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依頼で書きました、「シャニマスの黛冬優子の筋肉娘化」ssになります。 全体で3万字、本パートは約5600字です。 ~~~~~~~~~~~~ 「……なによこれ」 283プロのアイドル、黛冬優子は困惑していた。 いつものように事務所に来て、控室で仕事関連のメールの確認とエゴサーチをするのが彼女の日課だ。 しかし今日は、スマホを起動したところで手が止まる。 ホーム画面に見慣れないアプリが入っていたのだ。 「『体型変化アプリ』? 意味が分からないんだけど」 眉間にしわを寄せながらアプリ名を読み上げる冬優子。 もちろん入れた覚えはないし、広告などでも見た記憶もない。 困惑や警戒はあるが、もしも既存のアプリの名前が変わっていたとしたら問題だし、中身を確認しておく必要があるだろう。 タップして起動してみると、簡素な画面が表示される。そしてーー 『対象:黛冬優子』 「え?」 一番上に自分の名前が入力されていた。 その下にズラリと並んでいるのは、自分の身体的な数値だ。 「ちょっと、なによこれ」 身長、体重、3サイズについては、事務所のプロフィールに記載されている。たちの悪いいたずらだとして、やろうと思えばデータを入力することはできるだろう。 しかし、その数値は微妙に公式のものと異なっていて……昨夜のお風呂あがりに量った体重のわずかな誤差も、しっかりと反映されていたのだ。 ウエストが1センチ増していたのには少しイラついたものの、心当たりがありすぎて否定できなかった。 「どうなってるのよ……」 さらに下には、体脂肪率や筋肉量まで表示されている。 こういう所まで精密に測れる機械は存在するだろうし、測定したデータを管理できるアプリなどがあるのも知っている。しかしもちろん入れた覚えはないし、そもそもこんな精密に測定したこともない。 あり得ないと思いつつも嘘だとも思えない正確な数字を、ただ困惑して眺めることしかできなかった。 「冬優子ちゃん、どうしたんすか?」 「!」 突然現れてひょこっと後ろから覗きこんできたのは、同僚のアイドルでありユニット『ストレイライト』の芹沢あさひだ。 彼女が絡むと碌な事にならないのは経験則として知っているため、冬優子の表情が一気にこわばる。 「何でもないわよ、人のスマホを覗かないでくれる?」 「そんなぁ、私も見たいっす~!」 かなり細かく表示された、冬優子の個人情報と言うべき数字の羅列。これを彼女に見られたら、より面倒なことになる。 そう判断した冬優子は反射的に隠そうとしたのだが、それが余計にあさひの好奇心を刺激してしまった。 一度こうなってしまうと、てこでも動かなくなるのは冬優子自身よく知っている。 しまったと内心で後悔したものの、もう遅い。 できるだけ遠ざけようと腕を伸ばしたものの、ちょこまかと動きまわりつつ、欲求のまま全力を出してくるあさひから逃げ続けるのは無理がある。 動きが止まった瞬間を突いてがしっと抱きつくように腕を固定され、スマホの画面を覗きこまれてしまった。 「……この数値、冬優子ちゃんの身長っすね」 「はやく腕を離しなさい、痛めたらどうするのよ!」 声を荒げる冬優子だったが、あさひは離れようとしない。 あちらもいくらか加減しているようで腕の筋を痛めることはなさそうだったが、固定された腕を振り切ることはできず、その間にもあさひは並んでいる数字を上から下に凝視していく。 「公式のよりも体重が1キロ多いっすね。あとウエストも……」 「あんたはちょっと黙ってなさい!」 あさひのことだから、公式プロフィールの数字を暗記しているのだろう。スマホの数値と比較しつつ実況していく。 羞恥心と怒りが同時に湧き声を荒げる冬優子だが、あさひは意に介することなくじっと画面を見つめている。 そこで終わればまだよかったのだろう、しかしスマホに手を伸ばしたあさひはさらにあることに気がついた。 「あ、これ入力できるっすよ」 ちょうどあさひの指が触れた箇所、ちょうど筋肉量を示している数値の横に、縦棒のカーソルが点滅している。 枠外にはチュートリアルのように『理想の数値を入力しよう!』と表示されていた。 つまり、冬優子の数値を自由に弄れるらしい。 「いい加減にしなさい! もう満足したでしょ!」 「いやっす! ここの機能を確認してから……」 流石に怒り出す冬優子だったが、新たな機能を発見したあさひの好奇心は治まらない。 どうにか振りほどこうとふる冬優子と、離されまいとスマホを掴むあさひ。 2人が揉み合っている中で―― ピッ 「「あ」」 何かタップされた音がスマホから響く。 反応して力の緩んだあさひの腕を振り切り、慌てて画面を見る冬優子。 カーソルが筋肉量の欄にあるのは変わらない。 2桁の数字が表示されていたその左端、つまり百の位に『1』が追加されていた。 しかし、それだけではない。 「な、なによこれ……!」 筋肉量だけに打ち込まれたはずなのに、他のサイズまで変更されている。 体重は見事に100キロ増加しているし、身長は200センチ……女子ではめったにいない2メートルの大台を突破していた。 当たり前のように3桁に乗ったバストとヒップ、倍以上あるだろう二の腕まわりの太さ、急激に減少した体脂肪率……。 一つの欄を変更すると、他も「それに見合った適切な数値」に設定されるようだ。 「あんたねぇ……」 数字の上だとしても、気分のいいものではない。というか勝手にスマホを見て、弄って、数値を変えられたことへの怒りが湧き上がってくる。 「本当いい加減に――」 説教してやろうと憤怒の表情を浮かべてあさひへ詰め寄ろうとしたところで、突然その足が止まった。 ドクンッ 「うぐっ!?」 冬優子の身体が急激に熱く火照りだし、顔が苦悶に歪む。 いままで経験したことのない、身体の芯から湧き上がってくるような熱。 体内に収まりきる様子はなく、そのまま一気に溢れだしーー ムグッ 「……え?」 同時に、自分の腕がひと回り膨れ上がった。 現実離れした現象に唖然とする冬優子。 ボコッ、メキッ、ムググッ 「え、どうして……」 腕だけじゃない。全身が内側から盛り上がっていく。 冬優子は理解が追いつかないまま、膨れ上がっていく身体を見下ろすことしかできない。 ムギュッ、ギチッ、メキキッ 「ち、ちょっと……いやぁっ!」 反射的に腕で隠そうとしたものの、その腕も筋肉が盛り上がり、みるみる太さを増していく。 ビキビキと筋が浮き上がり、蔦が這うように血管が浮き上がる。 二の腕を掴んでいたはずの手が半分も覆えなくなり、さらに内側から広げられていく。 「な、なによこれっ!?」 パニックになりつつも、全身を抱きすくめるようにしてしゃがみこむ冬優子。 曲げた両脚では肥大化した肉同士が反発し、腹部でも何かが厚みを増して、かがんだ体勢にギチギチと干渉している。普段は意識することのない背中も、甲羅でも背負っているかのように重さが増していく。 全身から押し寄せる異様な感覚……しかし彼女には、ただこらえることしかできなかった。 「うぐっ……と、止まった……?」 1分にも満たなかっただろうか、しかし冬優子自身にとっては長い時間が経ったところで、全身を満たしていた熱が一気に引いてゆき、本来の五感が戻ってくる。 冬優子は恐る恐るうずくまっていていた体勢から立ち上がり、辺りを見回して……唖然とした。 「どうなってるのよ……」 視界がおかしい。 あさひを見下ろすような高さの視点。 元々いくらか身長差はあったのだが、胸元の高さに彼女の頭があるのはおかしすぎる。 そして視界の下端からせり出しているのは、自分の胸。 ぎっちぎちに張りつめた服ごしに浮き上がった輪郭は、乳房の丸みというよりも分厚く硬そうで、自分の身体としての面影がまったくない。 「うそ……」 そのまま両腕をみて、冬優子は驚きに目を見開いた。 とにかく太すぎる。 二の腕には筋肉がラグビーボールのように詰め込まれ、その下にみえる太腿にも匹敵するようなボリュームに達していた。 これほどまでに大きいと、当然のように両脇が締まらない。 パンパンに張り出した大胸筋と、その左右にある二の腕で、筋肉の塊が4つ並んでいる。 それどころか、見たこともない筋肉が全身のそこかしこでボコボコと隆起している。 「このアプリのせいってこと?」 冬優子は自分の体型が、アプリに入れられた数値そのものだと直感した。というか、心当たりがそれぐらいしかない。 アプリの画面を確認しようとして、動きが止まる。 手が大きくなったせいで、スマホが小さい。 ゴツゴツと倍ちかくに太くなった指では、下手に触ると余計な欄まで変えてしまいそうだ。 正確に操作しようと思ってじっと手元をみていると、ボコボコと浮き上がった筋肉が視界に入ってしまう。 二の腕に走る極太の血管が、わずかに身じろぎに合わせて揺れている。 どこか現実離れした光景のように思えた筋肉が、自分の肉体の一部なのだと認識させられる。 それでも、どうにかしてアプリを確認しようとふたたび動きだしたのだがーー ガチャ 「2人とも、プロデューサーがそろそろ打ち合わせだって……」 部屋に入ってきたのは、同じくユニットの一員の和泉愛依だった。 ありふれた、いつも通りのやり取り。しかし今ばかりはあまりにも悪いタイミングとしか言いようがなかった。 パニックの中にいる冬優子は、フリーズすることしかできない。 「きゃあっ!?」 一拍おいて自分の身体を隠そうと両腕でかばうが、分厚く太くなりすぎた胴体が隠せるはずもなく、腕に浮き上がる筋肉すらもみせつける結果になってしまった。 「……」 きょとんとした表情の愛依と視線が合う。この身体をがっつりと視られている。 しかし、何秒経っても驚きやパニックへと変わらない。 「どしたん? 冬優子ちゃん」 沈黙にいたたまれなくなった愛依が声をかける。 しかし、やはり筋肉をみての反応ではなかった。 どちらかといえば、冬優子がおかしなポーズを取ったことに対する反応のそれで…… 「冬優子ちゃん、さっきからどうしたんすか?」 くわえて、能天気に聞いてくるあさひ。 よくよく思い返してみると彼女の目の前でこの身体に変わったはずなのに、さっきから一切反応していない。 まるで何でもない日常の一コマのような態度。 ここまでくると、冬優子も羞恥心やパニックよりも困惑が上回ってくる。 「2人とも、ふゆの身体を見てなんとも思わないわけ……?」 恐る恐る聞いてみたものの、2人とも微妙な反応しか返ってこない。 「ん? 別に?」 「いつものことながら、いい筋肉してるっすよね」 「いつものことって……」 あさひの言葉に、さらに混乱が加速する。 「男の人にだって負けない肉体美! って感じで、アイドルとしても一番の長所だし」 「力強くて、バッキバキの筋肉が肌の下で動いてて、ほんとすごいっす!」 2人の口から出てくるのは、普段なら絶対に言われない単語の数々。 ふざけているのかと思ったが、愛依の表情はいつも通りの明るい笑顔だし、あさひの瞳はいつも通りに一点の曇りもなく純粋なものだ。 それに愛依やあさひが嘘をつけるはずもない。性格的にもそうだし、女同士のやり取りに慣れた冬優子相手ならなおさらだ。 (コレで改変されたってこと……?) 改めてアプリをみると、いまの体型を表しているだろう数値が淡々と表示されている。 少なくとも、他の人間からは「黛冬優子はこういう体型だった」と認識されているのだ。 見下ろした視界に映るのは、せり出した大胸筋……分厚くなった胸板だけじゃない。 樽のように筋肉が詰まった太腿は、いくつもの筋肉が重なって岩のように凹凸が浮き出ている。 上半身と下半身の横幅は、さっきまでの身体の倍はあるだろう。 100キロ分の筋肉が詰め込まれ、ずっしりと重く動きにくい肉体。 (こんな身体でいるなんて、絶対にイヤ!) 改変されたお陰で大騒ぎにならないという安堵と、こんな身体でいたくないという嫌悪感が同時に押し寄せてくる。 とにかく、元の身体に戻りたい。 常軌を逸した状況をどうにかできるのは、原因であるこのアプリくらいだがーー (もしかして、元の数値に戻せば……) 冬優子の脳内にひとつのアイデアが降りてくる。 あさひが筋肉量を増やしたからこうなったのだ。なら、逆に減らしてしまえば元に戻るのではないか……? 思いつきだし、確証はない。しかし、やるしか選択肢はなかった。 「あ、さっきのアプリっすね。わたしも弄りたいっす~!」 「大人しくしてなさい!」 冬優子の動きに反応して、好奇心を再爆発させるあさひ。 しかし、もう彼女に好き勝手させるわけにはいかない。 この身体であさひを制するのは簡単だった。身長差はさらに広がっていたし、極太の腕をあさひの目に突き出すだけで接近されるのを防ぐことができた。 男性よりもごつくなった右手で、たどたどしく筋肉量の欄を選択する。 指が太くなったせいで別の数値まで弄りそうになったが、落ち着いてカーソルを選択しなおす。 幸い筋肉量の数値が100キロ増えただけだったため、修正自体は容易にできた。 「できた! ……うっ!?」 ググッ、シュルルッ…… アプリの数値を戻せたと同時に、冬優子の身体にふたたび変化が起きた。 熱が冷めていくような、何かが抜け落ちていくような感覚とともに視界が下がっていく。 全身が縮み、半開きになっていた腕やガニ股になっていた太腿が普段の感覚に近づいていく。 気づけば何も変わらない、いつもの体型に戻っていた。 「よ、よかったぁ……」 パニックと緊張から解放され、床にへたりこむ冬優子。 愛依とあさひの認識はやはり改変されているらしく、何が起きたのか理解できないといった表情で見つめている。 数秒して、愛依が思い出すように手を打った。 「そうだ、プロデューサーが呼んでるんだって」 「はいっす~」 筋肉体型になったときと同様に、いつもと変わらない2人の言動。 さっきまでの現象が夢だったんじゃないかと思えてくる。 しかしスマホの中には、アプリだけは変わらず存在していた。 「……いま行くわ」 スマホについては、後でどうにでもできるはず。 冬優子はアイドルふゆとして、目の前の打ち合わせに切り替えていた。

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