Home Artists Posts Import Register

Content

 

 ────きっと、私は幸せなんです。


 そう語る間桐桜の顔にあるものは、遠坂凛が知る幸せというものではないように思えた。

 遠坂凛だって、自分が取った行動の全てがいい方向に進んでいると本気で信じていたわけではない。

 手のひらから取りこぼしたものはあるし、拾えなかったものもある。

 それでも、最悪ではないと思っていた。

 間桐桜は遠坂凛の妹ではあるが、もう遠坂凛の妹ではない。

 だから、これだって最悪ではない。

 様々な難関を乗り越えて冬木の聖杯は解体され、次があると思い込んだまま間桐に巣食っていた妖怪であるゾォルケンも魂を摩耗させた末に消滅した。もはや間桐桜を縛り付けるものはなく、魔術に囚われることからすら抜け出すことが出来たのだ。

 今目の前に居る女性が間桐桜であることは、かつて遠坂桜だった少女が魔術から完全に切り離されたことを意味しているし、魔術の道から外れることで歩める幸福な道を選ぶことが出来るということだ。

 現に、かつては姉妹であった二人は新たな関係性を築き上げることが出来て、少なくとも表面上はひどく穏やかな関係になっているのである。

 こうして、『結婚式の招待状』を受け取ることが出来るぐらいの関係性を築くことが出来たのだ。


「相手は?」

「姉さんはロンドンに留学してたので知らないですね。高校時代の弓道部の後輩です、ひとつ下になります。美綴先輩の弟さんです」

「へぇ、意外なところで繋がってるものね……それにしても、随分と早いのね。まだ桜も若いのに、もう結婚するの?」

「はい。家族というものに……その当てつけなんかではなく、純粋に憧れがあるんです。

 今だって兄さんも居ますけど……やっぱり、ちょっとギクシャクしてるところが未だにあるので」

「生活、できるの? 何度も言うことになっちゃうけど、貴女もその子も、まだまだ若いじゃない」

「兄さんの事業が軌道に乗っているので、それに携わらせてもらうことになっています。脛をかじってて、格好が悪いですけど」


 表面上だけならばなにもないように振る舞いながらも、凛はそっと桜の表情を伺う。

 そこは血の繋がった妹の面影を色濃く残した、それでも幼い頃によく見たものとは異なる、落ち着いた柔らかな笑みが広がっていた。

 遠坂凛には、その笑みが心よりの幸せを覚えているものとはどうしても思えなかった。

 何故ならば、遠坂凛もまた魔術師であり、魔術師とは人でなしであるからだ。


 ■


「ぉぉ、あぁ……や、やっばぁ……♡」


 遠坂凛の今の生活はお世辞にも健全なものとは言えないだろう。

 国家の壁を越えて共通した倫理観を築くことに成功した国際社会においては、それこそ眉をひそめられて然るべきものだという自覚はある。

 凛は今、たっぷり五人は横になれるような巨大なベッドの上でその美貌を蕩けさせながら、指一本も満足に動かせないほどに体全身の筋肉を弛緩させて横になっていた。

 そして、そのような状態になってしまっている女性は凛だけではない。


「っぅぅぉぉぅ……あへぇぇ……♡」


 一人は金髪碧眼の美少女、凛の頼れる従者でもあるセイバー。その可憐で、触れただけで消えてしまいそうな麗しい容貌とは裏腹に勇猛という言葉がよく似合うほどの、超常的な『力』を所有している騎士。

 その正体はかつてブリテンを救い、いつか再びブリテンに舞い戻ると言われている伝説の騎士王『アーサー・ペンドラゴン』の正体であるアルトリア・ペンドラゴンだ。あのアーサー王が女性であり、聖剣の加護によって齢を取ることもないまま少女の姿であり続けたという驚愕の真実を持って現代に蘇ったのは、今はもう懐かしい聖杯戦争によって英霊として召喚されたためだ。

 そこでセイバーのクラスで召喚された彼女は、最終的に遠坂凛と契約を交わしたまま聖杯戦争の勝者となり、こうして今もまた現世に残っているという次第だ。

 そんな伝説的な騎士であるセイバーだが、今は凛のように、いや、凛よりもひどい様子でベッドに倒れ込んでいる。

 その少女としての儚さを残した体を投げ出し、シルクよりも心地良い感触のその白肌を真っ赤に染めて、性別を問わずに魅了してしまうような幻想的なその美貌をアヘ顔に変えて意識を失ったようにただ胸を上下させて快感に溺れてしまっていた。

 かつての配下である円卓の騎士たちが見れば目を疑うような、女としての姿である。


「ぁぉぉぁぁぉ……ほぉぉぉ……♡」


 そして、同じようにベッドに横たわっている女性はもう一人いる。

 セイバーと同じく金色の髪と宝石さながらの琥珀色の瞳を持つ美女、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトである。

 ルヴィアは凛と同じく魔術師であり、エーデルフェルト家というフィンランドの大家の次期当主。地上で最も優美なハイエナとさえ称されるほどの強烈な性格と美意識を持っており、他人に対する好悪をはっきりとさせる名門貴族だ。そんな高貴な内面に相応しい豊かな金髪と魅力的な体つきをしており、言葉にこそ出さないが、性欲を持つ男ならば誰だってその足元に跪いて服従を誓いたくなるような圧倒的なオーラを放っている。

 そんなルヴィアだが、とても貴族的とは言えないような間の抜けた顔を晒してしまっている。目を半開きにして、鼻の穴を広げて、口がパクパクと開閉してしまっている姿は貴族というよりも娼婦、いや、それ以下の色情狂だ。その指先を舐めたくなるほどの美しく肉付きのいい脚をガニ股に広げて、その付け根である股間からはドロドロとした濃厚な白濁液を流し込み、むしゃぶりつきたくなる爆乳は荒い息で卑猥に上下してしまっている。

 優美なハイエナなどとは呼べない、強者に捕食されてしまった惨めな草食動物の姿だった。


「ふぅぅ……」


 そんな中で一人だけ平気な顔をして、ボクサーパンツだけを身につけて動き回っている男が居た。

 筋骨隆々とした肉体をしており、顔つきは派手ではないが比較的整っている。凛はその姿を見つめるだけで、精液が注がれている子宮がキュンキュンと疼いてしまうのを自覚した。悔しいが、このように激しく抱かれた後は毎回そうだ。

 かつてはそれほど大きくはなかった体は縦にも伸びたし筋肉の厚みも増している。顔立ちも幼さが消えてきて、『いつか見たあの風貌』と似ているようで、それでも違うものになっていた。男として成熟しているその姿を見つめると、凛の中の女が疼いてしまう。

 男の名は衛宮士郎、遠坂凛のパートナーである男性だ。彼もまた聖杯戦争に参加し、そこで凛と関係性を深めた。セイバーの最初のマスターでもある。


「……やっぱり、なんだかムカつく」

「うわ! なんだよ、遠坂!?」


 そして、何よりも凛とセイバーとルヴィアの三人が愛する男でもある。それぞれの経緯を語れば長くはなるが、内容自体はひどく単純。三人は魔術師でも騎士でもなく、女として衛宮士郎の男に魅了されてしまったのである。

 今では毎夜毎夜、時間さえあれば四人で睦み合う爛れた日々を送っていた。それが凛が持つ、他人からは非難されてしまいそうな秘密の正体である。魔術師は常識から外れた存在であるとは言え、さすがに魔術師からしてもあまり褒められたことではない。

 何故ならば、凛とルヴィアは魔術師でありながら、明らかに士郎に対して愛情と性欲を向けていて、魔術とは全く関係のない理由でセックスを続けているためである。

 士郎とのセックスはなんの魔術も施していないというはずなのに、凛とルヴィアとセイバーを昂ぶらせる。相性が良いのだ。それは体だけではなく、魂のレベルで。まるで造られたポルノ作品のような反応を示してしまう。高められてしまった性感がこの頭の中にあるニューロンを焼き切るほどの興奮を与え、そこから生まれる多幸感は魂を堕落させる、あるいは昇華させるほどのものだ。

 唯一不満なことがあるとすれば、自分たち女ばかりが我を失って失神してしまうほどに感じているというのに、男である士郎は、確かに気持ちよくなってくれているものの、自分たちとは違ってセックスの後でもすぐに動き回っている。それが『敗けた』ような気持ちになってしまうものの、正確に言えば、その敗北感を覚えることが不満なのではない。その敗北感が士郎への雄としての強さを強調させてしまい凛の中の牝としての悦びを覚えてしまい、敗北感を受け入れてしまうことが不満だった。


「……でも、これはちゃんと幸せなのよね」


 ポツリと、誰に言うでもなく独りごちる凛。

 どうせ自分もまた人でなしの自分本意な欲張り女なのである。

 それならとことんまで欲張ってしまおう。

 自分の腕の届く範囲の外に多少迷惑をかけてしまおうとも、そうすると決めた。

 決めてしまったのである。


 ■


「……ぅん」


 間桐桜は朦朧とする頭の中で、それでも目を覚ました。

 確か、桜は先ほどまで血の繋がった実の姉である遠坂凛とお酒を飲み交わしていたところだったはずだ。桜の結婚式のために招待状を送っていた姉の凛がわざわざ海外から帰国して訪れてくれ、大人になった二人だけの、姉妹水入らずの日々だった。

 正直なことを言えば、姉が来てくれるのは意外ではあった。

 良くも悪くも、姉は魔術師として大成をしようとしていることもあり、完全に魔術から縁が切れてしまった間桐とは意識的に関わりを断とうとしているようだったのだから。ひと月ほど前に顔を合わせてその話が出来たことからも、それで終わりだと思った。続きがあるにしても精々が電報止まりだろうと、哀しくはあるがそれも仕方ないと桜は諦めていたのである。

 それが突然、どこからか仕入れてきたらしい上等なお酒を片手に桜の前へと現れた。無理強いはしてこないが拒絶を許さない、凛らしい振る舞いで酒につきあわされてしまったのだ。

 そこまで覚えているが、そこからの記憶というものがない。

 どうやらアルコール度数の強いお酒だったようで、酔いつぶれてしまったようである。

 気怠げな頭と体を動かして身を起こす。

 見慣れない、記憶の中にも残っていない遠坂の屋敷の一室だった。凛が海外に出ていたことで主を失っていた屋敷だが、いつの間にか掃除をして整えていたのか埃っぽさはまるでない。


「……え?」


 そこでようやく、自身が下着姿になっていることに気づいた。

 姉と出会うということで意味もなく力の入った、色っぽい下着である。ひょっとすると、婚約者であり数日後には神前で愛を誓った夫となる相手、美綴実典との簡単なデートでも中々身につけないような下着である。布面積も少ない上に華の装飾が施された紫紺の下着は、その色調から桜の豊満な体をキュッと引き締めつつも蠱惑的な印象を与える、まさしく『勝負下着』とでも呼ぶべきものであった。


「なに、が……?」

「あら、もう起きちゃったの?」

「姉さん……?」


 桜が重い体を起こして戸惑っていると、なんでもないような声色を発しながら姉でありこの屋敷の主である凛が現れたではないか。

 やはりと言うべきか、凛もまたその体を真っ赤な下着を身に纏っている。ただ、燃えるような情熱の赤にぴったりの桜の下着に負けず劣らず布面積が少なく、一種の矯正下着のように体のラインを美しく見せる形状をしている。桜はその派手で下品でさえあるような鮮やかな美しい真っ赤な下着を身につけてもなお細身の体を見せつける凛に、言いようのない嫉妬と、それすら忘れてしまう強い興奮を覚えてしまった。


「姉さん、これは……いったい……?」

「ねえ、桜。私ね、貴女から結婚するって報告を受けてからずっと考えてたの」


 ベッドから上半身だけを起こした桜から発せられる当たり前の疑問には応えずに、凛はにこやかな表情のままベッドへと腰掛ける。

 歳を重ねてなお美しくなった凛の顔に、桜はやはり嫉妬と興奮を覚えてしまう。

 いくつになってもこの人は美しい、自分とは違う生き物のようだと桜には思えてしまうのだ。

 そんな桜の動揺を一顧だにしない様子で凛は言葉を続けていった。


「貴女、幸せじゃないでしょう?」

「────え?」


 その凛から発せられた言葉に、桜は間の抜けた声を漏らすことしか出来なかった。

 遅れて、今度は純度の高い怒りというものを抱いてしまう。


「なに、を……勝手なこと……!」


 幸せではない、と。

 桜にとってはどんな人間よりも美しく、どこかの誰かよりも強い女性が憐れみを向けてくるのだ。これまでの人生で何度となく踏みつけにされてきて哀れな女である桜であろうとも人としての矜持というものは持ち得ていた。だから、その憐れみに怒りを抱かないわけがなかった。


「だって、全然笑っていないもの」

「────っ!」

「妥協してるんでしょう、貴女?」


 だが、その怒りも凛の言葉で瞬時に治まっていき、さらに続けられた言葉に図星だと言わんばかりに言葉を失ってしまう。

 妥協、まさしくその通りだった。

 桜は幸せだと思っている。

 年下の優しい恋人と結ばれて、様々な過去を重ねてきた義兄との関係も改善されつつあり、地獄のようであった悪魔の城は打ち壊された。

 世界で一番不幸なのではないか、と幼い頃には傲慢に思っていた。

 だけど、今となっては自分より不幸な人間などそれこそ数え切れないほどにいる。

 そんな自分が幸せではないとは、それこそ苦しんで、苦しむことさえ辞めてしまった過去の自分が哀れなようで思わないようにしていた。

 自分は幸せなのだと、自分より不幸な人間なんて考えれば馬鹿になってしまうほど存在するのだと、そう思うことで妥協なのだと考えないようにしていた。


「桜。貴女は笑うかもしれないけど、私は貴女に幸せになってもらいたいの」

「姉、さん……」


 凛が笑う。

 かつての幼さなどどこにもない、けれどその幼い頃の顔の延長にあるのだとはっきりとわかる美貌で艶やかに笑われると、その瞳に呑み込まれてしまう。

 これもまた魅了の魔術、魅了の魔眼とでもいうのだろうか。魅了されてしまうから魔術なのか、魅了してしまうほどに美しいから魔眼と呼ばれるのか。それがどちらかわからない。


「貴女の恋人、見させてもらったわ」

「……そうですか」

「全然似てないけど、似てるわね」


 そう言われた瞬間に、かぁっと顔に熱が集まることを桜は自覚した。

 栗色の髪に琥珀色の瞳、少し細身で小柄な体格。それぞれのパーツを一つずつ抜き出していけば、確かに似ている。誰に似ているかなんて、改めて尋ねる必要すらない。似ていることに気づいていなかったかなんてことがただの誤魔化しだということも、自分が選んだ結婚相手に何かを重ねていたのかということも、桜自身がよくわかっていた。


「士郎と────衛宮くんと、よく似ている」

「っぅ……!」


 衛宮士郎。

 未だに桜の胸の中に残っている、それこそ目を瞑ってしまえばその姿を瞼の裏に浮かんでくるほどに、強烈な熱を持って魂に焼き付いて離れてくれない存在。その人を忘れることが出来なかったために、それに近い存在と結ばれることで自分の心を慰めていたと言われても、桜では何の反論でも出来ない。

 いや、近しい人にはわかっていただろう。結婚することで義姉となる美綴綾子や高校時代からの尊敬する恩師である藤村大河に仲が修復されつつある義兄の間桐慎二などには、それこそ見透かされていたはずだ。

 ただ、それを言っても誰も幸せになれないから、誰もそれを言わなかっただけ。

 今目の前にいる遠坂凛以外は、ただ言わなかっただけなのだ。


「ねえ、桜。一緒になりましょう?」

「……どういうことですか?」

「我慢するのをやめたの、幸せって人それぞれって言うけど、やっぱり私は私の目でしか世界を見れないもの。押し付けさせてもらおうと思うの」


 要領を得ない言葉だった。

 向けられた桜だって凛が何を言いたいのかわからず、それでも心を見透かされてしまった恥ずかしさで顔を赤くしながら、凛の美しい顔を見ることしか出来なかった。

 その瞬間、扉が開いた。


「あっ────」


 その扉の奥から現れてきた人を目にして、桜は間の抜けたように口を丸く開いて間の抜けた声を漏らしてしまったのである。

 自身が下着姿であることも忘れて見惚れてしまった。

 いつかの日に見た夕焼けのような橙色の短い髪、澄んだ色合いをした琥珀色の丸い瞳、数年前とは違って大きく伸びた身長と膨らんだ筋肉。

 懐かしい姿と見慣れない姿が混在した、それでも確かに彼だけだとわかる姿。


「せん、ぱい……」

「……久しぶり、桜」


 衛宮士郎。

 間桐桜にとっては一生忘れられないであろう人物が現れたのである。

 凛が呼び寄せたのであろう士郎は、懐かしくて暖かい笑みを向けてくれる。

 それだけで桜の心は長く積もった雪が溶けてしまうような気持ちになり、同時に怖ろしさを覚えてしまう。ただ会っただけで、これほどの気持ちになってしまう。自分には結婚を約束した相手が居るというのに、その人物とのデートなんかよりもずっと心が満たされてしまったのだから。


「ねえ、桜。私たちと一緒にならない?」

「……はい?」

「桜のことを幸せにできない男じゃなくて、私と衛宮くんと一緒になりましょう?

 捨てちゃえばいいのよ、そういう要らないものは」


 馬鹿げた、そして、人でなしの提案だった。

 この結婚は桜が一人で決めて、桜にだけ影響を与えるようなものではない。

 相手である実典がいるし、その家族である綾子もいるし、桜側の親族である慎二にも結婚後の生活で頼ることになるし、お互いの恩師である大河にも仲人をお願いしていることから、様々な人が関わっている。

 全てが嘘だったからと言って捨てるには、あまりにもあり得ないことだ。


「そんなこと────!」

「桜」

「あっ……」


 人としての良識が、実典に対する後ろめたさが桜に凛の言葉を否定させる。

 だが、その言葉を言い切る前に士郎が顔を近づけてくる。

 胸がドキドキと鼓動を早めていく。

 顔立ちが整っているわけではない、美形である凛の顔を見たときの言いようのない緊張とは違う、純粋な想いからの高鳴りだった。


「桜、俺は桜が幸せならそれでいいけど……幸せじゃないなら、俺は嫌だ」

「ぅぅっぅっ……!」


 凛に説得という名の洗脳を受けた士郎は、その良識というものが失われつつあった。あるいは、海外での生活とその周囲の人物の影響か、魔術師らしい現代社会への軽視が生まれつつあったのかもしれない。

 とにかく、最初は渋っていた士郎であったが、凛による一昼夜かけた説得によって『桜は幸せにならなければいけない』と思ってこの騒動に関わることを決めたのである。


「桜、これから衛宮くんが貴女を徹底的に抱くわよ」

「は……?」

「抵抗しても無理なことは、貴女が一番わかっているんでしょ……?」


 凛は士郎の視線に魅了されていた桜へと向かって、そんな訳のわからない言葉をつぶやきながら近づいてくる。

 そのしなやかに伸びる腕を操って桜の手を片手だけで頭の上に拘束しながら、そのセクシーな勝負下着に包まれた大きな乳房を露出させる。


「うわっ、おっきい……! こ、これ、ルヴィアより大きいんじゃないの……!?」

「……ごくっ」

「っぅぅっぅ♡」


 まろびでたおっぱいは凛と士郎の想像を超えるほどの大きさだった。凛の下着は大きく見えるように体型を矯正させるような下着だが、桜の下着はむしろ胸を納めてスラリとした体に見せるための、海外製のバストサイズの大きな女性に向けたスリム下着とでも呼ぶべきものなのだ。

 その巨乳、いや、爆乳を見た凛は驚きの声を漏らしてしまい、士郎もまた露骨に息を呑んだ。

 その二人の反応に対して、桜は強い羞恥と僅かな誇らしさを感じてしまう。誰よりも尊敬しながらも誰よりも妬んでいた姉の驚きと僅かな羨望の含んだ声と、誰よりも心惹かれていた先輩の情欲に満ちた視線を受けることに悦びを覚える自分自身の浅ましさに桜は言いようのない嫌悪感に襲われるのだった。


「うぅん、美味しそう♡ いただきますっ♡」

「きゃっ、あぁぁっ!? や、やめてくださいっ!」

「ちゅぅぅぅぅぅ、ちゅぱぁっ♡ これ、ちょっとまずいわね……♡ 赤ん坊になっちゃいそうなぐらい、夢中になっちゃいそう♡ ほら、士郎もさっさと動きなさいよ」

「あ、ああ……そうだな」


 桜の爆乳を凛が舌愛撫している淫靡な光景に呑み込まれていた士郎だったが、凛の叱責によってハッとしないようにその体を桜へと近づけていく。

 改めて、下着一枚だけの姿となっている士郎の半裸の体を見つめる桜。

 高校時代は背丈が小柄ではあったものの、鍛えられて引き締まった体躯であった。今は身長も伸びた上に筋肉量もさらに増えている、大人の男の体となっている。その士郎が、憧れていた男性が自分の体に欲情をして、そして、抱くために近づいているというだけでどうしようもないほどの興奮を覚えてしまう。


「えっ、あぁっ……せ、先輩……♡」

「っぅ!」


 その興奮が表に出てしまった。

 蕩けた瞳を向けて熱い吐息を漏らしている女を前に士郎の中の雄が刺激されて、桜へと襲いかかってしまう。その鍛えられた体を桜へと近づけながら、やがて近づいてくるものは体だけではなく顔も近づいていく。あの日見た光景からずっと思い描いていたその瞬間に、距離と時間が追いついてくるのだ。


「あぅぅ、ふぅ……♡ ちゅっぅ……♡」

「くぅ、はぁぁ……! 桜っ……!」


 桜の赤く柔らかい唇と士郎の色素の薄い硬い唇が重なっていく。

 それだけで、桜の体がビクンビクンと震えて絶頂に達してしまっていた。

 性的な絶頂というものは桜の体が初めて味わう現象である。


(気持ち、いいぅっ……♡ キスだけなのに、セックスなんかよりもずっと、ずっと、気持ちいい……♡)


 桜は、自慰も含めて一度として性的な快感を覚えたことがなかった。特殊な体験をしてしまった自分は不感症なのだろうと、本気で思っていた。だから、桜は実典とセックスをする時間というものがひどく辛い時間だったのだ。最低である自覚はあるが、桜は気持ちよくなれていないのに、気持ちよさそうに息を漏らしながら腰を振ってくる実典に対してどうしようもない嫌悪感のようなものを覚えることさえあった。ただそれらしく、演技で喘いでその時間が終わることだけを考えていたほどである。


「ふぅぅ、ちゅぅぅ……はぁ、ちゅぱっ……れろ……♡」

「んぐぅ……!? さ、桜……! くぅ、れろぉぉっ……!」


 それが今は違う、体が自分のものではないほどの快感を覚えていた。心と体が結びついて、反射的に生まれるその性的な快感を拒絶することなく受け入れてくれる。蟲蔵は例外にしても、義兄である慎二の強姦よりも、恋人である実典との穏やかな和姦よりも激しい、今までのセックスでは味わったことのない快感だった。

 その快感に夢中になって、桜はその唇をわずかに開いて、士郎へと向かって舌を伸ばしていく。

 ディープキスの申し出に士郎は強い興奮を覚えたようだった。無理もないだろう、士郎の中の桜という女性は、そのようなことをしない楚々とした落ち着いた少女のままだった。そんなことではないということは、士郎ももちろん知ってしまっている。だが、それでも胸の中にある『間桐桜』はそういう少女なのだ。そんな少女の無意識的なまでの積極的な受け入れに、士郎はどうしようもないほどの興奮を覚えてしまったのだ。


「はぁ! ふぅぅ……くぅぅ、ふぅ、ぅぅっ!」

「んぅっ♡ ちゅぅ、れろぉぉ……ちゅぅ♡ んぐ、ごくぅ、ちゅぅぅ♡」


 士郎の口内に桜の唾液が流し込まれ、さらに桜の口内に士郎の唾液が流し込まれていく。

 お互いの体液を交換する、恋人同士でしかしようのない激しいディープキスが繰り広げられていた。

 傍で見ている凛も思わず見入ってしまうような、淫らなキスでありながらも熱烈な感情をお互いに交わしているものである。


「はい、ストップ! キスが長過ぎるっ!」

「んぅ、くぅ……そう、だな」

「あぁっ……♡」


 凛の静止の言葉に士郎は体を離していき、その体が離れていくことに桜は苦しそうな息を漏らした。

 言葉にはしていないが明らかに気分が昂ぶっていることが明らかであり、それを見た凛は嬉しそうに笑いながら露出された乳房へと再び唇を近づけていく。


「んぅぅ、くぅぅ、はぁぁぁ……♡ ね、ねえさんっ……やめて、ください……♡」

「桜もそう言いながら気持ちよさそうじゃない。ほら、士郎……じゃない、衛宮くんは下をお願いね」

「ああ、わかった」


 凛は女性の気持ちいいところを知り尽くしているかのような、そんな巧みな舌使いと指使いで桜の爆乳を愛撫していく。なすがままになっている桜に対して、士郎はその下着を脱がしていった。


「っ……!」


 その瞬間に桜は身を固くする。

 自身の女性器の形というものについて考えたことはないが、それでも初恋であり今もなお心に染み付いて離れない相手である士郎に対して自身の女性器を見られるということを心の何処かで拒絶したのだ。

 きれいな体などではない。

 蟲に、兄に汚され尽くし、その汚された体を何の感慨もなく別の男へと開いた。

 桜はそんな自分の秘部を士郎に見られたくはなかったのだ。


「ふぅぅ、んっ……」

「あぁっ♡ だ、ダメです、汚い、です……♡」

「桜、大丈夫よ。私と衛宮くんに任せてちょうだい」


 そんな桜の一瞬の苦悩に対して士郎はなんの躊躇いもなく、その女性器へと顔を近づけてクンニをし始めた。その舌で女性器をなぞっていき、桜の性感をさらに高めていく。


「はぁっ♡ ふぅぅ、くぅぅんっ♡ あっ♡ あぁぁっ♡ だ、だめっ♡ くるっ、きちゃいますっ♡♡♡」

「桜、イク時はイクって言いなさい……♡ そのときの可愛い顔、私たちに見せてね♡」


 相手が凛だから、だとか。

 相手が士郎だから、だとか。

 そんなことは関係がなく、ただ純粋に士郎のクンニは非常に巧みだった。

 凛やセイバーにルヴィアたちとのセックス三昧の日々を過ごしていたことで士郎のセックステクニックは大きく向上しており、それは強姦である慎二はもちろんのこと、セックスの相手を桜しか知らない実典とは到底比べ物にならないほどのものである。

 そんな士郎の巧みな舌使いに翻弄されて、桜はアクメを迎えようとしていた。


「あっ♡ くぅぅぅぅっ♡ イ、イキますっ♡ イクっ♡ イクぅぅぅぅぅぅっぅ♡♡♡♡♡」


 ピュゥゥゥ、ピュッ、ピュゥゥゥゥ♡♡♡♡♡


 桜が体をビクビクと震わせながらアクメをキメ、さらにそのオマンコから潮を吹いてしまう。

 当然、クンニをしていた士郎の顔に直接かかってしまう。

 生まれて初めて感じると言ってもいいアクメの快感に溺れながら、自身の潮をかけてしまった士郎への謝罪の言葉を口にする。だが、その言葉も快感によって蕩けた頭ともつれた舌では上手く言葉を発することが出来なかった。


「あっ……す、すみま……せぇん……♡ せんぱぁい……♡」

「いいのよ、桜。女の子には気持ちよくなる権利があるし、男には気持ちよくする義務があるもの。

 貴女は……心地よく、気持ちよくなっていいの」


 そんな桜を凛がカバーをして笑う。

 そこには懐かしい表情が、大人になっても変わらないものがあった。

 それを見ただけで、桜の心には心地よさで、体には気持ちよさで溢れかえってくれる。

 だが、それは一側面的な見方でしかない。

 凛が今から取ろうとしている行動は、あくまで凛の視点で幸福であるということに過ぎないのだ。


「ほら、衛宮くんもさっさと用意して」

「あっ……♡」


 桜が凛の言葉に釣られて士郎へと視線を向ける。

 視線を凛に向けていたために桜は気づかなかったが、士郎はそのパンツを脱ぎ捨てていた。

 そうすることで、士郎の全裸というものが桜の視界に飛び込んでくる。


(す、すごい……たくましい……♡)


 アクメに陥っていた桜はそれを見て息を呑んだ。

 鍛えられた肉体の中心に存在する、半勃起状態でもなお長く太いもの。何度も言うが、桜は男性器を見知らぬわけじゃない。慎二と実典のもので、その形というものを視覚情報だけではなく体の感覚というもので把握している。

 それを踏まえてもなお、士郎の男根は素晴らしいものだった。

 心が踊る、女としての期待というものが胸のうちから浮かび上がってくる。

 見惚れると言ってもいいほどに士郎の男根を注視していた桜だが、士郎は士郎で少しだけ眉をひそめながら手に持った何かを見つめていた。


「なぁ、遠坂。俺、こういうの使ったことがないんだけど……どう着ければ良いんだ?」


 士郎が持っているものはコンドームだった。

 生セックスのほうが気持ちよく感じるからと、魔術や体調を管理して避妊に努めていたために、士郎たちは一度としてコンドームを身につけたことがないのだ。

 今回はある種の演出としてコンドームをつけることにしたが、慣れない行為に士郎自身が少しだけ戸惑っているようだった。


「あのねぇ、衛宮くん……貴方が使ったことをないものを、私が分かるわけがないでしょう?」


 そんな風にコンドームの付け方に困惑している士郎の顔を、凛は呆れたように応える。

 桜の手前、普段は『士郎』と呼んでいるくせに『衛宮くん』と呼んでしまったが、こうして裸で向かい合っている状況でそう呼ぶとなんだか心が若返ったかのような気持ちになってしまう。


「ほら、これで……こうでいいんじゃない?」

「っぅ……あ、ああ。ありがとう」


 凛がコンドームを握って、やや強引と言ってもいいほどにそのチンポへとコンドームを被せていく。

 そうしながら、凛は少しだけ物思いに耽る。

 自分たちはもう子供ではないのだ。

 とっくの昔に大人になった凛と士郎の道と、大人になった桜の道は離れてしまっている。

 それは体を見ても十分にわかる。

 凛はスレンダーな体つきでありながらも、それでも決して貧相な体つきというわけではなく女性らしい丸みが帯びているし、桜は高校時代から豊満な体つきだったが大人として成熟したことでさらにその魅力を増している。人種からして違うルヴィアと比較しても見劣りしないほどであった。

 その変化こそが、凛と桜の間にある壁の象徴でもあった。

 だけど、凛は欲張りで人でなしだから、その壁を破壊してしまおうと考えたのだ。

 他ならない、自身のパートナーである士郎の男根によって。


「さぁ……たっぷり可愛がってあげてね……♡」

「あっ……♡」

「ぅぅ、くぅっぅ……!」


 四肢がスラリと伸びるスレンダーな体形の凛と、女性らしい丸み帯びた豊満な体形の桜。タイプは違えど、どちらも魅力的な美女である。そんな二人が体を寄せている目の前に広がる光景に、士郎の中で僅かに保たれていた理性の糸というものがついにぷちんと切れてしまった。


「あぁぁっ……は、はいって、くるぅぅ……♡」

「はぁぁ、桜ぁっ!」

「っぅっぅっ♡♡♡♡♡ せ、せん、ぱぁいぃぃっっ♡♡♡♡♡♡」


 ずぶずぶぅぅ……ずぶずぶぅぅぅぅぅぅぅぅ!


 士郎の平均を大きく上回るチンポが桜のオマンコへと挿入されていく。

 士郎は腰をグッグッと強く押し付けて、桜の柔らかで狭いオマンコを拡張していくようにチンポを奥深くへと進み入れて、二人の体が一つになるようにしていく。


「さ、桜……これ、すごぃっ……! 柔らかいのに、きつくて……なんだ、これ……!?」

「あぁぁっ♡ せんぱいっ♡ せんぱいぃぃっ♡♡♡♡」


 士郎にとって桜とは大切な妹分である。

 結婚前にレイプ同然に、いや、レイプそのものでセックスをするという凛の口車に乗せられたとしても、それでも大事に、割れ物を扱うように抱いてあげるつもりだった。

 士郎は自分で考えても嫌になるが、セックスの経験ならば人並みかそれ以上にはあるつもりだった。

 経験人数こそ三人だけではあるが、多くの人間ならば手を触れることすら難しいであろう気位も才能も美貌も素晴らしい美女である凛、セイバー、ルヴィアたちと毎日のように繋がり合ってきた。

 その経験を生かして桜をリードしていこうと、レイプ犯同然の身でありながらもそう驕っていたがそんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。


「そんなに、なの? 士郎の顔、すごい顔になってるけど……?」

「その、こんなの初めてだ……! 凛とも、セイバーとも、ルヴィアとも違う……こ、腰が抜けるというか……!?」


 文字通り腰が抜けるような快感である。

 自分の体が自分のものではなくなってしまったかのように、情けないような動きで腰が動いてしまう。それほどまでの、男という存在を夢中にさせてしまう蜜壺を桜は持っていたのだ。

 その肉感溢れる体に相応しい柔らかなオマンコの肉を持ちながらも、そのオマンコ自体は単純に狭い膣穴。それはどれだけ犯されて、蟲をみちみちに詰め込んでも、拡張されるには限界というものがある。


「あぁっ♡ せんぱいっ♡ せんぱいぃっ♡ すごい、おっきぃ、おおきいですっ♡ こ、壊れてしまいそうです♡ こんなの、かれと、ぜんぜん違うぅっ♡」


 恐らく、本来ならばセックスで快感を覚えるのが難しい肉体なのだ。

 男性器が大きければ大きいほど良いというものではない。

 男性器にも大小の差があるように、女性器にもそれぞれのサイズというものがある。

 そういう意味で言えば、元々の桜の体は性行為に向いていない体だったのだろう。

 それは『遠坂桜』として育っていれば細身の身体のまま、相性のいい男性というものは粗末な男性器を持つ相手とのセックスで快感を得られるような女性になっていたはずだ。

 だが、間桐の『蟲蔵』による魔術的な改造手術で変化した桜の肉体は、士郎の巨根を受け入れるような

 オマンコへとその性質さえも変化してしまったのである。


「ふぅぅ、桜……桜ぁ!」


 その緩やかで柔らかな肉質を持ちながらも、そもそものキャパシティとして狭いオマンコによる、柔らかく搾り取られていくこのオマンコに士郎も頭が真っ白になりそうなほどの快感を覚えてしまっていた。ひたすらに桜の名前だけを呼びながら、薄いコンドーム越しの快感でもこれならば生セックスならばどうなってしまうのかと思いながら、初めてのセックスの時のように腰を振ってしまう。


「士郎、本当に余裕がなくなってるじゃない……! 久々に見たわ、こんな士郎!」


 愛しい妹と愛すべきパートナーが繰り広げる熱のある正常位セックスを見て、いつかの日を思い出した凛は発情していた。

 凛は士郎の背後に回って、そのスラリとした体と確かに存在する柔らかな大人の女性としての胸を押し付けながら桜を見下ろしていく。

 同性であり血の繋がった姉である凛からみても、その顔は思わず理性が飛んでしまいそうになるほどの興奮を覚えてしまう。


「桜、口を……!」

「あっ、あぁぁぁっ♡ ちゅぅ、ちゅるぅぅぅぅっ♡♡♡♡♡」


 士郎はその興奮に従って上半身を屈めて、桜の顔へと自身の顔を近づけていく。その意味を桜自身も理解しており、唇を突きつけるような顔をして士郎を受け入れる。

 男性器と女性器で体を一つにしながら唇と唇が重なり合う、士郎と桜はまさしく二人の人間から一人の人間に変わってしまったかのようだった。皮膚も肉も邪魔だと言わんばかりに、士郎の逞しい胸板で桜の豊満な爆乳を押しつぶしてしまうほど、お互いの体を強く抱きしめあっていく。


「んっ、くぅぅ……! 桜、そろそろ出すぞ……!」

「んちゅぅぅ……はぁっ♡ あんっ、ふぅ、はぁぁぁっ♡♡♡♡♡」


 腰を動かしながらその体を離して、ジッと目と目を合わせていくのである。

 魅了の魔術など存在しない、ただの顔だ。

 それなのに、桜はそれだけで心が満たされる。言葉にはしなかったが、士郎の射精の発言を聞いて嬉しそうに頬を緩めてしまうほどだった。

 その顔を士郎の背中越しに見た凛もまた嬉しそうに笑みを浮かべて、士郎の耳元で囁くのである。


「士郎、奥に押し付けながら出してあげて……きっと、それで桜が一番感じるはずだから♡」

「くぅぅぅぅ、ぉぉおぉおおっ!!」

「あぁっ♡ あんっ♡ あぁぁぁぁぅっぁぁあぁぁっっぁっ♡♡♡♡♡♡♡♡」


 どびゅるるるうっぅぅぅ! びゅるるるっ! びゅぅぅぅ! びゅるるるうぅぅぅ!!


 コンドーム越しに射精の勢いを感じる桜は、ただそれだけで強い快感を覚える。

 恋人である実典とのセックスでも同じコンドームを使用しているが、全く違うものだった。

 このビクビクと脈打つ感覚とコンドームの先端が自身のオマンコの中で膨らむことで体内から圧迫されていく感覚は、今まで味わったこともないものである。


「ぉぉっ、ふぅぅ……!」

「はぁぁ……ぁぁっ……♡」


 0.01ミリという薄さのコンドームに包まれていてもビクビクと震える感覚が幸福感を産んでくれる。

 桜は蕩けた瞳で虚空を見つめながら、まるで夢のような時間をただ味わっていた。

 だが、夢だっていつかは覚めてしまうもの。


「ふぅぅ……」

「あっ……あぁっ……♡」


 士郎のチンポが引き抜かれていくことでぽっかりと空いたオマンコと同じように、心にも虚しさというものが現れてしまう。

 引き抜かれたチンポへと視線を移すと、水風船のように膨らんだ先端が見える。


(もしも、あれが腟内に注がれていたら……♡)


 ゾクゾクッ、と。

 その瞬間を想像しただけで桜の体に例えようのないほどの多幸感が襲いかかってくるのだ。

 士郎の精液の熱をこの邪魔なコンドームのない状態で感じたいと想ってしまい、それによってこのお腹を膨らませてしまいたいと願ってしまう。

 だが。


(でも、それは許されないこと……♡)


 セックスを終えたことで、深いアクメを味わったことで、それを深く意識をしてしまった。

 幸福であればこそ、快感であればこそ、これはもう味わってはいけないのだと意識してしまう。


(だけど、もっと────)


 それでも、止められないものというものがある。


(────もっと、欲しい♡)


 体が、より深く士郎を求めてしまう。

 心も頭も求めてはいけないというものなのに、体が、体だけは桜が本当に求めているものを的確に読み取ってしまってそれを求めてしまっている。

 それはもう止められないのではないかと思ってしまうほどに強烈な、まさしく本能であった。


「ねえ、桜」

「ふぇ……♡」


 そんな色欲に溺れている状態の桜へと、艶やかな色を含んだ言葉で凛が問いかけてくる。

 呆けた頭にはその言葉がスルスルと染み込んでいき、それはまさしく催眠状態のようだった。


「士郎……じゃない、衛宮くんとのセックス、すごく気持ちよかったでしょう? 桜、あんなに乱れていたんだもの。普段のセックスとは違う快感を覚えていたんじゃないの?」

「それ、はぁ……♡」

「このゴム、邪魔よね……? 外して、さっきと同じセックスをしましょう?

 ううん、一度だけじゃない……ずっと、一緒に居ましょう? 私と、士郎と……結婚とか愛人とか、そういう括りじゃなくて、今の場所を捨てて……最初は辛いかもしれないけど、私は桜を絶対に幸せにしてみせるわ」


 それは増上慢と呼ぶにしてもあまりにも傲慢な言葉であった。

 だが、遠坂凛とはそういう女なのである。

 一度思い立ったらもう走りきらないと気が済まない、自分なりのルールを守りつつも自分が許容できる余分なものを抱えて生きることが遠坂凛の在り方なのだ。


「ぅぅ……♡ っぅ……♡」


 その凛の言葉は否定しなければいけないのに、今の桜では否定ができない言葉である。

 欲しい。

 体と体の間に、もはやゴム布一枚すら存在しない、本当のセックスがしたい。

 思い出による美化された想いなどではない、時が経ってもなお愛おしくて幸せにしてくれる相手と結ばれたいと思ってしまう。



「だ、だめっ……だめ、ですっ……♡」



 だが、それでも桜の中にある社会性というものが一瞬だけ勝った。

 いや、勝ってもいなかったのかもしれない。

 いわゆる駆け引きとでも呼ぶべきもので、ここで一度断りつつも先ほどのように半ば無理矢理に、半ば合意的に犯されることで言い訳を用意しようとしているのだ。

 いや、多くの男性ならばその想いを読み取って、あるいは、桜ほどの美女の艶姿を前にすれば我慢など出来るわけがないのだから、桜の言葉は結果的に無視されることになっていたであろう。

 事実、士郎としてもその桜の様子に堪えきれなくなって前のめりになって、それこそ二秒後には桜の豊満な媚体を貪りだすような状態だった。


「そう……なら、仕方ないわね」

「……………………え?」

「ほら、衛宮くん──ううん、士郎も離れなさい」


 だが、その言葉を言葉の通りに捉えてしまう人物が居た。

 遠坂凛である。

 凛は士郎の体をぐっと押し寄せて桜の体から離していく。

 桜はあまりの出来事に、先ほどまで己を支配していた性欲も吹き飛んだかのようなぽかんとした表情を浮かべることしか出来ない。なのに、凛はそれを無視するかのようにどんどんと言葉を続けていく。


「だって、ここまで来て断るぐらいだもの。貴女、もう無理矢理に進めても仕方ないでしょう?

 士郎とのセックスであれだけ喘いでイキまくってるのに、折れないんだもの。私なら、私たちならもう悔しくても性欲を抑えきれなくて足を開いてしまうわ」

「ね、ねえ……さん……?」

「帰っていいわよ、服ならそこに置いてあるから」

「え、あの……」

「私たちはちょっと昂ぶっちゃったから解消していくから……桜、幸せになりなさいよ」


 唖然とした表情で凛を見つめる桜と、あっけらかんとした様子で淡々と語る凛。

 本気の言葉だった。

 桜にはわかる。

 凛はここで否定した桜の意思を認めて引こうとしているのだ。

 一度諦めたように見せかけて桜を焦らそうとしているという目論見すらなく、ここまで拒絶をされたのならば、桜は自分たちとは違うところで生きているのだと諦めてしまったのである。


「あ……うぅ……!」


 あまりの突き放した言葉に桜はただ呻くことしか出来ず、そんな桜をさらに置いてけぼりにするように扉が開いた。


「終わりましたか、リン、シロウ」

「シエロ~♡ 待ちわびましたわっ♡ 旅先だからと一日もセックスが出来ない日が続いたんですもの♡ たっぷりかわいがってくださいまし♡」

「えっ……えぇっ……?」


 その扉からは凛や桜と並べても見劣りしないほど非常に美しい女性が二人、やはり凛や桜と同じようにセクシーな露出度の高い下着を身に着けただけの状態で現れる。

 一人はセイバーことアルトリア・ペンドラゴン。

 その少女らしい小柄で華奢な少女らしい体躯を真っ白な下着で身につけており、その姿は露出の多いセクシーな下着でありながらもどこか上品というべきか、崖際で風に揺られながら凛としながらも可憐に咲く、摘んではいけない一輪の花のようだった。それでも注視すれば、隠しきれていない性的な香りが、未成熟でありながらも確かに性感を開発されたものだけが放つ淫猥な雰囲気を発していることがわかる。

 もう一人はルヴィアことルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。

 桜にも劣らないほどの肉付きの良い豊満でありながらもきゅっと引き締まった体を上品な青い下着で包んでいる。その女性らしい丸みを帯びた体つきとひと目で上等だとわかる高級下着を身に着けた、ゴージャスとさえ言っていいほどの、芸術的ですらある姿をしていた。だが、そんな高貴で神秘さえ含んでいるような姿でありながらも、士郎へと蕩けた瞳を向けながら明らかに普段の声よりも高い、媚びに媚びきった声ですり寄ってくる様は娼婦と罵られてもおかしくはない動きであった。


「ほら、セイバーもルヴィアも。士郎はまだ一度しか出してないから交代でやるわよ」

「わかりました。では、シロウ……まずは、その、私から……♡」

「あっ、わ、私からですよねっ♡ あの子の体をお預けされてイライラしてるでしょうから、一番スタイルが近い私でオチンポ様のイライラを消費したいですものね♡」

「あっ、こらっ! 待ちなさい、ふたりともっ! わ、私だってずっと見てて性欲溜まってるんだからねっ♡」

「あ、あのっ……」


 街で出会えれば一年、いや、人によれば十年も忘れそうにもないほどの美女たちが士郎へと群がっていく。もちろん群がるだけでは終わらない。三人はそれぞれがそれぞれの動きでセックスを行おうとしているではないか。


「んちゅっ……♡ シロウ……♡ もっと、接吻を……♡ ちゅぅ、れろぉぉっ……ちゅぅぅ♡」

「はぁぁんっ♡ シェロぉ……♡ 私の胸をいっぱい揉んでくださいっ♡ ずっとずっと揉んでくれて、サイズが二回りは大きくなったシェロ専用の爆乳で遊んでくださいぃっ……♡」

「はぁぁ……はぁぁぁ……♡ すっごぉ……なに、これ……♡ し、士郎って一度にこんだけ射精するのね……♡ たぷたぷしてるじゃない……♡ コンドーム脱がしたチンポも、すんすん……♡ くっさっ♡ ザーメン臭が染み付いてるじゃないっ♡ ふぅ、んちゅぅぅぅぅ♡ れろれろぉぉ、じゅるるるぅ♡」


 セイバーは士郎の唇へとその可憐な唇を重ねて貪り合う、それは桜が士郎と交わしたディープキスよりも濃厚なキスであった。

 ルヴィアは士郎へと体を寄せてその爆乳をむぎゅぅぅと握りつぶされる、それは桜が士郎の胸板で押しつぶされたものよりもずっと気持ちよさそうな胸への刺激であった。

 凛は士郎のチンポに装着されたコンドームを剥ぎ取ってその先端に溜まった精液の量に感嘆しながらフェラチオを開始する、それは桜と士郎のセックスの証を奪い取るような激しいフェラチオであった。


(あっ……あぁっ……♡)


 士郎と桜との間にあったものが全部奪われていくような光景だった。

 キスはセイバーに塗り替えられ、豊満な胸への刺激はルヴィアがより激しく味わっており、自分では味わえなかった生のチンポは凛が味わっている。

 何よりも、あれほどの美女に求められている士郎がどうしようもないほどに魅力的に見えてくる。

 恋心とは別の部分が、女としての心ではなく牝としての本能が刺激されてしまう。

 羨ましい。

 妬ましい。

 私も、あれが欲しい。

 私も、あれになりたい。

 私も、先輩という雄を飾り立てる牝の一人に、アクセサリーになりたい。


「あ、あの……」

「ふぅぅぅっ♡ シロウ、シロウっ♡ はぁ、好き、ですっ♡ 貴方のことを愛しています♡ この体のほてりを……貴方に鎮められることが何よりも嬉しいっ♡ もっと、もっと私を味わってください♡」

「え、えっと……!」

「シェロったら、やっぱりこのおっぱいが好きですね♡ 小さい胸も好きだと言いますけど、目の前に出されたらこんなに夢中になって……♡ ふふ、私の爆乳でもうこれより小さいサイズでは満足できないようにしてあげますわっ♡」

「そ、その……!」

「んじゅるるぅぅ……ちゅぅっ♡ ルヴィア、あんた喧嘩売ってるの? それじゃあこっちは、あんたの下手くそなじゃ射精もできないぐらい士郎のチンポを躾けてあげるわっ♡」

「なっ!? あ、あなた、誰が下手くそですって!? 違いますよね、シェロ? シェロは私のフェラチオもパイズリも好きですよね? お精子、いっぱい出してくれましたもんね?」


 そう思って桜は声をかけようとするものの、凛と士郎とセイバーとルヴィアの四人は一顧だにしない。

 無視しているのではない。

 凛は士郎のチンポに、セイバーは士郎の唇に、ルヴィアは士郎の手指に。

 四人それぞれが士郎に夢中になっているので桜のことなどどうでもいいと無意識に認識をしてしまって、桜の小さな言葉など聞き取ることが出来ていないのである。


「ぅぅ……ぅぅっ……!」


 そんな阻害された状況に、桜は耐えられなかった。

 下着を抱えていた桜はそれを乱暴に投げ捨てて、士郎へと駆け出した。


「んぅっぅ!? サクラ? な、なにを!?」

「きゃぁっ! 何をするんですの!?」

「ちょ、ちょっと桜!?」

「はぁぁぁぁぁぁ♡♡♡♡ はぁぁぁぁぁぁ♡♡♡♡♡♡」


 体当たりと言ってもいいほどの激しさで士郎に駆け寄ることで、快感に蕩けきった体だった三人の美女たちは吹き飛ばされてしまう。

 当然、士郎とのセックスを待ち望んでいた三人は不満の表情を作るが、それでも桜は気にしない。いや、そもそもその三人を認識していない。先ほどの四人と一緒だ。士郎を求めるあまり、他のことに気をやる余裕がなくなっているのだ。


「先輩っ……先輩っ♡ 抱いてください、お願いしますっ♡ わ、私も……私も、先輩の女の一人にしてください。」


 三人の非難の言葉など一切を無視して熱烈な愛の告白を、いや、それ以下の求愛の媚びを見せる。丸みを帯びた大きなお尻をくねくねと動かし、そのルヴィアにも勝る爆乳をギュッと押し付けて、潤んだ瞳で士郎を見上げながら、自身を抱いてくれとねだるのだ。


「桜、それなら取るべき態度ってものがあるんじゃないの?」

「……姉さん?」

「あなた、士郎の女になるんでしょう? それなら……なんで、他の男のものを身につけてるのかしら?」

「あっ……」


 桜の内から溢れ出る熱情に水を差すように、凛の言葉が桜の耳に入ってきた。

 そんな凛の視線は桜の左手の薬指へと向けられており、その視線で桜も意味を察する。

 左手の薬指に嵌められた、華美ではなくとも美しい指輪。

 その淫靡な体つきとは裏腹に楚々とした美貌の桜にはよく似合った婚約指輪であった。


「……っ♡」


 単なる指輪に過ぎないのに桜の美貌をさらに輝かせるアクセサリーとしても十二分に機能しているそれは、婚約者であり数日後に夫となる実典が熟考に重ねて選んだものであることがよく分かる指輪だ。

 それ自体が実典の桜への愛の、桜のことをずっと見ていたことの証明である。

 桜はその指輪に指をかけて、少しだけ躊躇う。


「……桜、この中に入れるの」

「な、なぁっ……♡♡♡♡♡」

「リ、リン……さすがに、それは」

「悪趣味なことを考えますね、貴女も」


 凛が差し出したあるもの、それを見ての反応はそれぞれだった。

 桜は息をすることも忘れるほどの驚きを覚え。

 セイバーは憐れむように顔をしかめ。

 ルヴィアは凛の提案の悪どさに呆れたように息を吐いた。

 そして。


「……ごくりっ」

「っぅっぅっっぅぅっぅ♡♡♡♡♡♡♡」


 士郎は明らかな興奮の色を含んだ様子で、大きく息を呑んだ。

 かつて愛して、やはり想いを捨てきれずに心を秘めていたまさにその相手である士郎の様子に、桜の最後に残っていたみすぼらしい理性というものは消え去ってしまった。

 桜は

 凛がその手に摘んでいるモノ────コンドームを受け取る。

 そして、震える指先でゆっくりと婚約指輪を抜き取っていく。


「せ、先輩……♡」


 桜は指先と同じような震える声で士郎を呼びながらゆっくりと動いた。


「私を……先輩の女に、してください……♡」



 その言葉とともに、桜は婚約指輪を精液がたっぷり詰まったコンドームの中へとぽちゃりと入れた。



「うわっ……可哀想ぉ……♡」



 それを見た凛は言葉だけなら同情のように思えるが実際は嘲笑を大きく含んだものを漏らす。

 美綴実典が愛する間桐桜のために、永遠の愛を誓い合う中になりたいと願って送った婚約指輪が、桜のオマンコでシゴいて射精されたザーメンの中へと沈み込んでいく。

 ゾクゾクと、桜の体と士郎の体に悪辣な快感が走る。いや、二人だけではない。士郎に属する女である凛も、セイバーも、ルヴィアも、士郎という雄がより魅力的な雄になったように思えたどうしようもない興奮を覚えてしまった。


「私、先輩の女になりたいです……♡ ゆ、指輪もぉ……彼のよりも、先輩のものをつけたいんですぅ……♡ だ、だから、お願いします……♡ 私と……生ハメセックス、してくださいっ♡♡♡♡」


 さらにザーメンがたっぷりと注がれた上で婚約指輪が沈み込んでいるコンドームを自身の左手の薬指へと結びつけていく。

 古代ギリシャなどでは左手の薬指には心臓に繋がる太い血管があると言われており、婚約指輪はその左手の薬指にパートナーから送られた指輪をすること自体が大きな意味を持つというものだ。

 人にとっても最も重要な臓器の一つである心臓、それを他人から送られた指輪で締め付けることで相手の番であることを示す。この場合は、桜はコンドーム指輪を左手の薬指を身につけることで士郎のモノになったことを示しているのだ。


「桜ぁっ!」

「先輩っ♡♡♡♡」


 桜ほどの美女が見せるそんな様子に我慢など出来るはずもなく士郎は桜へと襲いかかり、桜もまたそんな士郎を当たり前のように受け入れる。

 先ほどと同じような正常位の体位だが、先ほどのセックスとはまるで違うものだった。

 コンドームによって隔たれた避妊セックスではない、本物の生ハメセックス。数日後には結婚をして別の男のモノになる女を自分のチンポで貫いて一つになっている興奮はとてつもないものである。

 そんなシチュエーションだけでも卑劣な快感を抱いてしまいそうなのに、それでいて桜のオマンコは士郎であっても早漏男のように即イキしてしまいそうなほどの名器なのだ。


「桜っ、桜ぁ!」

「はぁぁっ♡ あぁぁっ、ふぅぅぅ、くぅぅぅんっ♡ あっ、そ、そこっ♡ いちばん、おくっ♡ そこがいいですっ♡ もっと、もっといっぱい突いてくださいっ♡ 私の体を先輩のオチンポで壊すぐらい、激しくしてくださいっ♡」


 激しいセックスというものは桜にとってトラウマと直結するようなものである。

 実典とのセックスだって穏やかなものだった、それは実典に意識してそれを努めさせていたという一面がある。少しでも腰の振りが激しくなると桜の顔が歪み、実典はまるで責められているような気持ちになって穏やかで緩やかなスローセックスのものへと変わっていく。それが不感症に近しい桜にとって許容できる範囲のものだったのだ。

 だが、そんなトラウマ物のセックスだとしても、相手が愛する相手ならばそんなものは関係ないと言わんばかりに桜は士郎の激しいセックスを受け入れていく。

 ぎゅぅっ、と。

 むっちりとした肉付きの良い腕と脚を士郎の背中へと回していっていくのだ。


「はぁっ♡ おっきいっ♡ おおきいですっ♡ こんなの、はじめてっ♡ あの人よりも、ずっと大きいっ♡ ずっと気持ちいいっ♡ 先輩、好きですっ♡ 大好きですぅっ♡」

「そんなにその彼とのセックスは気持ちよくなかったの、桜?」


 士郎とのセックスが如何に気持ちいいのかということを伝えながら士郎を受け入れる桜に対して、凛はやはり桜へと顔を近づけてそんなことを尋ねる。

 凛の悪意に満ちた言葉を受けて、桜もまた笑った。

 桜に浮かんでいるその笑いは嘲りを大いに含んでいる。


「はいっ♡ そう、そうですっ♡ ぜ、全っ然♡ 気持ちよくなかったです♡ わ、私、自分のことをぉ……♡ 不感症だと思ってたからっ♡ 私の上で喘ぐ彼を見て、早く終わらないかなってずっと思ってました♡ セックスも、仕方ないって♡ 恋人なんだから、婚約者なんだから……セックスするのが普通なんだって、ずっと我慢してたんですぅ♡ 一度も、気持ちよくなんてなりませんでした♡

 でも、でもぉぉぉぉっ♡」


 凛の言葉を受けて桜は実典を貶めるような言葉を口にしていく桜は、そこで士郎をじっと見つめる。

 その熱っぽい瞳と他人を貶す最低の言葉を受けた士郎は腰が震えるほどの快感を覚えた。


「でもっ♡ 先輩とのセックスはぁ、すごく気持ちいいですっ♡ 頭が、蕩けちゃいそう♡ ずっとしていたい、ずっといっしょになりたい♡ 先輩のオチンポがすごく気持ちいいんです♡ もっとしてくださいっ♡ 私を愛してくださいっ♡ 愛してるから、愛してる人に愛されるから気持ちいいんです♡ 好きっ♡ 先輩とのセックスだけ……先輩だけが、気持ちいいんですぅっ♡♡♡」


 さらに、そこから続く言葉は他者と比較して士郎を持ち上げるような、媚びに媚びきった言葉。

 ゲスな男ならば喜んで受け入れ、高潔な男ならばそれを否定して女を戒めるだろう。

 だが、士郎は聖人であろうと思っても聖人ではない。

 桜のような淑やかな美貌と蠱惑的な肉体を持った牝に媚びられて、

 先ほどのセックスよりもずっとずっと、早漏になってしまったかのようなほどに射精を堪えることが出来ない。


「はぁぁっ! 桜、出るっ……! 出るぞっ! 受け止めてくれ、桜っ!」

「はいっ♡ 来てくださいっ♡ 私の腟内に、先輩の精液出してくださいっ♡ 先輩の赤ちゃんを、仕込んでくださいぃィッ♡」

「ぉぉぉ、おぉぉぉぉぉっぉっぉっ!!!」


 どびゅうるるるぅぅぅぅ! びゅるるっ! びゅるるるっ! どびゅうううううぅぅぅぅぅぅぅ!


「んひぃ、おぉぉ、おほぉぉぉぉぉおぉっぅぅぉぉぉっぅっっぉぉ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


 桜は士郎の精液を受けて、脳みそが焼け切るような激しい快感を覚えた。

 先ほどのコンドーム越しのセックスとは訳が違う。

 どくどくと流れ出るその熱さと感触に、多幸感に襲われる。

 子宮の中にまで届いたその精液は桜の中の卵子を捕まえようと活発化し、受精して新たな命を作らんとしていた。その事実を身体の本能が感じ取り、その本能が伝えてくる感覚に桜の心は震える。


「ふうぅぅぅ……!」

「あっ、あぁぁ……♡」


 引き抜かれるチンポを見ると、自身のどろどろに分泌されていた愛液が纏わりついていた。その愛液はまるで桜自身のようにチンポを引き抜かれないでくれと言わんばかりに粘ついていて、チンポとマンコの間に白濁の橋をかけているではないか。


「先、輩……♡ 私を……さらって、ください……♡」


 もはや、他の何も要らない。

 そう思いながら、桜は圧倒的な幸福を覚えながら快感の海へと沈んでいき、その意識を手放したのであった。



 ■




 それから数ヶ月後、凛たちの拠点は日本の冬木市に移されていた。

 と言っても、一時的な移動である。

 長くても数年ほどしか滞在しないであろうほどの時間だ。

 結婚式と合わせて懐かしい顔を見せた士郎と凛だが、みんながみんなに朗らかな顔で受け入れたわけではなかった。

 藤村大河は悦びながらも桜の様子に何かを裏切られたような顔をして。

 美綴綾子は明確に傷ついたような顔をして。

 間桐慎二は妬むような顔をして。

 間桐桜を────美綴桜を見つめた。

 だが、三人は何も言わなかった。

 仕方の無いような顔をして、それでも何も言わずに、ただ距離を取った。

 士郎と凛が訪れた時期から変わってしまった桜の様子に、桜が別の場所に行ってしまったことを悟ったかのように。


「こ、こう……でしょうか、ルヴィアさん?」

「ええ、そうですよ……サクラ、とても上手です。もっとギュッと押し付けてください。シェロのオチンポは私達のような柔らかい牝おっぱいで潰れるような粗末で貧弱なものじゃありませんから♡」


 そして今、あの桜の運命を変えてしまった遠坂の屋敷の一室で、五人は淫靡な宴を毎日のように開いていた。

 やはりあの機能性の低いセクシーなだけの下着を身に着けて、士郎の逞しい体へと擦り寄っている。

 ベッドの側で仁王立ちをしている士郎の股間には二人の爆乳美女が纏わりついている。

 一人は桜で、もう一人はルヴィアだ。

 お互いに100センチを超える爆乳を重ねてWパイズリを行っており、その規格外の爆乳二つでも士郎の逞しい男根を隠しきれていない。

 真剣な瞳でチンポを見つめる桜は新婚の妻だというのに夫ではない相手に奉仕をする淫売女であることすらなんの疑問も思っていない様子で。

 うっとりとチンポを見つめるルヴィアは女貴族としての気高さが消えて、自身が隷属する男の逞しさを爆乳で感じ取れることが嬉しいという様子で。

 士郎の築いているハーレムの一員であるということに悦びを感じているようだった。

 だが、それは桜とルヴィアだけではない。


「ふふ、桜もすっかりパイズリのテクが磨かれてきたじゃない。ルヴィアとのダブルパイズリも上手になったじゃない。私もキスのテクも教え込んでるし……士郎の心を奪われるのも近いかもね♡」

「んじゅるるぅぅっ♡ ちゅぅぅ……♡ れろぉっぉっ♡ ちゅぅ、ちゅぱっ、むちゅぅぅっ♡」


 その唇に貪りついている凛は爆乳美女のWパイズリを受ける士郎を嬉しそうに見つめており、セイバーにいたってはその騎士王と崇められた過去などなくなってしまかったのように士郎のアナルを激しく舐めていた。

 士郎に対する王様プレイ。

 だが、これは珍しいことなどではなかった。

 士郎という雄をひたすらに持ち上げることは、四人の美女にとってもとても気持ちいいことなのだ。

 より強い雄にひざまずくマゾヒスティックな快楽というものは、確かに存在するのである。


「みんなでお揃いの指輪をつけて……そのときには、ロンドンに戻りましょう?」


 すぅっと、凛は自分の左手の薬指をなぞる。

 そこには士郎のパートナーの証明である指輪がつけられているが、それは新たに更新される予定だった。

 桜にも似合うような、四人の美女を模した新しい『ハーレム・リング』。

 それを用意することで五人の絆というものはさらに強まっていく。


「その時は……桜も一緒にね?」

「はいっ♡ 結婚……することになっちゃいましたけど、でも私の心は先輩の……士郎さんのものですから♡」


 ある種の準備というものを整えていた。

 すでに進んでいた結婚式など無視をして桜をロンドンに誘拐するように連れ去っていくことも出来たが、そこは共通の知人である藤村大河や美綴綾子のことを思って結婚式自体は行われて、籍を入れることとなった。

 だが、結婚生活は新婚とは思えないほどに冷え切っている、桜がもはや実典に対して友愛すらも持てなくなってしまっているためだ。


「……先輩、愛しています♡」


 時が経てばその指輪さえも捨てて、桜は現実という全てを捨てて恋を追っていくのである。

 そこに、善悪はない。

 善悪で語ろうと思えば、社会的な価値観で言えば実典を騙した桜が悪いのならば、彼ら五人の価値観で言えば桜の心と体を満たすことが出来なかった実典が悪いとなるのだ。

 なにを良しとするのか、価値観が違うだけだ。


 ────こうして、桜は士郎と結ばれた。それだけが事実である。



Comments

No comments found for this post.