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「…………そう」 目の前で起きた予想外の変化に戸惑ってしまったが、これには神通のプライドにも火がついた。 様々な事がいっぺんに起きて混乱はしたものの、艦娘が1人筋肉化しただけだと思い直す。駆逐艦たちには自分から筋肉訓練を施したが、矢矧は筋肉に嫉妬して勝手に動いた、それだけの違いだと。 ……ならば、自分が上であることを教えるまで。 冷静さを取り戻した神通は筋肉で膨らんだ巨体に力を込めていく。 ボゴゴゴッ!!! ぱっと見ただけでは優劣はつかない。 まるで顔以外を鏡合わせにしたかのように、そっくりな筋肉の山が2つ向かい合う。 これでは埒が明かないと判断した2人は、同時に動いた。 両腕を前に突き出しながら曲げ、爆乳の周りを筋肉で囲む。威嚇するように筋肉を見せつけるモストマスキュラー。 「うぉぉおおお!!!」 「ふんぅううう!!!」 互いの筋肉が前に突き出し、二の腕の山脈の頂点が触れ合う。 しかし、バルクもカットも甲乙着けがたいほどに拮抗していた。 歯を食いしばりながらしばらくポージングが続いたが、均衡が破れる気配はない。 「むぅん!!!」 「うぉおっ!!」 ならば直接力で示そうと、神通は矢矧の両手を掴んで押し始めた。 矢矧も意図を理解して両手を掴み返し、神通を押し倒そしてしまおうと全力で力を込める。 がっちりと掴み合った手四つの姿勢で全身の筋肉が相手を圧倒するために総動員される。 木製の床が2人の圧力で軋み、耐えきれずに足の周りが陥没してゆく。 しかし、組み合った両手は動く気配がない。筋力もまったくの互角だった。 「うがぁぁああああ!!!」 「っ!?」 今度は矢矧から動いた。 両手を振りほどき、タックル気味に神通の大樹のごとき胴へにしがみつく。 神通も衝撃をこらえるが、矢矧の目的はこの先にあった。 巨木のような両腕を胸の下で回し、ベアハッグを掛けたのだ。 ヌルリとオイル質の汗で覆われた身体は掴みにくいが、締め技なからば力が逃げることはない。 「ふんぅぅううう!!!」 鉄鋼ですらねじ曲げてしまうような力だったが、神通のシックスパックもさらに厚みを増し、取り囲んでいる腹斜筋もアーマーのように堅く分厚くなっていく。矢矧の力を吸収し、跳ね返さんとしていた。 それだけでなく逆に神通の腕が矢矧の胴に回され、ベアハッグを掛け返された。 「がぁっ……!?」 「うぐぅ……!!」 締めて、締められ、腕に力を込めながら腹筋を収縮させ……全身を使った筋肉合戦が続く。 膠着状態が続き、互いの汗が混じり合い床に水溜まりが広がっていく。 オーバーヒート寸前の我慢比べ。あらん限りの力を発揮すべく全身の血管が浮き上がってギュルギュルを血が巡り、褐色の肌が赤く染まる。 「うっ、ぐぅ……」 2人の腕力がわずかに弱まった。流石の肉体であってもエネルギーが底をつき、身体から熱が引いてゆく。 筋肉に限界がきているのもあったが、力を発揮したいという欲求が発散され、徐々に理性が戻ってもきていたのだ。 締め付ける力が弱まり、両腕がズルリと胴から解ける。 ドサドサッ……! 立つこともままならず、疲弊しきった2つの身体が床に崩れ落ちた。 荒い息を吐きながら全身をクールダウンさせるにつれて、血が上った頭もゆっくりと冷めていく。 「筋肉に良いも悪いもありませんでしたね……」 神通の小さな呟きだったが、矢矧の耳にもしっかりと届いていた。その表情は普段の彼女のもので、のそりと身体を起こし膝をつきながら神通に向けて頭を下げる。 「私も……本当の事が知りたくて、つい挑発してしまいました。申し訳ありません」 鎮守府の異常を確かめるため、また神通の汗による変脳の作用もあり、矢矧はわざと神通を煽って冷静さを欠かせたのだ。 しかし過ぎた言葉もあったと、冷静になってから後悔をしていた。 「いえ、こちらこそ色々と隠したりしてごめんなさいね」 神通も筋肉化を隠していたわけで、矢矧が突き止めようとしたのも無理はないと理解を示し、矢矧に向けて微笑みを返す。 実際、もう彼女の挑発について全くといっていいほど気にしていなかった。 今はそれよりも、筋肉を愛する仲間が増えたことの嬉しさで一杯だったのだ。 ボールを埋め込んだような肩、その間をアーチのように首と繋げている像帽筋。 山のような上腕二頭筋、裾野のように広がる上腕三頭筋、太さを失わない前腕。 大胸筋の上にのった筋肉爆乳に、分厚く括れた腹筋群。 背中は広背筋が左右に張り出して正面から見てもはみ出している。鬼の顔というレベルを超えた山脈と渓谷が、身体を動かすたびにうごめきながら分厚さを見せつける。 大殿筋によって美しい曲線で上を向く美爆尻に続いて、樽のように前後左右に大きく張り出した太もも。 ふくらはぎも左右に大きく張り出した筋肉が主張して、力強く美しい脚線美を描いている。 全身のどこも余すところなく筋肉に包まれ、その力強さを美しさを主張している。 限界まで膨らんだ筋肉は筋繊維の一本一本すらも浮き上がらせてビクビクと震えているさまは、筋肉で価値観が染まった神通にとって、究極の肉体だった。 そんな身体を、同僚の矢矧が手に入れた、それはとても喜ばしいことなのだ。落ち着けば落ち着くほどその感動が押し寄せてくる。 凛とした美しい顔、その下にある最高の筋肉美。見れば見るほど、興奮がとまらない。 そしてそれは、同じく筋肉に染まった矢矧もだった。神通の身体から目を離せず、ドンドン興奮が高まっていく。 ゴリッゴリに盛り上がった筋肉を身体で直接感じて、愛でて、堪能したい。 特注した巨大ベッドの上に横になり、両腕を広げて矢矧を誘う。 「過ぎた事は忘れて、こんな素晴らしい身体になれたんだから……楽しみましょう?」 「ええ、全力でいくわっ!」 それに応えた矢矧が上から身体を預けた。筋肉の塊と表現したくなるような肢体が、神通の上にふってくる。 ズシィッ! 「あぁ……矢矧の筋肉すごい……♡」 相当な重量が掛かっているはずだが、分厚い筋肉の鎧はそれをものともしない。むしろ「全身が矢矧の筋肉を感じて悦んでいる。 筋肉の厚みが、硬さが、熱が、身体に擦り込まれ快感へと変換される。 ニチャ……ヌリュ、ズリッ…… 爆乳がたわみ、全身の筋肉が擦り付けられる。互いの汗を潤滑油にしながら、ヌルヌルと身体を擦りつけ合う。 「神通さんの大胸筋、逞しい……♡」 「あなただって大腿筋がこんなに膨らんで……♡」 筋肉の膨らみをゆっくりと、味わうように指を這わせていく。 「んっ、ふぅっ、あっ……♡」 衝動を抑えきれない様子の矢矧は、神通の二の腕に唇をつけた。くすぐるように伸ばされた舌がゆっくりと神通の汗を舐めとっていく。ムキッと、矢矧の山脈のような筋肉がさらに大きく膨らんでいく。 神通も矢矧の翼のように大きく広がった背中をに手を当て、その凹凸を愛おしそうに撫で回していた。 チュプッ、ヌプッ…… 上気して赤い顔のまま見つめ合い、ディープキスでお互いをむさぼる。飲み込んだ唾液や汗が身体の中でも熱をもっているようだ。 身体中を絡みつかせ、筋肉の力強さや熱を感じ、ジンワリとした快感が溢れだしてくる。 筋肉で興奮して、筋肉で責めて、筋肉で感じて……全身が性感帯の2人が互いを高めあっていく。 「筋肉でイくっ……んっ、はぁぁあああ!!!」 「私もっ、んぅぅうう!!!」 絶頂とともに全身から放たれる熱い快楽が筋肉を満たし続ける 2人の全身がボココッ! と膨らんだ。 どこまでイケるんだろうか……神通にも、この身体の底がみえなかった。しかし不安はない、どこまでも筋肉で満たされていける幸せで一杯だ。 矢矧の身体を抱きしめ、恍惚とした表情で問いかける。 「まだイケますよね……?」 矢矧もまた、神通に負けないくらい快楽で満ち満ちた笑顔を返す。 「ええ、もちろん」 身も心も筋肉で染まった狂宴は、互いの身体を肥大化させながらいつまでも繰り広げられた。 (了)

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