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ep.1はこちら >https://x-model888.fanbox.cc/posts/1808754

下衆なアカルビス共め……!

長耳女と呼ばれていた奴隷に向けられていた兵等の下卑た罵声・嘲笑がまるで自分自身に向けられたように感じてしまう。

心中が怒りで熱せられ・同族を侮辱される悔しさから無意識に歯を食い縛る。

また少しずつ・幾つもの足音が近づいてくる。

音の数から・その人数は正確に兵士が三人と長耳族の奴隷が一人と判別する。

気絶している振りをするために視力による情報を遮断している分・聴力はより研ぎ澄まされている。

限られた情報源から正確な状況把握をすることは密偵として最低限必要な能力だ。

一つでも多く・この状況を打破する為の『材料』を集めなくては……!

足音は停滞せず・そのまま牢の前まで近づいてきた。

「とりあえずそこの牢に入れておくか」

「いいのか?そこには例の長耳女が入っているぞ?」

「チッ・この長耳女まだ寝てやがる・イイ気なもんだぜ」

「構わないだろ。どうせここからは抜け出せやしないさ」

「なら良いが……」

「なぁ・さっさと俺達も戻ろうぜ!」

「ほら・この中に入って大人しくしていろ」

兵士の一人がそう言いながら牢の鍵を開ける音がした。

鉄格子が擦れ合う・鈍い錆びた音が牢内に響く。

「入れ」

「うぅ……」

兵士が長耳族の女に冷たく言い放つと・長耳族の女が呻くような声を漏らし・こちらに近付いてくるのが判る。

湿った石畳に片耳をつけた状態で伏しているため・裸足がぺたぺたと石に張り付くような音がこちらに直に伝わってくる。

「いいか?変な気を起こすなよ。お前が無事でいられたのはお前の親のおかげだ。せいぜいその幸運の味でもよく噛み締めて味わっておくんだな。」

「よし・俺達も混ぜてもらいに行こう」

兵士の言葉から情報を拾おうとする間に・兵士はさっさと牢の鍵を閉めて・他のニ人と元来た道を戻っていくようだった。

「ひーっ!ようやくだぜ!」

「俺のガキを孕ませて混血児作ってみてぇなぁ……」

「お前の血が入ったらとんでもねぇ不細工が生まれそうだな……」

どうやらここで奴隷に罵声を浴びせるより楽しい行事があるようだが……それがどんなことか・知りたくもない。

男達の声が遠ざかり・周囲には私ともう一人の長耳族の女だけになった。

男兵士達に囲まれる恐怖から解放され・ようやく緊張が解けたのだろう。

彼女は憔悴したように小さくため息をつきながら・気絶した振りをしている私の近くに座り込んだようだ。

……視線を感じる。

見ずとも肌に感じる。何だろう。すごい見られている。

牢の中に自分の同族・しかも同性が転がされているのだから・それは興味を惹かれるだろうが……

何も言わずにこうも視線を向けられると……同性でも妙な気分になる……

しかも段々と息遣いが近づいてきていないか。近い近い。

女の吐息が触れるような感覚がして・身体がにわかにむず痒くなってくる。

何となく気絶した振りを止める機を逃してしまい・気まずい沈黙が牢内を支配する。

「……クワエリア」

その沈黙を破った一言を聞いた私はつい片目を開けてしまった。

金色の絹糸。二つの美しい翡翠色の玉石。暗がりでも輝くような白い陶磁器。

一流の美術品のようなそれらが・私を覗き込む長耳族の女の・長く細い金髪と潤んだ双眸と透き通るような柔肌だと少し遅れて認識し……

私は驚きの余り・大声を出して飛び起きてしまった。

「わぁあ!!」

「ひゃっ!」


私の驚きにつられるように彼女も驚き・小動物の鳴き声のような可愛らしい悲鳴を漏らす。

口に手を当て・漏れ出た声を抑える仕草は性格ゆえか・上品な育ちから来るものなのか。

それよりも驚くと同時に弾むように揺れる……大きな胸に思わず目線を奪われてしまう。

そしてその大きな胸が少しも隠れていない・あられもない姿を見て私は声を失ってしまった。

私も役職柄・動き易いように軽装に身を包んではいるが……彼女はその比ではない。

布を身に着けている・というよりは布が身体に巻き付いているだけだ。こんなもの付けている意味がないではないか!

しかしそう思いながらも・同性ながらその美しい肌と肉感は私を無意識の内に惹きつけ・視線を外すことができなかった。

口に手を当てたままの姿勢で固まっていた彼女は・

私から少し距離をとると・伺うような声色で話しかけてきた。

「あ・あのぅ……大丈夫ですか?驚かせてしまったようで……リメイナ」

その透き通るような声色が耳心地良く・私は少し返答までに時間を費やしてしまった。

「い・いや!問題ない!こちらこそ驚いてしまい申し訳ない……リメイナ」

私は目を伏せながら言った。

本来・対等な立場であれば顔を見て話すべきなのだが・彼女のどこを見ていても豊満な部位が目に入ってしまい・話に集中できそうにない……

顔から耳までが熱っぽい感覚に覆われる。

赤面しているのか私は!? 不審がられないだろうかっ……

「いえ・貴女がクワエリアだったから……見とれてしまったの……今私はこんな格好だから……」

クワエリア……そう言われ慣れていないせいか・こんな状況なのに凄く嬉しく感じてしまう……

「リメイナ……ハール等があれば……」

「いえ・問題ないです……私達は同性ですし」

同性と言っても彼女の豊満な体は私には刺激的に映ってしまう。

気を抜くと現状の事態を全て忘れてしまいそうになるほどに……

不味い。また見とれてしまっている……

事態を把握するためにも彼女には色々と情報を聞く必要があるのだ。

妙な空気を仕切り直す意味も込めて私は簡単に自己紹介を済ませることにした。

右手をあげて名乗ろうとしたが手錠をされていて上げることはできないのでそのまま名乗る。

「ファレシア!私は『ローウクェ・スルガスフヴェル』所属の“アヴェリエル=スィード=フヴァステン”と申します。」

「あっ・フヴェルの方なんですね!こんなにクワエリアな方・そうそういないから……意外で……」

「あっ・えっ」

せっかく空気を変えようとしたのに・また私は恥ずかしさから赤面し・視線を伏せてしまう。

そう何度もクワエリアと連呼しないでほしい……!

「リメイナ・私も自己紹介をすべきでしたね。私は“アファレシア=カリツェルエル”と申します」

『カリツェルエル』……!?

私の記憶違いでなければカリツェルエル家はかなりの位だったはずだ……

「ラース・あのカリツェルエル家ですか?」

「エイン・と言っても私は分家の方でして……」

彼女……アファレシアは困ったような笑みを浮かべながらそう答えた。

「リメイナ・聞き過ぎてしまいました」

「良いんです・今はこうですし……」

長耳族の礼儀作法の一つとして自分より目上の者の目を見て話してはいけない・というものがある。

だからこそ・目上の者と分かったアファレシアの目を見ないように話そうとするのだが……

豊満な胸ばかりが目に入ってしまう……

しかも……乳首に『ティップル』をつけているじゃないか!

同じフヴェルのフィッジが言っていたが……

近頃アラールな方々で……特に女性で乳首にティップルを通すことが密かに流行っていると聞いた……

あれは本当だったのだ……

装着時に痛みなどないのだろうか?

腕の良いヴァーズメイに穴を開けてもらったのだろうか?

私の中で悶々と疑問が渦を巻く。

そうしていると今度は下から彼女が顔を覗き込むように見て話しかけてきた。

「あのぅ……」

つい目が合ってしまい心臓が軽く跳ねる。

その眼は美しくて・まるでファルスのようだ。

そして我に返り反射的に目を逸らした。

「リメイナッ……」

「……大丈夫ですか?どこか怪我でもされているのですか?」

あまり覗き込まれると変なことを考えていると気取られやしないか気が気ではない。

誤魔化すように言葉を返す。

「い・いえ……貴女こそお怪我はありませんか?」

「私は大丈夫です……でも他の方々が……」

『他の方々』……それはこの牢の外にも囚われた者達がいることを示していた。

彼女の容姿に気を取られている場合ではない。

浮ついた心を治め・密偵としての自分へと頭を切り替える。

「ラース・もし良ければ……現状がどうなっているかご説明頂いてもよいでしょうか?」

「エイン……でもどこから話せば良いか……」

「捕虜や収容されている人々はどれくらいいますか?」

「……全員かどうかはわかりませんが・私が見た同族の人達は三十人ほどいました……

 フヴェルの方と思われる男性の方が三人ほど……捕らえられていて……」

話しながら・アファレシアの表情が段々と恐怖に支配されていくのが見て取れた。

「男性……どんな背格好だったか覚えていますか?」

もし同じフヴェルの者であれば・どうにか解放して脱出できるかもしれない……

と言っても今は私も拘束されてはいるが……

「リメイナ……背格好についてはあまり鮮明には覚えていません……ただ彼等は全裸で……棒にくくりつけられていました……」

「バイド!アカルビス!」

不意に罵声が口から漏れる。アカルビスの奴らめ!敵に対して最低限の敬意すら持てないのか!

「でもそれだけではなくて……もともとこの牢や他の牢にいた者達をアカルビス達は……」

視線を落としたまま発せられる彼女の綺麗な声は明らかに震えていた。

「犯しているんです……今」

吐き出すように言うと彼女は口を手で覆った。

その言葉を出した自分の口唇までもが汚れてしまったと・そう思ったからかもしれない。

「それも妊婦の人とか……色々いて……足とか切断されていた人とかも……」

「……アカルビスならやりかねない……フィッジから聞かされたことがあります……」

尾ヒレのついた噂話……ではなかったのだ。

アカルビス共は今この瞬間も同胞を凌辱しているのだ……!

◇To be continued…

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