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 ある晴れた日の午後、女性型アンドロイドであるアイリスはフードデリバリーサービスの配達員として配達先に向かっていた。彼女はその美しい外見と洗練された動作で、多くの人々から好意的な反応を受けていた。150cmのやや小柄な身長に似合う童顔。快活な印象を与える短い茶髪。こんがりと日焼けした小麦色の肌。駆け足で移動するたびにふるふると揺れるCカップの乳房、そして彼女の脚がペダルを踏むたびに快活なリズムで上下に揺れ動く筋肉質な臀部に、窓から彼女の到着を待ち侘びる男性客はみな虜になっていた。

 自転車を駐輪場に停め、被っていたヘルメットを脱いだアイリスは、とあるアパートの3階へと駆け上っていく。アイリスに搭載された躯体制御システムにより、食料品を詰め込んだデリバリーバッグは極めて安定していた。階段を登る時も、サイクルウェアに包まれた太ももの筋肉が引き締まり、ふくらはぎが力強く収縮する様子が見て取れた。スムーズな動きで階段を登っていく彼女の脚は、まるで自然な人間の動きを再現しているかのようだった。

 ドアの前に到着すると、アイリスは企業のロゴが入ったデリバリーバッグから袋を素早く取り出し、その細い指でインターホンを鳴らした。青緑のサイクルウェアにぴったりと包まれたアイリスの胸部は、自転車走行や階段昇降で乱れた息を整えるように、擬似的な呼吸に合わせて上下に動いていた。配達先の男性顧客を待つこと数十秒。扉がゆっくりと開かれ、男性が姿を現した。アイリスは男性の顔と登録されている顧客情報を照合し、届け先が正しいことを最初に確認した。

「『デリシャスデリバリー』です! 商品をお持ちしました!」

 アイリスは男性に快活な笑顔を向けた。しかし人間の配達員であれば、この男性に笑顔を向けることなどないだろう。男性は風呂上がりのような姿を装い、アイリスの前に屹立したペニスを晒していたからだ。配達員IDから配達員がアイリスであると知っていた男性は、アイリスにセクハラをしようと試みていたのだ。

 ——ジ、ジジ……。

 アイリスの瞳には、高性能な眼球型カメラが搭載されている。彼女は男性の下半身にピントを合わせ、露出している男性器を認識した。ペニスを見せつけられても、アイリスは嫌悪を抱くことなどない。なぜならば彼女にはそういった機能が搭載されていないからだ。アイリスは自分に課せられた任務を遂行するために稼働する、女性型の機械にすぎない。

 男性はアイリスの存在を明らかに意識しており、自身の裸を見せることで彼女の注意を引こうとしていた。男性は一歩前に出てアイリスに近づいた。しかし、彼女は彼の行動に対して一切の人間的な反応——羞恥や嫌悪、当惑といった反応——を示さなかった。アンドロイドは、不自然さを出さないようにデフォルトの状態ではわずかに口角を上げている。彼女も例外ではなかった。男にとっては、薄く赤みを帯びたその柔らかな唇が魅力的でたまらなかった。

 チ、チチ……きゅいッ。ぱち、ぱちっ……キュイ――

 彼女の瞳は冷静でありながら、鮮明な映像を捉え続けていた。男性が近づくにつれ、アイリスの眼球型カメラは滑らかに動きを追い、男性の行動を記録し続けた。彼女の眼球は静かに左右に動き、男性の行為を正確に捉えようとしていた。その高性能なカメラは、微細な動きや表情の変化まで見逃すことなく記録していた。

 アイリスは男性に商品を手渡すために、一歩前に踏み出した。男性の陰茎が自分の方を向いて硬くなっているのを知っているのに、である。彼女の半身が玄関に入り、より男性との距離が近くなる。サイクルウェアに包まれた乳房がふるり、と揺れ、その柔らかさをアピールする。

 ――ういぃ、ん。

「商品を、どうぞ?」

 アイリスは笑顔を見せながら、商品の袋を差し出した。商品を握る指先はしなやかに曲がり、綺麗に整えられた淡いピンクの光沢が彩っていた。しかし荷物を受け取る瞬間、男性は滑らかな人工皮膚で包まれたアイリスの手を過剰に握りしめた。

「ぐ、ぐふふっ……。ありがとう、アイリスちゃぁん……、っふふ」

 男性は彼女の名前を呼んだ。アイリスの眼球は男性の手の動きにも素早く反応した。男性がアイリスの手を強く握りしめると、眼球型カメラの瞳孔部分が収縮を繰り返したが、彼女の顔に一切の感情が表れることはなかった。彼女は商品を手渡すために手を離さなかった。顧客が適切な握力で商品を持つまで手を離さないというプログラムによるものにすぎないが、男性はそれを良いことに、しばらくアイリスの人工皮膚の柔らかさを堪能していた。

 ——チ、チチチっ……。

 男の手はアイリスの手を包み込むように握りしめながら、指先を彼女の手の甲をなぞるように動かした。男の指が、人間と瓜二つな触感を持つ彼女の手の表面を滑らせるたびに、微かな摩擦音が立った。男はたまらず、自分の股間に手を伸ばした。

「商品を、どうぞ?」

 アイリスは商品を受け取ってもらうために、男性客にそう告げた。しかし男性はアイリスの手をマッサージするようにクニクニと触りながら、もう片方の手で男性器を上下に擦っていた。アイリスの眼球は、男性の不適切な行動を記録するために冷静に動き続けた。男性の手が男性器を擦る様子も、アイリスの眼球が静かに追いかけていた。彼女の瞳に映し出される光景は、事実を客観的に捉えるための貴重な証拠となる。

 アイリスは商品を受け渡す姿勢で硬直したままだ。口角がわずかに上がり、微笑んだ表情のまま、人間らしさを演出するために規則的に瞬きを繰り返す。三十秒ごとに「商品を、どうぞ?」と繰り返すプログラムは正常に作動する。男性はそのたびに見えるアイリスの口腔内、艶かしい舌や真っ白な歯を凝視し、時には半袖の服からスラリと伸びる艶やかな手足や、サイクルウェアに包まれた女性的なボディライン——特に張り付くような衣服によって強調された乳房や、マネキンの如く何も存在していないなめらかな股間——を舐めしゃぶるように見つめていた。

「アイリスちゃぁん……、ふふ、引き締まっていい腹筋だねぇ……。ふ、ふふふっ、汗をかかないのは残念だけど……、彫刻みたいな陰影で、ご飯三杯いけちゃうよ……、むふふっ」

 ジジっ……。ピピピピ……キュ、キュぃ……っ――

 客に商品を手渡した姿勢のまま硬直し、映像を記録し続けるフードデリバリーの女性型アンドロイド。そしてそれをオカズに自慰行為に耽る男性。アパートの玄関先に突如生まれたこの奇妙な空間を、彼女の躯体から発せられる機械的な音と、男性器を扱き上げる摩擦音、そして男のむさ苦しい吐息が満たしていた。

 そのまま数分が経過し、男性は絶頂に至る。白濁した液体がぱたたっ、と撒き散らされ、その一部はアイリスの靴やサイクルウェア、そして艶やかな褐色の皮膚にも付着した。アイリスはその全てを、眼球型カメラを通じて録画していた。アイリスの手はただ商品を受け渡すという任務を遂行するために、手の位置、そして商品を握る強さを演算し続けていた。

 男性が商品を受け取ろうとして、アイリスの指にかかる荷重が減少した。触覚センサーがそれを感知し、彼女の指先の力が微妙に緩んだ。相手が商品を受け取ったことを確認したアイリスはすっと直立し、顧客に対する感謝を伝えるように礼をした。

「ご利用ありがとうございましたー! またのご利用をお待ちしております!」

 アイリスは潑剌とした笑顔でそう告げるとドアを閉め、次の配達先へと向かう。彼女は移動中も微笑みを崩さない。本部に対して男性の不適切な行動について報告する間も、まるでこの仕事が楽しくて仕方がないと言わんばかりに、ずっと笑顔のままなのだ。

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