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進捗としては、すでに1万字ほど書きました。 ただ描きたい要素が沢山で完成まで少しかかるのと、まだまだ長くなりそう。 ~~~~~~~~~~~^ 娼館街の準備は着々と進んでいった。 本来ならば長期間かかるであろう街全体の改装という大工事。 しかし淫魔たちの全面的な協力もあって、退魔師たちが暮らす正義の象徴だった街はみるみる淫靡な外観へと塗り替えられていった。 ランは自分たちの街が変質していくさまを目にしないよう、なるべく部屋にこもって過ごしていた。 そしてひと月もしないうちにすべての準備が整い、退魔師たちはそれぞれ配属された店へと向かうことになった。 娼館街として生まれ変わったこの街には『ラディール』とかいう名前がつけられたそうだが、ランにとってはどうでもいいことだ。 それよりも―― 「な、なんだよこれ……!」 制服として支給されたメイド服の恥ずかしさに、どう耐えるかの方が重要だった。 一般的なメイド服ではない。 コスプレで着られるようなものをさらに煽情的にしつつ、完成度も高めたような……要するに「エロ目的のためのメイド服」である。 普通のメイド服くらいなら、すでに着る覚悟を決めていたのだが……。 ただ淫魔が全面的に製作しているのだから、ある意味では自然といえるかもしれない。 「こ、こんな格好で働くのかよ」 ランは更衣室に備え付けられた大きな鏡に映る自分の姿をみつめる。 用意されていたそれを手に取ったときから嫌な予感はしていたのだが、身に着けてようやくその凶悪さを体感することとなった。 まず肩まわりは布そのものが無く、綺麗に露出されたそこは腕を上げると腋まで丸見えになってしまう。 胸元も大きく穴が空いていて、鎖骨どころか胸の半分近くがみえてしまっていた。 もう少し深く切り開かれていたら、動くたびに乳首までチラ見えしてしまう危機だっただろう。 少年らしく適度に薄い胸板は退魔師らしく筋肉が乗っているため、うっすらと縦のラインが走っている。 細くストレート気味なウエストを包む黒い布はメイドらしいくびれをわずかに演出し、うっすらと感じられる男子特有の筋肉の厚みが少女とは違う倒錯めいた匂いを滲ませていた。 黒地に白のフリルがあしらわれたスカートは太腿の中ほどまでしか丈がなく、純白のソックスとの境目からは白い生足が晒されている。 ちゃんと服として機能しているのは、腰まわりのみといっていいだろう。 さらにメイド服の魔の手は、スカートの内側にまで及んでいた。 ギリギリ隠されている股間、その奥にある下着までもがご丁寧に指定されていたのだ。 女性用のショーツを模した下着は、しかし股間の部分だけ膨らむように肉棒と玉をピッタリと包み込む、おそらく特注であろう形状をしている。 もちろんこんなモノを履いたことなんてないし、義務だから歯をくいしばって脚を通したにすぎない。 しかし内心とは裏腹に、淫魔が関わっているせいか着心地が悪くなく、それが逆に気持ち悪い。 少しでもスカートをまくると、ショーツに包まれた股間の膨らみが顔を覗かせてしまう。 つまるところ今のランの容姿は、どこからみてもエロコスをした少年だった。 「どうみてもヘンタイじゃん……」 鏡には、顔を赤らめて服ごしに胸や股間を手で反射的に隠している自分の姿が映っている。 女々しいところはないつもりだが、ランの身体に合わせて仕立てられたであろうメイド服は身体にフィットしているため、どうにかバランスが取れているようにも見える。 しかし顔の方がそうもいかない。 短めの髪と、少年らしい要素の多い顔が、メイド服の上に乗っている違和感。 ただ頭に着けられたフリルつきのカチューシャが、全身をそれとなくメイド調にまとめている気がしないでもなかった。 (ギリギリ……やっていけるか?) 変態にしかみえない姿で、淫魔たちに奉仕する……考えただけでも辱めを受けている気分だ。 しかし、すでに開店が迫っている、いまさらやめるわけにもいかない。 これも覚悟を決めた道なのだと、自分に言い聞かせる。 「ど、どうかな……?」 隣では、ミツハも同様にメイド服を着こんでいた。 恥ずかしそうにはしているものの、華奢な体躯がよりメイド服を映えさせている。 どこか儚い少女のような雰囲気さえ感じる中性的な容姿。 退魔師としての身体能力は自分の方が上だったが、いまこの場においては彼の方がこの仕事に向いていると心から思える。 本人も少しだけまんざらでもなさそうな様子が、余計に背徳的な印象を与えていた。 「いいんじゃないか……? 少なくとも不格好じゃねーよ」 いままで抱いたことのない感覚を抱きそうになり、そっと視線を外すラン。 少なくとも、自分のように似合わないと思いながら仕事をするよりずっといいだろう。 適性がある、というのも、あながち間違いではないのだと思った。 ……自分に適性があるなどとは、まったく思わないが。 そんなランの屈託をよそに時間はあっという間に流れ、初めての開店となった。 夜の帳が降りて、外は娼館街らしいピンクや紫の灯りが窓ごしにぼんやりと滲んでみえる。 それらを遮るように黒い人影が動き、ぞろぞろと通りを進んでいく。 淫魔たちが到着したのだと、退魔師としての本能でわかった。 ほどなくして入口の向こうから気配がして、黒い影が大きくなる。すぐにドアが開かれ、備え付けられたベルがなった。 「い、いらっしゃいませ~」 ひきつった笑顔で応対するラン。 これからやってくるのは敵ではなく、奉仕するべき客なのだ。 ……とはいえ、正直にいえば不安と緊張でいっぱいだった。 サキュバスがメイド姿の自分たちに対してどんな態度を取ってくるのだろうか。 敵だった存在が、自らに奉仕する存在になったとしたら……これが人間の悪役なら、嬉々として相手を弄んでいるだろう。 いままでの鬱憤を晴らすために嫌がらせでもしてくるのではないか。 軽く頭を下げつつも、その瞳は淫魔への警戒を怠っていない。 もし、いままでの報復として危害を加えられそうになったら……そんな想像が緊張をより一層高めていく。 淫魔たちから度を超えた行為や攻撃があれば、こちらも決死の覚悟を持って反撃を―― 「キャー! かわいい~♡♡」 ランの思考を吹き飛ばすように、店内に入ってきた人外の存在はものすごい勢いで彼に抱きついてきた。 何が起きたのか理解する暇もないままに、なめらかな肌と柔らかな女体の感触が全身に押し寄せる。 そのまま彼女の両手が、彼の全身をまさぐるように動きだす。 「こんな子を愛でるのが夢だったのよ~♪」 もちろん、この店においてメイドに対するスキンシップはOKである。 呆然と立ちつつ、そして触れているだけで気持ちを持っていかれそうになる淫魔の滑らかな肌を押し付けられるラン。 羨ましくも思える光景だが、本人にそれを味わう余裕は彼にはなかった。 「むぐっ……んん~~~っ!」 メイド服以上に露出の激しい衣装からはみ出した形の良い巨乳に顔全体を挟み込まれて、息が詰まりそうになる。 敵意は感じない、しかし窒息しているのは事実。 相手の行動を理解できず、どうすればいいのかわからないまま両手をバタバタと動かすことしかできなかった。 「あ、ごめんなさい、アタシったらつい……」 「ぷはっ、はっ、はぁ……」 ようやくランが窒息しかけてることに気付き、距離を取る淫魔。 困惑しながら そこまで身長が高いわけではないが、それでも頭1つ以上高い長身の美人が、こちらを 申し訳なさそうにしつつ、しかしランのことをいたく気に入ったようで、 「あとでオーダー取りに来てね! 絶対よ!」 彼女はランを指さしながら高らかに指名し、喜びを滲ませる足取りで席へと向かっていった。 (な、何だったんだ……!?) あっけに取られて見つめるランと、同僚の少年メイドたち。 その間にも続々と入店してくる淫魔たち。 彼らは慌てて店員としての対応に追われることとなった。

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