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「せーんせ!朝やで!朝!」


 せんべい布団の上で目を覚ますと、目の前で虎が笑っていた。素っ裸にシーツをかけただけのおれと違って、腋が丸見えタイプの白いノースリーブに水色のショートパンツをはいている。サイズは明らかに小さくて、大胸筋やケツがムチムチになってるし、横向きにしまわれらちんぽの形が丸わかり。どちらも、おれが資料用にと買ってきたもの、のはずだ。

 

 なんでおれがオナニーに使用していた衣装を着たエロい身体の虎おっさんがいるんだ。夢?

 一瞬だけ頭が呆けた後に、記憶を反芻する。雄臭い筋肉と毛皮の臭い。脂肪が薄っすらのった身体の感触。

 

 そうだ、この人は。

 

「洗濯物溜め込みすぎやでぇ。おっちゃんが来るまで家事どうしてたんやホンマにもー」


 おっさん――ヤマトさんは洗濯籠を抱えるとブツクサ言いながら洗面所へのっしのっしと歩いていた。ちら、と見た横顔は上機嫌そうで、尻尾がフリフリ左右に弾み、ついで尻肉が景気よく揺れている。

 

「……おれ、この人とセックスしたんだよな?」


 現実感が無さすぎて夢のように思えてくるが、布団には雄の臭いが残っていた。おれのものとは違う、汗と精液と体臭が入り混じったきつい臭い。おれは布団に顔をつっこんで残りがを胸いっぱいに吸い込んだ。

 嗅覚が触覚を再現し、ちんぽに疑似的な雄膣の感触を覚えた。熱くてやわらかい肉ヒダに、ちんぽが根本まで飲み込まれしゃぶられるのは生まれて初めて味わったたぐいのものだった。

 

 マンコって、あんなにとろとろだったんだ。

 オナホしか知らないおれにとっては柔らかくほぐれた雄質の蕩け具合や、締め付けもすべてが衝撃的だった。あの感動をメモに取っておくべきかもしれない――

 

「せんせーい、下着やら服やらこのケースに入れといてええかー?」


 ヤマトさんの声が響いて、陶酔は一瞬で霧散した。部屋のすみではヤマトさんが100均で買ったボックスへ下着らしい大量の布の塊をひょいひょいと放り込んでいる。

 洗濯だけではなく、おれの衣服の整理まで行ってくれたのだろうか。

 

「す、すいません。洗濯物をしまうぐらいならおれがやりますからっ」

 

 さすがにそこまでやって貰うのは申し訳ないと下着の山へと手を伸ばすと、大量の布切れがやたらとけばけばしい色彩をしていることに気が付いた。ピンクとか、外国の国旗柄とか。というかビキニとかほとんど紐のシースルーみたいなのもある。こんなの資料用としても買った覚えがないのがあるんだけど。まさか。

 

「先生はこんなん好きやろ?いや~~おっちゃんの普段使い持ってきてよかったわぁ」

「……!」


 喉を鳴らして下着を手に取ってみると、そのサイズはおれのものと大して変わらなかった。おれより圧倒的に巨漢であるヤマトさんがこんなものをはいたら、どうなるか。

 きわどすぎる紐パンは腰骨に食い込んで、Tバックの布地がケツの谷間に隠されて、あの巨根は前袋の中で窮屈そうに膨らんで。

 いそいそと下着をしまうヤマトさんの尻と下着を見比べて、おれは朝からちんぽを硬くした。

 

「あ、今日の食材とか買ってこんとあかんかった。先生、悪いけど洗濯物あとで干しといてな。プロット書くの疲れたらでええから」

「え、はい。わかり、ました」

「よろしゅうな。あと、朝ごはんには卵トースト作ったんでそれ食べてなぁ!」


 ヤマトさんは思いだしたように立ち上がるとスマホで近所のスーパーを検索し始めた。安いし近いしここでええか、とスーパーの名前を呟く。このあたりには明るくないのか、それとも安いスーパーとかあるんだろうか。生活力が皆無なおれには分からないけど。

 財布やらバッグやらを用意してどたどたと歩き回るヤマトさんは子持ちのパパという雰囲気で、昨日の淫靡な姿とはかけ離れていた。

 

 なんなんだろう、この人は。

 昨日の疑問を改めて思い浮かべる。

 イタドリ編集と同じ苗字だし、親戚なのだろうか。昨夜の口ぶりとイタドリ編集が告げていた『カンフル剤』とはおそらくこの人のことだろう。

 おれにエロラブコメを書いてもらうためだけにこの人を寄越した。売れない作家のおれのために?ありえないだろう。

 

 大体、この人はなんなんだ?料理が得意っぽいが家政婦や料理人といった感じではないし、あんなに下品なセックスができるあたり身体を売ってる人なのか?疑問が、泡のようにぶくぶくと湧き上がっては答えにならないまま弾けて消える。

 

 考えがまとまらないまま下着とジャージを着ると、台所に用意されたという卵トーストとやらを探す。台所からは芳ばしい香りが漂っていた。

 

「わぁ……ちゃんとしたメシじゃん」


 コーヒーメーカーはあぶくのような音を立て、オーブントースターの中で、卵を乗せた食パンが美味しそうな匂いを立てている。

 ガスコンロの上では、ヤカンがしゅうしゅう湯気を立てていて、カップスープの粉がお椀の中に入っている。ついでに、昨日のオムレツの残りを温め直したものも。


「毎日うんまいもの作ったるからなー!楽しみにしとき!」


 習慣になってしまった独り言をつぶやくと、背後から照れくさそうな声が響いた。

 胸をふんぞり返らせて誇らしげな表情は子どもが自慢しているようで可愛らしい。独り言に律儀に反応してくれたことが嬉しくて、おれも笑ってしまう。

 

「先生は昼と夜はなにがええ?おっちゃん何でも作れるから好きなモン言うてええで!」

「え、えーっと。じゃあ、餃子とか?」

「ギョーザか、おっちゃんも食いたい思っとったんや!美味いヤツ作ったるわ!」


 またドタドタと足音を響かせると、冷蔵庫の中身のチェックや買い物用のエコバッグの準備なんかをし始めた。

 その間にオーブントースターからパンを取り出すと、食欲をそそる香りがふんわりと広がる。

 

 食パンの周囲にマヨネーズを搾りだして壁を作り、卵を落して塩コショウしたものをトースターで焼いた簡単料理。

 

「美味い……」


 カリカリのトーストと焼けたマヨネーズ。トロトロの黄身の食感が楽しい。オムレツはともかく、スープはインスタントだし卵トーストも小学生でも作れそうだ。だが、この簡単な料理すら長年やってこなかった自分には懐かしくて、温かくて食べると胸にじんわりと心地よいものが広がる。

 

「ほんじゃおっちゃんは行ってくるけど、食べたらお仕事頑張ってな!」


 美味しいです、と感想を告げる暇もなくヤマトさんは元気よく玄関から飛び出していってしまった。その勢いは弾丸、いやミサイルのごとし。ま、帰ってきてから感想を告げたらいいか。

 

 それより気になったのは、ノースリーブとハーフパンツという危ない恰好のまま出かけてしまったことだ。猥褻すぎて捕まりはなしないか、痴漢にあったりはしないかと心配になる。

 

「……いや、ないだろ」


 こんなエッチな人妻が買い物にいったら痴漢されて寝取られてしまったみたいなシチュ、エロラブコメとはほど遠い。

 こんな思考が染みついていたんじゃラブコメなんて書けっこない。せっかくヤマトさんという応援部隊が来たのだからおれも頑張らないと。

 

「よしっ!」


 オムレツをスープで流し込んで、おれはステッカーがべたべたと貼られたノートパソコンを起動する。デビューを記念して買ったこいつは数々の傑作――世間には受け入れられなかった――を生み出したおれの相棒。さあ、おなじみのネタとは違うものになるけど、今回も頼むぜ。

 まずはプロットを書き上げなきゃな、と文章作成ソフトを立ち上げた。

 

***


「駄目だ!もうむりぃ……」


 ラブコメって何を書けばいいんだ!

 

 ふにゃふにゃした声を出して机へと突っ伏した。

 原因は、スランプ。頭を抱えてうずくまっているおれはスランプを身体全体で表現していると言っても過言ではなかった。

 うだうだと文字を書き連ねては消して、また書いては消しての繰り返し。全く進んでいない。

 やはり、これまでと勝手が違うというのがでかい。

 おれが今まで発表した作品は格好良くって逞しくって、魅力的な雄が捕まってえげつない拷問とか凌辱をされて快楽に堕ちてしまうハードなエロ小説だ。そんな作品を書くための引き出しはたくさんある。

 

 だが、今はその引き出し全てに鍵がかかっている。

 エロラブコメとなれば派手なアクションシーンとか過激な強姦シーンとかは求められない。必要なのは美味しいシチュエーション。あーこの主人公クンと入れ替わりたーい。みたいなシチュ。できればファンタジー要素皆無の現代モノで。イタドリ担当曰く、エロラブコメでは非現実的な設定とかは多くのエロラブコメ読みに嫌厭されるのだそう。

 

 だから、現代モノでおれが全く書いてこなかったような魅力的なシチュのいちゃいちゃ甘々なラブコメの設定を考えなくてはいけないのだけど。

 

 なーんにも思いつかない。恋を知らない男にどうやってラブを書けというんだ。

 

「むむむむむ……」


 駄目。駄目。ぜーんぜん駄目。

 最近はやりのラブコメの冒頭部分とか読んでみたけど何も思いつかない。なんだよ、ラブコメって何をすりゃいいんだ。

 

 いつもの癖で、指先でテーブルを叩く。

 スランプを解決する方法はない。アイディアという贈り物が天から降ってくるまで、悩んで、苦しんで、もがき続けるしかない。

 ぼうっとパソコンのモニターを見るといかした虎のイラストが表示されていた。おれが大好きな虎門刑事シリーズが大ヒットしたとかで公式から配布された壁紙。

 

 精悍でシャツやスラックスをパツパツにしている虎門刑事を見ていると、ふつふつやる気が湧いてきて、いつの間にか数千字も書いちゃってる――ということがあるんだけど今日は駄目っぽい。虎門刑事に妄想でしているようなことを、今回は書くわけにいかないし。

 

 と、その時スマホが耳障りな電子音を鳴らした。

 おれが大嫌いなメッセージアプリの着信音。顔をしかめて画面を確認すると、予想通りイタドリ担当から催促が来ていた。

 

『進捗どうですか?今週中に作品のフックだけでもあげてくださいね。童貞』

『もう童貞じゃねえよ!お前の寄越した虎おっさんで卒業したわ!』


 こんな内容送れるわけがないんでスマホをせんべい布団の上へと投げすてる。

 あーどうしよ。どうすればいいかなあ。どうにもならなくって、窓から世界を眺めていると、灰色の空が見えた。分厚い雲が光を遮断し、ガラスをしずくが打っている。雨だ。

 いつもなら晴耕雨読と仕事に取り掛かれるのがおれだ。でも今はヤマトさんの顔が脳裏に浮かぶ。傘持って行ったっけ。持っていたとしても、右手に傘左手にエコバッグはあの巨体だと大変じゃなかろうか。

 

「……行くか」


 ヤマトさんが呟いていたスーパーは歩けばすぐだ。雨は降り始めたばかりだし、急げばヤマトさんが濡れ猫になる前に捕まえることができるかも。

 決して、小説から逃げるわけじゃない。何故かこちらを睨んでいる気がするスマホへと言い訳を一つ零した。

 

 ***

 

「あ、いたいた」


 近くのスーパー、それもカフェやリサイクルショップや回転寿司屋、ドラッグストアなんかも併設されて、ちょっとしたショッピングモールのようになった近くの商業施設へと行くと、ヤマトさんがカフェの中で一心不乱にスマホを睨んでいた。

 雨が降ったんでここで時間を潰してたんだろうか?にしても真剣に、悩んでいるような表情でスマホを睨んでいる。

 

「何しるんだろ」

 

 ぽちぽちとグローブみたいな指先でスマホを打っては天井を仰ぎ見て。スマホアプリでもやってるにしては表情が重い。メッセージアプリでやり取りでもしてるのだろうか。おれも、イタドリ編集へメッセージを送る時はあんな感じの顔になる。

 声をかけるべきか悩んで、店の外でヤマトさんを眺めていたら向こうからおれの存在に気づいてくれた。床に置いたエコバッグを引っ掴むと、苦悶の表情から一転した懐っこい笑顔で店お飛び出してくる。

 

「センセーーッ!なんやなんや!もしかしておっちゃん、迎えに来てくれたんかっ!?」

「えーと、そう、なるのかな?雨が降ってたし」

「ほんまか!いやーめっちゃ嬉しいわぁ!雨降ってしゃーないし、茶ぁシバいてたとこやったんや!おおきにな、先生!」

「むぐっ!?」


 汗の匂いがする毛皮と筋肉で顔面を包まれた。

 ヤマトさんは、雨の湿っぽい空気を吹っ飛ばすような満面の笑みでおれに感謝してくれる。縞々の尻尾を犬みたいにぶんぶん振って、太い腕でぎゅーっと抱きしめて。

 太ももが剥き出しのショートパンツをはいた雄がそんな真似をするのだから、目立ってしょうがない。カフェの中からも周囲の客からもジロジロと視線を向けられてこっちが恥ずかしくなってくる。

 背中をたたいてギブ!ギブアップ!と告げると名残惜しそうに胸筋から解放してくれた。いや、おれも名残惜しいけどね?

 

「んん、迎えにきてもろて悪いんやけどまだ買い物あるんや。付き合おうてもろてええか?」

「それはいいけど、買い物終わってないのにカフェにいたの?」

「溶けてまうから買えなかったんやけど、冷凍食品買いたいねん。先生の食事は全部手作りしたいんやけど、おかずを一品増やす時とかにあると便利やしな」


 スーパーへ入ると、買い物カゴを取りながら話してくれた。

 全部真心こめた手料理を作ってくれたらもちろん嬉しいが、手間が少なくおかずが増えるならそっちのが嬉しい。

 手作りに固執するんじゃなく、手間を省けるところで省いてくれるのは料理や家事に慣れてるってことを感じさせる。ヤマトさん、本当に何者なんだろう。

 

「ヤマトさんって、ハウスキーパーでもしてたんですか?」

「いやいや、そんな家政婦さんみたいな繊細な仕事務まらんわ。おっちゃん大雑把やし」

「でも家事に慣れてそうですけど」

「一日中家におるから家事やらなんやら得意になったんや。おかげで先生の役に立てるし、良かったわぁ」


 一日中、家に。

 働いてないの?ニート?

 今じゃハウスワークとかあるけどヤマトさんはプログラマーとかデザイナーとか務まりそうには到底思えない。

 じゃあ、養ってもらってる?親兄弟か、もしくは配偶者。ヤマトさん、独身じゃない?

 

「えーっと、ずっと家にイイイイルンデスカ?ヤマトサン」

「なんや声震わせて。せやでー、料理も一時期ハマってもうてなぁ。よくご馳走したったわ」


 誰にご馳走したんだ!彼氏か?彼氏がいるのに人の童貞食い散らかして良いと思ってんのか?

 なんて口に出せるわけもなくて、あはあはと嘘くさい笑顔を作っていたが、ヤマトさんは何も言わないまま冷凍食品コーナーに並んだ品物をぽぽいぽいっとカゴへ放り込む。

 

 ヤマトさんの横顔を見ても何かを隠している気配は無い。そもそも彼氏がいたとしても他の男と寝ちゃいけないんか?みたいなビッチなのだろうか。

 邪推しすぎか?おれの考えすぎで親戚の子どもにご馳走してるだけだったり。でもヤマトさんが普段何してるか気になって仕方がない。本当に彼氏のちんぽを咥えこんでいるのか。


「せや、餃子にチーズとか変わり種いれたヤツも作ってみよか。先生、かっぱエビせん入れたヤツが好きなんやろ」

「えっ、そうですけど。なんで知ってるんですか?」

「SNSで書いとったやん。おっちゃんも試したけどエビの風味だけギョーザに伝わって面白いんよな」


 SNSまで目を通してくれていたのか。

 確かに餃子にエビ味のスナック菓子を入れるとその風味だけ閉じ込められて存外に美味しかったと書いたことがある。某料理漫画で書いていたのを真似しただけなのだが、ハマってしまって実家にいるころは何度も作っていた。美味すぎて、あとがきにまで書いたほどだ。

 今は、自炊すらしない身分なので何年も口にしていない。

 

「したらちょうどええやん。エビせんも買ってこ?あとスライスチーズも」

「そうです、ね。あと面白い餃子の種とかないですかね」

「んー、キムチとかもええんやけどな。おっちゃん餃子には大葉入っとるから風味が喧嘩しそうでなぁ」

「あ、大葉もいいですよね。風味がさっぱりしていくらでも食べれて」


 餃子談義をしながらスナック菓子を放り込む。エビせんの他に見つけた、ピザ味のポテトとか、新作のチョコ菓子なんかも発見したので手に取った。普段コンビニで飯をすませているだけあって、お菓子はそこそこ好きだ。頭の悪い辛くて味が濃いやつも、幼児用の知育菓子みたいのも。一つ気になるとどれも欲しくなって、両手に抱えられるだけ取る。すると、先を歩いていたヤマトさんがのしのし戻ってくる。

 

「せっかくやし冷凍できるおかずの材料も作っておこか。したらおっちゃんが出かけとる時も温めるだけでご飯作れるし」

「いや、忙しいならそれこそ冷凍ピラフでも食べますけど」

「あかんあかん!おっちゃんが来たからには3食栄養バランス管理したるわ。せや、先生はパプリカやピーマン系あかんのよな?」

「それも知ってるんですか?確かに、胸焼けするんでピーマン系はダメですね」

「おう、SNSでバズレシピにピーマン入ってるせいで食えへんって嘆いとったやろ。好き嫌いはアカンけど、そないな事情ならしゃーないな。作り置きなら何がええかなぁ」


 どうでもいい話をしながら買い物カゴにお菓子を突っ込むと、即座にヤマトさんが棚へと戻す。

 顔を見る。ヤマトさんはいつものように笑っていた。いつもと同じなのに、どこか恐ろしい。

 

「ヤマトさんが好きなものでいいですよ」


 言いながら再度チャレンジするが、カゴに入れる前に棚に戻される。

 

「先生は豚の角煮が好物やっけ?」

「ですね……それはあとがきで見ました?」

「いや、先生が飲み屋であげる写真でやたら豚の角煮が乗っとるんでそう思っただけや」


 そんな細かいところまで見てくれているのか。ちょっとだけ目がしらが熱くなる。

 

「ヤマトさん……おれ、ヤマトさんみたいに熱心なファンに初めて会ったかもしれません」

「せやろか?先生ならファンもいっぱいおるやろ」

「SNSではありがたいファンもいますけど。ヤマトさんみたいにおれの作品を見てくれる人はそうそういませんよ」

「せやろか?ちょっと照れてまうなぁ」


 おれたちはにこやかに会話を繰り広げつつも、さっきからお菓子を棚に戻しては突っ込む攻防戦を続けていたのだった。中年男と虎おっさんが親子みたいなくだらないやり取りをしているところ、忙しい主婦たちがじろじろ見ていた。

 

「お菓子はおれのエネルギーなんですけど」

「これからはおっちゃんのご飯がエネルギーや。お菓子はもう必要あらへん」

「でもぉ、夜に小腹がすくし」

「おっちゃんがしっかりした食事を摂らせるから小腹がすくなんてありえへんっ!駄目なもんは、だ・め・や!」


 取り付く島も無かった。おれが両手いっぱいに抱えていたお菓子は全て棚へと戻された。カロリーオフなビスケットは駄目?じゃあこの新作のミルクティーはと聞いても『どうしても飲みたいんやったらおっちゃんが作ったる!』との一言に逆らえなかった。

 

「お菓子ってそういうんじゃなくって、買って食べるワクワク感っていうかぁ」

「作家ならカロリーも気ぃ使わんとメタボになるで。おっちゃんといる間は朝昼夕食でしっかりお腹いっぱいにさせて余計なモンは胃に入れさせへんからな!」


 結局、スーパーを出るまでの間ずっとおれたちはバカみたいな口喧嘩をしていた。小さいころに母親としたような、いやもっとくだらないかもしれない。

 でも、ヤマトさんと話していると小説で悩んでいたことも、ヤマトさんがこれまで何をして生きてきたのかも。ぜんぶおれの頭の中からはすっ飛んでしまっていた。

 

 ***

 

「お、綺麗に晴れとるなー!」


 おれたちがスーパーから出るころには雨がすっかり上がっており、陰鬱な灰色の雲も消え失せてしまっていた。

 オレンジが混ざり始めた空からは天使のはしごと呼ばれる光の筋が真っすぐに伸びている。

 ヤマトさんが胸を膨らませると、澄んでひんやりとした雨上がりの空気を肺いっぱいに吸い込んだ。

 

「したら、家に帰ろか」

「はい」


 おれたちは肩を並べて歩き出した。夕日によって二人の影は横も縦もサイズが小さすぎて、太陽が光の加減を間違えたのかと思うぐらい。

 ちらり、と横を見てみると相変わらずでっかい胸と尻がたぷたぷ揺れて目の毒だ。一日経ったけど、このエロすぎる虎とおれは一緒に住むってことがいまだに受け入れられない。

 

 こんな調子でラブコメを書けるのだろうか。まだ、何をテーマにすればいいのかも決まっていない。

 

「なんや。小説は上手くいっとらんの?」


 表情に出ていたのだろうか、ヤマトさんが問いかけてくる。

 そうですね、と答えるのがなんだか申し訳なくて何も答えないまま、帰り道を見つめる。


「おっちゃんと暮らしとったらそのうち良いアイディアが出てくるやろ。焦らんとじっくり考えたらええわ」

「そうなんですけどね。何を書いたらいいか、とっかかりすらつかめなくて」

「とっかかりかあ。ラブコメって、確かによう分からんよな。今まで書いてきたモンとは全然違うしな」


 おれの心を見透かしたようなことを呟かれて、心臓が跳ねた。

 ヤマトさんと一緒に暮らしてもアイディアなんて見つかるんだろうか。今日やったことと言えば、作ってもらった朝飯を食べて買い物に行っただけだ。盛り上がるようなイベントもない。会話の内容もくだらなくて、どうでもいいものだ。

 

「ラブコメって、何を書けばいいんですかね……」

 

 何も分からない。ヤマトさんと一緒にいたおかげで、濡れ場の描写は豊富になりそうだけど。邪なことを考えながら見つめる虎の横顔は、何かを考えこんでいるような、憂いを帯びたものだ。

 

 くん、と鼻をひくつかせると雨の匂いでも消せないヤマトさんの体臭がした。汗と雄の臭いが混ざり合ったそれは昨夜の記憶を否応なしに思い起こさせて、街中だってのにおれのちんぽを硬くする。

 

「なあ、先生」

「あっはい!すいませんっ!」

「なんで謝っとんねん。エロラブコメ書くんやから、もっと距離を近づけた方がええと思うんやけど」

「距離、ですか?」


 昨晩はあんなに深くまでつながって、体液さえも交換しあったっていうのにこれ以上どうやって近くなればいいのだろうか。もっと激しいセックスなんて想像がつかないおれに、ヤマトさんは咳払いしてから告げる。

 

「先生って呼び方も嫌いやないけど、恋人になるんなら名前で呼ぶんがええ思てな。例えば……リュウくん」

「……っ!」


 きゅ、と喉が詰まった。

 心臓が激しく鳴って、急に顔が熱くなる。雨上がりの空気でもおれの頭を冷ましてはくれずに、視界が揺らぐほどに頭が茹で上がる。

 なんだこれ。明らかにおれの身体は異常を起こしているんだが、決して不快な気分にはならなかった。

 

「えーっと、リュウくんが嫌なら他の呼び方にするけど、どないや?おっちゃんからリュウくんって呼ばれるんは嫌か?」

「えええ、えーっと」


 リュウくん、って呼ばれ方は小学生低学年のころに卒業した。というかおれの名前を両親以外から呼ばれたのもいつぶりだろう。

 夕日はおれの顔が赤くなることをごまかしていてくれてるだろうか。うわー、顔が熱くなってる。名前を呼ばれただけでこれとかガキかおれは。

 ヤマトさんの顔を見ると、茜色に染まってキラキラと輝いていた。鮮やかな毛皮や瞳、彼を囲う世界全てを輝かせていた。

 

「どや?リュウくん」


 首をかしげて微笑む顔は少しだけ意地悪く。昨日、おれをケツで抱いていた時とは違う淫靡が空気を纏っていた。

 血が熱い。その表情から目が離せない。狼狽えて口をもごもごとさせると、くつくつと喉を鳴らした。

 

 おれの答えは、分かりきっていた。


「おれは、別にいいですけど」

「そかそか。じゃあ今日からリュウくんって呼ぶわ。おっちゃんは好きに呼んでや」

「じゃあ、ヤマト。とか?」

「それは気安すぎやろ!おっちゃんのがお兄さんなんやから呼び捨てはアカンて」

「じゃあ、ヤマトさん。今までどおりですけど」


 おれの呼び方に納得が言ったのか、ヤマトさんは満足そうに頷くと歯を見せて笑った。

 ひらひらと、荷物を持っていない手をおれに向かって振る。

 

「なんですか?」

「手を繋ぐんや。ラブコメだと欠かせないシチュやろ」

「はい?」

「夕日に照らされる中、恋人が仲睦まじく手を繋ぐのは王道やろ。はやくはやく」


 そんな王道あるのかおれには分からなかった。

 ラブコメなんて読んだことなくって、誰かと手を繋いだ記憶はなくって。

 けれど、グローブみたいなごつごつした手と手のひらを重ね合う。肉球は汗塗れでお世辞にも快い感触とは言えなかった。


「どや、ラブコメの参考になりそうやろ?」

「……どうでしょう」


 そっけなく答えながらおれの心臓はフル回転して血液を早く回していた。

 大きくて、温かくて、おれの手をたやすく握りつぶせそうな手。汗でぬるぬるの手。

 おれの手だって汗でぐっしょりで、ヤマトさんを不快にしているかもしれない。それでも手を離そうとは思えない。

 

 何故だろう。これがラブコメの主人公の気持ちなんだろうか。

 

「おっちゃんもな」


 ヤマトさんが照れくさそうに呟いた。

 

「おっちゃんもこんなシチュよう知らんねん。こういうことする恋人とかおらんかったし」

「そう、なんですか」


 意外ですね。モテそうなのに。

 当り障りのない誉め言葉を吐こうとしたけど、喉を通らずに消えていく。薄っぺらい言葉を吐くよりも手のひらのぬくもりを感じていたかった。

 

「せやから、おっちゃんはラブコメっぽいことあんま教えられへんねん。ベッタベタなシチュしか知らん」

「まあ、おれはそのベッタベタなシチュすらよく知らないんですけど」

「そかそか、したら二人でいっぱい見つけような。恋人やったら何をしたいか、恋人っぽことしたら、どんな風に嬉しいか!」


 その瞬間、おれの中でパズルのピースがカチリとはまる感覚がした。

 二人で、見つける。

 おれたちは良い歳をしたおっさんで、恋人らしいことは何も知らない。

 

「そうか、それでいいのかも」


 そんな二人が経験していくことは、きっと何もかもが新しくって心を震わせるものになるに違いない。

 それを物語にするのがラブコメなんじゃないだろうか。どうでもいいことで笑ったり、くだらないことを話したり。ただ手を繋ぐだけで心が踊ったり。ちっぽけで、ありふれたものを集めた物語。それがラブコメなんじゃないだろうか。

 

「……良いアイディア見つかったんか?」

「分かります?」

「そりゃな。おっちゃんもやから」


 ヤマトさんも何かを思いついたのだろうか。ふんふん、と鼻歌を歌いながら尻尾と一緒にでかい尻まで振っている。

 尻肉がはみ出しそうなショートパンツをそれでやられるとまさしく視覚の暴力で、周囲に人がいなくて良かったと心から思う。

 

「ラブコメのネタは見つかりそうで良かったなぁ。あとはぁ……❤」

 

 ちらちらと横目で尻を舐め回すように見ていると、突然ヤマトさんの太い腕がいやらしくおれの腰へと絡みついてきた。

 

 何を、と問おうとするとヤマトさんの顔が目の前にあった。口角を吊り上げて、瞳を劣情で濁らせて。それは、昨日おれを犯して精を搾りつくした淫獣の表情だった。

 

「じゃ、次は濡れ場のアイディア出さんとあかんな。一緒にお風呂でも入って、考えよか❤❤」


 ***

 

「あ、あのぉ……」

「んー?」

「やっぱ、一緒に入るんですか?」

「今更何言うとんの。湯加減もええ感じやで」


 帰り道、ヤマトさんに腰を抱かれて逃げられぬようにされたまま家へとたどり着き、湯舟に湯を貼る間もずっと汗臭い毛皮を身体へと押し付けられていた。

 なすがままに服を剥ぎ取られ、下着姿にされたがヤマトさんは競泳水着のようなきわどく、尻肉の大半が剥き出しになるビキニ姿になっていた。真っ白で清潔感のあるデザインだが、ちんぽでこんもりと前袋が膨らんでいるせいで下品な印象を与えていた。

 

「えーと、ヤマトさん。その水着は……」


 なんで自分だけ水着姿なんですか。という当然の疑問にいやらしい笑みを浮かべたまま水着をクイクイと食い込ませて答えた。

 

「ラブコメで一緒にお風呂入る時は水着のがええんちゃう?裸で入るよりは、恥じらいってモンがあった方がええやろ」

「じゃ、じゃあおれの水着は?」

「リュウくんはどうせ水着とか持ってへんやろ。おっちゃんのじゃサイズがあわんし」


 ならヤマトさんも水着じゃなくていいじゃないか、と思ったが尻肉の脂に食い込む水着を見たらそんなこと言えるわけもなく。

 尻とちんぽがでかすぎるせいでビキニは尻肉の半分ほどの位置で食い込んでおり、デカケツのほとんどを隠せていない。尻の谷間がはみ出してるし、股間部分の濃い毛もばっちり見えている。全裸の方がまだ恥ずかしくないだろう、と思える水着だった。

 

「リュウくんはやっぱ水着とか下着はいとった方がアガるタイプなんやなぁ❤小説でもやらしい下着はかせとるしなぁ❤❤」

「小説で人の嗜好を読むのは食事の好みだけにしてください!」

「小説だけやないで❤❤このちんぽ見たら誰でも分かるやろぉ❤」


 跪き、おれの股間へと顔を押し付けたヤマトさんは下着にできた膨らみへ何度も口づけてきた。その刺激に、童貞を卒業したばかりのおれの身体はビクンと引き攣って反応する。

 手でちんぽを隠そうとしても力強い腕で静止された。下着の中で跳ねるちんぽへと熱っぽい吐息が吹き付けられる。

 

「くっさいちんぽやなぁ❤雄臭くてかなわんわぁ❤❤おっちゃんとハメたくってちんぽ汁お漏らししとったやろ❤」


 すぐにでもしゃぶりつきたいという顔で下着ごしに頬ずりをして、おれの太ももや尻を撫でまわしていた。

 おれが小さな喘ぎ声を漏らすと臍の真下に唇を押し付け、微かに開いた口から舌を出して、汗の味を確かめる。

 娼婦顔負けの仕草でおれを昂らせつつ、ゆっさゆっさと弾む乳肉をちんぽへと押し当てる。

 

「おっちゃんが綺麗にしたらなあかんな❤おっぱいで挟んで洗ったろかぁ❤❤おっぱいオメコ、あわあわのヌルヌルにしたってリュウくんのちんぽパイズリしたらめっちゃ気持ちいいやろなぁ❤❤❤」

「パ、パイズリ……!」

「せやせや❤童貞クンはみーんなパイズリ好きやもんなぁ❤❤おっちゃんとお風呂入りたくなったやろ❤」


 沈黙は肯定と受け取られた。

 四肢を強張らせ、目を瞑ったおれの身体へと何度もキスを落してから、ヤマトさんは一気に下着をずり降ろした。

 ちんぽが解放され、それとともに閉じ込められていた匂いが脱衣場に広がる。

 

「おおおおぉっ❤❤❤」


 一拍遅れて響いたのはヤマトさんの嬌声と、腹肉を打ち据えるちんぽの音だった。

 まだ直接触られていないにも関わらずちんぽは天を突くような鋭い角度で立ち上がり、ビクビクと戦慄いていた。

 

「あっはぁ❤❤やっぱリュウくんのちんぽは元気でええわぁ❤これならオメコには困らへんのに、なして童貞なんやろなぁ❤」


 からかわれているような言葉だが、ヤマトさんは本当に疑問に思っているような声色だった。すんすんと蒸されたちんぽの匂いを嗅ぎまわってから、薄っぺらい舌を突き出した。亀頭をへと狙いを付けると、亀頭に纏わりつかせ、張り出したカリ首を掃除するように何度も滑らせた。

 

「あ、ああっ!ヤマトさぁん……!」


 なんてみっともない声だ。自分で自分を叱りつけたくなる。

 しかしヤマトさんは嘲笑うことなく舌を使ってちんぽを磨き続け、亀頭を唾液まみれにしてから名残惜し気に口を離した。

 

「あかんわぁ、口もオメコになってまう❤❤ザー汁漏らしたら嫌やし、続きはお風呂に入ってからにしよか❤」


 鈴口にキスをされながら命令されたら逆らえるわけがない。

 指示されるままに風呂場へ入ると、軽く身体を洗い流してバスタブへと沈む。

 その間、ヤマトさんはシャワーで毛皮に染みついた雄の臭いを洗い流し始めた。

 

「リュウくんは身体洗わんくっさいままの方が好きかもしれんけど、おっちゃんもスッキリしたいんで堪忍してな❤❤」

「べべべ、別に好きじゃないですけどぉ……」


 入浴剤で濁っているせいで外からは見えないが、おれのちんぽはますます張りつめていた。

 ヤマトさんはシャワーを全身に浴びながら、自ら腰をくねらせ、充分過ぎるほどに脂の乗ったデカケツをこれ見よがしにうねらせていた。

 

 昨夜はヤマトさんに犯されて喘ぐばかりだったがヤマトさんの肉体はやはりエロい。大胸筋は乳首が下を向くほどに発達しているし、尻肉も大腿筋も柔らかく弾むくせに少しもたるんでいない。ビキニが尻肉へ食い込んでいるせいで、身体の豊満さがより強調されているように思える。

 

 お湯は汗臭さを洗い流すが、温められた身体からはヤマトさんの匂いともいえる雄臭を漂わせ、密閉された浴室を満たしていく。

 

「リュウくん、ちょいスペース空けてくれへん?おっちゃんも入りたいんや」

「は、はい。狭いと思いますけど……」

「狭いのがええやろ❤身体がくっつけっこしとる方が温まるでぇ❤❤」


 元々が獣人用のサイズだったことが幸いして、ヤマトさんとおれが入ってもギリギリ余裕はありそうだった。

 

「んじゃ、失礼するでぇ❤」

 

 ヤマトさんは、わざわざおれの方にデカケツを向けたまま浴槽の縁を跨いでいた。目の前を通り過ぎる卑猥な肉の塊に悲鳴が出そうになるのをどうにか抑え込む。

 

「ん、どしたん❤もうちょい奥まで行ってくれへんと、入れんやろぉ❤❤」


 おれの鼻先で揺れる尻肉からは、雌の匂いとしか表しようがないものが漂っていた。おれの鼻息が尻へと吹きかかれば尻尾の先まで震え、艶めかしい視線をおれへと送ってくる。

 口内へ唾が湧く。それを気づかれないように嚥下しながら、視線はビキニに隠された尻の谷間へと注がれていた。

 

「ほれ❤❤このままじゃおっちゃん、風邪ひいてまうやろ❤ええ子やから、な❤」


 甘く酔った声で促され、おれはヤマトさんが湯舟へ入れるように身体を寄せた。肉がたっぷりと詰まった巨体が少しずつ湯舟へと入ると、浴室へお湯があふれ出していく。

 身体を向き直し、おれへと向かい合う形でお湯へと入ると手足が触れ合って、毛皮が肌をくすぐる。

 

「どや、二人で入るのもええやろぉ❤」

「……はい、気持ちいいかも」


 太い脚がおれの身体を挟み込んで、両手は薄っぺらい胸板やだらしない腹筋を撫でまわしていた。愛撫ともいえない淡い刺激だったが、お湯とは違う温かい身体はおれをのぼせ上らせる。

 入浴剤にヤマトさんの身体から染み出す匂いが混ざり合い、おれの鼻から肌からヤマトさんの雄臭さがしみ込んでくるような気がした。熱と匂いで頭が駄目になって、知能指数が低下していく。

 

「もっと、おっちゃんにくっついてみ❤❤ほれぇ❤」

「ん、んっ!?」


 間抜け面になったおれの顔を両手で包み込み、ヤマトさんは鋭い牙の生えた口を唇へと押し付けてきた。

 少し汗の塩辛さが残る舌肉がおれの口内へと侵入してきて、あらゆる場所を舐め回し、唾液を啜り上げてくる。

 

「んんっ!んーーっ!」

「ンジュルッ❤❤ちゅ❤んんっ❤」


 おれの中の雄は一気昂って、本能のおもむくままに両手がヤマトさんの背中へと伸びる。ごつごつした背筋へと必死に抱き着いて、絡みついてくる舌肉を吸い上げる。ヤマトさんもおれの腰へと手を回し、おれの舌を口内へと導いてくれる。

 

「んうぅうぅ❤❤んっふぅ❤ちゅ❤んんん~~っ❤❤」


 ヤマトさんは舌肉同士で淫靡なダンスを踊りながら、おれのちんぽを下腹部へと押し付けて、自ら腰を回して刺激してくる。

 その刺激に身悶えするおれをさらに強く抱きしめながら、口内へと導いたおれの舌をねっとりと吸っては、唾液を流し返してくる。

 

「んんっ、ヤマト、さ……、むぐっ」


 むっちむちの大胸筋を胸板で感じながら口内を愛撫され、ちんぽまでも下腹部で擦られたりしたら童貞卒業したばかりのちんぽはあっという間に限界へと追い詰められる。

 入浴剤の濁りのおかげで分からなかったが、我慢汁がお湯へと吐き出されて混ざり合っていた。

 ヤマトさんのちんぽもおれと同じくらい昂っていて、おれとヤマトさんの間で硬くグロテスクな肉の棒がびくびくと震えていた。このまま続けられたらキスと愛撫だけで射精してもおかしくなかった。

 

「んむぁ……❤はぁ、あかん❤❤お湯ん中にザーメン出したらあかんでぇ❤オメコに出さんとな❤」


 しかし、ヤマトさんは唇を引きはがすとちんぽの刺激をやめてしまう。物欲しそうにするおれの背中を優しく撫で擦って、耳元へマズルを寄せる。

 

「おっちゃんがおちんぽ洗ったげるからな❤口オメコでチンカスもぜーんぶ舐めて綺麗にしたる❤❤」


 ちくちくする髭と耳へ囁かれる低い声に背筋が震えた。手を引かれて湯舟から立ち上がると、浴槽の縁へ座るよう命令される。完全にヤマトさんの言いなりで、躾けられたペットのようになっていた。

 間近で揺れるたっぷりした肉乳という餌を前にすれば、男としての意地とか人しての最低限のプライドはごみ箱に行ってしまった。乳肉を目に捉えて離さないまま、ちんぽは隆々と天を突いていた。

 

「ええ子やなぁ❤❤おっちゃんの口でいっぱいおちんぽ気持ちようなろうなぁ❤昨日は何発も出してもビンビンやったし、口オメコで出してええからな❤❤❤」

「ヤ、ヤマトさ――あぅっ!」


 おれはみっともない声とともに腰を小刻みに震わせた。肉球のついた手でちんぽを握り締められて舌先でチロチロと鈴口をほじくられる。

 もう片方の手のひらは金玉へと添えられて重量感を楽しむように揺すられる。

 

「えっぐいちんぽしとるわぁ❤❤こんなカリでオメコ擦られた中が削げそうや❤ガッチガチで硬くてぇ❤❤はあぁ❤昨日はこんなんでオメコごりごりされたんやなぁ❤❤」

「ああっ、ヤマトさん……」


 舌先が蛇のように素早く動いた。丸く膨らみ、ヒクヒクと震える鈴口を舌がしつこく突いている。

 おれの腰は期待感と腰によって激しく動いていた。前に突き出され、背中がのけぞる。へこへこと腰を振りみだし、快楽を催促しているように揺れる。

 

「焦らんでええでぇ❤ぜーんぶおっちゃんに任せといてなぁ❤❤リュウくん❤」


 おれの醜態を父性すら感じさせるような優しい声色でなだめて、ゆっくりと口内へとちんぽ導いていく。

 生暖かくぬるついた口内を感じると、すぐに伸ばした舌先が亀頭に絡んできて、唾液のシャワーで歓迎される。

 

「ヤマトさ、んああっ!」

「ん、んんんっ❤❤」


 肉食の舌が亀頭に纏わりついて何度も跳ねる。おれの口から喘ぎ声が漏れ出すがヤマトさんは舌を止めない。がっしりとおれの腰をホールドして、舌でのあやすような愛撫から口内での摩擦へと切り替えていく。

 頬肉をすぼめて、おれのちんぽを締め付けたかと思うと口蓋のざらついた部分で亀頭を擦ってくる。

 

「すごい、ヤマトさんっ!ちんぽがぁ……!」

「んっふうぅ❤❤かわええなぁ❤ちゅっ❤もっと喘いでええからな❤❤」


おれの腰が小刻みに震える。ヤマトさんに比べればずっと細い脚の筋肉が盛り上がる。

舌をグルリと竿に巻き付かせ、扱かれる刺激に限界は急激に近くなる。ヤマトさんの頭を鷲掴みにしながら、口マンコの快楽に神経を集中させる。


「ん~~❤震えてかわええなぁ❤❤えっぐいちんぽしとるくせにぃ❤」


 亀頭だけをちゅうちゅう吸いながら、唾液まみれのちんぽを肉球付きの手で扱きおれを追い詰める。

 ヂュボヂュボ響く太い音と舞い散る唾液。舌や粘膜をねっとり絡ませて勢いよくしゃぶり、おれの腰が逃げようとすると喉奥まで咥えこんでくる。

 

「ああっ、ヤマトさぁん……!口マンコ良すぎてぇ、んあっ!」

「ん、ぢゅぶっ❤❤んふうぅ❤」


 おれが感じていることが嬉しくてたまらないのか、好色な笑みに染まる顔でおれのちんぽをしゃぶり続けた。

 口をすぼめて蛸のような間抜けなフェラ顔になり、臭いちんぽをしゃぶり上げるヤマトさん自身もまた昂っているようで、股間の肉棒がビキニを突き破らんばかりに怒張していた。

 口から滴り落ちる唾液をぬぐうこともせず、おれのちんぽから吸いだした雄汁を美味そうに啜り上げ、喉を使って竿を扱いてくる。

 

「ヤマトさんっ!おれ、もう……!」

「おう、ええでぇ❤❤おっちゃんの顔にいっぱいぶっかけてなぁ❤❤❤」


 昨日のセックスよりもずっと早く限界が来た。

 我慢する必要が無くなったのか、快感が上がったのか。

 竿を手で扱きつつ、おれの鈴口が開閉を早くすることに気づいたヤマトさんは今や遅しと雄汁が飛び出てくるのを待ちわびている。

 

 熱く乱れた息遣いと、ぐちゅぐちゅという濁った音が浴室の中で反響する。おれはもう、ヤマトさんの口マンコへザーメンをぶちまけること以外考えられなくなっていた。

 

「ヤマトさんっ!いく、いきますっ!おれ、もうぅ……!」


 瞬間、頭が真っ白になって一気にヤマトさんの顔面に腰を叩きつけた。

 真っ黒な鼻先が、陰毛の中に埋まるまでちんぽを差し込むと喉奥を突き抜けて食道にまでちんぽが侵入した。そして――

 

「イクッ!ああぁっ!」

「んっぶぅ~~~~❤❤❤」


 ビクビクと、何度も弱々しく腰を震わせるおれのちんぽからは何のためらいもなくビュルビュルと雄汁が解き放たれていく。昨日あれだけだしたというのにその精液の量は明らかに多く、濃度も高いことが自分でも分かった。

 

 当のヤマトさんは食道でザーメンを受け止めながら、舌を使って射精中のちんぽへ奉仕していた。食道で処理しきれなかったザーメンが気道や口内へと逆流してもむせ返ることはなく、鼻の穴からザーメンが垂れ落たせながら恍惚としていた。

 

「ん゛っ❤むあぁっ❤❤ああぁ……❤ちんぽ汁たまらへん❤❤頭ん中ザーメン臭くなってまう❤」


 ヤマトさんは口内に逆流してきた雄汁を舌の上でこねまわし、口の中に拡げ、しっかりと味わっていた。尿道から吸い上げた精液を繰り返し口の中で練り上げたのち、太い喉を鳴らして体内へと流し込む。

 ちんぽを口の中から引き抜いても、名残惜しそうにちんぽにへばりついた精液を丁寧に舌で掃除していき、自分の頬毛で唾液をぬぐい取る。

 

 その淫らな姿にちんぽは跳ね踊り、未練垂らしく精液を垂れ落していた。

 

「ヤ、ヤマトさん。そんなの見せられたらおれ……」

「んふ❤せやなぁ❤❤リュウくんは一発程度じゃちんぽが大人しくならんもんなぁ❤」


 欲望に支配されたようにでかい尻をくねらせると、精液のこぼれる口の端をニヤリと歪めて膝立ちになる。

 左手をちんぽに絡ませた状態でおれを見下ろし、右手で後頭部を鷲掴みにした状態で、唇を求めてくる。

 

「んんっんふうぅっ、んぢゅるっ」

「んむ゛ふうぅぅ~~❤❤ぢゅるろろぉ❤んっ❤うぅうぅぅ❤❤」


 二度目のキスはすんなりと行うことができた。マズルの先端と唇を触れ合わせると、吸い込むようにしてヤマトさんの舌を迎え入れる。

 おっぱいを身体に押し付けて、ちんぽを腹筋で擦っていると射精したばかりのちんぽが容積を瞬く間に増していく。ヤマトさんにゆるゆるとちんぽを扱かれながら、舌の表面全体を擦りあわせるようにキスを楽しむ。

 

 ヤマトさんのでかい尻へと手を伸ばし、捏ねあげてみるとゆさゆさと揺れて興奮をアピールしてくる。ビキニは今にも千切れそうなまでにちんぽで引き伸ばされており、上からではちんぽが丸見えだ。もはや亀頭をかろうじて隠す程度にしか役立っていない。

 

 ヤマトさんも悦んでくれている。それが童貞を卒業したばかりの雄に火を点ける。もっと快楽を与えあいたいとちんぽを跳ねさせていると、ヤマトさんが突然唇は引きはがしてしまう。

 

「んむぁ❤お゛ぅ❤❤あかんなぁ❤おっちゃんのが我慢できなくなってまうやろ❤」

「我慢なんて、しなくていいんじゃないですか。おれ、ヤマトさんともっと」

「がっついとるなぁ❤❤ええで、リュウくんのしたいこと全部おっちゃんにしてええからな❤」


 ヤマトさんは豊満な肉乳前代で、おれの胸を圧迫していた。その間にもずっと勢いの治まらないちんぽを手のひらで撫でまわし、肉球をねっとりとした汁で濡らしていた。

 おれの頭を引き寄せると、耳を甘噛みしながら、耳の奥へと囁きかけてくる。

 

「ベッドまで我慢できへんし、ここでしよか❤狭いからバックでしかできへんけど、ええよなぁ❤❤❤」

「う、後ろから……」


 風呂場なんかでヤマトさんとセックスできる。でかい尻を鷲掴みにして、風呂場のタイルに身体を押し付け、喘ぐヤマトさんを想像しておれの声は昂りきっていた。

 震えるおれからそっと離れ、ヤマトさんは浴槽の反対側へ両手をついていた。

 

 そうすれば、おれの前へと突き出される。ビキニを谷間へと食い込ませたオレンジ色の尻。昨日、おれが童貞を捨てた肉の塊が、濃い雌の匂いを滲ませて目の前で揺れていた。

 

「ほれ、あんま見んといてや❤❤こないなデカケツじろじろ見られんの、結構恥ずかしいんやから❤」

「き、昨日は平気で見せてたのに」

「ラブコメならこないな台詞も大事やろぉ❤おっちゃん恥ずかしゅうてドキドキしてまうわ❤❤見てへんと、はよちんぽハメて欲しいわ❤」


 ヤマトさんは浴槽の縁に手をついたままおれへニタニタした笑顔を見せ、おもむろにデカ乳を浴槽の中に沈み込ませた。顔が湯につくほどに腰を前景させると、お湯で毛皮をへたらせたデカ尻をおれの眼前でゆっくりと躍らせた。

 

 真っ白なビキニは尻に谷間にぴっちりと貼り付いているせいで、その中に隠されているものが浮き上がっていた。谷間の中央でぷっくりと膨れた土手状の肉。白い布地から透けている赤黒い肉。生臭い匂いでビキニをぬるつかせているそれを見つめていると喉がからからに乾く。この渇きを濡れた雌の肉で潤したい。

 

「ヤ、ヤマトさん。マンコがビキニの上から見えてます……。そこに、キスしたい。いいです、か」

「んあぁ❤そないなこと言わんといて❤❤おっちゃん、オメコこんな近くで見られたん初めてなんやから……❤❤❤」


 そんなはずがない。それが本当ならばあんな熟れて貪欲なマンコになるはずがなく、粘ついた愛液で谷間をぬるつかせているはずがない。

 おれを昂らせるための嘘だと分かっていても、ちんぽは馬鹿正直に硬くなっている。立ち上がると、みっしりと肉が詰まった豊かな尻たぶに先走りのぬるぬるをちんぽで塗り拡げる。太くて長い竿で尻を何度も叩くと恭順を示すように両脚を拡げ、さらに上半身を前傾させ、尻全体を高く持ち上げて、尻に谷間が見えやすいようにしてくれる。

 

 みっちりと詰まった尻に谷間が拡がると、ビキニの布地がギリギリまで細くなり、はみ出してしまったマンコ肉がひくついていた。昨日、舐め回してちんぽをぶちこんだ雌の肉は明るい風呂場で見るとグロテスクにさえ思える形をしていた。グボグボと、中から汁を噴きこぼして入口の肉をうねらせるそれは貪欲な生物のようだった。

 

「どや❤おっちゃんのオメコよう見えとるか❤❤美味そうやろ❤」


 ヤマトさんの言う通りだった。グロテスクなはずのその性器はたっぷりと肉が付いた貝のように思えてしまう。その肉厚な身にしゃぶりついて、エキスを吸い上げたい。

 湯舟の中へとしゃがみこんで、尻に中心近くの肉を掴み左右に拡げてやると歓喜したようにマンコが愛液を噴きこぼした。

 

「あ゛おぅぅ❤❤あっ❤そないに拡げられた丸見えになってまう❤」


 ヤマトさんは悲鳴をあげながら、挑発するように尻肉を揺すりたてていた。恥じらいを訴えつつも尻を卑しく回し始め、交尾を催促する。

 すぐにキスをしたかったが、焦らずにビキニへと手を伸ばす。がっついてマンコを犯すのでは昨日と同じだ。昨日できなった欲望をヤマトさんにぶつけてやりたかった。

 

 震える指先を尻に谷間へ食い込むビキニへ引っかけて、尻たぶに布地がへばりつくようにずらす。すると拘束具から解放されたようにマンコ肉が蠢いて、雌の匂いを強くする。

 

「はや、くうぅ❤❤オメコとキス――ひぃん❤❤❤」


 でかい尻の筋肉に力がこもり巌のように硬くなる。肛門へ舌の腹を押し付けてやると力強くそびえていた二本の脚が情けなく内股になり、身体の支えをどうにか維持しようと間歇的に震えを繰り返していた。

 昨日もキスをした場所へと、乱暴に舌を這いまわらせる。昨日よりも余裕を無くしたような喘ぎに舌はいっそう貪欲に動く。湯舟に浸かっていたいたおかげかマンコはすっかり火照っており、おれの舌が溶けてしまいそうだ。

 

「ん゛っひいぃいぃ❤❤おおぅ❤ええで❤❤リュウくんのクンニ上手すぎでぇ❤すぐに、イキッそうやあぁぁ❤❤❤」


 その言葉が尻の動きに反映されていた。おれの舌を歓迎するように肛門が舌へとしゃぶりついてきて、尻肉はおれの方へとさらに突き出されてくる。

 躊躇いなく、おれも舌を力強く突き入れた。腸内を無理やりに押し広げながら無法にマンコ壁を舐め回す。

 

「お゛、お゛おおおぅうぅ❤❤❤」


 昨日のセックスで虎マンコの弱い部分は把握していた。尻に谷間に顔を潜り込ませて、肛門を口内へ収めるまでくっつけると舌肉でマンコ肉のしこりを弄ぶ。コリコリとしたそこを舌先で突くと、ヤマトさんの尻から落ち着きが失われていく。

 

「ん゛お゛っ❤❤そご、たまらへんっ❤突いて❤おっちゃんのメスになってまうとこごりごりしでえぇ❤❤❤」


 ヤマトさんの腸内にある膨らみを荒々しく舌で抉ってから丁寧に撫でまわすようにくすぐる。おれが何をしてもヤマトさんは悦んでくれて、マンコからはひっきりなしに蜜が溢れていた。

 もったいない。舌が引っこ抜かれそうなぐらいに締め付けてくる肛門から引き抜いて。そのまま肛門に蓋をするように舌腹で覆い、ゆっくりと上下させて淫蜜を舐め回してやる。

 

「お゛おおぉほおおぉおぉ~~~~❤❤オメコとろけるぅうぅう❤❤❤んっひぃぃ❤おおぉ❤❤」


 それまでと比べればもどかしいはずの刺激でも、ヤマトさんは官能を掘り起こされたように喘ぎ、ちんぽから汁を漏らす。湯舟の中には海に浮いた脂のように我慢汁が光っていた。マンコからの匂いが入浴剤のものと混ざり合い、頭をくらくらとさせる。

 尻を震わせて、おれの拙い愛撫に悦んでくれるヤマトさんにおれも我慢が効かなくなっていた。

 

「ヤマトさん、すげえエロいです。おれ、もう」

「んううぅ❤ええで❤❤リュウくんの好きなようにオメコ犯してええからな❤今日はおっちゃんワンちゃんみたいに大人しゅうしたるわ❤❤」


 尻を振っていたヤマトさんは、浴槽の縁から手を離すと自ら尻を割り開いてただれた淫部を曝け出す。そして、しなやかな尻尾の先を用いてマンコをつんつん、と突いては尻尾とマンコの間にねばついた淫糸の橋をかける。

 

「ほれ、ここに挿れるんやでぇ❤❤焦らんでええから、落ち着いてな❤❤❤」


 ごくり、と喉を鳴らした。でかい尻を自分で鷲掴みにして、ちんぽをねだるそのいやらしさに脳みそが沸騰しそうだった。

 おれは食虫花に吸い寄せられる虫のように、熟れて火照ったマンコに引き寄せられる。

 収縮と開放を繰り返し呼吸しているマンコ肉へちんぽの先端をくっつけるとちゅうちゅうと吸い付いてくる。その感触におれはたまらず悲鳴をあげた。

 

「うくぅ!ヤマトさ、うぅあっ」

「お゛っ❤そこや❤❤そのまま腰を押し込んでみぃ❤おっちゃんのオメコん中、ちんぽ❤ちんぽきてぇ❤❤」


 ヤマトさんがでかい尻をおれに向かって押し込むのに合わせて、おれも腰を前方に送り込む。おれのちんぽがマンコの中に飲み込まれていく!

 

「お゛お゛おぅうお゛おおおぉぉ❤❤❤ちんぽ来たあ゛ああぁぁ❤❤❤❤」


 亀頭が肉の輪にめりこんでいくと、ヤマトさんは尻尾の先まで電撃を流されたみたいに身体を震わせた。尻尾がのたうって、舌先までも別個の生き物のようにうねうねと踊る。

 マンコの反応は更に劇的だった。ちんぽがマンコ肉で抱きしめられて、血管の凸凹すらも感じ取らんと密着していた。その圧倒的な快楽に腰は勝手に進み、一気に最奥までたどり着き、迎えに降りてきていた結腸の輪のような入口に亀頭がキスをする。

 

「ほっほお゛ほおぉおぉ❤❤❤でっがぁい❤でがぐでごっついちんぽがオメコのおぐぅううぅぅ❤❤あがんっ❤オメコメロメロになってまう゛うぅ❤❤おちんぽのものになりたがっどるうぅ❤❤❤」


 おれが結腸の入口へ亀頭を擦りつけるたびにヤマトさんは喜悦の声をあげる。おとなしくする、なんて約束も忘れもっともっとと催促するように大きな尻を自ら振り回し始めていた。

 

 ***

 

 その日の深夜2時。

 おれはイタドリ担当へメールを送った。

 原稿の催促への返信だ。『今まで風呂場でセックスしてました』と答えたらちんぽを踏みつぶされそうなのでテーマを練ってましたと誤魔化しておく。

 

 肝心のテーマは『虎おっさんとのありふれた日常』

 主人公は冴えない若者で、退屈な日常に虎おっさんがやってくる。世界の敵とか超能力とか魔法とかはないけれど、退屈な日々が虎おっさんといるとなんでも楽しくなるそんな物語。

 

 そして、メールを送って数分で返信が来た。

 怒りが伝わりそうな文体で仕事が遅いだの人が仕事をしている間も猿のようにセックスをして実に羨ましいですねと嫌味を書き連ねた最後に、こう付け加えられていた。

 

 『テーマはそれで行きましょう』

 

 ***

 

「うんぬぬぬぬ……」


 イタドリ担当からテーマにオッケーを貰って、一か月ほど経った日。

 おれはいつものようにうなり声をあげていた。いつものように、ではないか。最近はすらすらと書けてたんだ。朝が来たら太陽が昇るみたいに、自然に文字をつづることができた。

 

 それが今日は朝からエンジンみたいなうなり声をあげっぱなしでキーボードを叩く手が進まない。

 原因は明白。序盤を越えて物語の主人公と虎おっさんが互いの存在に慣れてきて、エロシーンもいくつか挟めるようになったころだ。

 物語的には山場が欲しい。

 凌辱モノで言うと主人公が初めてのアクメをキメちゃうようななにか。

 

「どんなトラブルが欲しい?」


 と聞いてみても画面の中の登場人物たちは迷惑そうに顔をしかめた。

 そりゃそうだ。トラブルをこいつらが欲しがるわけがない。

 でも、作者としてはそうはいかない。ここらへんでトラブルを乗り越えさせて、二人の仲をもっと進めたいんだけど、どんなイベントを用意してあげればいいんだろう。

 

「なんやリュウくん、まーたスランプかいな?」


 おれの隣で洗濯物を畳み終えたヤマトさんがノートパソコンを覗き込んできた。この一か月の間で互いの存在にだいぶ慣れて、リュウくんって呼び方にもいちいちドギマギしなくなった。ついでに、ヤマトさんの体臭や急に距離を詰めてくる行為にも。

 

「ふんふん、お話の中盤のあたりやな。ここらへんはどしたらええか舵取りに悩むやろなー」


 おれの気も知らずにヤマトさんはキーボードをカタカタとやって書きかけの小説を確認していた。本当は良くないんだけど、ヤマトさんは小説についておれの予想していなかった意見や感想をくれるものだから、たまに小説を見て貰っている。ついでに、誤字や誤用を見つけるのも得意だ。

 

「ヤマトさんなら、どうしますかね。普通のラブコメならどんな山場に合わせたらいいのか分からなくって」

「山場なあ。おっちゃんも思いつかへんなー。とりあえずイチャイチャさせときゃ盛り上がるんちゃう?」


 たまーに参考にならないアドヴァイスを返してくるけど。

 そもそも家事を全てやってもらえるだけでありがたいのだからこれ以上要求するべきではない。

 おれはため息を落してパソコンを落すと伸びをする。こんな時は新しく買った小説でも読んで切り替えるのが一番だ。

 

「お、休憩にしよか。おっちゃんも家事がひと段落ついたところや」


 休憩に入るのを見越していたのか、さっそくコーヒーを準備してくれる。ヤマトさんの煎れるコーヒーはチェーン店で頼むいつものものと違って、ドロリとしていてポタージュスープみたいだ。苦味と匂いが濃厚なそれに、それにミルクと砂糖をたっぷりと入れて飲み干すと頭が一発でシャッキリする。

 

「今日のお茶請けはチョコレートや。リュウくん、好きなの取ってええで」


 そしていつものようにお茶請けのお菓子も用意してくれた。毎日お菓子を準備してくれるのはありがたいんだが、明らかに贈答品用の箱に入っているのが不思議だ。クッキーや聞いたこともないような外国のお菓子が、高級そうな箱に入ったままテーブルの上に並べられる。

 この箱はヤマトさんが買い物に行くついでに持ってくるのだが、どうやって手に入れたのか聞いても『貰ったんや』としか言わない。こんなもの毎日貰えるって何者なのだろう。


 そんなことを考えながらSNSを開くと、通知がいくつか付いていた。新作の宣伝も兼ねてあげた短編が拡散されたり、感想を貰ったりしているようだ。感想を付けてくれたのは大体いつもの人たちで、当然アオヤマさんもいた。真っ先に長文感想をくれていたのが嬉しくて、早速返信をする。

 

「いつも感想ありがとうございます……っと。この人、いつもすぐに読んでくれるんだよなぁ」


 おれが呟くとすぐに反応をくれるし、四六時中おれのアカウントの監視でもしてるんだろうか。ヤマトさんもだけど、アオヤマさんもなんの仕事をしてるかなかなか謎だな。ありがたい人だけどさ。

 

 他の人にもお礼の返信をしたりしていると、ヤマトさんもなにやら難しい顔をしてスマホをいじっていた。獣人用のでかいスマホでも尚巨体に比べて小さい画面を見て、指をせわしなく動かしている。

 

「ヤマトさん、スマホゲームでもしてるんですか」

「んぁ、そんなとこやなー」

「なんてゲームなんですか?有名なやつ」

「そこそこ有名なやつやなー」


 何回訪ねてもこんな調子ではぐらかされて教えてくれない。ヤマトさんにだってプライベートはあるんだし、しつこく確かめることが良くないと分かっていても、ちょっとだけ寂しい。

 あ、ラブコメでのトラブルはこれでいこうかな。今のおれみたいにちょっとしたことで心の壁を感じて、すれ違ってしまうみたいな……

 

 頭の中で霧のように拡がっていたアイディアが、徐々に形を成していく。その次の展開はこうして、とアイディアが連鎖反応を起こす感覚はいつも爽快だ。気づくとキーボードを叩いて次の展開についてメモを残していた。

 

「お、もう休憩終わりなんか?真面目で偉いなぁ、リュウくん」

「良い展開を思いついたんで。なんとかなりそうです」

「さすがやなぁリュウくん!これはご褒美をあげなあかんな!」

「えっ、ご褒美ですか?いやでも仕事中ですし……」


 ヤマトさんのいうご褒美は絶対エッチなことに決まっていると股間を硬くしていると、ヤマトさんが『そっちのご褒美ちゃうわ!』と大げさに手を振って否定する。

 代わりに見せてきたのはスマホの画面であり、そこには遊園地の公式サイトが表示されていた。某国民的テーマパークなんかとは違う、そこそこ程度の遊園地だ。名前は知っているが一度も足を運んだことがない。

 

「今度、お仕事休んで遊園地はどうや?おっちゃんお弁当作るし車も出したるでぇ!」

「ヤマトさん、車も持ってたんですか?」

「そんな高級やない普通車やけどな。ラブコメゆうたら一度ぐらいは遊園地行かなあかんやろ?デートしようや」


 デートって言葉に童貞のみんなが憧れないはずがない。遊園地デートは本当ならば感極まって泣いてしまうぐらい嬉しい、はずだ。

 でも今はヤマトさんの正体のことで頭がいっぱいだった。買い物の時以外はずっとおれの家で家事手伝いとセックスをする時間があって、車を買えるぐらいの経済力があって、あんなにでかい乳と尻をしていて。イタドリ編集の関係者っぽい。

 

 イタドリ担当に金で雇われている?おれが知らなかっただけで、世の中には作家のサポートをするための家政婦みたいな仕事があり、必要ならばセックスまでしてくれる。

 

 あるわけないし、存在しても売れない作家のおれに金を使ってまでそんな人を用意するわけがない。

 

「お、信じ取らんか?ちゃんと免許もあるんやでーほれほれ」


 そうしてヤマトさんが突き出した免許証には、今と大して変わらない顔の虎がにかっと笑って写っていた。名前には『虎枝 山人』と記されている。

 偽名じゃない。イタドリ担当と同じ苗字だし、関係者であるのは確かなようだ。

 もしかして、イタドリ担当がおれのために親戚のおじさんとかお兄さんを用意してくれたとか?あの冷血漢な鬼担当が?無いな。

 

「……ヤマトさんって、何者なんですか?」


 聞くべきじゃないと分かっていても、知りたかった。ヤマトさんとおれはこの一か月でそれなりに仲良くなっていて。何回もセックスをしている人のことを何も知らないのがイヤだった。


「どしたんや、急に」

「おれ、ヤマトさんのこと何も知らないんだなと思ったので。普段のお仕事とか何をしてるのか、知りたくて」

「にはは!いつもの仕事も今と変わらんて。ご飯作って、スマホやパソコンいじって、寝ておしまいや」

「いや、でも」

「そないなことより遊園地はいつにしよか?せっかくやし、原稿の目途がついたころがええよな。気兼ねなく遊べるし」


 はぐらかされてしまった。

 おれがこれ以上問うても答えるつもりは無いと言うように、ヤマトさんは台所に立って夕食の準備を初めてしまった。腰のあたりでエプロンの紐を結んで、でかい尻を揺すっている。

 こうなると、おれが何を聞いても『ご飯できるまでええ子にしとき!』とはねつけられてしまう。唯一リアクションを返してくれるのは尻を撫でてセックスをねだる時だけ。でも、セックスを始めたらおれたちはケダモノじみた喘ぎ声の応酬しかできなくなるだろう。

 

「どうしても、教えてくれないんですか?」

「せやから何も隠してへんて。ええからお仕事しとき」

 

 どうやら、おれはヤマトさんから心を完全に開かれていないようだった。セックスをして恥ずかしい姿を晒しているのに、何の仕事をしているのかも教えてくれないなんて。


 はあ、とため息を吐いてキーボードをたたき始めると、背中を向けながらヤマトさんがあやすような声をかけてくる。

 

「したら、新作が重版になったら教えたるわ。あと、おっちゃんの身体でご褒美あげるわ。せやから今は余計な事考えんとお仕事しとくんがええわ」


 重版になったら、か。おれの作品は重版どころか、完結まで続いたことすらない。デビュー作は続きを匂わせたまま終わり、次の作品は全4巻の予定が3巻で打ち切り。作品が重版したらって条件は非現実的すぎて。暗に諦めろと言われているように思えた。

 

「ヤマトさんは、本当に重版になると思えます?」

「余裕やろ。リュウくんにおっちゃんのことなーんでも教えたるからな、楽しみに待っとき」


 せいぜい楽しみにしてますよ、とイヤミっぽい声で答えてからノートパソコンの画面へと向き直る。

 ヤマトさんは関係無しに原稿は完成させなければいけない。この仕事を続けるためには今度こそ重版童貞を捨てなければいけない。今は、ヤマトさんよりもおれの産んだキャラクターたちの事を考える時だ。

 

 原稿を完成させて、きっと重版童貞を卒業して。あわよくばイタドリ担当とヤマトさんをちんぽでヒィヒィ言わせてやれますように。

 

 ***

 

 今度遊びに行こう。

 曖昧な期日のせいで、気づけば遊園地に行こうと約束をしてからだいぶ経っていた。主な原因はおれの進捗がやばかったせいだけど。

 寝るときにはクーラーのお世話にならずにすんで、帰ってすぐにシャワーを浴びる必要も無くなった。コーヒーをがぶ飲みし、ヤマトさんにおっぱいとかケツで甘やかされて、苦節数か月にしてようやく完成が見えてきた。遊園地も今週末には行ける。

 

 今回は難産だったけど、中盤を越えてあとはエンディングまで突っ走るだけ。タイトルも決まった。前にイタドリ担当に伝えたテーマと同じ『おれと虎おっさんのささやかな日常』

 馬鹿みたいにストレートだけど、イタドリ担当曰く今時はタイトルで作品の内容が全て分かるぐらいドストレートなのが流行らしい。それはなんとなく理解できていたので、テーマをそのまんまタイトルにした。

 

 イタドリ担当曰く、作品の一巻目が売れないのは担当のせい。二巻目以降が売れないのは作者のせいとのこと。それが偽りではないと証明するようにイタドリ担当は帯や表紙デザイン、依頼するイラストレーターまで熱心に話し合ってくれた。冷血漢で仕事に感情を持ち込まないくせに、情熱を持って仕事をしているというわけのわからない男。それがイタドリ担当である。

 

『挿絵のラフが上がりました。すみやかに確認してください』


 簡潔な指示のついでに大量の罵倒と画像が添付されたメールを開くと冴えない感じの主人公と縦にも横にも馬鹿でかい虎おっさんのイラストラフが表示されていた。主人公は微妙におれに似ている気がして、虎おっさんの方はヤマトさんにそっくりだった。もちろん顔なんかは違うんだけど、雰囲気が。書く時にずっとヤマトさんを思い浮かべていたからだろうか。

 

 おれの考えたヒロイン――虎おっさんの青木大和(あおき やまと)のキャラデザインはヤマトさんに良く似ている。ヤマトさんの外見特徴をそのまんま書いていたわけじゃないのに、特徴がうまく捉えられている。強面な顔つきをしてるのに、朗らかに笑うと印象がまるっきり変わるところとか。

 おれの原稿と、送ったいくつかの指示だけでここまでぴったりはまったものを書けるなんて、イタドリ担当は良いイラストレーターを雇ってくれたようだ。お礼を言っておかないと。

 

「ヤマトさーん、ちょっとこっち来てくれませんか」


 お風呂の掃除をしていたヤマトさんを呼ぶ。

 ひょこっと洗面所のドアから顔を出したヤマトさんは白くてフリフリのエプロンにビキニというはしたなすぎる恰好をしていた。それを見て勃起はしても動揺しないあたりおれも成長したものだ。

 

「ほいほい、どしたんや」

「いいもの見せてあげるんでこっち来ませんか?」

「ええもん?」


 エプロンで手を拭きつつやってきたヤマトさんを、パソコンの正面へ。

 男らしい声が、途端に鼓膜を揺らした。

 

「おっ!?おおっ!こりゃぁおっちゃんやないか!おーこっちはリュウくんかっ!えろう似とるやないか!これリュウくんの方のイラストやんな!?ここまで似るもんなんやなぁ!」


 ヤマトさんは目を輝かせて虎おっさんと主人公のイラストを見比べていた。虎おっさんの方はともかく、主人公の方はそんなに似てるかな。大げさなリアクションが気になりつつも、ヤマトさんをモデルに虎おっさんのヒロインを考え、キャラデザも合わせてもらったことを説明する。

 

「おっちゃんがヒロインかぁ。まさかおっちゃんがモデルにされるとは思わんかったわぁ」

「今更?ヤマトさんってラブコメを書くために派遣されてるんだし、モデルにするのも当たり前だと思いますけど」

「あ、あー?せやったね。ちょっとびっくりして忘れてもうたわ」


 珍しく狼狽えた様子で頭をがりがりと掻いている。自覚が足りない人だなあ。おれの渾身の一作のヒロインなんだぞ。読者の胸をキュンキュンさせるようなヒロインでいて貰わないと困るぞ。

 

「にはは!そっかぁ、リュウくんの原稿も大詰めって感じやねぇ。もうちょいで完成なんやない?」

「そう、ですね。来月中には作業は全部終わると思います」

「そかそか、初めてのエロラブコメもようやく完成かぁ」


 まだまだやるべき作業は残っているけど、ようやく終わりは見えてきた。イタドリ担当と話し合って、作品を詰めてイラストを見ながらキャラクターの印象を整える。

 もうすぐ、おれの初めてのエロラブコメ。おれの魂を売った作品がもうすぐ終わる。

 

「……売れたら、いいんですけどね」


 魂を売ることは、大して辛くない。本当につらいのは魂を売ったって売れないこと。どれだけ流行や売れ筋に媚びても見て貰えないこと。それは、おれの力が無いって証明だからだ。

 トラヤマ先生みたいな凌辱小説を書きたいと思って、走り続けて頑張ってきた結果おれはエロラブコメに手を出した。これで売れなきゃ、おれのこれまでの作家人生はなんだってことになる。

 

「大丈夫やろぉ。イタドリ担当も売れる思うてゴーサイン出したんやろ?きっと重版するやろ」

「おれだって売れて欲しいけど。でも、売れなかったらおれ作家を続けていけるかなって」


 頑張って、積み上げてきたものを崩して作り上げたものすら否定されたら。遥か高くにはおれの憧れの人がいて、その人はおれなんかとは違ってたくさんの売れる名作を生み出している。虎門刑事シリーズのように、読んだ人の人生を変えてしまうような作品を作り出している。おれみたいに、作家を続けられるかどうかも怪しい作者とは偉い違いだ。

 

 おれも、トラヤマ先生みたいな作家になってみたかった。

 

「なんで過去形なんや。これから頑張ればなれるんちゃう?」

「いや、それは無理でしょう」


 作家をちょっと続けていると、自分がどんなランクかが見えてくる。世の中にはデビュー作が重版になってそのままアニメ化するような奴もいるし、仕事を続けながら作家もできてしまう秀才もいる。

 おれはそのどちらでもない。みじめったらしく作家にしがみついているけれど、実際は何かを作る才能なんかはなくて、憧れた人の模造品を作っているだけなんじゃないかとたまに思う。


「おっちゃんは、リュウくんの本が好きなんやけどなぁ。模造品なんかやないと思うで」


 ヤマトさんは純粋におれを気遣ってくれているんだろう。

 そういう人だ。

 でも、おれのちっぽけな自尊心は立ち上がれない。

 書いたことのないエロラブコメなんかに手を出して、レベルが上がったのだろうか。自分がどれだけちっぽけな存在で、トラヤマ先生との力量の差を痛感するようになった。

 

「……リュウくんは、トラヤマ先生の大ファンやなぁ。おっちゃんこんなに熱心なファン、見たことないで」

「ファンっていうか、憧れというか。たぶんトラヤマ先生がいなかったら小説家にもなってないと思います」


 本棚に並んだトラヤマ先生の作品を眺める。虎門刑事シリーズだけではなく、デビュー作となったハードな触手モノや数えきれないぐらい使用した社会人の調教モノ。

 どれもおれに影響を与えてくれた。あの作品たちがなかったら、おれという人間は生まれていない。勝手な言い草なんだけど、トラヤマ先生はおれの親みたいなものだ。

 

「そっかぁ。リュウくんはトラヤマ先生に惚れこんどるんやねぇ」


 そして、ヤマトさんは感極まった様子で涙ぐむ。大げさな人だ。

 ていうか、ヤマトさんもトラヤマ先生のファンじゃないか。

 

「あー、せやったね。でもリュウくんにはファンとしての熱量じゃ負けるわ。リュウくんはトラヤマ先生の作品は全部そろえとるん?」

「それはまあ、当然。限定版は大事に保管してますけど、見ます?」

「いやおっちゃんも持っとるからええわ。トラヤマ先生の新作も当然買うんやろ?」


 当然。トラヤマ先生は年に数巻は単行本を出版さる速筆でもある。

 長らく続いていたシリーズが終わり、次は新シリーズが出るということでトラヤマ先生のファンは色めきたっている。なんでも、トラヤマ先生の新境地ともいえる作品になるらしい。

 発売まであと二か月程度だが、まだタイトルや表紙すら公開されていない。おれのような木っ端作者がやったら自殺行為だが、トラヤマ先生ぐらいのブランド力があればそれも立派な宣伝として機能する。

 

「じゃあ、トラヤマ先生の本の後にリュウくんの本も出るんやね」

「完成したらですけど。あー、トラヤマ先生の後に出したくないなあ。先生、次はどんな作風なんだろう。気が狂ってラブコメとか書かないよなあ」

「気にすることあらへんやろ。ジャンルが被っとったら相乗効果っちゅうやつで余計に売れるかもしれへんし」

「おれは嫌なんですよ。売れても」


 それはちっぽけなプライドと自尊心。作品が売れるってことは、そのぶんおれの文とトラヤマ先生の文を見比べる読者が増えるってことだ。あーここはトラヤマ先生の作品と比べて粗が多いよねなどとしたり顔で酷評されたら死ぬしかないぞ。

 

「リュウくんは心配症やなぁ。大丈夫や大丈夫!おっちゃんが保障したる!リュウくんの本も売れるし重版童貞卒業するから安心しとき!」

「ヤマトさん保障されてもなあって感じなんですけど」

「もっと前向きにならんとアカンで!ここはパーッと気分を明るくしようやないか!」


 そしてヤマトさんが取り出したのはスマホに写し出された遊園地のチケット。成人二人組で、明日一日分。

 急だな、と思いつつも今が絶好のタイミングだと気が付いた。原稿は終わりが見えているけれど、完成したら完成したで校正や各書店に書き下ろす短編の書き下ろしなんかでまた忙しくなる。鬼のイタドリ担当がそう仕向けてくるに決まっている。

 

「せやろ?リュウくんにプレゼントもあるし、前祝いにいっぱい遊ぼうや」


 ヤマトさんのプレゼントっていったら、もういやらしいものしか思い浮かばないのだけど。


「やらしいモンやなくて、ちゃんとしたプレゼントやで?エッチなんも用意したるけど❤❤」


 声に媚びを滲ませて、身体をぴたりと擦り付けてくる。

 大きな手のひらで太ももを撫でられたりすると、おれにはもう拒否する発想は消え失せてしまうのだ。

 むぎゅっ、と裸エプロンごしの大胸筋を腕に押し付けられたらもう駄目だ。いつものヤマトさんの匂いが脳みそを揺り動かす。

 あーもう。じゃあおれもプレゼントを用意してやろうじゃないか。

 

「期待しとるでぇ❤オメコが悦ぶプレゼントでもええからな❤❤」


 そして雄臭い身体で覆いかぶさられる頃には、明日の遊園地のことも、ヤマトさんの用意してくれるプレゼントのことも忘れて肉の感触に夢中になっていた。


 ***

 

 その日は絶好の行楽日和だった。

 連休の真ん中だから、親子やカップルでの来園者が多い。みな、幸せそうな顔をして、お日様の光を楽しむようにのんびりと歩いている。人混みさえも、楽しさを盛り上げるスパイスだ。

 

「遊園地なんていつぶりかなぁ……」

「おっちゃんは結構来るで」

「え、デートですか?」

「いやいや、仕事の一環でや。プライベートで来るんは久しぶりやな」


 普段は家でスマホやパソコンをいじっていて、遊園地に来ることもある仕事ってなんだよ。と思ったが口には出さないで今日を楽しむことに集中する。

 遊園地デートなどこれが最初で最後かもしれない。隣を歩くヤマトさんはいつもと違って比較的露出が少ない服を着ており、カラフルなプリントがされたTシャツに膝丈のハーフパンツというラフな姿だ。恰好だけ見れば休日のお父さんに見えなくもない。

 

 おれとヤマトさんが並んで歩いてたら、どうみられるんだろう。

 

「そりゃラブラブカップルやろ~~!おっちゃんみたいなべっぴんさん連れ歩いとるからみんな羨ましそうにリュウくん見とるで!」

「不審者だと思われてるだけでは……」

「なんやテンション低いなぁ!おっちゃんお弁当も作ったんやで!恋人っぽいやろぉ!」


 ヤマトさんは凄いだろうとばかりにむちむちの胸を張る。Tシャツも相当大きいサイズなのだが、分厚すぎる大胸筋には物足りない様子で、乳肉のラインや乳首がくっきりと浮きだっていた。

 

「それは感謝してますけど。ちなみに中身は?」

「おにぎりがいっぱい……リュウくんの好きな昆布入っとるからな。ノリは後で巻くからパリパリしとるで。あと、ウィンナー炒めと卵焼きと唐揚げと小さいハンバーグと漬物と豚の角煮とローストビーフと……」

「肉が多すぎる!」

「ええやろ、おっちゃんが作ったんやから好きなもん入れるっ!」


 そう言われると文句は言えない。チケット代こそ自分の分は出したが、遊園地に来るまでの車だってヤマトさんが出してくれた。遊園地の下調べなんかはヤマトさんがやってくれた。

 何もかもヤマトさんに任せっきり。普段の家事だって完璧にやってくれるし、セックスの時もリードしてくれる。

 おれが勝てるところなんて、小説しか無いんじゃなかろうか。

 

「リュウくんの小説が売れたら今度はリュウくんがデートに誘ってや!おっちゃん今度は水族館がええわ」


 今度かあ。ヤマトさんはおれの小説の支援のために派遣されてきたはずなんだけど、完成した後も一緒にいてくれるってことなんだろうか。

 そう考えると遊園地ってシチュエーション関係無しに心が躍る。もう、本物の恋人と変わらないんじゃないか。

 

 そうなると、おれからもお礼をするべきかもしれない。家事から何まで世話して貰ってるし、おれ自身ヤマトさんに何かを返したい気持ちがある。

 

「ヤマトさん、欲しいものって何かありますか?小説が売れたらお祝いになんでも買ってあげますけど」

「包丁か、エプロンかやらしいグッズとかやな」

「変なものが混ざってるんですが」

「いやーリュウくんの家で使えるもんがええやん?包丁は切れ味悪いし、エプロンはぼろっちくなっとるし。エログッズは二人で楽しめるやろ?」

「分かった。じゃあ全部買ってあげますよ」

「おお!太っ腹やな!おっちゃんも気合入れたプレゼント送らんとあかんな!」


 そうして二人でたわいない会話を続けながら遊園地を回った。

 午前中に乗ったのはジェットコースターと空中のレールを自転車で進む恐怖感を煽るアトラクションで、どちらもそれなりに混んでいたので午前中の時間は二つを回っただけで潰れてしまった。

 だが、ヤマトさんが下調べしてくれていただけあって楽しいもので、終わった後は心臓がドキドキしっぱなしだった。ヤマトさんも高いところに昇るアトラクションが好きらしくずっとはしゃいでいて、笑顔をたっぷり堪能できたのも嬉しかった。

 

 お昼は、ピクニックエリアでヤマトさんの作った弁当を食べた。このエリアも家族連れでにぎわっていて、レジャーシートが花畑のように広がって緑色の芝生をカラフルにしている。

 弁当は宣言通りの肉まみれに加えて大量で、おにぎりなんか子どもの頭ぐらいある。それは10個近く詰め込まれているんだから、ヤマトさんはおれの胃袋を過大評価しすぎだと思う。

 

「ええからええから!この唐揚げが自信作やで!タンドリーチキン味や!」


 何がええから!なんだ。

 それはともかくとしてヤマトさんの作ったおにぎりもおかずも美味しかった。味の濃さもおれの好みにぴったり。おれの好みを覚えてくれたのか、それともおれの舌がヤマトさんに躾けられたのか。多分後者。

 おにぎりとおかずを根性で胃袋に詰め込み、食後のお茶を流し込んでからふーっと息を吐く。

 

「ん、もう疲れたん?」

「胃は限界ですけど体力はまだ余裕ですよ」

「そかそか。楽しんどる?」

「それはもちろん」


 アトラクションは楽しいしご飯も美味しいけど、いろんなことに喜んで、驚いて、笑っているヤマトさんを見るのも楽しい。

 最近読み漁ったラブコメで主人公が言っていた。デートは何処に行くかじゃなく、誰と行くかだって。読み流してしまった言葉が、今では良く理解できる。

 

「午後からはどこ行く?お化け屋敷とかも人気やけど、おっちゃんホラー系は苦手やねんな」

「知ってます。おれが一緒に見ようって誘ってもホラー系だけは逃げてくし」


 無理やり見せることはしないけど、タイトルだけで怖がって逃げていくヤマトさんが可愛いから毎回誘ってしまうのは秘密だ。おれもホラーは苦手だけど、あの顔を見るためだけにB級ホラー映画を何本も見てしまう。

 

「じゃあ、午後はゆったり空いてるアトラクションでも回ります?」

「ええな!あとお土産とか買って、最後はパレードみよっ!」


 もう消化を終えたのか、元気よく立ち上がったヤマトさんに引かれておれたちはゆっくりと園内を回ることにした。

 並んでいる人気のアトラクションには向かわず、小動物とのふれあい広場やさびれた感じのゲームコーナーでメダル集めにいそしんだり。派手で盛り上がるようなものじゃないけど、おれたちはゆっくり二人だけの時間を楽しんだ。

 

 時間はあっという間に流れ、気づくと西の空が真っ赤に染まっていた。空の半分に夜が溜まり始め、ゆっくりゆっくりと勢力を拡大していく。

 特別じゃないけど、特別な日。おれたちの初めてのデートはもうすぐ終わる。寂しくはなくて、ただ胸の中にじんわりと暖かいものが溜まっていた。思い出とか、幸せとか、形が無いけどおれの中に蓄積されていくもの。

 

「ヤマトさん、そろそろお土産見に行きましょうか。パレードが終わったらお土産屋さんも混むでしょうし……どうかしました?


 視線を隣に歩いている虎へと移したのは、夜空をじっと見上げていたから。藍色に染まっていく空を瞳に宿してから、イルミネーションの灯りを拡げていくアトラクションや遊園地のシンボルであるお城へと移す。

 

「今、ええ雰囲気やな」

「? そうですね。まあ、良いムードだと思います」


 そこら中でフナムシみたいにカップルたちがくっつきあって、いちゃついてやがる。不快害虫を見た時のように顔をしかめたくなるが、世間一般的には良いムードと言えるだろう。おれたちにはあんま関係無いけど。

 

「関係無い事無いやろ。おっちゃんもな、リュウくんに告白しよ思てな」


 愛の告白じゃないと分かったのは、ヤマトさんがニシシといたずらっぽく笑っていたからだ。

 それが残念だとは思わない。愛とか恋とかよりも、ヤマトさんからは聞きたい言葉があったから。こんなに長く一緒にいたのに恋心より優先される感情がある。おれにはやっぱりエロラブコメは向いてない。

 

「おっちゃんは何者なのか。もう教えたってもええと思ってな」

「重版になったら教えてくれるんじゃないですか?」

「いやー、その条件は簡単に叶いそうやからな。お礼とご褒美を兼ねて教えたってもええやろ?」


 おれがどれだけもう一つの童貞を捨てるのにクリアしたか教えてやりたい。ヤマトさんは何てこと無さそうに言うけれど、おれにとっては一生捨てられる気がしない呪いのようなものなのに。

 でも、口には出さずにヤマトさんとイルミネーションに彩られた遊園地の中を進。影を並べて歩きながら、ヤマトさんはぽつりぽつりと語り始める。

 

「おっちゃん、イタドリ担当は親戚なんや。せやからいろいろと融通利かせてもろてなあ。今回も世話んなったわ」

「今回もっていうと、おれの家に来たことですか?」

「せやせや。イタドリ担当はリュウくんの執筆をサポートするため言うとったけど、実際はおっちゃんの為だったわけや」


 それは驚くことではない。

 おれのような万年童貞作家のためにわざわざ人を雇うほど編集部に金が溢れているはずがない。ならば、おれではない誰かのためにヤマトさんを寄越したと考えるのが妥当だ。その『誰か』はヤマトさん自身であると考えるのが一番筋道が通る。

 

「せやな。でもおっちゃんの目的は分からないんやろ?リュウくん、分かったら鼻息荒くして言いそうなタイプやもんな」


 認めるのが悔しくてそっぽを向く。

 ヤマトさんの指摘の通り、おれはヤマトさんの正体にたどり着けていない。おれの家に転がり込んできた理由。その職業。おれの家でハウスキーパー紛いのことをする目的。そして、何故おれではならなかったのか。

 全ての疑問が解消される答えをおれは見つけられていない。

 

「そんな大した理由や無いんやけどな。おっちゃんの仕事が上手くいかんから、手伝ってもらいたかったんや」

「手伝うって、おれはヤマトさんの仕事を手伝ってことなんて」

「いんやーだいぶ助かったで。リュウくんとどうでもいいこと話して、一緒にご飯食べたり、ヤったり。ぜーんぶおっちゃんは助けになってたんや」


 ヤマトさんの出したヒントはおれを答えから遠ざける。助けてもらったのはおれの方じゃないか。ヤマトさんがいなければエロラブコメを書けるわけがなかった。ただ話のネタを探すためじゃなく、好きな人と話せばどんな気分になるか、一緒に夕飯を作るだけでも幸せになれるかなんておれは知ることができなかった。おれはヤマトさんに何もしてやれてないはずだぞ。

 

「分からんやろけど、それが答えや。おっちゃんは仕事のためにリュウ君の家に居候させて貰ったんや。料理作ったり、いちゃついてたんも仕事のため。セックスしたんはおっちゃんが楽しみたかったからやけど」


 仕事のためだったと言われても傷つきはしない。おれも仕事のためにヤマトさんと同居していたんだから。そして、仕事抜きでもヤマトさんとは一緒にいて楽しかった。仕事が終わったとしても、原稿が完成したとしても終わる関係じゃないと思っている。


 ヤマトさんも、口には出さないけれどそう思ってくれている。そんな気がした。愛の告白はないし、相手の気持ちを想像して思い悩んだりもしていない。でも、なんとなく。派手で感動モノのシーンはないけれど心が通じ合っている。

 

「せやな」


 ヤマトさんはおれの気持ちを肯定するように牙を見せて笑う。いつものように。おれが大好きな顔で。

 

「実はなぁ、リュウくんやなくって誰でも良かったんや。おっちゃんのこと惚れてくれそうで、おっちゃんが惚れてまうような男なら誰でもな」

「誰でもいいなら、なんで?」

「誰でも良かったけど、リュウくんが良かったからや。ラブラブになって、セックスして、こうしてデートするならリュウくんがええなって」


 おれが良かった。

 ヤマトさんならどんな男でも選べる中で、おれを選んでくれた。それはきっと栄誉なことなのだろうけど、おれの知りたい謎に答えてくれていない。

 

「おれたちは、会ったことも無いのに?」


 おれの人生にヤマトさんと関りなんてないはずだった。

 あったら忘れない。絶対。こんなエロい虎がいたら絶対に脳細胞に焼き付けるまでズリネタにするに決まっている。

 

 だから断言できる。おれはヤマトさんと『会った』ことは一度も無い。

 答えを導き出せる。なればヤマトさんがおれを知っている理由は、一つしか考えられない。

 

「小説でおれを知っている……んじゃないですね」

「なんでや?リュウくんの大ファンやから押しかけたっちゅーこともあるやろ?」

「おれの好物です。おれは自分の好物や嫌いな物について小説のあとがきで話してるんですけど、ヤマトさんはそれについて触れませんでした」


 スーパーで買い物をするとき、ヤマトさんはおれの好物を言い当ててみせた。でも、ヤマトさんはおれの小説を見て判断したとは言わなかった。ファンならおれの小説は全て見るべき、とは言わないがおれの小説を見て惚れたなら個人情報を少しでも知るため、あとがきにまでチェックを入れると思う。

 でも、ヤマトさんがおれの好物を判断したのは小説じゃなくて――

 

「SNSでした。ヤマトさんがおれを知ったのはSNSからです。だから小説じゃなくて呟いた内容からおれの情報を把握していた」


 ヤマトさんは何も言わずに愉快そうに尻尾を揺らしている。

 正解だ、ということなのだろう。

 そこまで思い至れば答えに辿り着ける。ヤマトさんは『おっちゃんのこと惚れてくれそうで』と言った。その判断をするならば、ヤマトさんが一方的に知っているんじゃなくおれとコミュニケーションを取っている間柄じゃなければ無理だ。

 

 おれが好意を抱いていると判断できるほどに交流がある相手。呟きが少なく、交流相手が少ないおれのアカウントでそこまでの交流がある相手なんて限られる。

 

「リュウくんは作家やし、分かるやんな?ファンやったら、作家のことが大好きやし何回も感想送ってまうから、ついつい話してまうんや」


 ヤマトさんが懐を漁ると同時におれの頭の中で線が全て繋がった。

 作家とファン。ヤマトさんの職業。ヤマトさんがおれの家に来た理由。全てだ。

 

 ヤマトさんは、あなたは。

 

「ずっと、リュウくんに会って話してみたいって思っとったんや。スマホ使ってやなくって、どんな声しとるのかとか、どんな匂いがするかとか、ぜーんぶ気になってもうてな」


 少し照れくさそうにしながら突き出されたのはSNSのアカウント。

 そこに映るのはおれが忘れるはずもない名前とアイコン。

 

「リュウくんとはいつもこっちのアカウントで話しとったよな。リュウくんと話すたんびにおっちゃん嬉しくって、幸せやったんや」


 おれだってそうだ。

 ああ、そうだ。毎日その名前を見て。SNSで少し話すだけでも喜びが湧き上がって。おれが、ずっと会いたかったひと。

 

「改めて挨拶しよか。おっちゃんは虎杖山人。もう一個の名前はな――」


 ***

 

「先生!重版おめでとうございまーす!」


 新作発売から3日後。

 イタドリ担当がおれの家へとやって来て、重版決定のお祝いをしてくれた。この時ばかりはいつもイヤミったらしい笑顔しかしないイタドリ担当も満面の笑みを咲かせている。

 

「さすが先生ですね。発売3日で重版決定ですよ。これは私も心を込めてボーナスをあげないといけませんね」


 ちなみに、重版するかどうかってのは初動売り上げというヤツが大きく関係してくる。要するに、新刊が発売された直後に売れた冊数のことなのだが、この数字を見て大体の書籍は続刊が出せるのか、出せるとしても何巻くらいなのかが判断される。この数字が芳しくないと、発売一週間で打ち切りが決まるし重版はされなくなる。

 

「先生の作風と違っていたんですが、ファンの反応が良かったみたいですね。感想とかファンアートがたくさんアップされてまして。専門店でも売り切れが続出してますし、2巻前に再重版もありえますね」


 なんて素晴らしい。

 これだけの売り上げが出たら作家としては安泰だ。2巻も間違いなく出せるだろうし、シリーズ化して長い間売れる作品になるかもしれない。

 結局のところ、作家としての地力さえあればジャンルが変わったとしてもファンは追いかけてくれるし、結果が伴うのだ。

 

「今回はどんなご褒美がいいですかね?前みたいにデートコースがいいですか?この家で同居人の前で見せつけセックスでもします?これだけ頑張ってくれたんですから、なんでもお願いを聞いちゃいますよ、ふふ」


 イタドリ担当はきっちりしているスーツ姿のまましなだれかかり、重版が決定した優秀な作家へと媚を売るようにおっぱいを押し付ける。

 ああ、なんて素晴らしいんだろう。この性格最悪で鉄面皮の皮肉屋の担当がなんでもお願いを聞いてくれて、マゾ奴隷のように扱う権利が与えられるのだ。

 イタドリ担当をオナホみたいに使い倒して、おれのちんぽのものになりますと言わせてやるのがおれの夢だった。

 

「いつもみたいにガツガツして押し倒してくださっていいんですが、遠慮されてます?いいんですよ、ここまでのヒットは編集部としても異例のことなんです。どこの書店でも平積みされて、宣伝に力が入ってますよ」


 本屋を何軒かチェックしてみたが、どこも店員手書きのポップなんかで目立つように並べられているし、SNSではいくつもファンアートが描かれている。売り上げが売り上げを呼んで、新作『虎おっさんときみと』は異例の大ヒット作となった。

 

 重版決定。

 SNSで喜ぶファン。

 媚びて甘えるイタドリ担当。

 どれもおれが欲しかったもの。

 

 ただし、手に入れたのはおれではないんだが。

 

「いやぁ、今回の作品『も』重版とは本当に素晴らしいです、トラヤマ先生❤」


 そしてイタドリ担当は今回大ヒットを飛ばしたベストセラー作家の腕へと頬ずりをした。おれと違って逞しい腕。おれと違って毛皮の生えた身体。気まずそうにしているいかつい虎の男。

 

 おれの同居人。イタドリヤマトもといトラヤマジョウト先生は『ええ加減にせい!』とイタドリ担当を引っぺがした。

 

「リュウくんが妬いとるやろっ!今はリュウくん専用のオメコなんやから馴れ馴れしくせんといて!汚らわしいわ!」

「いつもは重版決定するたびにご奉仕してきたのに酷い言い草ですねえ。取材の為に同居してたのに、本気になっちゃったんですか?」


 トラヤマジョウト。

 おれの憧れていた作家の正体が、淫乱で豪快なこの虎の中年だと知った時は頭が追いつかなかった。

 真相は単純なもので、おれと同じくエロラブコメを書く参考のために適当な相手と同居生活を送る必要があった。トラヤマ先生みたいな大作家なら編集部も金と手間を惜しまない。どうせならそこのボンクラ作家も同じジャンルを書くし同居させるか、といったノリで決まったようだ。

 

「それはちゃうで!おっちゃんがリュウくんを希望したんやからな!」

「わざわざ冴えない童貞を選ばなくてもいいじゃないかと言ったんですけどね。ま、タイミング的はちょうど良かったですけど」

「リュウくんじゃなきゃあかん!おっちゃんが本出すたんびに毎回感想送ってくれるし、絶対相性ええわって思ったんや」


 おれが選ばれたのはなんてことはない。トラヤマ先生の大ファンだから感想を送っていて、トラヤマさんは感想を送っていたおれを気に入ってくれて。

 そんな理由でって思ったけど、おれもアオヤマさんとか良く感想をくれる人は覚えてるもんなあ。


 改めて確認すると、大した真相じゃない。トラヤマ先生だと知らずに、虎門刑事シリーズの感想を熱く語ったり、いかにトラヤマ先生が素晴らしいかを伝えたりしたのは思い返すと恥ずかしいが、良しとしよう。

 

 知りたいのは、なんでおれと同じエロラブコメなんか書いてるのかだ。しかも、虎おっさんと冴えない男の同居なんて題材も丸被りじゃねえか!

 

「あー、それは偶然なんよ。ほんまに」

「そうですねえ、エロラブコメは新しいテーマで書きたいってことで決まったんですが」

「リュウくんとテーマが同じやし、キャラデザもよう似とったやろ?こんなに被るんかーっておっちゃん嬉しくなってもうたわ」

「おれは嬉しくないですけど?よりにもよって、トラヤマ先生と同じような作風とキャラデザで、しかもすぐ後に出すなんてもう……」


 パクリだの糾弾される姿が目に浮かぶ。いや、それならまだいいがトラヤマ先生の新作と比べてこっちはどうだとか比較されたりしたら恥辱と屈辱で死ぬしかないぞ、おれは。

 おれが頭を抱えていると、イタドリ担当がどうでも良さそうに告げる。

 

「それは大丈夫じゃないですか?トラヤマ先生とハセガワ先生の新作は、夏の虎おっさんフェアとか適当な名前でセット売りしますから。テーマやキャラデザが似てることは出版社の意向と判断されるでしょう」

「……へ?」

「あとなあとな、おっちゃん、あとがきにリュウくんにめっちゃ協力してもろたって書いてん!だからその、リュウくんの迷惑になるようなことはな、無いと思うんやけど……」


 そしてヤマトさんはでっかい身体を縮こまらせておれを見つめる。

 豪快で快活な笑顔は息をひそめ、ちょっとだけ不安そうに眉根を寄せていた。

 ああ、ヤマトさんもおれに申し訳ないとは思ってくれてたのか。そうだよな、おれを利用するだけしてポイってする人じゃないし。おれの新作に影響がないか、売り上げの足を引っ張らないかとは考えてくれていたようだ。


「おこがましいんやけどな、おっちゃんもリュウくんの力になりたいとは思っとってな。リュウくんのおかげで新作が完成したようなもんやし。リュウくんの新作にも、おっちゃん成分がちみっとは入っとるやろし」


 イタドリ担当の腕を振りほどくと、おれの頭を大胸筋で優しく受け止める。

 太い腕で背中と頭を労わるように撫でさすり、子どもをあやすように囁きかけてくる。

 

「ほんま騙しとって堪忍な。リュウくんに迷惑はかけんようにって思ってたんやけど、おっちゃんのせいでリュウくんがパクリ扱いされるかもしれへんって不安に思うのも当然よな。ごめんなぁ」

 

 タンクトップに包まれたおっぱいで頬を挟み、頭を撫でられる至福。

 そんな申し訳ない声を出さないで欲しい。こんなマネされたら許さないわけにはいかないじゃないか。

 もともと怒ってないけどね。だって、ヤマトさんがいなかったらエロラブコメを書けなかったんだから。

 おれの新作はヤマトさんとおれ、二人の子どもみたいなもんだ。おれの子どもにとっての母親を怒れるわけないだろう。

 

 ぎゅっと抱き着きかえすと、ヤマトさんがうっとりとした声を出しておれの頭へ鼻先を擦り付ける。

 

「んっ❤じゃあ、リュウくんに許してもろたしお祝いしよか。重版になったら何でもしたるって約束したしなぁ」

「お、おれの本はまだ」

「おっちゃんが重版したやろ。ご褒美にリュウくんに何でもさせたる。今日はーぜんぶ、リュウくんのいう事聞くニャンコちゃんになったるわ❤❤」


 舌なめずりの音が聞こえた気がした。

 ヤマトさんの身体がますます熱くなり、背中を撫でていた手がくすぐるようないやらしいものへと変わる。

 胸元で感じる匂いに、雄のものではない淫靡なものが混ざり始める。

 発情している。おれのちんぽがむくむくと大きくなる。

 

「早速元気になったなぁ❤おっちゃんのも、ほれ❤❤」

「……っ!」


 ぐい、と腹に押し付けられたのはヤマトさんの股間にできた膨らみ、いや山脈だ。

 猛々しくそそり勃ったちんぽが、おれの下腹部を押し上げて熱と硬度を伝えてくる。おれと交尾がしたいと欲望を露わにするそれは、ニャンコちゃんなんかに生えていていいものではない。

 

「リュウくんのオメコになる思たらこないになったわ❤❤な、おっちゃんとどんなプレイしたい❤なんでも言うてええでぇ❤❤今日は恋人兼マゾ奴隷になったるから❤」

「ど、どんなって」

「なんかあるやろぉ❤リュウくんのしたいようにしてええんやで❤❤今日は、おっちゃんわがままなんも言わんで❤」


 な、何でも。

 その言葉だけで股間に来た。

 本当に何でも言って良いんだろうか。怒るかな?さすがにビキニだけで外を歩いて欲しいとは言えないけど。

 だったら、そうだ。ちょうどプレゼントに用意していたアレを使って――

 

「あの、よろしいでしょうか」


 その時、興奮を瞬間冷却するような声がした。

 おれには聞きなれた声。ヤマトさんにとっても馴染みのある声のようで、やらしかたーみたいな顔でおれと同じ方向へ視線を向ける。

 

 そこにいたのはさっきから放置されっぱなしの眼鏡の虎。

 鬼編集。冷血漢。鉄面皮。性格最悪のイタドリ担当が眼鏡を持ち上げながらおれらを睨みつけてきた。

 

「そういった下品な会話は、私が帰ってからゆっくりとしてくださいますか?」

 

 ***


 裸エプロンでセックスしたい。

 おれがお願いすると『あかん、そんなん恥ずかしいわ。お風呂にする?ご飯にする?とか言わされちゃうんか?あかんてそんなんっ!』と子芝居をした挙句に了承された。

 プレゼントにエプロンその他諸々を用意していたおれを褒めたい。


 言われるままに後ろを向いて、壁を見つめていると背中の方で衣擦れの音がした。そして鼻をくすぐるのは服に閉じ込められていた雄の匂い。

 床にハーフパンツが、次いでタンクトップが落ちる。興奮で鋭敏になっていた聴覚は毛皮と布地が擦れる音すら捉えていた。今、ヤマトさんは靴下を脱ぎ捨てている。

 ヤマトさんの裸は数えきれないぐらい見てきたが、見えないからこそかえって想像を掻き立てられる。

 

「リュウくん、もうええで❤」


 喉を鳴らして振り返る。

 そこに立っていたのはごつい身体の虎が、エプロンだけを纏って立っていた。エプロンの前掛けを巨根で持ち上げて。

 いかつい顔に、山脈のようにたくましい肩。胸当てが張り出した大胸筋をきわどく隠し、乳首をぷっくりと浮かび上がらせている。

 XXLサイズのエプロンを買ったはずなのだがヤマトさんの大胸筋を隠しきることはできなかったようで、上からも横からも乳肉がはみ出しているうえに、乳首と乳輪の色が透けて見える。

 

 上半身だけでもたまらないのに、エプロンのスカートは短く、しかも半円の形をしている。

 フリル付きエプロンの下からは筋肉と脂肪で極太になった太ももが続いている。ヤマトさんはおれを挑発するように内ももをすり合わせて悶え、指先でエプロンの裾を引っ張った。興奮で息を荒くして、汗とちんぽの匂いがムッと漂う。

 

「なかなか可愛らしいモン選ぶんやなぁ❤後ろも見せたろかぁ❤❤」

「……ぅ、えっと」

「こないな時でも恥ずかしがってしゃあないなぁ❤❤男ならもっとゴリゴリ来んとあかんで❤」


 おれが口をぱくぱくとさせるのを見下ろしながら、その場でくるっと回った。エプロンの裾が翻り、尻尾がふわりと揺れる。

 

「ほれほれ❤ちゃんと下着付け取るし恥ずかしゅうないやろ❤❤」

「……ッ!」


 裸エプロンのバックスタイルは、前面以上に鼻血もののの光景だった。ちんぽが限界異常に張りつめる。

 筋肉でバキバキの身体を飾るのは、クロスされたエプロンの紐。太すぎるウエストを押さえて背中の中央で蝶々結びされている。

 尻肉は丸出しで、薄手の白いビキニが尻肉の半分から下だけを隠している。毎度のことだが尻がでかすぎて尻肉の半ばまでしかはくことができず、谷間が盛大に露出している。熟れたマンコ肉を隠すのがせいいっぱいだ。

 

「見てるばっかやなくて、感想欲しいんやけどなぁ❤リュウくんのために着てるんやから❤❤おちんぽ元気になったかぁ❤」


 前かがみになって股間を隠そうとしたが、ヤマトさんにはばればれだろう。

 下着を付けていることが却ってヤマトさんを辱めている。流し台に手をついたまま内ももを擦り合わせて豊満な尻肉を揺すりたてている。

 おれの視線すらも心地よいと言うようにヤマトさんの口端から唾液がこぼれる。早く、欲望をぶつけて欲しいと濁った瞳がおれを見つめる。

 

「ん、くうぅ❤❤」


 ぶるりと尻肉が震えて、熱っぽい声が漏れた。

 雄の匂いの中に雌の甘い香りが混ざる。蠱惑的な愛液の香り。自分が発情状態に入っていることを示す香りだ。

 おれが指一本触れていないのに、ヤマトさんの身体は出来上がっている。白いビキニにはシミができて、マンコの蕩け具合を想起させる。

 

「オメコもう濡れてもうたなぁ……❤こりゃリュウくんに慰めて貰わんと収まらんわぁ❤❤」


 揺れる尻に誘われて、膝をついて尻へ顔を寄せる。ヤマトさんの匂いで頭をくらくらさせながらビキニの上からシミを押した。じゅっと音がして、愛液がビキニを透過する。

 ヤマトさんが更に腰をくねらせるものだから、尻肉の山を指先で押したりぼってりとした金玉を撫でたりして遊んでやった。

 

「ん゛んっ❤❤尻、あかんてぇ❤そないに焦らさんと、はやくぅ❤」


 ヤマトさんの『あかん』はもっとやれのサインだと学習している。筋肉まみれの身体がブルルッと震え、マンコから溢れた大量に愛液がビキニを濡らし透けさせる。

 やっぱり、ヤマトさんは露出狂の癖があるのかもしれない。普段の恰好からんなだしな。

 おれが淡い快感を注ぎ続けると我慢できかねたように官能的に尻が揺れる。芳醇な愛液が布地を透過させて、尻に谷間を露わにしていく。マンコの赤黒さまで透かした下着の脇から蜜が漏れ、太ももの毛皮をへたらせる。

 

「お、おぉぉ❤❤んおぉ❤ん゛、くぅぅ……❤❤」


 ヤマトさんは自分の中で燃え盛っている情欲を隠すつもりがないようで、やかましく喘ぎながら舌をだらしなく垂らす。

 おれが何をしても受け止めてくれて、欲望を抑えることなくおれを貪り喰らおうとする。そんなケダモノのような人とセックスし続けて来たからか、おれも少々歪んでしまったらしい。

 ヤマトさんのマンコは十分に蕩けており、ちんぽをぶちこんでやればすぐにでも射精できるだろう。だが、今は自分の快楽よりもヤマトさんを喘がせ、快楽で屈服させてやりたいという欲求の方が強かった。

 

「な、なぁ❤リュウくん❤❤次、次はどないしてくれるんや❤おっちゃんトシやから我慢効かへんねん❤だから、なぁ❤❤」

「分かってますよ。今オマンコぐちゃぐちゃにしてあげますからね」


 そしておれが取り出したのは桃色の繭玉とリモコン――ヤマトさんへのもう一つのプレゼントであるピンクローターだ。

 手のひらに乗せてリモコンのスイッチを入れると、繭玉がブルルッと振動する。大して高くもなかったが、振動の強弱を切り替えるような最低限の機能は備わっているらしい。


「リュウくん、何持っとるぅ、うう゛お゛っ❤❤❤」

「ごめん、ヤマトさん。ちょっと冷たいけど我慢しててくださいね」


 申し訳ないとは欠片も思ってないが、ビキニをずらして熟れた肛門へとピンクローターをくっつける。貪欲なマンコは触れたものを簡単に飲み込むと、雄マンコの蠕動運動に助けられ、勝手に奥の方へと移動していく。これならば結腸口のああたりまで入り込んでくれるだろう。

 

「あ゛、あ゛ああぁ❤❤なんや、ごれぇ❤リュウくん❤❤オメコに何入れたんやぁ❤❤❤」

「ローターですよ。ヤマトさんの小説でも出してたでしょ」

「あーあれか。って、そんなモンいきなり入れんとい――ん゛っひい゛いいぃいぃぃ❤❤❤❤」


 ヤマトさんが、殴りつけられたように身体を跳ねさせた。痙攣は一度では止まらずに、陸に上がった魚の踊りを見せる。

 

「お゛お゛ほおぉおおぉっ❤❤❤とめ、ごれ、止めでへえぇぇ❤❤」


 結腸口に貼り付いたローターが、マンコだけでなく身体全体を揺さぶってくる。裸エプロンとおれの愛撫で発情していたからか、おれがこれまで見たこともないような激しさでよがり狂う。

 

「ん゛っひいぃいぃいぃ❤❤❤」


 ぶびゅり、と裸エプロンに白く濁った我慢汁がぶちまけられた。

 焦ってローターを取り出そうと指を肛門に伸ばしているのだが、電気を通されているみたいに指が震えているせいでままならない。

 快楽の電流に脳髄を容赦なくシェイクしていた。ヤマトさんの瞳が瞼の裏に隠れかけて、唾液や鼻水をぼたぼたとこぼしていた。

 

「あ゛あ゛あっ❤❤❤ぐるくる来るうぅうぅ❤❤あ゛ああっ❤ぎづいぃいぃ❤❤オメコ、きっつぃいぃぃ❤❤❤」


 脚を踏みかえて悶え、立ったままガクガくと身体を痙攣させていた。太い首筋をのけ反らし、身体の脇で曲げた手を小刻みに振る。全身から汗が噴き出し、ちんぽからも休みなく汁が漏れ、むわりと雄の匂いが充満する。こんな小さな玩具で、ヤマトさんが生娘みたいに喘いでいる。

 

「止め゛へえぇえぇ❤❤あ゛ああぁあ❤❤❤ひい゛っひっ❤❤ひぃいいぃぃ❤」


 ヤマトさんが腰を揺らすたびに、ローターを吞んでいるマンコの奥から、滝のような勢いでドロドロの愛液がこぼれる。

 尻を振り立てながら足を踏みかえて悶える様子は雄を誘うダンスのようであり、おれはちんぽを硬くして求愛の踊りに見惚れていた。

 

「いぐうぅううぅ❤❤あがんっ❤こんな玩具でいっでまう゛うぅううぅ❤❤❤」


 空気を震わせる快楽の咆哮。

 おれがちんぽを挿れるまでもなく、安っぽい玩具みたいな淫具によってヤマトさんはあっけなく絶頂を迎えた。

 

「ん゛っお゛ぉおぉ~~~~❤❤❤❤」


 断末魔のような嬌声を上げ、伸びあがるように筋肉を躍動させる。

 そのまま尻尾から舌の先まで硬直させ、つうーっとよだれを垂らした。ちんぽからもとろとろと粘度の高い汁を垂れ落し、やがて汁が止まると緊張もゆっくりとほどけた。

 

「……お゛っ❤おおぉぉ❤❤」

 

 はぁはぁと息を吐き、キッチンの床にへたりこむ。

 座ったまま、顔を斜めにあげたまま動かない。呆けた表情はエロくて、おれの欲望がとどまることなく膨れ上がる。

 

「ヤ、ヤマトさん……」

 

 ズボンの前を張りつめさせたまま名前を呼ぶと、夢から戻って来たように瞳に光を戻して笑う。

 おれの欲望で硬くなった股間を見て、エプロンをずらすと、胸元から手を入れて大胸筋を引っ張り出した。そこらの女性の胸より巨大で重たい肉塊を、ヤマトさんは両掌で鷲掴みにする。

 

 意図を読めないおれをよそに、ヤマトさんは唾液を胸の谷間へと垂らして擦り合わせる。

 

「ほれ、はようちんぽ挟ませてやリュウくん」

「は、挟むってまさか」

「このデカパイで挟む以外無いやろぉ❤リュウくんの大好きなパイズリ、このエプロンのままやったるわ❤❤」


 ヤマトさんは膝立ちにしゃがみこむと、無許可で勃起ちんぽを引っ張り出す。ジーンズの圧迫から逃れたちんぽはブルンッと揺れながらそそり勃ち、黒い鼻先をつつく。

 

「元気いっぱいやなぁ❤しゃぶりたいけど、そないしたらすぐイってまうやろなぁ❤❤」


 ヤマトさんは飢えた犬のように唾液を垂らしながら、亀頭を指先で左右に引っ張って、鈴口を拡げて遊ぶ。

 おれがたまらず身悶えする姿を笑いつつ、両手で自分の雄乳を捧げ持つようにして、落ちてくるちんぽを乳肉で挟み込んだ。

 

「ほーれ❤あったかいやろぉ❤❤❤リュウくんのせいでおっちゃんも火照ってしゃーないからな❤」

「うぁ……くっ


 乳肉はぬるついて温かく、柔らかな肉がちんぽを包み込んでくる。口やケツマンコの方がずっと気持ち良いはずだ。しかし乳肉でちんぽを揉みこまれていると、頭が茹るほどの興奮と快楽が押し寄せてくる。

 

「パイズリってそんなええもんかぁ?おっちゃんはマンコの方がええと思うんやけどなぁ❤❤リュウくんはおっぱい好きなんやねぁ❤」

「だ、だってヤマトさんのおっぱいに挟まれてると思うとぉ、ううっ」

「おっ❤男心がグッとくる台詞やなぁ❤❤エロラブコメ書いた成果出とるでぇ❤」


 乳肉で圧迫され、汗と唾液で湿潤になった谷間で扱かれる。ちんぽで感じるヤマトさんの大胸筋はむちむちでふわふわで、筋肉と脂肪の塊だなんて信じられない。

 おれがヘコヘコと腰を振ると乳肉からはみ出た亀頭へとキスをしてくれる。それが嬉しくて、おれはますます腰の速度を上げてしまうのだ。

 

「ん゛む゛っ❤❤リュウくんのちんぽ熱いでぇ❤おっぱい火傷してまう❤❤あっ❤んんうぅ❤❤❤」


 ヤマトさんもおれも、熱に冒されたような表情で乳とちんぽのまぐわいをしていた。力強く稜線を描く乳肉の谷間から顔を出しては引っ込む。ヤマトさんが乳肉をおれの腰が跳ねて、谷間へと我慢汁をとろとろこぼす。

 裸エプロンで、胸当てから大胸筋を取り出してパイズリしているヤマトさんの陶酔とした表情がいやらしい。

 ケツ穴の奥に入り込んだままのローターが気になるのだろう。ヤマトさんは腰をもじもじと揺すっていた。

 

「ヤ、ヤマトさん。ローター、気になります?」

「んんっ❤せやなぁ❤❤リュウくんのちんぽのがずっとええんやけどぉ❤ローターもリュウくんに躾けられてる感じがしてええなぁ❤❤ちんぽくんはすぐイってまうけど、ローターはずっとおっちゃんのオメコ虐めてくれるしな❤❤」


 ……いつもはいいようにやられてたけど、ヤマトさんって結構マゾっけがあるのかな。今もちんぽで鼻先突かれて嬉しそうにしているし。

 ヤマトさんのことをもう知った気でいたけれど、まだまだだな。

 おれの欲望もヤマトさんによって次々と暴かれている。ヤマトさんに会う前はパイズリがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。ちんぽにキスをしてくれると脳が痺れるぐらい嬉しいなんて知らなかった。

 

 ちんぽは乳肉の柔らかさの中に、確かな芯を感じていた。柔軟な胸乳のふくらみの内側で筋肉が力を溢れさせ、乳肉全体が大きさを増していく。

 

「は、はああぁあぁ❤❤ん゛っ❤んんぅ❤❤んっ❤」


 ヤマトさんは、その内側の芯を揉みだすようにして指先を動かした。胸乳の疼きがたまらないのか、雌の匂いが色濃くなっている。子種が欲しい。ちんぽをぶちこんで欲しいと尻の動きがせわしなくなっている。

 

 おれの射精欲求も限界ギリギリまで高まっていた。表面張力によりギリギリこぼれずに済んでいる水のように、わずかな刺激でも達してしまいそうだ。もっとパイズリを堪能していたくて下腹部に力を込めるが、我慢汁の量は増して乳肉を粘液塗れにする。

 

「くぅ❤リュウくん、我慢せんとザーメン出してええでぇ❤❤❤今日はご褒美の日なんやから、まず一発おっちゃんの口オメコに出してみ❤❤」


 おれの限界をお見通しのヤマトさんは、とどめを刺そうと舌先で鈴口をほじくりまわしてくる。唾液をたっぷりと乗せた舌肉が亀頭をザラリと磨く。


「うう、ううあっ!」


 それは甘やかすようなパイズリとは違う鮮烈な刺激であり、おれはみっともない悲鳴と一緒にちんぽを跳ねさせた。

 青臭い匂いのする液体が、ヤマトさんの顔や口内を直撃した。溜め込んだ精液が打擲音を鳴らすほどの勢いでヤマトさんの顔面を犯す。

 

「う゛う゛お゛おおぉっ❤❤熱ぅ❤❤んうぁ❤❤顔火傷してまうわぁ❤❤❤あーもったいなぁ❤ちゃんとおっちゃんの口オメコに出してやぁ❤❤」


 ヤマトさんはもう一度大きくマズルを開くと、射精中のちんぽを浅く咥えて吸い始めた。

 おれがたまらず顔を掴んだところで止めるはずもなく。口内の温かさとぢゅるぢゅると吸い上げる圧力にちんぽは屈し、精液の勢いを取り戻す。

 ヤマトさんはむせ返ることなくザーメンを飲み干していき、おれのちんぽごと喉奥に引っ張りこむような勢いで尿道から溢れる白濁汁を吸い上げる。

 

「ぢゅぱっ❤❤んっ❤ちゅっ❤❤んぐっ❤❤んぶむぅ❤んん~~~~っ❤❤」


 ヤマトさんが精液を飲んでくれるのは初めてのことじゃない。射精直後にちんぽを舐められて悶えるおれを愉しみながら精液を吸い上げて、綺麗に掃除してくれる。

 だが今日のヤマトさんはいつも以上にいやらしく、おれのちんぽを労わるように舌を使い、金玉を揉みながら尿道の精液を吸いだしてくれている。ヤマトさんの奉仕に力が満ちて、射精の虚脱感はなく生まれ変わったような元気が溢れてくる。

 

「んんっ❤ぷ、ふうぅ❤❤」


 ちゅぽ、と音を立ててちんぽを口から吐き出したヤマトさんは、己のちんぽもそそり勃たせながら甘い笑顔を浮かべた。

 

「やっぱリュウくんの精液はものごっついなぁ❤喉に詰まりそうやったわぁ❤❤」


 苦言を呈するのではなく、褒めそやす口調でちんぽに頬ずりをする。いやらしく、退廃的な笑みに胸が高鳴った。

 

「ザーメンこってりやし量もたっぷりやし。若いってええなぁ❤❤」

「若いって、ヤマトさんさんだって元気でしょ」

「いやいやおっちゃんはもうトシやで❤❤若くないんやからぁ、あんま虐めんといてな❤」


 亀頭にキスをしながらの言葉は『虐めて欲しい』のサインだ。

 ローターのスイッチをそっと入れてそれに応えてやる。

 

「あ゛ぅ❤お゛おぉおぉっ❤❤んあぁ❤あかんって、ごれぇ❤❤」


 ヤマトさんは太ももを内股にして、両手を下腹に当てて小刻みに身体を震わせている。一番弱い刺激なのだが、立つこともままならない様子で身体を弱々しく震えさせる。

 

「えっと、一番弱い刺激なんですけど……どうでしょう」

「め、めっちゃええけどぉ❤やっぱオチンポの方がええわぁ❤❤」

「なんで?気持ちいいんですよね?」

「だってぇ❤❤リュウくんにオメコ犯されて、種付けされるのが一番気持ちええからなぁ❤❤❤幸せになってぶっ飛んでまうんや❤❤」


 ヤマトさんは媚を売るようにおれへと抱き着いてきた。エプロンの薄い布越しに雄の体温が伝わってきて、おれの身体までも火照ってくる。

 ぴたりと密着した身体からは熱だけではなく匂いと身体の柔らかさまでも鮮明に感じ取れる。性器をいじられていないのに、抱きしめられるだけでも幸福で絶頂しそうだ。

 

「な、次はオメコにちんぽ欲しいんや❤❤焦らさんと、ハメて❤」

「は、はい。ヤマトさんが上になります?」

「今日はリュウくんの好きにさせたる日やろぉ❤❤おっちゃんをリードしてくれや❤❤❤」


 ヤマトさんは台所の床へ仰向けに寝そべると、逞しい太ももを抱え、自ら肛門を剥き出しにする体勢を取った。ローターを飲み込んだマンコが、愛液をこぼしておれを誘う。

 例えリードする気なんてなくっても、ここまでされたらやるしかない。

 

「ローター入れっぱなしやけどええよな❤リュウくんのちんぽでおっちゃんをメロメロにしたってや❤❤❤」


 内部のローターを弄んでいるのか、肛門へと差し入れた指先をクチュクチュと鳴らしてマンコをかき回していた。

 幾度となく掘り返してきた雌穴が、化け物じみた尻肉の間で貪欲に涎を垂らしていた。何度もおれを犯したこの雌穴を、こうして間近で見る経験は少ない。大体がヤマトさんにリードされ、尻で鳴かされてきたからだ。最初はおれが攻めていても、ヤマトさんの興が乗るとおれが押し倒されて、搾り取られてしまうのだ。

 

「今日はリュウくんを虐めんから安心しとき❤❤リュウくんのオメコになって、ぜーんぶ好きにさせたる❤」


 だが、今日こそはヤマトさんをおれの好きなように犯せるんだ。

 童貞を卒業した時のような気分を感じながら、張り裂けそうなくらい膨らんだ亀頭をヤマトさんにあてがった。

 

「い、行きますよ……!」

「おう❤一気にぶちこんでええで❤❤❤おっちゃんのオメコは腹すかしとるからなぁ❤」


 ヤマトさんの言葉に促され一気にぶちこむ――勇気はおれにはなかった。

 先っぽを咥えこまれただけでも腰が抜けるほど気持ち良く、柔軟な雄膣はなんの抵抗もなくちんぽを飲み込もうとする。

 ちんぽを少しでも進めれば、緊張してガチガチになったちんぽへと膣壁がすぐに絡みついてきて、蕩けそうな刺激を注ぎ込んでくる。

 思わず腰を引きたくなってくるが、ちんぽを溶かす快感に耐えながら、マンコをおれの形にするように、慎重に掘り進めていった。ヤマトさんが攻める時はすぐにちんぽを飲み込まれてしまうが、こうして自分で腰を進めると耐えがたいほどに気持ちいい。

 

「う、くううぅ……!」


 やがてちんぽを根本まで進めると、なにやら硬いものとちんぽが触れた。ローターだと思われるそれを結腸口とちんぽの間で挟んで、ヤマトさんへと覆いかぶさる形で両手を突いた。

 ちんぽへと隙間なくまとわりついてくるマンコ肉は別個の生物のようで、ローターの振動と合わせておれを腰砕けにする。

 

「よーしよし❤❤ちゃんとハメハメできてえらいなぁ❤余裕できたら腰振ってみてな❤❤焦らんでええよ❤」


 焦るな、と言われても頭をよしよしと撫でられながら囁かれて頑張れない男がいるだろうか。

 ヤマトさんを悦ばせたくて、腰をおずおずと動かしてみる。

 が、途端にマンコ肉がいっせいに絡みついてくる。反射的に腰を突き出すと大殿筋がいっせいに締め付けを行ってくる。ヤマトさんが指一本動かしていないのに、マンコ肉の蠕動だけでおれは身体を痺れさせてしまう。

 ヤマトさんが攻めるのではなく、おれが動いているおかげでどうにか耐えられている。これで好き勝手に腰を振りたてられたらすぐに射精していただろう。

 

「お゛っ❤お゛おぉ❤❤ええでぇ❤んあ❤オメコのええとこ突けとるぅ❤❤❤んひ❤おおぅぅ❤❤」


 なんとか前後運動を続けていると、ヤマトさんは身体をくねらせてよがり声を漏らす。腰を振るだけでせいいっぱい。マンコのいいところを探す余裕が無いみっともないセックス。それでも悦んで、おれを褒めてくれる優しさに胸の内が熱くなる。

 

「ヤマトさんっ……!」

「んむぅ❤んんっ❤❤」


 衝動が抑えきれなくなって、ヤマトさんのマズルへ唇を押し付ける。いつもの舌を貪りあうようなキスではなく、唇を触れ合わせる程度のもの。快感ではなく、ヤマトさんの匂いや熱を感じ取るためのもの。

 情愛をエンジンにして、腰の速度を徐々に上げていく。ちんぽとマンコ肉が一体化したように性器は密着しており、わずかに擦れるだけでも射精しそうなぐらい強烈な快感が生まれる。ヤマトさんを愛おしく思うたびに快感がますます大きくなる。

 

 吸い付きと締め付けが混在する多方向からの快感がちんぽを容赦なく襲う。歯を食いしばって腰を振って、ヤマトさんの最奥を目指して突き上げる。ローターを亀頭で叩くと、ヤマトさんの太い首がのけぞって汚い喘ぎ声が噴き上がる。

 

「ヤ、ヤマトさんっ!気持ちいいですか……!」


 マンコ肉のうねりを感じていれば分かることだ。それでも聞いてしまうのは、男のサガというものだろうか。ヤマトさんに、おれのちんぽが良いと言わせたかった。

 

「い゛いいっ❤❤ええでぇ❤リュウくんの゛おぉおぉ❤❤❤セックスよずぎでぇ❤とぶぅ❤飛んでまう゛うぅ❤❤」


 ヤマトさんの表情には余裕の一欠けらも消え失せ、おれからの快楽に震え、よがり、無様に鼻水を垂らしていた。

 おれが攻めたてることで感じ、同じ喜びを共有している。そのことが快感と興奮、愛情を深めていく。

 雄マンコの内部ではおれたちの体温が溶け合い、肉が溶けそうなほどの熱が生み出されていた。その熱を帯びた肉ヒダにあらゆる方向から舐め回され、締め上げられ、ちんぽをすべてドロドロに融解されそうな感覚に包まれる。

 おれはとっくに射精しておかしくない状態だった。しかし、このままヤマトさんと繋がっていたいという欲求だけがザーメンをせきとめていた。腰が震える快感を覚えても、鼻息荒く内部をかき回し続けた。

 

「あ゛お゛ぉおおぉ❤❤❤むりむりぃぃ❤リュウくん❤❤おっちゃんもうイってまいそうやあぁぁ❤❤❤」


 ヤマトさんの巨根がビクビクと暴れ、濃い先走りを噴き出した瞬間、おれの金玉で煮えたぎった精液が猛り始めた。精をせきとめていた意志も、ヤマトさんの蕩けた顔を見て、限界を迎える。

 

「おれも、おれもいけます……!」

「イっでぇ❤❤おっちゃんと一緒にイってぐでぇ❤❤❤オメコんなかでmぶっぱなしでえぇ❤❤❤」


 両脚がおれの腰へと絡みつき、デカケツへときつく固定する。同時にマンコ肉がこれまで以上の締め付けで襲い掛かり、おれはもはや耐えしのぐことができなくなった。

 

「ヤマトさ、いぐっ!おれ、ヤマトさんの中に……!」


 その言葉とともに、大胸筋へとしがみついた瞬間。

 おれはヤマトさんの中で欲望を弾けさせた。

 

「ん゛っお゛お゛ぉおおぉおおぉおぉ❤❤❤❤❤」


 猛烈な勢いで金玉から尿道へと快感が突き抜け、欲望の塊が白濁液となって胎内で弾ける。

 それを待っていたかのように、ヤマトさんの巨根からも雄の証が解き放たれた。おれの腹の下で、ちんぽがのたうち回りながらザーメンを拡散する。

 

「う゛ぎぃいいぃいぃ❤❤❤ちんぽっ❤❤止まらんぅうぅぅぅぅ❤❤❤❤」


 ザーメンをぶちまけ続けながら、ヤマトさんは歓喜と苦悶が入り混じった表情を浮かべていた。

 虎マンコはおれのちんぽを食い締め続けており、射精中の極端に敏感なちんぽが柔軟なマンコ肉に締め上げられ、金玉からとめどなく精液が搾りだされる。

 特に、敏感な亀頭部分はローターの震えとひときわ強い締め付けにより、ちんぽが壊れるのではないかと思うほどの快感が注ぎ込まれていた。

 

「うううぁっ!だめだ、ちんぽ、止まらないっ、ああっ……!」


 脳がおかしくなるほどの快感を感じているのに、両脚に縛られて逃げることもできない。止まらない声司の震えは全身にも広がり、ヤマトさんのおっぱいにしがみつくことがせいいっぱいだった。

 ヤマトさんは精液を全て受け止め、自分も精液を漏らしているというのに、おれの頭を愛おしそうに撫でながら淫蕩な笑みを浮かべていた。

 

「もっと、もっとおぉおおぉぉ❤❤❤もっとイけるやろおぉ❤おっちゃんのオメコいっぱいになるまでザーメン注いでえええぇぇ❤❤❤❤」


 際限なく湧き出す精液を雄膣が夢中で啜っている。

 攻められようが攻めようが、この人には敵いそうにないな。ヤマトさんのおっぱいにすがりつきながら、おれは精液を漏らし続けた。

 

 ***

 

「ヤマトさんの太もも、なんかムチムチ具合が増してません?」

「いやいや、変わらへんやろ!おっちゃんが太ったみたいな言い方やめて」


 おれらの日常は大して変わらないまま続いている。

 イタドリ担当は相変わらず忙しいし、ヤマトさんの新作は既に三刷りとなりおれとの差をさらに広げている。

 ちなみに、おれの新刊は今日が発売日。泣いても笑ってもあと数日でおれの童貞卒業が決定する。

 

 でも、不安になっててもしょうがないし。ヤマトさんの体臭がほんわかと香り、ムチムチな感触がなんとも言えず心地よい太ももの上で微睡んでいた。

 正体がばれた後ももヤマトさんはおれの家で暮らしており、隠す必要が無くなったからか二人で一緒に小説を書いたり二人で同じ小説を買って感想を語り合ったりしている。

 当たり前だがセックスの頻度も激しさも増しており、小説書いてセックスして寝るみたいな日々が続いたので、二人で相談して時間と回数は制限することにした。

 

「リュウくん?おっちゃんは太ってへんからね?リュウくんこそちょっと太ったんちゃう?」

「昨日体重計に乗ってみたら痩せてましたよ。ヤマトさんのご飯が健康的だからですかね。コンビニ飯よりは」

「当然やろ!おっちゃんのご飯食べてたらどんどん健康になってまうで!」


 ヤマトさんが豪快に笑うと、睡魔を誘う魔法のリズムが太ももから伝わる。ヤマトさんは小説を書きながら一人暮らしをしており、恋人を作ることがあっても生活リズムの違いで長続きしなかったらしい。

 おれはヤマトさんにとってだいぶ都合の良い存在だったようだ。おれにとってもだけどね。

 

「今度は旅行とか行きたいなぁ。冬の旅館とかで、二人で小説書いたり温泉入ったりな」

「おれは海がいいな。今年はプールも行けてないし」

「海もええなぁ!おっちゃん、リュウくんと一緒ならどこでもええかも」


 髪を手で撫でて、ヤマトさんはふんわりと笑う。

 多分、明日も明後日もこうしてたわいもない会話をして笑うんだろう。

 おれの小説が売れるかどうかなんて関係なく、大した波乱も起こらないまま、ささやかだけど幸せでいっぱいの毎日をおれらは過ごしていく。


「後で夕ご飯の材料買いに行かんとな。リュウくんも付き合うてくれるか?」

「もちろん」


 この睡魔に勝てたらだけど。

 ヤマトさんのぬくもりを感じながら、おれは心地よいまどろみに落ちていった。

 

 

 終

Comments

號ゆうごう

き、来てたあ!!!! まずは楽しみにしておりました。という報告とちんちんの期待勃起が収まりませんという、事前感想を送らせていただきます。 読んだらまたコメントいたしますね♡

おもち

ゆうごさんありがとうございます! エロラブコメとか久しぶりすぎて難航しましたが、お楽しみいただけたら嬉しいです。

號ゆうごう

おもち神様本当にありがとうございます……🙏🙏🙏 シチュエーション、作風、キャラ、エロ……もうこれはフルコースですよフルコース ヤマトさんの正体、一体誰だ?実はイタドリ編集さん?とか思ってたらまさかの正体で普通にびっくりしましたね! 読み応えもさることながら、❤の乱舞でえっちさマシマシで、そしてやはりオッチャンのオメコというワードがたくさん出てきて最高でした…!! 旅行に行ったらまたエロエロなことになっちゃうんだろうなぁ…❤ すけべシーンはもちろんすけべで大変良いのですが、日常シーンもきっちり描かれててとても良きでした 自分に刺さるような節もあったり、自分にもこんな虎おっさんが身近にいてほしいと思う作品でした…!!✨ いつかまたこの二人が見られますように…🙏 前作も今作も既に複数回使いました…笑

おもち

感想ありがとうございます……! エロラブコメって自分でもキャラクターが可愛いのかこのシチュエーションが良いのかも分からないのですが、こうして感想いただけると安心します。既に何回も使っていただいたのもうれしい! これから虎おっさん本と魑魅魍寮4巻読ませていただきやす!