雀荘オーナーのスズメハーピー(ブレス) (Pixiv Fanbox)
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列車が接近する最中に線路に転落し、ユリカはこれが終わりだと思った。だけど目を覚ましてみれば病院で、頭を打っただけで済んだ。
周囲の誰かが我が身を省みずに彼女を線路からすくい上げた。脳震盪だった彼女には誰かは分からず、名乗らずに消えたから警察も分からない。
ミサのことは表に出せなかった。仕事の過労と言うことで当たり障りなく処理された。
ともかく彼女は生き延びて、夜は新宿・歌舞伎町から離れられなかった。送迎を受けてホテルの前で下ろされた。
指定された号のドアをノックすると内側から開けられた。出迎えたのはミサだ。話には聞いていたが実際にまた会うと嫌な気分になった。
「持ってきてくれた?」
ミサが尋ねるとユリカは酒が入ったポリ袋を見せる。そのうちの一缶を開けて渡した。
「じゃあ脱いで」
ドアが閉まる。そのすぐ、オートロックの動作音が聞こえるかどうかの手早さでユリカは剥かれた。
裸体が露わになりミサは感嘆の息を漏らした。禍々しい模様が体の至る所に刷り込まれている。
「綺麗ね」
タトゥーが入っているところにミサは攻撃しない。それを学んだか無意識の逃避かユリカは自分から進んで墨を入れ始めた。
「お尻に入れてるの何?」
肉の谷間に樹脂の塊が見え隠れしていた。指摘されたユリカは苦い顔をする。
「……客がくれた」
「ええっ、随分とアブノーマルなのとヤってるんだ」
諸悪の根源はミサのはずだった。だけど彼女は悪びれもしない。
「抜いて見せてよ」
ユリカは背中に手を回した。
「手は使うな」
そう言われて仕方なくユリカは力む。 括れの割に体内に埋まっている部分は大きいようだった。肉の輪が最大径の山を越えようとしては押し返される。動く度にユリカは悩ましく啼いた。
空気が抜けてヒダを叩く間抜けな音と共に黒い塊が床に落ちた。異物に反応して分泌された腸液が垂れる。
「ケツ向かせ」
身を翻すと台座で隠れていたバラの花も露わになる。肉をかき混ぜたように穴はめちゃくちゃになっていた。何度も異物が通過しただろうが色素沈着もなく不自然なほどピンクだった。
「うげ、ユルユルじゃん。クソ垂れ流し?」
「そんなにしてない」
入れっぱなしにしていたのは、慣らしておかないと本当に切れてしまうからだ。漏れ出るのを止めるためでも、決して異物挿入しながら公共の場を歩く背徳感を楽しんでいるわけではない。
「腕くらい入りそうだけどね。何本?」
ユリカは頷く。人差し指と中指が立つ。尋ねた本人が幻滅した。
「アタシがハーピーで良かったでしょ。さもなきゃ試してた」
ミサが持ち込んだものに双頭ディルドがある。ユリカはそれにローションを塗ると自ら挿入する。極太ということもあるが、日頃の訓練の賜物でくわえ込んだままぶら下げることができた。
準備が済むとミサはベッドに腰を据えてユリカを跪かせる。パンツを脱がせてもらい、昂ぶって湿った陰部を一つの目に焼き付かせる。
「舐めろ」
犬のようだった。テレビリモコンのチャンネルを押すような手軽さでミサは愉しんだ。
「アカネから話聞いたよ。っあ……う……」
股間を舐めさせながらミサは世間話をする。アカネの話題を出されてユリカは余計に気分が沈んだ。
「……もう終わったんじゃ?」
舌を抜いてユリカは顔を上げた。乳首、包皮を切除されたクリトリス、ラビア、へそに金色の金具が突き刺さっている。どれもアカネが抜けた代償だ。
しかし太ももで挟まれて、クンニを再開させられる。
「職場でいい立場になったって。妬んでた」
「へもたいひたほとないほ」
「ちょっと、舐めながら喋るな」
ミサが彼女を解放する。昼の仕事は続いていて、首とつく部位から先は全くの手つかずだ。その引き換えのように体はインクが埋まっている。
昼の仕事で彼女は重要なポストを任された。理由としてはくだらないもので、ユリカが発情を抑えられず上司を職場で犯してついでに弱みを握ったからだ。ただ能力があったせいで落ち着けてしまった。
「金返してはやくやめたいだけ」
生活を切り詰め、昼と夜と働いている。しかし利息にほとんど吸収されて借入残高は減らない。取り立てだって、いつもぎりぎりだ。
「妹に手伝ってもらえば?」
悪びれもせずミサは言う。ユリカにとって妹はかなりのウィークポイントだ。
頭に血が昇ったユリカはミサに飛び掛かる。押し倒して、両手は細い首を捉える。
「そこじゃダメ、窪みを押さえて」
喉の真ん中を押さえると甲状軟骨が破壊されるばかりで気持ち良くない。外側にある頸動脈洞を潰して反射的に徐脈を誘発し、血行的に酸欠を起こす方が具合が良かった。
ユリカの膣からぶら下がる相応の太さの男根が、ミサの女陰に押し込まれる。ご無沙汰だったからミサの方は裂けて傷ができる。しかし彼女は痛みすら甘受してしまう。
「このっ、ひっ……あ……」
「ふ……どうしたの? これだけ?」
動けばミサを犯せる。だけど同時にユリカ自身も犯してしまう。それでも今までの鬱憤を晴らさんばかりに首根っこを掴んで彼女を揺さぶった。
「全部お前のせいだ!! このっ! このっ! 死ね! クズ!!」
最初はミサも余裕を装っていた。だけど段々と切羽詰まってきて喉笛が鳴る。それはユリカも同じで、お互いに快感を貪るだけになる。
いったんは首にかけた手を離した。代わりにコンビニ袋を頭に被せて鼻と口を塞ぐ。それに抗議するミサの声はくぐもって届かない。
窒息は脳血流を落とすより緩慢だ。その分だけ浮遊感を長引かせる。
ミサは高度を飛ぶようなハーピーではないから、循環する酸素量は人間と変わらない。しかし肺ガス交換能が高いために息苦しさを感じるのは早い。
意識が残る時間も、死を感じる時間も長い。翼はビニールの上を滑る。足をバタつかせて抵抗するが、近すぎて意味がなかった。ディルドはほとんど見えないほどお互いの体に沈む。
先に絶頂したのはユリカだった。一時的に因縁も忘れて征服感が滾るオーガズムに身を委ねた。
その後にミサもイかされる。窒息で頭が回らないのもあり、高い所に立ったままいつまでも落ちてこない。それでも酸素も供給されず終わりは気絶だった。
不動状態になって初めてユリカは急変に気付いた。離れてディルドと頭を袋から抜き、息を確かめる。仰向けで舌が落ち込んだから気管が閉塞していた。
うつ伏せに体位転換させ、背中を小突く。咳き込みの後でミサが目を覚ました。
「ごめんなさい」
「まあ……いいけど」
それほどミサは怒っていない。ただいいようにされたことだけ癪なようだった。
妹の運命は半ばミサが握っている。だから機嫌を損ねでもしたらとユリカは気が気でなかった。
「本当に?」
「ウソかも。好き勝手言いやがって」
「っっ~~やめ――」
ボールが転がるような慌て方にミサは笑った。さんざ弄んだ相手に貞操を明け渡して弄ばれた自分に、哀れみとして向けられた笑い声だった。
「殺す気ならさっき殺せたのに」
「そんなことしたらカエデが」
「……鷹丸なら、しないだろうなあ」
ユリカは聞き覚えがある。名前を聞くのも嫌だった。彼がサイコロを振ったせいで、いまの彼女がいる。
体を起こしてミサは椅子に替える。ユリカにお酌をさせて、焼酎を飲む。
「鷹丸のことをどう思う?」
「はい?」
経緯が経緯だからイメージはよくない。しかし、それを抜きにすると彼に落ち度はなかった。結局のところ、自分で墓穴を掘っただけだと思うと怒りの宛先を間違えていたユリカは後ろめたい気分になった。
最も責められるべきはアカネのはずだ。人外種同士のよしみすら感じられない今や心の底から恨むことができる。
「悪い人間じゃないと思う」
「好きなんだよ。その人間のこと」
「えっと」
泥沼に沈む退廃的な性交渉の直後で、ユリカは甘酸っぱい味に嘔吐きそうになる。
「そういう意味で?」
「全部の意味で。アンタも飲んで。シラフじゃ無理」
ミサの勧めでユリカも自分のグラスを作る。肛門から飲まされたことに比べれば経口摂取は大したことないと彼女は思えた。
「えっと、仮にその、た、鷹丸とその関係になったとして同じ事を求めるの?」
「してくれたら嬉しいけどね。プラトニックなタイプだから」
嫌になってユリカはカバンを漁る。彼女は加熱式タバコを吸っていた。取った客に勧められて、当初は普通の紙巻きタバコだったが、会社で服に染み付いた臭いを指摘されて切り替えた。
ミサもそれなら許容できた。だけど吸いはしない。
「恋バナしたくて私を呼んだの? 欲求不満ではあるだろうけど」
「そうかも」
ユリカは息を吐いた。こうなるとは思わなかった。
「あー、個人的な経験ね。人間と魔物が付き合うのはデメリットが先に立って。人間同士と比べたときに上回ってないと……何言ってるんだ私」
恋路を助けようとした自分にユリカは驚いた。
「叶うと思う?」
「そもそも脈あるの? そこからだと思うけど」
「分からない」
どういうわけかニーナの顔がミサには浮かんだ。ニーナに鷹丸は相応の負い目がある。
「こんなことさせる奴が、恋を成就させるって?」
ユリカは刺青を見せびらかせた。しかしミサの顔は陰る。勝ち誇った顔になれなかった。
「……悪かったと思う」
唐突に謝罪のような言葉が出てユリカは絶句した。喜ばしくもあり、行動が伴わないから怒りも覚えた。ここまで進んだタトゥーを消すなんてできない。
「もういいや。アンタも借金帳消しして今日で上がり。稼いだ分もつけてあげる。これに懲りたらもう――」
身を乗り出してユリカはミサの頬を引っぱたく。彼女は不快感を露わにしながらも受けた。
「満足した?」
解放されるのだから喜ぶべきところを、ユリカは自分の存在が否定されたように感じた。
動揺したユリカはまた手を上げようとして、辛うじてテーブルに手を突いた。一つの目から流れる涙粒は大きい。
途端に彼女は自分の皮膚を一つ残らず引き剥がしたくなった。過激な身体改造を強制されるのに相応だったのが、急に不釣り合いな身分に昇格する。いくつかは自分で柄を言ってしまった。
「うう、やだ、いやだ、こんなのいやだ」
ついに爪を立てて体を掻きむしりそうになるとミサは止めた。
「そんなに嫌? 言ったでしょ、綺麗って」
きょとんと目と目が合う。先にミサが根負けして目線を切った。
「綺麗? こんな私が綺麗?」
「三回目は言わない」
嫌気がさしてきたミサはベッドに身を投げた。手早く性欲を処理してユリカは追い出すつもりだった。だが絶頂後の空虚さがミサにユリカを手放させた。
ユリカは何も言わずミサの上に被さる。チューブトップも脱がせてイーブンに持ち込む。
「ここもピアスしてる」
いくぶんか前に鷹丸を誘おうとした時のように飾りのある金属ではなかったが、アクリルが内側を透過して見せた。 ユリカが指先で撫でるように触られるとミサの体が跳ねる。
「もっと可愛いのにしたらいいのに」
「アンタの前でそんなことするわけないだろ」
悪い減らず口をユリカは塞いだ。舌を押し込んで歯茎と頬の内側を擦る。
長らく繋がっていた。ミサには舌を噛みちぎる選択肢もあったのにそれを選べなかった。
粘っこい体液が糸を引いて口と口が離れるとミサは大きく息を吸った。
「アンタ、アタシの何なんだ」
「たぶん奴隷じゃなくなったから……」
「まだ手放した訳じゃない。大切な妹のこと考えてみろ」
脅しているつもりだが力が入らない。ユリカは微笑んだ。
「鷹丸はそんなことするの?」
するわけがない。久しぶりにミサは敗北感を胸に抱いた。だけど妙なくらいに清々しかった。
「だったら、なんだ」
「ん~。友達が欲しいな。誰のせいだかアカネともハルナとも疎遠になったから」
「アカネのせいだろ。相手した男どもと付き合えよ。こんな――」
「いきなり尻に腕ねじ込んでくるヤツと仲良くできると思う?」
ユリカが黙らせた。今度は濡れ火照った肉の間に指を滑り込ませる。否応なくかき混ぜて水音を立てる。
「翼、私に回して」
何気なく刷り込んでミサに恋人にするような優しいハグをさせた。ユリカも応えて腰に手を這わせる。ミサにとって誰かに撫でさせたことのない部位だった。
言葉にならない声をミサは漏らす。手でするのはやめて脚を絡ませて、お互いの太ももで押し合う。異物が肉を貫いているから刺激も強くユリカも気をやった。
お互いに高め合って先に飛び立ったのはミサだった。体から力が抜けて足も止まるが、ユリカは満足できなくて腰をグラインドさせて股を押し付ける。
腰回りを愛液で汚しきって、やっと止まった。抱き合ったまま墜落する。
「友達はこんなことしないだろ」
先に落ち着きを取り戻したミサは心底呆れて言った。
「セックスフレンドっているでしょ。どう?」
「アンタ壊れてるぞ」
「壊したのはミサだよ」
唇と唇が触れ合う。ミサは頭を起こして額をぶつけてやった。単眼族はまぶただから、それなりのダメージになった。