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「オナニーは週に何回されますか?」

「……5、6回」

「風俗に週3で行かれるのにオナニーもそれだけ。ははぁ、中学生並みの性欲ですねえ。道具は使われます?」

「オナホぐれぇは使う。そんだけだ」

「それはいけませんね。マンネリで性器も感じにくくなっているのかも。好きな体位は何ですか?」

「いつもバックだ……オイ、こんな事が本当に治療に役立つってのか!てめぇ俺を馬鹿にしてんじゃねえだろうな!」


 でかい尻には小さすぎるパイプ椅子から立ち上がり、胸倉をつかみ上げる勢いで怒鳴りつけた。彼――剛田 鋼(ごうだ こう)は縦にも横にも馬鹿でかい牛人であり、筋肉の盛り上がりもワイシャツを引きちぎりかねない逞しさだ。そんな大男に怒鳴りつけられれば大抵の男は怯えるか涙を浮かべるかするのだが、剛田の目の前で腰掛けていた犬人はによかな笑みを崩さずに答えた。

 

「ええ、そうですよ?病気の原因を調べるには患者さんを詳しく知らなければいけませんから。それがうちのスタイルなんです」


 剛田の胸元あたりまでしか無い背丈に、太ももよりも細っこい胴回り。憤怒の感情を露わにする牛がその腕をふるえば背骨がたやすく折れそうな貧弱さだ。

 しかし、剛田の鼻息を浴びながらも余裕綽々とペンを走らせては聞き出した性事情をカルテへと書き込んでいく。白衣を纏ったその姿は生真面目な医者そのものであり、激高している牛も「もしかしてこれが普通なのか?」と錯覚してしまうほどだった。

 

「ほら、問診を続けますよ。それとも他の病院に行かれますか?私はどちらでも構いませんが」

「う、む……。分かった、続けてくれ」


 再び椅子へと腰掛けてきた牛をみやり、犬人は満足そうに頷いた。剛田のつま先から角の先までじっくりと舐め回すように見てから、牙を覗かせる。

 

「ええ、それがいいですよ。なんせ、インポテンツの治療でウチ以上の病院はありませんからね!」


***


 剛田は自分を男の中の男であると自負していた。

 高校生の頃からラグビー部で活躍し、大学の頃には全国で名を知られる選手になっていた。社会人になってからは辞めてしまったが、部の先輩に紹介された会社では社割のスポーツジムに通い全盛期の頃から衰えない逆三角形の肉体を維持している。40を超えてもそこらの体育大学生にも負けない筋肉を備えていた。

 

 その筋肉は剛田にとって男の勲章だ。街を歩けば向こうから道を譲り、気に入らない部下がいても筋肉に軽く力をこめてすごむだけで言うことを聞かせることができる。それでも反抗的な態度を崩さなければ拳で従わせてやった。そのおかげか剛田が部長を務める部署では業績がトップであり、社長の覚えも良かった。

 

 筋肉は勲章であり、鎧でもあった。

 ジムに通うたびに己の身体を欠かさずチェックして、大腿筋の凸凹が鮮明になったことに喜び腕のサイズが増したことに尻尾を揺らした。

 肉で飾り立てた鎧は顔が良いだけの男よりもよほど美しいと思っていたし、実際剛田が女にふ自由することもなかった。高校生のころから女を取っ換え引っ換えし、大学生の頃になれば彼女だけでは満足できずラグビー部の女マネージャーを食い荒らしていた。

 淫水焼けし黒ずんだちんぽを引っ提げて社会人になってからはさすがに好き放題に女を抱けなくなってしまったが、代わりに風俗へ通うようになった。プライベートのほどんどを酒と風俗、そしてジムに使う日々だ。

 

 剛田はそんな自分を誇らしいとさえ思っていた。

 これが男というものだ。自分には金も力もある。女房や子どもなんて煩わしいものも必要ない。誰にも文句は言わせない。爺になったとしても変わらず女遊びを続けてやると思っていた――勃起不全を自覚するまでは。

 

 最初は小さな違和感だった。

 風俗嬢を相手にした時、射精の勢いが衰えたような感覚。

 それが性行為を繰り返していくうちに中折れをするようになり、最近ではどれだけ嬢に奉仕をしてもらっても勃起すらしない。

 一人で慰めている時は変わらず勃起するのに、だ。

 勃起しないのはお前のせいだと嬢に八つ当たりをし、出禁になることもしょっちゅうだった。

 

「いやいや、勃ちが悪くなってすぐに病院に来てくれたのは良いことですよ。ウチでしたら必ず治せます」

「日本一の名医だなんてコイてたけどよ、本当なんだろうな?こっちは高い金払ってんだぞ」

「ご安心くださぁい。ウチは施設もスタッフも超一流ですから。ウチを知れて良かったですよ、本当」


 へらへらと笑う医者――柴田の存在を知ったのは風俗店に貼ってあったポスターからだった。

 

 『性の悩みを全て解決!インポテンツや不感症。どんな病気もスペシャルマッサージで治します!男性の患者さん多数!』

 

 けばけばしい色彩のポスターは実にうさんくさかった。勃起障害がマッサージで治るわけがないし、まともな病院ならば風俗店にポスターなど貼るわけがないのだ。

 しかし、剛田の頭はお世辞にも良いとは言えなかった酒と女と筋トレしか入っていない頭には常識が欠けており、何より自分のちんぽに訪れている危機を治すことで頭がいっぱいになっていた。

 

 〝柴田ヘルスクリニック〟――そう看板がかかる建物は剛田の勤める会社から徒歩で10分ほどの距離にあった。まだ建てられて浅いのか壁は綺麗で院内は白とパステルピンクで統一された清潔感に溢れたものだった。

 待合室に並んでいるのも剛田と同じような年齢の鍛えている中年親父ばかりであり、安心感を覚えたものだ。

 

 大丈夫だ。少し調子が悪いだけで、ここで治療すればすぐに治る。

 そう信じて診療室へと向かったのだが――

 

「なるほどなるほど。剛田さんは性豪なんですねえ。それでちんぽが勃たないとはおつらいでしょう。大丈夫、私の治療を受ければそんなこと気にならなくなりますからね」


 診察室で待っていた医者は何もかもが不快だった。

 自分の足元にも及ばない貧弱さのくせに筋肉におびえもせず、イラつくニヤニヤ笑いを絶やさない。これが自分の同僚や部下だったら殴り飛ばしてやるところだ。大事なちんぽの事なければとっくに手が出ていたかもしれない。

 

「またイライラしてきました?ストレスは勃起の天敵ですよ?はい、デトックス水をどうぞ」


 それでも会話を続けられていられるのは診療前に渡されたデトックス水とやらのおかげだった。身体のよくないものを排出する水だと言われたが、確かに飲んでみると腹立たしい気持ちが薄れて代わりに頭の奥がぽかぽかと温かくなるような気分になる。目の前の不快な医者の言うことをちゃんと聞かなければ。そんな気分にしてくれる。聞いていれば身体がじんわりと心地よくなってくる。

 何杯も飲むころには、身体じっとりと汗ばんできていた。全身が火照り布団の中でまどろんでいるような脱力感がある。

 

「ん……美味くはねえ、けどいいなこれ。疲れが取れてく気がする」

「そうでしょう。これを飲ませてあげるとね、ギャーギャーこうるさい患者さんでも物分かりがよくなるんですよ」


 ほんの少し濁った液体は薬品臭さが鼻につき、舌の上ではへばりついてくるような苦味を感じる。しかし飲みくだしていくごとに気にならなくなっていくのだから不思議なものだ。気づけば、次々と差し出される水で胃袋がいっぱいにしてしまっていた。

 

「そろそろいいですかね。じゃあマッサージルームに移りましょうか。歩けます?」

「んぅ?お、おう。こんくらい屁でもねえよ」


 椅子をぎしりと鳴らして立ち上がると足がふらつきそうになるがどうにか堪えた。夢の中で歩いている時のようなふわふわとした感覚でどうにも足元が頼りない。

 時々足がもつれてしまうのは、滑りの良いリノリウム床のせいではないだろう。転びかけては壁に手をついて堪える姿に医師は瞳を細め小さく喉を鳴らすのだが――剛田が気づくことはなかった。

 

「ここが施術室です。そちらに施術着が置いてあるので着替えをお願いしますね」


 案内された施術室は剛田の巨体でも余裕で受け止めることのできるマッサージ用のベッドがあり、何に使うかも分からないモニターや大型の機械までも備え付けてあった。

 指さした先にはおそらく施術着が入っている籠。なかなかに立派な施設に思えたが、あるべきものが確認できずいぶかしげに視線をさまよわせる。

 

「おい、シャワーはどこで浴びりゃいいんだ?おれぁ仕事帰りで汗くせえんだけどよ」

「ああ、現代医療ではヘルスチェックの観点から体臭をそのままにするんですよ。そのままでお願いします」

「そ、そうなのか?普通は風呂で身体を温めたりするモンだと思ってたんだが……」


 すん、と鼻の穴をひくつかせてみると自分でも分かるぐらいには汗臭い。

 これでワイシャツやスラックスを脱いでしまえば腋や股間まわりといったあたりから相当にきつい雄臭さがまき散らされることは想像に難くない。

 他人を不快にさせたくないなんてデリカシーはこの男に存在しないが、あからさまに嫌な顔をされるのもそれはそれで気分がよろしくない。

 

「これは医療行為ですから、剛田さんも気にしなくていいですよ。ウチのクリニックはスポーツ帰りのメンテナンスで来る方も大勢ですから、慣れっこです」


 言われてみれば待合室にいたのも自分と同じような巨漢ばかりだ。それもスポーツや格闘技で身体を痛めつけているようなむさ苦しい筋肉野郎たち。

 あんな連中ばかりを相手にしているのであれば、確かに自分ていどの体臭なら大したことはないのかもしれない。

 

 医師の言葉で自分を納得させてしまった剛田は、ためらいながらも籠の中の施術着とやらに手を伸ばす。よくあるタイプの腕と膝下だけを露出させるタイプのものだろう――そう思い込んで手に取ったが、そこにあったのは剛田の思いもよらないものだった。

 

「んなっ!?てめぇ、なんだこのふざけた水着は!こんなモン着ろってのかよ!」


 それは明らかに病院で使うようなシロモノではない水着。それも、極小のデルタ生地を紐で繋げただけの――水着と呼ぶことすらはばかられる、剛田が通う風俗店で嬢たちが着るような陰部を隠すどころか強調することしかできないわいせつな布切れ。

 

 剛田お自慢の巨根を包み込めるのかすら怪しい布切れは、当然尻肉だって何も隠せはしない。薄いレモンイエローの布地を尻たぶに貼り付けているとしか映らないだろう。

 こめかみに浮かぶ血管。今すぐにでも殴りかからんと膨らむ上腕二頭筋。空気が熱せられたと錯覚しそうな怒気を放つ雄を前にして、医師は平然と言葉を紡ぐ。

 

「……?筋肉をほぐすんですから、身体を露出させるのは当たり前でしょう?そりゃ女性のお客様なら身体を隠してもらいますが」

「身体を隠してもマッサージはできんじゃねえか!なら――」

「ああ、男性のお客様なので問題ないかと思ったんですが。女性の方のように恥じらわれるんですね。なら、他の施術着を用意しますか?」

「それ、は……」


 強調するように口にされた『女性の方のように』という言葉に舌を縫い付けられ、怒号が喉から出てこない。

 表で口にすればイエローカードを出されかねない性差別的な発言だが、女性をセックスの相手としか思っていない中年男には良く効いたようだ。

 

「ちょ、ちょっと驚いただけだ。他にマシなのが無いってんなら仕方ねえから、我慢してやるっ!」

「ですよね。大の男が肌を晒す程度で恥ずかしがりませんものね?じゃあ、さっさと脱いでくださいね」


 その不遜な態度に苛立ちを覚えつつも、剛田はワイシャツやスラックス、そしてソックスまでも籠へと脱ぎ捨てていく。

 シャツのボタンを外すと漂う濃い男のフェロモン。色気も何もない黒のボクサーパンツに、それをこんもりと盛り上げる肉の砲身。

 

 一つ一つ、剛田の性が露わになっていく姿へ、ストリップショーでも見るかのようにねっとりと医師の視線が絡みつく。

 シャツガーターを太ももから外す姿に。ネクタイを緩めて現れる首筋に。ソックスをムチムチとしたふくらはぎから引きはがす姿に。下着をずり降ろして現れた豪勢な大殿筋に。

 

 その所作に。筋肉に。そのすべてを逃すまいと凝視されていても剛田は隠すこともせずにストリップショーを続けた。

 

「シャツガーターなんて、意外とお洒落なんですねぇ?」

「こいつか?肩と背中が広いと付けてねえとシャツがすぐヨレちまうんだよ」


 そう言ってガーターを引っ張って見せると、太ももへと巻き付いたベルトが強く食い込んだ。黒のボクサーと同じ系統色の黒革バンドは下着を盛り上げるちんぽに引っかかってこすれているのだが、剛田はその程度の刺激などわけもないとばかりにガーターを引きちぎるように取り外す。

 ガーターを外す際に身をかがめたせいでそのデカ尻を突き出す体勢になるのだが、恥じらう様子は微塵もない。


 

 男ならちんぽや尻を晒す時も堂々とすべし。彼の古臭い頭ではそれが常識だったし、自分の身体を性的な目で見る男なんているわけがないと本気で信じ込んでいた。

 薄手のレモンイエロー生地でちんぽをどうにか包み込んで、紐を尻たぶに食い込ませて、猥褻な格好となってもまだ自分の淫らさには気づかない。

 

「さすが、鍛えていらっしゃいますね。これだけ見事な男らしい身体をマッサージできるなんて光栄ですよ。さあ、どうぞ」

「だろ?本当なら可愛いねえちゃんにしか触らせねえんだからな。気持ちわりぃ触り方すんなよ」

 

 褒めそやされればすぐに上機嫌となりポージングまでもきめてしまう愚かさだ。

 スポーツとジム通いで鍛え上げられた筋肉はどれも力強い曲線を描きながら隆々と盛り上がっており、赤銅の毛皮の下で力を漲らせている。

 更に、2メートルをたやすく超える長身はムチムチと量感をアピールする肉体をより大きく見せていた。正面に向かって豪快に飛び出た特大の大殿筋や、発達しすぎて乳首が下を向いている大胸筋は雄の力強さをこれでもかと見せつけており、大抵の雄は劣等感を覚えずにはいられないだろう。

 

 ――だが、医師は劣等感とは別の感情でもって紐パンのふくらみやずっしりとした尻肉を凝視していた。それは捕食者の目のような獰猛さであるが、哀れな獲物は何も知らずに自らその肉体をマッサージ台へと差し出した。

 

「おい、最初はどうすりゃいいんだ。あー、シモの治療なら仰向けになんのか?」

「いえいえ、最初はね、全身の緊張をほぐしますからね。うつ伏せになって楽にしていてくださいね。今、気持ちを落ち着かせるアロマを焚きますからね」


 キャスター付きのワゴンを押してきて、最上段のアロマポッドに火を灯す。

 すると微かな紫煙と共に、緊張がゆるむ蠱惑的な香りが周囲に満ち始める。二度三度と鼻をひくつかせているうちに、医師にあったわずかな警戒心が溶けて消えていく。

 

「これ、いいでしょう。イランイランって香りでしてね。脳みそが緩んできますでしょ?」

「あぁ、そうだな。なんか、悪くねえ香りだ……」


 反応を見るように話し掛けながら、医師はガラス製のボトルから手のひらにオイルを溜める。そして山脈のような背筋へとたらりとまぶしてゆく。

 事前に温められているせいかオイルが拡がる感触は心地よく、手のひらを使って塗りたくりながら撫でられても不快感は一切無かった。緊張と一緒に息が漏れ出ていく。

 

「オイルマッサージは初めてですからね。ちょっとぬるぬるするけど我慢してくださいね。これも治療ですからね」

「お、おう。くっ、分かった、平気、だっ!」


 毛皮に覆われた背中を小さな両手がにゅるにゅると滑りあがっていき首筋を両サイドから包み込む。親指でうなじを貫くようにして首の付け根を揉まれると、こわばっていた筋肉がほぐれていく快感が首から肩、背中へとじっくりと広がり始める。

 他愛ない会話を続ける間にも手はぬるぬると大きな背中を滑り回る。首筋の指圧の後は肩にかけて揉み解し、背筋に沿って指圧も交えて腰まで降り、再び首筋をほぐし始める。

 

「お、おぉぉ……」


 それは紛れもない快感の喘ぎだった。

 オイル自体の温かさと医師の体温、そしてオイルの効果が剛田自身の体温も火照り、内側から温められていく。

 アロマポットからの香りは初めて嗅ぐものだったが、肺に取り込むと脳細胞にまで香りがしみ込んでいくようだ。全身から力が抜けて、冬の朝に布団の中でまどろんでいるような抗いがたい睡魔に誘われ、頭がぼんやりとしてくる。


「はい、このまま手足もほぐしていきますからね~~。両手両足を左右に広げてくださいね」


 言われるがままに手足を伸ばすと、すぐにオイルが垂らされ始めた。筋肉の凸凹を滑るように手のひらが這うとヌチャヌチャと液体の絡みつく音が響き、耳の中へもオイルと快楽が注ぎ込まれるような悦感がほとばしる。

 

「リラックスして、と言われても難しいですからね。気持ちいいことにだけ集中してくださいね。気持ちいい気持ちいいって繰り返してると他のことを忘れられますからね」

「そう、そうかぁあああぁっ……おおぅっ」


 肩から背中にかけて甘い感覚が波紋のごとく広がり、筋肉の張りが蕩けていく。背骨を舐められているような悦楽が身体の中を満たしていき、身体だけでなく思考までも弛緩させる。

 医師の指先は想像以上に巧みだった。脇腹や腋を撫で、腕を滑り上がると指を絡ませるように手を握り、末端を甘く擦り上げた。

 下半身は尻と太ももの境界線を両手で握るようにされ、膝に向かって扱くように愛撫されていく。

 

「く、ぉお❤」


 喘ぎ声を抑えきれず、マッサージ台へと敷かれたタオルを噛みしめる。

 脚をちんぽに見立てて扱かれているようで、紐パンの中で極太ちんぽがムクムクと硬くなっていた。男の手なんぞでと抵抗しようとすればするほどにかえって手のひらからの刺激を意識してしまい、極小の布切れでは隠しきれないサイズへと成長していく。

 

「脚がガチガチですねぇ。インポ改善と一緒に疲れも取っていきましょう」

「ぐぅ❤く、おっ❤❤そう、だな……❤」


 返事をするが舌がもつれてまともに話せていなかった。太ももを撫でる指がでっぷりとした金玉を掠めるように擦り、そのたびに肛門をひくひくとさせて、腰を浮かせて快感に酔いしれるハメになる。

 手を跳ねのけることはできなかった。あからさまに性的な触り方をされれば別だろうが、あくまで医療行為の範疇なのではないかと納得させられる、ギリギリの触り方。加えて下半身をとろとろにされそうな快感が抗おうとする意志を骨抜きにしている。

 

「ブフゥーッ❤❤ふっ❤フンッ❤❤」


 頭の奥が茹る。身体が火照る。

 理性で本能を抑え込み、息を整えようとするが呼吸を深くすることでかえって身体はリラックスし、快楽がより深く身体に浸透する。

 いつの間にかオイル以外のもので毛皮がじっとりとするほどに身体が熱くなっていた。口は半開きになり、熱中症の犬のように舌先が垂れ落ちている。

 

「気持ちいいですか?いいですね、そうやって快感ホルモンがアレするとインポに効きますからね」


 耳元で囁かれびくりと身体が震える。

 顔の真横ではにやついた医師の顔があったが、それに対して怒鳴りつけることができないほどに身体が腑抜けてしまっていた。吐息を感じた耳すらも性感帯になってしまったようにぱたぱたと上下に揺れている。

 

「では、臀部のマッサージに移りますよ。オイルが垂れますからね。動かないでくださいね」

「っ、おう……❤う゛おっ❤❤」


 タオルを噛んで耐えていると、尻尾の根本に温かい滝が滴り落ちてきた。

 事前に告げられていたのだが、オイルが腰に広がる刺激に尻尾がピン、と硬直する。

 オイルの細い滝はじりじりと尻肉に移り、均整の取れた尻たぶを濡らす。そして右の尻肉を裾野から螺旋を描いて登り、刺激に震える尻にとろりと絡みつく。

 そうして垂らされたオイルが尻の谷間に伝い落ちていく感覚にビクンと背筋を反らせるが、医師がすかさず囁きかけてくる。

 

「今は治療中なんですから動いちゃダメですよぉ。ほら、気持ちいいって繰り返して。心を落ち着かせましょう」

「ぐ、ふぅ❤んな、無理だっ❤❤んぉおぉ❤」

「まずは尻全体と、太ももと腰のあたりにもオイルを塗りますよ。このあたりにリンパだかが溜まっておりますのでね」


 左の尻肉にもオイルをたっぷりとまぶされて喘ぎ声を止められない。尻に垂らされたオイルはさきほどまでのものより実体感があり、ゼリーのようだ。加えてぬるつき具合もずっと強い。

 デカ尻と太ももの境目から、わずかに下へズレた位置に着いた手。器用な指先で腿の外側を掴みオイルまみれの手のひらは腿の裏側を覆っていた。

 そのまま肉をほぐす手つきで、腿裏から尻肉の根本までゆっくりと手を滑らせる。指も手のひらも一瞬たりとも離れないまま、肉を絞りながらスライドさせる。

 

「く、うぅうぅ❤❤❤」

「はい、次は腰もやっていきましょうねぇ。いやー、ケツがデカすぎるせいで腰が細く感じますねぇ」

「あおっ❤❤腰ヤベッ❤んぅうぅぅ❤」


 尻肉の裾野に指を食い込ませたかと思うとすぐさま腰骨のあたりへと移る。

 尻肉が発達しすぎているせいで尻肉と腰の境目がくっきりと分かってしまうが、ねちっこい指先は尻肉側へと手のひらを擦り付け、揉みしだくようにオイルを塗りたくってくる。

 しつこくされているうちに粘液を塗りつけられている腰のあたりがほのかに痺れてくる。それも、じんわりと甘い官能的なものだ。

 

「むぉお゛ぉおぉ❤❤❤んふう゛ぅぅ❤ぶふうぅ❤❤」

「オイルの成分が効いてきましたかね。では、メインのデカケツも好きにさせてもらいますよ」


 医師の言葉が下品になっている事すら気づけないまま、剛田は太ももと尻の境界線を指先でピンク色になるまで揉み解されていた。

 そして尻と太ももの断崖の境目を乗り越えられて、バスケットボールを並べたようにでかい尻肉にまで侵入を許してしまう。

 

「あぉおお゛おぉおぉ❤❤❤」


 ずっしりとした球形のデカ尻を手のひらで踏みつけられたとき、ついに艶めかしい叫びが喉からほとばしった。

 

「おっと、デカ尻がそんなに気持ち良かったんですか?感度もっと高めていきましょうね」

「ち、違う❤❤気持ちよくなんかね、お゛ぉんっ❤あっ❤❤あんま強く揉むな❤くぅう❤❤❤」


 否定する声も震えていた。

 羞恥心にいたたまれなくなり、タオルに頬をつけたまま硬く目をつむってしまう。

 医師は男のプライドを嘲笑うように口元を歪め尻肉を握りしめる手へと視線を戻す。ビキニバックの縁が斜めに分かつ領域の外側、つまりは紐パンがらはみ出ている尻肉の大半だけをわしづかみにし力強く揉む。

 

(やっべぇ❤尻なんか揉まれて、チクショウっ……❤❤❤)


 筋肉が詰まっているくせに驚くほど柔らかい尻肉は、引っ張られると尻の谷間が拡がってオイルがよる深くまで垂れてしまう。

 オイルが肛門に垂れるだけでも快感が生じて、まるで風俗嬢に肛門を舐めさせた時のような快感が走る。

 同時に尻たぶにも甘い痺れが伝播して、下半身すべてにしみ込んでくるような悦感が募っていく。

 

 自分は男であり、それも女を数えきれないほど抱いてきた雄だ。

 男に尻を触られて感じるような変態であるはずがない――そう否定しようとしても快感は強情心を少しずつ溶かしていく。

 

(尻捏ねられてるぅ❤溶ける❤❤尻ヌルヌルで熱っちぃ❤❤くそぉ❤きもちいぃ❤❤)


 その間も、魔指は悠揚迫らぬ物腰で尻肉を不適に捏ねまわす。飽くまで急がず、ねちっこく、肉の密度と弾力を確かめるように、ゆっくりと円を描いて捏ねくりかえす。力強い指先が尻肉を抉りとらんばかりに深々と突き刺さり、剛田は奥歯を強く噛み飛び出そうになる声を抑える。

 

「おっとぉ、デカ尻が震えてますけど。気持ちよくなっていただけて光栄ですよ。我慢せず声を出していいですからね」


 抵抗むなしく快感を得ていると見抜かれて、羞恥心に顔が熱くなる。ぬめりたっぷりの手に揉まれる尻肉はそれ以上に火照りが高まる。ヌチャヌチャという卑猥な水音が耳から入る音が脳を揺さぶる。

 内腿が自然と擦り合っていた。マッサージというより愛撫になっている手つきは悔しいまでに巧みだった。自分が女を抱く時以上の手管で尻を揉まれて身体の昂ぶりを沈められない。

 

「尻がでかすぎると下半身も疲れて大変ですよねぇ。私がしっかりと疲労とかを良い感じにしときますよ」


 猫撫で声で囁かれつつ、尻たぶの紐パンで隠されていない部分を全て捏ね潰された後、いよいよ両手が紐パンの内側へと潜り込んでくる。開き気味の手指が尻肌に密着していた薄黄の布切れを盛り上げる。

 

「あ゛っ❤なんでだ、いいだろそこは――おおぉぉう❤❤❤」

「いやいや、ケツ穴の周辺もリンパが溜まるらしいんで。しっかりマッサージしときませんと」

「てめぇ❤❤やめろ、おおぉぉ❤❤❤塗るなぁ❤ケツがぁ❤おかじぃぃ❤❤くぅおぉ❤」


 紐パンの内部に手が潜り込んだせいで尻肉に食い込む紐がますます引っ張られ、綺麗な円形を描いていた尻にぎちぎちと食い込んでいく。しかもマッサージ台と紐パンに挟まれてちんぽがガチガチに勃起しているのだ。亀頭にぴったりと布切れがへばりついているせいで下着は引っ張られ、剛田の尻肉は蛸糸で縛られたハムのように紐で縛りつけられていた。

 

「ああぅうぅ❤❤やめろ❤汚ぇ❤❤ケツッ❤ケツ穴触るな❤んぉうぅ❤❤オイルやめりょおぉぉ❤❤❤」


 だが、紐が食い込む痛みなど忘れてしまうほどの快感が尻穴を襲っていた。

 赤銅の毛皮に覆われた尻肉の中で、唯一ピンク色をした肛門には直接オイルが塗りこめられて、くちゅくちゅといやらしい音を立てていた。

 肛門の皺一つ一つにオイルを塗りこめるような丁寧さで指先が肛門を撫でまわして、トントンとノックするように爪先で突きまわす。それはマッサージという行為からは明らかに外れており、女性器を愛撫す時のような淫らさを発揮していた。

 

「そこ、駄目だ❤❤マッサージはいらねえがら、あ゛ひぃぃ❤❤❤」

「んー、反応がいいですねぇ。風俗嬢に舐めさせたりしてるんですかね?いけませんよ、こんな雄くっせぇケツをひと様に舐めさせるなんて」


 尻に手形を残すように強く揉みながら、肛門はなおもねちっこく突きまわされていた。オイルが肛門の中へと伝わり落ちるように二本の指で肛門を広げられ、内部へオイルが伝わると肛門からも快感めいた痺れが走る。

 どうにか指から逃れようとしても尻が鷲掴みにされていては叶わずに、勃起ちんぽをマッサージ台へ擦り付ける結果にしかならなかった。我慢汁は溢れ続け、紐パンでは吸収しきれない量で敷かれたバスタオルを雄臭く汚している。

 

「ぐお゛おぉ❤❤❤だめだっ❤もう、ケツがああああぁぁっ❤❤」


 これ以上はいけない。

 ちんぽから噴水のように溢れる汁は快感が限界を超えて溢れそうであると示している。ひくついた尻穴はオイル以外のものでぬるつき始め、期待に入口を開閉させている。

 

 このまま指を突き入れられ、内部を撫でまわされれば間違いなく絶頂してしまう。

 危機感を覚え、尻をぶるりと震わせ――

 

「はい、尻のマッサージはここまでにしましょうか」

「ん゛あっ!?❤」

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