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 冒険者の都市、『ザガン』。

 王国に確認されている十箇所のダンジョン。その内の四つのダンジョンの中心に存在する、王都すらも凌ぐほどの大都市である。

 そして、ダンジョンで取れた特異なアイテムや『ダンジョン農法』と呼ばれるダンジョン内世界の常に晴れて気温の一定した不可思議な世界観を活かして作られた食物などを取引するために大きな商業ギルドが存在するため、非常に経済が活発な都市でもある。

 そのため王家とも縁の深い大貴族であるスペシュールド侯爵がその治世を任されており、この大陸において『都市』とだけ言えばザガンのことを指すような、そんな大きく人気の盛んな街なのだ。

 つまり。


「うはぁ~、すっごい人だなぁ……今日はお祭りなのかな?」


 田舎から出てきたばかりの新米魔術師の少女、レナにとってはただ人が行き交う通りに居るだけで『人酔い』をしてしまいそうな街だということである。

 キョロキョロと周囲を見渡すが、その際に魔術師のトレードマークである大きな三角帽子がズレてしまい、レナの視線が遮られる。

 レナの育ての親でもあるお師様から譲られた大事な帽子であるが、少々レナには大きすぎるようだった。

 帽子のズレを直して、レナは都市へ入る際に門番の役人から聞いた『冒険者ギルド』を目指す。

 レナは田舎も田舎、大陸の片隅にあるド田舎から『冒険者』となるためにこの大都市へとやってきたのだ。


 数年の修行の末に師匠である大魔女から『一人前の魔術師だ』とお墨付きをもらったレナは、後は実施で学ぶのが一番だと卒業試験、兼、就職活動として冒険者となることを命じられた。

 その時々の状況でもっとも当てはまる魔術を臨機応変に扱えるということは、魔術師にとって重要な素養であるため、冒険者として活動することは珍しい試練ではない。

 そして、知恵の象徴である火。

 恵みの象徴である地。

 生命の象徴である水。

 時間の象徴である風。

 星々の象徴であるエーテル。

 この五大属性と呼ばれる基本魔術の全てに適正を持つ、将来の大魔導師であるレナならばそれこそどんな冒険者パーティーにも引っ張りだこであることは請け合いだ。


「うわ、すごいなぁ……街中のあちこちに魔術が施されてる。公共事業としての魔術工事がしっかりしてるんだ」


 目に映る全てが物珍しく、田舎者であることを隠すことも出来ずにキョロキョロと周囲を見渡しながら歩いていくレナ。

 周囲の人間はそれを微笑ましく眺めている。

 それはこの都市に訪れる旅人は珍しいものでもなく、なによりも、レナが非常に『可愛らしい』容姿をしていたからだ。


 神々に愛された証と呼ばれる不死を司る果物である桃と同色の少し癖のある髪を肩で切りそろえて、くりっとした大きな瞳は晴天の空さながらな透き通るような蒼い瞳。

 十代を折り返しを迎えたばかりの年齢に相応な小柄な身長と凹凸の少ない肉付き。

 しかし、手足は子供のような短く太いものではなく大人顔負けにスラリと伸びており、将来は成熟した女の柔らかさを持ちつつも、舞台女優やドレスモデルのような『かっこいい女』へと成長するだろうと期待を抱かせる。

 将来への期待を感じさせながらも、今現在も、腕のいい職人によって作られた高級な人形さながらな、幼さの残った容姿すらも極上な美少女、それがレナだった。


「おっと、危ないよ?」


 そんなレナが周囲を見渡しながら歩いていると、ふと、頭上から声が響いた。

 びくりと体を震わせて、慌てて顔を声の方へと向けると、そこには一人の女が立っていた。


「うわぁ……!」


 レナはその女を見て、思わず感嘆のため息を漏らしてしまう。

 女はそれほどまでに美しい女だった。


 小柄なレナの視線がちょうど胸に届くほどの高身長。

 切れ長な瞳と薄い唇と高い鼻が小さな顔の中に奇跡的なバランスで配置されている美貌。

 同じ身長の人物と比べても腰の位置が大きく違う長い脚。

 濡れ羽色の艶やかな長い髪を後頭部の高い位置でまとめており、その髪は風に揺れる様を見るだけでさながら絹のような手触りがするのだろうと柔らかさを感じさせる。

 見慣れない衣服だが師との授業で教わった記憶がある。

 白い上衣と股下に上から黒い袴、これは東洋の国で、あくまで練習着としての衣服であり実際には異なるものだが、剣士が着るとされている衣服だ。


 腰元はカタナと呼ばれる異国の剣を腰にたなびかせていることからも、この美女が剣士であることは間違いないのだろう。

 何よりも。


(うわぁ……こ、この人、すごい強い……!)


 その溢れ出るようなオーラが、この美女が怪物的な剣士であることを何よりも物語っていた。

 恥じることなどなにもないと言わんばかりに、天から一本の柱が走っているように真っ直ぐに伸びた背筋は身体に一切の揺れを生まず、それはすなわちどこからの攻撃にも同じように対応できることを意味する。

 師匠である大魔女の『剣士だろうと魔術師だろうと闘士だろうと、行き着く先まで行き着けば同じ場所に立つことになる』という言葉を思い出す。

 そう、この剣士はレナの師と同じ程の技量を感じさせる絶対的なオーラを放っていたのだ。


「人通りが多いところだから気をつけたほうが……いや、ほう?」

「はわわ、ありがとうございま……す?」

「なるほど……ふむ……」


 美女剣士の柔らかな微笑みに同性ながらも思わず胸を高鳴らせてしまうレナだが、美女剣士はなにかに気づいたように腰を折ってレナの顔を覗き込む。

 そして、そのレナの美しい蒼い目を剣士の美しい黒い目で見つめると、嬉しそうに笑った。


「ほう、ほうほう! なるほど、なるほど! これはすごい!」

「え、えっと……?」

「君は魔術師か、なるほど、その薄桃色の髪に蒼い瞳……かなりの魔力量だね?」

「え、わ、わかるんですか!?」

「わかるとも、君の周りだけ『空間の揺れ』が違うのだからね!」


 美女剣士はやはり嬉しそうに笑う。

 空気の揺れではなく空間の揺れとはなんなのだろうか、とレナは首を捻りながらも美女の押し付けてくるような圧倒的なオーラに気圧されてしまう。

 もともと、田舎暮らしで都会者になんとも言い難い劣等感を抱いているレナとしては、この見るからに洗練された美女の言葉を遮って立ち去ろうという気がわかなかったのだ。


「君の名前は? 冒険者になりにきたのかな? それとも、魔術ギルドへと入ることがすでに決まっているのかな?」

「えっと、名前はレナ、レナ・ホープ……ホープ村のレナと言います!

 この街には、仰るとおり冒険者になりにきました! そして、冒険者として成果を出してから魔術ギルドに入りなさいってお師様から言われまして……」

「なるほど、なるほど!」


 うんうん、と嬉しそうに頷く美女剣士。

 すっかり気圧されてあたふたとしているレナ。

 そんなレナの様子に気づくこともなく、あるいはあえて無視をして、美女剣士はレナへと語りかける。


「所属する冒険者ギルドは決めているのかい?」

「いえ……あっ、でも、門番のお役人さんから、初めてなら『草原の狼』がいいぞって言われて、ギルドの建物までの地図をもらいました」

「『草原の狼』ぃ? 駄目だよ、駄目!

 本当に何も出来ないルーキーくんならともかく、君みたいな優秀な素質を持った可愛らしい魔術師さんがあんな、金払いの渋い国営ギルドで貴重な時間を消費するだなんて、才能への冒涜だよ!」


 『草原の狼』とはこの王国の建国神話にある聖獣の名を冠する、国が運営する初心者用の冒険者ギルドである。

 手厚い福利厚生や 冒険者を引退した職員の引率によるダンジョンの基本的な動き方の講座などもあり、右も左も知らない冒険者にとってはありがたく魅力的ではある。だが、危険度の高いダンジョンの出入りや、比較的な簡単なダンジョンにおいてもある一定の階層以上の探索を禁止されているし、薬草の月の採取量に厳格なノルマが課せられるギルドである。

 もしも、一定以上の実力をすでに持っているのならば、そこに所属することは時間の無駄という意見も絶えないほどには、『初心者用』のギルドなのだ。


「君なら、私達のギルドに入ったほうが良いよ。うん、私が推薦すれば何の問題もないからね!」

「え、ええ?」


 そのため、有能なルーキー冒険者は『草原の狼』に入る前に、上位のギルドへと勧誘されることも多々ある。

 だが、全てが立派な勧誘というわけではなく、むしろ、その半分はあまり褒められることのない行為であった。ルーキーを戦闘やトラップ探索のための囮として使い潰そうとする悪辣なならず者冒険者の集団が王都では問題となっているのである。

 そして、レナはお師様からそういう集団の存在を聞かされており、その際に取るべき行動も言い含められていた。


「あ、あの!」

「うん?」

「ギ、ギルド証を見せてもらってもよろしいでしょうか!」


 そうした場合にまずすべきことは、ギルド証の確認。

 ギルドを偽ることは重罪であり、詐欺罪として刑法での罰則はもちろん、その騙られたギルドによる私刑も行われるほどである。

 お師様はもちろん門番のお役人でさえも決まりとしてレナがこの都市に入る前に伝えておいた、冒険者の心得その一である。


「ああ、すまないね。私は『黄金の軍』に所属するダイドウジ・リンというものだ」

「えっ……お、『黄金の軍』!?」


 美女剣士、ダイドウジ・リンは胸元から高級な布で丁寧に包まれたギルド証を取り出した。

 そこから飛び出てきたものは、田舎者のレナでもよく知る有名なギルドのギルド証である。ギルド証に書かれているギルド、『黄金の軍』とは、メンバーには『聖女』や『竜殺し』、『雷切り』などの有名な冒険者たちが多数所属している、今、この王国で最も優秀とされる、頭に超のつく上級ギルドであった。


「えっと、『スキャン』……うわぁ、本物だ!」

「へえ、地属性の上級魔術も使えるのかい? これは成長株じゃなくて、即戦力候補なのかな?」


 レナはそれでも、いや、余計に訝しがって地属性の上級魔術である『スキャン』の魔法を行う。

 その鉱石の種類や含有魔力量や悪質な呪術的毒素の解析はもちろん、加工された年月や施された魔術的な仕掛けもわかるため、このスキャンを行えばそれがいつ誰によって作られたのかがわかるのだ。

 そして、このギルド証に使われている鉱石はインゴット黄金、詐欺の代物として使うにはあまりにも高価な鉱石であり、さらに製造年月日は今日からちょうど一年前、さらにこのザガンを治める大貴族の魔術紋が刻まれている。

 99%本物だ、残りの1%の可能性は盗品であるという場合だけだ。


「えっ、えっ……!? で、でも、『黄金の軍』ってこの王国でも片手の指の数ほどしか存在しないS級ギルドじゃないですか……! な、なんで私みたいな未熟者が!?」

「未熟者って……『スキャン』が使える魔術なんて、それこそ指折りだと思うけど?」

「お、お師様はこのぐらい都会の魔術師なら誰でもできるって……!」


 レナの魔術の師にあたる老人は非常に偏屈な魔術師で、超をつけても問題のない天才児であるレナが傲慢にならないようにある程度の嘘を教えてきたのだ。

 そして、生来が真面目なレナは師の言葉を信じ込んで、都会に居る魔術師ならば師のように山を貫き、川を干上がらせ、太陽を覆い隠す奇跡のような魔術を当たり前に行使できると本気で思っているのだ。


「ふぅむ、君の先生は色々と考えがあるんだろうが……すぐにわかるだろうけど、このスキャンが使えるだけでも君は引く手あまたの冒険者だよ。『解析』の類の魔術は謎に満ちたダンジョンの冒険においてもっとも重要な技能とも言えるからね」

「そ、そうなんですか……?」

「まあ、詳しい説明はギルドで行うから……どうかな、私と来てくれないかい?」

「えっと……」


 颯爽とした美女に手を伸ばされて、わずかに考え込むレナ。

 自分にはあまりにも分不相応なギルドなのではと思うが、しかし、師の『優れた人物や優れた場所に触れることこそが成長を促す』という言葉を思い出し、レナはその手を取る。

 レナが手を伸ばしたことに安堵したのか、リンは顔をほころばせた。


「ああ、良かった。君のような才能溢れる若者が来てくれるとなると、仲間や『先生』も喜ぶよ」

「先生、ですか?」

「ああ、ギルドマスターで私の師だね」

「リンさんのお師様、ですか……!? き、きっと、お強いんでしょうね……」


 歩きながら話していると、リンの口から『レナの師匠と同じぐらい実力があるだろうリン』そして、『その師匠』というとんでもない存在が出てきてレナは驚愕に染まる。

 イメージとしては、レナの『お師様』のさらに『お師様』といったところだろうか。

 やはり、想像もできない。

 そんなすごい人物に出会うなんて、と謙虚が行き過ぎて臆病な節があるレナは今からお腹にずっしりと重いものがのしかかったような気持ちとなった。


「ああ、強いよ。私では、それこそ『刃が立たない』相手だ……剣を振り下ろしても、その切っ先はすり抜けてしまうイメージしかわかないほどでね」

「はわわ……!」

「ああ、安心して。人間的にも優れた人だから、気難しかったり厳しかったりはしないのさ。

 むしろ、慈愛に満ちた器の大きな人だからね」


 怯えるレナを微笑ましげに見て、リンは優しく背中を擦っていく。

 そのリンのさりげない優しさを感じさせるその手に気持ちが落ち着いていくレナ。

 すると、大きな、大きな建物の前にたどり着いた。

 それこそレナの住んでいた村には存在しないような、豪華な二階建ての建物であった。

 その建物の、やはり大きな門には『黄金の軍』のギルドマークが刻まれていた。


「こ、これが『黄金の軍』のギルド事務所ですか!

 す、すごい立派な建物です!」

「そうかい? 本当に豪華なら階段なんてものはない、もっと広大な土地の屋敷になるんだけど……師の方針で費用を抑えた実用性重視の事務所なんだがね。まあ、入ろうか」


 思わず腕に抱え込んだ杖をギュッと握ってしまうレナの背中を柔らかく押しながら、門を潜っていく。

 扉を開き、大きな広間が目に入る。

 その一角のカウンター上のテーブルに、リンに勝るとも劣らない美女が座っていた。

 受付嬢、なのだろうか。

 小さく頭を下げて、リンを迎え入れた。


「ただいま戻りました」

「お疲れさまです、リンさん。あら……そちらのお嬢さんは?」

「ああ、レナくんと言ってね。とても優秀な魔術師なので勧誘をしてきたのさ」

「なるほど……」

「え、ええと……!」


 田舎の村には存在しなかった二人の美女に挟まれて、まるで夢の中の出来事のようでレナは落ち着かずにただ、『ええと』や『その』といった不明瞭な言葉を口にすることしか出来なかった。

 それを見たリンがクスリと笑う。


「ほら、屋内では帽子を外すものだよ?」

「あ、す、すみません!」


 その言葉に従い、慌ててレナは目深にずり落ちていた帽子を勢いよく外す。

 そこで、目の前の受付嬢は初めてレナの美貌を目にして、驚くと同時に納得するように頷いた。

 この受付嬢も実は達人で、リンが言う『レナの才能』というものを感じ取ったのだろうか。

 そのような雰囲気を感じないのだけど、と不思議に思っているレナを尻目に、受付嬢は一冊の本を取り出した。


「かしこまりました。では、レナさん。こちらのギルド帳にサインを戴いてよろしいでしょうか?」

「え、えっ? その、試験とかはないんですか?」

「もちろん、実技も面接もございます。ございますが……そもそもとして我が『黄金の軍』はその試験を受けることすらも難しい上級ギルドです。そのため、『試験を受けられる』という段階まで進むような方は、ほぼ入団が決まっているようなもので、今の段階でも『仮』の入団としてサインをしてもらっているのです」

「な、なるほど……?」


 よくわからない、という態度を隠さないまま、しかし、愚鈍なまでの素直さでレナはそのギルド帳に筆を伸ばす。その際に、半ば癖となっている『スキャン』を行っていた。


「えっ、うわ、すごい……これ、『アーティファクト』なんですか?」

「……! わかるんですか?」

「すごい、初めて見た……年月が見通せないほどに古いし、魔力が宿っている……えっ、魔力?」

「ああ、このギルド帳自体が一種のバフアイテムなのさ。このギルド帳に名前を刻まれた人物に対して、祝福を与えるんだ」

「ふわぁ、すごいですね……!」

「実力の底上げは必要なことだからね、さあ、サインを」


 どこか早口になっているリンを不思議に思うこともなく、そのまま、レナはアーティファクトであるギルド帳へとサインを行った。


 それが、全ての終わりであると同時に全ての始まりであるとも知らずに。



 ◆



「……さん、レナさんっ!」

「えっ!? は、はい!」

「サイン、ありがとうございます。幸いにもギルドマスターが本日は在席しておりますので、早速ですが面接に移らせていただきます」

「大丈夫かい、レナくん。突然、ぼうっとしていたけど」

「は、はい……なんだか、……えっ、面接?!」


 リンの言葉通り、レナは事実意識を朦朧とさせていた。

 時間にすれば十秒ほどだが、突然のことだ。

 リンと受付嬢がこちらを見てくる、それは心配すると言うよりも何かを観察するような目つきだったが、レナはその違いにすら気づかない。


「さあ、進んでいこう。あちらで先生が控えていらっしゃるからね」


 リンはレナの小さな手を優しく握り、ギルドマスターがいるという部屋へと先導していく。

 レナは呆けた頭のままその後ろをついていくことしか出来ない。

 どこか頼りない、ふわふわとした足取りだった。


「先生、失礼します。リンです。ダイドウジ・リン、入らせていただきます」

「……ごくっ」


 見るからに豪奢な廊下を歩き、見るからに豪奢な扉の前で呼び鈴を鳴らす。

 レナもギルドの入団試験ということで緊張をしているが、リン自身も緊張をしているようだった。

 それほどの相手なのだとレナはさらに緊張を深くしてしまう。自身の失態は尊敬する師匠の失態に繋がってしまうからだ。


(あわわ……わ、わたし、ちゃんと出来るかな……!)

「……うん。それじゃあ、入ろうか」

「えっ、は、入っていいんですか?」


 扉の奥から返答がないことに疑問を抱くが、リンは構わないと言ってドアに手をかける。

 ガチャり、と。

 その扉が開かれた。


「ぉぉおぉっんぉんっっ♥♥♥♥♥♥」


 その瞬間、凄まじい嬌声が響き渡った。


「……え?」


 レナは口をあんぐりと開けて、その面接が行われるというらしき私室を見つめた。

 そこには二人の男女が居た。

 一人は、美しい女性であった。

 整った顔立ちをした、豊満な胸にくびれた腰と大きなお尻を持った、全ての男性が求めるであろう絶世の美女である。

 その美女をもうひとりの醜男が犯しているではないか。

 そう、醜男だった。大きな頭に小さな目と低い鼻と厚い唇、小柄なくせに醜く膨らみ弛んだ肉体、全ての女性が拒絶するであろう醜男である。

 この世の男全てが求めると言っても過言ではないであろう美女と、野獣のほうが気品があるのではと思うような醜男という、おおよそ関わりなどあるとは思えない容姿の二人が、まさしく野獣よりも淫らで下品に、四つん這いの体勢にして後ろから激しく突いているのだ。


「あぁ、あぁっ、マスター♥ 今日も、今日もすごいっ♥ 気持ちよすぎて、たまらないのぉっ♥」


 犯罪でもなければ身体の結びつきなど発生するとは思えない二人だが、美女はと言えば抵抗する様子など微塵も見せず、むしろ蕩けた瞳を醜男へと向けて媚びた言葉を口にしていた。

 その体勢の通り、醜男と美女の関係性は醜男のほうが上であり美女が下であった。


「ふぅ、いい感じだよぉ。ふひひ、いい仕事したもんねぇ。たっぷりご褒美をあげるからねぇ」

「はぁ、あ、ありがとうございますっ♥ あんな依頼を解決しただけで、こんなにも愛してくれるなんて……♥ マスターの愛の大きさに、あ、ああっ、あああんっっ♥♥♥♥♥」


 ビクビク、と。

 体を震わせてベッドに倒れ込む美女。

 イッたのだ。

 自慰を覚えたばかりのレナにはその光景は刺激が強すぎ、顔を真っ赤にして視線をそらすことが出来ない。


「うーん、イッちゃったかぁ……ちょっと感度高めすぎたかな。アンリでも呼ぼうかなぁ……って、うん?」

「お楽しみ中失礼します、先生」

「あれ、リン?」


 美女からは『マスター』、リンからは『先生』と呼ばれている醜男。そのことからも、この目の前の男こそが勇猛で名高い冒険者ギルド、『黄金の軍』のギルドマスターであるということはわかる。


 レナはその姿を改めて目にしたとき────ドキリ、と胸が高鳴った。


 その胸の高鳴りはレナにとって初めての経験である。ドキドキと高鳴る胸と同時に頬が熱くなり、顔が紅潮していくのをレナ自身も感じ取った。


(あ、あれ……なんだろう……なんだか、熱くなってきたような……?)

「こちら、新しくギルドに参入することになったレナ・ホープ嬢です。将来有望な魔術師ですね」


 胸から湧き上がって体中を走ってくる熱に困惑をしているレナをよそに、リンがギルドマスターへとレナを紹介していく。

 すると、ギルドマスターはレナへと視線を移す。ねっとりとした、レナの体を見えない舌で舐め回すような不躾な視線だった。なのに、レナはゾクゾクと体が震えるような快感を覚えてしまう。


「ふひひ、よろしくぅ。僕はこの『黄金の軍』の創設者でギルドマスターの『キモオ・ブータ』って言うんだぁ。有望な新人さんはいつでも大歓迎だから嬉しいよぉ」

「は、はい! よ、よろしくお願いします!」

(な、なんだか、不思議な人だな……オーラはないのに、雰囲気はあるというか……うん、すごい人ってことだけはわかる! 大人の魅力っていうのかな……あの女の人もメロメロだったし、かっこいいって思う要素って顔だけじゃないんだな……)


 伸びてきたキモオの太い手に、レナはその小さな手を重ねる。ぶにぶにとした、自分よりも大きくて、毛むくじゃらの手を感じるだけで胸の高鳴りは加速していくこともまた自覚できた。


「それでは先生。後は面接の方をお願いしたいんですが……」

「うん、いいよぉ! リンはモニカを連れて下がっててね。あの目をつけてたダンジョンの隠しフロアを発見したご褒美をあげてたら、こんな感じで失神しちゃったから」

「はい、わかりました。それでは失礼します」


 リンは丁寧に応対をした後、モニカと呼ばれた美女を軽々と肩で担いで部屋を出ていく。

 レナは豪奢な寝所にキモオとともに残されて、さらに体が固まるような感覚を覚える。

 だが、見知らぬ男と取り残されたことに対する危機感のようなものは一切ない。むしろ、尊敬する師匠を前にしたときのような、あるいはそれ以上の『失礼なことをしてはならない』という強い緊張を覚えていた。


「えーと、それじゃレナちゃん……だっけ? ここに座ってよ」

「は、はい! ホープ村から来たレナと言います!

 そ、それでは、お隣に失礼します!」


 キモオはベッドに腰掛けたまま、ポンポンと自分の隣に座るようにレナへと問いかける。

 レナは『面接を行う際には面接官と膝を突き合わせるぐらいまで至近距離で座り込むことは常識』であることは知っているため、その小柄な体をキモオへと寄せ付けてベッドへと座り込む。

 肩が触れ、脚と脚が密着し、息がかかるほどの距離でベッドに座りあった二人は面接を開始する。


「で、でさぁ、レナちゃんは元々冒険者志望だったのかな? んちゅぅぅぅぅ!」

「あぅ、ちゅっ、ちゅぅ……れろぉ……ちゅぅぅう、ちゅぱっ♥ は、はい! 冒険者になりにこのザガンへと訪れたところ、リンさんにスカウトをして頂いて、その今回、面接を受けさせていただくことになりました!」


 キスをしながら面接が開始される。

 『ギルドマスターからキスをされることは当然のこと』のため、今まで男と手を繋いだこともなかったレナはなんの抵抗もせずにキモオの分厚い唇を受け入れる。

 ファーストキスから濃厚なディープキスを行われた乙女はもじもじと脚を動かして、下腹部と胸の先から感じる快感を堪えながら、『尊敬できるギルドマスター』からの質問に答えていくのだ。


「んんっ、ちゅぅ、うぉ、美少女の唾液うっめ……!  ああ、あんまり緊張しなくていいよ。レナちゃんはギルド帳には名前を書いてくれたんだよね。ちゅぅ、ちゅっ、ちゅっ、ぶちゅぅぅぅぅ!」

「んんっ♥ はぁ、ちゅぅ……ふぅんっ♥ はい、先程受付の女性の方の指示に従って、サインをさせていただきました!」


 キモオのぶっとい舌がレナの小さな口の中へと侵入していき、その口内をなんの躊躇いもなくレロレロと舐め取っていく。お互いに唾液を交換するディープキスを行い、キモオはレナの、まだ大人になりきれていない淡い果実のような少女の甘い唾液を嬉しそうにゴクゴクと飲み干していく。


「うんうん。それならすでにレナちゃんは『黄金の軍』のギルドメンバーになったと言えるんだよね。

 だから、この面接っていうのは、入団の面接じゃなくて適正判断の面接になるんだ」

「なるほど……」

「ところでレナちゃんはこれがファーストキスかなぁ?」

「は、はい……その、ギルドマスターさんとキスをするまで、男の人と手を繋いだこともありませんでした……うう、すみません、子供で……」

「ぶひひ! 天才魔女っ子のファーストキス、ごちで~す♪ ま、まあ、初めてにしては中々上手かったよぉ? リンとかは生意気にも舌を追い出そうとしてきたけど、レナちゃんはちゃんと大人しく僕の舌を受け入れてたからねぇ。見込みがあるよ!」

「あ、ありがとうございます!」


 あの颯爽とした、強さの底が一切見えない剣士であるダイドウジ・リンよりも優れていると言われ、パァッと顔を輝かせるレナ。その様子がまたなんとも愛らしく、キモオはビキビキと股間を強く勃起させるのであった。


「ふひひ、それじゃギルドメンバーとしてまずはテクニックを見せてもらおうかなぁ。まずは手コキから……あっ、射精させる必要はないからねぇ。僕ぐらいの経験値持ってるヤリチン相手に処女の女の子が手コキでイかせるなんて無理だと思うし。ぶひひっ!」

「は、はい! それでは、失礼します!」


 『ギルドメンバーはギルドマスターの性処理を行うモノ』という冒険者の心得は身につけている。

 とは言え、経験がないために上手くいくかはわからないが、それでもレナはその可愛らしい小さな手をビキビキに勃起をしている女殺しのデカチンポへと伸ばしていく。


「ふ、ふわぁ……すごい、大きいですね……♥」

「ま、まあねぇ。僕は他の男とは格が違うからさぁ」

「ああ、やっぱり『黄金の軍』ぐらい大きなギルドを治めるギルドマスターとなると、こういったことにも優れているんですね……尊敬です……♥ その、至らないところがあればご指導お願いします……♥」


 レナはリップサービスではなく心からの感嘆の想いを口にする。

 ドキドキとしながら初めて見る凶悪なイチモツをゆっくりと上下に擦っていく。


「あっ……♥ そ、その、胸を……♥」

「ふひひ、気にしないで気にしないで! お互いが気持ちよくなることが大事だからねぇ!」

「で、でも、その、私、子供だから……さっきの人やリンさんとは違って小さいし、ギルドマスターさんはあんまり楽しくないんじゃ……んっ♥」

「そんなこと言わないよぉ。かわいいちっぱいモミモミするのも僕は大好きだからねぇ」

「か、かわっ……♥ あ、ありがとうございます♥」


 シコシコ、シコシコ。

 シコシコ、シコシコ。

 単調ではあるが両手で優しくゆったりとシゴカれるその快感は、レナというあどけない美少女の容貌とマッチしていて、実際の性的な快感は小さくとも心的な快感は大きい。

 言うならば、『こんな性経験など一切ないような美少女が顔を真っ赤にして手コキをしている』というシチュエーションに対する興奮である。

 なにせ、レナほどの美少女はめったにお目にかけられない。

 そのことから、レナはキモオの『お気に入りメンバー』となることはほぼ確定している。

 技術的なことはこれから教え込んでいけばいいのだ。


「ふぅんっ……♥ そ、その、すみません、なんだか……私のほうが興奮してきちゃって……♥」

「ふひひ、顔を真っ赤にしてるレナちゃんかわいいなぁ、れろぉぉ」

「ひゃぅんっ♥ も、もう、やめてくださいっ♥」


 シコシコ、シコシコ。

 シコシコ、シコシコ。

 このままではいけないと思ったのか、握る強さを変えたりシゴくスピードを変えたりといった工夫をなんとか行いながらも、手から伝わるデカチンポの熱さと胸への愛撫が伝えてくる快感に悶えるレナ。

 奉仕する側でありながらも感じていることを謝るレナが可愛くて、キモオは思わずその短く分厚いベロを突き出して、レナの真っ赤な頬をなめてしまう。

 鼻にささる臭さまで漂ってくるキモオの行為に、レナはさらに快感を覚えてしまう。

 『ギルドマスターの行うことはギルドメンバーにとって何よりも気持ちよく感じる』のだから当然だろう。


「ふぅ……いい感じに滾ってきたし、手コキはもういいよぉ」

「あっ、その、わ、私のご奉仕はどうだったでしょうか……?」

「うーん。まあ、素人だしね。拙いっていうのが正直なところかなぁ。ぶひひ、でも心配しないでいいよぉ。これから先輩たちが教えてくれるから、それをお手本にしてしっかりと学んでいけばいいからねぇ。レナちゃんの手コキは一生懸命で、がんばり屋さんなことは伝わってきたから、すぐに上手になるよぉ!」

「は、はいっ! 私、がんばりますっ!」

「じゃあ、次はオマンコご奉仕だ。そこに寝そべってごらん」


 レナの肩を軽く押してベッドへと押し倒す

 一瞬、服が皺になってしまうとレナは思うが、それでも胸の高鳴りは止められない。

 この素敵な男性に抱かれると思うと、そのチャンスを棒に振りたくないのだ。

 『ギルドマスターはこの世界で一番ステキな男性』なのだから当然だろう。


「ふぉぉぉぉぅ……! ま、前の世界だとJCぐらいの女の子のオマンコ、マン筋が真っ直ぐでエッロぉ……! ぼ、僕はロリコンじゃないけど、こういうのも良いなぁ……! も、もっと青田買いしまくって、この年頃の女の子をギルドに入れまくっちゃおうかなぁ……ぶひひっ!」


 羞恥に顔を真っ赤にさせながら大きく股を開いたレナのお子様オマンコを覗き込み、キモオはその名前の通りまるで豚のように鼻息を荒くする。

 もう、興奮を抑えることは出来なかった。


「それじゃ……早速挿れるよぉ」

「はい、よろしくお願いしまっっ、すぅぅぅ♥♥♥♥♥」


 ビチビチィィ、と。

 すでにどろどろにほぐれていたレナの処女マンコ、そこにキモオのデカチンポが挿入される。

 文字通り体を貫かれるような感覚に、ぎゅぅ、とベッドを握りしめて耐えるレナ。

 そんな健気な姿が愛らしくて性欲が高ぶってしまい、腰の動きを早めていく。

 そこに処女が相手だという思いやりも気遣いもなかった。


「くぅぅぅんっ♥」


 だが、そんな身を裂くような痛みが生じているはずのレナは甘い嬌声を漏らす。

 『ギルドメンバーはギルドマスターから与えられるモノは痛みすらも甘い快感として覚える』のだから、レナが漏らす涙は痛みによるものではなく快感によるものだ。

 だから、キモオはレナを思いやることはなく、レナをレナという少女ではなく新しいオナホとして認識をして、そのまま性欲処理として使うのだ。


「どうかなぁ、レナちゃん。気持ちいいかなぁ?」

「は、いっ♥ きも、きもちいい、ですぅ♥」

「ひひ、良かったぁ。これからも気持ちよかったら正直に言うんだよぉ?」


 こうしてレナの感度を尋ねるのも、レナを思いやってのことではない。

 ただ、自分のチンポでヨガっている女を見て、聞いて、気分を良くするためのだけのものだ。

 そして、気を良くして高まった性感をさらに発するために腰の動きを早めていく。


「じゃあ、もっと激しくするから、ね! ふぉっ! ふぅっ! ふひっ! ぶぅっ! おぉ、ぶひぃっ!」


 豚の鳴き声ような喘ぎ声を漏らしながら腰を振っていくキモオの動きに、やはり処女の相手を思いやるような気持ちはない。ただ、この少女の、ともすればその両手で覆いきれてしまうような細い腰をガシりと掴んで、勢いよく腰を振っていくのである。

 まるで、レナを自慰のための道具のような自分勝手な動きであった。


「あぁっっ♥ んぅぅぅっ♥ き、気持ちいい、ですっ♥ ま、マスターのオチンポで、コツコツって奥を叩かれると、体がゾクゾクってなって♥ あ、頭も、おかしくなっちゃいそうですぅっ♥」


 だが、そんな乱暴な扱いをされてもレナは強い快感を覚えていた。普通ならば小慣れない上に破瓜を迎えたばかりのオマンコに、ギルドマスターのようなデブチンポを突き入れられれば、その刺激から強い痛みを覚えてしまうことが普通であるが、しかし、今のレナは心身ともに操られているために痛覚を快感に変換されてしまっているのである。


「あぁっ♥ な、なにか、なにかきますっ♥ こ、こわいですっ♥ ま、マスター♥ こ、これ、なんなんですかっ♥」

「ふひひ、レナちゃんはイッたことがないんだねぇ。大丈夫だよぉ、ちっちゃなお手々を握ってあげるからねぇ。そのまま気持ちよく受け入れちゃえば良いんだよぉ♪」

「あっ……♥」


 ぎゅぅ、と。

 キモオは指と指を絡ませて手を握っていくと、レナはそのキモオの毛むくじゃらで太い指から伝わる熱に大きな安心感を覚えてしまい、ぽぉっと目を蕩けさせてしまう。


「あっ♥ あぁぁっ♥ イ、イクっ♥ イキますっ♥ イクっ♥ イクイクイクぅぅぅぅっ♥♥♥♥」


 レナがアクメをキメると同時に、体が未成熟であるためにただでさえ狭いオマンコがキュゥぅぅぅと痙攣していき、膣内に挿入されていたオチンポが強く締め付けられる。

 その快感を味わいながら、キモ男は侵すべきではない少女の子宮へと射精をするのだった。


「おぉぉぉっ! ぼ、僕もイクよぉぉぉぉっ!!」


 どびゅぅぅうぅっぅう! びゅるるるっ! びゅるるるっ! どびゅぅぅぅぅうぅぅぅ!!!


「あぁぁぁぁんぅっぅっっぅっっ♥♥♥♥♥♥♥」


 どぶどびゅ、と。

 キモオのザーメンが子宮に注ぎ込まれる瞬間に、レナはまた深いアクメをキメてしまう。

 深く脈動するチンポの感覚を、まだ成熟していない体だからこその薄い肉の狭いオマンコで感じ取っていき、それが脳みそに焼き付いていく。

 これこそが『自身の御主人様』なのだ、と。

 まるでキモオの精液が魂を白濁色に染め上げるように、レナはこうして『黄金の軍』のギルドメンバーに────キモオ・ブータという男の肉オナホコレクションの一人となってしまったのである。



「それじゃ行こうか、レナちゃん。今日はギルドマスターから『山脈』のダンジョンでレナちゃんの冒険者としての実力を確認するように言いつけられてるから、気合い入れていこう!」

「は、はい! よろしくお願いします、リンさん!」


 翌日。

 正式に『黄金の軍』のギルドメンバーとなったレナは、自身をスカウトした剣士であるリンとともにザガン付近にあるダンジョンの一つ、『山脈』のダンジョンへと向かっていた。

 先日と同じように、大きな三角帽子と大きな黒いローブを身につけたレナはひどく動きそうではあるが、これは魔術師としての正装であるために脱ぐことは出来なかった。

 ただ、そのローブの中心に大きな黄金のブローチがつけられている。もちろん、イミテーションではなく本物のインゴット黄金を超一流の鍛冶師が特殊な技術を使って加工して作った黄金の軍のギルドバッジである。それは袴姿であるダイドウジ・リンも同様に身に着けており、このダンジョン都市ザガン付近ではそれだけで一目置かれる証であった。


「私たちの仕事は主に二つで、このダンジョン探索はその仕事のうちの一つ。『黄金の軍』はこのザガンを治める領主様から多大な出資金をもらっているから、その分、このダンジョンから出た『アーティファクト』を領主様に献上したり、逆にそれぞれの階層にどのようなトラップがあってどのようなモンスターが存在するのか、そのトラップの解除方法やモンスターの効率的な対処法を調べて、共通情報として纏めておく必要があるのさ。

 おっと、その、モンスターはよく焼いておいてね。死体が腐臭を出して、低レベルの人には毒になっちゃって面倒だから」

「わかりました、『フレイム』。

 なるほど……『冒険者ギルド』は国に属さない物と言われてますけど、『黄金の軍』は公的なギルドのような立ち位置なんですね」

「そうだね。本来なら高値で売りつけたりする情報を無償で……というと出資金を定期的にもらってるんだから違うかな、とにかく、提供することが私たちのお仕事なわけさ。はい、ストップ。ここトラップあるから迂回するよ」

 

 レナとリンは山脈のダンジョンを踏破していきながら、そんな会話を続けていく。

 その階層は強大なモンスターと悪辣なトラップが仕掛けられている、中級ギルドが命がけで進んでいくようなその階層だが、『剣豪』であるリンと『魔道士』であるレナにとっては散歩気分で進んでいける程度の雑魚モンスターでしかない。斥候が居ない二人組にとっての最大の壁であるトラップも、すでに調査が済んでいるために簡単に回避できるのだった。


「そして、二つ目のお仕事は……ギルドマスターである先生へのご奉仕さ♥」

「あっ……♥」


 そんな強大な冒険者であるレナとリンは、『黄金の軍』のギルドマスターであるキモオ・ブータの性奴隷なのであった。


「ギルド帳には先生の奴隷帳であってもね。あれに自分の名前を記帳するとギルドの一員……つまり、『先生の奴隷である』という事実が確定してしまうんだ。奴隷ならば先生のお世話をしなきゃいけないし」


 それは魂を染め上げるアーティファクト、『奴隷ギルド帳』であった。

 そこに自ら名前を書き上げたものは、そのギルドのギルドマスターに絶対服従の奴隷となるのである。さらに、恐ろしいことはそのことになんの疑問も持たないということ。この手の強制契約は魂を無理矢理に縛ることで体の自由を奪うものだが、『奴隷ギルド帳』は魂のあり方を変換して、『ギルドマスターの奴隷であることは当然である』と思わせるのだ。

 

「わ、私、いつかお師様もお呼びしてギルドメンバーになっていただきます! お師様は齢数百歳の大魔女ですが、その美貌も腕前も私なんか足元にも及ばないお方なので!」


 そう。

 可憐な少女であり、将来有望な魔術師であるレナ・ホープという人物はもう居ない。

 ここに居る少女は、大恩ある師匠を売り渡すことに抵抗を覚えるどころか、率先して行おうとする従順な性奴隷なのだから。


(続く)


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次回

洗脳ギルド 02:大貴族ステラリア・スペシュールドの場合

前回  スペシュールド侯爵。  五百年ほど前まで遡る王国建国、その日よりも前から王家に仕えてきた忠臣の中の忠臣。  王家への忠誠とその冷酷さには定評があり、王族の臣籍降下によって生まれる公爵家を除けば、侯爵家第一位という、貴族の最上位に当たる貴き血筋。  さらに、二代前の侯爵の下に生まれた長女は当時...


Comments

カツ

どストレートな催眠ファンタジーものは最高です

ピサ朗

期待にたがわぬ超長編で畏怖ると同時にシコる。 続ききたら枯れる気がしてならない。