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※女性責めの作品です。苦手な方はご注意ください。

※男性の苦痛描写があります。苦手な方はご注意ください。




「――――あら、ようやくお目覚めかしら」


 どこか気怠さを感じさせる女の声が、ぼんやりとした意識を繋ぐように響いた。

 おそらくは黒い布で封じられている視界。椅子に縛り付けられているのか、脚も腕もほとんど動かすことはできず、ここが何処なのかも判然としない。


「ここ、は…………?」


「何処だっていいでしょう?それに、そんな事を気にしている場合かしら」


 女はわざとらしく嘲るように言い、高いヒールの音を俺の方に近づけてくる。

 そんな超然とした態度に苛立ちを覚えたが、しかしそれは確かにそうだ。重要なのは”ここは何処なのか”などという初歩的な情報ではない。


「お前は、誰だ……!俺がスネージナヤからの特使であると知っての――――」


「勿論知っているわ。スネージナヤの特使――――”ファデュイ”からの工作員さん。

 実際、貴方は前の人達よりは上手くやっていたけれど、西風騎士団だけがモンドの治安組織というわけではない事には気づけなかったみたいね」


 目の前で止まる足音。顎を滑らかな指で持ち上げられる感覚。

 覗き込まれている感覚が闇の向こうから押し寄せて、俺は本能的に身を捩ろうとして、けれど動かせない体を自覚させられる。


 女の声は美しいが、同時にひどく気怠げだ。

 少なくともこのような尋問に熱心に及ぶようなサディスティックさも生真面目さも感じ取れない声音は、現状とは隔絶しているようにも感じられる。


「お、俺を…………どうする、つもりだ…………?」


「貴方が他国の民たち――――何の罪もない人たちにした事と同じ事をするだけよ。

 情報を引き出し、外交に使えるカードを秘密裏に増やす。高潔なジン団長は許さない方法でしょうけど、私からすれば知った事ではないわ」


 どこまでも冷酷に響く、気怠げながら氷のようでもある女の美しい声音。

 知らず知らずのうちに意識は完全に覚醒し、俺は今の自分がどんな姿を晒されているのかを、身体の感覚だけで完全に理解してしまう。


 両手首は一纏めに椅子の背もたれに結び付けられ、足首はそれぞれ椅子の脚に結ばれていて、下手に身を暴れさせては無様に床に転がるだけ。

 そして何より、下半身に纏っている筈の布地の感覚がない。上半身のベストやシャツはそのままに、おそらくはズボンと下着だけを気絶している間に脱がされている。


「お、前……っ!こんな事をして、本国が黙っているとでも」


「当然思っていないわ。けれど、もう少し思考を進めればわからない?」


 三流の悪役めいた俺の言葉を、女の声は冷淡に切り捨てる。

 『思考を進めれば』――――そんな言葉に促されるように、俺はただ焦りと恐怖を振り切るように思考を進めて――――


「――――あ、あぁぁ、ぁ…………!」


「そういう事よ。貴方たちがモンドや璃月でやっていたのと同じ事。

 スネージナヤ本国がそれを許さないというのなら、起こった事をそもそも知らせなければいい。それだけの話でしょう?」


 義憤も欲も感じさせない声で、女はただ当然のようにそう告げた。

 俺がモンドや璃月、あるいはスメールなんかで情報を得るために行った拷問と、その末のスネージナヤへの拉致。

 その行為を見て来たかのように、けれどあくまでも平板な調子で女は続ける。


「心配しなくとも、情報を引き出したら解放はしてあげる。

 二度とスネージナヤには戻れないくらいに、全ての情報を話してくれればだけど」


 顎に当てられた指が離れ、ヒールの音が幾度か響く。

 ファデュイの者たちが拷問の初歩として教わる”視覚情報の封鎖”。たかが目隠しがこれほどまでに恐ろしい事だとは、俺は全く分かっていなかった。


「残業は嫌いだから、早めに全て吐いてもらえると助かるわ。

 ……まぁ、拷問されるのは初めてのようだから、それも杞憂でしょうけれど」


 背後から抱きすくめられるように、耳元から女の低い囁き声が響く。

 首の後ろに押し当てられる温かく柔らかな感触――――こんな極限状況下でもそれは明瞭に意識させられてしまい、俺はそんな屈辱と羞恥に歯噛みをした。


 視界を封じられていても分かる、自分のペニスが屹立していく感覚。

 多くの国で多くの女を拷問し、処女を奪い尊厳を辱しめ、数多の女を生き地獄に放り込んでやったそれも、自分の意思とは無関係な場にあってはあまりに無体な反応でしかない。


「……そちらの方は協力的なようで何よりね。

 まぁ、”危機感がない”と言い換えられるのかもしれないけれど」


 背後にある女の身体が、一層強く俺の首元に密着する。

 薄い布地越しに感じられる柔らかな乳房。視覚情報が無くとも分かるその重量感は、視覚が封じられているからこそ想像を掻き立てて仕方がない。


 どくり、と痛い程に大きく心臓が跳ねる感覚があった。

 耳元を掠める気怠げな吐息。頬を撫でる艶やかな髪の感覚。少し濃く感じられる煙草の臭いすらもが、危機感と同時に生理的な興奮を煽ってしまう。


「…………本当、危機感がないと言った方が正しかったかしら」


 数多の女を泣き叫ばせた、子供の腕ほどはある太く長い巨根。

 あれだけ誇示してきたはずのそれを、呆れ交じりの溜息と共にそう切り捨てられると、俺の中に生まれるのは”誇示”とは真逆の羞恥だけだ。


「だ、黙れ……っ!俺は絶対、女帝陛下を裏切るような真似は」


「そんな風に忠義を口にしていた者の中で、一体何人がそれに殉じられたのかしらね。

 悪いけど、面倒ごとは嫌いなの。話したくなったら勝手に話しなさい。全部搾り取ったと判断したら解放してあげるから」


 女は冷酷に俺の言葉を切り捨てて、心底から面倒そうにため息を吐いた。

 ファデュイが行う拷問――――実益にガス抜きを兼ねた嗜虐の宴とは一線を画す、あくまでも事務的で淡々とした態度は、どうしようもない恐怖を煽り立てて仕方がない。


 歯の根が合わずにガチガチと音が鳴る。恐怖に息が上手く吸えない。

 なのにどうしようもなく意識させられるそそり立ったペニスの熱が、それこそ俺自身を嘲笑っているような錯覚すら感じさせられる。


 首の後ろに押し当てられる柔らかな感触。それが何より恐ろしいなどと。

 ひたひたと忍び寄るような恐怖――――ゆっくりと茨に巻かれて行くような恐怖に駆られながら、俺はとうとう地獄の片隅を味わう事となった。



「っ、く、ぁぐ…………っ!」


 女の爪――――鋭く尖る形に磨き抜かれた爪が、傷つけるか傷つけないかの瀬戸際のような強さで、ペニスの裏筋を刺激してくる。


 事務的な態度とは裏腹な、明らかに慣れている責め方。

 苦痛が快楽と混ぜ合わされる感覚――――それを与える事には慣れていても、与えられるのは今まで経験したことがない。


『おいおい、痛いんじゃなかったのか?イイ声が出てんじゃねぇか!

 さっきまで処女だったってのに、本当は淫乱だったのか?あぁ?おい!』


 璃月に潜入していた時、月海亭の職員を捕らえて拷問に掛けた時の言葉が、頭の中で俺自身を嘲笑するように反響する。

 何度も愛しい人の名前を呼び、謝罪の言葉を口にしながら泣きじゃくる女を、俺は何度も何度も膣奥を穿ってその奥に精液を注ぎ込んで嘲笑った。


 仲間たちと共に女の反応を嘲り、揶揄し、その有様を記録に収めた。

 璃月らしい美しい黒髪を精液で穢し、「もう全て話した」と言ってからも無意味に凌辱を続けて、その精神まで立て直せないほどにぶち壊しにした。


「苦しそうな声の割に、ペニスの方は気持ちよさそうね」


「は、ぁ、黙、れぇ……っ!!ぐ、く、ふぐ、ぐぅうぅ…………っ!!」


 それと同じだけの辱めを、今の俺はどうしようもなく甘受せざるを得ない。


 痛みを感じさせる筈の――――実際、身が跳ねるほどの鋭い苦痛を与えてくる、裏筋部分を引っ掻くように何度も何度も擦り付ける鋭い爪。

 だがそれは俺の内側でどういうわけか快楽に変換され、より一層強い刺激を求めるようにペニスをひくひくと跳ねさせてしまう。


 布で阻まれた真っ暗の視界。何も見えない筈の純黒。

 しかしそこに、白い光がバチバチと跳ねるようだ。快楽によって目の奥に火花が散っているようで、俺はもう自分の感覚すら信じられない。


 全身が熱い。痛い筈なのにどうしようもなくペニスが勃起してしまう。

 裏筋を刃のような爪で何度も何度も擦られて、充血しきったペニスは痛い程に熱を持っていて、その事実が俺の尊厳を更に打ち捨てていく。


「っ、ぐ、ぁ……!拷問、なら……っ!

 何を、話せばいいか、最初に、ぁ、ぐ、っっ――――~~~~!!!」


「だから最初に言ったでしょう?『話したくなったら勝手に話せ』って。

 全部搾り取ったと判断したら解放してあげる。そもそも情報が有用かどうかなんて、私のような汚れ仕事を生業とする女には判断できないもの」


 裏筋を掻き嬲りつつ、熱を持つほどそそり立ったペニスに女は指を絡め、面倒そうな言葉と共に張り出したカリ首に爪先を僅かに押し当ててきた。


「ぃ、ぎ…………ッッ!!!」


 痛みと誤認するほどの快楽なのか、快楽と誤認するほどの痛みなのか。

 自分の感覚すら信じられずに、俺は無様に身体を跳ねさせて拘束を揺さぶろうとして、けれど虚しく鎖の音を僅かに響かせるだけ。


「っ゛!!ぁ、が、は、ぁ、う゛ぐ…………っ!!」


 射精はしていない。というより射精の寸前で意図的に責めを緩められている。

 いつのまにか尿道口から染み出してきた先走りは、ゆっくりと亀頭から陰茎を伝い落ちていき、それすらもが潤滑液となって責めの苛烈さを際立てる。


「は、ぁ、はぁ……っ!っ、く……!ぎっ、あ゛ッッ!!!」


 真っ暗な視界に散る火花。無様な声。ペニスを刺激する女の爪の感覚。

 どれだけ無様に喚いても、ビクビクと身体を跳ねさせても、鎖の音を響かせようとも、女は最低限以外に何も言うことはない。


 ただ淡々と、女は俺の身体を異様な熱に浸していくだけ。

 愉悦などなく、むしろ時折呆れたようなため息を吐きながら、それでも女は慣れた手つきで俺の尊厳を辱しめる行為を続けるばかり。


「っっっ!!!ぎ、ぁぐっ!あ゛ぁあぁぁっ!!」


 カリ首に強く押し込まれる指。激痛と快楽が喉から無様な声を湧きださせる。

 高められる射精感にペニスが疼き、けれど女はそれを見越しているかのように、そこで一度ペニスを嬲る指の動きを止めてしまう。


 熱い筈なのに身体が震える。先走りが迸るように尿道から湧き出す。

 嘲る言葉もなければ、拷問を愉楽として楽しむ意図もない。ただ事務的に職務として、俺の身体は女の指と爪によって好き勝手に嬲り尽くされてしまう。


「――――っ゛っ゛!!!お゛、ぁ゛、がぁうっ!!あ、あぁぁあぁっ!あぁ――――ッッ!」


 そしてまた始まる、痛みや苦痛と隣り合わせの快楽拷問。

 裏筋を甚振られ、カリ首を玩具のように弄ばれ、耳元から時折艶めかしくも面倒そうなため息を吐かれて、身体と心の両面を快楽に取り込まれていく。


 女は何も言わない。薄く煙草の臭いが残るため息を吐くだけ。

 問いもせず、嘲りもせず、女はただ俺の身体を甚振り続ける。裏筋を嬲りカリ首を弾き、そのままゆっくりと屹立しきった陰茎を撫で上げてくる。


「は、はぁ……っ!ぁ、ぐ、ひぎ……っ!が、ぁ、あぁぁ……っ!!」


 脳が煮えるように熱い。快楽の臨界がどう考えても近い。

 屹立しすぎたペニスが痛い。今まで生きてきた中で最も硬く太くそそり立ったペニスを、女はそれこそ玩具にでもするようにじっくりと弄ぶ。


 射精感が高まる。今にも溢れ出しそうなほどに精液が尿道をせり上がってくる。

 けれどそれが噴き出す寸前で、女は指の動きを止めてしまう。跳ねる身体と射精寸前の性感だけを残して、俺はまた解放の寸前から地獄の責めへ引き戻されてしまう。


「反応が分かりやす過ぎるわ。忠義を口にしていた割に情けない。

 ファデュイでは、捕らえられた時にどうすべきかは教わってこなかったのかしら」


 張り詰めた亀頭を指で弾かれながら、俺は女の嘲りを受けるしかない。

 跳ねる身体が煮えるように熱い。いつのまにか垂れ落ちていた鼻水が唇を滴り落ち、その感覚すらもが無様に堕ちた自分自身の惨状を自覚させる。


 『捕らえられる前に自決しろ』という有事に際しての教え。

 しかしそれは”すでに捕らえられている”という現状では何一つとして意味がなく、そしてこの状況にあってなお、俺はみっともなく『生きたい』と思ってしまっていた。


 意識がぼんやりと崩れ落ちていく。思考がどんどん朧げになっていく中で必死に考える。

 解放されるための方法。こんな無体極まる拷問から、一刻も早く解放される方法を、考えて考えて考えて考えて――――――。


「は、はぁ……っ!っ、ぅ、ぁ、わ、わかっ――――あ゛ッッ!!」


「……無駄口だったわね。続けましょうか。

 さっきも言ったけれど、話したくなったら勝手に情報を吐いてちょうだい」


 けれど、浮かんだ思考を打ち崩すように、女は責めを再開してしまう。

 裏筋がヒリヒリと痛む。カリ首が性感によって耐えがたい掻痒感を叫び、同時に尿道を駆けあがってくる精液の感覚が、ひどく鮮烈に脳に刻み込まれていく。


「だ、ぁ゛っ!がらっ!ぁ、ぐっ!は、はぐっ!!

 ぎ、ぃ、や、ぁ、じょう、ほ、吐ぎ、まずっっ!!ぁ、だ、だが、らぁぁっ!!」


 濁った声と跳ねる声音で、俺は必死になって女に向けて言った。

 情報の真偽は重要じゃないと女は言った。ならば出まかせでも何でもいい。

 ただ有用な情報だと思わせられることを言えれば、これ以上こんな責めには晒されずに済むはずだと、俺は溶けていく意識の中でそう結論付けた。


「え、ぁ、ふ、ぐ、ぐぅうぅ゛っっ!!

 や、やめ……っ!あ゛っっ!ぐ、ふ、うぅうぅ~~~~っっ!!!」


 だがそれでも、女は俺の言葉に耳を貸そうともしない。

 淡々と事務的に、職務として俺のペニスを嬲り甚振り辱しめるだけ。


 だが、それも当たり前の事だ。俺だってそうしてきたのだから。

 『情報を吐く』と言って泣きながら許しを乞うてきた者たちを、俺たちファデュイは『信用できない』と嘲笑って、そのまま拷問に掛け続けてきたのだから。


「はぁ、は……っ!あ゛っっ!ぐ、ぃ、あぁぁっ!

 やめ、ろ……っ!やぇ、て、くださ――――ぁぁぁ、も、射精を、させて……!!」


 苦痛混じりの性感と、絶頂を間近に据えられた状態での寸止め。

 どこまでも冷酷に、それこそシステマティックに行われる責めは、俺がどれだけ許しを乞おうとも終わらずに、ただ淡々と俺の心身を絡め取っていく。


 茨に絡めとられるような、取り返しのつかない闇に引きずり込まれるような。

 無様に泣き喚く自分の声――――『射精させてくれ』と懇願する自分自身の声が。闇の中でどこか遠くから響いてきているような感覚に支配される。


「ぁ、あ、ぁ、あぁぁっっ!話、すッッ!!話じまずっ!!

 な、ぁ゛ん、でもお、ぉおぉぁあぁ゛ぁああぁっっっぐ―――――ッッ!ぁ、や、やめ、ぁ、射精、射精させ――――ッッ!!く、ぁああ゛ァァアアっっ!!!」


 どこか夢現な方向へ、俺の意識は絡めとられるように連れ去られていく。

 無様な声で紡がれる懇願の言葉。自分のものとは思えない――――あるいは思いたくない音で埋め尽くされる聴覚。

 そんな喧しい声の中に、ただ一言『情けない』という女の声が割り込んだ気がした。


 けれど、そんな事に意識を向け続けるだけの余裕など俺にはない。

 どれだけ懇願しても、どれだけ愛玩しても、女は俺を決して射精させることはなく、俺は先走りだけを尿道から迸らせたまま、闇の中で藻掻くように乞い続けるだけだった。



「う゛、あ、ぁ、あぁぁぁ……っ!

 あぁぁ、ひ、いぎ、ぅうぅ、ぅ゛ぐ…………っ!」


 もう何時間、気が狂いそうになる快楽地獄を味わわされているのかもわからない。

 無明の暗闇の中で、快楽と自分の無様な声だけを受けていると、俺の中からは段々と現実感や理性と呼べるものが削ぎ落されていく。


 既に女の指と爪は、俺のカリ首も裏筋も狙ってなどいない。

 爪で苦痛混じりに嬲られたそれらの場所は、いまもまだヒリヒリとした痛みを発し、耐えがたい掻痒感で俺の意識を苛む。

 けれど今与えられている責めは、そんな感覚を意識から追い出すほど痛烈だった。


「は、ぁ、はな、はな、したっ!も、もぉ、全部、話したぁあ゛ァアァァっ!!」


 恥も外聞もなく叫び、俺は汗まみれの身体を拘束の中で揺さぶる。

 未だに射精は一度もさせてもらえていない。それどころか現状の責めの中では、俺は自分から射精感に耐えることを強要されているようなものだ。


「ぁ、あ、あぁぁ…………っ!!っ、ひ、ぐ、がぁ……っ!」


 女の爪先の僅かな蠢きが、危機感と共に無上の快楽を俺に刻み込む。

 鋭く磨き抜かれた女の爪。その先端が嬲るように弄んでいるのは、今にも射精しそうなほどに怒張した俺のペニスの、真の意味での先端部だ。


「何度も同じことを言わせないでほしいのだけど。

 私は最初に、『全部搾り取ったと判断したら解放してあげる』と言ったはずよ。貴方が全て吐いたと判断するまで、面倒だけど解放は出来ないの」


 亀頭の更に先端部――――膨れ上がった亀頭の頂点に存在する小さな孔。

 排尿や射精を行うための孔であり、現状は涙や涎のように先走りを垂れ流している尿道口に、女は爪の先を押し当ててゆっくりと嬲っている。


 性感帯ではない筈の小さな隙間に爪の先を滑り込まされ、その際の部分を鋭く尖った爪の先で嬲られると、ただそれだけで異様な性感が心身を蕩かしていく。

 “見えない”から理解できない。ただ理解しがたい感覚に支配されて、俺は堪りかねて数時間の間に全ての情報を吐いてしまった。


「も、もう、話し、たっっ!!ぜん、ぶ、ぜんぶ、話したんだってばぁあぁっ!!」


 本当に全部話した。そもそも先遣隊に与えられる機密情報は多くない。

 目的、人員規模、これまでの悪行、資金の調達ルート、スネージナヤからモンドに侵入するために使用するルートも、包み隠さずすべて暴露したのに。


 けれど拷問は終わらない。尿道への責めは一定のまま緩まらない。

 いっそのこと苦痛で壊してくれたなら楽になれるかもしれないのに、それでも女はこの責め方に慣れているのか、あくまでも同じ場所を掻き回すように嬲り続ける。


「ぉ゛っ!あ、あ、あぁぁやめ……っ!ぁ、そこ、も゛ッッ!あ゛!やめ゛ッッ!!」


 目の奥で火花が散る。目隠しの奥で白目を剥いているのが自分で分かる。

 無様に身を揺さぶろうとしても、両手両足を椅子に縛り付ける拘束はあまりにも強固で、結局俺の身体は僅かに揺れることしかできない。


 ペニスが先端から蕩かされている――――あるいは溶けてしまっているかのようだ。

 熱を持ちすぎて感覚がマヒしているのか、先走りに覆われているからなのかそれとも失禁しているからなのか。

 人体として敏感であるべき亀頭の感覚の全てが、小さな尿道に集中してしまっているようで、俺は無様に濁った悲鳴を上げて泣きじゃくる。


「――――~~~~ッッ!!!は、ァ、かは……っっ!!!

 ぐ、ぅ、うぅぅ~~~~っっ!!も、やめ、やめ゛で、くだ、ざい……っ!!」


 耐えきれずに泣きながら懇願すれば、記憶の中の自分がその有様を嘲笑う。

 女は何も言わず、ただ呆れのような溜息を俺の耳元に響かせて、その奇妙なまでの艶めかしさで無情にも興奮を高めてくるばかり。


 俺たちも同じことをしていた。同じだけの悪辣を行っていた。

 許してと乞う女を嘲笑いながら犯し続け、もうイキたくないと喚く女を縛り付けて、膣内を掻き回して何度も何度も絶頂させた。


 因果応報――――そんな璃月の故事を、俺はもう嘲笑えない。

 だって、これが応報でないなら何だというんだ。ファデュイの一員として散々に外道を働いてきたからこその苦悶――――そう思わねばいっそ正気すら保てそうにない。


「っ、ぁ、ひ、ぎぃっ!!あがっ!あ゛っ!

 お、お、お、お゛ぉォオオォご…………ッッ!!!」


 尿道の際の部分――――先走りでふやけたようなその場所を鋭い爪先が周遊する。

 痛い筈なのに身体が跳ねる。苦しい筈なのに気持ちいい。自分の意識と正気がドロドロに溶けていく感覚があって、最早俺は射精を求めるだけの精液袋に成り果てた。


「もうそろそろ、心身共に限界そうね。

 ……面倒だけれど、一度射精させて仕切り直しましょうか」


 女の気怠げな声が響く。

 けれどその意味内容はもう俺には理解できない。


 ただ一つだけ理解できたのは、女の指が尿道から離れた事。

 そしてそんな女の手が、扱き上げるように俺のペニスを上下に擦り付けだした事だけ。


「うぁっ!ぁ、はぁっ!んぁうぅうぅっ!あぁぁぁそれ、それ、イイっ!!

 あ、あ、あ、あぁぁ出る、で、ぁぁぁ出るっ!!ぁ、あぁぁあぁぁひぃぃぎぅううぅっ!!!」


 無様を極めた声。俺が今まで嘲り笑ってきた女たちよりも余程無様で醜い声。

 けれどそんな事はもうどうでもいい。射精させてもらえるなら――――身体と心の限界を悟ってしまえば、もう理屈や矜持なんかはどうでも良い些事に過ぎなかった。


「お、ぉ、お、ぉ、おぉぉおおぉぉっっ!!!!」


 惨めな豚のような声を上げて、俺は与えられる快楽に正気を売り渡す。

 何時間もひたすらに焦らされて、苦痛すら塗りつぶすまでに至った快楽が炸裂する。

 尿道の内側が熱を持つ。脳を煮えさせるような熱すらもが心地いい。


 何もかもが気持ちいい。快楽が堰を切って溢れ出そうとしている。

 過去も悪意もプライドも見栄も、何もかもを捨て去ることになることは分かっているのに、頭の中が射精の事だけで埋め尽くされていく。


「あ、ぉ、ぁがっ!ふ、ぁ、ぇ、い、あ、あああ――――――――」


 そしてそのまま、女は容赦なく俺の全てを破壊する。

 上下に扱き上げられるペニス。上から下へ、下から上へと滑らかな指がペニスを刺激して、そのままカリ首を下から強く弾かれた時、目の奥底が白く染まった。


 そしてそのまま、凄まじい熱量が堰を切って押し寄せて。

 俺の意識は瞬きの間に熱と開放感によって、彼方に至るまで流し尽くされていった。


「あ、ぁ、あ、ぁ、お゛――――――――ッッッおぉぉおおぁあああぁああああぁあああああああああ゛あああああああ゛ああああああああぁぁあああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」


 迸る絶叫と共に、尿道の内側を凄まじい熱量が駆け抜けていく。

 射精の勢いがあまりにも強いからか、それとも刺激され続けて敏感になっているからか、尿道が熱をもって痛い程に疼いてしまう。


「ぁ、あ、ぁぐっ!は、ぁあぁぁっっ!!う、うぐ……っ!ぐ、ぎぃ……ぁ゛……っ!!」


 苦痛に叫んでいる筈の声が、一息の間に喘ぎめいた無様な声に変わっていく。

 屈辱を感じなければならない筈で、けれどもう完全に心を折られた俺は、未だ噴出しつづける精液の感覚に意識を奪われ、馬鹿のように喘ぐしかない。


「…………随分と呆気なく吐き出すものね。まぁ、別に構わないけど」


 最初の強烈な射精感から、びゅくびゅくと断続的に湧き出すような第二波へ。

 背筋と腰がどうしようもなく跳ねて仕方がない中で、女は呆れたような声音を隠すこともなく、ただ淡々と冷酷な言葉を続ける。


「とはいえ、まだそんなにスタミナがあるなら大丈夫でしょう。

 ここまでで吐かなかった情報――――執行官の弱点やスネージナヤ本国の手薄な場所――――そういった情報も全て、洗いざらい吐いてもらうから」


 あくまで冷淡な声音に、俺の喉から「ひっ」と無様な音が漏れた。

 そしてそのまま、まだ射精感の引いていないペニスが、再び柔らかな手によって扱き上げられ、痛い程に熱を持った尿道の奥から、更に精液が搾り取られていく。


「ぉ゛ッッぉあ゛っっ!が、ぁ、今、ダメ゛ッッがっっぁああぁぁ!!

 や、や、ぁぐっ!ぎ、も、ぜん、ぶッ!!はなじだっ!はな、ぁ、あ゛ぁああぁぁっ!!!」


 痛みと苦しみ。そしてそれらを埋め尽くすほどの快楽。

 目の奥に火花が散って、鼻から血を、口端から涎を垂らし、精液ではなく透明な”何か”が尿道から僅かに零れ落ちるほどにまで、俺は”全て”を淡々と搾り取られる。


 苦悶をもたらす地獄の檻。罪人の血と苦痛の涙で育つ茨の檻。

 逃れられぬと悟っても、過去の悪行を悔い嘆いても、当然檻は開かれる事などない。


 ただ一つだけ確かなのは、”俺”という人格が辿る末路について。

 それは淡々とした責めによってペニスの先端から段々と搾りだされて、やがて滓となって消えていくだけの塵と化した――――そんな末路が定められたという事だけだった。


≪了≫



お読みいただきありがとうございました!


次回は8月12日に更新予定。

内容は『FGO』より、「英霊夢装のカーマちゃんが、ヤガの男に青姦寝バックで獣のように犯される話」です。

ちょっと暴力的なので、苦手な方はご注意ください!


それでは次回もよろしくお願い致します!

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