コミッション作品「神通の力比べ」(2) (Pixiv Fanbox)
Published:
2020-06-12 14:40:04
Imported:
2023-05
Content
「……あら?」
鎮守府に戻り新しい服を着た神通だったが、ふと足が止まった。
視線の先には駆逐艦たちの前でポーズを取りながら肉体を誇示している艦娘がいた。自分と同じ軽巡の矢矧だ。
もともとスラリとしたプロポーションだったが、その身体は筋骨隆々といった印象に書き換えられていた。
「どうですかこの筋肉!」
駆逐艦の子たちに自分の腕を見せつけていた。通常であれば余程のトレーニングを経なければ得られないレベルの引き締まった筋肉の隆起が肌の上から見てとれる。駆逐艦たちもその身体を尊敬のまなざしで見てたいたが、もちろん神通とは比べるまでもない。
神通自身が直接訓練をした海風たちがみれば「自分たちよりも貧弱」と思うだろう。
変脳が進行した影響だろうか……そう考えながら眺めていた神通だったが、問題はこの直後の一言だった。
「この肉体なら、鎮守府の誰にも負けるわけがありません!」
「っ!?」
堂々とした表情で言い放った矢矧。その言葉は神通のプライドをいたく傷つけた。
鎮守府で一番の筋肉を持っているのは間違いなく自分だ。それこそ、比べようのないほどに。
ライオンの目の前で、ネズミが力自慢をしている。そんな不釣り合いな言動を前にして、自分の肉体への誇りを傷つけられたように感じていた。
この筋肉に勝てるとでも思っているのだろうか。
中途半端に加減した身体しか見せていないが故につけあがったのだろうか。
すべてがバレてもいいから、今あそこに行って全力の筋肉で圧倒してしまおうか。
遠目に眺める表情はいたって冷静にみえたが、その身体は熱く滾りムクムクと筋肉が膨らんでいく。
辛うじて理性が暴挙に至らないよう必死に押しとどめていた。
神通の様子には気づかないのか、筋肉自慢を続ける矢矧。それが神通の神経を逆撫でしていく。
ビビィッ……
静かな怒りを表すように、新調した服に裂け目が走った。
「失礼します……お呼び立てしてまで、何の用でしょうか?」
あれから矢矧を自分の部屋に来るよう呼び出した。ここならば他の者に見つかったり、トラブルだと咎められる心配はない。
ふつふつと湧き上がる丁寧なものの、どこか棘のある口調の矢矧と相対する。
怒りを抑えつつ、低いトーンで切り出す。
「あなた廊下でさっき、自分が一番だと言ってたわよね?」
「はい、それが何か?」
できるだけ圧力を込めて話したつもりだったが、矢矧はサラリと返した。
怒りを通り越して呆れてしまいそうになりながら、言葉を重ねていく。
「つまり……私よりも強い、と?」
「そうですね、どんなに訓練や改修をしても、元が違いますから」
話にならない。まさしくそんな状態だった。
一体何を根拠にそんな自信がもてるのだろう……この身体が見えないのだろうか?
困惑気味の神通だったが、次の一言ですべてが吹き飛んだ。
「的になって沈んだ貴方とは訳が違います」
カアァッと腹の底が熱くなる。
もう我慢の限界だった。全身の血が沸騰するように熱く、腹の底から怒りが湧き上がってくる。
「……よくもまぁ思い上がったことを言えましたね」
もう、堪えるための理性も消え去った。端的にいえばぶち切れたのだ。
全身が怒りで燃え上がるように熱く膨らんでいく。
「ぬぅううう!!!」
ボゴボゴゴゴゴォ!!!
服を引きちぎり筋肉の山と化す神通。そのまま鬼の形相で矢矧を睨む。
仁王像よりも恐ろしく圧倒的な立ち姿。これで矢矧が圧倒される……はずだったのだが、なぜか彼女は余裕そうな態度を崩さない。
そして口から出たのは、意外な一言だった。
「やっぱり」
「……?」
「違和感があったんですよ、あなたの身体に」
意味が分からず睨みつける神通から目をそらさず、淡々と話し始める矢矧。
「前の出撃から戻ってきてから、でしょうか。何となくですが変わったように思えて」
挑発していたときの表情とは違う、凛とした素の矢矧の顔に戻って続ける。
「ときどきいなくなるものですから、尾行してみたんです。コッソリと山へ行って、何を隠してるのかと思ったら……驚きましたよ」
バレていた、しかも山で解放している姿も見られていた。その事実に動揺を隠せない神通。
思えば自分のプロポーションに自信のあった長波も洗脳があまり効いていなかった。
最新鋭軽巡たる矢矧も同様に効かなかったうえ、調査までされていたとは……!
「ああ、上には報告してないので安心してください」
こちらの動揺を見透かすように語る矢矧。
鎮守府の異様さを解決したいのであれば、尾行で気がついた時点で本部に伝えればいいだけのことだ。
しかし矢矧はそれをしていないという。
「……何が目的なの」
混乱気味の神通の問いかけに、数拍おいて小さな声で答えが返ってきた。
「ズルいじゃないですか」
「……え?」
キッと神通を睨みながら、まくしたてる矢矧。
「最新鋭軽巡たる私こそが一番強く、美しい筋肉をもった身体でないと!」
どこかおかしな台詞を口にしながら、その表情は真剣そのものだ。
矢矧とて始めから筋肉至上の考えだったわけではない。
神通による変脳はある程度効いていたのだ。それが自らへの誇りやプライドがと相まった結果、このような歪んだ対抗心をつくり出していた。
「どんなに訓練しても鍛えても、そんな筋肉はつきません。だったら――」
同じことをするしかないじゃないですか。
その言葉とともに、ゴソリと何かを取り出した。
オレンジ色のバケツ、正面に「筋肉」と書かれた文字……それは神通が使ったものとまったく同じものだった。
「な、何でそれが……?」
「バケツの山に混じっていました」
「っ!?」
神通の反応をみて確信を深めたのか、笑みをいっそう濃くする。
「あからさまに怪しかったので、持ってきてみましたけど……すごいですねこれ。中身に少し触ってみただけでこの身体になれましたよ」
筋肉の陰影が浮き上がった腕に触れる。彼女だけが他の艦娘たちよりも急速に筋肉が発達していた理由はこのバケツだったのだ。
「これを全部使えば私だって……!」
神通の身体を見つめながら、笑みを浮かべてバケツを頭上に掲げる。そして――
ザバァ!
笑みを浮かべたまま中身を頭から被った。
透明な液体が滝のように流れ落ち、矢矧の全身がしとどに濡れ、木製の床が色濃く染みてゆく。
長い黒髪の先からボタボタと雫が落ち続けているが、そんなことをまったく気にすることもなく、これから起こるてあろうことを期待して喜色満面の矢矧。
効果はすぐに現れた。
「はあぁ……♡」
快感が駆け巡っているようで、うっとりとしながら自分の身体を抱きしめる。
原液を直接浴びた影響だろうか、神通のときよりも早くその効果が現れた。
むくく……っ!
しっかりとついた筋肉を押しのけるように、形のよい胸が両腕で中でハッキリと大きく膨らんだ。
全身にムチムチとした肉がのり、スレンダーな本来の体型からかけ離れた肉感をまとっていく。
服をパツパツに張り詰めさせながら、なおも膨らんでいく両胸。襟の胸元は左右に広げられ、谷間が顔を覗かせる。
爆乳に押し上げられたいく服の布地は、長さが足りずに腹まわりと南半球まで露出させた。
「んっ……あはっ」
神通のときも変化に快感が伴ったが、矢矧は動揺することなくそれを愉しんでいた。
尻にもムチムチと脂肪がついてゆき、以前の体型の名残は括れた腰と細い指先くらいしかない。
押し上げられたスカート、その内側のパンツは興奮のせいか愛液で濡れてピッチリと張り付いている。全身を満たす快楽は情欲を加速させているようで、内股まで透明な液で濡れていく。
服の上からでも分かるほどに大きく肥大化した乳首が抑えつけられ、見るからに苦しそうだ。
ばるんっ
「んっ……♪」
矢矧はうっとりとした表情のままメロンのような片乳をまろび出させ、乳首を咥えてぬらりと舌を這わせた。
全身に快感が走っているらしくビクビクと身震いをする。
それがキッカケだったのか、さらなる変化が始まった。
もこっ、むぐっ、むくくっ……!
むっちりと乗った脂肪の下から筋肉が盛り上がっていく。
神通自身も経験した、二段階目の変化。
胸を抱えた両腕が筋肉で太くなり、逆に爆乳を押し返していく。
乳房の付け根からは大胸筋が盛り上がってゆき、柔らかな脂肪は場違いだといわんばかりに筋肉で挟み上げられた。
ムクムクと膨らんでいく矢矧の肉体。
脚も前後左右に太く張り出して以前の矢矧の腰よりも太い腿へと変わっていく。
肌が一気に焼けていくかのように褐色へと変化しながら、筋肉の膨らみに引き延ばされていく。
「…………ふぅ」
トドメとばかりに二回りほど全身が膨らみ、神通そっくりの体格にまで至ったところで筋肥大は止まった。
全身に血が巡り、熱くなっているのか汗が流れ始める。筋肉の谷間を濡らしたそれは、たえず肌から溢れてきて瞬く間に全身をオイルのような光沢で包み込んだ。
服の下には下着ではなく黒いビキニを身につけており、シンプルなつくりと色が筋肉を映えさせている。肌と相まってボディビルダーの如き風貌だ。
恍惚とした表情が少しずつ正気に戻ってゆく。
そのまま首を下に向け、腕や脚の筋肉を動かしながら全身を矯めつ眇めつ眺めていく。
そして、ギラリと獰猛な笑みを浮かべた。
「お前が一番なんか許るわけないだろう、神通」
変化する前よりも低く、圧の強くなった声で語る筋肉矢矧。
自分が一番なんだという自信は変わらず、むしろ筋肉を得てより強固なものになっていた。