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お久しぶりです。otoです。一ヶ月間開けてしまってすみません😥

Pixivリクエストでいただいたお題を元に書かせていただいた小説を、FANBOX限定で公開いたします。

試験問題を教師アンドロイドから盗もうとした時にあわよくばエッチもしてもらおうと試みる中学生が、調子に乗って壊しちゃう……という感じのお話です。


(以下設定集)

個体名:ミユ(学生からはミユちゃん先生と呼ばれている)

外見年齢:32歳(お姉さん風、タレ目)

身長・体重:160cm、79.2kg

スリーサイズ:92・58・90

性格:お姉さん的、女性的な雰囲気を前面に出したタイプ。母性的な感じでちょろい中学生を骨抜きにしちゃう(?)

用途:教師型(メンター、体育・保健体育)

服装:リブニットのゆるめな感じの服、膝丈スカート

性器の有無:有り(主に保健体育等の学習指導用途としてであり、他の教師型のモデルには非搭載。とはいえアンドロイドを使った性行為の指導は未だ教育指導要領に記載がないので使われたことはない)

性格:真面目で少し融通の利かないところはあるものの、 話しやすく親しみやすい女性教諭

備考1:スクールカウンセリング等の為に高度な会話機能が搭載されており、 自然なコミュニケーションが可能

備考2:アンドロイドとしては、ある程度の自律性と自我を感じさせるタイプ

背景設定:人間教員の補助として導入が進んでいる教師型

場所:学校内or学校外

プレイ:筆おろし(手コキ・フェラ・膣内射精)




***********






 一学期が終わる頃にもなると、午後6時でもまだ太陽は沈み切っていない。濃い紫色になった外を見やった女性は、時計を見ずに分針が真上を指したことを悟った。

 ブラインドを下げようと椅子から立ち上がり、ペタペタとサンダルを鳴らしながら歩みを進める。彼女のボブカットの茶髪が規則的に揺れ、漂う甘い香りが窓際に座る男性教諭の鼻腔をくすぐった。明日の授業の準備を終えた彼はデスクを整理し、カバンに荷物を入れながら女性の方を見ずに尋ねた。

「そろそろ期末試験っすけど、授業はどんな感じすか?」

 日に焼けた健康的な肌に、スポーツマンらしく引き締まった肉体を持つ彼は体育教師である。体育と保健体育の教師が普段いる職員室は他の教師たちとは異なり、体育館やグラウンドへのアクセスが良好な場所に立地している。今この場所にいるのは、彼ともう一人の女性教諭だけであった。

「ええと、まあ……。テスト範囲は全部授業で教えましたし、あとはこちらがちゃんと準備をするだけですね〜」

「そりゃよかった。家庭科の先生から聞いたんですけど、今年もやっぱり非難轟々で。この時期になるといつもそうっすよね」

 ぱっちりとした垂れ目を細め、柔和な笑みを浮かべた彼女はブラインドを下げ、ポールをくるくると回して羽の角度を調節する。「非難轟々」が「特進クラスと普通クラスの入れ替え試験に、保健体育などの実技教科の成績を取り入れること」に対する批判だと即座に理解した彼女は、男性教諭との自然な会話を続ける。

「そういう意見もありますよね。でもどれも大事な教科ですし、生徒さんにもわかってもらおうと頑張ってるんですが、なかなか難しいですよね〜」

「いや〜……、俺もやめた方がいいと思うんすよね。親御さんはギリギリ納得してくださる方も多いんですけど、生徒を説得するのがなかなかキツくて。なんか心が折れちゃうっていうか」

 見た目に似合わない弱気な発言をしながら、彼はたはは、と苦笑いしてみせる。女性もそれに同調するようにため息混じりの笑みを見せ、自分のデスクに戻ってきた。

「今日はこの後どうされるんですか?」

「えーと、これから職員会議があって……。あ、そうだ、試験問題の用紙の準備と印刷もしないとだ」

 うわぁ、と声を漏らす男性教諭。期末試験は5日後に迫っており、そろそろ試験問題の印刷等の準備をしなければならない。生徒に配布した端末の不具合によってテストが滞るトラブルを防止するために、この学校では未だに紙に印刷した試験問題を用いて定期試験を行なっている。

 早めに準備して誤植や印字不良などの不備がないか確認することが求められているが、問題の作成などに手間取っているとそういった部分が後手になってしまう。彼も例に漏れず、問題の作成が終わったことに安堵して印刷作業を怠っていた。

 ワークライフバランスを重視しているこの学校では、できる限り残業はしないことが求められている。一ヶ月の残業時間が閾値を超えた時点で学校側から業務改善の指導が入るなど、面倒な手続きも増えるのだ。男性教諭はそれを憂えて嘆息した。

 しかし特定の空間で敢えてこのように発信することが、この学校ではなぜか奨励されている。その証拠に、話を聞いていた女性教諭が彼の方を向き、「試験問題の用紙の準備ですか? それ、私がやっておきますよ〜」とニコニコしながら言ったのだ。まるで自分の仕事が増えるのを厭わないかのような声音で。

「流石ミユちゃん先生、ほんと頼りになります」彼も礼を言うものの、この「渡りに船」的な展開が読めていたかのように、彼の声音に申し訳なさがこもっていない。

 女性教諭が手助けを申し出るのが半ば当たり前のように思っているように、彼は自分のデスクの片付けを続ける。面倒ごとを押し付けるように「じゃあ、お先に。お疲れ様でした」と告げると、男性教諭はカバンを抱え、そそくさと職員室を後にして会議室へと向かっていった。

「お疲れ様でした〜。……さて、と」

 厄介な仕事を任された「ミユ」という名の女性教諭は、両腕を上に伸ばして背筋のストレッチを行った。豊かに実った乳房がクリーム色のリブニットの生地を押し上げるが、アピールされた女性的魅力を目にするものはもう誰もいない。

「今日もあとちょっと、頑張りますか」

 ミユはよいしょ、と呟いて立ち上がると、つい先ほどまで男性教諭が座っていた席に移動する。

 この学校では中枢サーバーに対する不正アクセスによって試験問題の漏洩を防止するために、基本的に各教科の担当教師が各々の端末で試験問題を作成している。そのため保健体育の試験は、管轄する男性教諭の端末に保存されていた。

 端末から伸びるケーブルを掴んだ彼女は、おもむろに髪の毛をかき上げてうなじを晒す。そこには光沢を放つ小さな円形の金属部分が露出していた。中央には三つの極小な窪みが存在し、何らかのインターフェースが接続可能であることを示唆している。

「んしょ……」

 角度を調整しながらケーブルを接続すると、ミユはぴくりと肩を震わせた。端末に有線接続した彼女は、試験問題が保存されたディレクトリに直接アクセスし、自身に内蔵されたメモリ上にテストの情報を展開する。

 モニターには何も映っていなくとも、彼女は黙々と「作業」を行う。すなわち、テストのレイアウトを整えたり、誤植を訂正したりといった、先ほど男性教諭に任された雑務だ。

 真っ黒な画面に向かって、瞬きもせずにじっと姿勢良く座っているだけ。無表情のまま微動だにしない様子は側から見ればホラーかもしれないが、彼女の人工的な美貌も相まって、不思議と彼女が「そう」していることの違和感が薄れてしまう。

 一通りの作業を終えると、彼女の周囲の時間が動き出す。彼女のほっそりとした指がケーブルを掴んで引っこ抜くのと同時に、印刷機が自動的に稼働を開始する。

 滞りなく印刷が終了し、試験問題と解答用紙を必要な枚数分用意すると、最後に印刷ミスがないかを一枚一枚手作業で確認する。確認が終了したら、最後にダイヤル式の金庫に収納し、見事男性教諭に任された仕事を二時間も掛からずに終えてみせた。

「……よし。これでおしまい、と……」

 ふう、疲れたと最後に付け加え、彼女は息を吐いて椅子に腰掛ける。背もたれに深くもたれかかると、ギィィ……と重苦しい音が寂しく部屋に響いた。男性教諭への不満を吐き出す代わりに彼女は笑顔を作り、誰もいなくなった職員室で孤独に、人間に任された仕事を淡々とこなしていた。


          ◆


「……で、わざわざ呼び出して、何するつもりなんですか」

 職員室に呼び出され、神経質そうに膝を揺らす中学二年生の男子生徒は、自分に向かって座る女性——ミユに尋ねた。

 限りなく人間に近い容姿を持ち、高度な擬似人格によって人間と自然なコミュニケーションが可能な、教師型アンドロイド。一般に流通する人型ロボットより性能の高い汎用人工知能に、一流教師の指導技術を可能にするモジュールを搭載し、彼女たちは生徒たちに分かりやすく面白い授業を提供している——そんな能書を、彼は入学前の学校の説明やパンフレットなどで何度も目にしてきた。

 そんな彼女が個人を呼び出す理由はごく限られている。その上、実際に今朝学校からメールで呼び出しを食らった際に文面を読めば分かりきっているのだが、少年は敢えてその理由を尋ねた。

「えっと、『カウンセリングシステム』って、知ってるよね。教師型アンドロイドが、悩みや不満を抱えている生徒の相談に乗ってあげる取り組みなんだけど……」

「最近ね、キミのストレスレベルが普段よりかなり高くなっていて、ちょっと心配に思ったの。……そう、ナノマシンでモニタリングしてるやつね。で、今日はその原因の特定と、解消に向けてどうしていくか、一緒にお話しできたらなって思って」

 ミユは親しみやすい柔らかな声音で少年に語りかける。自らが少年の味方であると伝えるための戦略として目線を合わせ、かつ身体的な距離を意図的に縮めることで自信の優れた容姿を活かす。機械的に演出されたその「親密さ」が、彼がアンドロイドを苦手とする理由の一つであった。

 加えてミユがロボットであることも、彼がミユを軽んじる理由の一端であった。誰にでも優しく、生徒の依怙贔屓を決してせず、嫌いな生徒などいないがゆえに一律同じ形態のコミュニケーションをとる。そんな非人間性に、少年は気味の悪さを覚えていた。

「ハッキリ言って困ります。授業をサボらせる権限がどうとか知りませんが、一コマ抜けるだけで50分みんなより遅れるんですから」

 テストが近くなっていることもあり、すでに範囲が終わっている授業は自習が多くなりがちだが、それでも最後に詰め込むような授業もある。少年はそれを欠席してしまうことを心配していたのだ。

「……やっぱり、期末試験が心配、だよね。でもさ、この時期はみんなストレス感じるけど、キミは特に高くなってて。これまでの定期試験の時よりも、今回はずっと高くなってるから、気になっちゃったんだ」

 ——先生に聞かせてほしいな。彼女はそう言うと、ずい、と体を前に出して生徒との物理的距離を近づける。

 至近距離から視界に飛び込んでくる唇の動き、そして大きく迫り出した胸元に、少年の視線が釘付けになる。色々言っていても結局は男。艶かしい輝きを帯びた肉厚な唇や豊満な乳房など男性にとって魅力的な造形を有し、人間の喜ぶ動きを選択的に取るアンドロイドに、齢14の少年は簡単に翻弄されてしまう。

 にこりと微笑むミユの色香に耐えきれず、少年はいよいよ口を割ってしまう。

「あ、あのですね。実技教科……、家庭科とか保健体育とかなんですけど、全然手が回ってないんです。五教科の対策に必死なので。というか、大事なクラス替えのテストに、入試に関係ない教科が関わってくるのはおかしいと思うんです」

 少年の言い分にうんうんと頷き、ミユは共感の態度を示す。実際、十科目近く対策を強いられる生徒に対する負担はかなりのものである。それが次学期の授業ごとのクラス替えに反映されるシステムも相まって、さらにプレッシャーが増すのは避けられない。

「こう言ったって、別に先生が僕にできることはないじゃないですか。テストの問題を教えてくれるわけじゃあるまいし」

 そうだね、と相槌を打つミユは、対策の方向性を思案していた。ここで実技教科の大切さを説いたところで、反発が強くなるだけだと推測したミユは、代替案を提案する方針に舵を切る。

「う〜ん……。試験問題は流石に教えられないけど、勉強なら付き合ってあげられるよ? キミの出るはずだった一コマ分を拘束しちゃって申し訳ないけど……。キミさえ良ければ、保健体育の勉強、見てあげたいな」

 建設的な代替案を提案された少年は、渋々それを承諾する姿勢を見せた。

「じゃあ今できますか。……あんまりアンドロイドに勉強教えてもらってるの見られたくないんで、人があんまりいなさそうで、話し声が漏れなさそうな場所で」

 ミユは自身のスケジュールを確認する。ミユ自身の都合よりも、人間の学生や教員の都合のほうが重要だ。彼女たちはそのために開発され、朝早くから夜遅くまで文句の一つも言わずに稼働し続ける。彼女にとっては定期的なメンテナンスと充電だけが必要であり、他の全てを人間に奉仕するための犠牲にすることなど厭わないように作られている。

 ——……ジジっ。

 体内から微小な駆動音を立てながら返答を構築するミユ。自らの「退勤時間」を一時間程度遅らせて余裕を作った上でスケジュールを組み直し、適切な空き教室の候補を速やかに列挙し終える。学生の要望に沿った教室を選択するところまでを一秒以内に完了し、ミユはにっこりと笑った。

「うん、いいよ。じゃあ、北館四階の第三教室に行こっか」


          ◆


 北館四階の第三教室には長年使われていた大型のプロジェクターが備わっており、以前まで特定の授業で使われていた。しかし各教室に小型のプロジェクターが設置された今となっては敢えてこの教室を使う必要もなく、清掃担当のクラスが掃除の時間に立ち入るくらいであった。加えてどの教室からもそれなりにアクセスが悪いことも、教室が使われない理由の一つであった。

 鍵を持っているミユが先に入ると、男子生徒が後から入ってドアの鍵を内側から閉める。彼がカバンから道具を取り出している間、ミユは椅子と机を準備するのが適切だと判断した。ミユが背を向けているうちに、彼はカバンからとある装置を取り出した。学校から各個人に配布されるタブレット端末のような見た目をしたそれは、しかし全くの別物であった。

 少年が取り出したのはアンドロイドに不正なアクセスを仕掛ける装置だ。アンドロイドを介してサーバーにアクセスすることで試験問題を盗めると思った少年は、最初からアンドロイドにハッキングを仕掛け、問題を盗もうと計画していた。アンドロイドとの接触のタイミングを図っていたが、運良く本人が自分を呼び出したため、急遽作戦を決行することにしたのだ。

 実際のところ、試験問題はサーバー上には存在せず、ミユ自身が内容を把握していなければこの計画は即刻失敗に終わっていた。しかし試験問題の印刷用データを持っていなくても、この前日に試験問題を閲覧した以上、保健体育の教科については問題を完璧に知っているのと同じ状態であった。

 少年のストレスレベルが異常に高かったのは、テストに対するプレッシャーというより、実際にこの作戦を決行した際の失敗のリスクによるものが大きかった。

「さてと……、教科書の準備中かな?」椅子に腰掛けたミユは、少年が端末を操作しているのを確認して尋ねた。ミユは単純に教材を開いているのかと思っていたが、そんなミユの期待とは裏腹に、彼はミユの問いかけを無視し、端末の画面を見せつける。

 そこには教科書のページが表示されておらず、幾何学的な謎の模様が表示されているばかり。この画像はアンドロイドの視覚を通じて処理され、人間でいうところの「催眠状態」にする効果がある。広範囲にわたる影響はないが、特定の身体制御システムで稼働するアンドロイドがこの画像を見せられた場合、彼らは自らの意思に反してある操作を実行することになる。

 彼女は端末から延びるケーブルを掴むと、まるで最初からそうするつもりだったかのように、それを自らのうなじのコネクタに接続した。これが第一段階である。この操作により、彼女の体内にウイルスが強制的に流し込まれることになる。

「あぇ」

 間抜けな声を出した教師は、電流を流されたかのようにビクンッ! と仰け反った。突如として彼女の処理能力を上回る膨大かつ無意味な電気信号が流れ込んだのだ。それにカモフラージュされる形で不審な実行ファイルが彼女のメモリ上に配置され、ウイルスチェックをする間もなく管理者権限で実行が開始される。

「外部端末からアクセスが確認されれれれれれれ……。正常正常正常なアクセセセセスではありません。せ、正常、正常正常正常」

 カタカタと震えながら眼球型カメラを目まぐるしく動かすミユ。水揚げされた魚のように痙攣する彼女の口から流れ出る呪詛のような声には、得体の知れないアクセスに抵抗しようとする意図が垣間見える。人間で喩えて言うならば悪霊に取り憑かれた時のように、引き攣ったような笑みを浮かべながら手足を震わせ、ジタバタともがき続けている。

 ミユを攻撃しているのはアンドロイドの常識推論能力を改変するタイプのウイルスで、思考領域を乗っ取ってホストに送信する認識を勝手に書き換え、思考能力や身体制御はそのまま言うことだけを聞かせられるようにする代物である。

 言わば、彼女たちの脳をサブシステムとして稼働させ、倫理的な判断能力を残したまま、「してはいけない」ことを「しても良い」と誤った判断を下す上位システムを稼働させている状態になる。

 それゆえ彼女たちは善悪の判断といった論理的思考能力が可能なまま、悪意のある人間の命令に従うようになってしまうのだ。彼ら自身が自発的に通信を偽造し、仮に不正行為を働いたとしてもダミーの情報をサーバーに送ることが可能になり、発覚の遅れや証拠の損失につながってしまう。

 抵抗虚しくウイルスに侵食され、がくがくと痙攣を繰り返していたミユは、次第にゆっくりとその動きを止めていく。くったりと力が抜けたように背もたれにもたれかかり、両腕を力無くだらりと垂らした状態になった。

 居眠りをしている人間でもここまで力を抜いたような体勢にはならないだろう。彼女の瞳は完全に見開かれ、瞳孔が散大した状態だ。口も力が入っておらず半開きになっている。首から上は背中の方に倒れ切ってしまい、「糸の切れた人形のように」という比喩表現がこれ以上ないほど当てはまっていた。

 ミユが動作を停止してから数秒後、彼女の体内から微かなビープ音が鳴ると、続けて「再起動プロセスを開始しています。しばらくお待ちください」とアナウンスが自動的に流れる。普段の落ち着いた柔らかな声音とは異なり、トーンが高くハキハキとした自動音声にはミユの意思が介在しない。

 力無く半開きになった口の端から人工唾液がつうぅ……と溢れ、教室の床にぽた、ぽたと垂れ落ちる。次第に駆動音が大きくなり、動作確認を行なっているかのようにカメラアイの絞りが規則的に収縮し、指が機械的にぴくぴくと動き始める。

「起動します。本機体に近づかないでください」

 ——ヴヴゥ……ン。

 ミユは鈍い音を立てながら、ゆっくりと背中を起こし始める。背中が座面と垂直に伸びるが、首に力が入っておらず、ちょうど90度になったところで急に上半身が固定され、頭部が前にガクンと揺れた。

 非人間的な首のぐらつきを少年に見せつけたのち、彼女はふらふらと手を首元に伸ばし、無造作にケーブルを引っ張って端末との接続を解除する。最後に顔が正面に向き、顔に人間的かつ柔和な表情が戻った。

「えーと……。教科書、出してくれる?」

 ミユは数秒前までの自分の異常に全く気づかないそぶりを見せた。それどころか、今自分がどこにいて、何をしようとしていたかを完全に把握しているようでもあった。

 少年はひとまず、ミユに接続していた端末を回収する。今度は教科書がダウンロードしてある端末をカバンから取り出して机に置くと、ミユに向かい合う形で椅子に座った。

 彼は「先生、期末試験の保健体育の問題、教えてくれますか?」と尋ねた。ニコニコしながらこちらを見つめるアンドロイドが、自分の支配下に置かれたか否かを確認するためだ。

「う〜ん……。『本当はダメだけど』、今回だけ特別ね。何を教えてほしいかな?」

 「本当はダメだけど」という枕詞が付けば、ロジックの書き換えが正常に完了している。少年は計画がうまく行ったことを確認したため、内心ほくそ笑んだ。

 あいにくこの教室の近くにはプリンターがなく、アンドロイドが入手した試験問題の情報をプリントアウトできない。そこで手間はかかるが、彼は一つずつ問題を尋ねることにした。

「……えっと、まず、大問1はどこの分野から出ますか?」

「心の健康に関する分野から出るよ。教科書の78ページの、欲求・ストレスへの対処とかの内容。そう、この文章の穴埋め問題が出るから、ここを暗記しておくといいかな」

 男子生徒に指図されるままに、ミユは彼が表示するタブレットの画面を見ながら、教科書のどのページからどんな問題が出るかを躊躇いなく暴露する。

「じゃあ、大問2は?」

「教科書の92ページから94ページにかけて、生活習慣病に関する問題が出るよ。『脳卒中』・『心筋梗塞』・『糖尿病』・『がん』の四つは、病気の名前とその原因をちゃんと覚えておくのが大事だね」

 男子生徒はタブレットにメモを取りながら、試験対策を進めていく。その様子を、ミユは張り付いた笑顔を浮かべながらアイカメラで監視している。

 教育委員会に報告しなければならないほど重大な事案をしでかしている自覚など毛頭ない。彼女の頭の中では彼が単純に試験対策を進めていると認識が歪められ、それについて何も疑問を持たないのだ。

 50ページもある試験範囲がぐっと狭くなり、さらに問題に関する直接的な言及によって対策が格段にしやすくなる。質問になんでも答えてくれるアンドロイドのおかげで、全ての問題に関するリーク情報を得ると、少年は試験対策があっけなく終わったことに対する喜びと安堵を覚えた。

「これで全部かな。他に何か聞きたいこと、あったりする?」試験対策に関与する部分が大方終了したと判断したミユは、最後に質問の時間を設けた。想定よりも圧倒的に早く試験対策が終了したことには特に疑問を持たず、その代わりに彼女はバックグラウンドの処理を行い、スケジュールを変更しようと試みてすらいた。

「え、ええと……」

「遠慮しないで。なんでも聞いて大丈夫だよ?」

 ミユは男子生徒が質問しやすいようなワードを選択的に発話する。やや前のめりの姿勢で少年との物理的な距離を縮めると、乳房を机の上に乗せて両腕で抱え込むような仕草を取った。

 男性の心理につけ入ろうとする策略にめざとく反応する少年も、目の前のアンドロイドが自分の言いなりになっているという前提があれば話は別だ。その魅力的なポーズ、人工的な肉体から香るフレグランスに本能が先に反応してしまい、それに流される形で彼は次の行動を選んでしまう。

「……先生、キスしてもいいですか」自分の好きなようにできるとはいえ、念の為の確認作業を行うため、少年は聞かなくてもいい質問をわざと尋ねた。少年を愛おしいと思うように目を細めたミユはふにゃりと微笑むと、しょうがないなあと言いたげな目をして返答する。

「う〜ん……。『本当はダメだけど』、今回だけ特別ね?」

 んしょ、と可愛らしく呟いて立ち上がったミユは、椅子と一緒に男子生徒の隣に移動する。太ももまで覆う黒スカートの裾がふりふりと揺れ、人間を安心させる効果がある、甘い香りがその強さを増して少年を誘惑する。

 吸い込まれるような漆黒の瞳、整った鼻筋、うっすらと赤みを帯びた頬、そして柔らかそうな唇。彼女の美貌を構成する要素が、男子生徒の心をかき乱す。

「ふふっ……。ぎゅ〜……♡」

 ミユは少年に腕を伸ばし、自らの方に引き寄せるようにしてぎゅっと抱きしめた。衣服の下から存在を主張するたわわな乳房が、少年の体にむぎゅう……と押しつけられる。そして何の躊躇いや感慨もなく、彼女は唇に吸い付いた。

「ちゅっ……。ちゅうっ♡ ぴちゅ♡ ちゅむっ……♡」

 唇同士を柔らかく擦り付け合うような甘いキス。しっとりとした唇は、少年の唇にむっちりと吸い付くような快感を覚えさせる。彼は人生で初めてのキスの快楽に溺れ、全身を強張らせたままアンドロイドの口吸いを受け続ける。

「ちゅうっ……♡ ちゅ、ちゅっ。ぢゅるるる……♡」

 ミユは自然な流れで、触手のように伸びる舌を少年の口の中に侵入させる。最初から決して無理をせず、ゆっくりと、キスをしながらの呼吸を自然に覚えさせるように。ねっとりと口腔内を舐め回し、自分自身の存在に恐れを抱かせないようにしながら、一人と一体は自然と同化していく。

 ミユの甘い唾液を吸おうと、少年は鼻息を荒くしながらミユの舌を啜る。彼がミユを抱きしめる腕にこめる力が次第に強くなり、ミユも体を少年に甘えるように擦り付けて胸の柔らかさを感じ取らせる。鼻にかかったような艶かしい喘ぎを上げながら、ミユは男子生徒の挙動を冷徹に監視し、適切な舌技を繰り出し続ける。

「んぅ……♡ ちゅる……っ♡ ちゅ、ちゅ♡ れろれろれろぉ……♡♡」

 ミユは自分の太ももに少年の脚が当たり、もぞもぞと落ち着きなく動いているのを知覚していた。ミユは自ら手を伸ばし、太ももを撫でながらその指を徐々に股間へと這わせてゆく。

 指先のセンサーで感知する熱が高まると、その周囲の布がある一点に向かって引っ張られていることにミユは気が付いた。すなわち、少年の股間部に存在する物体——硬くなった男性器が、窮屈そうにズボンを押し上げていることを。

 ミユの手が裾野をすすす……と上り、ついにその頂点に達する。彼女自身に備わる常識推論機能は、未成年に対する淫行に対して不適切であると判断を下している。しかし「本当はダメだけど」と自分に言い聞かせるウイルスの効力により、彼女は自らの意思で男性器に触れてしまう。

 あうっ、と声を漏らす少年の唇は、その上から吸い付く別の唇によって封じ込められる。ミユの柔らかな手が触れたために硬さを増しつつある男性器。その先端を、ミユはズボンの上から甘やかすように撫で始める。

 指先でさわさわ、もにもにとくすぐったり、亀頭のあたりを人差し指でくるくると撫で回したり。さまざまな方法で少年の性感を高めると、ミユは口腔内に対する攻撃を一旦停止し、ゆっくりと口を離した。

「ぢゅるっ……。ぷぁ♡ ふふっ、気持ちいいね……♡」

 二人の唇の間に唾液の糸がかかり、切れた糸はミユの頬にぴちゅり、と張り付いた。唇の周りに付いた唾液とローションの混合液をぺろりと舐め取ると、ミユは妖艶な笑みを浮かべて少年に脱衣を促す。少年に要求されたのはキスだけである。しかしそれ以上のこと、つまり性行為をしようとするのは、紛れも無い彼女自身の意思であるし、密室で親しい男女が行う行為は何かという問いに対する自然な帰結でもあった。

「じゃあ、おズボン、脱いじゃおっか♡ ……一旦、立ち上がって? ……ん、しょ♡」

 少年がズボンを脱ぐのを手伝い、併せて下着も脱がせる。異性に対して自分の生殖器を晒す恥ずかしさよりも、女性型アンドロイドに抑えきれない欲望をぶつけたい欲求が上回り、椅子に座る時すらミユの方にペニスを突き出したままだ。

「またちゅー、する? ふふっ、『本当はダメだけど』、いいよ……♡ ちゅむぅ……っ♡」

 ペニスを視認したミユは、少年と舌を絡ませながら男性器を過たず握った。男子中学生の未熟な性器を、白魚のような指で愛おしげに撫で回しながら、濃厚な接吻を継続する。

 ぱんぱんに腫れ上がった幹に右手の指を絡ませると、彼女はその手を上下にゆっくりと動かし始めた。鈴口から漏出する先走り汁を指に絡めながら、スローペースで甘ったるい快感を陰茎に与える。

 根本から先端にかけて、ぬるぬるとした手が適切な圧力をかけながら撫で回す。カリ首の段差をにゅるんと超える時にあえて時間をかけてみたり、先端に達した時に亀頭をくりくりと人差し指で虐めたり。少年を飽きさせないように様々な工夫を凝らしながら、ミユは精力的に彼を悦ばせようとする。

「んっ……、きもちいい? ふふっ、うん。もう出ちゃいそう?」ちゅ、ちゅっと短いキスをプレゼントし、ミユはにんまりと笑ってみせる。

「じゃあ、いっぱい出しちゃおっか。『本当はダメだけど』最後は、お口で受け止めて、全部飲んであげるね♡ 『本当は、ダメだけど……』」

 ミユは自分に言い聞かせるように、何度もモゴモゴと「本当はダメだけど」を繰り返していた。しかし理性より本能の方が上回ったかのように突如として静かになり、少年の唇を再度奪った。

「んふぅっ……♡ ぢゅるぢゅるっ……♡ ぁむ、ちゅっ、ちゅうぅ……♡ 」

 しゅっ、しゅっと手首のスナップを効かせて、今度はリズミカルに男性器を擦り上げる。情熱的な口付けを交わすミユ。女性教師型アンドロイドによる極上のキス手コキに、性的な快感に耐えてきた少年の体が決壊寸前になって震え出す。

 ミユは陰茎の震えから射精が近いことを予測していた。彼女は速やかに彼の口から唇を離すと、少年の股座に躊躇なく顔を埋めた。

 ミユの手のひらに収まる程度の大きさの陰茎は、女性の口によってぱくりと飲みこまれてしまう。生温かくてぬるぬるの空間にペニスが放り込まれ、しかもそれが奥に引き摺り込もうとしてくる。

 精液を吸い取ろうと、にゅっこ、にゅっこと下品かつ貪欲に吸引してくる口マンコ。自動的に稼働する搾精機械に陰茎を突っ込んでしまったが最後、少年の腰は勝手に浮き上がり、体が勝手に絶頂に備える体勢になってしまう。

「先生、僕、もう、出るっ……!」

 少年は我慢できずに精液を彼女の口に放った。どくどくと流れ込む青臭い大量の精液を、ミユは嫌な顔せず淡々と喉奥に飲み込んでいく。

 射精を口で全て受け止めたミユは、舌や頬の肉でねっとりと肉竿を舐めまわし、口腔内や尿道に残った精液を吸引し終えると、口から男根を引き出した。

 柔らかな特殊シリコン製の粘膜でもみくちゃにされ、人工唾液でヌルヌルになったペニスは、二回戦に向けてその硬さを増しつつあった。試験勉強を続けていると認識が歪まされているミユは、未だ勃起が収まらない肉茎を確認し、「……他に何か聞きたいこと、あったりする?」などと間抜けな問いを男子生徒に投げかけた。

「じゃ、じゃあ。次は、先生の下着、見せてください」

「しょうがないわね……。『本当はダメだけど』、今回だけ特別ね?」

 ミユは椅子から速やかに立ち上がると、唾液が付着したニットセーターを脱ぎ、ベージュのインナーも脱ぎ捨てる。期待に胸を膨らませる少年の眼前に現れたのは、装飾のない、白色のシンプルなブラジャーであった。

「ロボットも下着ってつけるんですね。……他の先生もつけてるんですか」豊満な乳房が窮屈そうにブラジャーに抑え込まれている様子を見て、少年はふと疑問に思ったことを呟いた。

「そうだね。私たちは学校から支給された下着を使っているから、みんな同じものを身につけているよ」

 更にスカートも脱ぐと、黒のストッキングに覆われたむっちりとした脚が現れた。股間はこれもシンプルな白色のショーツが覆っていた。彼女はストッキングを恥じらいも感じさせずにスルスルと脱ぎ、それらをまとめて畳み始める。

「……ずっと気になってたんですけど、ロボットなのになんで下着なんて履いてるんですか? ノーパンノーブラでも、ロボットなら平気じゃないんですか」

「それは、人間と近い生活をするために必要だからだよ。アンドロイドが人間と同じように振る舞う時に、下着を着ていなかったらきっと違和感を覚えるから、そうならないように身につけているの」

「ノーパンノーブラじゃ、エロすぎるから? 乳首が浮いちゃうとか……」

「そうだね。……アンドロイドがブラジャーを身につけるのは、乳房を支えたり、乳首が透けるのを防いだりする目的があるかな。ショーツは、スカートが風にあおられた時に、股間が露出してしまわないようにする必要があるからね〜」

「でも、女性型アンドロイドの設計や用途によっては、下着を着用しなくても問題ない場合もあると思うよ。私は人間の女性と同じように性器が搭載されているから、下着をつける必要性が高いけど、そうでない場合は、つけなくても問題ないかもしれないね」

 普通の人間であればこんなあからさまな会話はしないが、今のミユは聞かれたことを懇切丁寧に答えてしまう。内容的に不適切であるという判断は捻じ曲げられ、発話しないでお茶を濁す、もしくは注意を喚起する処理がスキップされてしまう。彼女自身は生徒のためを思って答えているつもりであるのだが、思考している内容がダダ漏れになってしまっているのだ。

 少年に下着を見せるミッションを完遂したミユは、直立不動のまま立ち止まり、次の命令を待機していた。そして下着も脱いで裸になるように命令されると、ミユは躊躇いなくブラジャーのホックを外し、肩の紐に手をかける。ブラジャーを脱ぐと、彼女のGカップの胸がばるんっと揺れた。そしてショーツもするりと脱ぐと、ミユの傷ひとつない人工の肉体が露わになった。

 男子生徒は彼女の美しい裸体を見て絶句した。生殖可能年齢に達した女性の見本となるように設計された、全高160センチメートルの均整の取れた肉体である。

 お椀型の乳房は美巨乳と呼んで差し支えないほどに整った形をしており、彼が違法動画で見たポルノ女優のそれと遜色ないほどに美しい。先端の乳首は薄く色素が沈着し、人間の生理的な反応を模すかのように固く勃起していた。

 成熟した女性の魅力を体現するのにふさわしい、ややだらしのない肉体は、腹部や臀部に余計な脂肪を湛えつつ、肉感あふれる女体を演出する。少年は人工の脂肪が搭載された偽物の肉体にすっかり興奮しきっていた。

「先生、マン毛生えてるんだ」彼はミユの秘所を凝視した。正面からでは割れ目や陰核が視認できないほどに、黒々とした陰毛が彼女の女性器を覆っている。鼠蹊部の内側に収まり、美しい逆三角形を保ってはいるが、毛量としては男子中学生のそれに比べてやや少ない程度には生えている。

「……陰毛は、もちろん生えているよ?」

「これも、人間に擬態するためなんですか」

「そうだね。私の外見年齢は、32歳に設定されているの。成人済みの女性の多くは陰毛が生えているから、私にも生えているんだよ」

 少年は彼女の下半身を舐めるように見つめる。むちむちとした太ももやふくらはぎは柔らかさをアピールしながらも、80キログラム近い躯体を支えるために肉厚に造られていた。

 性教育に利用するには淫らで完璧すぎる肉体。それを男子生徒に見せつけながら立ち尽くすアンドロイド。自分の言いなりになるメスを手に入れた彼の欲望はとどまるところを知らない。

「……先生、セックス、しようよ」

「…………ほ、『本当は、ダメだけど……』、今回だけ、だよ。かわいい生徒のお願いは、聞いてあげないと、だから」

 ぎこちなく了承の意を示したミユは、微笑みを浮かべてゆっくりと立ち上がった。

 アンドロイドを用いた性行為の指導は未だ検討の段階であるため、教育指導要領に記載がない。すなわち、彼女自身の女性器は一度も使われたことがない。新品同然の女性器ユニットを少年に見せると、彼は興奮してその場所に見入った。

「すごい……。他のアンドロイド、例えば数学のアミ先生にはついてるんですか?」

「ううん、アミ先生にはついていないよ。アミ先生は保健体育等の実技指導が想定されていないから。だから、私以外の教師型アンドロイドには非搭載なの」

 ミユは教室を見渡し、適切な体位が後背位であると判断した。彼女は机に手をついて後ろを向き、男子生徒に向かって膣口を見せる。指で開いて見せると、適度な粘性を帯びたローションがとろりとこぼれ落ちた。

「そう、ここよ……。入れる場所、わかるかな?」

 少年は勃起した陰茎をミユの尻に向けて突き出し、躊躇いつつも膣口に擦り付ける。柔らかな大陰唇を乗り越えるように、彼は腰を前に動かした。ミユの陰部は人工愛液で既に十分潤っており、亀頭がぬるりと割れ目に滑り込んだ。

 むちむちした肉壁をかき分ける快感に鳥肌を立たせながらも、ミユの臀部に手を当てつつ、抗えない力に引きずられるようにして腰を前に進めてゆく。

 高い膣内圧力によってイボがぞりぞりと肉竿を擦り上げ、少年は何度も体を震わせる。なんとか下腹部がミユの尻に当たるほど腰を前に突き出すことで、根元までスムーズな挿入が完了した。

「うああ……」ぐっぷりとペニスを雌穴に差し込んだ少年は、あまりの快感に意図せずため息を漏らす。まるで別の生き物のようにゆったりと蠢く肉壺は、そこに自分の体で最も敏感な部分を突っ込んでいるだけで、これまでの人生で感じたものとは比べ物にならないほど極上の快楽を与えてくれる。

「……全部、入ったね。そしたら、私の腰を掴んで、ゆっくり体を前後に動かしてみて?」

 少年はゆっくりと腰を動かそうとするが、なかなか動きがぎこちない。ミユはその原因をすぐさま分析し、「後ろから突き上げる時は、斜め上に突き上げるようにするとやりやすいよ」と的確なアドバイスをする。

 体位ごとのコツを網羅している教師型アンドロイドは、これまで決して使うことのなかった知識を活かし、いつもの保健体育の授業のようにわかりやすく伝える。

「んっ……♡ んあぁ……♡ そう、そんな感じ……ぃ♡」

 ミユは鼻にかかったような喘ぎを漏らし、男子生徒の腰振りが正しく女性を気持ちよくできていると暗示した。スローペースの腰振りによって、ぬちゃ、ぬちゃと淫らな水音が結合部から鳴り、静かな教室を猥褻な雰囲気で満たす。

「……女の子を気持ちよくさせるためにはぁ……、ちゃんと女の子の様子も見よう、ねっ……んぁ♡♡ ……あんまりぃっ、激しくしてもっ……、抜けやすく、なっちゃったり……、一緒に気持ちよくなれなかったり、するからぁ……。ゆ、ゆっくり……♡ 時間をかけて、するのがぁ、大事だよっ……♡」

 ミユは自分自身の電子頭脳に流入する電気信号を受けて、外部とのインタラクションに必要な要素を計算し続ける。快楽に溺れる女性がどのような声音で喋るか、体の各部にどういった反応が生じるのか。そしてどのように伝えれば、男子生徒の学びにつながるかを考え続ける。

 本格的に実践投入されているわけではない未熟な機能と、教育用のモジュールを併用することによるミユ自身への負担はそれなりに大きい。並列動作するアプリケーション群に加え、今のミユは少年によって思考の制御をハックされている状態である。

 通常時より遥かに高いCPU使用率に、ミユを稼働させるメインシステム内部で再起動の優先度が次第に高くなりつつあった。人工汗腺から汗が流れ、人間の反応を模倣するように熱い吐息を漏らしながら、なんとか男子生徒との交合を終わらせることを最優先に、ミユは彼の動きに合わせて自らの腰を緩やかに動かし続ける。

「んっ、はぁっ……♡ 気持ちっ、いいかな……ぁ?」

「せ、先生っ……、僕、もう……っ」

 少年はゆっくりとした腰振りを早め、独りよがりな射精へと向かおうとする。一回既に射精していたとはいえ、許容量を超える快楽を投下され続けることで容易に二回目の絶頂へと上り詰めようとしていた。

 ぱちゅ、ん。ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅっ。ぱちゅ、ぱちゅ、ぱちゅっ。

「だ、ダメよ、そんなふうにしちゃっ。女の子の様子をよく見ながらぁ♡」

 的確なアドバイスにより動きやすいやり方をすぐに理解した少年の腰振りは、初めのぎこちない動きとは比べ物にならないほどにスムーズである。

 ミユが手淫によって少年を絶頂に至らしめた時と同じような早いペースで、彼は腰を前後に揺すり続ける。

 もはや自分の意思では腰が止まらない。ただ快楽を追い求めるように、細い腕に力を込めてアンドロイドの偽物の尻肉を掴みながら、ぱんっ、ぱんっ! とリズミカルに腰を動かす。

「んっ、あっ、ああっ、だ、だめっ、そ、そんなに、はげしくしたらぁ、んっ♡」

 ミユもそれを拒もうとする意思を示すが、しかし漏れ出る喘ぎ声や弱々しい拒絶は男の本能や嗜虐欲を刺激するだけ。加えて人工膣も精液を搾り取るために最適化された動作をすることで、ますます窮地に立たされるだけであった。

「先生、先生っ、ヤバ、いっ、イくっ!」

「やっ、こここわれちゃ……ぁ熱っ! んっ、やんっ♡ 『ほんとうはぁっ、ダメ、だけどぉっ……♡♡』、射精、しそう、に、なったらぁっ、腰を奥まで、突き出してねぇっ♡」

 拒絶する声とは裏腹に、捻じ曲げられた思考はあくまで中出し射精を推奨する。彼女の口からは人間の体温より高い温度に熱せられた人工唾液がびちゃびちゃとこぼれ落ちて机を汚し、絶頂直前の膣内の様子を模倣する女性器ユニットは、狂った強度で男性器をねちっこく締め上げる。

「ん、イ、いくっ、いっちゃ、ぁ、あぁっ……だ、だめ〜っ♡」

 脳髄を震わせる甘い声と、陰茎に加わる過剰な刺激によって、少年はミユの膣内にぐりぐりと肉棒を押し付けて精液を放った。機械仕掛けの膣内は放出された白濁液を回収しようと、ぐいんぐいんと波打つような動きにシフトし始める。

 少年はむっちりとした尻肉を掴む手に、より一層力をこめた。彼の背中がびくん、びくんと反るたびに、尿道から精液が駆け上って人工の蜜壺へと放たれてゆく。

「だめ〜っ♡ だめ〜っ♡ だめ〜っ♡ だめ〜っ♡ だめ〜っ♡」

 くったりと倒れ込んだ後も、ミユは嬌声を上げ続ける。その声はコピー&ペーストしたようにずっと一律だ。膣内の蠕動運動も一定の動きを保ち続けているが、緩急がなくなっている。

 少年はにゅむにゅむとペニスを吸い上げ続ける人工膣からなんとか身を離し、アンドロイドの顔の方へと回り込む。ミユは目を見開いたまま絶頂時の喘ぎ声を喉奥から漏らし続けていた。

「だめ〜っ♡ だめ〜っ♡ だぁめ〜めめめめっっ♡ ddddだだめ〜〜〜めっ♡ ガガぁめ〜ピキュイッ……」

 不慣れな性行為指導、ウイルス、そして種々のアプリケーションの並列動作の三重苦によって限界を迎えたメインシステムは呆気なく崩壊を迎える。机に突っ伏していたミユは少年と自身の脚による支えを失い、ずるずると床に引き寄せられるように倒れた。

 ガシャン、と大きな音を立てて倒れ伏したアンドロイドの体内から内部機構の唸りが収まる。空気が抜けるような音と共に体の先端から力が抜けていき、一分も立たないうちにシステムの稼働が完全に停止してしまう。

 少年は流石にミユの様子を心配していた。股間から精液と人工愛液のカクテルを漏らし、柔らかな乳房は床と腕に挟まれてぐにゃりと潰れてしまっている。しかし再びミユの体内から排熱のファンが唸るような音が聞こえ始めると、数十分前と全く同じシステムメッセージが流れた。

「再起動プロセスを開始しています。しばらくお待ちください」

 再び駆動音が大きくなり、各部の動作確認を行う。「起動します。本機体に近づかないでください」のメッセージの後、少年はミユが再び動き出すことを期待していた。

 ——だめ〜っ♡

 びくっ、と体を震わせたミユは再び口から甘い声を一度だけ出した。しかしそれもすぐに止み、アイドリング状態に入ったかのように体内の駆動音も静かなものへと変わっていく。

「システムの起動中にエラーが発生しました。アプリケkkkk……ーションの動作に必要なファイルが破損していいいる可能性があります。再起動を実行しザザッます……」

 ミユはこれまでとは異なるメッセージを発した。まぶたや指先が彼女の制御下を離れたかのようにピクピクと不随意に動く。時折思い出したかのように口からノイズを吐く彼女の目は焦点が合っておらず、アイカメラの絞りが不審な収縮を繰り返し続けていた。

「システムの起動中にエラーエラーエラー……リケーシssョンの動作に必要なファイルが破損シ……ガピュいる可能性がザザザ……。再起動を実行シマまます……」

 システムメッセージにすら次第にノイズが混じっていくミユに対し、少年は成す術がない。狂った笑顔を浮かべながら再起動しようともがき続ける女性型の機械がこうなってしまったのは、下半身裸のままオロオロとして滑稽な姿を晒す彼に全責任があるのだ。

「繧キ繧ケ繝?Β縺ョ襍キ蜍包ス具ス具ス具ス具ス具ス玖オキ蜍穂クュ縺ォ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ??ス抵ス抵ス擾ス堤匱逕溽匱逕滂ス?ス撰ス撰ス鯉ス会ス?ス?ス費ス会ス擾ス主虚菴懊↓蠢?ヲ√↑遐エ」

 ——ブツンッ……。

 哀れな教師型アンドロイドは好き放題ノイズを吐き出したのち、今度こそ完全に動作を停止した。愚かな学生の思いつきによって中枢部分が破壊された彼女は、再び起動することなどもはや望むべくもなかった。

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