雀荘オーナーのスズメハーピー(衝撃と畏怖) (Pixiv Fanbox)
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これR-18かも。
夜明けになって最後の客が帰ってミサは店じまいにした。定まった営業時間はなく、どこまでも彼女の気まぐれだった。だから気が向かなければ客が来ても追い返している。
だから、今さっき入ってきた客は断るつもりで振り向いた。その途端にミサはこめかみに衝撃を感じた。天地が反転し、床に引き倒される。
「こ、殺してないよね……?」
「いいから! 財布探して」
数日前に鷹丸との賭けで財布を奪われたアカネとユリカだった。ユリカは鉄パイプを片手に部屋を荒らし、アカネは慎重に探した。
額が割れて生温かさが伝う。深さは大したことがなくても、鉄パイプによる裂創は派手な出血になった。
波間にいるようなめまいの中でミサは立ち上がる。それに気付いたユリカは振りかぶった。
「待って! 待って、財布、返すから……」
命からがらといった様子でミサは制止する。脅されながら彼女はレジ下の金庫を開けて財布を二つ取り出す。
「確認して」
現金はすっからかんであるが、カードの類いは無事に入っている。
「お金はいい? もう分けちゃった。あの子は見逃してもらえる?」
二人は首を縦に振った。そうして安堵した様子で、そのまま帰ろうとした。だけどミサはそれを許さなかった。
「あ、あとさ、これなんだけど。アンタらの借用書ね」
紙切れ二枚を差し出す。二人でお互いに連帯保証人になり、合わせて家が建てられる金額が借りられていた。身分証を可能な限り悪用した結果だった。
真っ青になってユリカは紙を奪い破り捨てる。それを軽薄そうにミサは笑う。
「原本はヤ――サラ金のとこにあるから無駄だよ、それ」
「どうして、こんな……!」
「懇切丁寧に頭下げるならアタシだって考えたさ。だけど、どうよ? さんざ騒いでおいて頭かち割りに来たな? どう落とし前つけるってんだ? なあ!! もう無事に済むと思うなよ。殺したきゃ殺してみろ!」
カウンターに血が滴る。だけどミサは気にしていない。
「じゃあまず、二人とも脱げ」
「は、はあ? 何を――」
「明日から取り立ててもらおうか? 利息だけで週に五万だ。職場にも実家にも連絡が行く。そうしたらどうなるんだろうな?」
脅迫に屈して、二人は怖ず怖ず服を脱いだ。晒された裸体をミサは携帯電話で撮影した。静電容量方式タッチパネルは翼と相性が悪いが、補助具で器用に使いこなしていた。
一度ついた傷を起点に、そこから広がっていく。土足領域で彼女たちは膝を突き額を擦り付けることになった。ユリカの頭の下げ具合を不満に感じると、ミサは足で頭を押した。反省を促すためにグリグリと潰す。
「マンコ舐め合ってろ」
ミサはソファに腰を落とした。近くのラックから新品のウィスキーを取り出すと傷にふりかけて、ティッシュを束で取って押さえる。出血が和らいでくると痛み止め代わりに、ミサはウィスキーを両翼で抱えてラッパ飲みした。
二人はシックスナインの格好で、舌を出して陰部に顔を突っ込む。友人として顔見知りだっただけに心理的抵抗は大きかった。
「先にイった方は服を切り刻まれてもらおうか。逆にイかせた方にはご褒美だ」
ミサの提案にユリカは躊躇したが、アカネは舌を奥まで差し込んだ。クリトリスのスジを舐め、吸ってしゃっぶる。湿っぽい水音が響く。
「ひゃあ! やだっ、アカネ、やめてっ!」
「ごめん、ごめんね……」
アカネの責めは止まらない。そのまま押し切って顔面に淫汁を浴びた。それまでにミサはテーブルに薬液が入った小瓶を用意していた。そして敗者にハサミを投げ、勝者を呼びつける。
「ご褒美だ。これを思いっきり吸い込め。飲むなよ、死ぬから」
操られるようにアカネは小瓶の口を鼻に当てて息を吸う。それはサキュバスのフェロモンを有機溶剤に溶かした物で、かつては芳香剤として販売されていたものだ。
今は法で規制されている。サキュバスの能力を誰もが使用できるようになると問題になるからだ。そして溶剤の副作用である酩酊感が加われば効果は増し、体により有害となる。
芳香剤という表向きの用途は正しく、アロマとして数滴使用するだけでその空間は淫靡になる。それを直に、しかも嗅覚に優れる獣人族が吸えば影響は大きい。一吸いでアカネの体は揺れて倒れた。
すんでの所でミサは瓶を奪い取った。ユリカは茫然と、のたうち回って絶頂を繰り返す肉塊を見下ろしていた。
「おい、さっさとやれよ。賭けの精算だ」
ハサミを握って、彼女はミサに飛び掛かった。しかしミサはテーブルを蹴り上げて彼女を押し返した。よろめいて倒れたユリカのか細い首を、ミサは脚で掴む。
息が苦しくなる程度に力を込める。殺す気はないが、死にそうになるくらいまで彼女はやるつもりだった。
「大概にな、しとけって」
空いた脚では腹を殴りつける。骨は壊さないように慎重に、だけど鈍い内臓痛が長く残る程度には乱暴に打撃を入れる。ゲロを吐き、青アザができあがってやっと彼女は満足した。
「ったく。喧嘩を売る相手ぐらい考えろっての。バカが」
ユリカの半開きの口にフェロモン溶液を垂らして含ませる。飲み込んでも肝臓に問題がなければ速やかに分解される。しかし口内の粘膜から速やかに吸収され、全身に乗る。
飲んだら死ぬというのは本当だ。溶剤の効果で全身の血管が拡張する一方でフェロモンによって脳の微細血管は引き絞られ、圧力の不均衡が生じる。錯乱した血行はクリティカルな血管を損害する恐れがある。
イきまくって、いくらか落ち着いたアカネが身を起こす。死にかけの友人はもう気になっていない様子だった。
人外は大抵が子供を作るための発情期が用意されている。サキュバスはそれを誘発・強化する効能がある。上気した顔で荒く鼻息を鳴らしている。
ミサはそんなアカネに双頭ディルドを渡す。
「友だちでしょ? 犯してあげて」
素直に彼女はディルドを挿入して疑似ペニスを生やすと、意志に反して蕩けた密壷に宛がった。そのまま埋めることに抵抗はなかったが破瓜の血が流れる。
「あーあ、こんなんで処女散らすなんて」
痴態を肴としてミサはウイスキーを喉に通す。耳障りな嬌声も今は勝利の旋律だった。
やがて下の喫茶店から天野幸雄が顔を出す。聞き慣れない音が気になった様子だ。
「説明、してくれるかな」
「お礼参りされちゃった」
笑いながらミサは傷を見せた。彼は眉をひそめる。
「救急車呼んでくる」
「えーいいよ。アンタが縫ってよ」
「そこは跡が残るからダメ。そこの二人は大丈夫?」
「フェロモン吸ってトんでる。倒れてるのは飲んじゃった」
慌てて彼はレイプを続けるアカネを力尽くで引き剥がすと首に指を当てて脈拍を確認する。ゲロにまみれた口元に潜む甘い香りから彼は状況を把握した。
「まだそんなの持ってたのか!? クソ、ヤバいぞ」
肩を竦めておどけてみせる。
「人間じゃないから死にはしないでしょ。単眼族って頑丈って言うし」
「ゲロが喉に詰まってるんだ!」
「あっ」
彼はユリカを抱え上げると腹を突き絞って気管を閉塞している異物を吹き出させようとする。数回繰り返した後に下水が開通したときのような汚らしい音で呼吸が再開する。
「これでひとまず……やりすぎだ、ミサ」
「うん、また助けてもらったね」
救急車を呼ぶことはなく彼の車で救急外来に転がり込んだ。地域性もあって、ことは小さく済んだ。警察に話は届かず、三人の逸楽が原因の騒乱で始末されることになった。
額が割られたミサは局所麻酔のうえで縫合され、盛った犬に等しいアカネにはハロペリドールで鎮静がかけられ、もっとも被害の大きかったユリカは入院加療となった。
「どうして、こんな」
幸雄が聞く。一般外来はまだで、待合ホールで座るのは二人だけだ。
「何でだろうね」
ミサはペットボトルの水を飲む。狂乱の後の嫌悪感を彼女は噛みしめた。
「こんなことに彼を巻き込みたいか?」
「それは、イヤだな」
「だったら最初からするな」
「でも好き者だったら一緒になってやるかも」
彼はミサの頭を軽く叩いた。
「イテテ。冗談だよ。出目指定したのって、たぶん鷹丸なりの優しさだと思う」
「にしてはしっかり出してたが」
「うん、あれは合理性だと思う。おもしろいよね」
「あの二人は?」
「え? 骨の髄までしゃぶるつもりだけど」
「だからやめときなって……」