『退魔師娼館』 3-4 (Pixiv Fanbox)
Published:
2022-03-04 16:56:00
Edited:
2022-03-04 17:01:21
Imported:
2023-05
Content
進捗2万字いきました。
次回から本格的なエロシーンになります。
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メイドカフェが開店してから半月ほどが経った。
最初は戸惑いばかりだったが、ランも少年メイドとしての生活にも慣れてきた。
率直にいって、待遇は悪くない。
食事には困らないし、メイドとしてのシフト以外の時間はほぼすべてが自由だ。
居住のための建物も店の近く用意され、退魔師のときよりも広い部屋を1人ずつに与えられている。くわえて出入りも自由なので、同室だったミツハと以前のように共に過ごすこともできた。
くわえて疲労や身体の不調もなく、健康そのものだ。逆に問題がなさすぎるともいえる。
メイド服での接客に、ドリンクや食事の運搬、淫魔からの指名……慣れない仕事の数をこなしていれば筋肉痛の一つくらい起きる方が普通である。
この違和感はおそらく、下腹部に刻まれた淫紋によるものだろう。
本来は性行為を効率よく行うために、肉体を管理するためのもの。
男娼たちの調子が悪いと、愉しめるものも愉しめなくなる。ゆえにメイドたちの体調を整えているのだろう。
淫紋は「心身の負担軽減」だと説明されていたが、ここまで如実に効果があるとは。
性的なものに関しては良くも悪くも最高の環境を整えてしまう淫魔の性質が、考えたこともない形で効果を発揮されていた。
衣食住に体調管理、すべてが整っているうえに、淫魔を退けるための出動要請もない。
悪くないどころか、むしろ退魔師だった頃よりも生活は安定していた。
(これで文句を言ったら、罰が当たりそうだな)
和睦によって意味がなくなった自分たちが、ここまで充実した生活をさせてもらえるのはありがたいことこの上ない。
……ただ、ランの心中は晴れなかった。
淫魔のことをどう受け止めればいいのか、まだ整理がついていなかったのだ。
客として奉仕すればするほど、彼女たちが悪意をもってないことは実感する。
それでも長年ずっと敵としてみていた相手を、この短期間で心から信じ切ることができないでいた。
いまの生活に満足してしまうことに、罪悪感にも似た感情が湧き上がり……形容しがたい心苦しさがあった。
「また来ちゃった♪」
「お、お帰りなさいませ……」
ランの屈託をよそに、淫魔たちは毎夜メイドカフェを満員にして楽しそうに過ごしている。
常に満員の忙しさの中ではグダグダと考えている余裕もなく、ランもメイドとしての仕事に精を出していた。
入店時の独特な挨拶などはまだ恥ずかしさを隠しきれないが、これでも慣れてきた方だ。
淫魔たちからは「恥ずかしがってる顔もかわいい」と好評なのだが、良いのか悪いのか分からない
「うん、だんだんメイドらしさが出てきたわよ♪」
「あ、ありがとうございます……」
メイドを気に入った客は連日のようにやってくるため、ランも顔見知りの淫魔が何人かできつつある。
来店のたびに違うメイドを指名する淫魔もいるが、多くは特定のメイドを気に入っているようで空きができればすかさず指名してくる。
そして……常連として慣れてくると、同じような愛撫やプレイだけでは物足りなくなってくるらしい。
店内を歩きつつ、他の少年メイドと彼を指名した淫魔をチラリと見る。
「ね、キスはいいかな?」
「いや、その……ちょっと……」
「じゃあ、まずは頬にでいいから! ね!?」
「そ、それくらいなら……」
少しずつではあるが、スキンシップに激しさが増してきていた。
もちろん股間や尻といった箇所の純潔は守っているし、そこを無理矢理に破ってこようとする者はいない。
……淫魔の方も、より性的なことについて興味がないわけではないだろう。
ただメイドカフェというプレイを守りつつ、ラインを探っている感じだ。
ここが娼館街であることを考慮すれば、ここまで落ちついたやり取りで済んでいるのがレアケースといっていいだろう。
「オーダーはこれで、あと今日もいいかな?」
「はい、よろしくお願いします……!」
ランを気に入っている淫魔から指名を受けて、緊張しつつ応対する。
ときおり浮かべる性欲に満ちた表情や、肌を愛撫するねっとりとした手つきで、性に特化した魔物であることを再認識させられる。
もし、自分が「犯していい」と許可してしまえば……彼女たちは全力で応えるだろうし、この身体はあっという間に犯し尽くされてしまうだろう。
まだ緊張はする。ただ……嫌悪感は湧かなかった。
好意的に接してくるために、こちらのガードが緩んでいってるのかもしれない。
淫魔たちから立ちのぼって店内を満たす甘い匂いにも、愛撫の後に残るジンワリと火照ったような肌の感覚にも、かなり慣れてきている。
……ただ、この生活を送る上で、変化も少しずつ起きていた。
「ランくんは、これがお気に入りだもんね~」
「はぅ、んくっ……!」
指名されて、淫魔の相手をする時間。
大きく開かれた胸元や腋まわりのスリットから淫魔たちに手を突っ込まれては、胸を愛撫されるのがお決まりになっていた。
そして喉から漏れる吐息まじりの声は、喘ぐような艶を帯びつつある。
何人もの淫魔から愛撫を受けてきた乳首は、愛撫を中心とした淫魔の性技によってじわじわと開発され、日に日に感度が増してきていた。
性感帯のように敏感になった両乳首は、すでに乳輪をスリスリと円を描くようになぞられるだけで快楽を滲ませてしまう。
ただの小さな突起であり、男としては存在意味なんてないと思っていたはずの場所。
そこが立派な性器官なのだと、身体で分からされる。
指の刺激で育ったピンク色の肉蕾はぷっくりと充血し、小指の先くらいに膨らんでいる。
最近ではメイド服を着ると布と乳頭が接触するようになっていた。
仕事中も動くたびにわずかに擦れ、甘やかな刺激とともにより熟れていくような感覚が胸に広がっていく。
「男の子の乳首も、こんなに気持ちよくなれるんだよ~」
「ひぐっ♡」
焦らすように乳輪をさすりながら、間違って触ってしまったかのようにほんの少しだけ側面をかすめる。
その刺激だけでも背筋がわずかに震えてしまう。
食べごろになるまでパンパンに熟れされた乳首を、美味しく頂くように――
「それっ♪」
「ひぁぁっ!?」
その先端を押しつぶすように、カリッと指先でひっかいた。
溜まりに溜まった疼きが一気に快感となって噴き出し、胸にビリビリとした甘い感覚を広げていく。
そこで終わらせる淫魔ではない。生じた快感が逃げる前に、両乳首を転がすように動かして刺激と快楽を畳みかけていく。
「はぅ、んくっ」
性技において、淫魔に勝てようもない。
押しつぶすように乳首をくにくにと責められ、どんどん高まってい。
いままでは制限時間いっぱいになるまで可愛がられて終わるものだったが……今回は違っていた。
「あっ……あぁっ!? なにかクる……やっ、ひっ!」
胸いっぱいに満ちた快感が、逃げ場をなくして膨れ上がっていく。
ランがそれに気づいたときには、もう制止する余裕もなく乳首への責めは止まらない。
淫魔の絶妙な指使いが容赦なく快楽を注ぎ込んでゆき――
「いっ……あぁぁっ!?」
ビリビリと痺れるような快楽が両乳首から一気に爆発した。
呼吸が浅くなり、上下する胸が指の刺激に変化を与えてさらに快感が連鎖する。
初めての現象、これが絶頂なのだと身体で理解した。
「お、もしかして、初めての乳首イキかな?」
ランの胸を責めつつ、イっている様子を嬉しそうに見下ろす淫魔。
絶頂している間も、崩れ落ちないようにしっかりと優しく抱き寄せながら、ランが喘ぐ様子を眺めて愉しんでいた。
「はっ、はぁっ、ふぅ……」
初めての絶頂ということもあって、そこまで前後不覚にはならなかった。時間にすれば1分もなかっただろう。
徐々に落ち着きを取り戻し、快楽の余韻を振り払うように身体を緊張させるラン。
理性が復活するにつれて、淫魔に責められてイってしまった事実に羞恥心がこみ上げてくる。
「かわいかったよ♪」
「う……うぅ……」
乱れてしまったことを恥ずかしく、淫魔と顔を合わせる事もできない。
あちらから嫌悪でもしてくれれば抵抗のしがいもあるが、純粋な好意と、いくらかの性欲を向けられているだけなのだ。
客がみな淫魔であるがゆえに、店ではトラブルも皆無といっていい。
性の権化であり、変態と言ってもいいが、淑女ではあった。
少年メイドとしての、甘く蕩けさせられそうな日々。
この日からランは淫魔の相手をするたび、高確率で乳首絶頂させられるようになった。
これがトリガーだったのかは分からないが、乳首イキを覚えてから数日後。
ランの身体には感度だけでなく、より大きな影響が現れていた。
「やっぱり、膨らんできてるよな……」
更衣室の鏡に自らの裸を映して呟く。
視線の先にあるのは、やはり胸。
肥大化してツンと上向いた乳首は、淫魔たちによって開発されたせいだといえるだろう。
しかし、その周囲までもがふっくらと盛り上がってきているのだ。
まだ少しだけ太ったと誤魔化しの効くサイズ感ではあるが、腹まわりなどに余計に肉はついておらず、スレンダーなままだ。
胸の膨らみ、脂肪の残る尻、対照的に細くみえる腰……。
退魔師としての鍛錬が筋肉が減ったのもあるが、それ以上に中性的な印象を強めている。
「…………」
このままでは寒いので、仕事のためのメイド服に袖を通す。
最初は違和感しかなかったこの服も、着ている姿に違和感がなくなってきた。
単に慣れたというよりも、身体の変化によるところが大きい。
肩幅や骨格は変わらないのに、肉付きだけ影響を受けているような……。
よくみると、顔もわずかに男らしさを感じなくなってきている気がする。
(魔力の影響……か?)
淫魔たちも加減はしているのだろうが、愛撫や乳首の責めを介してわずかずつではあるが影響を受けているように思う。
無防備な状態で奉仕し続けているのだから、まったく影響を受けないのは無理な話だ。
もちろんシンプルな愛撫だけでも技術がありすぎて、開発されているせいもあるだろう。
考えていても仕方ないし、そのまま仕事場へと向かったのだが――
「ランくん、おっぱいちょっと大きくなった?」
「あ、はい……」
常連となった淫魔の目は誤魔化せなかった。
AAカップほどになった胸を指摘され、自分の身体を固さの残る笑みを浮かべて対応する。
胸元に『ラン』とつけられた名札、平らな胸板に密着して安定していたはずのそれが、膨らみが形成されたせいで身体を動かすたびにユラユラと揺れている。
「そんなに恥ずかしがらなくても……とっても素敵よ?」
さすっ
「ふあぁっ♡」
少しだけ盛り上がった胸元めがけて両手が潜り込み、ランの喉から甘い声がもれる。
ふにふにと胸を弄ばれるが、それも優しくいたわるような手つきだ。
「ほら、他のみんなも楽しそうにしてるんだし」
淫魔に促されて周囲を見渡すと、店内の光景もかなり変化が起きていた。
「ミツハくん、オーダーいい?」
「はーい♥」
まず同室だった彼……ミツハは、ランよりもずっと早くこの生活に適応していた。
元から大人しく小柄だった彼だったが、メイド服を着たお人形のような雰囲気はさらに濃くなり、何も知らない人間なら少女だと言われても信じてしまうだろう。
たくさん可愛がってもらいつつ、気持ちよくしてもらえるこの生活をいたく気に入った彼は、むしろ自ら快楽を求めてシフトを増やしてもらったくらいだ。
しかし、いまはそれが咎められる環境ではない。
むしろミツハ本人も、幸せそうな顔をしていて……「羨ましい」という感情すら湧きそうになる。
そして、ミツハだけではない。
同僚の少年メイドたちはみなラン以上に言動や容姿に変化がみられ、メイドらしくなった者が多数派となりつつあった。
中には、すでに女性の乳房と呼べるほどの膨らみのあるメイドたちもいる。
「あんっ♡」
「きゃっ♪」
「んっ……ちゅっ♡」
お尻を揉まれて嬉しそうに声をあげる者、キスに興じる者、スカートをまくり上げてチラ見せしている者……。
楽しそうに奉仕し、責められ、ときには気持ちよさそうに絶頂している。
性に乱れた店内の雰囲気……一般的な感性からすれば、異様な環境であるのは間違いない。
淫魔の魔力や体液に触れ続けたメイドたちの身体は、より性的で淫らなものへと変わりつつある。
退魔師の目線でいえば、「堕ちた」と表現するべき状態。
しかし今のランたちは、もう魔に抗う存在ではないのだ。
淫魔たちに奉仕する男娼としてはより人気で、淫魔のプレイにも応えられる。
それはいまの仕事に適応した身体ともいえるわけで。
退魔師でない今の自分たちにとって堕ちることが悪いことだと言えず、彼らが間違ってるとも思えなかった。
「可愛い子が、もっとエッチになるんだから……素敵なことだよ」
「…………」
淫魔に抱きしめられ、耳元で優しくささやかれる。
純粋な好意と性欲による言葉だと、ランも理解していた。
ゆえに彼女たちを拒絶したくはないし、この身体だって悪いものではないのだろう。
暖かな腕の中で、わずかに心が揺れ動く。
こんな風に抱いてもらえたのは、いつぶりだろうか……。
(……もっとエッチになれば、もっと愛してもらえるのかな)
ただ、
自分も彼らのように開放的に全てを受け入れよう……とも思いきれなかった。
快楽に流されそうになるのを、どこか踏みとどまってしまう。
退魔師としての性なのか、堕ちることへの不安や抵抗がまだ心の底に残っている。
自分が悪いことをしているような気分になって、心から快楽に浸れない。
しかし愛撫されるのを待っている自分が、両手に収まる胸の膨らみをどこか嬉しく思ってしまう自分がいるのも確かなのだ。
ランはどこか中途半端なまま、メイドとしての仕事をこなす日々が続いていった。