コミッションss「長門のマッスルステージ」(終) (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-08-22 13:56:03
Imported:
2023-05
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「Thanks! じゃあ、皆の説得はお願いするわね」
「ああ、任せておけ」
長門はIowaと別れて歩き出す。間宮の食事処……ではなく、真っ先に行きたい所があった。
歩くとパンパンに膨らんだ太腿同士がぶつかってしまうため、自然とガニ股になる。両腕も半開きなので自然と胸を張る格好になり、Iowaと同様の歩き方へと変わっていた。
しかし今の長門には、そうやって周囲に見せつけるように堂々と歩くのが心地よくて仕方がなかった。
膨れあがった筋肉を隠すように縮こまる事の方が情けないし、恥じる必要などどこにもない。そんなことを考えながらのしのしと廊下を歩く。
幸か不幸か廊下に人気はなく、長門が途中で誰かに見つかることはなかった。
目的の部屋にたどり着き、中にいるであろう人へ声を掛ける。
「陸奥、いるか?」
「どうしたの長門……って、えっ?」
姉妹艦である陸奥、彼女にこの肉体美を見せつけたかったのだ。
「どうだ、素晴らしい身体だろう?」
両腕を曲げ、大胸筋を膨らませ、腹筋を収縮させ……全身のあらゆる筋肉を見せつけていく。
そのまま、わけも分からずに硬直する陸奥へと近づいていく。
「なに、すぐに理解できるさ。私が直接教えてやるんだからな……」
「いやぁぁっ! ……むぐっ」
一瞬の悲鳴が上がったものの、口もとに押し付けられた大胸筋によって塞がれる。
長門に抱きしめられてすぐに混乱と恐怖の色に染まった陸奥の瞳から光りが消え、まったく抵抗しなくなる。
……ムククッ!
しなやかな陸奥の身体が、爆発的に膨らみ始めた。
あの件から一月ほどが経ったある日、鎮守府にある大きな建物。
多くの艦娘たちが見つめるステージには、4人が立っていた。
Iowa、長門……そして大和と武蔵だ。
あれから陸奥をはじめ間宮にも肉体美の魅力を教えた長門は、食事を介して一気に鎮守府全体を筋肉で染めた。もちろん変化に気づいた者たちもいたが、一人一人丁寧に『説得』することでみな理解をしてくれた。
そして筋肉艦娘となった皆の格段に上がった戦闘力により周辺海域を制圧。あまりにも圧倒的な力によって深海棲艦も姿を見せることがなくなり、鎮守府周辺は平穏を取り戻した。
もちろん遠方の海域などへの出撃はあるが、自由な時間ができたのも確かだ。
筋肉艦娘たちの間でトレーニングや互いの身体の褒め合いは常に行われていたが、どうせならば大きなイベントにようと、この空いた時間で行われたのが『艦娘ボディビル大会』なのだった。
観衆である艦娘たちも、異様なほどに筋肉が膨れ上がっている。
龍譲などは大胸筋で巨大なバストをつくっているし、駆逐艦は少女のような姿のまま筋肉で3サイズはバストとヒップが3桁に到達している者もいる。もちろん、筋肉でだ。
「長門、頑張ってー!」
姉妹艦である陸奥は、Iowaのような脂肪もまとった体型へと変わった。
ゆえにこのステージには参加していないが、いまの長門にとっては魅了されるほどに美しいものだった。
どの艦娘をみてもステージ上に立つ4人の肉体美への羨望や尊敬といった色の視線をしておりIowaの身体を忌避していた頃の価値観は微塵も存在していない。
ちなみに、当のIowaはこの大会のために絞り込んだ筋肉体型へと変化していた。
ボディビルにおいては筋肉量とともに絞り込みも重要になり、全体のバランスや美しさが基準となる。ステージに立つ4人の身体はみな、もし世界大会に出れば優勝は確実と思えるほどの完成された美しさを持っていた。
『リラックスポーズ!』
指示役は「いい声だから」という理由で日向が務めていた。彼女もいい筋肉だが、プロレスラーのような体型のために今回は出場しなかった。
声に合わせて4人が体勢を変える。気をつけの姿勢よりも、両腕と両脚を軽く開いた状態。リラックスとはいうが、全身に力を込め続けている。
腹筋を最大限に収縮させ、ウエストをコルセットのように締め付けながら逆三角形のプロポーションを強調している。
半開きの腋からは広背筋がはみ出し、大胸筋と相まって凄まじい分厚さを主張していた。
この姿勢では4人とも甲乙つけがたい身体つきにみえる。
『ダブルバイセップス!』
次はボディビルや筋肉と言われてパッと思い浮かべるであろうポーズ。
両腕を肩の高さで曲げ、二の腕を見せつけながら逆三角形の上半身を強調する。
下半身……両太腿も軽く開き、肥大化させているのを見逃してはいけない。
上半身ばかり強すぎてもバランスが悪く、ボディビルとしての肉体美にはマイナスとなるのだ。
砂時計のようなシルエットを描きながらポージングが決まり、歓声が湧く。
武蔵の肉体は元から逞しいものだったが、さらに強化された影響でサラシを巻きにくくなったのが悩みの種らしい。
褐色の肌は筋肉を浮き上がらせ、長門よりも太い腕を堂々と見せつけている。鎮守府内にファンがいるほどの整った顔が、筋肉の全身装甲と非常にマッチしていた。
『サイドチェスト!』
両腕を胸の前で組みながら、上半身をひねって大胸筋や腕の分厚さを見せつける。
太腿の厚みも見えるため、バルクがものを言うポーズでもある。
Iowaの分厚さは抜群なのだが、長門や武蔵に比べると絞り込みがやや甘い。
対して筋繊維を浮き上がらせるほどに絞り込んでいるのは、やはり長門だ。
しかし筋肉量では武蔵も凄まじく、大和はその大きな胸が大胸筋を包むように乗っているためにインパクトがすごい。
大和はどこかおっとりした印象の美人顔ゆえに、肌色のまま筋肉が発達した肉体のギャップが際立っている。筋肉そのものがどこか丸みを帯びているようで、バストとヒップに残る脂肪とともに女性らしい筋肉体型を体現していた。
『バックダブルバイセップス!』
ダブルバイセップスを後ろを向いて行うようなポーズなのだが、今度見せつけるのは背中の筋肉である。ギチギチとひしめき合う分厚い背筋が、鬼の顔のような模様を浮き上がらせる。
壮大な大海原のような背中の大和型に対して、バキバキに絞られ般若の面のような背中を化した長門。
比較してみると4人とも体型の方向性が微妙に異なるために、どう評価するかがとても悩ましい。
『バックラッドスプレッド!』
後ろを向いたまま、次は腰に手を当てて背筋を左右に広げていく。
翼のように広がる筋肉は、引き伸ばされてなお分厚さを保っている。
正面からみても腋の下からはみ出してしまうほどの背筋、それを後ろから直接見るのだから、凄まじいことこの上ない。胴体の2倍あるのではないかと思える左右の広がりに、思わず息を飲んだ艦娘たちもいたほどだ。
ボリュームという点ではIowaが最も大きく、体格も相まって筋肉の甲羅を背負っているかのようだ。
『アドミラル&サイ!』
正面に戻って両手を頭の後ろで組み、軽い前傾姿勢で腹筋を収縮させながら片足を前に出す。
太腿と腹筋をメインに見せつけるポーズ。……なのだが、顔よりもデカい二の腕が持ち上げられ、腋が丸出しになるポーズでもある。
腕の上腕三等筋と背筋、大胸筋や肩まわりの三角筋といった筋肉がひしめき、これまでのポージングでかいた汗でムワリと湯気が立ち上る。そこに顔を埋めれば、一瞬で彼女たちのような身体に変わってしまいそうだ。
この大会のためにも入念に手入れされたそこは、女体としての魅力も合わさっていた。すでに筋肉を収縮させ続けた彼女たちは疲労も溜まっているはずなのだが、笑顔を崩さないままクライマックスへと突入する。
『モストマスキュラー!』
両腕を曲げ、腰を下げて前傾姿勢になりながら全身の筋肉を収縮させる。全身に力を込めるにはうってつけのポージング。
像帽筋がバキバキに膨れ上がり、顔と筋肉がひとつの塊と化す。
腕の筋肉がギチギチと肌の直下でうねり、肩が顔以上に存在感を放つ。
「うぉぉっ!」
「はぁっ!」
思わず声を上げながら、観衆に向けて魅せつけた。
全力を出しつつけた長門の肉体が限界も近かったが、それ以上に快感で満たされていた。
会場の視線がすべて自分の筋肉に向けられている。筋肉をこれでもかと凝視されている。
その事実が長門の興奮を加速させる。
(もっと見られたい……筋肉を見せつけたい!)
ゾクゾクとした高揚を伴いながら筋肉が歓喜し、笑みを浮かべながらポージングを繰り出し続ける。
見るからに湯気が身体から立ち上るまで、ポージング争いはヒートアップしていった。
『優勝は…………長門!』
汗だくになった4人が立つ中で、結果発表のアナウンスが高らかに響く。
ストイックに絞り込まれた身体はIowaや大和型の2人に比べてわずかにバルクは劣るものの、筋肉に直接肌を貼り付けたかのような深いカットを作っていた。その肉体美が評価された結果だった。
悔しそうに、しかし嬉しそうに拍手を送るIowaと長門型。
4人のかいた汗にくわえ、観衆の熱気と興奮によって会場はムワァ……と筋肉の熱で満たされていた。その場に普通の身体の者がいれば、即座に筋肉が肥大化してしまいそうなほどだ。
大きなトロフィーを軽々と受け止めながら、マイクを向けられて口を開く。
「これからも負けないよう、明日もトレーニングしなくてはな」
長門の脳内には、すでに筋肉のことしか頭になかった。
この後、鎮守府内ではボディビルのステージに立つことが全員の目標となった。艦種ごとに体格が異なるため種目が分けられ、その部門ごとでの優勝を皆が目指していく。
筋肉は鍛えれば鍛えるほど応えるように成長して、見せつけたときの快感も大きくなる。
幸せで満ち足りた日々を送っていた。
異様な強さを誇る鎮守府は有名になるのだが……理由を探ろうとした者が無事に報告できた例は全くないらしい。
なお、悪意がなければ帰ってこれたケースは存在する。
「あれ、迷っちゃった。ここどこだろ……」
「何かお困りかな、お嬢さん?」
「ひっ、変態っ!?」
この少女は長門と遭遇し、案内されて無事に鎮守府から帰還することができたのだが……。
帰ってきた直後から思考や価値観、その身体つきが別人のように変わっていたという近しい人の話もある。
なお、その彼女は数ヶ月でトップボディビルダーの座に上り詰めたらしいのだが……因果関係は不明である。
(了)