救聖天使ブライトハート 12話「新たなる救聖天使?オーロラシャイン登場 前編」 (Pixiv Fanbox)
Content
※ちょっと長くなったので、前後編とさせてください。今月は前編・2月は後編(共に勝利編)3月の更新で後編の敗北編を連載予定です。前編の敗北編は取りまとめ書きおろしになる予定ですので、お楽しみに!
挿絵 福玉死瘟様 さーばーふぇいず様
「ふぅ…」
放課後の教室の机で、灯はため息をひとつついて物思いにふけっていた。
昨日の一件…暴走したエンヴィを何とか止めることが出来たものの、力尽きかけた灯を、謎の女性が救ってくれたことを思い出す。
その姿は救聖天使になった灯によく似ており、同じような浄化の力でエンヴィのマイナートに侵された一般市民を救ってくれた。
灯はその場で気を失ってしまい、気が付いた時には寮の自室でベッドに横たわっていたため、女性の正体はわからずじまいだった。
「あの人が助けてくれたのかな…」
灯が気が付いたとき、エンヴィも横で寝ていたが、その後朝になっても目を覚ますことなく寝息を立てていた。
昨日の事態を考えるとエンヴィ一人をおいていっていいものかと思ったが、起こすのもかわいそうに思い、灯は学園へと投稿したのである。
「エンヴィの事も心配だし、一旦寮に帰ろう…」
今日は図書委員の仕事もなく、透子も部活に行くといって早々に教室を後にしていた。
昨日のもやもやを引きずっていてもしょうがない…灯はまずはエンヴィの様子を見るために寮へと帰ることにする。
立ち上がって教室を出る灯であったが、昨日の消耗もあってぼーっとしていた為、廊下に出た瞬間に一人の男子生徒にぶつかってしまった。
バランスを崩し、よろけそうになった灯を男子生徒が軽く抱き留める。
「あ…すみません!ぼーっとしてしまって…」
顔を上げた灯の目に飛び込んできたのは、心配そうに彼女を見つめる生徒会長『風間零士』の顔であった。
「おや…君は…ふふ、今回は転ばなくて済んだようだね。」
以前、オウマを見つけたエンヴィに急かされて、廊下で風間とぶつかってしまったことを思い出す灯。
灯は以前と変わらずはしたない姿を見せてしまったことに赤面してしまう。
「何度もすいません、風間先輩。」
申し訳なさそうに風間を見かえすと、彼は優しく微笑んでいた。
「久瀬灯さん…だったかな。体調不良なら保健室まで送ろうか?」
優しい言葉をかけられ、灯はまた別の意味で赤面しそうになってしまう。
「あ、あの…大丈夫です!ご迷惑をおかけしました~!」
ぺこぺことお辞儀をしてその場を後にする灯。
その様子を微笑みながら眺めている風間の瞳の奥でかすかに闇が蠢いていたことに、この時の灯は全く気付くことはなかった…
以前も風間に助けられたことを透子にしゃべってしまったことで、気があるんじゃないかとからかわれていた灯。
その時は否定したものの、二度までも至近距離で接したことで、灯の気持ちにもわずかな変化が生じていた。
「もうっ!透子ちゃんがあんなこというから!」
赤面しながらも、廊下を曲がった先で息を整える灯。
落ち着きを取り戻した灯は、ふと学園の中にマイナートが漂う気配を察知する。
「…!いけない!もしかしてまた学園内にオウマが!」
灯が気配を感じた先を見遣ると、そこには学園内に設置された教会の礼拝堂が見えた。
「何もなければいいのだけれど…」
灯は礼拝堂へ向けて歩みを進めていく。
その様子を、廊下の少し先で一人の女性が見つめていた…
「いやー、氷神先生、お待たせいたしました!」
壮年の男性教師が若い女教師に声をかける。
呼ばれた女性『氷神愛菜』は笑顔を向けて首を軽く振った。
「いえ、お忙しい中、案内ありがとうございます。」
新任で春桜学園に来ることになった愛菜…
彼女を案内する役を仰せつかった男性教師であったが、何かトラブルがあったようで、案内中も頻繁にスマホを取っては頭を下げていた。
「あの…あとは自分で回りますので…先生は業務に戻っていただいても…」
愛菜のその申し出を待っていたとばかりに破顔する男性教師。
「いや、忙しなくて申し訳ない!そう言っていただけると助かります…最近学園内で不穏な出来事が多くてですねぇ…」
愛菜もその辺の事情は理解していた。
彼女がこの学園に来ることになったのも、語呂月とかいう淫行教師が逮捕・懲戒免職になったことがことの発端であった。
説明もそこそこに愛菜を置いて職員室へ帰っていく男性教師。
愛菜は先ほど廊下の先にいた女生徒のことを思い出していた。
一瞬学園内で感じた『あの』反応に、彼女も気づいていたような…
「やはり昨日のあの子…様子を見に行った方が良さそうね…」
愛菜は遠目から、怪しい気配の立ち込める礼拝堂の様子を注意深く伺うのだった…
灯が礼拝堂へと向かった時間から30分ほど前…
寮の灯の自室では、エンヴィが目を覚ましていた。
「ふあ〜あ…よく寝たデビねぇ…あや、灯ちゃんたらアタイを置いてっちゃったデビ…薄情デビ!」
昨日は灯と植物園の奥にオウマを倒しに行って…
行って…どうなったデビっけ?
エンヴィはすっぽりとその後の記憶が抜け落ちていた。
自分が暴走したことなど、当然記憶になかったのである。
「むにゃ…これからどうしよデビ…」
▶︎「灯ちゃんに会いに学園までいくデビ!」
「眠いから二度寝デビ〜!」
「おうちにいても暇デビ!灯ちゃんに会いにいくデビ〜!」
エンヴィは寝起きの夢心地のまま、フラフラと学園に向けて飛び立つのだった。
「誰もいない…」
灯は礼拝堂へと入っていったが、今日は特に部活動での使用等もないのか、堂内は無人であった。
しかし次の瞬間、灯の背後で扉がバタンと閉まって鍵がかかる。
「ようこそ、久瀬灯くん…いや、ブライトハートとお呼びした方がいいかな?」
礼拝堂の中心に鎮座する大きな十字架の影から、一人の青年が現れる。
その姿は学園の関係者とは思えない、中世の貴族のようなものに見えた。
「なぜ私の名前を…ここに閉じ込めてどうするつもりですか!?」
ブライトハートのことまで看破されているなら問答は無用か…
灯の表情に緊張が走るが、青年はクク…と笑いを堪えている様子だった。
「せっかくこの間は挨拶までしたのに、忘れてしまったのかい?俺の名前はシエロ。今度こそ覚えて帰ってくれよ。」
青年の姿に覚えはなかったが、彼が放つマイナートにはなぜか既視感を感じてしまう灯。
そして、なぜか身体の中からジワリと熱い何かが込み上げてくることに戸惑ってしまう。
「その禍々しいマイナート…イヴィルシードに関係しているとみました!正体を明かしたらどうですか!」
恐怖を感じながらも啖呵を切った灯に、シエロは感心したように微笑む。
「フフン…それなら力づくで聞いてみたまえ!」
手から球体状に固めたマイナートを投げつけるシエロ。
灯は倒れ込みながら避けると、戦いへの覚悟を決める。
「まずは大人しくしてもらいます!ホーリーライトアップ!ブライトハート!」
灯を眩い光が包み、その中から救聖天使がその姿を表す。
「闇夜を照らす一条の光!救聖天使ブライトハート、光臨です!」
ハートの登場に、何かを思い出したように舌なめずりをするシエロ。
「まずは小手調べだ!いけっ!」
シエロの背後から無数の触手がハートへと襲いかかる。
「こんなもの!エンジェリングスラッシュ!」
ハートは手に纏った光輪を駆使して、まとわりつく触手を排除していく。
「うむ…なかなか戦い慣れてきているようだな…だが…」
ハートの奮闘に驚きながらもまだまだ余裕綽々のシエロは、パチンと指を鳴らした。
するとハートの下腹部に、ピンクの淫紋が現れ怪しく光る。
「…!?これは…んっ…」
ハートは身体の内側から込み上げる熱さを感じ、それに反応するかのように胸には乳首がぷっくりと浮かび上がった。
「いきなり動きが鈍くなったじゃないか!そら!」
シエロのけしかけた触手がハートにまとわりつき、礼拝堂の中心にある十字架へと彼女を磔にしてしまう。
「くぅ…放しなさい!」
苦悶の表情で身体を捩るハートの前に、シエロが笑みを浮かべながら舞い降りる。
「ふふふ…こういう不調は初めてではないだろう。夜中に自分を慰めることも多かったんじゃないか?久瀬くん…」
あえて灯の名で呼ぶことで、嫌な記憶を呼び覚まそうとするシエロ。
「…!…それは…」
確かに最近、灯には夜中に身体が疼いてしまうことがあった。
そういう時、灯は自分で自分を慰めていたが、イった後は眠りについてしまうことがほとんどだった。
淫夢をみたのかと、自慰行為を現実として受け止めきれていなかったのである。
「あれはあなたの仕業だったのね!うぁぁ…」
怒りの表情でシエロをにらみつける灯であったが、そんなことは意にも介さず触手がコスチュームの胸をはだけさせてしまう。
「くくく…悪くなかっただろう?このままゆっくり弄んでやるぞ!」
キィン…キィン…
夕闇の礼拝堂の中で、艶めかしい触手の音とハートのコアジュエルの点滅音だけが怪しく響く。
「やめてっ…はなして…」
哀願を拒むように十字架を囲んだ触手がハートの身体にまとわりつき、乳首や口を責め立てる。
このまま凌辱の宴が始まってしまうのか…
礼拝堂の外には夕闇が迫ろうとしていた…
後編に続く…