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今作は長いので、今月と来月で分けます。

途中経過を支援者限定複数回公開する予定です。

サンプル一般公開は未定。



 囮の由来は招鳥(おきとり)であり、鳥で鳥をおびき寄せる狩りの手法である。鳥は同胞を見て気を許し、狩人の仕掛けた罠へと自ら飛び込んでくる。

 しかし年月が経ち囮は同胞ではなく獲物が求める餌の意味へと変わる。疑似餌。手負いの兎。ケダモノどもが牙を突き立てたくなる美味そうな餌の意へと。

 囮捜査もそうだ。犯罪者どもを逆に騙すための餌として被害者を装う。たやすく食い物にできそうな子羊は、実は狡猾な狩人だったというわけだ。

 

 おれも自らを狩人だと信じ込んでいた。

 馬鹿なケダモノどもを騙して狩る上位者だと自分を過信していた。そこらの男の腰より厚みのある太ももに、鉄パイプでも間違えて入れたのかって思えちまうぐらい逞しい腕。ヘリオドールを加工したような鱗。乳だって尻だってそこらの女より突き出ている。雄を嗜好しているヤツに対して、おれは理想的な囮だった。

 

 おれがあの日覚えこまされたのは、衝動だった。

 どんな男を相手にしたって実感しなかった衝動が身体の奥深くから噴き出してきやがったんだ。それは相手を屈服させたいって雄の欲情じゃなく、隷属をねだる雌の身悶えだ。

 越えてはいけないラインを前にして、おれは目を瞑る。黙る。何もかも拒んで石のように固まろうとした。

 

 その一方で、おれの本性は薄目を開けていた。おれを見下ろすにやけ面を媚びた面で見上げていた。

 ああ、やっぱりだめだ。この手に身体を預けてしまいたい――


***


 プラットホームに特徴的な電子音が流れる。クラシックをアレンジしたであろう特徴的な音律は乗客たちにとってはお馴染みで、そして不愉快なものだった。なにせ、このフレーズは地獄の満員電車へ乗り込む合図なのだから。

 梅雨の開けたばかりのホームは空調が無意味なほどの熱風が頬を撫でており、列車に入れば入ったで待っているのは蒸し風呂のような湿潤した空気。

 帰宅途中のサラリーマンや学生でごった返し、ロングシートに乗っている客は男も女も関係なく脚を閉ざし両肩をぶつけあって舌打ちを鳴らす。身体のどこかに見知らぬ誰かの体温と湿り気を感じながら、仏頂面を浮かべてアコーディオンとなっている。

 この地域では獣人が多いからか、サラリーマンたち夏用の薄いスラックスとシャツからきつい獣臭を醸し出し、部活帰りの学生たちは筋肉でこれでもかと膨らんだ肉体から思春期にしか出せないドロリとした汗の匂いをくゆらせていた。

 

 男女比のバランスは大きく偏っている。ライオンの群れに囲まれたガゼルよろしく女生徒やOLたちは固まって周囲を警戒していた。このような満員電車の中では女の敵、いわゆる痴漢が付き物だ。周囲を警戒するのも当然といえば当然で緊張感を放っていた。。

 しかし、この車両で緊張感を放っているのは女性だけではない。むさ苦しい男たちの中でも特に際立った体躯を持つものたち。筋トレで鍛えた大胸筋を揺する鮫や、ジャージが弾け飛びそうな特大の大臀筋を持つ虎も周囲をきょろきょろと見回している。それは捕食者ではなく食われるべき草食獣に似た顔つきだった。

 

「わーっ!待て待てぇ!」


 そして、電子音のクラシックが鳴りやんでドアがシリンダー音とともに閉じようとした時、むりやり割り込んできた者がいた。

 外の熱気と隔離され、サウナ内でのおしくらまんじゅうを覚悟していた乗客たちから舌打ちとため息がこぼれる。この馬鹿のせいで不快なすし詰め地獄が数秒長引いたじゃないか、と恨みがましい視線を向けた。

 

「ふはー、良かったぁ。遅刻しちゃうところだった!」


 しかし、人混みをかきわけて車内を進む姿を見て男どもは恨みの視線をあっさりと変える。

 乗り込んできた男は若々しいシャチだった。深海の闇をそのまま切り取って来たような黒と、ほんのりと桃色を帯びた白で作られた表皮のコントラスト。獣人が持つ鱗は宝石に例えられがちであるが、このシャチは黒曜石と白磁という二つの石材によって形作られていた。芸術とも言える輝きを放つ肌につぶらな瞳と大きく開いた口が付いているのが可愛らしさを加味していた。

 

 恰好もすさまじかった。豹柄のへそ出しタンクトップに、太ももどころか大臀筋まではみ出してしまいそうなホットパンツ。その上に汗染みが浮かぶシャツを羽織り、ゴテゴテしたロングブーツを合わせている。さらにはシルバーのアクセサリを首や手足にぶら下げていて、つるつるした頭にサングラスを乗っけている。脇腹も、鎖骨も、太ももまでも剥き出しの姿はこのままビーチに繰り出せそうだった。

 

「おい、すっげぇなアレ……」


 ロングシートに腰掛けていたサラリーマンが同僚に囁きかけた。鼻の下を伸ばした男が見つめるのはこれでもかと突き出した筋肉たちだ。腕は隆起した筋肉でぼこぼこと膨らんで、こぶりのスイカを接合して作ったかのようだった。胸元に張り付いたタンクトップは引き伸ばされ谷間を際立たせている。呼吸をするとふいごのように爆乳が膨張した。腹筋が整然と並んだ腹もふとましいのだが、乳と臀部がでかすぎるせいでくびれてさえ思える。腕に劣らず太い両脚はしまりのある充実感を漏れだたせていた。

 

 少しでも雄を嗜好していれば股座をいきり勃たせぜずにはいられないグラマラスなシャチが、恥知らずに身体を見せつけて歩いているのだ。車内の注目を浴びるのも当然というもの。他の男たちが露出の少ない装いをしているのもあって、過剰に男たちの興奮を誘った。

 シャチはそんな視線も慣れたものなのか、でかい尻を揺らしつつ人混みをかきわけてはドアの前へと陣取った。終点までは開かないドアの側で、人と触れ合う面積も少ないため人気のスポットだが奇妙にもスペースが開けていた。

 

「これならデートに間に合うなぁ。ユッコ、今日はたっぷり啼かせてやるぞー」


 べろり、と口周りを舐め回して彼女の肢体を思い浮かべる。久しぶりのデートで、明日は休日だ。ホテルでたっぷりと『お楽しみ』をする腹積もりだった。自慢の巨根がスリット内部で硬くなって、なだめすかすのも一苦労。代わりに尾びれを床へと打ちつけてリズムを刻んでいた。このシャチに近づけば雄の匂いがぷんときつくなったのに気付くだろう。

 

「……あの兄ちゃん、不用心すぎないか?」


 シャチがスマホを眺めていると、人垣の向こうからそんな囁きが聞こえてくる。

 

「知らねえのかな?この時間は『沼男』が出るやばい時間帯だって」

「知らないはずないだろ。ニュースにだってなったんだから」


 沼男?とシャチは意識を囁き声へと向けてみる。恐ろしいものを見るようにこちらを見ているのは運動部らしき高校生たちだった。

 

「この前もさ、ボディビルダーが痴漢されちまったんだってさ」

「知ってる。おれの友達も同じ車両にいたって。あれ、レイプされたみたいに酷い姿でさ」

「ケーサツも捜査してるのにさ、顔もまだ分からないんだってよ。本当にヨーカイかなんかじゃないかってみんな言ってる」


 なんだ、くだらない噂話かとシャチは再びスマホへと視線を戻した。痴漢をする妖怪なんて馬鹿馬鹿しいが、学生の間で流行っているのだろうか。

 

「……ま、おれを痴漢できるモンならしてみろってんだ」


 誰に聞かせるでもなしに呟いて、片腕で力こぶを作ってみせる。血管が幾筋にも絡みついた腕は、蔦が這う柱のように太く逞しい。力を込めれば丘がいくつもできていた腕に巨大な山脈が現れる。赤子の頭ほどはあろうかという筋肉の山はシャチの屈強さを象徴していた。

 

「大体、男のくせに痴漢なんかされてんじゃねえっつーの」


 ふん、と鼻を鳴らしトークアプリで彼女へのメッセージを打ち込んでいく。

 シャチからすれば、痴漢をする変態よりも情けなくも辱められる男の方が軽蔑の対象だった。変態なんて声の一つでも上げれば逃げていく。そもそも、自分ならば痴漢してきた手を握り潰して止めてやる。か弱い女子どもじゃあるまいし、レイプ紛いの痴漢なんてされる方が理解できなかった。

 その間も、学生たちの囁き声が嫌でも耳に入って来る。

 

「でさ『沼男』に置換されたら服を全部取られて丸裸にされるんだってさ。ローターとかバイブとか使われてめちゃくちゃにされるんだって」

「しかも、周囲の人に気付かれないんだよな。痴漢が終わって『沼男』が消えてからようやくみんな気付くんだよ」


 学生たちはそのあとも非現実的な痴漢についての噂話を続けた。やれ、電車の壁から手が襲い掛かってくる。やれ、いつの間にか周囲を囲まれて嬲りものにされている。やれ、顔を見たはずなのに思い出せない。などなど。

 人の手では不可能な痴漢方法と、鉄道や警察が対策をしても一向に犯行は止まらないことから噂はエスカレートして都市伝説『沼男』と名を奉られるまでになったらしい。

 

「馬鹿じゃねえの。ンなこと話してる暇あったら彼女でも作れよ、バカガキども」


 間抜けなガキどもめと見下してスマホを弄んでいると、不意に背中に電車の壁面とは違う感触がした。ぴたりとドアに背を付けていなかったか?と疑問に思う暇も無く生暖かい息が首筋にかかった。

 

(なんだ?コイツ……まさか本当に痴漢野郎か?)


 不自然なまでに密着しているが確信できなかった。自分をターゲットにする変態なんているとは思えなかったし、視線を後ろに向けて見た男はとても痴漢行為という下衆を働くようには見えなかったからだ。

 デパートで吊るし売りをされていそうな安っぽいスーツの上下にストライプのネクタイ。つり革を掴む手には無個性な腕時計。やたらとてかっている革靴をはいて片手には新聞を持って顔を隠している。顔は見えないが、手の鱗や新聞紙からはみ出した角から竜人種だと推測できた。

 

 加えて、その体躯も特徴的だった。肉体自慢のシャチに見劣りしない巨漢であり、その筋肉でスーツが引きちぎれてしまいそうだ。生地の上からでも筋肉のラインが丸分かりの膨らんだ身体つき。

 外見で人を判断するのは愚かだが、シャチの短絡的な判断基準では鍛えている男は原則として正しく、堂々としているものだった。

 痴漢とも断じることができず、シャチはとりあえずスーツの男を『ビルダー』と呼称することにした。体型でしかものを見られない筋肉馬鹿らしい呼称だ。

 

(まだ、なんにもしてこねえけど……)


 背中で大胸筋の感触と熱を感じる程度で、男は何もしてこない。黙って新聞を見るだけで、シャチに視線を向けすらしない。やはりこんな偉丈夫が痴漢などと下劣な行為に手を染めるわけがない。馬鹿な噂話で過剰に気にしただけに違いない――そう、結論づけようとしたその時だった。

 

 カーブに差し掛かり、車内が軽く傾いたその瞬間。つり革のバンドがあちこちで軋む最中に、男が動いた。

 

「――――ッ!」


 悲鳴を上げるのを寸前で堪えた。

 ビルダーのごつく太い右手が、腰骨のあたりを這ったかと思うと撫でまわしつつ降りていき、ホットパンツの後ろポケットを包み込んでくる。あまりにも尻肉がでかすぎてポケットが小さく思えてしまう臀部が、ぐっと掴み上げられた。

 尻を撫で回されるなどという未経験の不快感にシャチが硬直すると、手は気を良くしたのか硬くなった尻肉をほぐすように揉んでくる。

 

(や、野郎!調子コキやがって!その指ヘシ折ってや――ぇ❤)


 思考がかき回された。敵意と怒りで満ちていたはずの脳みそに全くちがう感情が流れ込んで来る。ホットパンツ越しに揉まれてくる感覚が脳みそまでダイレクトに伝わって、全神経を綻ばせる。

 それは質こそ違えどシャチが良く知る感情。彼女を抱いた時、自慰の時に感じるあの感情。快楽と呼ばれるものが、尻肉から脳に向かって叩き付けられていた。

 

(あっ❤んぁ❤❤な、なんだこれぇ❤変だ、こいつっ❤」


 尻肉に指が食い込むと膝が笑ってしまう。尻がちんぽ以上の性感帯になってしまったかのようで、腰が自然とくねる。尻から内部にまで心地よさが拡がっていく。肛門がきゅっ、きゅっと指の動きに合わせて収縮していた。

 おかしい、そう思う暇も与えられず更にもう二本の腕が追加されていた。タンクトップが張り付く胸を鷲掴み、もう片方を股間に滑り込ませてくる。

 

 ビキニが三角州を形作る股間と不埒な大胸筋を撫でられ、揉まれ、そのどちらからも淫靡な刺激が生まれ腰が暴れ出す。

 だが、こうも横暴に自分の身体を弄ばれて黙っていられるはずがない。シャチは牙を剥き出しにすると、背後のビルダー野郎の顔を睨みつける。

 

「こっ!この、野郎ぅ❤❤いい加減にしやが――え?」


 首だけを振り向かせて、シャチは絶句した。ビルダーは相変わらず新聞紙を読みふけり、もう片方の手ではつり革を掴んでいる。その間もシャチの局部を愛撫しながら。

 

「な、なんでえぇっ❤❤おっ❤んぉおぉ❤❤この腕っ❤誰のぉ❤❤」


 自分のスリットをビキニの上から押し込んで来る指先は誰のものだ。やたらと柔らかいくせに、荒々しく大胸筋を揉んでくる手は誰のものだ。でかすぎる尻を包み込む、このイヤミったらしい手は何者だ。そもそも、この三本目の手は何処から生えてきたのだ。

 

 混乱した脳みその代わりに脊髄が動く。自分を凌辱するこのビルダーを打ちのめそうとエルボーを食らわせようとした――その時だった。

 

「なっ!?」


 鉄筋コンクリートでも仕込まれていそうな両腕が、またしても背後から掴まれた。胸や乳を揉む手と同じく広く逞しい手が剛腕を固定している。両肘両手首を固定した追加四本の手は両腕を掌握し、首の後ろまで引き上げてしまう。

 両手首を交差させ、肘を折りたたまれ、くぼみができた腋を露わにさらす形で拘束されてしまった。さらに二本の腕が現れて、腕の付け根までも固定してしまう。

  

「こ、こんなっ!こんなことあるわけねぇ!誰か!痴漢だ!誰か助けてくれっ!」


 異常事態を脳が拒否して、シャチは周囲へと助けを叫んだ。男としての意地も、蜘蛛の脚を超える手が現れた理由も頭には無かった。すぐにでも、後ろのビルダーから逃れられればそれで良かった。

 

「聞いてんのか!痴漢だ!おれのケツを揉んで、こいつっ!早く助けてくれよ!」


 レール音の境目を狙って叫ぶが、周囲は何の関心も示さない。発達した肺活量を活用して声を張り上げても、周囲のサラリーマンは無反応。スマホをいじる若々しい茶髪も、白髪混じりで文庫本を読みふける男も、視線を向けすらしない。

 明らかにおかしい。都会の無関心、なんて言葉はあるが痴漢ビルダーはあからさまに乳や尻に手を伸ばしている。反応すらしないなど、あるわけがない。

 

「無駄ですよ、あなたの声は遮断させてもらいました」


 それまで沈黙を守っていたビルダーの声――ではなく、思考とも呼べるものが指先を通じて乳や尻から伝播してくる。それは、声色以上に不快さと粘っこいいやらしさを脳みそへと絡みつかせてくる。

 

「私とあなただけはこうして思考でやりとりができるのでご心配なく……。ただ、あなたが精液でも漏らせば匂いは伝わりますし、発情すれば熱は伝わります。ご安心ください」


 非現実的な説明にシャチが絶句していると、手たちは粘着質な愛撫を続行した。滑らかな皮膚を這いまわる数多の手のうち、一本がタンクツトップの中へと潜り、大胸筋をつかんでかきだし、タンクトップから飛び出させてきた。

 布地に押し込まれていた乳肉はぶるんっ!と大きく跳ねては汗を飛ばし、塗れてかる雪よりも白い体表はクーラーの冷気を直で浴びせかけられる。

 

「ぅうぅあぁぁ❤❤❤な、んでぇ❤❤」


 何故自分がこんな目に合うのか。何故後ろの男はこんな怪現象を引き起こせるのか。何故クーラーの冷風を浴びただけで乳肉が痺れるほど気持ちいいのか。

 女を抱くことと筋トレにしか使われない思考回路では正解に辿り着けず、嘲笑うようにもう一本の手が這う。今度はタンクトップの右裾を持ち上げて、片乳を弾け出させてきた。

 

 楕円形の乳肉に布地が食い込んで、でかすぎて乳首が下を向いている爆乳が形をほんの少し歪める。胸の谷間を斜めに横切る形で脱がされて、どちらの乳も車内の灯りで照らされる。

 

「や、やめろおおぉっ!離せっ!離せぇえぇ❤んっはあぁああ❤❤❤」


 暴れ出そうとした瞬間、またもや腕が伸びてきて剥き出しにされた雄乳をすくいあげ、乳搾りをする農家よろしい指づかいで揉み上げてきた。

 

「ぐっひぃいいぃ❤だめだっ❤❤おれの胸は、んあぁあ❤」


 五指がゆっくりと弧を描き、雄胸の中身を二つに分けてくる。身体から中身が搾り出されていく実感とともに、胸から喜悦がほとばしってきた。蜂蜜のように甘く粘着質なそれは、胸の付け根から腋窩へ抜けていくうちに、皮膚を下をかきむしっていった。

 腋を舐められているようなこそばゆさが腋から背筋や首筋に伝播して筋肉を痙攣させる。指が再び真っすぐに伸びたかと思うと、今度は小指から順に曲がりを強める。先ほどと同じ、いや、より強力になった染色が乳首にもせりあがってきて、ぷっくり膨れた乳輪を内側から盛り上げた。

 

「嘘だあぁあぁ❤❤こんな❤揉まれてるだけでぇ❤」


 現実を受け入れられなかった。乳を緩慢に捏ねられているだけなのに、乳肉が震え出すほどのもどかしさに襲われている。肛門がひくひくと痙攣を繰り返し、足腰がどうしようもなく震えていた。あっという間にスリット内部のちんぽが硬度を増して、腋のくぼみに汗が溜まった。

 

「ふふ、随分と感じやすいのですね。男相手でも構わないクチですか?」

「んなワケぇぇ❤ねえ゛だろぉお゛ッ❤❤❤んひぃいぃ❤」


 ビルダーの五指が揉みこみを活発にし、乳肉の深くにまで指を食い込ませてきた。シャチの隆起した背中がのけぞって、ビルダーの胸板へ預けられる。雄々しい首筋に血管が浮かび上がり、牙の隙間から唾液が垂れる。

 シャチの虚勢をくつくつと喉で嘲りながら、乳をすくいあげていた人差し指が這い、乳首をピンッと弾く。

 尚も虚勢をあげようとしたシャチだが顎をがくんと跳ね上げて、巨乳を突き出してしまう。ビルダーの太い指は器用に這って、でかい乳首をリズミカルに弾き続ける。

 

「おっ❤んお゛ぉ❤❤あ゛っ❤おぉんっ❤❤」


 乳首を弾かれるたびに舌が震えてもつれる。シャチの巨体からすれば取るに足らない肉の芽が全身を支配していた。鼻の穴が拡がって、視界がぼやけてくる。膝が笑って立っていられなかった。

 

「乳首が弱いんですね。開発する趣味がおありで?」


 新聞紙を降ろして顔を覗き込んでくる竜は、なんとも無個性な顔だった。どこにでもいそうで、どこかで見たことがあるようで。それでいて次の瞬間には忘れてしまいそうだった。

 しかしその愛撫は激しく、脳みそに快楽を刻みつける。親指と人差し指の共同作業で乳首を摘まんで、シャチが恋人相手にするよりも巧みな力加減で乳首をつねりあげてくる。こめかみから脳みそがじんじんと痺れだす。

 

 愛くるしいピンク色の乳首がマシュマロみたいにひねられた。乳首の根本ごと、倒すようにねじられて息が詰まりそうだ。快楽を休みなく注がれて理性が窒息しそうだった。

 

「ひぃいいぃ❤❤も、もう乳首やめ゛ろぉ❤❤❤お゛ぉお゛っ!?んっはあぁあぁ❤❤」

「乳首以外もご所望ですか。意外に淫乱なのですね」


 手が乳首以外も責め立ててくる。汗を滴らせている腋窩で指先が踊り出す。不快なだけの愛撫が大胸筋の搾りと乳首の捻りによって生まれた快楽と合わさって、さらに脳みそを狂わせる。でかい尻肉は暴れ回って交尾をせがんでいるかのようだった。

 すると、両手が馬鹿な犬を躾けるように顎を掴んで、尻肉を打ち据える。その痛みや苦しさすらも快楽へと変わる。

 

「お゛ぉおおぉーーっ❤❤おおぉおあおん❤❤❤」

「おや、股間が少しばかり膨らんでいますが……まさか、こうして乳首をつねられて勃起をされてしまうのですか?度し難いですね」


 雄胸を捏ねていた手は乳首専属になり、新しい捏ね潰し役が追加された。乳肉を鷲掴みにして持ち上げて、荒々しく揉み潰してきた。乳首と乳肉それぞれを、好き勝手に弄ばれる。

 

「胸ぇ❤❤おりぇの胸がっ❤こんな女みたいに゛いぃ❤❤」


 愛らしい肉食の顔が、舌をはみ出させた淫獣のそれへと変わる。助けを乞うように叫ぶ顔には常日頃の勇ましさやプライドの高さなど微塵もなく、黒光りする体表を汗と涎と鼻水で艶めかせる。

 誰かこの異常事態に気付いてくれと尾びれを悶えさせるが、大きく暴れることができないように掴まれる。そればかりか尾びれの根本を押し込まれ、先端までつぅと撫でられる愛撫を追加される。ホットパンツの股間部分はすっかりテントをはって、いやらしいシミを作っていた。

 

「さて、そろそろ次の駅ですね……軽くイっておきますか」

「んぉお゛ッ❤❤❤お゛っひいぃいぃ~~❤❤」


 車内のアナウンスが駅の到着を告げるのに合わせて、指の力が更に強くなった。万力で締め上げるように乳首を強く抓まれて、弾性のテストでもしているかのように変形させられる。激痛を伴う愛撫だが、シャチは痛み全てを快楽に変換したかのように脳を焦がされる。

 加えて、全身の腕が絶妙なタッチでまさぐり始めた。腋窩やへその穴を指先で擦られて、耳の穴に指を突っ込まれる。でかい尻を小気味よい音で叩き、胸肉を捏ねる手は一片の優しさも感じられなくなる。

 

「おごおぉお゛ぉおおぉ❤❤❤ごれ、やっべえ゛えぇえぇ❤❤」


 唯一固定されていない腰がオナホを使うように前後した。自慢のちんぽは完全に勃起した状態で突き出され、ビキニとホットパンツを突き抜けて濃い先走りを飛ばす。

 シャチにとっては恐ろしく長い時間に感じられた愛撫あ、駅停車を告げるアナウンスと同時に終わりを告げた。竜の口が耳元で「ほら、イきなさい」と息をふきかけて、それが合図になった。

 

「~~~~~~っ❤❤❤❤」

 

 耳孔を撫でる吐息に脳が跳ね踊り、金玉が限界を迎える。腰が突き上げられたまま全身が硬直し、テントのシミが拡がった。

 汗の匂いに加味された性の匂いは電車内に充満するが、幸か不幸か周囲の人間は何も反応しない。ただ、車内で絶頂したという事実を匂いによってシャチ当人に知らしめる。

 

「はーっ❤はあぁぁ……❤❤」


 絶頂の余韻が強すぎるのか、シャチはちんぽを突き出したまま動けずにいた。性豪であり、恋人を相手にすれば二発や三発種付けした程度では満足できない男だが、乳首による絶頂はこれまでとは質が違っていた。脳みその使ったことのない部分をいきなり使われたようで、処理落ちを起こしてしまっている。

 

 シャチの頭を再開させのは不愉快な電子音によるクラシック。発射の合図で再び現実を見据えるが、電子音は腕による凌辱を再開する合図でもあった。

 

「止めでっ❤降りるぅ❤❤おれ、降りるがらぁぁあぁ❤やめ゛でぐでえぇ❤」


 でかい乳と可愛い乳首を弄るのはそのままに、悪辣な腕たちは下半身の衣服を剥ぎ取り始める。ホットパンツのホックが外されてファスナーが下ろされた。ムチムチな下半身を隠していた布が落ちて、煽情的な豹柄ビキニが露わになる。

 高貴な黒をしていた体表に下品とも言える豹柄ビキニは良く映えて、腕たちは歓喜したように股間へ手を伸ばす。既にスリットをはみだしたちんぽを撫で回し、蜜を漏らすスリットをビキニごと擦る。

 

「ひ、ぃいいぃ❤❤❤」


 思わず内股になり腰を引いたところを狙ってホットパンツを引き降ろされる。身体を隠す役割を放棄したホットパンツは未練がましく足首に引っかかりいやらしさを誇張した。

 そして、すぐさま伸びてくる腕たちが下半身も雄胸同様に辱め始める。数えきれないほどの腕が腰、尻、太もも、尻尾に絡みつく。ビキニが谷間に食い込む尻を鷲掴みにし、片方はパン生地のように捏ね潰し、もう片方は真っ赤になるまでスパンキングを繰り返す。丸々として、巨大な黒真珠のようだった尻は哀れな性具と成り果てて震えるのみ。

 

「良い尻をしていますね。男を誘えば相手に不自由しないでしょう。何人ぐうらいお相手されました?」

「だ、誰が男なんぞとおぉお゛おぉおっ❤❤❤あっ❤しょこやめろおぉ❤❤」

「では私が初の相手となるわけですか。恐悦至極です」


 ビルダーは耳元で悪意のこもった囁きを吐いて、腕の動きを淫ら極まりないものへと変えてくる。内腿に潜り込んだ腕は特に凶悪で、純黒の下半身に浮かんだ豹柄を手のひらで包み込む。加えてビキニが食い込んでいるスリットを弄る腕は凶悪で、既に汁塗れのスリットを絶妙な力加減でくすぐり、太ももにまで汁を垂れさせていた。

 

「はひぃいぃ❤んあぁあぁ❤❤」


 指というよりも触手に近いうねり具合を見せる指がくちゅくちゅといやらしい音を奏で始めていた。電車内の喧噪ですら誤魔化せない下品な水音でシャチの羞恥心は加速する。

 ちんぽが飛び出たスリットの肉溝が爪先で擦られる。内股になろうとする脚を抑えられて逃げられない。下半身に熱が伝播して蝋細工のように溶けそうだ。

 腰の付け根のあたりで粘っこく熱いものが流れている。尻に流れ込んだそれは捏ね潰す愛撫とスパンキングで加工され、どうしようもない疼きへと生まれ変わっていく。

 

「いけませんね。まだ前戯だというのにそのざまでは。もう少し頑張りなさい」


 叱りつけてから、ビキニの両サイドを思い切り引っ張り上げられた。

 

「ひぎぃい゛ぃいいぃいぃ❤❤❤」


 伸縮性の高いビキニが伸ばされて、綺麗なVの字が描かれた。愛液で濡れていた部分がスリットの部分に食い込んで、充血した雌肉を刺激する。と、同時に肛門にも布地が擦りつけられて指とは違い快感を生みだした。

 壊れかけの理性に決定的なヒビを走らせると、指先たちが綱引きでもするようにビキニを前後にずりずりと引っ張り始めた。

 

「お゛う゛ぅうぅ❤❤こずれるぅう❤ケッ❤ケツに食い込んじまうぅうぅ❤❤❤」


 二つの孔から染み出した体液でビキニがしとどに濡れるまで擦られ、腰の裏が金属的に軋みだし始める。ちんぽからも汁が噴き出てビキニが使い物にならなくなってから、ビキニをひきずり降ろされた。

 

「あ゛ぁ~~っ❤❤❤」


 ベチンと音を立て、ビキニにひっかかっていたちんぽが腹筋にぶち当たる。使い込まれて淫水焼けしたちんぽは汁まみれ。肥えた尻肉は揉まれて叩かれて手の痕が残り、スリットから染み出した汁で太ももには川ができて。まともな男ならば決して見せてはいけない痴態を、帰宅ラッシュの車内で陳列している。

 

「あ、うぅうああぁあ❤❤❤」


 歯がガチガチと噛み合わされた。

 夏の車内独特の汗臭い空気は紛れもなく本物で、車窓からはオフィスビルの灯りが見える。車掌の間延びしたアナウンス。車両上部にある怪しげな広告。

 どれも紛れもない現実で、自分だけが非現実的な存在に思えた。全ては嘘で、夢で、妄想で、今頃自分は恋人とベッドの中にいるんじゃないか。

 

 そんな妄想に縋ることすらも許されなかった。ビルダーの左手が丸尻の谷間に潜り込んだかと思うと、肛門にまで侵入してきたのだ。

 

「ぎひぃい゛いぃいぃ❤❤❤」


 未経験の感覚に妄想からたたき起こされる。いじったことすらない尻の穴から立ち昇ってくる肉の味は、乳首への愛撫と同じく快楽だけをもたらした。同時に尻肉の捏ね回しも再開されて、シャチの尻を性器へと生まれ変わらせる再開発がスタートする。

 

「お゛おぉ❤❤ん゛ひぃ❤」


 ビルダーの指は、下手をすればそこらのちんぽよりも太いものだった。そんなものを慣らしませずに突っ込まれ、シャチマンコの神経は無理やりに覚醒させられる。

 ファーストコンタクトで指と肛門の上下関係を決定づけた後は、いたわるような粘膜ほじりで指の腹を滑らせる。処女穴を甘やかしつつ、シャチが特に反応してしまう弱所は入念に押し込んで、ぷっくりと膨れた前立腺を爪弾き、優しく、残酷に、強く鋭く、弱く緩やかに。雄を狂わせる悪魔的なコントラストを尻の穴に刻みつけてくる。

 触れただけで快楽を生む超常的な力を別にしても耐えられない、卓越した指運び。


「おっほぉおぉおぉ❤❤グチョグチョじてるぅううぅ❤おりぇのケツ穴ぁ❤❤❤指マンされでぇえ❤❤う゛ぅうおおぉおぉ❤❤❤」


 ものの数秒で尻穴からは愛液が染み出して、シャチは喘ぎ散らすだけの淫獣へと成り下がる。尻穴を指でめりめりと押し広げられるたびに、脳みそにまで指を突っ込まれいる錯覚に陥る。

 尻穴がマンコへと作り変えられていく最中で脳が壊れたのか、太ももの付け根に生々しい痺れが走った。中指が膨れた前立腺を押し込んだ時には、思わず踵を浮かせていた。

 

「おや、もうイってしまいますか。本当に情けないマンコをお持ちだ」

「ごぉお゛ぉおおおぉおぉ❤❤❤ぞご、だめだっ❤❤があ゛あああぁ❤❤❤」

 

 ビルダーが喉を鳴らし、前立腺を押し込んだまま、指の第一関節だけをお辞儀させてくる。既に快楽器官として目覚めた雄マンコ、その弱所をピンポイントで抉られて、シャチちんぽが何度も腹筋にぶち当たる。

 喉が裂けそうな雄たけびをあげて、汗粒が浮かぶ尻たぶを震撼させる。男らしさの象徴だった尻肉はその全てをマンコを締め付けるためだくに稼働して、蕩けた雌肉が愛液が搾り出され、内ももを伝い落ちていった。

 

「ぅう゛ぉおおぉ❤❤やべえ゛ぇえ❤尻❤❤おれの尻マンコにざれぢまうよ゛おぉ❤」

「もうなっていそうですがね。もう少し根性があると思ったのですが……頑張ってくださいよ。そんな醜態を彼女に知られても良いのですか?」

「は、ぐぁあ❤❤かのじょ、そうだ……❤おれには、ユッコがぁ」


 尻穴をほじられる悦楽に沈んでいた理性がわずかに浮上する。それは恋人への愛情か、女を抱く時だけに得られる雄の悦びを思い出したが故か。どちらにせよ、雌豚へと堕していた顔に誇りと知性が再び戻り、手を引き剥がそうと筋肉が再び盛り上がる。

 

「ぐぞおおっ!離せ!離しやがれ!離さねえと殺してやるぞ!」

「良いですねぇ。頑張って貰えると私もやりがいがあります。少しだけ激しくしますので、狂わないでくださいね?」


 愉悦に満ちた賞賛を投げかけて、腕がシャチの股間へと群がって来る。尻穴ほじりと尻肉の揉み込みが少しだけ緩やかになったせいで、否応なしに股間の手を意識させられる。

 侵略者たちはちんぽが飛び差すスリット周囲、股間のデルタ地帯を撫で回し、スリット内部にも指を幾本か浅く差し込んで、つばぜり合いを繰り広げる。


「ぐひぃい゛ぃいぃ❤離ぜホモ野郎❤❤ぎ、ぎもぢわりぃんだよぉ❤」

「その調子です。私のような変態にこれ以上イかされませんよね?ほら、耳を舐めても平気ですよね」

「んぉぉおぉ❤❤❤おぉっほぉおぉん❤」


 スリットマンコに意識を集中していたせいで、顔への不意打ちを察知できなかった。竜の長い顔が頬ずりをして、耳の穴に舌を差し込んできたのだ。ぐちゅりと鳴る唾液の音と、吹きかけられる吐息とが、気合を入れなおしたはずの背筋をよじらせ、肌を粟立たせる。

 その隙間を縫ってマンコへと指が滑り込んできて、ちんぽを収納するための穴に指を這いまわらせてくる。中指と人差し指で、肛門とは別ベクトルで敏感な秘所を抉られる。


「ス、スリットぉおぉ❤ちがうぅ❤❤そこ、指なんで突っ込む゛な゛ああぁあぁ❤❤❤おっ❤おおぅ❤❤あひぃいぃぃぃ❤」


 決意の鎧は指を差し込まれるだけで砕けてしまった。スリットをかきまわす指先は肛門の侵略者よりも荒々しく、鉤爪が柔肉をがりがりと引っかきまわされる。指が抜け出るたびにスリットの入り口がめくり上げられて、切なさと快楽をないまぜにした疼きがほとばしる。肛門も、乳や尻を弄る腕もロクに動いていないのにスリットだけで追い込まれていた。

 

「いかがですか?スリットを使ったことのない雌は多いんですよねぇ。ケツマンコの劣らない性器なんですが……ほら、ここが弱いでしょう」

「お゛ぉおおぉおぉおぉんっ❤❤❤」


 入り口の浅い部分、血管の浮き出た肉の薄い箇所、ちんぽの根本の神経が集中した弱点。スリットマンコの特に感じてしまうイイトコロを、長年連れ添った恋人の性器を相手しているように暴き出してくる。シャチにとってはちんぽをしまうだけの場所で、性器として見たこともない肉の割れ目が指先一つでマンコに変わる。

 

「あ゛あぁあぁ❤❤❤しゅげぇ❤おで、おでのスリットがあぁあぁ❤❤」

 

 弱点を抉るばかりか、もっとも感じやすいリズムはどれかと責め方を変えてくる。シャチマンコからは女性器顔負けに汁が漏れ出していた。指を締め付け、ぬるついて指に抱きついてすがる。

 侵入されて一分と経たずにスリットからの快楽に酔い、つばを垂らしてよがり狂う巨漢の雄。恋人にも聞かせたことのない間抜けた声を出し、スリットマンコに全ての神経が集中する。

 

「もちろん、ここも弱いですよね。あなたの子宮口です」

 

 そして、その不意をついてまたもや肛門の指が伸びた。人ではありえないほどに伸びた人差し指が直腸の奥へと潜り込み、結腸の入り口まで到達した。結腸の境目にある弁を、小鳥でも愛でるようになぞり回してくる。

 

「な、なにごれええ゛えぇえぇ❤❤❤指❤ゆびがぁ❤❤だめなどご、届いでるぅう゛ぅうぅ❤❤❤やめでぐれぇえぇ❤❤」


 自分の内臓奥深くまで嬲られている恐怖、直腸を抉られるのとも違う倒錯的な快楽が結腸内部にまで反響して、雌の本能を呼び起こす。スリットマンコの腕が入り口の肉をつまみあげると、快感が連鎖して汁が噴き上がる。シャチの下半身は汁に濡れていない箇所を探すのが困難になっていた。

 

「む゛りぃい❤❤ごんなのおぉおおぉ❤❤❤ケツっ❤マンコぉおぉ❤❤マンコ❤マンコ❤マンコにざれるうぅうぅ❤❤❤」


 硬くしまった結腸の入り口を指先で突き回される。指が追加され、浅く出し入れしては肛門口を刺激したりと、二つの入り口を弄ばれる。無論乳や尻の責め立ても再開されて、全身を雌の肉へと改造される。

 男としての意地は崩壊し、シャチは顎を振り上げ天井に向かって音にならない嬌声を叩き付ける。口からこぼれた唾液を腕がすくいあげ、化粧のように顔面へと塗りたくり黒い相貌が光沢を増した。

 

「お゛ぉおぉおぉーー❤❤❤んぉおおぉおぉお❤❤あひぃいぃいいぃぃぃん❤❤❤」

「おや……恋人のために頑張るのではなかったのですか?腕だけでこのざまとは。私がお相手した中でも下の下の脆弱なマンコですね」


 侮蔑の言葉に反論する知性すら残っていなかった。車内の雑踏。レールの音。次の駅への到来を告げるアナウンスが頭に響いて、何も分からなかった。ただ、マンコに感じる指の硬さだけが現実だった。

 

「期待外れですし、そろそろ終わりにしましょうか。駅に着いたらイきなさい。いいですね?イく、イくと大声でわめいて射精するんですよ」

「は、はひぃいい゛ぃいぃぃいぃぃ❤❤❤」


 当然の権利であると命令して、腕の数が増えた。汗でぬるつく丸尻を持ち上げて、肉の詰まり具合を堪能するように揺すり立てる。腑抜けて柔らかくなった大胸筋を捏ねて、乳首を指先で押しつぶす。開いた口に舌先を滑り込ませ、尖った牙を舐め回す。

 

 身体の快楽点すべてを把握されていた。全身が蕩けて何も分からなかった。腕っぷしが自慢の大男は子どもみたいに泣きわめいて、ただ射精を堪えるばかりだった。快楽が自分のすべてを支配するならば、快楽をもたらすビルダーの命令に抗えないのが道理だ。

 

「無理っ❤もう無理いぃいぃいぃ❤❤❤いく❤いきたい❤❤いがぜでえぇえぇ❤❤❤」


 電車の速度が緩やかになるにつれて、腰の速度が増していく。精液をぶちまけたいとちんぽがしゃくりをあげて、精巣が発射準備を整えている。

 あと少し、あと少しで到着する。射精できる。窓に目を向ければホームで待つ客の顔が視認できるほどになる。

 

 もう頭の中は快楽と射精でいっぱいで、自分が置かれている状況も誰の命令で何のためにこの電車に乗ったのかもどうでも良かった。ただ、腰をへこへこ振るばかり。

 

「いくいくいくっ❤❤しゃせいいぃぃい❤もうイきそうぅうぅーー❤❤❤」


 ブレーキの金属音。腰振り運動がピークを迎え、濃い先走りを好き勝手に撒き散らす。いつの間にやらつま先立ちになっていた状態でのピストンは滑稽で無様だが、不幸にもそれを咎めてくれる者はいない。

 

 シャチは会陰部に力をこめて、射精をぎりぎりで押しとどめる。息が詰まった。電車がついに止まって、大きく揺れた。ガス漏れするみたいな気圧の音がドアから鳴る。

 

「いぐっ❤いぐ❤いぐいぐいぐいぐぅうぅ❤❤い、ぃい゛ぃ❤」


 愛撫によって熟成された身体は射精の瞬間に歓喜して、ちんぽだけに意識が集中する。雄ならば逃れられない、射精の時だけに生まれる弛緩。

 

 その刹那を突いて、ビルダーの指先が乳首を思い切りひねり潰した。

 

「い゛、い゛ぃいぃいぃ――――」


 立ったままブリッジをするみたいに反り返り、おぞましい痴漢野郎に全体重を預ける。ちんぽだけを勇ましく突き出した、屈服のポージング。敗北の姿のまま、精巣から煮えたぎったザーメンが尿道を駆け上がる。

 

「い゛っぐぅう゛ぅう゛ゥう゛ぅううぅうぅうぅぅうぅぅ❤❤❤❤」


 べちゃり、と半固形物を落としたような音を立てて、リノリウムの床に雄の欲望をぶちまけた。一回では収まらず、何発も。何度も。粥のような精液がちんぽから撃ちだされる。

 床にへばりついたザーメンは乗り込んで来る乗客たちに踏みつぶされ、あるいはスラックスや革靴に付着する。きつい性臭に乗客たちの何人かが鼻をひくつかせた。

 

「あ゛ぉおおぉお❤❤❤ザ、ザーメンとまんねえぇぇえぇ❤❤❤❤」


 舌が天井に向かって突き出されていた。全身から湯気が立ち昇る。太ももが陸に上がった魚みたいに震え、膨れ上がった尻肉が弾力性をひけらかしながら踊る。

 鍛え上げた肉体を、雄臭い相貌を、最高の男と言える外見を乱れさせる内側では快楽が暴れ回っていた。頭蓋を内側から突き上げられて、自己が消えてしまいそうだった。

 

「はい、良くできました。それはでは第2ラウンドといきましょうか」

「んお゛ぉおおぉおぉっほぉおぉ❤❤❤」


 停止した電車が動き出すのと同時に、淫技も再開された。

 両の乳首がつままれて、天に向かって引っ張り上げられる。発達した大胸筋のせいで下向きになった乳首が、無理やりに上を向かされるのだ。筋肉と快楽神経のかたまりである双乳は伸びると同時に喜悦という悲鳴をあげる。

 シャチがわめきちらすのを嘲笑い、指先が雌突起を捏ね潰して、射精途中のちんぽをさらに追い込んだ。

 

「い゛ぎぃいぃ❤❤いぐっ❤ぃいぐううぅうぅぅうぅ❤❤❤」


 射精の最中の絶頂して、止まっていた腰が往復運動を再開する。

 

「まひゃいぐぅうぅ❤❤乳首❤ちくびでずっどいぐのぉおぉおぉ❤❤」


 叫ばなければ狂ってしまうからか。狂っているから叫んでしまうのか。

 どちらにせよ、もう声を止めることはできなかった。乳首だけでもちんぽの栓が壊れてしまうのに、二つの雄膣をほじる指はいっそうの多彩さを見せている。前立腺を挟んだかと思うとスリットをかきむしって、シャチを絶頂から降ろしてくれない。

 指の力はほんのわずかで、赤子にすら腕相撲で負けてしまいそうな微かな力。それだけなのにシャチの巨体は屈服させられてしまう。

 

「乳首伸びるぅう゛ぅうぅう❤❤おっ❤ぎもぢいいぃいぃ❤❤❤ちんぽ❤乳首ちんぽになる❤❤乳首ずんげえええぇえぇ❤❤❤」


 しかし、シャチをもっとも狂わせるのはやはり乳首だった。無数の腕しかできない愛撫が二つしかない乳首を襲い、ちんぽを使ったオナニーやセックスが無価値に思えてしまうオーガズムを覚え込ませる。

 一つの腕が乳輪ごとつまみあげて乳首を強調し、そこを指で挟み込んでちんぽにするるようにしごきたててきた。追加の腕が乳首の頂点を抑え、乳を噴き上げるための穴を爪でひっかいてきた。もう片方の乳首は千切れてしまいそうなほどに引っ張って、潰れてしまいそうな圧力で捏ねられている。

 

「いぐ❤イく❤❤いっぐぅううぅ❤❤❤」


 もう『イく』以外の思考ができなかった。

 現実ではありえない凌辱を受け入れられず、電車内で辱められている自分を受け入れられず、ただ快楽だけに溺れていたかった。

 

「さて、私もそろそろ腕が疲れてきました。他の私に交代するとしましょうか」


 だから、ビルダーの言葉も理解できなかった。

 ただ腕を掴まれている感覚だけが喪失して、頭の後ろで組まれている剛腕が解放される。同時に性器に絡みついていた魔指だちも離れてしまう。

 

「あ、へあえあぁあぁ……❤❤❤」


 ようやく腕から解放されたのに逃げようという気力すら残っていなかった。ちんぽとオマンコから体液を垂らして、目の前へと手を伸ばす。何かを掴めば、何かにすがれれば、消えてしまいそうな自分を繋ぎとめられる気がして。

 

「おっと、大丈夫かな?酷い有様じゃないか」

「ぅあぁ❤へ……?」


 頭の上から降って来た声がぼんやりと頭に染み込む。すがりついた手が握りしめたものは小奇麗なスーツで、顔を埋めているのはぶ厚い胸板だった。

 

「……ぁ、あっ!助け、助けでえぇ!」


 それを認知した瞬間、シャチは叫んでいた。自分がどんな惨めな姿をしているか、変態として逮捕されてもおかしくない痴態をしているかも忘れていた。

 自分のことに気付いてくれる人がいる。声を聴いてくれる。その事実に縋りついて助けを乞うて、救世主の顔を見上げる。

 

「おれ、こいつに痴漢さ、れ――――」

「痴漢か。それは可愛そうにねぇ」


 叫んだ後に、シャチは握りしめているスーツの柄に気が付いた。自分を辱めたビルダーの纏っているスーツと同じ、地味な柄。

 自分が顔を預けていた胸板に気が付いた。さきほどまで背中に押し付けていた鍛え上げられた大胸筋。

 自分を受け止めた男が誰なのか認識して、顔から表情を落として目の端からしずくを零す。

 

「次は『私達』がお相手をしてあげよう。指だけじゃ物足りなかっただろう?」

「あ、ああぁぁあぁ……」


 そこにいたのは、自分を辱めていた竜の男と同じ顔。

 顔も、声も、そのおぞましい笑顔も何もかもが同じだった。今もシャチを後ろから見下ろしているビルダーと全く同じ男がいる。

 

「やっぱり種付けされねえと気分が出ないよなぁ?窓ガラスにデカ乳押し付けながらヤってやるよ」

「私は乳首を労わってやろうか。真っ赤に腫れて痛々しいから、舐めて癒してあげなきゃな」

「無駄なちんぽも可愛がってやらないとな。寸止めを続けると、射精がまともにできなくなるぞ」


 二人だけではなかった。竜の男たちがはいつの間にか周囲を取り囲み、人垣によるバリケードを形成していた。

 数多の腕がシャチの身体をまさぐり、舌先が乳首へと伸びて、スーツを押し上げる股間が尻を擦る。

 

「お待たせしましたね『私達』よ」


 シャチを嬲った、ビルダーが芝居がかった口調で告げた。

 

「その雌を使って、欲望を解き放ってください」


***


「――以上が、被害者から得られた証言だ」


 厳格で、それでいて熱の感じられない声で年配の音が告げた。

 瞳に映るプロジェクターには筋骨隆々としたシャチの男が呆けた顔で笑っていた。

 恐らくは電車の中だろう。つり革に手首を固定され、力なく吊り下げられた白黒の巨体は見るに堪えない凄惨な有様だった。

 

『あ゛へ、へへへ……❤❤❤』


 虚ろな目で笑い続けるシャチは、スニーカーと靴下以外の衣服を纏っていなかった。飾られていたシルバーのアクセサリーは辱められるためか、勃起ちんぽにぶら下げられていたが。

 磔にされるような体勢にされ、蛍光灯の光を爛々と浴びるシャチは全身に白濁と自分の体液を塗りたくられ、淫らに濡れ光っていた。

 

 肥大化してしまった乳首にはチェーンで錘が吊り下げられて、スリットと肛門にはイボ付きバイブが捻じ込まれてまだ振動を続けている。抜け出ないようにするためか、ガムテープで止めている念の入り用だ。

 

「彼は終電の車内で突然発見されたらしい。同じ車両に乗りあわせていた客には気付かれずにな」


 普通に考えるならば、ありえない事象だ。意味無く勃起したちんぽからは潮のようなものが垂れ流され、あれだけでもきつい匂いがするはずだ。仮に複数犯が人垣を作って隠していたとしても、誤魔化せるはずがない。

 

「証言によると夕方電車に乗ってから数時間嬲られていたらしい。腹いっぱいに詰め込まれた精液を排出するプレイもさせられたと――これはどうでもいいな。詳しくは資料を確認してくれ」


 咳払いをしてから差し出して来た資料には、被害者の証言と検査から推察された暴行の内容が書き出されていた。その内容はおぞましく下品で、そこらのポルノ小説が可愛らしく思えるものだった。

 しかし、資料を読む男の目に止まったのはある二点。無数の腕が身体を犯したという段落と、全く同じ顔をした竜の男が現れてからの頁だった。

 

「これは、ただの痴漢犯罪ではない」


 プロジェクターを眺めていた男が、視線を変える。

 その瞳が映し出したのはシャチにも劣らぬ、いやそれ以上の筋肉と上背を持つトカゲの男だった。きちんとしたスーツを纏っているが、筋肉の鎧と漲る逞しさを少しも抑えられていない男だった。

 

「きみの力がいるのだ。ヒトに非ざる悪鬼を滅する戦士の力が」


 そして、男は命ずる。翡翠の鱗を持つ戦士へと。

 

「悪鬼討滅部隊淫魔対策班囮捜査官――『悪滅の蜥蜴』きみの力を振るう時だ」

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