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涼子戦での敗北のせいか、その後織慧はもうリングには上がらず、8ヶ月の時間がたった。

遅い午後、帰りを急いでいた織慧が近道を選んで狭い路地を通っていた時だった。 コーナーで突然飛び出した覆面の男性が織慧の腹部に拳を突き刺す。


ボコッ!

「ぐうッ!」


突然の襲撃にあわてた織慧が目前の男たちに向かって一喝する。

「がはッ...!く...!あんたたち、一体何?私が誰だと知ってこんなことをするの!」

とても女一人では手に負えない状況。目の前の男たちを警戒してハンドバッグに手を突っ込んだ瞬間、後ろから3番目の男が織慧の両腕をつかむ。


「しまっ・・・!」

ゴンッ!


織慧の腹部に深く刺さる2番目のボディー。


「おッ・・!ぶおッ!」


織慧が口から胃液と一緒に胃腸の中身を吐き出す。かすむ視界を最後に織慧の意識が途切れる。

....

...

..


「まだ寝てんのか。おこせ、今すぐ。」

「くっ!」


頬を叩く衝撃に目覚めば、そこは見慣れた風景の事務室だった。


「やっと目覚めたようだな。お姫様。」

「おまえは・・!?」


目を覚ますと、高圧的な雰囲気の女性がテーブルに腰かけている。伊勢島 詩津嶺。元ネコノアナのボクサーで現ネコノアナの総括マネージャー。織慧に初の敗北をもたらした人物だった。

...

..


約1年前の猫の穴の地下ボクシングリング。織慧が倒した相手選手を踏みつけて、したりげな顔でマイクを握り、観戦中の伊勢島を挑発する。


「地下リングのボクサーって、こんなものなの?私を倒すにはもっと強い奴を連れてきた方がいいわよ、お、ば、さん?」


当時、織慧は地下ボクシングデビュー以来、6戦全勝無敗。織慧の挑発が効いたのか伊勢島が額に青筋を立てる。それから数日後、7番目の試合を行うことになった織慧は、今回の対戦相手の正体を知って少し戸惑ったが、すぐいつもの生意気な顔で相手を挑発する。


「強い相手を連れてこいと言ったのにマネージャーのおばさんじゃない。あるべき場所を間違えたんじゃないの?」

「ふん、勘違いしてるのはお前のほうよ、このくそガキ。商品価値がありそうで祭り上げただけなのに身の程知らずにでしゃばるなんて。きょうおまえの腐った根性をたたき直してやる!」

「へえ、ちょっと自信あるみたいけど、あんたより幼い女の子に殴られて泣くんじゃないわよ、おばさん。」


試合開始と同時に繰り広げられる織慧の速攻。序盤から勝機をつかむというように織慧のパンチラッシュが伊勢島を圧倒しているように見えた。しかし、第2ラウンドに入った途端、急変した伊勢島の攻勢に戦勢は一方的に伊勢島の方に傾いた。


「ふふ、慌てたみたいだな。てめえの動きが読まれるみたいで。」

「調子に乗るなよ!紛れで何発打たれただけよ...!」


「えぶっ...!がはっ...!」


下腹部深く突き刺さるボディー。その抵抗しにくい威力に体を支えきれず、喉まで上がってきた胃液を吐き出す。


「今までの試合を見ると、ここがてめえの弱点だとくらい簡単に分かる。」

「ど、どうかな...?これしきのパンチ、 何度食らっても平気...ぶへっ!」

「ふふ、いつまでそんなに強がっているのかな?」


「ぶッ!!ぶおッ!!ぶえぇッ!!」

「賞品としてあつかえと指示があって、好きかってにしておいたら調子に乗りやがって!てめえはこのリングの商品それ以上でも、それ以下でもないわ。今日きっちりと身の程を知らせてやる!」

頭に血が上った伊勢島がロープに追い込まれた織慧をなぐり叩く。もうグロッキーになった織慧だったが 怒りのこもった猛パンチは止まる気配を見せない。


「ぬおッ!!」


ストレートが織慧の顔面を壊してマウスピースが宙に跳ね上がる。6戦全勝のプライド高かったスーパールーキーがむごたらしく倒れ、ロープの外に投げ出される。


「あぁ...あっ...ぶえぇ...。」

「ケッ、くそ餓鬼が、手間かけさせやがって。」


「すこしやりすぎたんじゃないですか?」


赤い髪の女性がリングに上がって、伊勢島を叱責するが、織慧の視野からはその姿がくわしくわ見えない。


「行き過ぎ・・・と?あんたがそんなことを言う立場・・・このガキはあんたの・・・。」


何か2人の間で会話が行き交ったが、意識がもうろうとして、よく聞こえない。その日のマッチについて織慧が持っていた記憶はここまでだった。

...

..


「こんなことをして許されると思う?」

「おめえが無駄に姿を消すから、こんな強硬手段を取るしかないだろぉ?」


厚かましい女だと思いながら悪口が出るのをじっと我慢する。ここで食いかかるたって自分だけ不利になるだけだ。


「今さら何の用よ!リングに上がるのはもうやめた。」


警戒する織慧に伊勢島が書類を一つ差し出す。


「これ何だと思う?」


書類には織慧の不在で取り消された試合の違約金に関する内容が書かれていた。織慧が知らない試合の内容まで、その金額はとても個人では手に負えない額だった。


「こ、こんなのいんちきよ!私には何の連絡も...!」

「連絡はした。一方的に無視したのはおまえだろ?書面交付項目にもサインしたじゃない。おまえの契約書にもちゃんと記載したはずよ?」

「ふざけないで!この詐欺師!やってられないわ、歸る!」


織慧が事務所を出ようとすると黒いスーツの男たちが入り口をふさぐ。


「くっ...!」

「相変わらず空気読めないガキだね。」


伊勢島がもう一枚の契約書を取り出す。


「なにをこれ...。」


猫の穴の借金を抱えた債務者が返済できなかったり、能力がないと判断された場合、猫の穴に拘禁され、選手としてリングに上がらなければならないという一種の終身契約書。そこにはどこかで見覚えがある聞きなれた捺印もあった。


「ちゃんと見えるでしょう?お前の保護者の捺印。」

「誰がそんなものを...!」


確かにお父さんは恋人が何人かいるんだけど、まさかお母さんがいないと言って 知らないうちに戸籍を…?一体誰が?く...!すべて罠だった!早くここから抜け出せないと...!


そう思った織慧が事務所から離れようとするが、入り口にも及ばず、男たちに捕まってしまう。


「放せ!」

ボゴッ!!

「ぶッ...!!」


男たちに捕まって踠く織慧の腹に伊勢島の拳が突き刺さる。備えなかった不意の一撃。殴られた場所が良くなかったのか、織慧は今にも失神するように白目になって股の間から尿が漏れて床を汚す。


「ぶッ...ぬおぉ!!」

「相変らず弱いボディーね。本当、発展のないガキよ。」


ボディーを殴られて苦しんでいるうちに首の後ろからチクッとした感触が伝わるとだんだん視野が暗くなる。


(くそ...くそ...!)

「今の機会に夢でも沢山見てな。もうあんたには悪夢を見る余裕もないから。」


伊勢島の言葉が段段離れる感覚で織慧の意識は途絶える。

....

...

..



再び目を覚ますと、織慧が降り注ぐ強い明かりに眉をひそめる。


「くぅ...!ここって...?」


目をさました織慧がいるところは猫の穴の地下ボクシングリング。手が圧迫される感覚に両手を上げるとグローブが着用されている。


(ジハリング?いつの間に...!)


身体に何か措置を取ったんじゃないかと点検して、そんな痕跡は見つけられなかったが、先ほど眠りから覚めてだるくなっている体は、コンディションが万全とは言えなかった。


「青コーナー!戦績6勝2敗、元スーパールーキー。 柚花 織慧!」

「どこで何をして、今現れた!」 「おめえのせいで損がいくらか知ってんのか!」 「くたばってしまえ!」

(くっ!うるさい豚ども... お前らなんか知ったことか!)

「赤コーナー!戦績9勝10敗、リトルピギー藤中 千恵子!」


中継陣のコメントに反対側のコーナーを意識すると、かなりの体脂肪率の太った選手が見える。ボールが鳴る直前、リング中央で互いの顔を確認する。


(こいつ、どこかで・・・?)


どこかで見覚えのある顔 。相手選手が織慧を見て口笛を吹く。


「今回復帰する崩れボクサーがいっだと聞いて、誰かと思ったら先輩さんだったとは。ボディーを差し込むフォームがもしやと思ったんだけど、これは幸運ですね。」

「思い出した。弱そうな下級生おカツアゲしたあのちんぴらじゃない。また腹に一発殴られて運ばれたいの?」


千恵子が織慧の目の前で脅すように自分の両拳を打ち合わせる。


「ペッ!腹なぐられて運ばれるのはどっちなのか。この機会に徹底的に思い知らせてあげましょう!」


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Note : 事実上のプロローグです。無駄に文章が長いので誤訳だらけかもしれません。

鈴ちゃん1話でアクションシーンが少なかったと思ったので、できるだけボクシングシーンを描く方向にしました。やっぱメインはイラストですね。文はそえるだけ。

千恵子戰に対する投票はエピソード3話で行われる予定です。


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