。それでも、彼が紳士として性欲を抑えられれば、また別の方法を考えよう』

「えぇ!? そ、そんな、そんなのは嫌だよ! あのムカつくクソガキを懲らしめようよぉ!」

『まあ、戦闘力はないけど人間力と呼べるものが秀でているあの肝尾くんが彼に対してここまで嫌悪感を示している相手なんだから、正直こんな試すようなことをする必要はないというのは同感だけどね』


 何度となく肝尾と交流をしていることで、すでにマーリンもまた魅了チートに犯されてしまっている。肝尾の下衆すぎる発言も、『肝尾くんほどの人物が嫌っているんだから、当然彼は悪人である』と思うことに、あのマーリンがなんの違和感も抱かないようになっているのだ。


『だけどね、アストルフォ。彼が君に欲情して襲いかかったら、それでもう終わりだ。君の騎士として正しい心を裏切った彼に、慈悲なんて必要ないだろう? そこで彼に寝取られマゾとして覚醒を促す。それはこの世界に連れてこられて、見た目はともかく内面は下衆である宇宮吾郎を好きになってしまった被害者が、その体まで穢されないためにも必要なことなんだよ』

「……わかった。そうだね、彼が僕を襲いかからければいい話だもんね。うん、そういう子じゃなさそうだったし、それで行こうよ!」

「うぅ……わ、わかった。それで我慢する」


 こうして、その時間は訪れた。

 もちろん、アストルフォほどのエロすぎる美少女と二人っきりになって我慢できる青少年が居るわけもない。

 彼は選択を誤った。

 その幸せになるだけだった物語は、肝尾拓郎という男の介入によってバッドエンドに導かれてしまったのである。





「あぁ……ぅう、ぅっぅ……」


 まるで物語のように語られたその記憶が流れ出して、俺はその場に崩れ落ちた。

 耐えられない。

 わかることは幾つかある。

 俺は最初から裏切られていたことと、肝尾とかいう男がなぜだかハーレムを築いているということだけ。

 アストルフォに限らずこのLA、いや、マーリンという超然とした余裕のある美女ですら自分の虜にしているだなんて、とても信じられない。


「おほっぉっっぉぉ♡ おっ♡ おっ♡ お゛っ゛ぉ゛っ゛ぉ゛~゛~゛~゛~゛♡

 だめっ♡ だめぇぇ♡ 許してぇ、マスター♡ エッチな声を通り越してぇ、ま、間抜けなオホ声が出ちゃうのぉっ♡ おぉっ♡ んひぃ、ふぅぅ、ぉぉっ♡ 大きい♡ 最強デカチンポで僕の女の子マンコをイジメられると、何も出来なくなっちゃう♡ 騎士なのに、おチンポ様に完敗しちゃうんだぁ♡ おっほぉぉっぉぉ♡

 もっと、もっとぉ♡ あ、あの気持ち悪いヤツに触られた体を塗り替えるぐらい、僕のことを求めて♡ 僕はマスターのものなんだって誰が見てもわかるぐらい、いっぱいいっぱいオチンポで犯してぇ♡」


 俺がマーリンによる幻術で真実を叩き込まれている間に、肝尾とアストルフォはセックスをしていた。

 アストルフォは空き教室の机に手をかけて、その後ろから立ちバックの体位で犯しているのだ。肝尾が後ろからバチンッ、バチンッ、と勢いよく腰を打ち付けるたびに、ぶるんっ、ぶるんっ、とアストルフォの爆乳が揺れている。無音声のままの切り抜き動画として見てもオカズとして十分に使えるほどのエロい光景だ。

 そんな光景は確かにエロい。


「なんで……なんで、俺、勃起してるんだよぉ……!」


 だけど、俺はアストルフォのことが好きだった。確かにそれは性欲というもので穢されたけれど、人間的に好きだという意味だ。

 俺の好きだったアストルフォはあんなじゃない。

 ただアストルフォが女としてセックスをしているというだけでなく、アストルフォという英雄そのものが根幹から汚されてしまっているのだ。

 そんな光景に耐えられるわけがないのに、俺はどうしようもないほどに興奮してしまっていた。


「ぶひひ! 気持ちいいよぉ、アストルフォ! アストルフォもすっかり女の子の体になったねぇ♪ オマンコに至ってはカルデアでも有数の気持ちよさなんじゃないかなぁ♪」

「くひぃっっ♡ あぁっ♡ 嬉しい♡ マスターに女の子として褒められるの、嬉しいよぉ♡ 騎士として王様にかけられた言葉よりもぉ、僕と縁を繋いで召喚してくれた人たちの言葉よりもぉ♡ マスターの言葉の方が、僕の心をずっとずっと感動させてくれるんだ♡ もっと、もっともっとぉ♡ オチンポでもっ、言葉でもっ♡ ぼ、僕を求めて欲しいな♡ ねっ♡ お願い、マスター♡」


 それだけじゃない、先走りの液がダラダラと流れ出していって、俺のズボンの股間には染みが出来てしまっていた。これ以上に惨めな男は、今のこの世界で俺一人だろうと思ってしまえるほどの情けなさである。


「なんで……なんでこうなったんだよぉ……!」

『ふふふ、何故こうなったか、だって? それはね、君が寝取られマゾだからさ♪』

「え、あっ……」


 寝取られマゾ。

 マーリンから突如としてそれを突きつけられた俺は、間の抜けたようにパクパクと口を開閉することしか出来ない。

 なんとも惨めな姿の俺に、マーリンは笑った。

 それは今までのようにからかいの含んだ大人のお姉さんな笑みではなく、加虐的な要素をたっぷりと含んだ嘲笑である。


『さあ、そこに座って。これは君というたった一人の観客のためのクライマックスシーンなんだからね』

「なにを……って、ええ!? か、体が、勝手に……!」

『聖杯に選ばれて、無自覚にも聖杯を有している君は対魔力を持っている。だけど、この私なら時間さえかければ魔術をかけられるということさ。もう、君の体は自由にはならないよ』


 体の自由を突如として奪われた俺は、ゆっくりとした動きで用意されていた粗末なパイプ椅子に腰掛けていく。信じられない出来事を叩きつけられたことで涙を流している俺の前で、そんな俺に一切の視線を向けずにあの用務員とアストルフォはセックスを続けていた。


「おぉっぉ♡ ふぅ、ふひいっぃ♡ オ、オチンポが僕の膣内で震えてるだけでぇ、こ、こんなに気持ちいいなんてぇ♡ や、やっぱりマスターのオチンポ様は、べ、別格だよ♡ 女の子を幸せにできる、唯一無二の宝物だ♡ このオチンポの前では、どんな男だって格下になっちゃうよ♡」

「ふひひ。愛液ダラダラこぼしちゃって、本当にだらしないオマンコだなぁ。あの特異点で僕の前に現れるまでは男の子だったなんて、とても信じられないよぉ♪」

『ああ……♡ なんて凛々しいセックスなんだ♡ んぅ、ふぅぅ……♡ やはり、彼は特別だ♡ アーサーですらここまで私の心を高鳴らせなかった♡ 彼こそが、人類最後のマスター・肝尾拓郎くんこそが特別な物語に相応しい、特別な主人公なんだ♡』

「あ、アストルフォ……マーリン……!」


 そして、マーリンもまた熱のこもった視線を二人のセックスに注いでいる。

 今までの俺の中にあるマーリン像とはかけ離れた、うっとりとした視線を向けている。恋する乙女とはまさに今のマーリンの姿そのものだろう。


『はぁ……おっと、ごめんごめん。あまりにも肝尾くんがかっこよすぎるから、一瞬ゴローくんのことを忘れてしまったよ。許して欲しいとは言わないけどね』

「な、なんなんだよ! なんなんだよ、これぇ!」


 俺は叫んだ。

 ぶるんぶるんと揺れるアストルフォの爆乳に性的な興奮を覚えてしまい、情けなく勃起をしたまま、それでも現実を受け入れることが出来ない俺には、叫ぶことしか出来なかったのだ。


『どれだけ泣いても叫んでも、なにも変わらないよ♡

 君は、君の中に眠っていた寝取られマゾの才能が開花してしまったのだからね♡

 だから……ほらっ♡君の大嫌いな肝尾くんに、君の大好きなアストルフォが抱かれている♡ 普通なら吐き気すら覚えるほどの寝取られの光景に、君はものすごく興奮しているじゃないか♡』

「うわぁぁぁぁぁっ!」

「う、うるせぇぞ、クソガキぃ!」


 絶叫する俺の声に、ようやく中年オヤジが反応を示した。

 拘束もされてないのに椅子から尻を浮かすことも出来ない俺を見て、あのうだつの上がらない中年オヤジはニヤニヤとした嘲笑を浮かべて俺を睨みつけている。


「お、おおお、お前っ! 自分のことをモテモテなリア充だと思ってたんだろ! いろんな女の子から声をかけられて、アストルフォみたいな爆乳美少女とも仲が良くて、おまけに夜中に謎めいた存在と街を守るために戦う……ぶひひ、まるでマンガやアニメの主人公みたいだもんなぁ! だけどな、それは全部勘違いなんだよ! 人理を守るために働いている僕なんかとは違う、自分勝手な欲望で自分に都合のいい物語を勝手に作ってただけなんだよぉ!」


 愕然としてしまう。

 それは、紛れもない事実だと認識できたからだ。

 俺の胸の中心に熱が宿っている、これは聖杯だ。

 俺が望む世界を、俺のために作り上げてくれた神秘のモノ。本来ならば、俺の歪んだ欲望で俺のためのハーレムが作られるはずだった。

 それなのに、俺には寝取られマゾなんていう性癖がマーリンという超が幾つもつく一流の魔術師によって植え付けられてしまった。

 今だって、どんなオナニーよりもこの寝取られ光景と、このクズ男に罵倒されていることに強い興奮を覚えてしまう。吐き気と快感は両立するのだと、俺はこの時初めて知ってしまった。


「そう、だよっ♡ 僕は、君のこと信じてたのにぃ♡ 君は悪いやつなんかじゃないんだって思ってたのに、れ、レイプしてこようとするなんてっ♡ 本当、マスターとは比べ物にならない、最低のクズだっ♡」

『滑稽──それを通り越して、もはや不快でもあったよ。自分を物語の主人公だと思い上がっているかのような、キミの言動はね』


 そして、アストルフォとマーリンという美少女コンビにもまた罵られてしまう。その言葉には、何も言い返すことが出来なかった。俺は確かにアストルフォに欲情をして襲いかかったし、マーリンの言うように俺はまるでこの世界の主人公なのではと勘違いをしていたのだから。


「ふひひっ、ほらっ、アストルフォ! あいつに現実を教えてやりなよっ! 今のアストルフォはどんな牝なのかってさぁ!」

「あぁっ♡ うんっ、わ、わかったよ、マスター♡」


 それなのに、目の前の人物たちは俺を虐めることを辞めようとはしない。

 やめてくれ。

 罵られるのはまだいい。

 だけど、これ以上は耐えられない。


「き、君はさぁ♡ 僕のことを、昔の知り合いだみたいに言ったけど、ぼ、僕は君のことなんてぜ~んぜんっ、覚えてないんだよっ♡ だって、僕は今までの記憶を全部塗り替えるぐらい、ものすごく幸せな出来事を覚えちゃったから♡ 座に記された情報だけなら、僕はいっぱいいろんな聖杯戦争に参加したんだっ♡ うん、それは僕でもわかるよ♡ 僕ってば、そういう人間だなってところあるから♡ 王様に仕えた騎士として♡ みんなの仲間の一人として♡ 正しい道を歩こうって、困ってる人の前ならどんなときだって現れちゃうよって思ってたから♡ 聖杯戦争で呼ばれたら、きっと、きっと助けに行くんだ♡」


 そうだ、アストルフォはそういう騎士だ。

 俺が憧れた、どんな時でも忘れられない英雄なんだ。

 俺にとっての正義の味方なんだ。

 だから、だから。



「でも、あぁ、それって────本当にっ、無駄だったっ♡」



 だから、俺の中のアストルフォを、アストルフォの形をした女が穢さないでくれ。

 だけど、その言葉は止まらない。

 どんどんと、アストルフォ自身の口で、アストルフォである理由が否定されていく。


「僕はマスターだけの騎士♡ マスターだけの女♡ それ以外のことってなんの意味もなかったんだ♡

 僕が王様の騎士だったのは、英雄として人理に名を残すため♡ それだけのために、僕は騎士として生きてきたんだ♡ それなのに、僕はマスターの前に現れる前にぐだぐだといろんなところに顔を突っ込んだんだから、本当に僕ってバカだよね♡

 英霊になれば、その気になりさえすれば性別が変わる可能性だってある♡ 男の子に間違って生まれちゃった僕も、サーヴァントとしてなら女の子になれるかもしれない♡ この平坦な胸も、マスター好みの爆乳になれるかもしれない♡

 僕は、マスターのために生まれたオナホ騎士だから♡ 英霊になって、二度目の生と言えるマスターの騎士になることでやっと本当の人生を生きられるんだ♡

 そうだよ、君も、君じゃない人にも呼ばれたときも、それは僕の偽物だったんだ♡ 僕、アストルフォっていう騎士が、自分のことを勘違いしていた時の僕なんだよ♡

 あぁっ♡ マスター、マスター♡ 好き、好き好き♡ だ~い好き♡ 僕に本当の運命を教えてくれた人♡ 今までの僕は全部偽物なんだって教えてくれた人♡ 大好き、好き好き♡ 射精して♡ 僕が生まれてきた意味を、マスターのオチンポを気持ちよくするためっていう役割を果たさせて♡ 君のオナホ騎士を、たっぷり可愛がってぇ~♡」

「ぅぅぅ……うわぁぁっ!!!!」


 涙は止まらない。

 俺の中にあるアストルフォはもうどこにも居ない。

 居るのは、肝尾拓郎という男によって壊されてしまったアストルフォという都合のいい牝が一匹だ。

 何なんだ、この男は。

 アストルフォやマーリンは自分たちの変貌は肝尾の魅力だと語ってるけど、そんなわけがない。俺の聖杯による世界が可愛く見えるぐらい、こいつには得体のしれない力があるはずだ。

 その力によって、アストルフォは壊されたはずだ。

 許せない。

 許せない、許せない、許せない!



『……哀しんでみせても、怒ってみせても。

 どっちにしろ勃起をしているんだから、本当に君って無様だよねぇ』



 だが、そんな怒りもマーリンの冷めた言葉で瞬時に萎えていった。

 そして、それでいて勃起に関してはどんどんと勢いを増していく。それが寝取られマゾという惨め過ぎる肩書に相応しい姿で、余計に哀しくなってくる。

 そんな俺を置き去りにして、肝尾とアストルフォの二人はどんどんと盛り上がっていく。


「おぉぉっ! こいつ、締りがよくなりやがった……! 見ろっ、クソガキっ! ぶひひ、アストルフォが僕の欲望に従ってデカくなった爆乳を見せてやるよぉ! ほら、ほらほらぁ! 僕がチンポを突きつけたら、ぶるんぶるん揺れていくぞぉ!」

「おほぉぉっっぉぉぉ♡ ひぎぃぃ、くぅぅ、ふぅぅっ♡ だ、ダメッ♡ 強すぎるっ♡ オチンポの勢い、強すぎるよぉっ♡ こ、このままじゃ、開いちゃう♡ 子宮が開いてぇ♡ 子宮でマスターのオチンポ様を飲み込んじゃうよぉ♡」

「くひひ、おうおう! 飲み込め、僕にアストルフォの子宮の味を味わわせてみろよぉ!」


 肝尾の一方的なピストンで激しくアストルフォの体が揺れていく。肝尾の言葉の通り、その特徴的な爆乳もまた大胆に揺れていき、そして、アストルフォの可憐な喉から出ていった声とは思えない野太い喘ぎ声がこの空き教室に響き渡っていった。


「ふごぉぉっ♡ おっ♡ おぉっ♡ おほぉぉっぉ♡ イグっ♡ イグィグッ♡ し、子宮を犯されてイッちゃうぅっ♡」


 子宮口が拡げられてゴリゴリと最奥にチンポが進んでいったのだろう。あの絶世の美貌が歪んでいく。眼球は裏返り、鼻の穴は広がり、口を大きく開かれて、舌がデロンと出ていく。そんな、見るも無惨な姿になったアストルフォを見て、俺は──。


「あっ、あぁぁ……」


 ──どうしようもなく、興奮していた。

 俺では引き出すことなんて出来ない、いや、許されない無様なアヘ顔。それを俺が生理的に受け付けない肝尾という中年オヤジだけが引き出すことが出来る。

 悔しくて、哀しくて、どうしようもないぐらいに興奮してしまうのだ。

 そして、その興奮を自覚するということは、この地獄の終わりを意味していた。

 肝尾もまた、射精が近づいてきたのである。


「うぉぉっ! 射精るっ! 射精るぞぉっ!」

「うんっ♡ きて、きてぇぇ♡ 僕のオマンコ、オマンコが広がってぇ♡ 一番奥まで受け入れれるようになったから♡ 僕の体の奥の奥まで、マスターのザーメンで染め上げて♡ 僕は英雄でも騎士でもなく、マスターのオナホなんだって♡ 僕自身にまた教えこんで欲しいの♡ おぉっぅ♡ イクっ♡ イクイクっ♡ イッちゃうぅぅっ♡」

「はぁ、ぅぅ、うっぅぅぅ……!」


 どびゅるるるっ! びゅるっ! どっぷ! どぷどぷぅっ! びゅるるっ! びゅ! びゅっ! どぶびゅうぅぅぅぅっっぅっぅ!


 ぷしゅっ、ぷしゅぷしゅっ♡ ぷしゃぁぁぁぁぁっ♡♡♡♡


 ぴゅるるっ、ぴゅるっ、ぴゅぅぅ…………!


「ぶひひ、最高のオマンコだよぉ、アストルフォ!」

「ひぎいっぃぃっぃっぃ♡ ザーメンあっついっ♡ 気持ちいいっ♡ 好きィッ♡ マスター、大好きィッっ♡ もう、過去なんていらないっ♡ あんな無駄な時間、僕にはいらないっ♡ ほら、見ろっ♡ 僕は君のサーヴァントじゃないっ、マスターのオナホ騎士なんだ♡ さっさとあんな時間、忘れちゃえぇ♡」

「あっ……あぁぁ……」


 肝尾がアストルフォへと膣内射精し、その射精を受けてアストルフォが潮を吹き、それを見た俺は情けなくノーハンドで射精をしたのだ。

 肝尾はアストルフォの膣内で気持ちよく射精をしているというのに、俺はズボンの下でお漏らし射精をしている。それがはっきりと突きつけられた、俺と肝尾の格の違いというものだった。

 俺は、精液の生暖かさを感じながら泣き出してしまう。


「うっ、ふぅぅ……!」


 だが、同時にわかってしまった。

 俺はまだ満たされていない。

 もっともっと、気持ちよくなりたいと思ってしまっている。

 だから、そうだ。


 ────この『地獄/天国』はどこまでも続いていくのだ。





【結】



「肝尾先輩っ♡ おはようございます♡ 朝から先輩にお会いできてとても嬉しいです♡」

「肝尾くん、おはよっ♡ えへへ、今日もかっこいいねー♡」

「おっはよー! もう、先に行かないでよっ♡ 僕をあんなにイジメて中々起きれないようにしたのに、君は元気いっぱいで先にでかけちゃうんだからさぁ♡」

「ぶひひ! 立香ちゃん、マシュちゃん、アストルフォ、今日もかわいいねぇ♪」

「………………」


 終わってない、何も終わっていない。

 俺の目の前ではあの中年オヤジ、肝尾拓郎が似合わない学生服を身に纏ったまま、絶世の美少女三人に囲まれながら登校していた。


「ぶひひ、立香ちゃんは今日の夜だったよねぇ。楽しみにしているからね♪」

「う、うん……♡ おじさん、大変だと思うけど頑張ってね♡ このよくわからない、その、気持ち悪い特異点を解決するためにはおじさんが不可欠だからさ……♡」

「同感です。寝取られマゾ……でしょうか? 正直な意見を述べるなら、理解不可能な感覚ですがそれを満たさなければ、我々カルデアの使命を果たすことが出来ません。ただ、その……♡ 特異点自体は安定していますから、放置していても問題ないと言いますが……そ、その♡ 私もおじさまと同じ学校生活を送れるというシチュエーションは、すごく嬉しいですから……♡」

「あははは! そうだよね、カルデアに居る女の子にとってはマスターと一緒に学校を通えるなんてご褒美だよね♡ ほらほら、マスター♡ 似合うかな、僕のコスプレじゃない本物の制服姿♡ JKたちとハーレムセックス、それも無理やりじゃない純愛セックスなんて出来るなんてマスターぐらいだよ~♡」


 そうだ。

 この特異点とか言うものを創り出した、俺の中の聖杯はまだ満たされていない。俺の欲望は底知れないほどに、貪欲なものになっている。

 もっともっと、可愛い女の子があの肝尾に奪われる姿が見たくて仕方ない。

 果たしてそれは『寝取られマゾ』と言えるかどうかもわからない、出歯亀性癖とも言えるだろう。

 だが、俺にとってはあの中年オヤジが美少女とセックスできるのならば、俺にだって出来ただろうと思ってしまう出来事なのだ。

 俺の聖杯があれば、あの藤丸立香も、マシュ・キリエライトも、アストルフォも、俺にメロメロになっていたかもしれない。もはや、アストルフォを穢された俺にまともな考えというものはない。

 俺だって、俺だって、俺だって!

 俺だって、あの肝尾みたいに卑怯な方法で女の子たちを洗脳してハーレムを楽しめれたはずなんだ!

 だから、あの肝尾がいい目を見ていると、俺は寝取られマゾの性癖が刺激されてしまうのである。


「あっ、御主様♡ おはようございます♡」

「はぁ……相変わらず、マスターちゃんは朝からモテモテねぇ」

「ぶひひ、ジャンヌもオルタもおはよ~。こっちに合流できたんだね♪」


 そして、肝尾に群がる美少女たちはあの三人だけではない。

 肝尾たちが所属している組織というカルデアというところから、どんどんと様々な美少女と美女が派遣されてくるのだ。その美少女たちは、俺に見せびらかすように肝尾とイチャイチャとラブラブなセックスをしていく。

 それは生徒だけに限らない。

 女教師として、あるいは、出入りの業者として、あるいは俺や肝尾が住んでいる家の近くに住む人妻やロリっ娘として、そんな風にエロゲーの登場人物であるかのように現れてくるのだ。

 悔しい。

 俺もあの金髪で清楚なジャンヌという女の子に崇拝されるように熱い視線を向けられたい。

 俺もあの銀髪で悪ぶったオルタという女の子に本当の恋慕の念を向けられてカップルになりたい。


「くそぉぉ……!」

「うわっ、キモチワルっ……」


 俺が思わず呻いてしまうと、それに気付いたアストルフォが眉をひそめて不快感を顕にする。

 それに習って、他の美少女たちも俺を見て嫌悪を見せつけてくる。

 なんとも耐え難い光景に、俺は逃げ出すように駆け出した。

 どこにも逃げ場なんてないのに。

 それを知っていて、それを薄暗い悦びを覚えているのに。

 俺は、その場から逃げ出していくのだ。

 戻ることは出来ない。



『サーヴァント、ライダー!

 助けを呼ぶ声を聞いてビュビューンと颯爽参上!

 さあ、聞かせて!

 キミが、ボクのマスターだね!』



 地獄に落ちてしまった俺はもう、あの時のアストルフォの姿を思い出すことなんて出来なかった。












『ふふ、良いね。肝尾くんを主人公として青春物語。番外編としては実に私好みのものになったよ』

「その結果は良いですが、途中経過はお粗末なものでありませんか?」

『おや、君は……殺生院キアラかい。ありがとう、妙な真似をしてくれなかったおかげで、僕の稚拙な脚本通りに物事が動いてくれたよ』

「肝尾様という偉大な役者を使ってこの始末、正直、あの方の信者を自覚する私としては耐え難いものですが……まあ、この続編を本番と思えば良しとしましょう」


 逃げ出していく宇宮吾郎を見つめる影が二つ。

 それは、花の魔術師・マーリンと謎めいたアルターエゴ・殺生院キアラであった。

 彼女たちは、この物語に隠されていた『裏設定』をどんどんと明かされていく。


「宇宮某に聖杯を与えてこの特異点を作り上げた真犯人、それは貴方ですね? 花の魔術師」

『その通り。僕はもう肝尾拓郎くんの大ファンになってしまってね。慣れない「二次創作」というやつに手を伸ばしたくなったのさ』


 その裏設定とは、ここでにこやかに話しているマーリンこそがこの特異点の黒幕であったという驚きの、しかし、どこかチープな事実である。


『いつか、アストルフォが言っていたからね。マスターと一緒に高校生活を送りたいって。それはアストルフォだけでなく、藤丸立香やマシュ・キリエライトも同様の欲望を持っていた。そして、なにより、私もまた彼を主人公とした青春ラブコメを見たかったのさ』

「同感です。それはとても素晴らしいものになるでしょう」

『だから、私は舞台を用意した。敵役もね。あの青少年らしい、それでいて物語の主人公にはまるで相応しくない宇宮吾郎くんを器として、このハーレム特異点を作り上げたのさ。彼は寝取られマゾを植え付けられたと思っているだろうけど、本当は全然違う。彼の中に元からあった救いがたい性癖なのさ』

「人の好みはそれこそ十人十色、私が肝尾様によって豚や牛のように虐げられることに悦びを覚えるというマゾ性癖を自覚させられたので、笑うことは出来ませんね」

『そう、これはなるべくしてなった物語。そして、この特異点は終わらないよ。終わらないため安全、だけど、いつ危険になるのかもわからない。だから、時々こうやって様子見にやってきて、特異点を安定させなければいけない。ふふふ、カルデアにサーヴァントが召喚されるたびに、いろんなヒロインが登場して肝尾くんとのラブコメを見れるのさ! 日本の2010年代に流行ったソーシャルゲームの方式だね!』

「それはちょっとわかりませんが……ただ、マーリン。あなたがこの物語の創作者だというのならば、一つ注文があります」

『なにかな、殺生院キアラ先生?』


 キアラはその所持している単独顕現スキルでこの特異点に単独レイシフトを行い、密かにこの物語を見守っていた。自分好みのものでない形に結末を迎えるのならば、無理矢理に介入してルートを変えようと試みていたのである。そこで、彼女は知識として存在しているカウンセラーのロールプレイをしてこの学校に侵入していたのだ。

 殺生院キアラ先生、それがこの学園の中でのキアラの役目である。


「それです!」


 だが、それが何よりもキアラの不満でもあった。


「私もまた肝尾様とイチャイチャラブラブ! 青い春の学園生活というものを送りたいのです! 貴方の魔術で私を生徒として再設定をしてください!」

『…………ぷっ、ぷはっ、ははははっ!』


 キアラはその傾国の美女と呼ぶに相応しい妖艶さを携えた大人の美貌を、まるで少女のように頬をふくらませる。キアラはこれ強い少女性を持つ女性でもあるのだ。

 その申し出に、思わずマーリンは笑ってしまう。


『う~ん、中々面白いかもね。肝尾くんの周りに、頼光やブーディカやキアラのようないい歳をした美女たちが、生徒として振る舞うのか。くくく、なるほど、一瞬の喜劇としてはかなり面白いね。なんなら、肝尾くんの後輩になってみないかい? あのマシュ・キリエライトのように肝尾くんのことを『先輩っ♡』と呼ぶ君はなかなか愉快……いや、愛らしいと思うよ』

「まぁ!」


 マーリンの馬鹿にするような言葉に、しかし、キアラは悦びの声を上げた。


「私が肝尾様の後輩となり、先達としてあの方を師事する……! なんと素晴らしいのでしょう! ふふふ……♡ 頼みましたよ、花の魔術師さん♡」


 こうして、この特異点はカルデアの玩具として扱われていく。

 そこに、一人の寝取られマゾの不幸が土台になっていることを思いやる人間は、肝尾の魅了チートによって性欲に支配された女たちの中には一人として存在しないのだった。



(終)



Comments

カツ

やっぱり貴女かレディアヴァロンw 肝尾と宇宮はどっちもどっちなんだけど、仕組まれ仕込まれていたとは言え、最後の選択を誤ったのはまぁ宇宮ですからね(なお延命するだけでどちらにしろbud end) アストルフォの爆乳化、一般的には邪道なれど私が好きなやつです。TSは元は男だからどこをどうやれば喜んでくれるのかわかっているやついい

タマゴ

男の娘を爆乳女体化というのは逆説的に男の娘であることを活かした尊厳破壊や無様系エロでとても良い。日常パートのむちむち描写や「承」でのネタバラシパイズリパートが特に抜けて全体的にも媚媚で良かった。またボクと僕で違い付けてのオチも残酷さが出ててエロかった。 今回はタイトルにちゃんと爆乳と記載されてたのも良し。爆乳女体化騎士に乾杯。