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 10月。芽吹いた命が花開き実りとなる収穫の季節。

 伏木野家でも、新たな生命が誕生しようとしていた。


「今日はな、邦彦とアリスに大切な話があるんだ」


 ある日の夜。伏木野家の食卓に緊迫とした空気が流れていた。

 話を切り出した父の伸彦は、これまでにない真剣な表情をしていた。

 もしかしたら、再婚の話を告げた時以上に真面目な顔をしているかもしれない。

 そんな風に観察する余裕があるくらいには、邦彦は落ち着いた調子で父親のことを見ていた。


「大切な話ってなに?」

「それはだな、その……それが……」

「伸彦さん、落ち着いて」


 本題が口から出てこない伸彦の背中を、隣に座るマリアが擦る。

 どうやら見た目以上に父は緊張しているようだ。

 一体どんな話をするのだろう。伸彦の態度に反して、邦彦は呑気に構えていた。

 父の反応を見るに、そこまで深刻な話にはならないと経験則で思ったからだ。

 邦彦とアリスが見守る中、覚悟を決めた伸彦はようやく話を切り出した。


「邦彦、アリス……実はな、マリアのお腹には赤ちゃんがいるんだ」

「えっ、それって……」


 伸彦の言葉に、邦彦の隣に座るアリスはきょとんと目を見開いた。

 想像だにしなかったのだろう。あまりの衝撃に、すぐには言葉が出てこないようだった。


「良かったわねアリス。貴方、もうすぐお姉さんになるのよ」

「わたしが、お姉さん……? ほっ、本当ですかっ!?」

「えぇ、本当よ」

「わぁっ、すごいですーっ!!」


 母マリアに言われ、ようやく理解したようだ。

 アリスは椅子が後ろに倒れそうなほど元気よく飛び跳ねていた。


「こらこら、そんなにはしゃいだら危ないぞ」

「伸彦さん、仕方ないわよ。これは私たち家族にとって、今年一番のニュースなんだから」

「うむ、それもそうだな。それにしては邦彦の方はあまり驚いていないようだが」

「いや、僕も驚いてるよ。アリスちゃんのリアクションに圧倒されていただけで」


 正直なところ、あれだけお盛んな2人を知っていると、子供ができるのは時間の問題だと思っていた。

 その結果が今夜発表された。喜ばしいニュースではあるが、邦彦はとっくの昔に心の準備ができていたのだ。

 至って冷静な邦彦とは対照的に、アリスは誕生日でも来たかのようなはしゃぎっぷりだった。

 よほど嬉しいのだろう。全身から喜びという感情を周囲に伝播させていた。


「お姉さん! お姉さんになるんです! お母様、妹ですか? 弟ですか?」

「それがまだ分からないの。もう少しで分かると思うから、今度調べてもらうわね」

「わぁいっ! ワクワクしますー!」


 アリスの兄弟ということは、邦彦の兄弟でもある。

 邦彦には既にアリスという義妹はいるが、今まで一人っ子だったので血を分けた兄弟はこれが初めてだ。

 新たに兄弟ができる心の準備をしていたとはいえ、実感はまだない。

 赤ちゃんが生まれたら実感するのだろうか。兄というものの自覚を。


「それでそれで、赤ちゃんはいつ生まれるんですか?」

「予定では来年の3月あたりだけど……もしかしたら、アリスの誕生日とかぶるかもしれないわね」

「来年、わたしに兄弟が……」


 再度、アリスは兄弟ができた喜びを噛み締めていた。

 この日、邦彦とアリスは自分たちに新たな兄弟ができることを知った。

 それが2人の関係の、新たなターニングポイントでもあったのだ。



 ×××



「兄弟か……」


 その日の夜、邦彦はベッドに寝転がり考えていた。

 果たして自分とアリスはこのままでいいのだろうか、と。

 成り行きで肉体関係を持った2人だが、これが永遠に続くとは思っていない。

 いつかはこの関係にも終わりがやってくるのだろう。

 それがいつかは分からない。だが確実にその日は来るはずだ。

 数年後か、今年中か、もしくは数日後にだって……。


「はぁ……」


 邦彦が近い将来に待ち受けている問題に頭を抱えていると、


「お兄様、いいですか?」

「アリス……?」


 アリスが部屋にやってきた。


「いいよ、入って」

「失礼します……」


 邦彦はすぐに彼女を迎え入れる。

 寝る準備万端の桃色パジャマ姿のアリスは、今日もお人形さんのように可愛らしかった。


「どうしたの、こんな夜更けに」

「それが興奮して眠れなくて……」

「あぁ、赤ちゃんのことか」


 あれだけ元気にはしゃいでいたのだ。目が冴えてしまうのも無理もない。


「僕もだよ。色々思うところがあって眠れないんだ」

「お兄様もですか。わたしと同じですね!」


 起き上がった邦彦はベッドに座り直し、その隣にアリスもちょこんと座る。

 この距離感が当たり前になって半年が過ぎた。あまりにも濃密な時間に、時の流れの速さを痛感する。


「えへへ~。私たちの兄弟ですって。どんな赤ちゃんなんでしょうか~。今から楽しみです!」

「そうだね」


 弟か妹ができるのがそんなに嬉しいのか、両親の話から時間が経っても彼女は元気いっぱいだった。

 自分はどうだろう。喜ばしいことなのは確かだが、複雑な心境でもあった。

 自分は果たして、新しい兄弟を兄弟と見れるのだろうか?


 そもそも邦彦はアリスのことを妹としてみているか微妙だった。

 家族ではあるものの、それ以前に異性として認識してしまっている。

 彼女と肉体関係を持ってしまったからだろう。義妹ということもあり、彼にとってアリスは同じ家に住んでいる年下の少女でしかなかった。


 なので新しい兄弟を、ちゃんと兄弟として受け入れられるか不安だった。

 もし受け入れられなかった場合、家族との関係にヒビが入ってしまうのではないか。

 それが恐ろしくてたまらなかったのだ。


「……お兄様、どうかしましたか?」

「あ、いやごめん。ちょっと考え事してて……」


 義兄の変化を、アリスは目聡く察知する。

 彼女は本当に賢い子だ。だからこそ、このまま肉体関係を結んでいていいものかと疑問に思う。

 彼女の将来のためにも、健全な関係に戻ったほうが良いのではないか。

 邦彦が真面目に思案していると、アリスは何を思ったのか兄の股間に手を伸ばす。


「あっ、アリスちゃんっ……!?」

「お兄様、元気がないんですか? だったらわたしとエッチして気持ちよくなりましょうっ♡」

「とっ、父さんたちがいるんだよっ!?」

「お父様たちなら部屋で休んでます。静かにしてたらバレませんよ」


 最初は性に無知だった彼女も、今ではエッチに誘ってくるようになってしまった。

 これは邦彦のせいなのだろうか。自分がアリスを汚してしまったのだろうか。

 そう思うと、愚息にも元気がなくなってくる。


「ごめん、アリスちゃん。今日はそういう気分じゃないから、もう寝ることにするよ」

「そうですか……。それじゃあお休みなさい、お兄様」


 そっけない邦彦に何か言いたそうなアリスだったが、兄を思ってか素直に言うことを聞いてくれた。

 その後アリスを部屋から見送り、邦彦は就寝することにした。

 だが悶々とした気持ちは晴れることなく、結局その夜は満足に眠ることはできなかった。



 ×××



 義母マリアの妊娠を知らされてから一週間。邦彦はアリスの誘いを断り続けていた。

 彼女との肉体関係を断とうという、確固たる意志があっての決断ではない。

 ただなんとなく、本当になんとなく気分が乗らないから断っていたのだ。


 理由はもちろん、新しい兄弟ができてアリスとの関係に疑問を抱いたからだ。

 本当に自分たちはこのままでいいのだろうか。

人生の岐路に立たされたような気分になり、どうにも胸がざわついて落ち着かないのだ。


「お兄様、あのペンギンさん可愛いですね!」

「うん、そうだね」


 ある日の夜、邦彦はアリスと一緒にリビングでテレビを見ていた。

 見ているといっても、視線はテレビに向いてるものの心は上の空だった。

 隣にはいつものようにアリスが座っている。油断すると彼女を性的に意識してしまいそうで、気が気じゃなかったのだ。


「お兄様、水族館でペンギンさんを見てみたいです!」

「うん、そうだね」

「お兄様……?」


 無愛想な邦彦の生返事に、流石のアリスも気になったようだ。

 彼女は邦彦に寄り添うように近づくと、右手を彼の股間の上に置きいやらしい手つきで撫で回した。


「アリスっ……!?」

「影になってお母様たちからは見えませんよ。ここでこっそり抜きますか?」


 様子がおかしい邦彦を気遣っての行為だろうが、まだ両親が起きている中での性行為は大胆すぎる。

 性欲旺盛な思春期の少年である彼でさえも、親に見つかりかねない状況でのエッチは御免被りたい。


「ごめん、今はちょっと……」

「あぁっ、お兄様……」


 このまま彼女と一緒にいると、何をされるか分からない。

 邦彦はソファから立ち上がると、足早にリビングを後にした。

 心の中ではアリスに悪いと思いつつも、未だ心の整理がついていない邦彦だった。



 ×××



 邦彦とアリスのギクシャクした関係は10日以上続いた。

 その間、邦彦はそういう気分になれずオナニーすらしていなかった。

 時間が経てば解決するかと思われた心の問題も、日に日にストレスが溜まっていく一方だった。

 結局自分はどうすればいいのか。結論が出ないまま過ぎていく空虚な日々。

 そんな憂鬱な毎日が終わりを告げたのは、アリスの突飛な行動がきっかけだった。


「ふぅ……」


 邦彦の鬱屈としたため息が、伏木野家のトイレに響いた。

 自分は一体何をしているのだろう。彼の精神は自己嫌悪で支配されていた。

 自分の中で踏ん切りがつかないばかりに、アリスに余計な迷惑をかけている。

 これでは兄としても人としても失格だ。なんとかして結論を見出さねば。

 そう思ってはいるのだが、中々うまいこといかないのが人生というものである。


「はぁ……」


 邦彦がそんな風にトイレの便座に座りながら人生の迷路に迷っていると……。


「お兄様、ここにいるんですか?」

「あっ、アリスちゃんっ……!?」


 アリスがトイレのドアをノックしてきた。

 それだけならまだいい。それどころか、彼女は予想外の行動に出た。


「ちょっと失礼しますね……」

「えぇっ!?」


 鍵がかかっていなかったことをいいことに、彼女はトイレに侵入してきたのだ。

 誰であっても絶対不可侵の聖域に入られ、邦彦は激しく動揺する。


「あっ、アリスちゃんっ!? ここトイレだよっ!?」

「はい、ですからあまり大きな声を出さないでくださいね」


 アリスは冷静にそう言うと、邦彦の股間に視線を送る。

 そこには丸出しになったペニスが頭を垂れていた。トイレ中なのでもちろん勃起はしていない。

 彼女は元気のない男根を見やると、おもむろに手を伸ばしシコシコと扱き出した。


「あっ、アリスちゃんそれはっ……!?」

「最近してないから溜まってるんでしょう? 一回抜けばスッキリしますよ♡」

「うぅっ……!」


 確かにここ10日以上オナニーすらしてこなかった。

 鬱憤の溜まった陰茎は、アリスの手コキで瞬く間に勃起。

 亀頭を真っ赤に腫らし、性の快感に感動していた。


「うぅっ、気持ちいいっ!」

「もう射精ちゃいそうですね。いつでもイッていいですからね♡」


 手コキとは思えないほどの快感で、急速に射精感がこみ上げてくる。

 気づくと脳内はエッチのことでいっぱいになり、射精のことしか考えられなくなっていた。


「アリスちゃん! もう射精そうだっ!!」

「お兄様っ、射精してぇっ♡ わたしの顔に精子をぶっかけてぇっ♡♡」

「くぅっ、射精るっ……!」


 欲求の赴くままに、邦彦はアリスの顔面目掛けて吐精する。

 アリスの色白の肌に、白濁の汁が勢いよくぶっかかった。


「あぁっ、んあぁっ、熱いっ♡ お兄様のザーメン温かいですぅっ♡♡」

「うぅっ、ふぅっ……!」


 久しぶりの射精は、脳を溶かすほどの快感であった。

 ここ最近の悩みが一瞬で吹き飛ぶくらい、それは痛快な快楽であった。


「アリスちゃん、僕……」

「お兄様、続きは部屋でしましょうか♡」


 言い淀む邦彦の手をアリスは引っ張る。

 邦彦は彼女の誘いを断ることができなかった。

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