ネコノアナ~腹パン地獄 第5-2話 (Pixiv Fanbox)
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バシッ!
「ぐぶッ!」
「跡見選手のストレートが直撃!これまで無敗を走っていた姫川選手だったが、ここで折れてしまうのか!」
「リングのアイドルだって?私は、お前みたいに顔丈信じて目立つ奴が一番むかつくんだよ!」
夜遅く、船内地下投機試合を織慧がいのりを連れて観戦していた。
「姫川さんが不利に見えますね。」
不利だって? 一見もっと殴られているのは確かユメミだった。しかし…。
「変ね...。あざがふえているのは相手の方じゃない。」
「…スリーピングアウェイ。」
いのりがぼそっと吐き出した一言に、説明を要求するように織慧がいのりを振り返る。
「多分姫川さんはパンチに当たる直前に頭を回転させて衝撃を流せています。意識して使っているとは思えませんが、相当な動体視力ですね。」
その時、ユメミを追い詰めた相手選手がユメミの足につまずいて格好悪い姿で倒れる。
「おっと!試合中に足を踏み外すなんて。跡見選手、興奮しすぎてしまったのか!」
「立てますか?」
遠くから見ると転んだ相手に手を差し出すようなフェアな様子だったが、ユメミの顔は明らかに相手を見くびるような顔をしていた。
「こ、こいつ!」
ユメミの挑発にむっとした相手選手がレフリーを押しのけて立ち上がると、姫川の手を振り切って拳を飛ばす。
バン!
「跡見選手!姫川選手の手を振り切ってダーティープレーで応酬する!」
「あ、あんな卑劣な…!国宝同然のユメミちゃんの顔になんてことを…!みんな、それは持ってきたんだろ!」
リングの外から試合を観戦していたオタク達の中、リーダーとみられる男が指示を出すと、5~6人ぐらいの取り巻きがバックパックからペンライトのようなものを取り出す。
「ぶほおっ!ユメミちゃんにみんなの力を分け与えるんだ!」
彼らの応援が届くかどうかはさておいて、相手選手に一方的に殴られたユメミが倒れるようにロープに身をかける。
「これで終わりだ!」
相手選手がけりをつけようとユメミに襲いかかるその瞬間、ユメミが待っていたかのようにロングツインを振りかぶって相手選手の目を攻撃する。向き合うふりをして偶然を装った反則技だった。
「目、目が…!ぶげえぇぇッ!!」
いつの間にかユメミのボディーが相手の下腹の奥深くにめりこみ、内臓を蹂躙していた。
「残念だが、これでタイムオーバー。 もう舞台から降りる時間よ!」
視野を失って拳をぶんぶん振り回すが、そのような盲目のパンチは、必要以上の華やかなステップを踏むユメミを浮かばせるだけだった。
メギィッ!!ズドォォンッ!!ドズゥン!!
ズドオォォソッ!!
「ぐぶうえぇえぇぇぇッー!!」
「もう帰るんですか?」
いのりの問いかけにも拘らず、織慧はもう用がないと言うように客席を離れる。
「もう見る必要もないじゃない。これ以上は時間の無駄よ。」
いつの間にか人々がリングに上がって、血だらけの相手選手をストレッチャーに乗せており、観客たちの歓声と注がれるスポットライトがユメミの完璧な勝利に賛辞を送っていた。
試合が終わった直後、ユメミの控え室の前にはさっきのオタクたちが集まっていた。
「俺たち夢美ちゃんが勝つと信じてたんだぜ!」
「せっ、拙者の応援がユメミちゃんに届けたんですか?」
「みんないつも応援に来てくれてありがとう!みんなの応援があったから、今日もユメミ頑張ったんだよ。」
「これ、今日のユメミちゃんの誕生日を迎えて、ほんのささやかですが、拙者たちが準備したものです。」
リーダーに見える男を筆頭に、それぞれ持ってきた高価な贈り物を取り出し始める。 彼らが持ってきたブランド品の贈り物は、本人達が着ている安物と比べて明らかに差があった。
「ほんと、こころだけでも、うれしいのに、みんな、無理しているんじゃない?」
「ここでユメミちゃんが受ける苦痛に比べればこんなこと何でもないですよ。アイドル復帰まであと1勝。拙者たちは応援しかできないんですが、どうか頑張ってください!」
「みんな…アイドルに復帰してもここでみんなが応援してくれたこと、夢美は一生忘れないよ...。」
涙ぐむユメミの姿に深い感銘を受けたオタクたちが一斉に歓声を上げる。
「うおぉっ!ユメミちゃん大好きなんだぜ!!」
(きったね!きったね!きったね...!!)
ユメミが洗面台で手の皮がむけるほどごりごり洗っている。
「うっ、くっさ…!ばかみたいなオタクたち!人の手を触るなら少し洗ってよ!」
洗面を終えたユメミが再び控え室に入ってくると、午前中に織慧をリンチしたユメミのちんぴらたちが、オタクたちが持ってきたプレゼントをまさぐるっていた。
「キャハッ!今日も大魚だよ!大魚!」
「おまえ等、人の戦利品に先に手を出しているなんてありかよ?」
「ただ触ってみただけだってば。でも本当間抜けな奴らだよ、自分たちがATMだということも知らずにきちんとこんな物まで捧げて。」
「このイヤリングについている宝石、すごく大きい!目茶高いんじゃないの?」
「だせぇ!私はいらないからお前たち同士分け取りすれば?」
ユメミがイヤリングを地面に捨てるように放り出すと、ちんぴらたちが飛びついて髪の毛をつかんでけんかを始める。
「どけよ!くれと言ったのは私だろ!」
「このあま!先に拾ったのは俺の方だろ!」
ちんぴらたちが床に落ちたイヤリングをおいて御互いをかみちぎっている間、ユメミが控え室を出てタバコに火をつける。
(ふん、どいつもこいつも頭空っぽな間抜けばかり。私に似合う人は矢張りあの人しか...。)
「姫川さん?面会要請がありますよ。」
ユメミを訪ねて控え室を訪れた関係者の呼び掛けに、辛気臭い声で答える。
「こんどはだれですか?」
「和弘という方からのリクエストです。」
(来たぁ!)
和弘という名前に顔色が戻ったユメミが息を切らして面会室に向かう。
高級ブランドのスーツを着て来た男は、少し未成熟に見える坊ちゃんのような感じがしたが、かなりの美青年だった。
「和弘さん!」
「ユメミ!なんてことだ...僕の天使の顔が…!今まで自分たちの借金のせいでお前をこんな所に押し入れた親のため大変だっただろう?お互い様だよ。お父さんは僕の言うことなんか全然聞かない。できればすぐにでも君を取り出してあげたかったが、僕の力がこれしかなくてむしろごめんね。」
「う~うん、そうじゃない。和弘さんには分に余るものを沢山もらったもの。つらいだったけど…私、和弘さんのこと思いながら堪えることができたもん。」
「ここから出ることになれば君を私の専属使用人としておく。あっ 、勿論!君をずっと使用人にするつもりはないよ!ユメミにはアイドルとしての夢があるもの。そしていつかは…!」
「和弘さん...!」
あと1試合だけ勝てばここから抜け出せる!
これからある幸せな未来を想像して、ユメミの胸は大きく膨らんでいた。
ついに、ユメミにとって最後の一戦の時が来た。お互いの運命をかけて二つの地下の猫がリングの上で向き合う。
「最後の相手、どんなすごいやつかと思ったらパイセンじゃないですか。またゴミ箱に入りたいようですね。」
「あんた、此の前に言ったよね。ここで勝てば卒業だって。ということはここで負けたら留年ってこと。そうだよね?」
「あなたの実力でそれができるかと思って?ともあれ、パイセンさんを最後の相手に指定したあのマネージャーも本当バカですね。それとも憎い毛がはえたとか?」
「ふん、余り先輩を嘗めるとどうなるか、気になったら今教えてやるわ。」
カーン!
ズバン!!
「おっと、開戦と同時にクロスカウンターだ!」
(んっ!こ、こいつ...!)
織慧をなめていたユメミは、予想外の重いパンチに少し狼狽する。
「今日お前の其の化けの皮を剥がして、ゴミ箱に打ち込んでやる!」
Note : 次の投稿で勝敗を決める投票がある予定です。
(There will be a vote to decide the winner in the next post.)
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