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夜のペットショップは少し不気味な空気だった。安眠を遮られ気が立った犬猫たちの差すような警戒の視線、静かに気を張りつめらせる爬虫類たちの力強い眼光。獣の匂いに加え、閉店して時間が経っているので始末されていない新たな糞尿の匂いもわずかに漂う。声を立てると犬猫たちが吠えそうな空気だったので、私は思念で直接春香に問いかけた。 (本当にここであってる?) (妖気はここへんから感じるんだけど) 私たち二人は退魔士として、夜のショッピングモールを訪れていた。最近ここで妖怪が悪戯をしているらしいということで依頼を受けてやってきた。モール内に残るほのかな妖気の発生源をたどった先が、このペットショップだった。 (これは妖気というよりも……) 痕跡ではない、源の妖気を確かに感じる。もう少し奥……カウンターの方だろうか。ペットたちが放つ苛立ちと獣の緊張感に気を取られ、私たちは罠に気づくのが遅れた。 (違うっ、これは術式……!) 足元で陣が輝き、防御する間もなく私たちは敵の術中にはまった。妖気で霊気を巧妙に隠す、単純だが非常に高等なトラップ。まさか人でなく妖怪がそんな手の込んだことをやってくるとは思っていなかった。動物たちに気を遣い、店内の明かりを点けなかったのも床に描かれた陣を見逃す原因になった。 (やられた……) 頭を腕で守りながら構える。なんの術をかけられたかもわからない上、いつ妖怪本体が攻撃してくるかもわからない。陣の光が消えて消滅しても、私たちはその場に立ったまま周囲を警戒し続けた。 「……変じゃない?」 春香が怪訝そうに小声で話しかけてきた。 「特に何も変わらないんだけど」 「……そうね」 こういうのは大体退魔士の霊力を封じるか金縛りにでもかけるのが一般的だが、身体は動くし霊力も変わりない。ただ、経験したことのない奇妙な妖しい違和感を全身に感じだした。ただ、それが体に何か直接作用して悪さをしている様子はない。一体何の術をかけられたのだろう。 緊迫の数分を経て、 「……出た!」 背後――店の外に妖怪の気配が現れた。瞬時に通路へ出ると、姿を隠すでもなく堂々と敵が宙に浮かんでいた。 「な、なにあれ?」 静まり返った深夜のショッピングモールに浮かぶ、年季の入った汚いパレット。シュールな光景だった。あれが今、モール内で騒ぎを起こしてる妖怪の正体……? いささか毒気を抜かれた私たちをしり目に、パレットはすーっと空中をホバー移動して逃げ出した。 「あっ、待ちなさい!」 私が駆けだすと同時に、春香が叫んだ。 「里奈!?」 「なに!? こんな時に」 「頭! 頭大丈夫!?」 「はぁ!?」 いきなり何を言ってるのさと思った瞬間、神経が繋がった。私の頭上と……お尻から生えた、あってはならない異物の感覚が徐々に明瞭になってきた。恐る恐る頭に手を伸ばすと、モフモフした毛と柔らかい三角の耳が指に触れる。目の前で同じように困惑している春香の頭にも、それは生えていた。大きな猫の耳が。そして袴の中で揺れる細長い未知の触覚。そっとまさぐると、やはり毛の感触があった。 「うそぉ……」 私たちには、猫の耳と尻尾が生えていたのだ。 「な、何よコレ。いつの間に……」 引っ張ると痛い。耳も尻尾も作り物じゃなく、私たちの身体から直につながる生きた器官だった。さっきの術式はこれだったの? いや、まだ妖しい感覚は抜けていない。私たちにはまだ術がかかっている。そして不思議なことに、この耳と尻尾それ自体には妖気も他者の霊気も感じ取れない。生まれてきた時から私たちには猫耳と尻尾があったかのように、とても自然な存在にしか感じ取れなかった。 「こ、これ……変化の術じゃないよ」 簡単な変化なら苦も無く解けるはずが、どうにも耳と尻尾を除去することができない。「解く」ことができないのだ。つまり私たちには変化の術がかかって……いないらしい。 「あ~っ、くそぉ」 やられた。あんなパレットに。悪態をつきながら、私たちはまた妖気をたどりだした。あいつの移動経路は簡単に追える。まるでついてこいと言わんばかりに、己の痕跡をハッキリ残しながらモール内を飛んでいるようだ。 パレットを追いながら、私たちはお互いの猫耳を見てはちょっと気まずい思いを抱いた。自分にもあんな、アニメみたいにどでかい猫耳がデデンと生えているのかと思うと恥ずかしい。二人だけでよかった。人に見られなくて。 次についたのはアパレルショップだった。それもただのアパレルではない。高そうなフリッフリのロリータ衣装の専門店。シャッターが開いているので、奴が店内に入ったことに間違いなさそうだ。 今度はペットたちがいないので気兼ねなく店の明かりを点けた。床に陣はない。トラップはなさそうだ。慎重に妖気を探りながら、私たちはパレットを探した。 「こら出てきなさい! よくもやってくれたわね!」 猫耳生やしてロリータ専門店をうろつくのはあまり気持ちがよくない。まるで自分もお仲間かのようだ。こんなファッション興味ないし、絶対着ないし、と何故かそんなことを考えながら、私は自分たちに恥辱を与えた敵を捜索した。サッサと倒してしまいたい。もう。 しかしパレットは絵の具でダミーの気配元を多数配置していたらしく、中々本体を探し当てられない。猫耳と尻尾が生えてパニックしていた間に仕込まれたようだ。遊ばれているようでホント憎らしい。 「り、里奈~」 「いた!?」 情けない声を出す春香の方を勢いよく振り返る。すると……馬鹿馬鹿しい光景に私は空いた口が塞がらなかった。どピンクのすごい甘ロリ衣装に身を包んだ春香がそこに立っていた。 「何遊んでんの!」 「違うよ、気づいたら……って里奈も!」 「は?」 突然全身が重くなった。全身から心地よく暖かい肌触りと、ズッシリくる布の重量を感じる。自分の両手と足元を見てみると、そこに映ったのは春香同様、あまーいデザインのロリータ衣装の袖と分厚く広がるフリフリスカートだった。さっきまで着ていた退魔士の装束じゃない。袴はいつの間にか消失し、滅茶苦茶なボリュームのスカートと、肌にピチッと張り付く白タイツの感覚があった。 「へ? うそっ!?」 何で!? どうして!? 私、着替えてなんかないのに! なんの術にもかけられてないのに! 再びパニクる私たちをあざ笑うかのように、パレットは突然姿を現しそのまま店から通路へ飛び去った。吹き抜けのモール内をつっきり、奥へ消えていく。 「あ……」 また逃げられた。私は落胆した。モール全体に結界を貼ってあるからその外に出ることはない……が、またこの広いモール内を探索しなければならない。……おっもいロリータ衣装を着たまま。 トボトボとモール内を歩きながら、私は何度も自分に駆けられた変化を解こうと試みた。が、できない。そもそも私たちには何の変化もかかっていない状態らしい。 「ありえなくない? どうなってんのこれ?」 まるで「え、あなたたちは最初からこの姿でここに来たでしょ?」と言わんばかり。重いし動きにくいし恥ずかしいし、なんで猫耳ロリータで妖怪と戦わなくちゃいけないの……ホント最悪。 「うーん……それなんだけど」 春香が話しだした。この術は変化ではないのではないか、と。 「どういうこと? じゃあなんで私たち猫耳生えたり服が変わったりしてるわけ?」 「ほら、思い出して。耳と尻尾が生えたのはどこ?」 「ペットショップでしょ」 「うん。で、これはロリータのお店だよね」 春香は自分のスカートをつまみながらそう言った。 「これは想像なんだけど……」 彼女の推論は、私たちにかけられた術は「周囲の影響を受けやすくなる体質になる術」だったのではないか、ということ。私は最初よく呑み込めなかった。 「どういうこと?」 「つまりね、術で都度直接変化しているんじゃなくて、『私たちの体が勝手に変わってる』んじゃないかな……って。だとしたら『変化を解けない』のも説明できるし」 「は、はぁ!?」 聞いたことない、そんな術。第一そんなこと可能なわけない。周囲に染まる体質になって、勝手に周囲に合わせた姿になってしまう……という生き物に私たちはされてしまっている。あまりに突拍子もない話だ。第一そんなことやれる力があって、こんなまどろっこしいことやるなら直接私たちに攻撃した方が楽じゃない? しかし、次のステージで私は春香の推測が正しいかもしれないと考えを改めることになった。小さい子供用のカラフルなキッズスペース。もしも私が周囲に影響されて体が変わっちゃう生き物にされていたとするなら……。私はここで子供になっちゃうってわけ? そんなこと、ありえるはずはない。 ようやくパレットを見つけ攻撃をしかけたところで、ふと違和感を抱いた。なんか体の調子が……いい。体が軽いというか。 春香の話を思い出した私は、思わずせっかくの攻撃を中断し、キッズスペースから逃げ出してしまった。その際、いつもより体が軽快だし、全然疲れもしないことに気づいた。つられて一緒に飛び出た春香は不満げだった。せっかくのチャンスだったのに、と。 私は自分の両手を眺めた。厚いスカートの中に尻尾を宿すお尻の方も振り返る。幼児になったりはしていないようだけど……私の思い過ごしだったかなぁ。 「ごめんね、さっきの話が頭……に……」 自分で自分の声に驚いた。ハッキリ若い。高い。春香も気づいたらしく、慌てて自分の体をまさぐりだした。二人で仲良くトイレに駆け込み、鏡をのぞく。深夜のショッピングモールの通路では薄暗くて気づけなかったけど、照明をつけたトイレ内では自分たちの異変は明確だった。若返っている。そこには経験を積んだ退魔士の姿はどこにもなく、まだあどけなさを残す少女の姿が映っていた。 「あああー……っぶな……」 春香は安堵していた。幼児にまではならなかったことに。うん、そしたら完全に試合終了だった。ていうか今後の人生も相当面倒なことになっていただろう。いやこれでも面倒だけど……。鏡の中では、可愛らしい猫耳を生やした甘ロリ中学生が頬を染めて縮こまっていた。 「どうする……? いったん帰る?」 「冗談でしょ。猫耳と尻尾生やしたまま帰れるわけないじゃない」 ロリータはともかく、耳と尻尾は不味い。それに高名でもない妖怪一匹にここまでいいように遊ばれたのでは経歴と信頼にも傷がつく。何としてもあの憎らしい中古パレットをやっつけてやらなきゃ。 「で、でも困ったな。うかうかしてたらまたすぐ周囲の影響を受けちゃうってことでしょ」 問題はそこになる。速攻で決めなくちゃいけない。やり辛いな……。 その後、私たちはメイド喫茶のシャッターが閉じていないことに気づいた。さっき前を通った時は閉まってたはず。中から妖気も感じる。ということは……。 「め……メイド喫茶かあ」 げんなりする。何が起こるか嫌でも想像がつくし、してしまう。 「ま、まあかえって好都合じゃない? 服が変わるだけでしょ? 多分!」 激闘の末、私たちはパレットに大きなヒビを入れてやることに成功した。哀れな中古パレットは出血の代わりに濃厚な妖力を垂れ流しながらモール内を再び逃亡していく。しかしその姿は明らかに弱っていた。 「よし! あと一息ですね!」 「そうですね!」 気の置けない同い年の仲間なのに、何故か丁寧語で会話するようになってしまった私たちは、お互いの格好に顔を赤らめつつも励まし合った。フリフリの可愛らしいロリータ風メイド服に身を包んだ猫耳中学生がそこにいた。いよいよ見えるようになってしまった尻尾も居心地悪そうにゆらゆら揺れている。私も目の前のこの子と全く同じ格好してるのかと思うと……ううぅ……消えてしまいたい。 「う……ここは」 最終的にパレットが身を寄せた場所は、モール一階のイベントスペース。そこには九つの彫刻が展示されていた。なんとか彫刻展という企画をやっているようだ。看板によると触れる彫刻がウリらしく、どの彫刻もケースも柵もなく台座ごと大胆に設置されている。パレットはスペース内を弱弱しく漂っている。 あとちょっと……なのに、恐ろしく気乗りしない。私たちは眉をひそめた。行っていいの? これ。 「あの、まさかとは思いますけど……」 「私たち、彫刻になったりはしませんよね……?」 わからない。そこまでの大きな……非生物への変化が起こるようになっているのかどうか。流石にないような気もするけど、万が一ありえれば、本当にお終いだ。動くことも喋ることもできなくなってしまうだろう。見た目も彫刻なら、きっと誰も助けてはくれない。人間だなんて気づかないだろう。 「遠くから何とかしませんか?」 「それがよさそうですね」 難しいが遠距離から仕留めようと合意した時、パレットが自ら飛び出してきた。好都合……と構えた瞬間、私たちは構えを解かれた。 (っ!?) 背筋をピンと伸ばし、両脚を閉じて、両手をスカートの上に重ねてまっすぐパレットを見つめた。身体が勝手にそう動いたのだ。 「なっ何ですか!?」 いつの間にか、宙に字が浮かんでいた。パレットに媚びついていた古い絵の具が剥がれて紐のように伸び、空中に字を描いている。「整列」と。 「私たち……『メイド』なんでしたっ」 春香が気づいたが、もう遅かった。身体が言うことをきかない。従順なメイドとして奴の指示を……聞いちゃう。きかされちゃう……。 「まずいですよっ、逃げなくてはいけませんわ!」 しかし、パレットが宙で絵の具をうにょうにょ変化させ、新たな指令を出すと私たちの身体は私の意志よりそっちを優先してしまった。「来い」の指示に。 パレットはイベントスペースの中央に……つまり彫刻たちが立ち並ぶ中に進んでいく。私たちは姿勢よく静かにその後について歩かされた。逃げられない。やばい。何とかしないと。しかし体は言うことをきかない。さっきのメイド喫茶で受けた影響が……服と口調だけだと思ってたのに。 彫刻が並んでいない隙間に立たされた私たちに、とどめの指示が下された。「ポーズ」そして「待て」……。 「はいっ」 子供らしい可愛い声でいい返事をさせられた挙句、私たちはひとりでに可愛いポーズをとりだした。私は右手を、隣の春香は左手を招き猫のように掲げる。残った両手はお互い手を繋いだ。 泣き出したいような絶望的状況なのに、私たちの顔はそれを一切反映することを拒み、にっこりと微笑んだ。あとは最期の時を待つだけだった。 「た、助けてください」 「お願いです、やめてください……」 必死に懇願するも、宙に漂う「待て」の絵の具は形を変えない。足元に異変を感じる。唯一動く目線だけを動かし足元を見ると、床の柄と違う灰色の四角い枠が生まれていた。再びパレットに視線を戻して無礼を詫びて懇願するも、「待て」が消えない。徐々に目線が上がっていく。景色が下に移動していく。台座が生まれているのだと悟り、私は慄いた。 「ちょ……彫刻になんてなりたくありません……」 「やめて……やめてください」 景色の下降が終わると、今度は徐々に全身の筋肉が硬くなりだした。周囲に染まっていく。周りの彫刻の影響を受けて、同じ色に……私たちが……。 「たす……けて……ください」 徐々に喉も動かなくなっていき、全身が震えることすらなくなっていく。硬く冷たい何かに私たちの体が置き換わっていく。周りの彫刻に染められ、全てが灰色に塗られていった。 (こんな……ことって) (いやぁ……) ぴきっ、と硬いものが割れるような音が響くと同時に、全身から骨や血管の感覚が消え失せた。私たちは芯から外まで均質な石の像になってしまったのだ。もう目線すら動かない。可愛く微笑み、永久に前を見続けるだけの存在になってしまったのだ。 宙に浮かんでいた「待て」が消え、絵の具は再びパレットに戻っていった。しかし、もう全てが手遅れだった。指の一本も動かない。もはや私たちはこのイベントを彩るための彫刻でしかなかった。 パレットが去ると、ずっと体を包んでいた妖しい感覚がなくなった。 (あ……術が解けましたよ!) でも……私たちはうんともすんとも言えない。彫刻のままだった。術が解けたのに元に戻らない……最悪の展開であり、希望をゼロにする冷たい敗北だった。どうやら春香の言う通り、この石化は「パレットに石にされた」のではなく、周囲の影響を受けた私たち自身が勝手に彫刻と化しただけらしい。だから……パレットの術が解けても人間には戻れない。今や冷たい石の塊となってしまった猫耳も、フリフリのロリータ風メイド服も。 (こんな……こんなの、嫌です。何かの間違いです) (誰か……誰か助けてください、お願いですーっ!) 猫耳ロリータ彫刻メイドの心の叫び声はどこにも届くことがないまま、深夜のショッピングモールは元通り静まり返っていた。 朝。モールの営業が始まると、私たちの視界を多数の人が行き交うようになった。私たちは昨日と変わらず一ミリも動くことなくポーズを維持し続けている。寝て起きれば悪夢だったことにならないかと思ったけれど、そう都合よくはいかない。 (あ、ああ、あーっ、見ないで、見ないでくださいいぃっ!) (私たち彫刻じゃありませんっ、メイドでも……猫でもっ) 面白がって写真を撮られ、子供たちにベタベタ触られる、あまりにも屈辱的な新生活が幕を開けた。彫刻になってしまったことに気を取られ昨日はそこまで考える余裕がなかったけど……。こうして人々の視線、普通の格好をしたいたって常識的な人々の視線に晒された瞬間、自分たちがどういう格好をしているかを思い出し、死ぬほど恥ずかしく惨めな思いをさせられた。何しろ……猫耳に尻尾を生やし、フリッフリのロリータ風味のメイド服。それで中学生みたいな体格にさせられた上、笑顔でノリノリポージング。そんな痛々しい姿を彫刻にされて、永久に保存されてしまっているのだから。舌が動けばかみ切ったかもしれない。 (よりにもよって、なんでこんな格好でぇっ) もし……もし仮に彫刻にならなくてはならないんだとしても、流石にもう少しこう……常識的な格好で彫刻になりたかった。これじゃあ本当に見世物だ。彫刻としても下手物だなんて。 真っ昼間のショッピングモール。こんな非常識な格好してるのは私たち二人だけだ。恥辱と焦燥感が募る中、猫耳の先から尻尾の先端までカチカチに固まったまま、時だけが過ぎていく。視界に映る「普通の人」たちに混ざりたかった。私たちは本当ならあっち側なのに。人間で、普通のカッコで。でも、もう周りにいる人たちの影響を受けて、その色に染まりなおすことは不可能だった。術を解かれてしまったから。私たちの「色」は猫耳ロリータメイド少女の彫刻だと、確定されてしまったのだから……。 イベントスペースの企画展が終わっても、私たちはモールから出ることができなかった。モール一階の広場に改めて彫刻として設置されることになったのだ。より多くの人々の視線をその身に受けながら、永久に続く恥の地獄を私たちは否応なく耐え続けるしかなかった。周りにはいつも大勢の人がいる。影響を受けたい。人間に戻りたい。せめて常識的な格好をしたい……。そんな願いは聞き届けられることなく、私たちは何物にも染まらない、唯一無二の色を持ち続けたのだった。

Comments

浮生萌えでなら

『ハロウィの魔女』で見たけど、完全に猫になった作品もいつか見てみたいなー

opq

需要がありそうでしたら考えてみます。