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「なんなのよ一体……どうなってるのよっ!」 最後の1人になってしまったトモカは、走りながら悪態をつく。 すでに2人の変化を間の当たりにしたせいで、恐怖と緊張で半泣きだ。 しかし立ち止まってはいられない。とにかく逃げなければ自分も彼女たちと同じ末路を辿ることになってしまう。 タマミのことを考えれば、何かを少しでも食らった時点でアウトなのだろう。 辺りはシンと静まっている。しかしいつピエロの奇襲が来るかわかったものじゃない。 自分の足音でもビクリと反応してしまう。乱雑に積み重ねられたサーカスの道具にさえ、近づくのが恐ろしい。 それでも、なんとかテントの一番外側まで辿りついた彼女だったが―― 「うそ……!」 彼女の前には、テントの壁だけが広がっていた。 テントの外周に沿って出口を探したいところだが、左右には備品の山が積み上げられている。 要するに、完全な行き止まりだった。 「こっちかナー?」 分かれ道まで戻って、出口を探すしかない。 しかしこのタイミングを狙っていたかのように、いま走ってきた方向からあのピエロの声がする。 (どうしよう……) いまは備品の山の影でみえないが、このままでは見つかるのも時間の問題だろう。 捕まれば、自分の尊厳も終わりだ。 (もう、隠れるしかない!) 辺りを見回して、覚悟を決める。 山のように積まれたすべての道具に、あの訳の分からない効果がついてるとは限らないはずだ。 隠れても問題なさそうなもの……自分の身体が触れたり、ヘンなことが起きそうになくて、身を隠せそうなもの……。 (これしかない!) 見つけたのは、ブロックを3つ積み重ねたような縦長の形をした、人が1人入れる大きさの箱だった。 3つの箱をずらしたり開けたりして中の人間が無事……というマジックに用いられる大道具だ。 つまり中に何かが入っているわけではないし、ショーとして使うものなら入った人は無事になるように造られているはず。 少なくとも、ヘンなことが起きるものだとは思えない。扉を開けてみても中は黒い壁で形成されたがあるのみで、身体を汚染するような液体などは一切見当たらない。 トモカは箱の内部にはできるだけ触れずに中へと入り、そっと扉を閉めた。 「あっちに行ったかナー?」 数秒ほどして、箱ごしにピエロの声が近づいてきた。 トモカは必死に息を殺して声が遠ざかるのを待つ。 暗い箱の中で外のことはハッキリとは分からないものの、少しずつ足音が小さくなっていく。 どうやら トモカはわずかながらも生まれた安堵に、止めていた息を吐こうとしたところで―― (あ、あれ……?) グラリと視界が揺れた。 緊張によるものとは違う異様な、強烈に意識を奪われていく感覚。 「なんてネ♪」 (しま……っ!?) 箱の前ピエロの声が響く。 危機を察したトモカだが、すでに身体は動かず意識も闇に埋もれていく。 「キミはサーカスまでお楽しみにして取っておくヨ♪」 ピエロの声を箱ごしに聞きながら、トモカはそのまま気を失った。 ~~~~~~ 次からサーカス編です。